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▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

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  • 特許-流体制御装置、および出力調整方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】流体制御装置、および出力調整方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
F04B49/06 341L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023510673
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2022007852
(87)【国際公開番号】W WO2022209481
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2021062757
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡口 健二朗
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/217934(WO,A1)
【文献】特開2005-207368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流路と、
第1流入口と第1流出口を有し、前記第1流路の一端が前記第1流入口に接続される第1ポンプと、
第2流入口と第2流出口を有する第2ポンプと、
一端が前記第1ポンプの前記第1流出口に接続し、他端が前記第2ポンプの前記第2流入口に接続する第2流路と、
前記第2ポンプの前記第2流出口に接続される第3流路と、
前記第1ポンプおよび前記第2ポンプの駆動を制御することができる制御部と、
前記第1ポンプおよび前記第2ポンプの各々の電気量を検出する検出部と、
前記第1ポンプの電気量と前記第2ポンプの電気量との差と、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプの出力の調整量との対応関係を示すテーブルが予め記憶してある記憶部と、を備え、
前記制御部は、
前記テーブルから、前記検出部で検出した前記第1ポンプの電気量と前記第2ポンプの電気量との差に対応する前記第1ポンプおよび前記第2ポンプの出力の調整量を読み出し、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプのうち少なくとも一方の出力を当該調整量で調整することができる、流体制御装置。
【請求項2】
前記テーブルには、
前記第1ポンプおよび前記第2ポンプが設けられている場所の気圧または高度と、前記第1ポンプの電気量と前記第2ポンプの電気量との差との対応関係が予め記憶してある、請求項に記載の流体制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検出部で検出した前記第1ポンプの電気量と前記第2ポンプの電気量との差が、前記テーブルに予め設定されている第1閾値を超えた場合、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプの出力が共に高くなるように調整することができる、請求項または請求項に記載の流体制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記検出部で検出した前記第1ポンプの電気量と前記第2ポンプの電気量との差が、前記第1閾値より高い第2閾値を超えた場合、前記第1ポンプの出力のみが低くなるように調整することができる、請求項に記載の流体制御装置。
【請求項5】
前記検出部で検出する電気量は、電圧、電流、または電力のいずれかの値である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の流体制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプを駆動する電流、周波数、および電圧のうち少なくとも1つの値を変更して、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプの出力を調整することができる、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の流体制御装置。
【請求項7】
第1流路と、第1流入口と第1流出口を有し、前記第1流路の一端が前記第1流入口に接続される第1ポンプと、第2流入口と第2流出口を有する第2ポンプと、一端が前記第1ポンプの前記第1流出口に接続し、他端が前記第2ポンプの前記第2流入口に接続する第2流路と、前記第2ポンプの前記第2流出口に接続される第3流路と、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプの駆動を制御することができる制御部と、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプの各々の電気量を検出する検出部と、前記第1ポンプの電気量と前記第2ポンプの電気量との差と、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプの出力の調整量との対応関係を示すテーブルが予め記憶してある記憶部と、を備える流体制御装置において、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプのうち少なくとも一方の出力を調整する出力調整方法であって、
前記第1ポンプの電気量と前記第2ポンプの電気量との差を検出するステップと、
