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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】超音波モータ
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/12 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
H02N2/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023514553
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2022014301
(87)【国際公開番号】W WO2022220059
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2021066982
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 宏志
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/066467(WO,A1)
【文献】特開2004-48932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向し合う第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面及び前記第2の主面が対向し合う方向に貫通している貫通孔と、を含む板状の振動体と、前記振動体の前記第1の主面上に設けられている複数の圧電素子と、を有するステータと、
前記振動体の前記第2の主面に接触しているロータと、
前記振動体の前記第1の主面側に配置されている本体部と、前記本体部から前記振動体側に延びている回り止め部と、を有するステータ固定部材と、
を備え、
前記ステータ固定部材の前記回り止め部及び前記ステータの前記貫通孔が、平面視において多角形状の形状を有し、前記回り止め部及び前記貫通孔の頂点の個数が同じであり、前記回り止め部と前記貫通孔とが嵌合しており、
前記振動体が円板状であり、
前記振動体の厚み方向に変位する振動モードであって、周回方向に延びる節線の本数をmとし、径方向に延びる節線の本数をnとしたときに、前記周回方向に延びる節線及び前記径方向に延びる節線の本数を前記m及び前記nにより表わされた振動モードがB(m,n)モードであり、前記振動体が前記B(m,n)モードにより振動し、
前記nが自然数であり、前記ステータ固定部材の前記回り止め部及び前記ステータの前記貫通孔の、平面視における正多角形状の形状における前記頂点の個数をa個としたときに、a≠nであり、
平面視において、前記ステータの前記貫通孔の形状が線対称となる対称軸と、前記振動体の前記第1の主面上における前記複数の圧電素子の配置が線対称となる対称軸とが一致しないように、前記貫通孔が設けられている、超音波モータ。
【請求項2】
前記ステータ固定部材の前記本体部が、前記振動体側に突出している突出部を有し、
前記突出部に前記回り止め部が連ねられており、
平面視において、前記突出部が前記回り止め部を囲んでいる、請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記突出部が、平面視において円状の形状を有する、請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記ステータ固定部材の前記回り止め部の前記頂点の個数、及び前記ステータの前記貫通孔の前記頂点の個数が、5個または7個である、請求項1~のいずれか1項に記載の超音波モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子によりステータを振動させる超音波モータが種々提案されている。下記の特許文献1には、超音波モータの一例が開示されている。この超音波モータにおいては、振動体において発生した定在波により、移動体を回転させる。振動体の一方主面側に移動体が配置されており、他方主面側に振動体固定具が配置されている。振動体には、移動体の回転軸を挿通させるための小孔が設けられている。