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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/116 20060101AFI20240509BHJP
   F16H 57/021 20120101ALI20240509BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H02K7/116
F16H57/021
F16H1/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023510751
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2022009975
(87)【国際公開番号】W WO2022209625
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2021059968
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 盛生
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/069040(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/125682(WO,A1)
【文献】特開平1-193004(JP,A)
【文献】実開昭55-87164(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
F16H 57/021
F16H 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ及び前記ロータと一体回転するロータ軸を備えた回転電機と、
第1ギヤを備え、前記ロータ軸と一体回転するように連結された入力軸と、
それぞれ車輪に駆動連結される一対の出力部材と、
前記第1ギヤに噛み合う第2ギヤ、前記第2ギヤと一体的に回転する第3ギヤ、及び前記第2ギヤと前記第3ギヤとを連結する連結軸を備えたカウンタギヤ機構と、
前記第3ギヤに噛み合う第4ギヤを備え、前記第4ギヤの回転を一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構と、
前記回転電機、前記入力軸、前記カウンタギヤ機構、及び前記差動歯車機構を収容するケースと、を備え、
前記ロータの回転軸に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向における前記第1ギヤに対して前記ロータが配置された側を軸方向第1側とし、その反対側を軸方向第2側として、
前記入力軸は、前記第1ギヤよりも前記軸方向第1側に配置された第1軸受を介して前記ケースに支持された第1支持部と、前記第1支持部よりも前記軸方向第1側に設けられて前記ロータ軸に連結された連結部と、前記軸方向における前記第1支持部と前記連結部との間に設けられ、前記第1支持部の外径及び前記連結部の外径よりも小径に形成された小径部と、を備えている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記ロータ軸は、前記ロータよりも前記軸方向第2側であって、前記第1軸受よりも前記軸方向第1側に配置された第2軸受を介して前記ケースに支持されたロータ軸支持部を備え、
前記小径部は、前記入力軸の径方向に沿う径方向視で、前記ロータ軸支持部と重複するように配置されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第1軸受が、前記ケースが備える軸受支持部によって支持され、
前記第2軸受が、前記第1軸受と同じ前記軸受支持部によって支持されている、請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記ロータ軸の内周面にスプライン係合部が形成され、
前記連結部の外周面にスプライン被係合部が形成され、
前記小径部は、前記スプライン被係合部の凸部の頂点を結ぶ仮想円の径よりも小径に形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記ロータ軸の内周面にスプライン係合部が形成され、
前記連結部の外周面にスプライン被係合部が形成され、
前記小径部は、前記スプライン被係合部の凹部の底を結ぶ仮想円の径よりも小径に形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記入力軸は、前記第1軸受よりも前記軸方向第2側に第1軸受位置決め部を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機と、回転電機のロータ軸と一体回転すると共に第1ギヤを備えた入力軸と、車輪に駆動連結される出力部材と、第1ギヤと出力部材とを駆動連結するギヤ機構とを備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-129608号公報には、車輪の駆動力源となる回転電機(12)と、動力伝達機構(16)と、これらが収容されるケース(18)とを備えた車両用駆動装置が開示されている(背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。動力伝達機構(16)には、回転電機(12)のロータ軸(26)に連結される入力軸(第1回転軸(22a))と、入力軸に形成された入力ギヤ(ピニオン(22b))と、カウンタギヤ機構とが含まれる。カウンタギヤ機構は、入力ギヤに噛み合う第1カウンタギヤ(大径ギヤ(22d))と、第1カウンタギヤと一体的に回転するようにカウンタ軸(第2回転軸(22e))に連結された第2カウンタギヤ(小径ギヤ(22c))とを備えている。