前記テーブルから、検出した前記第1ポンプの電気量と前記第2ポンプの電気量との差に対応する前記第1ポンプおよび前記第2ポンプの出力の調整量を読み出し、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプのうち少なくとも一方の出力を当該調整量で調整するステップと、を含む、出力調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御装置、および出力調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプと制御回路とを備える流体制御装置が開発されているが、性能、例えば圧力や流量などの出力を向上させて利用するために、複数のポンプを直列に接続して利用することが国際公開第2019/198305号(特許文献1)に記載されている。具体的に、2個のポンプを直列接続した流体制御装置では、第1ポンプと第2ポンプとが直列的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/198305号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2個のポンプを直列した流体制御装置は、1個のポンプを利用する流体制御装置に比べて出力を向上させることができる。しかし、2個のポンプを直列した流体制御装置であっても、高地など気圧が低い場所で使用すると出力が低下する。そこで、気圧計などのセンサを設けて流体制御装置のポンプの出力を調整することが考えられるが、別途、気圧計などのセンサを設ける必要があり製造コストが高くなる。
【0005】
そこで、本開示の目的は、気圧に変化が生じた場合であってもポンプの出力を簡便に調整することができる流体制御装置、および出力調整方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る流体制御装置は、第1流路と、第1流入口と第1流出口を有し、第1流路の一端が第1流入口に接続される第1ポンプと、第2流入口と第2流出口を有する第2ポンプと、一端が第1ポンプの第1流出口に接続し、他端が第2ポンプの第2流入口に接続する第2流路と、第2ポンプの第2流出口に接続される第3流路と、第1ポンプおよび第2ポンプの駆動を制御することができる制御部と、第1ポンプおよび第2ポンプの各々の電気量を検出する検出部と、第1ポンプの電気量と第2ポンプの電気量との差と、第1ポンプおよび第2ポンプの出力の調整量との対応関係を示すテーブルが予め記憶してある記憶部と、を備え、制御部は、テーブルから、検出部で検出した第1ポンプの電気量と第2ポンプの電気量との差に対応する第1ポンプおよび第2ポンプの出力の調整量を読み出し、第1ポンプおよび第2ポンプのうち少なくとも一方の出力を当該調整量で調整することができる。
【0007】
本開示の一形態に係る出力調整方法は、第1流路と、第1流入口と第1流出口を有し、第1流路の一端が第1流入口に接続される第1ポンプと、第2流入口と第2流出口を有する第2ポンプと、一端が第1ポンプの第1流出口に接続し、他端が第2ポンプの第2流入口に接続する第2流路と、第2ポンプの第2流出口に接続される第3流路と、第1ポンプおよび第2ポンプの駆動を制御することができる制御部と、第1ポンプおよび第2ポンプの各々の電気量を検出する検出部と、第1ポンプの電気量と第2ポンプの電気量との差と、第1ポンプおよび第2ポンプの出力の調整量との対応関係を示すテーブルが予め記憶してある記憶部と、を備える流体制御装置において、第1ポンプおよび第2ポンプのうち少なくとも一方の出力を調整する出力調整方法である。出力調整方法は、第1ポンプの電気量と第2ポンプの電気量との差を検出するステップと、テーブルから、検出した第1ポンプの電気量と第2ポンプの電気量との差に対応する第1ポンプおよび第2ポンプの出力の調整量を読み出し、第1ポンプおよび第2ポンプのうち少なくとも一方の出力を当該調整量で調整するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、検出した第1ポンプの電気量と第2ポンプの電気量との差に基づいて、第1ポンプおよび第2ポンプのうち少なくとも一方の出力を調整するので、気圧に変化が生じた場合であってもポンプの出力を簡便に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係るネブライザの構成を説明するための概略図である。
図2】実施の形態に係るポンプユニットの構成を示す概略図である。
図3】実施の形態に係るポンプユニットの制御を説明するためのブロック図である。
図4】実施の形態に係る2つのポンプの電流差と背圧との関係を示す図である。
図5】実施の形態に係る記憶部に記憶されたテーブルの内容を示す図である。
図6】実施の形態に係るポンプユニットの動作を説明するためのフローチャートである。
図7】実施の形態に係る圧電ポンプの周波数とインピーダンスとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本実施の形態に係る流体制御装置について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【0011】
(実施の形態)
以下の実施の形態では、2個のポンプを直列したポンプユニット(流体制御装置)がネブライザに利用される一例について説明する。ネブライザは、喘息などの患者が薬液を経口吸入するための器具であり、ポンプユニットで強力な空気流を作り薬液を霧化する。当該ポンプユニットが利用される装置はネブライザに限定されず、ポンプユニットを、例えばアロマディフューザや加湿器などの吐出系のデバイスに利用しても、鼻水吸引器などの吸引系のデバイスに利用してもよい。
【0012】
図1は、実施の形態に係るネブライザ1の構成を説明するための概略図である。ネブライザ1は、ポンプユニット10と、エアノズル20と、霧化ノズル30と、薬液タンク40と、マウスピース50とを含む。患者Pは、マウスピース50の先端部を口でくわえ、当該先端部から吐出される霧化された薬液を吸入する。
【0013】