振動体固定具は、小孔の周囲及び振動体の振動の節において、振動体の上記主面を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-248273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振動体は、移動体、すなわちロータを回転させるために力を作用させるときに、ロータ側から反力を受ける。そのため、反力により振動体が回転することを防ぐために、振動体を強固に固定することが必要となる。特許文献1に記載の超音波モータにおいては、小孔の周囲においても振動体を固定している。振動体における小孔の周囲の部分は振動するため、このような部分を強固に固定すると、振動体の振動を阻害することとなる。よって、超音波モータの特性が低下することがある。
【0005】
本発明の目的は、振動体を効果的に固定することができ、かつ振動体の振動を阻害し難い、超音波モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る超音波モータは、対向し合う第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面及び前記第2の主面が対向し合う方向に貫通している貫通孔とを含む板状の振動体と、前記振動体の前記第1の主面上に設けられている圧電素子とを有するステータと、前記振動体の前記第2の主面に接触しているロータと、前記振動体の前記第1の主面側に配置されている本体部と、前記本体部から前記振動体側に延びている回り止め部とを有するステータ固定部材とを備え、前記ステータ固定部材の前記回り止め部及び前記ステータの前記貫通孔が、平面視において多角形状を有し、前記回り止め部及び前記貫通孔の頂点の個数が同じであり、前記回り止め部と前記貫通孔とが嵌合している。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る超音波モータによれば、振動体を効果的に固定することができ、かつ振動体の振動を阻害し難い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波モータの正面断面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る超音波モータの分解斜視図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態におけるステータ固定部材の回り止め部及び第1の突出部付近を示す平面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態における振動体の貫通孔、及びステータ固定部材の回り止め部付近を示す平面図である。
図5図5は、本発明の第1の実施形態におけるステータの底面図である。
図6図6は、本発明の第1の実施形態における第1の圧電素子の正面断面図である。
図7図7は、各振動モードを説明するための模式図である。
図8図8(a)~図8(c)は、第1の実施形態において励振される進行波を説明するための、ステータの模式的底面図である。
図9図9は、本発明の第1の実施形態のステータにおける、貫通孔の形状と圧電素子の位置との関係を説明するための底面図である。
図10図10は、本発明の第2の実施形態のステータにおける、貫通孔の形状と圧電素子の位置との関係を説明するための底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0010】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波モータの正面断面図である。図2は、第1の実施形態に係る超音波モータの分解斜視図である。
【0012】
図1に示すように、超音波モータ1は、ステータ2と、ロータ4と、ケース5と、軸部材10とを有する。ケース5はステータ2及びロータ4を収納している。なお、ケース5は、第1のケース部材としてのステータ固定部材6、及び第2のケース部材としてのキャップ部材18により構成されている。ステータ2とロータ4とは接触している。ステータ2において生じた進行波により、ロータ4が回転する。一方で、軸部材10は、ステータ2及びロータ4に挿通されており、ケース5の外側に至っている。ロータ4の回転に伴い、軸部材10が回転する。もっとも、ロータ4が軸部材10を含んでいてもよい。以下において、超音波モータ1の具体的な構成を説明する。
【0013】