ロータ軸(26)は、一対の第1軸受(28a,28b)により回転可能に支持され、カウンタ軸は、一対の第2軸受(30a,30b)により回転可能に支持され、入力軸は、一対の第3軸受(32a,32b)により回転可能に支持されている。一対の第1軸受(28a,28b)の内の一方(28b)と、一対の第3軸受(32a,32b)内の一方(32a)とは、軸方向において隣接するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-129608号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転電機(12)のロータ軸(26)と、入力ギヤ(ピニオン(22b))との間で、入力軸(第1回転軸(22a))を介して動力が伝達される際、入力軸にねじり振動が生じる。そして、入力ギヤと当該入力ギヤに噛み合うギヤ(例えば第1カウンタギヤ(大径ギヤ(22d))との噛み合い部も含めた回転電機(12)と入力ギヤとの間の剛性(いわゆる噛み合い点動剛性)に応じて、入力軸に生じるねじり振動の周波数が変化し、当該ねじり振動の周波数によっては発生する音圧や振動が大きくなり、ケースに伝達されて可聴域のノイズが大きくなる場合がある。このようなねじり振動の周波数は、例えば、トルクの伝達距離を変更すること(例えばロータ軸(26)と入力ギヤとの距離を変更すること)によって変化させることができる。しかし、トルクの伝達距離を変更することは、車両用駆動装置のレイアウトの大きな変更を伴ったり、コストを増加させたりする可能性がある。
【0005】
上記背景に鑑みて、入力軸のねじり振動を低減させて当該振動により生じるノイズの低減を図ることができる技術の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた車両用駆動装置は、ロータ及び前記ロータと一体回転するロータ軸を備えた回転電機と、第1ギヤを備え、前記ロータ軸と一体回転するように連結された入力軸と、それぞれ車輪に駆動連結される一対の出力部材と、前記第1ギヤに噛み合う第2ギヤ、前記第2ギヤと一体的に回転する第3ギヤ、及び前記第2ギヤと前記第3ギヤとを連結する連結軸を備えたカウンタギヤ機構と、前記第3ギヤに噛み合う第4ギヤを備え、前記第4ギヤの回転を一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構と、前記回転電機、前記入力軸、前記カウンタギヤ機構、及び前記差動歯車機構を収容するケースと、を備え、前記ロータの回転軸に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向における前記第1ギヤに対して前記ロータが配置された側を軸方向第1側とし、その反対側を軸方向第2側として、前記入力軸は、前記第1ギヤよりも前記軸方向第1側に配置された第1軸受を介して前記ケースに支持された第1支持部と、前記第1支持部よりも前記軸方向第1側に設けられて前記ロータ軸に連結された連結部と、前記軸方向における前記第1支持部と前記連結部との間に設けられ、前記第1支持部の外径及び前記連結部の外径よりも小径に形成された小径部と、を備えている。
【0007】
この構成によれば、入力軸の第1支持部と連結部との間に小径部を備えることにより、ロータから第1ギヤへのトルク伝達部位の剛性を部分的に低下させる調整を行うことができる。これにより、複数のギヤの噛み合い部で生じる振動による入力軸のねじり振動の共振点をずらして、ケースに伝達される音圧や振動を低減することが可能となる。即ち、入力軸の一部に小径部を設けるだけの簡易な構造により振動低減を実現できる。例えば、各部(例えば、ロータと第1ギヤ)の軸方向距離を変更することによって振動低減をはかる場合に比べて、容易且つ低コストで振動の低減を実現できる。このように、本構成によれば、入力軸の振動を低減させて当該振動により生じるノイズの低減を図ることができる。
【0008】
車両用駆動装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両用駆動装置(第1車両用駆動装置)の軸方向断面図
図2】車両用駆動装置(第1車両用駆動装置)のスケルトン図
図3】車両用駆動装置(第1車両用駆動装置)の軸方向部分拡大断面図
図4】車両用駆動装置(第2車両用駆動装置)の軸方向断面図
図5】車両用駆動装置(第2車両用駆動装置)のスケルトン図
図6】車両用駆動装置(第2車両用駆動装置)の軸方向部分拡大断面図
図7】比較例の車両用駆動装置の軸方向部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1の軸方向断面図、図2のスケルトン図に示すように、車両用駆動装置100は、回転電機MGと、入力軸INと、一対の出力部材OUTと、カウンタギヤ機構CGと、差動歯車機構DFと、これらを収容するケース1とを備えている。詳細は、後述するが、回転電機MGは、ロータ82、及びロータ82と一体回転するロータ軸84を備えている。入力軸INは、入力ギヤG1(第1ギヤ)を備え、ロータ軸84と一体回転するようにロータ軸84に連結されている。一対の出力部材OUTは、それぞれ車輪Wに駆動連結されている。カウンタギヤ機構CGは、入力ギヤG1に噛み合う第1カウンタギヤG2(第2ギヤ)、第1カウンタギヤG2と一体的に回転する第2カウンタギヤG3(第3ギヤ)、及び第1カウンタギヤG2と第2カウンタギヤG3とを連結するカウンタ連結軸CXを備えている。差動歯車機構DFは、第2カウンタギヤG3に噛み合う差動入力ギヤG4(第4ギヤ)を備え、差動入力ギヤG4の回転を一対の出力部材OUTに分配する。回転電機MGは、一対の車輪Wの駆動力源であり、入力ギヤG1,カウンタギヤ機構CG、差動歯車機構DFは、回転電機MGと出力部材OUTとの間で駆動力を伝達する伝達機構TMである。また、差動歯車機構DFの一対のサイドギヤ(第1サイドギヤS1、第2サイドギヤS2)のそれぞれにおける、出力軸OX又は出力連結軸JTとの連結部が、一対の出力部材OUTに相当する。