ポンプユニット10は、圧縮空気を作り出すためのポンプで、性能、例えば圧力や流量などの出力を向上させるために2個のポンプを直列してある。ポンプユニット10では、以下、サイズおよび重量を軽減し、静音性に優れたに圧電ポンプを用いた構成について説明するが、用いるポンプは圧電ポンプに限定されずモータを用いたポンプなどで構成してもよい。なお、圧電ポンプは、図示していないが筐体内に圧電素子とポンプ室とを有しており、駆動による圧電素子の変位によってポンプ室の体積、圧力を変動させて流体を搬送している。なお、ポンプユニット10の詳細な構成については、後述する。
【0014】
エアノズル20は、ポンプユニット10で作り出された圧縮空気を霧化ノズル30に向けて送り出す。霧化ノズル30の先端では、エアノズル20により作り出された強力な空気流により負圧が生じ、配管42を通って薬液タンク40から薬液が吸い上げられる。霧化ノズル30の先端まで吸い上げられた薬液は、エアノズル20からの空気流により霧化されマウスピース50を通って患者Pの経口まで送り出される。
【0015】
次に、ポンプユニット10について図面を参照して詳しく説明する。図2は、実施の形態に係るポンプユニット10の構成を示す概略図である。図3は、実施の形態に係るポンプユニット10の制御を説明するためのブロック図である。
【0016】
ポンプユニット10は、図2に示すように、第1流路11と、u圧電ポンプ12(第1圧電ポンプ)と、第2流路13と、d圧電ポンプ14(第2圧電ポンプ)と、第3流路15とを含む。第1流路11は、空気を取り入れる上流側に設けられた流路である。u圧電ポンプ12は、第1流入口と第1流出口を有し、第1流路11の一端が第1流入口に接続される。第2流路13は、一端がu圧電ポンプ12の第1流出口に接続し、他端がd圧電ポンプ14の第2流入口に接続する。d圧電ポンプ14は、第2流入口と第2流出口を有し、u圧電ポンプ12に対して直列に接続される。第3流路15は、d圧電ポンプ14の第2流出口に接続され下流側に設けられる流路である。
【0017】
ポンプユニット10は、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14とを直列に繋ぐことで出力(以下、圧力を一例に説明する)を向上させることができる。u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14とを同じ条件で駆動させた場合であっても、d圧電ポンプ14がu圧電ポンプ12の下流側にあるため、より圧縮された空気がd圧電ポンプ14に送られる。そのため、d圧電ポンプ14の背圧がu圧電ポンプ12の背圧よりも高くなるので、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14を定電圧で駆動している場合、d圧電ポンプ14を駆動する電流Idがu圧電ポンプ12を駆動する電流Iuよりも低くなり、電流差が生じる。
【0018】
u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)は、u圧電ポンプ12の背圧とd圧電ポンプ14の背圧との差で決まるため、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の能力に変化がなければ一定となる。しかし、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)と背圧との関係は線形ではない。図4は、実施の形態に係る2つのポンプの電流差と背圧との関係を示す図である。図4に示すように、u圧電ポンプ12の背圧とd圧電ポンプ14の背圧との差が同じであっても、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14が設けられている場所の海抜(気圧)により、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)が変化する。
【0019】
具体的に、図4(a)には、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14が設けられている場所が海抜0mと低地の場合が示されている。u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14が設けられている場所の気圧が高いと、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の背圧自体は高くなる。その結果、u圧電ポンプ12の背圧とd圧電ポンプ14の背圧との差が同じであっても、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)は、図4(a)に示されているように小さくなる。
【0020】
一方、図4(b)には、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14が設けられている場所が高地の場合が示されている。u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14が設けられている場所の気圧が低いと、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の背圧自体は低くなる。その結果、u圧電ポンプ12の背圧とd圧電ポンプ14の背圧との差が同じであっても、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)は、図4(b)に示されているように大きくなる。
【0021】
ポンプユニット10では、図4に示した関係を利用し、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)に基づいて、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14のうち少なくとも一方の圧力を調整する。つまり、ポンプユニット10では、設けられている場所が高地の場合、例えば、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の圧力を高めて、背圧の低下を補う。または、ポンプユニット10では、設けられている場所がさらに高地の場合、例えば、u圧電ポンプ12に大きな電流が流れるのを防止するためにu圧電ポンプ12の圧力を低下させる。