図2に示すように、ステータ2は振動体3を有する。振動体3は円板状である。振動体3は第1の主面3a及び第2の主面3bを有する。第1の主面3a及び第2の主面3bは互いに対向している。本明細書において、軸方向Zとは、第1の主面3a及び第2の主面3bを結ぶ方向であって、回転中心軸に沿う方向をいう。軸部材10は、軸方向Zと平行に延びている。本明細書においては、軸方向Zから見る方向を、平面視または底面視と記載することがある。なお、平面視は、図1における上方から見る方向であり、底面視は、下方から見る方向である。例えば、振動体3の第2の主面3b側から第1の主面3a側に見る方向が平面視であり、第1の主面3a側から第2の主面3b側に見る方向が底面視である。
【0014】
振動体3の中央部には貫通孔3cが設けられている。振動体3は、貫通孔3cに面する内側面3dを有する。平面視において、貫通孔3cは正五角形状である。すなわち、貫通孔3cの平面視における形状は正五角形である。もっとも、貫通孔3cの位置及び形状は上記に限定されない。貫通孔3cは、軸方向中心を含む領域に位置していればよい。平面視における貫通孔3cの形状は、例えば、五角形以外の多角形であってもよい。貫通孔3cは、平面視において正多角形状であることが好ましい。さらに、振動体3の形状は円板状には限定されない。平面視における振動体3の形状は、例えば、正六角形、正八角形または正十角形などの正多角形であってもよい。振動体3は適宜の金属からなる。なお、振動体3は必ずしも金属からなっていなくともよい。振動体3は、例えば、セラミックス、シリコン材料または合成樹脂などの他の弾性体により構成されていてもよい。
【0015】
図1に示すように、振動体3の第1の主面3aには、複数の圧電素子が設けられている。複数の圧電素子によって振動体3を振動させることにより、進行波を発生させる。
【0016】
振動体3の第2の主面3bにロータ4が接触している。ロータ4は円板状である。ロータ4の中央部には貫通孔4cが設けられている。もっとも、貫通孔4cの位置は上記に限定されない。貫通孔4cは、軸方向中心を含む領域に位置していればよい。さらに、ロータ4の形状は上記に限定されない。ロータ4の形状は、平面視において、例えば、正六角形、正八角形または正十角形などの正多角形であってもよい。
【0017】
図2に示すように、ステータ固定部材6は、本実施形態ではフランジである。ステータ固定部材6は、本体部7と、回り止め部8とを有する。平面視において、本体部7は円状の形状を有する。本体部7は、振動体3の第1の主面3a側に配置されている。本体部7の中央部には第1の突出部7aが設けられている。第1の突出部7aは、本体部7の主面と直交する方向に延びている。より具体的には、第1の突出部7aは、ケース5の内側に突出している。なお、第1の突出部7aは必ずしも設けられていなくともよい。
【0018】
第1の突出部7aに回り止め部8が連ねられている。第1の突出部7aから、回り止め部8が、振動体3側に向かい延びている。本実施形態では、回り止め部8は第1の突出部7aと一体として設けられている。回り止め部8は、振動体3の貫通孔3cに挿通されている。なお、回り止め部8は、ステータ2の振動体3を固定し、振動体3の回転を抑制する部分である。
【0019】
図3は、第1の実施形態におけるステータ固定部材の回り止め部及び第1の突出部付近を示す平面図である。図4は、第1の実施形態における振動体の貫通孔、及びステータ固定部材の回り止め部付近を示す平面図である。なお、図4においては、回り止め部8を一点鎖線により示す。
【0020】
図3に示すように、第1の突出部7aは、平面視において円状の形状を有する。より具体的には、第1の突出部7aは円筒状の形状を有する。第1の突出部7aは、平面視において回り止め部8を囲んでいる。もっとも、第1の突出部7aの形状は上記に限定されない。
【0021】
図4に示すように、回り止め部8は、平面視において正五角形状である。よって、回り止め部8及びステータ2の貫通孔3cの、平面視における多角形状の頂点の個数は同じである。平面視における回り止め部8の形状は、貫通孔3cの形状に応じて、五角形以外の多角形であってもよい。回り止め部8は、平面視において正多角形状であることが好ましい。回り止め部8は外側面8aを含む。外側面8aは、ステータ2における振動体3の内側面3dに当接している。より具体的には、回り止め部8と貫通孔3cとが嵌合している。
【0022】
