(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】エレベーターの管理システムおよびエレベーターシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
B66B5/02 G
(21)【出願番号】P 2023526711
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2021021867
(87)【国際公開番号】W WO2022259403
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】田畠 広泰
(72)【発明者】
【氏名】井上 淳
(72)【発明者】
【氏名】江藤 雅文
(72)【発明者】
【氏名】小口 明彦
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-161288(JP,A)
【文献】特開2016-098077(JP,A)
【文献】特開2018-177475(JP,A)
【文献】特開2000-118902(JP,A)
【文献】特開2010-277519(JP,A)
【文献】特開2018-154438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部と、
前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部と、
を備え
、
前記第2基準値は、前記第1基準値より低く設定される、
管理システム。
【請求項2】
昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部と、
前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部と、
前記エレベーターの監視者による監視情報の入力を受け付ける監視処理部と、
を備え
、
前記指令部は、前記エレベーターにおいて異常が発生している監視情報の入力を前記監視処理部が受け付けたときに、当該異常の解消の監視情報の入力を前記監視処理部が受け付けるまで、前記エレベーターの前記退避機能の解除を保留する、
管理システム。
【請求項3】
昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部と、
前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部と、
を備え
、
前記指令部は、前記取得部が緊急度を最後に取得してから予め設定された第1時間が経過している場合に、前記エレベーターに前記退避機能を開始させてから予め設定された第2時間が経過したときに、前記エレベーターに前記退避機能を解除させる、
管理システム。
【請求項4】
昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部と、
前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部と、
前記取得部が取得した緊急度の履歴および前記昇降路における冠水発生の履歴に基づいて、前記昇降路における冠水発生および前記取得部が取得する緊急度の関係を学習する学習部と、
前記学習部による学習の結果に基づいて前記第1基準値および前記第2基準値を更新する更新部と、
を備える管理システム。
【請求項5】
昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部と、
前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部と、
前記施設の屋外階の乗場の条件および前記施設が設けられた場所の気象情報に基づいて前記昇降路における冠水発生を予測する予測部と、
前記予測部による予測の結果に基づいて前記取得部が取得する緊急度を補正する補正部と、
を備える管理システム。
【請求項6】
昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部と、
前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部と、
前記かごの下部に設けられたカメラが撮影する前記昇降路の画像に基づいて、前記昇降路の冠水を検知する画像処理部と、
を備え
、
前記指令部は、前記画像処理部が前記昇降路の冠水を検知するときに、前記エレベーターに前記昇降路の冠水した部分までの前記かごの走行を抑制させる、
管理システム。
【請求項7】
前記指令部は、前記退避機能として、前記エレベーターを運転休止させる
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項8】
前記指令部は、前記エレベーターを運転休止させる前に利用者を前記かごから降車させる階床として、前記施設の屋内階を設定する
請求項7に記載の管理システム。
【請求項9】
昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部と、
前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部と、
を備え
、
前記指令部は、前記退避機能として、前記施設において予め設定された階床より上方の上方階に前記かごの待機階を設定し、
前記指令部は、前記退避機能が実施されている間、前記エレベーターに前記施設の屋外階における戸開時間を通常運転時より短くさせる、
管理システム。
【請求項10】
前記上方階は、前記施設の屋内階に予め設定される
請求項9に記載の管理システム。
【請求項11】
前記指令部は、前記退避機能を開始するときに前記エレベーターの管理者に通知を行い、前記退避機能を解除するときに前記エレベーターの管理者に通知を行う
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項12】
前記施設について予め設定された複数の近隣施設の各々における冠水発生の情報を取得する近隣情報取得部
を備え、
前記複数の近隣施設のうち、2以上に予め設定された施設数以上の近隣施設から冠水発生の情報を前記近隣情報取得部が取得する場合に、前記指令部は、前記エレベーターに前記退避機能を開始させる
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項13】
前記指令部は、前記施設に設けられた異常検知部が前記施設の異常を検知している間、前記エレベーターの前記退避機能の解除を保留する
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項14】
前記指令部は、前記昇降路に設けられた冠水検知部が前記昇降路の冠水を検知している間、前記エレベーターの前記退避機能の解除を保留する
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項15】
前記エレベーターの管理者による管理操作の入力を受け付ける管理処理部
を備え、
前記指令部は、前記退避機能を遠隔解除する管理操作を前記管理処理部が受け付けたときに、前記エレベーターに前記退避機能を解除させる
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項16】
昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部、および
前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部、
を備える管理システムと、
前記昇降路に設けられ、前記エレベーターの動作を制御する制御盤には接続されず、前記昇降路の冠水を検知する冠水検知部と、
前記施設に設けられ、前記制御盤に接続され、前記冠水検知部による検知の情報を受け付けうるように前記冠水検知部に接続され、前記冠水検知部からの検知の情報を含む前記エレベーターの状態の情報を前記管理システムに提供する遠隔監視装置と、
を備えるエレベーターシステム。
【請求項17】
昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部、
前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部、および
前記かごの下部に設けられたカメラが撮影する前記昇降路の画像に基づいて、前記昇降路の冠水を検知する画像処理部、
を備える管理システムと、
前記昇降路が冠水している場合に水面を波立たせる動作を行う揺動部と、
を備え、