【0011】
本実施形態では、車両用駆動装置100は、さらに回転電機MGを駆動制御するインバータ装置INVも備えている。ケース1は、ケース本体2と、ケース本体2に接合されたカバー部材(第1カバー11、第2カバー12、第3カバー13)とを備えている。ケース本体2は、回転電機MGと入力軸INと一対の出力部材OUTとカウンタギヤ機構CGと差動歯車機構DFとを収容する第1収容室5と、インバータ装置INVを収容する第2収容室3とを形成するように一体形成されている。ここで、「一体形成」とは、例えば1つの金型鋳造品(die casting)として、共通の材料により形成された一体部材のことを言う。ケース本体2は、第1収容室5と第2収容室3とを区画する区画壁部4を備えている。即ち、ケース1は、少なくとも回転電機MGを収容する第1収容室5と、インバータ装置INVを収容し第1収容室5とは区画壁部4によって区画された第2収容室3とを内部に有して一体形成されている。また、ケース本体2には、第1軸A1に直交する軸直交方向に延在する支持壁8がケース本体2と一体的に形成されている。
【0012】
図1及び図2に示すように、回転電機MGは、第1軸A1上に配置され、カウンタギヤ機構CGは、第1軸A1に平行な別軸である第2軸A2上に配置され、差動歯車機構DF及び一対の出力部材OUTは、第1軸A1及び第2軸A2に平行な別軸である第3軸A3上に配置されている。第1軸A1、第2軸A2及び第3軸A3は、互いに異なる仮想軸であり、互いに平行に配置されている。
【0013】
以下の説明では、上記の軸(A1~A3)に平行な方向を、車両用駆動装置100の「軸方向L」とする。そして、軸方向Lにおける一方側(本実施形態では、軸方向Lにおける入力ギヤG1に対してロータ82が配置された側)を「軸方向第1側L1」とし、その反対側を「軸方向第2側L2」とする。また、上記の第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3のそれぞれに直交する方向を、各軸を基準とした「径方向R」とする。尚、どの軸を基準とするかを区別する必要がない場合やどの軸を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。また、車両用駆動装置100が車両に取り付けられた状態で鉛直方向に沿う方向を「上下方向V」とする。また、本実施形態では、上下方向Vの一方側である上下方向第1側V1が上方であり、他方側である上下方向第2側V2が下方である。水平面に平行な状態で車両用駆動装置100が車両に取り付けられる場合には、径方向Rの1方向と上下方向Vとが一致する。また、軸方向L及び上下方向Vに直交する方向を「幅方向H」と称する。また、幅方向Hの一方側を幅方向第1側H1、他方側を幅方向第2側H2と称する。上下方向Vと同様に、径方向Rの1方向と幅方向Hとも一致する。尚、以下の説明では、各部材についての方向や位置等に関する用語は、製造上許容され得る誤差による差異を有する状態をも含む概念である。また、各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置100に組み付けられた状態での方向を表す。
【0014】
ケース1に形成された第1収容室5は、回転電機MG、カウンタギヤ機構CG、差動歯車機構DFを囲むように形成された周壁部25を備えている。ケース1における第1収容室5は、上下方向V及び幅方向Hを周壁部25によって囲われており、軸方向Lの両側が開口している。ここで、第1収容室5の軸方向第1側L1の開口部を第1開口部21と称し、第1収容室5の軸方向第2側L2の開口部を第2開口部22と称する。第1開口部21は、周壁部25の軸方向第1側L1の端部に接合される第1カバー11によって塞がれる。第2開口部22は、周壁部25の軸方向第2側L2の端部に接合される第2カバー12によって塞がれる。即ち、第1収容室5は、周壁部25と、第1カバー11と第2カバー12とによって囲まれた空間として形成されている。
【0015】
周壁部25の一部は、第1収容室5と第2収容室3とを区画する区画壁部4として機能する。周壁部25からは、上下方向Vに沿って延びる収容壁30が形成されている。収容壁30の端部は開放されており、第2収容室3からケース1の外部に向かって開口する開口部(第3開口部23)が形成されている。第3開口部23は、収容壁30の端部に接合される第3カバー13によって塞がれる。即ち、第2収容室3は、区画壁部4(周壁部25)と、収容壁30と、第3カバー13とによって囲まれた空間として形成されている。
【0016】
回転電機MGは、複数相の交流(例えば3相交流)により動作する回転電機(Motor/Generator)であり、電動機としても発電機としても機能することができる。回転電機MGは、不図示の直流電源(高圧直流電源)から電力の供給を受けて力行し、又は、車両の慣性力により発電した電力を直流電源に供給する(回生する)。直流電源は、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどにより構成された大電圧大容量の直流電源であり、定格の電源電圧は、例えば200~400ボルトである。
【0017】
回転電機MGは、インバータ装置INVにより駆動制御される。インバータ装置INVは、直流電源及び回転電機MGに接続され、複数のスイッチング素子を有して構成されて、直流電力と複数相の交流電力との間で電力を変換するインバータ回路(不図示)と、インバータ回路を制御するインバータ制御装置(不図示)とを備えている。インバータ回路は、例えば複数の電力用スイッチング素子(IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)など)が一体化されたパワーモジュールとして構成されている。また、インバータ装置INVは、インバータ回路の直流側の電圧を平滑する平滑コンデンサも備えており、上述したようなインバータ制御装置、インバータ回路(パワーモジュール)を含んだユニットとして構成されている。ユニットとしてのインバータ装置INVは、ケース1内部の第2収容室3に配置され、ボルト等の締結部材によってケース1に固定されている。