回り止め部8には貫通孔8cが設けられている。平面視において、貫通孔8cは円状の形状を有する。図1に示すように、回り止め部8及び第1の突出部7aには、連続した1つの貫通孔が設けられている。貫通孔8cは該貫通孔の一部である。上記連続した1つの貫通孔、ステータ2の貫通孔3c及びロータ4の貫通孔4cに、軸部材10が挿通されている。なお、軸方向Zと直交する方向から見たときに、ステータ2の貫通孔3cは、回り止め部8の貫通孔8cと重なっている。
【0023】
ステータ固定部材6の材料としては、例えば、樹脂、金属またはセラミックスを用いることができる。ステータ固定部材6及びステータ2が互いに、電気的に絶縁していることが望ましい。
【0024】
本実施形態の特徴は、回り止め部8及びステータ2の貫通孔3cが、平面視において多角形状を有し、回り止め部8及び貫通孔3cの頂点の個数が同じであり、回り止め部8と貫通孔3cとが嵌合していることにある。それによって、ステータ2の振動体3を効果的に固定することができる。さらに、ステータ固定部材6において、回り止め部8以外の部分においては振動体3を強固に固定していないため、振動体3の振動を阻害し難い。
【0025】
以下において、本実施形態の構成をさらに詳細に説明する。
【0026】
図1に示すように、ステータ固定部材6は第2の突出部7bを有する。第2の突出部7bは、本体部7から、ケース5の外側に向かい突出している。第2の突出部7bは円筒状の形状を有する。第2の突出部7b、第1の突出部7a及び回り止め部8に、連続した1つの貫通孔が設けられている。第2の突出部7bの内径は、第1の突出部7aの内径及び回り止め部8の内径よりも大きい。第2の突出部7b内に、第1の軸受け部19Aが設けられている。軸部材10は第1の軸受け部19Aに挿通されている。軸部材10は、第1の軸受け部19Aを通り、ケース5の外側に突出している。なお、第2の突出部7bは円筒状には限定されず、筒状であればよい。あるいは、ステータ固定部材6には、必ずしも第2の突出部7bは設けられていなくともよい。例えば、ステータ固定部材6は第1のケース部材ではなくともよく、ステータ固定部材6とは別の第1のケース部材が設けられていてもよい。もっとも、ステータ固定部材6がケース5の一部であることにより、超音波モータ1の小型化を進めることができる。
【0027】
キャップ部材18は突出部18aを有する。突出部18aはケース5の外側に突出している。突出部18aは円筒状である。キャップ部材18には、例えば、金属、セラミックスまたは樹脂などを用いることができる。本実施形態では、ケース5の第2のケース部材はキャップ部材18である。もっとも、第2のケース部材はキャップ部材18には限定されない。ステータ2及びロータ4などが収納されるケースが構成されていればよい。
【0028】
突出部18a内に第2の軸受け部19Bが設けられている。軸部材10は、第2の軸受け部19Bに挿通されている。軸部材10は、第2の軸受け部19Bを通り、ケース5の外側に突出している。
【0029】
軸部材10には止め輪17が設けられている。止め輪17は、円環状の形状を有する。平面視において、止め輪17は軸部材10を囲んでいる。より詳細には、止め輪17の内周端縁部は軸部材10内に位置する。止め輪17は第1の軸受け部19Aに、軸方向Zにおける外側から当接している。これにより、軸部材10の位置ずれを抑制することができる。軸部材10及び止め輪17の材料としては、例えば、金属または樹脂などを用いることができる。第1の軸受け部19A及び第2の軸受け部19Bには、例えば、滑り軸受けやベアリングなどを用いてもよい。
【0030】
ロータ4は、凹部4aと、側壁部4bとを有する。凹部4aは、平面視において円形である。側壁部4bは、凹部4aを囲んでいる部分である。ロータ4は側壁部4bの端面4dにおいて、ステータ2と接触している。もっとも、凹部4a及び側壁部4bは設けられていなくともよい。ロータ4の材料としては、例えば、金属またはセラミックスなどを用いることができる。本実施形態では、ロータ4と軸部材10とは別体として構成されている。もっとも、ロータ4及び軸部材10が一体として構成されていてもよい。すなわち、ロータ4が軸部材10を含んでいてもよい。
【0031】
ロータ4上には弾性部材12が設けられている。弾性部材12は、軸方向Zにおいて、ステータ2と共にロータ4を挟んでいる。弾性部材12は円環状の形状を有する。なお、弾性部材12の形状は上記に限定されない。弾性部材12の材料としては、例えば、ゴムまたは樹脂などを用いることができる。もっとも、弾性部材12は設けられていなくともよい。