前記画像処理部は、前記揺動部の動作の後に撮影された前記昇降路の画像に基づいて、前記昇降路の冠水を検知
し、
前記指令部は、前記画像処理部が前記昇降路の冠水を検知するときに、前記エレベーターに前記昇降路の冠水した部分までの前記かごの走行を抑制させる、
エレベーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターの管理システムおよびエレベーターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーターシステムの例を開示する。エレベーターシステムにおいて、通信装置は、エレベーターが適用された施設の周辺で集中豪雨が発生する可能性があることを通知するメールを気象情報提供サービスセンターから受信するときに、メール受信信号を制御装置に出力する。制御装置は、通信装置からメール受信信号が入力されるときに、エレベーターに冠水からの退避機能を実施させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のエレベーターシステムにおいて、冠水からの退避機能は、管理者が制御装置の解除ボタンを押すことによって解除される。一方、発生した災害の影響などによって、エレベーターが適用された施設への管理者の到着が遅れる場合がある。この場合に、退避機能の解除が遅れることにより、利用者の利便性が低下することがある。
【0005】
本開示は、エレベーターが適用された施設における管理者の操作によらずに、冠水からの退避機能を解除できる管理システムおよびエレベーターシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る管理システムは、昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部と、前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部と、を備え、前記第2基準値は、前記第1基準値より低く設定される。
本開示に係る管理システムは、昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部と、前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部と、前記エレベーターの監視者による監視情報の入力を受け付ける監視処理部と、を備え、前記指令部は、前記エレベーターにおいて異常が発生している監視情報の入力を前記監視処理部が受け付けたときに、当該異常の解消の監視情報の入力を前記監視処理部が受け付けるまで、前記エレベーターの前記退避機能の解除を保留する。
本開示に係る管理システムは、昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部と、前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部と、を備え、前記指令部は、前記取得部が緊急度を最後に取得してから予め設定された第1時間が経過している場合に、前記エレベーターに前記退避機能を開始させてから予め設定された第2時間が経過したときに、前記エレベーターに前記退避機能を解除させる。
本開示に係る管理システムは、昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部と、前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部と、前記取得部が取得した緊急度の履歴および前記昇降路における冠水発生の履歴に基づいて、前記昇降路における冠水発生および前記取得部が取得する緊急度の関係を学習する学習部と、前記学習部による学習の結果に基づいて前記第1基準値および前記第2基準値を更新する更新部と、を備える。
本開示に係る管理システムは、昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部と、前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部と、前記施設の屋外階の乗場の条件および前記施設が設けられた場所の気象情報に基づいて前記昇降路における冠水発生を予測する予測部と、前記予測部による予測の結果に基づいて前記取得部が取得する緊急度を補正する補正部と、を備える。
本開示に係る管理システムは、昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部と、前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部と、前記かごの下部に設けられたカメラが撮影する前記昇降路の画像に基づいて、前記昇降路の冠水を検知する画像処理部と、を備え、前記指令部は、前記画像処理部が前記昇降路の冠水を検知するときに、前記エレベーターに前記昇降路の冠水した部分までの前記かごの走行を抑制させる。
本開示に係る管理システムは、昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部と、前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部と、を備え、前記指令部は、前記退避機能として、前記施設において予め設定された階床より上方の上方階に前記かごの待機階を設定し、前記指令部は、前記退避機能が実施されている間、前記エレベーターに前記施設の屋外階における戸開時間を通常運転時より短くさせる。
【0007】
本開示に係るエレベーターシステムは、昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部、および前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部、を備える管理システムと、前記昇降路に設けられ、前記エレベーターの動作を制御する制御盤には接続されず、前記昇降路の冠水を検知する冠水検知部と、前記施設に設けられ、前記制御盤に接続され、前記冠水検知部による検知の情報を受け付けうるように前記冠水検知部に接続され、前記冠水検知部からの検知の情報を含む前記エレベーターの状態の情報を前記管理システムに提供する遠隔監視装置と、を備える。
本開示に係るエレベーターシステムは、昇降路を走行するかごを有するエレベーターが適用される施設が設けられた場所の浸水害の緊急度を外部システムから逐次取得する取得部、前記取得部が取得した緊急度が予め設定された第1基準値以上になるときに前記エレベーターに冠水からの退避機能を開始させ、前記取得部が取得した緊急度が前記第1基準値以下に予め設定された第2基準値未満になるときに前記エレベーターに前記退避機能を解除させる指令部、および前記かごの下部に設けられたカメラが撮影する前記昇降路の画像に基づいて、前記昇降路の冠水を検知する画像処理部、を備える管理システムと、前記昇降路が冠水している場合に水面を波立たせる動作を行う揺動部と、を備え、前記画像処理部は、前記揺動部の動作の後に撮影された前記昇降路の画像に基づいて、前記昇降路の冠水を検知し、前記指令部は、前記画像処理部が前記昇降路の冠水を検知するときに、前記エレベーターに前記昇降路の冠水した部分までの前記かごの走行を抑制させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る管理システムであれば、エレベーターが適用された施設における管理者の操作によらずに、冠水からの退避機能を解除できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係るエレベーターシステムの構成図である。
【
図2】実施の形態1に係る管理システムにおける設定変更の画面の例を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る管理システムの動作の例を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1に係る管理システムの主要部のハードウェア構成図である。
【
図5】実施の形態2に係るエレベーターシステムの構成図である。
【
図6】実施の形態3に係るエレベーターシステムの構成図である。
【
図7】実施の形態4に係るエレベーターシステムの構成図である。
【
図8】実施の形態5に係るエレベーターシステムの構成図である。
【
図9】実施の形態6に係るエレベーターシステムの構成図である。
【