【0018】
図1に示すように、回転電機MGは、ケース1などに固定されたステータ81と、当該ステータ81の径方向内側に回転自在に支持されたロータ82とを有する。ステータ81は、ステータコアとステータコアに巻き回されたステータコイル83とを含み、ロータ82は、ロータコアとロータコアに配置された永久磁石とを含む。図3に示すように、ロータ軸84の内周面には、スプライン係合部84sが形成されている。また、入力軸INの外周面には、スプライン被係合部72sが形成されている。ロータ軸84と入力軸INとは、スプライン係合部84sとスプライン被係合部72sとがスプライン係合することによって、一体的に回転するように連結されている。入力軸INには入力ギヤG1が形成されており、回転電機MGのロータ82は、ロータ軸84及び入力軸INを介して入力ギヤG1(図1図3参照)に駆動連結されている。
【0019】
入力ギヤG1は、カウンタギヤ機構CGに駆動連結されている。本実施形態では、カウンタギヤ機構CGは、カウンタ連結軸CXによって連結された2つのギヤである第1カウンタギヤG2と第2カウンタギヤG3とを有する。第1カウンタギヤG2は入力ギヤG1に噛み合い、第2カウンタギヤG3は、差動歯車機構DFの差動入力ギヤG4に噛み合っている。差動歯車機構DFは、出力軸OXを介して車輪Wに駆動連結されている。差動歯車機構DFは、互いに噛合する複数の傘歯車を含んで構成されている。本実施形態では、軸方向第1側L1の第1サイドギヤS1が出力連結軸JTを介して一方の出力軸OXに連結され、軸方向第2側L2の第2サイドギヤS2が他方の出力軸OXに連結される。差動入力ギヤG4に入力される回転及びトルクは、それぞれ第1サイドギヤS1及び第2サイドギヤを介して2つの出力軸OX(即ち2つの車輪W)に分配して伝達される。これにより、車両用駆動装置100は、回転電機MGのトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。
【0020】
入力軸INは、入力軸受B1により回転可能に支持されている。ロータ軸84は、ロータ軸受B2により回転可能に支持されている。入力軸受B1は、第1入力軸受B1aと第2入力軸受B1bとを含む。ロータ軸受B2は、第1ロータ軸受B2aと第2ロータ軸受B2bとを含む。本実施形態では、第1ロータ軸受B2aは、ロータ82に対して軸方向第1側L1に配置され、第1カバー11に支持されている。第2ロータ軸受B2bは、ロータ82に対して軸方向第2側L2に配置され、支持壁8に支持されている。第1入力軸受B1aは、入力ギヤG1に対して軸方向第1側L1に配置され、支持壁8に支持されている。第2入力軸受B1bは、入力ギヤG1に対して軸方向第2側L2に配置され、第2カバー12に支持されている。第1入力軸受B1a及び第2ロータ軸受B2bを共に支持する支持壁8は、軸受支持部18に相当する。尚、図1に示すように、上下方向Vに延在する区画壁部4も第1入力軸受B1a及び第2ロータ軸受B2bを共に支持しており、区画壁部4の一部も軸受支持部18に相当する(図3参照)。図1及び図3に示すように、第1入力軸受B1a(第1軸受)が、ケース1が備える軸受支持部18によって支持され、第2ロータ軸受B2b(第2軸受)が、第1入力軸受B1aと同じ軸受支持部18によって支持されている。第1入力軸受B1a(第1軸受)と第2ロータ軸受B2b(第2軸受)とは、軸方向Lに沿って隣接して配置されている。
【0021】
上述したように、入力軸INは、軸方向第1側L1において、第1入力軸受B1aを介して支持壁8に回転可能に支持されると共に、軸方向第2側L2において、第2入力軸受B1bを介して第2カバー12に回転可能に支持されている。同様に、カウンタギヤ機構CGも、第1カウンタギヤG2及び第2カウンタギヤG3に対して軸方向第1側L1において、軸受を介して支持壁8に回転可能に支持されると共に、第1カウンタギヤG2及び第2カウンタギヤG3に対して軸方向第2側において、軸受を介して第2カバー12に回転可能に支持されている(図面における軸受の符号は省略している。差動歯車機構DFについても同様。)。また、差動歯車機構DFも、差動歯車ケースDFCに内蔵された歯車機構部DFGに対して軸方向第1側L1において、軸受を介して支持壁8に回転可能に支持されると共に、歯車機構部DFGに対して軸方向第2側において、軸受を介して第2カバー12に回転可能に支持されている。このように、第1収容室5に支持壁8を備えることで、ケース1が大型化することを抑制しつつ、第1収容室5内に適切に回転電機MGや伝達機構TMが収容されている。
【0022】
上述したように、ケース本体2は、第1収容室5と第2収容室3とを形成するように一体形成されている。例えば、第1収容室5が形成されたケース部材の外部に、インバータ装置INVを収容する別のケース部材が載置された直載構造の車両用駆動装置の場合、インバータ装置INVを収容するケース部材の底壁が振動し、空間共鳴によるノイズが生じ易い。しかし、本実施形態のように、第2収容室3が第1収容室5と一体的に1つのケース1(ケース本体2)として形成されていると、第2収容室3には底壁を設けなくてもよい。このため、このような底壁が振動して、空間共鳴によるノイズが生じることが抑制できる。
【0023】