【0022】
なお、ポンプユニット10において、設けられている場所の気圧を検知することでu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14のうち少なくとも一方の圧力を調整することは可能であるが、新たに気圧計などのセンサを設ける必要がある。新たに気圧を検知するための気圧計などのセンサを設けたのでは製造コストが高くなるなどのデメリットが大きい。本実施の形態では、新たに気圧計などのセンサを設けることなく図4に示した関係を利用して、気圧に変化が生じた場合であってもu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の圧力を簡便に調整することができる構成について説明する。
【0023】
なお、ポンプユニット10は、流路内で発生した閉塞状態を解消するために、コンタミネーションを排出する構成も有している。具体的に、ポンプユニット10は、図2に示すように、第1流路11に接続され、流路外と繋がる第1分岐路16と、第1分岐路16に設けられるuバルブ17(第1バルブ)と、第2流路13に接続され、流路外と繋がる第2分岐路18と、第2分岐路18に設けられるdバルブ19(第2バルブ)と、をさらに含む。なお、ポンプユニット10は、コンタミネーションを排出する構成を有していない構成であってもよい。
【0024】
ポンプユニット10は、図3に示すように、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の駆動、ならびに、uバルブ17およびdバルブ19の開閉を制御することができる制御回路100と、記憶部101と、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の各々の電流を検出する電流センサ200(検出部)と、を含む。図示していないがネブライザ1は、ポンプユニット10を駆動するために必要な電力を供給する電源を有している。
【0025】
制御回路100は、制御中枢としてのCPU(Central Processing Unit)、CPUが動作するためのプログラムや制御データ等を記憶しているROM(Read Only Memory)、CPUのワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)、周辺機器との信号の整合性を保つための入出力インターフェイス等を設けてある。
【0026】
記憶部101は、フラッシュメモリやSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリで構成される。記憶部101には、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)と、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の圧力の調整量との対応関係を示すテーブルが記憶されている。図5は、実施の形態に係る記憶部101に記憶されたテーブルの内容を示す図である。図5に示すテーブルでは、海抜または気圧ごとに、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)と、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の圧力の調整量とが記憶されている。なお、記憶部101は、図5に示すテーブル形式ではなく、関数形式でu圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)と、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の圧力の調整量との対応関係を記憶してもよい。
【0027】
ポンプユニット10は、起動すると、第1流路11の上流側(図中左側)から吸った空気を、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14で圧縮し、第3流路15の下流側(図中右側)からエアノズル20に圧縮空気を送り出す。そのため、制御回路100は、第1流路11の上流側から第3流路15の下流側に流体を流す所定の駆動条件でu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14を駆動させる。例えば、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14をそれぞれ定電圧で駆動する。特に、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14とで駆動条件を異ならせる必要がなければ、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14を、同じ電圧で定電圧駆動させる。
【0028】
なお、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の駆動条件は、定電圧で駆動させる条件に限られず、定電流で駆動させる条件など他の駆動条件であってもよい。また、u圧電ポンプ12の駆動条件とd圧電ポンプ14の駆動条件とが同じでなくてもよく、例えば、下流側のd圧電ポンプ14の仕事量が上流側のu圧電ポンプ12の仕事量より大きくなるように、u圧電ポンプ12の駆動条件とd圧電ポンプ14の駆動条件とを異ならせてもよい。ただし、駆動条件を異ならせる場合、u圧電ポンプ12の電流Iuがd圧電ポンプ14の電流Idより高くなる範囲で駆動させる必要がある。
【0029】