図10】実施の形態7に係るエレベーターシステムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の対象を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。なお、本開示の対象は以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態の任意の構成要素の変形、または実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベーターシステム1の構成図である。
【0012】
エレベーターシステム1は、エレベーター2を備える。エレベーター2は、例えば複数の階床を有する施設3に適用される。施設3において、エレベーター2の昇降路4が設けられる。昇降路4は、複数の階床にわたる上下方向に長い空間である。昇降路4の下端部において、ピットが設けられる。各々の階床において、昇降路4に隣接する乗場5が設けられる。各々の階床の乗場5において、乗場ドア6が設けられる。乗場ドア6は、昇降路4および乗場5を区画するドアである。エレベーター2は、巻上機7と、主ロープ8と、かご9と、釣合い錘10と、制御盤11と、を備える。
【0013】
巻上機7は、例えば昇降路4の上部または下部などに配置される。例えば昇降路4の上方などにエレベーター2の機械室が設けられる場合に、巻上機7は、機械室に配置されてもよい。巻上機7は、モータおよびシーブを備える。巻上機7のモータは、駆動力を発生させる装置である。巻上機7のシーブは、巻上機7のモータが発生させる駆動力によって回転する機器である。
【0014】
主ロープ8は、巻上機7のシーブに巻き掛けられる。主ロープ8は、巻上機7のシーブの一方側においてかご9の荷重を支持する。主ロープ8は、巻上機7のシーブの他方側において釣合い錘10の荷重を支持する。主ロープ8は、巻上機7のシーブの回転によって、巻上機7のシーブに巻き上げられるように、または巻上機7のシーブから繰り出されるように移動する。
【0015】
かご9は、昇降路4を上下方向に走行することでエレベーター2の利用者などを複数の階床の間で輸送する装置である。かご9は、巻上機7のシーブの回転による主ロープ8の移動に連動して昇降路4を上下方向に走行する。かご9は、かごドア12を備える。かごドア12は、かご9の内部および外部を区画するドアである。かごドア12は、かご9がいずれかの階床に停止するときに、当該階床の乗場ドア6を連動させて開閉する機器である。
【0016】
釣合い錘10は、巻上機7のシーブの両側にかかる荷重の釣合いをかご9との間でとる装置である。釣合い錘10は、巻上機7のシーブの回転による主ロープ8の移動に連動して、上下方向においてかご9の反対方向に昇降路4を走行する。
【0017】
制御盤11は、エレベーター2の動作を制御する装置である。制御盤11は、例えば昇降路4の上部または下部などに配置される。例えば昇降路4の上方などにエレベーター2の機械室が設けられる場合に、制御盤11は、機械室に配置されてもよい。制御盤11が制御するエレベーター2の動作は、かご9の走行およびかごドア12の開閉などを含む。例えば、制御盤11は、登録された呼びに応じて、かご9を複数の階床の間で走行させる。制御盤11は、かご9をいずれかの階床に停止させるときに、乗場ドア6を連動させてかごドア12を開く。制御盤11は、予め設定された戸開時間の間、かごドア12および乗場ドア6の全開の状態を維持する。制御盤11は、かご9が全開してから戸開時間が経過した後に、乗場ドア6を連動させてかごドア12を閉める。
【0018】
エレベーター2が適用される施設3において、異常検知部13が設けられる。異常検知部13は、当該施設3における異常を検知する部分である。異常検知部13が検知する異常は、例えば施設3に適用されたエレベーター2の機器の故障、施設3の設備の故障、および施設3の一部の損壊などである。異常検知部13は、検知した異常の情報を遠隔監視装置15などに出力する。異常検知部13は、例えばエレベーター2の機器または施設3の設備などに設けられたセンサーなどである。
【0019】
エレベーター2において、冠水検知部14が設けられる。冠水検知部14は、昇降路4の冠水を検知する部分である。冠水検知部14は、昇降路4に配置される。冠水検知部14は、例えばピットに配置されてもよい。この例において、冠水検知部14は、検知した冠水の情報を制御盤11に出力する。冠水検知部14は、例えば冠水センサーなどである。
【0020】
エレベーターシステム1は、遠隔監視装置15を備える。遠隔監視装置15は、エレベーター2の状態の遠隔監視などに用いられる装置である。遠隔監視装置15は、エレベーター2の状態の情報を収集しうるように、制御盤11などに接続される。遠隔監視装置15は、例えば制御盤11に入力される情報および制御盤11から出力される情報などをエレベーター2の状態の情報として収集する。遠隔監視装置15が収集した情報は、インターネットまたは電話回線網などの通信網16を通じて、情報センター17に設けられた装置などに送信される。情報センター17は、エレベーター2の状態の情報を収集して管理する拠点である。遠隔監視装置15は、通信網16を通じてエレベーター2が設けられた施設3の外部などからエレベーター2の制御信号を受け付ける。遠隔監視装置15は、受け付けた制御信号を制御盤11に出力する。
【0021】
エレベーターシステム1は、管理システム18を備える。管理システム18は、エレベーター2の遠隔管理を行うシステムである。管理システム18は、例えば1つまたは複数のサーバ装置などを含むシステムである。管理システム18のサーバなどの装置は、例えば情報センター17に配置される。管理システム18は、通信網16に接続される。管理システム18の一部または全部の機能は、クラウドサービス上の処理および記憶のリソースによって実装されてもよい。管理システム18は、例えばエレベーター2の遠隔監視装置15などを通じて当該エレベーター2の状態の情報を収集する。管理システム18は、取得部19と、指令部20と、監視処理部21と、管理処理部22と、を備える。
【0022】
取得部19は、管理システム18の外部のシステムから通信網16などを通じて情報を取得する部分である。外部のシステムは、例えば気象情報を配信する気象情報システム23などである。気象情報システム23は、例えば日本における気象庁などのように気象情報を扱う公的機関、または民間の気象会社などの機関によるシステムである。この例において、気象情報システム23は、場所ごとの浸水害の緊急度を表す情報を配信する。配信される情報は、例えば気象庁が配信する大雨警報(浸水害)の危険度分布、またはこれと同様の情報である。配信される情報は、例えば、各地点における緊急性の度合を危険度0から危険度4までの5段階で表した情報である。取得部19は、気象情報システム23から、エレベーター2が適用される施設3が設けられた場所の浸水害の緊急度を逐次取得する。この例において、取得部19は、緊急度を定期的に取得する。緊急度の取得の周期は、例えば10分などである。
【0023】
指令部20は、冠水からの退避機能の制御信号を、通信網16および遠隔監視装置15などを通じてエレベーター2に出力する部分である。退避機能は、昇降路4の冠水による被害の回避または抑制のためのエレベーター2の機能である。退避機能は、例えば上方階待機、および運転休止を含む。上方階待機は、かご9の待機階を上方階に設定する退避機能である。ここで、かご9の待機階は、かご9が無方向停止しているときに待機する階床である。通常時において、待機階は、例えば施設3の玄関階などに設定される。上方階は、施設3において予め設定された階床より上方の階床である。上方階は、例えば玄関階より上方のいずれかの階床である。待機階に設定される上方階は、施設3の最上階であってもよい。運転休止は、かご9を走行させずに休止する退避機能である。このとき、エレベーター2は、例えばかご9が上方階に停止した状態で休止する。
【0024】
指令部20は、取得部19が取得した情報に基づいて制御信号を出力する。指令部20において、緊急度についての第1基準値および第2基準値が予め設定される。第2基準値は、第1基準値以下の値に設定される。第1基準値は、退避機能を開始させる緊急度の基準値である。第2基準値は、退避機能を解除させる緊急度の基準値である。すなわち、指令部20は、取得部19の取得した緊急度が第1基準値以上になるときに、退避機能を開始させる制御信号を出力する。また、指令部20は、取得部19の取得した緊急度が第2基準値未満になるときに、退避機能を解除させる制御信号を出力する。第1基準値および第2基準値は、例えば退避機能の種類ごとに設定されてもよい。
【0025】