また、ケース本体2が、第1収容室5と第2収容室3とを形成するように一体形成されていると、別体で形成された第1収容室5と第2収容室3とが組み付けられてケース1が構成される場合に比べて、ケース1に高い剛性を持たせることができる。また、2つの収容室が別体で形成される場合に比べて、第1収容室5と第2収容室3とを区画する区画壁部4が共通化できるため、ケース1を軽量化することができる。
【0024】
さらに、本実施形態では、入力軸INの形状により、入力軸のねじり振動を低減させて当該振動により生じるノイズの低減を図っている。以下、入力軸INの特徴的な構造について説明する。
【0025】
上述したように、入力軸INは、入力軸受B1によって回転可能に支持されると共に、入力ギヤG1を備えて、ロータ軸84と一体回転するようにロータ軸84に連結されている。図3に示すように、入力軸INは、第1入力軸受B1a(第1軸受)によって支持される第1支持部71と、ロータ軸84に連結された連結部72とを備えている。第1支持部71は、入力ギヤG1よりも軸方向第1側L1に配置された第1入力軸受B1aを介して、入力軸INがケース1に支持される部分である。連結部72は、第1支持部71より軸方向第1側L1に設けられてロータ軸84に連結された部分である。そして、軸方向Lにおける第1支持部71と連結部72との間には、第1支持部71の外径r71及び連結部72の外径(例えば後述する“r72vやr72c”)よりも小径に形成された小径部73が設けられている。即ち、小径部73の径r73は、第1支持部71の外径r71及び連結部72の外径(r72v又はr72c)よりも小さい。尚、小径部73の径r73は、第1支持部71の外径r71の3分の2以下であると入力軸INの剛性を効果的に低下させることができて好適である。
【0026】
入力軸INの第1支持部71と連結部72との間に小径部73を備えることにより、ロータ82から入力ギヤG1へのトルク伝達部位の剛性を部分的に低下させる調整を行うことができる。これにより、複数のギヤの噛み合い部で生じる振動による入力軸INのねじり振動の共振点をずらして、ケース1に伝達される音圧や振動を低減することが可能となる。即ち、入力軸INの一部に小径部73を設けるだけの簡易な構造により振動低減を実現できる。例えば、入力軸INの全体的な太さを変更したり各部(例えば、ロータ82と入力ギヤG1)の軸方向距離を変更したりすることによって振動低減をはかる場合に比べて、容易且つ低コストで振動の低減を実現できる。
【0027】
図7は、比較例の車両用駆動装置100Zの軸方向部分拡大断面図を示している。この比較例に示すように、一般的には、本実施形態において小径部73が形成される箇所(対応箇所73Z)の径は、第1支持部71及び連結部72とほぼ同じである。本実施形態では、小径部73を設けることによって、入力軸INのねじり振動を低減させて当該振動により生じるノイズの低減を図ることができている。
【0028】
上述したように、ロータ軸84は、第1ロータ軸受B2a及び第2ロータ軸受B2bによって回転可能に支持されており、第2ロータ軸受B2bは、第1入力軸受B1aと共に軸受支持部18に支持されている。図1及び図3に示すように、第2ロータ軸受B2bは、ロータ82よりも軸方向第2側L2であって、第1入力軸受B1a(第1軸受)よりも軸方向第1側L1に配置されている。つまり、第2ロータ軸受B2bは、軸方向Lにおいてロータ82と第1入力軸受B1aとの間に配置されている。ロータ軸84において、第2ロータ軸受B2bによってケース1に支持される部分をロータ軸支持部84aと称する。即ち、ロータ軸84は、ロータ軸支持部84aを備えている。そして、図1及び図3に示すように、入力軸INの小径部73は、入力軸INの径方向Rに沿う径方向視で、ロータ軸支持部84aと重複するように配置されている。
【0029】
小径部73が、例えばロータ軸支持部84aよりも軸方向第2側L2に位置していると、当該小径部73の配置領域の分、入力軸INの軸方向Lの寸法が長くなる可能性がある。しかし、小径部73とロータ軸支持部84aとが径方向視で重複していることで、小径部73を設けたことによる車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法の大型化を抑制できる。
【0030】
ところで、上述したように、本実施形態では、第2ロータ軸受B2bが、第1入力軸受B1aと同じ軸受支持部18によって支持されている。第1入力軸受B1aと第2ロータ軸受B2bとが同じ軸受支持部18によって支持されているため、回転電機MGから入力軸INへの振動がケース1に伝達され易い。しかし、本実施形態のように小径部73を設けることにより、そのような振動の伝達が抑制される。つまり、小型化を実現するために、第1入力軸受B1aと第2ロータ軸受B2bとが同じ軸受支持部18によって支持されているような構造において、軸方向Lの寸法の大型化を抑制しつつ、ケース1への振動の伝達が軽減されるので、入力軸INに小径部73を設けることは効果的である。
【0031】
ところで、本実施形態では、上述したように、ロータ軸84と入力軸INとは、スプライン係合することによって連結され、一体的に回転する。つまり、ロータ軸84の内周面にスプライン係合部84sが形成され、連結部72の外周面にスプライン被係合部72sが形成され、両者がスプライン係合する構成となっている。小径部73は、スプライン被係合部72sの凸部の頂点を結ぶ仮想円の径r72vよりも小径に形成されている。これにより、小径部73を適切に形成して、小径部73の剛性を、入力軸INにおける他の部分に比べて低下させることができる。本実施形態では、小径部73の径r73は、凹部の底を結ぶ仮想円の径と同等とされている。なお、小径部73の径r73は、スプライン被係合部72sの凸部の頂点を結ぶ仮想円の径r72vよりも小径であればよく、スプライン被係合部72sの凹部の底を結ぶ仮想円の径r72cより大きくてもよい。一方、小径部73の径r73を、スプライン被係合部72sの凹部の底を結ぶ仮想円の径r72c以下にした場合、スプライン被係合部72sと軸方向Lに隣接する小径部73を利用して、スプライン被係合部72sの加工を容易に行うことができる。