【0032】
ロータ4の第2の軸受け部19B側には、バネ部材16が配置されている。より具体的には、本実施形態のバネ部材16は金属からなる板バネである。バネ部材16の中央部には、開口部16cが設けられている。開口部16cに軸部材10が挿通されている。軸部材10は幅広部10aを有する。軸部材10の幅広部10aにおける幅は、軸部材10における他の部分の幅よりも広い。なお、軸部材10の幅は、軸部材10の軸方向Zと直交する方向に沿う寸法である。幅広部10aに、バネ部材16の内周端縁部が当接している。これにより、バネ部材16及び軸部材10の間の位置ずれを抑制することができる。もっとも、バネ部材16の材料及び構成は上記に限定されない。軸部材10の構成も上記に限定されるものではない。
【0033】
バネ部材16から弾性部材12を介して、ロータ4に弾性力が付与されている。これにより、ロータ4がステータ2に押し当てられている。この場合には、ステータ2及びロータ4の間の摩擦力を高めることができる。よって、ステータ2からロータ4に進行波を効果的に伝搬させることができ、ロータ4を効率的に回転させることができる。従って、超音波モータ1を効率的に回転駆動させることができる。
【0034】
ロータ4におけるステータ2側の面には、摩擦材が固定されていてもよい。それによって、ステータ2の振動体3とロータ4との間に加わる摩擦力を安定化させることができる。この場合には、ロータ4を効率的に回転させることができ、超音波モータ1を効率的に回転駆動させることができる。
【0035】
振動体3の第2の主面3b上において、複数の突起部3eが設けられている。複数の突起部3eは、振動体3における、ロータ4に接触している部分である。各突起部3eは、振動体3の第2の主面3bから軸方向Zに突出している。平面視において、複数の突起部3eは円環状に並んでいる。複数の突起部3eは、第2の主面3bから軸方向Zに突出しているため、振動体3において進行波が生じたとき、複数の突起部3eの先端はより一層大きく変位する。よって、ステータ2において生じさせた進行波によって、ロータ4を効率的に回転させることができる。なお、複数の突起部3eは必ずしも設けられていなくともよい。
【0036】
図5は、第1の実施形態におけるステータの底面図である。
【0037】
振動体3の第1の主面3aには、複数の圧電素子が設けられている。より具体的には、複数の圧電素子は、第1の圧電素子13A、第2の圧電素子13B、第3の圧電素子13C及び第4の圧電素子13Dである。複数の圧電素子は、軸方向Zに平行な軸を中心として周回する進行波を発生させるように、該進行波の周回方向に沿って分散配置されている。軸方向Zから見たときに、第1の圧電素子13A及び第3の圧電素子13Cは軸を挟んで互いに対向している。第2の圧電素子13B及び第4の圧電素子13Dは軸を挟んで互いに対向している。
【0038】
図6は、第1の実施形態における第1の圧電素子の正面断面図である。
【0039】
第1の圧電素子13Aは圧電体14を有する。圧電体14は第3の主面14a及び第4の主面14bを有する。第3の主面14a及び第4の主面14bは互いに対向している。第1の圧電素子13Aは、第1の電極15A及び第2の電極15Bを有する。圧電体14の第3の主面14a上に第1の電極15Aが設けられており、第4の主面14b上に第2の電極15Bが設けられている。第1の電極15A及び第2の電極15Bは、第1の圧電素子13Aの励振用の電極である。第2の圧電素子13B、第3の圧電素子13C、及び第4の圧電素子13Dも、第1の圧電素子13Aと同様に構成されている。上記各圧電素子の平面視における形状は矩形である。なお、各圧電素子の平面視における形状は上記に限定されず、例えば円形または楕円形などであってもよい。
【0040】
ここで、第1の電極15Aは、振動体3の第1の主面3aに接着剤により貼り付けられている。この接着剤の厚みは非常に薄い。従って、第1の電極15Aは振動体3に電気的に接続される。
【0041】
なお、進行波を発生させるためには、ステータ2は、少なくとも第1の圧電素子13A及び第2の圧電素子13Bを有していればよい。あるいは、複数の領域に分割された、1個の圧電素子を有していてもよい。この場合には、例えば、圧電素子の各領域が互いに異なる方向に分極されていてもよい。本明細書では、領域毎に異なる分極方向を有する1個の圧電素子、及び複数の圧電素子を、複数に分極された圧電素子と記載する場合がある。本実施形態では、複数に分極された圧電素子は、振動体3を、周回方向及び径方向に延びる節線を含む振動モードにより振動させる。