監視処理部21は、監視情報の入力を受け付ける部分である。監視情報は、エレベーター2の監視者によって入力される情報である。エレベーター2の監視者は、例えば情報センター17において業務としてエレベーター2の監視を行うオペレータなどである。監視情報は、例えばエレベーター2において異常が発生していることを表す情報などである。監視者は、例えばエレベーター2の利用者などから異常が発生していることの通報を受け付けた場合に、当該エレベーター2について異常が発生していることを表す監視情報を監視処理部21に入力する。監視者は、エレベーター2に異常が発生したときに、発生した異常に対応する保守員を当該エレベーター2に派遣する。保守員による対応によって異常が解消したときに、監視者は、異常が解消したことを表す監視情報を監視処理部21に入力する。
【0026】
管理処理部22は、エレベーター2の管理者による管理操作を受け付ける部分である。管理者は、例えば通信網16に接続された管理端末24を用いて、管理システム18の管理処理部22にアクセスする。管理端末24は、例えばパーソナルコンピュータなどの汎用の情報端末である。このとき、管理処理部22は、例えばウェブサーバなどとして動作する。管理者は、管理端末24上のウェブブラウザなどのアプリケーションを通じて、エレベーター2の状態の情報を閲覧する。管理者は、管理端末24を通じて設定変更の管理操作を行う。設定変更の管理操作は、例えば第1基準値および第2基準値の設定などを含む。
【0027】
図2は、実施の形態1に係る管理システム18における設定変更の画面の例を示す図である。
図2において、管理端末24に表示される画面の例が示される。
【0028】
管理端末24において、設定変更の対象とするエレベーター2が選択される。この例において、エレベーター2は、プルダウンによって選択される。この例において、「001号機」のエレベーター2が選択されている。
【0029】
管理端末24において、退避機能ごとに第1基準値および第2基準値が設定される。この例において、第1基準値および第2基準値は、プルダウンによって選択される。この例において、運転休止を開始する第1基準値は、危険度4に設定されている。このとき、指令部20は、例えば取得部19の取得した緊急度が危険度3から危険度4に上がるときに、運転休止を開始する制御信号を出力する。また、運転休止を解除する第2基準値は、危険度3に設定されている。このとき、指令部20は、例えば取得部19の取得した緊急度が危険度3から危険度2に下がるときに、運転休止を解除する制御信号を出力する。この例において、上方階待機を開始する第1基準値は、危険度3に設定されている。このとき、指令部20は、例えば取得部19の取得した緊急度が危険度2から危険度3に上がるときに、上方階待機を開始する制御信号を出力する。また、上方階待機を解除する第2基準値は、危険度3に設定されている。このとき、指令部20は、例えば取得部19の取得した緊急度が危険度3から危険度2に下がるときに、上方階待機を解除する制御信号を出力する。
【0030】
管理端末24において、退避機能ごとに自動制御の有効または無効が設定される。この例において、自動制御の有効または無効は、スイッチによって選択される。この例において、運転休止の自動制御は、有効に設定されている。また、上方階待機の自動制御は、有効に設定されている。自動制御が無効に設定された退避機能について、指令部20は、取得部19が取得する緊急度の変化によっては、退避機能の制御信号を出力しない。
【0031】
管理端末24において、通知機能の有効または無効が設定される。通知機能は、取得部19が取得する緊急度の変化に応じて管理システム18から管理者に通知を行う機能である。管理システム18は、例えば管理処理部22による電子メールまたはプッシュ通知などによって管理者への通知を行う。この例において、通知機能の有効または無効は、スイッチによって選択される。
【0032】
通知機能について、上昇基準値および下降基準値が予め設定される。管理処理部22は、通知機能として、例えば取得部19の取得した緊急度が上昇基準値以上になるとき、および取得部19の取得した緊急度が下降基準値未満になるときに、管理者への通知を行う。この例において、上昇基準値は、危険度2に指定されている。また、下降基準値は、危険度2に指定されている。このため、管理処理部22は、取得部19の取得した緊急度が危険度1から危険度2に上がるとき、および取得部19の取得した緊急度が危険度2から危険度1に下がるときに、それぞれ管理者への通知を行う。
【0033】
なお、上昇基準値は、いずれかの退避機能の第1基準値に合わせて設定されてもよい。また、下降基準値は、いずれかの退避機能の第2基準値に合わせて設定されてもよい。通知機能の有効または無効は、上昇基準値による通知および下降基準値による通知のそれぞれについて設定されてもよい。
【0034】
引き続き
図2を用いて、エレベーターシステム1の機能の例を説明する。
ここで、
図2に示されるように設定されているときに、エレベーター2が適用される施設3が設けられた場所について、降雨によって緊急度が危険度0から危険度4まで順次上昇した後、危険度4から危険度0まで順次下降する場合について説明する。
【0035】
降雨の前に、取得部19は、気象情報システム23から危険度0の緊急度を取得する。このとき、エレベーター2は通常運転を行っている。
【0036】
その後、降雨が強まるときに、取得部19は、気象情報システム23から危険度1の緊急度を取得する。このとき、エレベーター2は通常運転を行っている。
【0037】
その後、降水量の増加などによって浸水害の緊急性が高まるときに、取得部19は、気象情報システム23から危険度2の緊急度を取得する。緊急度が通知機能の上昇基準値以上となるので、管理処理部22は、管理者に通知を行う。このとき、エレベーター2は、通常運転を行っている。
【0038】
その後、浸水害の緊急性がさらに高まるときに、取得部19は、気象情報システム23から危険度3の緊急度を取得する。このとき、緊急度は、上方階待機の第1基準値以上となる。上方階待機について自動制御は有効に設定されているので、指令部20は、上方階待機を開始させる制御信号を通信網16および遠隔監視装置15を通じてエレベーター2の制御盤11に出力する。ここで、管理処理部22は、緊急度が上方階待機の第1基準値以上になるときに、管理者への通知を行ってもよい。制御盤11は、指令部20からの制御信号に基づいて、かご9の待機階を例えば最上階などの上方階に設定する。
【0039】
その後、浸水害がさらに進展するときに、取得部19は、気象情報システム23から危険度4の緊急度を取得する。このとき、緊急度は、運転休止の第1基準値以上となる。運転休止について自動制御は有効に設定されているので、指令部20は、運転休止を開始させる制御信号を通信網16および遠隔監視装置15を通じてエレベーター2の制御盤11に出力する。ここで、管理処理部22は、緊急度が運転休止の第1基準値以上になるときに、管理者への通知を行ってもよい。制御盤11は、指令部20からの制御信号に基づいて、エレベーター2の運転を休止する。制御盤11は、エレベーター2を運転休止させる前に、施設3のいずれかの階床にかご9を停止させてかご9に乗車している利用者を降車させる。この例において、制御盤11は、かご9を最寄りの階床に停止させて利用者を降車させる。
【0040】
なお、冠水検知部14が昇降路4の冠水を検知するときに、指令部20は、緊急度が退避機能の第1基準値未満である場合においても、当該退避機能を開始させる制御信号を出力する。例えば、指令部20は、冠水検知部14が昇降路4の冠水を検知するときに、緊急度が運転休止の第1基準値未満である場合においても、運転休止を開始させる制御信号を出力する。すなわち、指令部20は、退避機能を開始させる制御信号の出力の条件として、取得部19が取得する緊急度の変化より、冠水検知部14による昇降路4の冠水の検知を優先する。
【0041】
その後、降水量の低下などによって緊急性が緩和されるときに、取得部19は、気象情報システム23から危険度3の緊急度を取得する。このとき、緊急度は、運転休止の第2基準値以上であるので、指令部20は、運転休止を解除させる制御信号を出力しない。また、緊急度は、上方階待機の第2基準値以上であるので、指令部20は、上方階待機を解除させる制御信号を出力しない。
【0042】