【0032】
図4から図6は、車両用駆動装置100の別の実施形態(第2車両用駆動装置100B)を例示している。以下、図1から図3を参照して上述した車両用駆動装置100を第2車両用駆動装置100Bと区別する場合には、第1車両用駆動装置100Aと称する。以下、第2車両用駆動装置100Bについて説明するが、第1車両用駆動装置100Aと同様の部分については、同じ参照符号を付して説明する。
【0033】
第2車両用駆動装置100Bも、ロータ82及びロータ82と一体回転するロータ軸84を備えた回転電機MGと、入力ギヤG1(第1ギヤ)を備え、ロータ軸84と一体回転するように連結された入力軸INと、それぞれ車輪Wに駆動連結される一対の出力部材OUTと入力ギヤG1に噛み合う第1カウンタギヤG2(第2ギヤ)、第1カウンタギヤG2と一体的に回転する第2カウンタギヤG3(第3ギヤ)、及び第1カウンタギヤG2と第2カウンタギヤG3とを連結するカウンタ連結軸CX(連結軸)を備えたカウンタギヤ機構CGと、第2カウンタギヤG3に噛み合う差動入力ギヤG4(第4ギヤ)を備え、差動入力ギヤG4の回転を一対の出力部材OUTに分配する差動歯車機構DFと、回転電機MG、入力軸IN、カウンタギヤ機構CG、及び差動歯車機構DFを収容するケース1とを備えている。軸方向L、径方向R等に関する定義は、図1から図3を参照して上述した形態と同様である。第2車両用駆動装置100Bにおいても、入力軸INは、入力ギヤG1よりも軸方向第1側L1に配置された第1入力軸受B1aを介してケース1に支持された第1支持部71と、第1支持部71よりも軸方向第1側L1に設けられてロータ軸84に連結された連結部72と、軸方向Lにおける第1支持部71と連結部72との間に設けられ、第1支持部71の外径r71及び連結部72の外径(ここでは“r72c”よりも小径(r73)に形成された小径部73とを備えている。
【0034】
また、第2車両用駆動装置100Bにおいても、ロータ軸84が、ロータ82よりも軸方向第2側L2であって、第1入力軸受B1aよりも軸方向第1側L1に配置された第2ロータ軸受B2bを介してケース1に支持されたロータ軸支持部84aを備えている。小径部73は、前記入力軸INの径方向Rに沿う径方向視で、ロータ軸支持部84aと重複するように配置されている。
【0035】
また、第2車両用駆動装置100Bにおいても、第1入力軸受B1aは、ケース1が備える軸受支持部18によって支持されている。また、第2ロータ軸受B2bも、第1入力軸受B1aと同じ軸受支持部18によって支持されている。
【0036】
また、第2車両用駆動装置100Bにおいても、ロータ軸84と入力軸INとは、スプライン係合することによって連結され、一体的に回転する。つまり、ロータ軸84の内周面にスプライン係合部84sが形成され、連結部72の外周面にスプライン被係合部72sが形成され、両者がスプライン係合する構成となっている。そして、第1車両用駆動装置100Aと同様に、第2車両用駆動装置100Bにおいても、小径部73は、スプライン被係合部72sの凸部の頂点を結ぶ仮想円の径r72vよりも小径に形成されている。第1車両用駆動装置100Aでは、小径部73の径r73は、凹部の底を結ぶ仮想円の径と同等であるが、第2車両用駆動装置100Bでは、小径部73の径r73が、スプライン被係合部72sの凹部の底を結ぶ仮想円の径r72c以下となるように、小径部73が形成されている。この場合、例えば、スプライン被係合部72sと軸方向Lに隣接する小径部73を利用して、スプライン被係合部72sの加工を容易に行うことができる。尚、上述したように、小径部73の径r73は、第1支持部71の外径r71の3分の2以下であると入力軸INの剛性を効果的に低下させることができて好適である。
【0037】
また、第1車両用駆動装置100A及び第2車両用駆動装置100Bに共通して、車両用駆動装置100は、入力軸INには、軸方向Lにおいて第1入力軸受B1aの位置決めを行う第1軸受位置決め部77が形成される。このため、第1支持部71と入力ギヤG1との間における入力軸INの径r75は、部分的又は全体的に第1支持部71の外径r71に比べて大径となる。一方、第1支持部71と連結部72との間における入力軸INの外径は、第1支持部71の外径r71と同じ、もしくは小径とすることが可能である。従って、小径部73は、入力軸INの外径が太くなる箇所ではなく、相対的に小径に形成可能な第1支持部71と連結部72との間に設けられると好適である。
【0038】
ここで、入力軸INにおいて小径部73を設ける箇所と、ねじり振動が低減される効果との関係について補足する。
【0039】
第1車両用駆動装置100A及び第2車両用駆動装置100Bに共通して、小径部73は、第1支持部71と連結部72との間に設けられている。例えば、第1支持部71と入力ギヤG1とが軸方向Lにおいてほぼ隣接している第1車両用駆動装置100Aの場合には、入力ギヤG1よりも軸方向第2側L2に小径部73を形成することもできる。また、入力ギヤG1が軸方向第2側L2に配置され、第1支持部71と入力ギヤG1との間が長い第2車両用駆動装置100Bの場合には、第1支持部71と入力ギヤG1との間の軸部75に小径部73を形成することもできる。
【0040】
例えば、第1車両用駆動装置100Aにおいて、入力ギヤG1よりも軸方向第2側L2に小径部73を形成した場合、トルク伝達経路(入力ギヤG1から第1カウンタギヤG2へのトルク伝達経路)から外れた位置に小径部73が設けられることになる。つまり、入力軸INにねじり振動を生じさせる箇所とは異なる位置に小径部73が設けられるため、入力軸INのねじり振動を低減させて当該振動により生じるノイズの低減を図る効果は小さい。尚、この場合は、入力軸INにおいて曲げ応力が作用し易い箇所(入力軸INにおいて一対の入力軸受B1の間に位置する部分)に小径部73を設けることによって、ねじり振動よりも周波数が高い高周波振動の低減効果は大きい。