【0042】
図7は、各振動モードを説明するための模式図である。具体的には図7は、平面視したときの振動体3における各領域の振動の位相を示す。+の符号が付されている領域と、-の符号が付されている領域とは、振動の位相が互いに逆であることを示す。
【0043】
周回方向に延びる節線の本数をmとし、径方向に延びる節線の本数をnとしたときに、振動モードはB(m,n)モードで表すことができる。本実施形態においては、B(m,n)モードを利用する。すなわち、周回方向に延びる節線の本数m、及び径方向に延びる節線の本数nが0または任意の自然数であればよい。
【0044】
ステータ2において、複数の圧電素子を周回方向に分散配置し、駆動することにより進行波を発生させる構造については、例えば、WO2010/061508A1に開示されている。なお、この進行波を発生させる構造については、以下の説明だけでなく、WO2010/061508A1に記載の構成を本明細書に援用することにより、詳細な説明は省略することとする。
【0045】
図8(a)~図8(c)は、第1の実施形態において励振される進行波を説明するための、ステータの模式的底面図である。なお、図8(a)~図8(c)では、グレースケールにおいて、黒色に近いほど一方の方向の応力が大きく、白色に近いほど他方の方向の応力が大きいことを示す。
【0046】
図8(a)には、三波の定在波Xが示されており、図8(b)には、三波の定在波Yが示されている。第1~第4の圧電素子13A~13Dが、中心角90°の角度を隔てて配置されているとする。この場合、三波の定在波X,Yが励振されるため、進行波の波長に対する中心角は120°となる。中心角は、一波の角度120°に3/4を掛けた角度90°で決定する。三波の定在波Xの振幅が大きい所定の場所に第1の圧電素子13Aを配置し、中心角90°間隔で第2~第4の圧電素子13B~13Dを配置する。この場合、振動の位相が90°異なる三波の定在波X,Yが励振され、両者が合成されて、図8(c)に示す進行波が生じる。
【0047】
なお、図8(a)~図8(c)における、A+、A-、B+、B-は、圧電体14の分極方向を示す。+は、厚み方向において、第3の主面14aから第4の主面14bに向けて分極されていることを意味する。-は、逆方向に分極されていることを示す。Aは、第1の圧電素子13A及び第3の圧電素子13Cであることを示し、Bは、第2の圧電素子13B及び第4の圧電素子13Dであることを示す。
【0048】
なお、三波の例を示したが、これに限定されず六波、九波、十二波などの場合も同様に位相が90°異なる2つの定在波が励振され、両者の合成により進行波が生じる。本発明において、進行波を発生させる構成は、図8(a)~図8(c)に示した構成に限らず、従来より公知の様々な進行波を発生させる構成を用いることができる。
【0049】
以下において、本発明の好ましい形態の例を説明する。図3に戻り、本実施形態のように、ステータ固定部材6の本体部7は、第1の突出部7aを有することが好ましい。これにより、ステータ2をより確実に安定して配置することができる。第1の突出部7aは、平面視において円形の形状を有することが好ましい。それによって、ステータ2をより一層確実に安定して配置することができる。なお、ステータ固定部材6においては、回り止め部8においてステータ2を強固に固定しているため、第1の突出部7aにおいてステータ2を強固に固定することを要しない。よって、第1の突出部7aを有していても、ステータ2の振動体3の振動を阻害し難い。
【0050】
ここで、本実施形態と異なり、回り止め部8が平面視において円形である場合、第1の突出部7aによってステータ2を支持するためには、回り止め部8の直径よりも、第1の突出部7aの直径を大きくする必要がある。これに対して、本実施形態のように、回り止め部8が平面視において多角形である場合には、例えば、該多角形の外接円の直径と、第1の突出部7aの直径とを同じとしても、第1の突出部7aによってステータ2を支持することができる。このように、第1の突出部7aの直径を小さくすることができる。もっとも、上記多角形の外接円の直径よりも第1の突出部7aの直径を大きくしてもよい。この場合にも、回り止め部8が平面視において円形である場合よりも、第1の突出部7aの直径を小さくしても、ステータ2を好適に支持することができる。よって、第1の突出部7aによってステータ2を支持する部分の全体の範囲を、ステータ2の貫通孔3cに近づけることができる。従って、ステータ2の振動の阻害を効果的に抑制することができ、超音波モータ1の特性の低下を効果的に抑制することができる。