その後、緊急性がさらに緩和されるときに、取得部19は、気象情報システム23から危険度2の緊急度を取得する。このとき、緊急度は、運転休止の第2基準値未満となる。運転休止について自動制御は有効に設定されているので、指令部20は、運転休止を解除させる制御信号を通信網16および遠隔監視装置15を通じてエレベーター2の制御盤11に出力する。また、緊急度は、上方階待機の第2基準値未満となる。上方階待機について自動制御は有効に設定されているので、指令部20は、上方階待機を解除させる制御信号を通信網16および遠隔監視装置15を通じてエレベーター2の制御盤11に出力する。ここで、管理処理部22は、緊急度が運転休止の第2基準値未満になるときに、管理者への通知を行ってもよい。また、管理処理部22は、緊急度が上方階待機の第2基準値未満になるときに、管理者への通知を行ってもよい。制御盤11は、指令部20からの制御信号に基づいて、エレベーター2の運転を再開する。また、制御盤11は、指令部20からの制御信号に基づいて、上方階待機を解除する。
【0043】
ここで、冠水検知部14が昇降路4の冠水を検知している場合に、指令部20は、緊急度が退避機能の第2基準値未満となったときにおいても、当該退避機能を解除させる制御信号を出力しない。指令部20は、冠水検知部14による昇降路4の冠水の検知が解除されるまで、当該退避機能の解除を保留する。指令部20は、冠水検知部14による昇降路4の冠水の検知が解除されたときに緊急度が退避機能の第2基準値未満である場合に、当該退避機能を解除させる制御信号を出力する。すなわち、指令部20は、退避機能を解除させる制御信号の出力の条件として、取得部19が取得する緊急度の変化より、冠水検知部14による昇降路4の冠水の検知を優先する。
【0044】
また、異常検知部13が施設3における異常を検知している場合に、指令部20は、緊急度が退避機能の第2基準値未満となったときにおいても、当該退避機能を解除させる制御信号を出力せずに保留してもよい。この場合に、指令部20は、異常検知部13による異常の検知が解除されたときに緊急度が退避機能の第2基準値未満である場合に、当該退避機能を解除させる制御信号を出力する。
【0045】
また、監視処理部21がエレベーター2において異常が発生していることを表す監視情報を受け付けている場合に、指令部20は、緊急度が退避機能の第2基準値未満となったときにおいても、当該退避機能を解除させる制御信号を出力せずに保留してもよい。指令部20は、監視処理部21がエレベーター2における当該異常が解消されたことを表す監視情報を受け付けたときに緊急度が退避機能の第2基準値未満である場合に、当該退避機能を解除させる制御信号を出力する。
【0046】
その後、緊急性がさらに緩和されるときに、取得部19は、気象情報システム23から危険度1の緊急度を取得する。緊急度が通知機能の下降基準値未満となるので、管理処理部22は、管理者に通知を行う。このとき、エレベーター2は、通常運転を行っている。
【0047】
その後、緊急性がさらに緩和されるにつれて、取得部19は、気象情報システム23から危険度1、および危険度0の緊急度を順次取得する。このとき、エレベーター2は、通常運転を行っている。
【0048】
なお、退避機能の自動制御が無効に設定されている場合に、指令部20は、緊急度が当該退避機能の第1基準値以上になるときに、当該退避機能を開始させる制御信号を出力しない。一方、管理処理部22は、緊急度が当該退避機能の第1基準値以上になるときに、管理者への通知を行う。通知を受けた管理者は、管理端末24を通じて、例えば退避機能を遠隔から開始する管理操作を行う。管理処理部22が当該管理操作を受け付けるときに、指令部20は、当該退避機能を開始させる制御信号をエレベーター2の制御盤11に出力する。
【0049】
また、退避機能の自動制御が無効に設定されている場合に、指令部20は、緊急度が当該退避機能の第2基準値未満になるときに、当該退避機能を解除させる制御信号を出力しない。一方、管理処理部22は、緊急度が当該退避機能の第2基準値未満になるときに、管理者への通知を行う。通知を受けた管理者は、管理端末24を通じて、例えば退避機能を遠隔から解除する管理操作を行う。管理処理部22が当該管理操作を受け付けるときに、指令部20は、当該退避機能を解除させる制御信号をエレベーター2の制御盤11に出力する。
【0050】
続いて、
図3を用いて、管理システム18の動作の例を説明する。
図3は、実施の形態1に係る管理システム18の動作の例を示すフローチャートである。
【0051】
図3において、退避機能が開始されるときの処理の例が示される。
管理システム18は、例えば
図3に示される処理を退避機能ごとに行う。
【0052】
ステップS1において、管理処理部22は、設定変更の管理操作を受け付ける。その後、管理システム18における処理は、ステップS2に進む。
【0053】
ステップS2において、取得部19は、エレベーター2が適用される施設3が設けられた場所における浸水害の緊急度を、気象情報システム23から取得する。その後、管理システム18における処理は、ステップS3に進む。
【0054】
ステップS3において、指令部20は、取得部19が取得した緊急度が、退避機能の開始の条件を満たすかを判定する。この例において、指令部20は、緊急度が第1基準値以上になったかを判定する。判定結果がNoの場合に、管理システム18における処理は、ステップS2に進む。判定結果がYesの場合に、管理システム18における処理は、ステップS4に進む。
【0055】
ステップS4において、指令部20は、開始の条件を満たした退避機能について、自動制御が有効に設定されているかを判定する。判定結果がYesの場合に、管理システム18における処理は、ステップS5に進む。判定結果がNoの場合に、管理システム18における処理は、ステップS6に進む。
【0056】
ステップS5において、指令部20は、退避機能を開始させる制御信号を制御盤11に出力する。その後、管理システム18は、退避機能が開始されるときの処理を終了する。
【0057】
ステップS6において、管理処理部22は、退避機能の開始の条件が満たされたことを、エレベーター2の管理者に通知する。その後、管理システム18における処理は、ステップS7に進む。
【0058】
ステップS7において、管理処理部22は、通知を受けた管理者からの管理操作の入力を待機する。その後、管理システム18における処理は、ステップS8に進む。
【0059】
ステップS8において、管理処理部22は、遠隔から退避機能を開始する管理操作の入力を管理者から受け付けたかを判定する。判定結果がYesの場合に、管理システム18における処理は、ステップS5に進む。判定結果がNoの場合に、管理システム18における処理は、ステップS7に進む。
【0060】
退避機能が解除されるときにおいても、
図3と同様の処理が行われる。このとき、ステップS3と同様の処理において、指令部20は、冠水検知部14が冠水を検知しているかを判定してもよい。この場合に、冠水検知部14が冠水を検知しているときに、指令部20は、退避機能の解除の条件を満たしていないと判定する。
【0061】
なお、緊急度は、6段階以上で表される情報であってもよい。また、緊急度は、4段階未満で表される情報であってもよい。緊急度は、連続的な数値によって表される情報であってもよい。
【0062】
以上に説明したように、実施の形態1に係るエレベーターシステム1は、遠隔監視装置15と、管理システム18と、を備える。遠隔監視装置15は、エレベーター2が適用される施設3に設けられる。遠隔監視装置15は、エレベーター2の動作を制御する制御盤11に接続される。遠隔監視装置15は、エレベーター2の状態の情報を管理システム18に提供する。管理システム18は、取得部19と、指令部20と、を備える。取得部19は、施設3が設けられた場所の浸水害の緊急度を、外部の気象情報システム23から逐次取得する。指令部20は、取得部19が取得した緊急度が第1基準値以上になるときに、エレベーター2に冠水からの退避機能を開始させる。指令部20は、取得部19が取得した緊急度が第2基準値未満になるときに、エレベーター2に退避機能を解除させる。第1基準値および第2基準値は、第2基準値が第1基準値以下となるように予め設定される。
【0063】
このような構成により、エレベーター2において、気象情報システム23などの外部からの緊急度の情報の変化に基づいて、退避機能が解除される。このため、施設3における管理者の操作によらずに、冠水からの退避機能が解除される。これにより、管理者の到着の遅れなどによるエレベーター2の復旧の遅れが抑制される。また、冠水などの気象災害による事象は、管理者の管理する複数の施設3において同時に発生することがある。このとき、退避機能は気象システムからの情報に基づいて解除されるので、管理者が各々の施設3に順次到着することを待たずにエレベーター2は復旧できる。これにより、利用者の利便性が損なわれにくい。また、退避機能の開始についての第1基準値および解除についての第2基準値が個別に設定されるため、開始された退避機能は緊急性が十分緩和されてから解除されるように、基準値の設定が可能になる。これにより、冠水などによる被害がより効果的に抑えられるようになる。