【0041】
また、例えば、第2車両用駆動装置100Bにおいて、第1支持部71と入力ギヤG1との間に小径部73を形成した場合、ねじり応力は第1支持部71において一部緩和される。このため、入力軸INのねじり振動を低減させて当該振動により生じるノイズの低減を図る効果は、第1車両用駆動装置100Aにおいて入力ギヤG1よりも軸方向第2側L2に小径部73を形成した場合よりは大きいが、小径部73が第1支持部71と連結部72との間に設けられる場合に比べて小さくなる。
【0042】
このように、第1車両用駆動装置100A及び第2車両用駆動装置100Bの双方に共通して、小径部73は、第1支持部71と連結部72との間に設けられることが好ましい。
【0043】
上述したように、入力軸INに小径部73を設けて入力軸INの剛性を低下させることによって、車両用駆動装置100が大型化したり、コストが増加したりすることなく、振動の伝達を軽減させることができる。
【0044】
〔その他の実施形態〕
以下、その他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0045】
(1)上記においては、入力軸INの小径部73が、入力軸INの径方向Rに沿う径方向視で、ロータ軸支持部84aと重複するように配置されている形態を例示した。しかし、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法に余裕がある場合などでは、径方向視で小径部73とロータ軸支持部84aとが重複していなくてもよい。
【0046】
(2)上記においては、第1入力軸受B1aと第2ロータ軸受B2bとが同じ軸受支持部18によって支持されている形態を例示した。しかし、第1入力軸受B1aと第2ロータ軸受B2bとは、それぞれ異なる支持部に支持されていてもよい。
【0047】
(3)上記においては、入力軸INとロータ軸84との連結が、スプライン係合によって行われる形態を例示した。しかし、これには限定されず、入力軸INとロータ軸84との連結は、例えば、キーとキー溝等、他の構成を用いて連結してもよい。入力軸INとロータ軸84とが相対回転しないように連結されればよい。
【0048】
(4)上記においては、区画壁部4によって第1収容室5と第2収容室3とが区画されている形態を例示した。しかし、ケース本体2が第1収容室5と第2収容室3とを形成するように一体形成されていれば、ケース本体2に区画壁部4が備えられていなくてもよい。
【0049】
(5)上記においては、車輪Wの駆動力源として回転電機MGを備えた車両用駆動装置100を例示して説明したが、車両用駆動装置100は、車両の車輪Wの駆動力源として内燃機関及び回転電機MGの双方を備えたハイブリッド駆動装置(例えば、いわゆる1モータパラレル方式や2モータスプリット式等の各種形式のハイブリッド駆動装置)であってもよい。
【0050】
(6)上記においては、第1軸A1、第2軸A2、第3軸A3の3軸が平行に配置された3軸の車両用駆動装置100を例示して説明したが、車両用駆動装置100は、第1軸A1、第2軸A2の2軸が平行に配置された2軸であってもよい。また、車両用駆動装置100は、第1軸A1、第2軸A2、第3軸A3とは異なる1つの軸以上がさらに配置され、4軸以上が配置された構成であってもよい。またこれらの場合において、一部の軸が他の軸に対して平行ではない方向に沿って配置されていても良い。
【0051】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置(100)の概要について簡単に説明する。
【0052】
1つの態様として、車両用駆動装置(100)は、ロータ(82)及び前記ロータ(82)と一体回転するロータ軸(84)を備えた回転電機(MG)と、第1ギヤ(G1)を備え、前記ロータ軸(84)と一体回転するように連結された入力軸(IN)と、それぞれ車輪(W)に駆動連結される一対の出力部材(OUT)と、前記第1ギヤ(G1)に噛み合う第2ギヤ(G2)、前記第2ギヤ(G2)と一体的に回転する第3ギヤ(G3)、及び前記第2ギヤ(G2)と前記第3ギヤ(G3)とを連結する連結軸(CX)を備えたカウンタギヤ機構(CG)と、前記第3ギヤ(G3)に噛み合う第4ギヤ(G4)を備え、前記第4ギヤ(G4)の回転を一対の前記出力部材(OUT)に分配する差動歯車機構(DF)と、前記回転電機(MG)、前記入力軸(IN)、前記カウンタギヤ機構(CG)、及び前記差動歯車機構(DF)を収容するケース(1)と、を備え、前記ロータ(82)の回転軸に沿う方向を軸方向(L)とし、前記軸方向(L)における前記第1ギヤ(G1)に対して前記ロータ(82)が配置された側を軸方向第1側(L1)とし、その反対側を軸方向第2側(L2)として、前記入力軸(IN)は、前記第1ギヤ(G1)よりも前記軸方向第1側(L1)に配置された第1軸受(B1a)を介して前記ケース(1)に支持された第1支持部(71)と、前記第1支持部(71)よりも前記軸方向第1側(L1)に設けられて前記ロータ軸(84)に連結された連結部(72)と、前記軸方向(L)における前記第1支持部(71)と前記連結部(72)との間に設けられ、前記第1支持部(71)の外径(r71)及び前記連結部(72)の外径よりも小径(r73)に形成された小径部(73)と、を備えている、車両用駆動装置。
【0053】
この構成によれば、入力軸(IN)の第1支持部(71)と連結部(72)との間に小径部(73)を備えることにより、ロータ(82)から第1ギヤ(G1)へのトルク伝達部位の剛性を部分的に低下させる調整を行うことができる。これにより、複数のギヤの噛み合い部で生じる振動による入力軸(IN)のねじり振動の共振点をずらして、ケース(1)に伝達される音圧や振動を低減することが可能となる。即ち、入力軸(IN)の一部に小径部(73)を設けるだけの簡易な構造により振動低減を実現できる。例えば、各部(例えば、ロータ(82)と第1ギヤ(G1))の軸方向(L)の距離を変更することによって振動低減をはかる場合に比べて、容易且つ低コストで振動の低減を実現できる。このように、本構成によれば、入力軸(IN)の振動を低減させて当該振動により生じるノイズの低減を図ることができる。