制御回路100は、電流センサ200でu圧電ポンプ12の電流Iuとd圧電ポンプ14の電流Idとをそれぞれ検出してu圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)を求めているが、OPアンプなどでu圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差を直接検出してもよい。また、制御回路100は、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14を定電流で駆動させるのであれば、電流センサ200に代えて電圧センサを設けて、電圧センサでu圧電ポンプ12の電圧Vuとd圧電ポンプ14の電圧Vdとをそれぞれ検出してu圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電圧差(Vu-Vd)を求める。そして、制御回路100は、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電圧差(Vu-Vd)に基づいて、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14のうち少なくとも一方の圧力を調整してもよい。もちろん、制御回路100は、圧電ポンプ12の電力Wuとd圧電ポンプ14の電力Wdとの電力差(Wu-Wd)に基づいて、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14のうち少なくとも一方の圧力を調整してもよい。
【0030】
次に、ポンプユニット10においてu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14を調整する動作についてフローチャートを用いて説明する。図6は、実施の形態に係るポンプユニット10の動作を説明するためのフローチャートである。まず、ポンプユニット10を起動した場合、制御回路100は、所定の駆動条件でu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14を駆動させる(ステップS101)。
【0031】
制御回路100は、所定の駆動条件でu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14を駆動させた状態で、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)を求める(ステップS102)。u圧電ポンプ12の電流Iuおよびd圧電ポンプ14の電流Idは、電流センサ200で検出され、制御回路100に入力される。制御回路100では、電流センサ200で検出したu圧電ポンプ12の電流Iuおよびd圧電ポンプ14の電流Idから、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)を算出する。
【0032】
制御回路100は、検出したu圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)が閾値T1以上か否かを判断する(ステップS103)。図5に示すように、海抜が1000m以上になると、背圧の低下を補うためu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の圧力を各々20%増やすことがテーブルに設定されている。そのため、制御回路100は、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)がβ(=閾値T1)以上になったか否かを判断することで、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14が設けられている場所が海抜1000m以上の高地か否かを判断することができ、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の圧力を調整することができる。
【0033】
検出したu圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)が閾値T1より低いと判断した場合(ステップS103でNO)、制御回路100は、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の圧力を調整する必要がないと判断して、処理をS102に戻す。つまり、制御回路100は、所定の駆動条件でのu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の駆動を継続させつつ、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)を求める処理を継続させる。
【0034】
一方、検出したu圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)が閾値T1以上と判断した場合(ステップS103でYES)、制御回路100は、検出したu圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)が閾値T2以上か否かを判断する(ステップS104)。図5に示すように、海抜が3000m以上になると、より大きな電流がu圧電ポンプ12に流れることになるが、u圧電ポンプ12を保護するためにu圧電ポンプ12の圧力のみを30%減らすことがテーブルに設定されている。そのため、制御回路100は、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)がδ(=閾値T2)以上になったか否かを判断することで、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14が設けられている場所が海抜3000m以上の高地か否かを判断することができ、u圧電ポンプ12の圧力を調整することができる。
【0035】
検出したu圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)が閾値T2より低いと判断した場合(ステップS104でNO)、制御回路100は、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の圧力を共に増加させる(ステップS105)。具体的に、制御回路100は、図5に示すテーブルに従い、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の圧力を各々20%増やす。制御回路100は、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14を駆動する電流、周波数、および電圧のうち少なくとも1つの値を変更して、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の圧力を調整することができる。