【0064】
また、第2基準値は、第1基準値より低く設定される。
【0065】
このような構成により、開始された退避機能は緊急性が十分緩和されてから解除されるようになる。これにより、冠水などによる被害がより効果的に抑えられるようになる。
【0066】
また、指令部20は、退避機能を開始するときにエレベーター2の管理者に通知を行う。指令部20は、退避機能を解除するときにエレベーター2の管理者に通知を行う。
【0067】
このような構成により、管理者は、エレベーター2における退避機能の実施状況をより容易に把握できるようになる。これにより、エレベーター2がより管理しやすくなる。
【0068】
また、指令部20は、退避機能として、エレベーター2を運転休止させる。
【0069】
このような構成により、浸水害の緊急度が高いときにかご9が走行しないので、かご9の水没などによる被害、および利用者の閉じ込めなどが発生しにくくなる。
【0070】
また、指令部20は、退避機能として、施設3において予め設定された階床より上方の上方階に、かご9の待機階を設定する。
【0071】
このような構成により、浸水害の緊急度が高いときに、かご9は上方階において待機するようになる。これにより、待機中のかご9が水没する、または待機中のかご9に上方の乗場5から流れ込んだ水がかかるなどの被害が発生しにくくなる。
【0072】
また、指令部20は、施設3に設けられた異常検知部13が施設3の異常を検知している間、エレベーター2の退避機能の解除を保留する。
【0073】
このような構成により、施設3の異常が検知されている場合に、気象条件の回復のみによってエレベーター2は復旧しないようになる。このため、施設3の復旧より早く気象条件が回復する場合においても、エレベーター2に二次的な被害が発生することが抑制される。
【0074】
また、指令部20は、昇降路4に設けられた冠水検知部14が昇降路4の冠水を検知している間、エレベーター2の退避機能の解除を保留する。
【0075】
このような構成により、昇降路4の冠水が検知されている場合に、気象条件の回復のみによってエレベーター2は復旧しないようになる。このため、昇降路4の排水などの復旧より早く気象条件が回復する場合においても、かご9の水没などによってエレベーター2に二次的な被害が発生することが抑制される。
【0076】
また、管理システム18は、監視処理部21を備える。監視処理部21は、エレベーター2の監視者による監視情報の入力を受け付ける。指令部20は、エレベーター2において異常が発生している監視情報の入力を監視処理部21が受け付けたときに、当該異常の解消の監視情報の入力を監視情報受付部が受け付けるまで、エレベーター2の退避機能の解除を保留する。
【0077】
このような構成により、施設3の異常などが検知されていない場合であっても、通報などによって異常が確認されている場合に、気象条件の回復のみによってエレベーター2は復旧しないようになる。このため、施設3の復旧より早く気象条件が回復する場合においても、エレベーター2に二次的な被害が発生することが抑制される。
【0078】
また、管理システム18は、管理処理部22を備える。管理処理部22は、エレベーター2の管理者による管理操作の入力を受け付ける。指令部20は、退避機能を遠隔解除する管理操作を管理処理部22が受け付けたときに、エレベーター2に退避機能を解除させる。
【0079】
このような構成により、気象条件が回復していない場合においても、管理者の判断によってエレベーター2の機能を復旧できるようになる。このため、利用者の利便性がより損なわれにくくなる。なお、指令部20は、退避機能を解除させる制御信号の出力の条件として、管理操作による遠隔解除より、冠水検知部14による昇降路4の冠水の検知を優先してもよい。
【0080】
なお、例えばエレベーター2の退避機能が解除される前に通信障害などが発生するときに、取得部19は、気象情報システム23からの気象情報を取得できなくなることがある。この場合に、指令部20は、時間の経過に基づいて自動的に退避機能を解除させる制御信号を出力してもよい。例えば、指令部20は、取得部19が緊急度を最後に取得してから第1時間が経過しているかを判定する。第1時間は、例えば緊急度の取得の周期に基づいて予め設定される時間などである。第1時間が経過している場合に、指令部20は、取得部19が気象情報システム23からの気象情報を取得できなくなったと判定する。このとき、指令部20は、エレベーター2に退避機能を開始させてから第2時間が経過したかを判定する。第2時間は、例えば気象条件が回復する十分な時間として予め設定される、例えば300分などの時間である。第2時間が経過している場合に、指令部20は、退避機能を解除させる制御信号をエレベーター2に出力する。
【0081】
このような構成により、通信障害などが発生している場合においても、時間の経過により退避機能が自動的に解除される。これにより、利用者の利便性がより損なわれにくくなる。なお、指令部20は、退避機能を解除させる制御信号の出力の条件として、第2時間の経過より、冠水検知部14による昇降路4の冠水の検知を優先してもよい。
【0082】
続いて、
図4を用いて、管理システム18のハードウェア構成の例について説明する。
図4は、実施の形態1に係る管理システム18の主要部のハードウェア構成図である。
【0083】
管理システム18における処理の各機能は、処理回路により実現し得る。処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。処理回路は、プロセッサ100aおよびメモリ100bと共に、あるいはそれらの代用として、少なくとも1つの専用ハードウェア200を備えてもよい。
【0084】
処理回路がプロセッサ100aとメモリ100bとを備える場合、管理システム18の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。そのプログラムはメモリ100bに格納される。プロセッサ100aは、メモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、管理システム18の各機能を実現する。
【0085】
プロセッサ100aは、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。メモリ100bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROMなどの、不揮発性または揮発性の半導体メモリなどにより構成される。
【0086】
処理回路が専用ハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。
【0087】
管理システム18における処理の各機能は、それぞれ処理回路で実現することができる。あるいは、管理システム18の各機能は、まとめて処理回路で実現することもできる。管理システム18の各機能について、一部を専用ハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。このように、処理回路は、専用ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで管理システム18の各機能を実現する。
【0088】
以下で説明する実施の形態の各々において、他の実施の形態で開示される例と相違する点について特に詳しく説明する。以下の実施の形態の各々で説明しない特徴については、他の実施の形態で開示される例のいずれの特徴が採用されてもよい。
【0089】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係るエレベーターシステム1の構成図である。
【0090】
管理システム18は、施設情報記憶部25を備える。施設情報記憶部25は、施設3の構造の情報を記憶する部分である。施設3の構造の情報は、各々の階床が屋内階であるか屋外階であるかの情報などを含む。屋内階は、屋内に乗場5がある階床である。屋外階は、乗場5が屋外に露出している階床である。例えば、施設3のいずれかの階床において乗場5が外廊下に隣接している場合に、当該階床は屋外階として施設情報記憶部25に記憶される。また、施設3の屋上階に乗場5が設けられる場合に、屋上階は屋外階として施設情報記憶部25に記憶される。管理システム18が複数の施設3のエレベーター2の管理に用いられる場合に、施設情報記憶部25は、各々の施設3について構造の情報を記憶する。
【0091】
指令部20は、施設情報記憶部25が記憶している施設3の構造の情報に基づいて、エレベーター2への制御信号の出力を行う。