【0054】
また、車両用駆動装置(100)は、前記ロータ軸(84)が、前記ロータ(82)よりも前記軸方向第2側(L2)であって、前記第1軸受(B1a)よりも前記軸方向第1側(L1)に配置された第2軸受(B2b)を介して前記ケース(1)に支持されたロータ軸支持部(84a)を備え、前記小径部(73)は、前記入力軸(IN)の径方向(R)に沿う径方向視で、前記ロータ軸支持部(84a)と重複するように配置されていると好適である。
【0055】
小径部(73)が、例えばロータ軸支持部(84a)よりも軸方向第2側(L2)に位置していると、当該小径部(73)の配置領域の分、入力軸(IN)の軸方向(L)の寸法が長くなる可能性がある。しかし、小径部(73)とロータ軸支持部(84a)とが径方向視で重複していることで、小径部(73)を設けたことによる車両用駆動装置(100)の軸方向(L)の寸法が大型化することを抑制できる。
【0056】
また、車両用駆動装置(100)は、前記第1軸受(B1a)が、前記ケース(1)が備える軸受支持部(18)によって支持され、前記第2軸受(B2b)が、前記第1軸受(B1a)と同じ前記軸受支持部(18)によって支持されていると好適である。
【0057】
第1入力軸受(B1a)と第2ロータ軸受(B2b)とが同じ軸受支持部(18)によって支持されているため、回転電機(MG)から入力軸(IN)への振動がケース(1)に伝達され易い。しかし、上述したように小径部(73)を設けることにより、そのような振動の伝達が抑制される。つまり、小型化を実現するために、第1入力軸受(B1a)と第2ロータ軸受(B2b)とが同じ軸受支持部(18)によって支持されているような構造においても、入力軸(IN)に小径部(73)を設けることによって、軸方向(L)の寸法が大型化することを抑制しつつ、効果的にケース(1)への振動の伝達が軽減される。
【0058】
また、車両用駆動装置(100)は、前記ロータ軸(84)の内周面にスプライン係合部(84s)が形成され、
前記連結部(72)の外周面にスプライン被係合部(72s)が形成され、
前記小径部(73)は、前記スプライン被係合部(72s)の凸部の頂点を結ぶ仮想円の径(r72v)よりも小径に形成されていると好適である。
【0059】
この構成により、小径部(73)を適切に形成して、小径部(73)の剛性を、入力軸(IN)における他の部分に比べて低下させることができる。尚、小径部(73)の径(r73)は、スプライン被係合部(72s)の凸部の頂点を結ぶ仮想円の径(r72v)よりも小径であればよく、スプライン被係合部(72s)の凹部の底を結ぶ仮想円の径(r72c)より大きくてもよい。
【0060】
また、車両用駆動装置(100)は、前記ロータ軸(84)の内周面にスプライン係合部(84s)が形成され、前記連結部(72)の外周面にスプライン被係合部(72s)が形成され、前記小径部(73)は、前記スプライン被係合部(72s)の凹部を結ぶ仮想円の径(r72c)よりも小径に形成されていると好適である。
【0061】
この構成においても、小径部(73)を適切に形成して、小径部(73)の剛性を、入力軸(IN)における他の部分に比べて低下させることができる。小径部(73)の径(r73)を、スプライン被係合部(72s)の凹部の底を結ぶ仮想円の径以下にした場合、スプライン被係合部(72s)と軸方向(L)に隣接する小径部(73)を利用して、スプライン被係合部(72s)の加工を容易に行うことができる。
【0062】
また、車両用駆動装置(100)は、前記入力軸(IN)が、前記第1軸受(B1a)よりも前記軸方向第2側(L2)に第1軸受位置決め部(77)を有すると好適である。
【0063】
入力軸(IN)には、軸方向(L)において第1軸受(B1a)の位置決めを行う第1軸受位置決め部(77)が形成される。このため、第1支持部(71)と第1ギヤ(G1)との間における入力軸(IN)の径(r75)は、部分的又は全体的に第1支持部(71)の外径(r71)に比べて大径となる。第1支持部(71)と連結部(72)との間における入力軸(IN)の外径は、第1支持部(71)の外径(r71)と同じ、もしくは小径とすることが可能である。従って、小径部(73)は、入力軸(IN)の外径が太くなる箇所ではなく、相対的に小径に形成可能な第1支持部(71)と連結部(72)との間に設けられると好適である。
【符号の説明】
【0064】
1:ケース、18:軸受支持部、71:第1支持部、72:連結部、72s:スプライン被係合部、73:小径部、77:第1軸受位置決め部、82:ロータ、84:ロータ軸、84a:ロータ軸支持部、84s:スプライン係合部、100:車両用駆動装置、B1a:第1入力軸受(第1軸受)、B2b:第2ロータ軸受(第2軸受)、CG:カウンタギヤ機構、CX:カウンタ連結軸(連結軸)、DF:差動歯車機構、G1:入力ギヤ(第1ギヤ)、G2:第1カウンタギヤ(第2ギヤ)、G3:第2カウンタギヤ(第3ギヤ)、G4:差動入力ギヤ(第4ギヤ)、IN:入力軸、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、MG:回転電機、OUT:出力部材、R:径方向、W:車輪、r71:第1支持部の外径、r72c:スプライン被係合部の凹部の底を結ぶ仮想円の径、r72v:スプライン被係合部の凸部の頂点を結ぶ仮想円の径、r73:小径部の径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7