【0036】
一方、検出したu圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)が閾値T2以上と判断した場合(ステップS104でYES)、制御回路100は、u圧電ポンプ12の圧力のみを減少させる(ステップS106)。具体的に、制御回路100は、図5に示すテーブルに従い、u圧電ポンプ12の圧力のみを30%減らす。なお、制御回路100は、u圧電ポンプ12とd圧電ポンプ14との電流差(Iu-Id)が閾値T2以上と判断した場合(ステップS104でYES)、d圧電ポンプ14の圧力を減少させつつ、u圧電ポンプ12の圧力をd圧電ポンプ14の圧力より大きく減少させてもよい。
【0037】
次に、制御回路100は、所定の駆動条件でのu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の駆動を継続させるが、ユーザ(例えば、患者P)からu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の駆動を停止させる入力を受け付けたか否かを判断する(ステップS107)。
【0038】
ユーザからu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の駆動を停止させる入力を受け付けていない場合(ステップS107でNO)、制御回路100は、処理をS102に戻す。つまり、制御回路100は、所定の駆動条件でのu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の駆動を継続させつつ、電流センサ200によるu圧電ポンプ12の電流Iuおよびd圧電ポンプ14の電流Idの検出を継続させる。
【0039】
一方、ユーザからu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の駆動を停止させる入力を受け付けた場合(ステップS107でYES)、制御回路100は、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の駆動を停止して、処理を終了する。
【0040】
以上のように、実施の形態に係るポンプユニット10は、第1流路11と、第1流入口と第1流出口を有し、第1流路11の一端が第1流入口に接続されるu圧電ポンプ12と、第2流入口と第2流出口を有するd圧電ポンプ14と、一端がu圧電ポンプ12の第1流出口に接続し、他端がd圧電ポンプ14の第2流入口に接続する第2流路13と、d圧電ポンプ14の第2流出口に接続される第3流路15と、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の駆動を制御することができる制御回路100と、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の各々の電流を検出する電流センサ200と、を備える。制御回路100は、電流センサ200で検出したu圧電ポンプ12の電流Iuとd圧電ポンプ14の電流Idとの差(Iu-Id)に基づいて、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14のうち少なくとも一方の圧力や流量などの出力を調整することができる。
【0041】
これにより、実施の形態に係るポンプユニット10は、検出したu圧電ポンプ12の電流Iuとd圧電ポンプ14の電流Idとの差(Iu-Id)に基づいて、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14のうち少なくとも一方の出力を調整するので、気圧に変化が生じた場合であってもポンプの出力を簡便に調整することができる。
【0042】
ポンプユニット10は、u圧電ポンプ12の電流Iuとd圧電ポンプ14の電流Idとの差(Iu-Id)と、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の出力の調整量との対応関係を示すテーブルが予め記憶してある記憶部101をさらに備える。制御回路100は、テーブルから、電流センサ200で検出したu圧電ポンプ12の電流Iuとd圧電ポンプ14の電流Idとの差(Iu-Id)に対応するu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の出力の調整量を読み出し、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14のうち少なくとも一方の出力を当該調整量で調整することができることが好ましい。これにより、ポンプユニット10は、テーブルに従いu圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14のうち少なくとも一方の出力を簡便に調整することができる。
【0043】
テーブルには、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14が設けられている場所の気圧または高度と、u圧電ポンプ12の電流Iuとd圧電ポンプ14の電流Idとの差(Iu-Id)との対応関係が予め記憶してあることが好ましい。これにより、ポンプユニット10は、圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14が設けられている場所の気圧または高度を、u圧電ポンプ12の電流Iuとd圧電ポンプ14の電流Idとの差(Iu-Id)から特定することができる。
【0044】
制御回路100は、電流センサ200で検出したu圧電ポンプ12の電流Iuとd圧電ポンプ14の電流Idとの差(Iu-Id)が、テーブルに予め設定されている閾値T1(第1閾値)を超えた場合、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の出力が共に高くなるように調整することができることが好ましい。これにより、ポンプユニット10は、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14が設けられている場所の気圧が低下することによって生じる背圧の低下を補うことができる。