【0051】
平面視において、ステータ固定部材6の回り止め部8及びステータ2の貫通孔3cが正多角形状であることが好ましい。それによって、超音波モータ1の回転駆動の安定性を容易に高めることができる。
【0052】
上記のように、回り止め部8及びステータ2の貫通孔3cにおいては、平面視においての多角形状における頂点の個数は同じである。回り止め部8の頂点の個数及び貫通孔3cの頂点の個数は、5個または7個であることが好ましい。すなわち、回り止め部8及び貫通孔3cは、平面視において五角形状または七角形状であることが好ましい。それによって、超音波モータ1を小型にすることができ、かつ振動体を効果的に固定することができる。この理由は以下の通りである。
【0053】
回り止め部8の平面視における内接円の直径の大きさは、回り止め部8の頂点の個数によらず、軸部材10の幅に基づく。一方で、回り止め部8の平面視における内接円と外接円との距離は、回り止め部8の頂点の個数が小さいほど長くなる。内接円の直径が一定であり、内接円と外接円との距離が長い場合、外接円の直径は大きくなる。この場合、ステータ2の貫通孔3cの直径を大きくする必要がある。ここで、回り止め部8の頂点の個数が5個以上である場合には、内接円と外接円との距離を十分に短くすることができ、外接円の直径を小さくすることができる。よって、貫通孔3cの直径を小さくすることができ、ステータ2を小型にすることができる。従って、超音波モータ1を小型にすることができる。
【0054】
他方、回り止め部8の頂点の個数が多すぎると、回り止め部8の平面視における形状は円形に近づくこととなる。回り止め部8の頂点の個数が7個以下である場合には、ステータ2の振動体3の回転に対する抵抗を効果的に大きくすることができ、振動体3を効果的に固定することができる。
【0055】
上記のように、ステータ2の振動体3は、B(m,n)モードにより振動する。振動体3の振動において、径方向に延びる節線はn本である。回り止め部8及びステータ2の貫通孔3cの、平面視における多角形状の頂点の個数をaとしたときに、a≠nであることが好ましい。これにより、進行波に定在波が重畳することを抑制できる。よって、進行波においてリップルが生じることを抑制できる。従って、超音波モータ1の性能の低下を抑制することができる。もっとも、個数a及び本数nの関係は上記に限定されない。
【0056】
図9は、第1の実施形態のステータにおける、貫通孔の形状と圧電素子の位置との関係を説明するための底面図である。
【0057】
図9中の一点鎖線は、ステータ2における振動体3の貫通孔3cの頂点と、貫通孔3cの中心とを結んだ直線を示す。図9に示す5本の直線はそれぞれ、貫通孔3cの複数の頂点のうち1つの頂点を通る。各直線は、平面視における各圧電素子の中心を通っていない。ここで、図6に示すように、本実施形態では、圧電体14の第3の主面14aの全面に第1の電極15Aが設けられている。同様に、第4の主面14bの全面に第2の電極15Bが設けられている。そのため、図9に示す各直線上に、各圧電素子の第1の電極15Aの中心及び第2の電極15Bの中心は位置していない。なお、上述したように、第1の電極15A及び第2の電極15Bは励振用の電極である。
【0058】
ステータ2の貫通孔3cは平面視において非円状の形状を有するため、周回方向における非対称性を有する。複数の圧電素子の第1の電極15A及び第2の電極15Bの配置も、周回方向における非対称性を有する。上記のように、平面視において、貫通孔3cの頂点と、貫通孔3cの中心とを結んだ直線上に、各圧電素子の第1の電極15A及び第2の電極15Bの中心が位置していないことが好ましい。それによって、貫通孔3cの周回方向における非対称性と、複数の圧電素子の第1の電極15A及び第2の電極15Bの非対称性との一致度を低下させることができる。これにより、進行波に定在波が重畳することを抑制でき、進行波においてリップルが生じることを抑制できる。従って、超音波モータ1の性能の低下を抑制することができる。もっとも、各圧電素子の第1の電極15A及び第2の電極15Bの配置は上記に限定されない。