【0092】
指令部20は、エレベーター2が上方階待機を開始するときに、施設3の屋内階のいずれかを上方階とするように制御信号を制御盤11に出力する。このとき設定される上方階は、例えば施設3の屋内階のうちで最も高い階床などである。例えば、施設3においてある屋内階より上方の階床が全て屋外階である場合に、上方階は、当該屋内階に設定される。
【0093】
指令部20は、エレベーター2が上方階待機などの退避機能を実施しているときに、施設3の構造の情報に基づいて戸開時間を設定するように制御信号を制御盤11に出力する。この例において、指令部20は、エレベーター2が上方階待機を開始するときに、施設3の屋外階における戸開時間が通常運転における戸開時間より短くなるように制御信号を出力する。このとき、指令部20は、エレベーター2が上方階待機を解除するときに、施設3の屋外階における戸開時間を通常運転における戸開時間に戻すように制御信号を出力する。
【0094】
指令部20は、エレベーター2が運転休止する前にかご9に乗車している利用者を降車させるようにかご9を停止させる階床を、施設3の構造の情報に基づいて設定するように制御信号を制御盤11に出力する。この例において、指令部20は、当該階床を施設3のいずれかの屋内階に設定する。施設3において屋内階が複数ある場合に、指令部20は、最寄りの屋内階にかご9を停止させるようにしてもよい。
【0095】
以上に説明したように、実施の形態2に係る管理システム18の指令部20は、エレベーター2を運転休止させる前に利用者をかご9から降車させる階床として、施設3の屋内階を設定する。
【0096】
このような構成により、利用者を降車させるためにかごドア12を開放する階床が屋内階になるので、開放しているかごドア12から風雨がかご9内および昇降路4に吹き込むことが予防される。これにより、昇降路4などへの水の浸入などによる被害がより効果的に抑えられるようになる。
【0097】
また、上方階は、施設3の屋内階に予め設定される。
【0098】
このような構成により、かご9は屋内階で待機するようになるので、風によって乗場5に吹き込む水がかご9内および昇降路4に流れ込むことが予防される。これにより、昇降路4などへの水の浸入などによる被害がより効果的に抑えられるようになる。
【0099】
また、指令部20は、退避機能が実施されている間、エレベーター2に施設3の屋外階における戸開時間を通常運転時より短くさせる。
【0100】
上方階待機が実施されている間、かご9の走行の範囲は、特に限定されていなくてもよい。このとき、利用者の呼びに応じて、かご9が屋外階に走行することがある。このような場合においても、屋外階での戸開時間が短くなるので、開放しているかごドア12から風雨がかご9内および昇降路4に吹き込むことが予防される。これにより、昇降路4などへの水の浸入などによる被害がより効果的に抑えられるようになる。
【0101】
実施の形態3.
図6は、実施の形態3に係るエレベーターシステム1の構成図である。
【0102】
管理システム18において、エレベーター2が設けられる施設3について複数の近隣施設3aが予め設定される。ある施設3の近隣施設3aは、例えば当該施設3について予め設定された範囲の内にある施設などである。この例において、各々の近隣施設3aにエレベーター2および当該エレベーター2の状態の遠隔監視に用いられる遠隔監視装置15が設けられる。
【0103】
管理システム18は、近隣情報取得部26を備える。近隣情報取得部26は、施設3について当該施設3の近隣施設3aの各々の情報を取得する部分である。近隣情報取得部26は、例えば通信網16などを通じて、各々の近隣施設3aの遠隔監視装置15に接続される。近隣情報取得部26は、例えば、各々の近隣施設3aの遠隔監視装置15から当該近隣施設3aにおける冠水発生の情報を取得する。近隣施設3aにおける冠水発生の情報は、例えば当該近隣施設3aのエレベーター2の昇降路4に設けられた冠水検知部14による冠水の検知の情報などである。
【0104】
指令部20は、近隣情報取得部26が取得する情報に基づいて、エレベーター2への制御信号の出力を行う。
【0105】
指令部20において、施設数の基準値が予め設定される。施設数の基準値は、2以上の数である。この例において、施設数の基準値は、2施設に設定される。指令部20は、施設3の近隣施設3aのうち基準値以上の近隣施設3aから冠水発生の情報を取得するときに、当該施設3のエレベーター2に上方階待機または運転休止などの退避機能を開始させる制御信号を出力する。この例において、指令部20は、施設3の近隣施設3aのうち2以上の近隣施設3aから冠水発生の情報を取得するときに、当該施設3のエレベーター2に退避機能を開始させる。
【0106】
以上に説明したように、実施の形態3に係る管理システム18は、近隣情報取得部26を備える。近隣情報取得部26は、施設3について予め設定された各々の近隣施設3aにおける冠水発生の情報を取得する。指令部20は、複数の近隣施設3aのうち、予め設定された施設数以上の近隣施設3aから冠水発生の情報を近隣情報取得部26が取得する場合に、エレベーター2に退避機能を開始させる。ここで、施設数の基準値は、2以上に予め設定される。
【0107】
このような構成により、気象情報システム23による緊急度の元となる予報が外れた場合においても、近隣施設3aの情報に基づいて退避機能が開始される。これにより、必要な場合に退避機能がより確実に開始されるようになる。なお、単一の近隣施設3aのみにおいて冠水が発生する場合に、当該近隣施設3aに固有の条件によって冠水が発生している可能性もある。このような場合に、指令部20は退避機能の開始の制御信号の出力を保留しているので、不必要な場合に退避機能が開始されにくくなる。このため、利用者の利便性が損なわれにくくなる。
【0108】
実施の形態4.
図7は、実施の形態4に係るエレベーターシステム1の構成図である。
【0109】
管理システム18は、学習部27と、更新部28と、を備える。学習部27は、昇降路4における冠水発生および取得部19が取得する緊急度の関係を学習する部分である。学習部27は、取得部19が取得した緊急度の履歴および昇降路4における冠水発生の履歴に基づいて学習を行う。更新部28は、学習部27による学習の結果に基づいて、指令部20における基準値を更新する部分である。更新部28は、例えば第1基準値および第2基準値を更新する。
【0110】
学習部27は、例えば次のように学習を行う。学習部27は、過去の履歴に基づいて、冠水検知部14が冠水を検知しはじめたときの緊急度について頻度分布を生成する。また、学習部27は、過去の履歴に基づいて、冠水検知部14が冠水を検知しなくなったときの緊急度について頻度分布を生成する。生成されるこれらの頻度分布は、冠水発生および緊急度の関係の例である。
【0111】
更新部28は、例えば次のように基準値の更新を行う。更新部28は、冠水を検知しはじめたときの緊急度の頻度分布に基づいて、緊急度の代表値を算出する。緊急度の代表値は、例えば緊急度の平均値、最頻値、中間値、または最低値などである。更新部28は、算出した代表値の緊急度以上で上方階待機または運転休止などの退避機能が開始されるように、当該退避機能の第1基準値を更新する。また、更新部28は、冠水を検知しなくなったときの緊急度の頻度分布に基づいて、緊急度の代表値を算出する。更新部28は、算出した代表値の緊急度以上で上方階待機または運転休止などの退避機能が解除されないように、当該退避機能の第2基準値を更新する。
【0112】
なお、学習部27による学習および更新部28による基準値の更新は、例えば予め設定された周期で定期的に行われてもよいし、昇降路4が冠水するような気象災害が発生するたびに行われてもよい。
【0113】
以上に説明したように、実施の形態4に係る管理システム18は、学習部27と、更新部28と、を備える。学習部27は、取得部19が取得した緊急度の履歴および昇降路4における冠水発生の履歴に基づいて、昇降路4における冠水発生および取得部19が取得する緊急度の関係を学習する。更新部28は、学習部27による学習の結果に基づいて、第1基準値および第2基準値を更新する。
【0114】
周囲の地形、または施設3の構造などの施設3に固有の条件によって、当該施設3における冠水の発生のしやすさが近隣施設3aと異なる場合がある。これに対し、冠水発生および緊急度の履歴に基づいて基準値が更新されるので、施設3に固有の条件の影響を取り込んだ基準値に基づいて退避機能が実施されるようになる。これにより、施設3ごとの条件を踏まえて、冠水による被害の低減および利用者の利便性の確保が両立されるようになる。
【0115】
実施の形態5.