【0045】
制御回路100は、電流センサ200で検出した第1ポンプの電気量と第2ポンプの電気量との差が、第1閾値より高い第2閾値を超えた場合、u圧電ポンプ12の出力のみが低くなるように調整することができることが好ましい。これにより、ポンプユニット10は、u圧電ポンプ12により大きな電流が流れることを防止して、u圧電ポンプ12を保護することができる。
【0046】
電流センサ200で電流を検出するのではなく、電圧、または電力を検出する検出部であってもよい。なお、本開示では、電流、電圧、または電力を総称して電気量と記載する。
【0047】
制御回路100は、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14を駆動する電流、周波数、および電圧のうち少なくとも1つの値を変更して、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の出力を調整することができることが好ましい。
【0048】
ポンプユニット10において、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の出力を調整する出力調整方法であって、u圧電ポンプ12の電流Iuとd圧電ポンプ14の電流Idとの差(Iu-Id)を検出するステップと、検出したu圧電ポンプ12の電流Iuとd圧電ポンプ14の電流Idとの差(Iu-Id)に基づいて、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14のうち少なくとも一方の出力を調整するステップと、を含む。
【0049】
これにより、実施の形態に係るポンプユニット10の出力調整方法は、検出したu圧電ポンプ12の電流Iuとd圧電ポンプ14の電流Idとの差(Iu-Id)に基づいて、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14のうち少なくとも一方の出力を調整するので、気圧に変化が生じた場合であってもポンプの出力を簡便に調整することができる。
【0050】
(その他の変形例)
前述の実施の形態に係るポンプユニット10では、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の圧力を調整するために、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14を駆動する周波数を調整すると説明した。具体的に、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の周波数特性について図を参照してさらに説明する。図7は、実施の形態に係るポンプの周波数とインピーダンスとの関係を示す図である。図7に示す圧電ポンプの周波数とインピーダンスとの関係を示すグラフは、常温、例えば、20℃における関係を示す。
【0051】
u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の周波数特性は、共振周波数frと反共振周波数faとを有する。共振周波数frは約23.4kHzであり、反共振周波数faは約24.5kHzである。この共振周波数frと反共振周波数faとの間が圧電ポンプを駆動することができる。
【0052】
制御回路100は、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14が、自励振回路を有している場合、通常、共振周波数frで駆動される。しかし、制御回路100は、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の圧力を調整する場合、自励振回路をOFFにして駆動周波数を共振周波数frからずらして駆動する。
【0053】
また、制御回路100は、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14が、他励振で駆動する場合、通常、予め設定した駆動周波数で駆動される。しかし、制御回路100は、u圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14の圧力を調整する場合、予め設定した駆動周波数からずらした周波数で駆動する。
【0054】
前述の実施の形態に係るポンプユニット10では、記憶部101に図5に示すテーブルが予め記憶されていると説明した。記憶部101にテーブルを記憶させるタイミングは、工場での製造時でも、ユーザが使用する使用時でもよい。また、記憶部101に記憶するテーブルは、ユーザにより変更や修正が可能である。例えば、ユーザがポンプユニット10を使用する際に初期設定として海抜(または気圧)を入力し、制御回路100は、入力された海抜(または気圧)の情報に基づき記憶部101に記憶するテーブルの値を修正してもよい。
【0055】
ポンプユニット10、またはポンプユニット10を利用する装置(例えば、ネブライザ1)がディスプレイを有していてもよい。ポンプユニット10は、u圧電ポンプ12の電流Iuとd圧電ポンプ14の電流Idとの差(Iu-Id)から特定した、圧電ポンプ12およびd圧電ポンプ14が設けられている場所の海抜または気圧の情報を、ディスプレイに表示してもよい。
【0056】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
1 ネブライザ、10 ポンプユニット、11 第1流路、12,14 圧電ポンプ、13 第2流路、15 第3流路、16 第1分岐路、17,19 バルブ、18 第2分岐路、20 エアノズル、30 霧化ノズル、40 薬液タンク、42 配管、50 マウスピース、100 制御回路、101 記憶部、200 電流センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7