【0059】
なお、圧電体14上に、励振用の電極及び他の電極が設けられている場合には、励振用の電極の中心が、図9に示す各直線上に位置していないことが好ましい。領域毎に異なる分極方向を有する1個の圧電素子を用いる場合には、励振用の各電極の中心が、ステータの貫通孔の中心と該貫通孔の頂点とを結んだ直線上に位置していないことが好ましい。
【0060】
ところで、ステータ固定部材6の本体部7及び回り止め部8が異なる材料からなっていてもよい。少なくとも回り止め部8が樹脂からなることが好ましい。それによって、回り止め部8が、ステータ2の振動に影響を及ぼし難い。従って、回転角度の精度を高めることができる。回り止め部8が樹脂からなり、かつ本体部7が金属やセラミックスなどからなる場合、例えば、インサート成形などを用いてステータ固定部材6を形成してもよい。あるいは、回り止め部8及び本体部7を別々に形成した後に、回り止め部8及び本体部7を接合してもよい。
【0061】
図10は、第2の実施形態のステータにおける、貫通孔の形状と圧電素子の位置との関係を説明するための底面図である。
【0062】
本実施形態は、第1の圧電素子23A、第2の圧電素子23B、第3の圧電素子23C及び第4の圧電素子23Dが、平面視において円状の形状を有する点で第1の実施形態と異なる。さらに、ステータ22における振動体3の貫通孔3cの形状と、複数の圧電素子の配置との関係が第1の実施形態と異なる。上記の点以外においては、本実施形態の超音波モータは第1の実施形態の超音波モータ1と同様の構成を有する。
【0063】
図10中の一点鎖線は、ステータ22における振動体3の貫通孔3cの頂点のうち1つと、貫通孔3cの中心とを結んだ直線Cである。より具体的には、直線Cは、第1の圧電素子23A及び第4の圧電素子23Dの間を通り、かつ第2の圧電素子23B及び第3の圧電素子23Cの間を通る。直線C以外は図示しないが、ステータ22における各圧電素子の励振用の電極の中心は、貫通孔3cの中心と貫通孔3cの頂点とを結んだ直線上に位置していない。
【0064】
図10中の2本の二点鎖線は、貫通孔3cを挟んで対向し合う2つの圧電素子の電極の中心同士を結んだ直線D及び直線Eである。より具体的には、第1の圧電素子23A及び第3の圧電素子23Cにおける励振用の電極の中心同士を結んだ直線が直線Dである。第2の圧電素子23B及び第4の圧電素子23Dにおける励振用の電極の中心同士を結んだ直線が直線Eである。本実施形態では、直線D上及び直線E上に、貫通孔3cの中心が位置する。直線D及び直線Eは直交する。
【0065】
直線C及び直線Dがなす角θ1の角度は45°である。同様に、直線C及び直線Eがなす角θ2の角度も45°である。直線Cを対称軸としたときに、第1の圧電素子23A及び第2の圧電素子23Bと、第3の圧電素子23C及び第4の圧電素子23Dとは線対称に配置されている。それによって、進行波におけるリップルが相殺されるため、リップルをより一層抑制することができる。従って、超音波モータの性能の低下をより一層抑制することができる。
【0066】
本実施形態においては、図1などに示す第1の実施形態と同様に、ステータ固定部材6が構成されている。そのため、第1の実施形態と同様に、回り止め部8及び振動体3の貫通孔3cが、平面視において多角形状を有し、回り止め部8及び貫通孔3cの頂点の個数が同じであり、回り止め部8と貫通孔3cとが嵌合している。それによって、ステータ2の振動体3を効果的に固定することができ、かつ振動体3の振動を阻害し難い。
【0067】
1…超音波モータ
2…ステータ
3…振動体
3a,3b…第1,第2の主面
3c…貫通孔
3d…内側面
3e…突起部
4…ロータ
4a…凹部
4b…側壁部
4c…貫通孔
4d…端面
5…ケース
6…ステータ固定部材
7…本体部
7a,7b…第1,第2の突出部
8…回り止め部
8a…外側面
8c…貫通孔
10…軸部材
10a…幅広部
12…弾性部材
13A~13D…第1~第4の圧電素子
14…圧電体
14a,14b…第3,第4の主面
15A,15B…第1,第2の電極
16…バネ部材
16c…開口部
17…止め輪
18…キャップ部材
18a…突出部
19A,19B…第1,第2の軸受け部
22…ステータ
23A~23D…第1~第4の圧電素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10