図8は、実施の形態5に係るエレベーターシステム1の構成図である。
【0116】
管理システム18は、施設情報記憶部25と、予測部29と、補正部30と、を備える。予測部29は、昇降路4における冠水発生を予測する部分である。予測部29は、施設3の屋外階の乗場5の条件および施設3が設けられた場所の気象情報に基づいて予測を行う。ここで、予測部29は、施設情報記憶部25を参照して施設3の屋外階の乗場5の条件を取得する。補正部30は、予測部29による予測の結果に基づいて、取得部19が取得する緊急度を補正する部分である。
【0117】
予測部29は、例えば次のように生成する予測モデルに基づいて、冠水発生を予測する。予測モデルは、例えば、取得部19が気象情報システム23から取得する気象情報を入力として、予め設定された時間の後に昇降路4に冠水が発生している確率を算出する。ここで、予め設定された時間は、例えば60分などの時間である。予測部29は、例えば降雨などの冠水の発生に関連しうる気象の事象について、過去に発生した事象を冠水との関連の強さに応じてグループ分けする。冠水との関連の強さは、例えば降水量などの気象情報に基づいて算出される。予測部29は、過去に発生した事象のうち、予め設定された時間の後に昇降路4の冠水が発生した事象の割合を、予め設定された時間の後に昇降路4に冠水が発生している確率としてグループごとに算出する。このようにグループごとに算出された確率は、予測モデルの例である。予測部29は、取得部19が取得した気象情報に基づいて、現在発生している降雨などの事象がいずれのグループに属するかを判定する。予測部29は、現在発生している事象の属するグループについて算出した確率を、現在から予め設定された時間の後に昇降路4に冠水が発生している確率として算出する。
【0118】
なお、予測部29は、予測モデルの生成において、十分な事象の件数を確保しうるように、互いに異なる複数の施設3についての履歴を用いてもよい。このとき、予測部29は、予測モデルにおける確率を、施設3の屋外階の乗場5の条件および当該施設3が設けられた場所における気象情報に基づいて修正する。ここで、屋外階の乗場5の条件は、例えば当該乗場5の面積、当該乗場5が屋外に露出している方角、および当該乗場5の露出の程度などを含む。露出の程度は、例えば屋根の有無、または屋外に露出している開口の面積などを含む。また、気象情報は、風速、風向、または降水量の実測値または予測値などを含む。気象情報は、気象防災の警報または注意報などの情報を含む。予測部29は、例えば、現在の風上が屋外階の乗場5の露出している方角である場合に、風速、当該乗場5の露出の程度などに応じて、予測モデルにおける確率を加減して冠水の発生の確率を算出する。
【0119】
補正部30は、例えば次のように緊急度を補正する。補正部30は、予測部29が予測する冠水の発生の確率が予め設定された確率より高い場合に、取得部19が取得する緊急度を1段階高い緊急度にする。あるいは、緊急度が連続的な数値によって表される場合などに、補正部30は、予測部29が予測する確率に応じた値を緊急度に加算することで補正してもよい。
【0120】
指令部20は、補正部30が補正した緊急度に基づいて、制御信号の出力を行う。
【0121】
なお、予測部29は、他の方法によって予測モデルを生成してもよい。予測部29は、例えば、施設3が設けられた場所の気象情報および当該施設3の構造の情報を入力として、冠水が発生するまでの時間を出力する予測モデルを生成してもよい。予測部29は、例えば、過去に発生した事象の気象情報および施設3の構造の情報と、当該施設3において当該事象によって冠水が発生するまでの時間との組を学習データとする教師あり学習の手法などによって予測モデルを生成する。予測部29は、他の機械学習の手法などによって予測モデルを生成してもよい。このとき、補正部30は、例えば、予測部29が予測する冠水の発生までの時間が予め設定された時間より短い場合に、取得部19が取得する緊急度を1段階高い緊急度にする。
【0122】
また、予測部29は、近隣施設3aにおいて発生した異常の情報を用いて昇降路4における冠水の発生を予測してもよい。
【0123】
以上に説明したように、実施の形態5に係る管理システム18は、予測部29と、補正部30と、を備える。予測部29は、施設3の屋外階の乗場5の条件および施設3が設けられた場所の気象情報に基づいて、昇降路4における冠水発生を予測する。補正部30は、予測部29による予測の結果に基づいて、取得部19が取得する緊急度を補正する。
【0124】
このような構成により、施設3の屋外階の乗場5の条件などの施設3固有の条件を取り入れた予測に基づいて緊急度が補正されるので、施設3に固有の条件の影響を取り込んだ緊急度に基づいて退避機能が実施されるようになる。これにより、施設3ごとの条件を踏まえて、冠水による被害の低減および利用者の利便性の確保が両立されるようになる。
【0125】
実施の形態6.
図9は、実施の形態6に係るエレベーターシステム1の構成図である。
【0126】
エレベーター2において、カメラ32が設けられる。カメラ32は、昇降路4を撮影する装置である。カメラ32は、かご9の下部に配置される。カメラ32は、例えばピットを撮影する。カメラ32が撮影する画像は、例えば制御盤11および遠隔監視装置15を通じて管理システム18に収集される。
【0127】
エレベーター2において、揺動部33が設けられる。揺動部33は、昇降路4が冠水している場合に水面を波立たせる動作を行う部分である。揺動部33は、かご9の下部に配置される。揺動部33は、例えば、かご9の下方に対して、液体の滴下、送風、または音波放射などの動作を行う。昇降路4が冠水している場合に、当該動作によって水面が波立つ。管理システム18は、例えば予め設定された冠水を検知するタイミングで、揺動部33を動作させる。管理システム18は、例えば指令部20からの制御信号を通じて、揺動部33を動作させる。
【0128】
管理システム18は、画像処理部31を備える。画像処理部31は、カメラ32が撮影する画像に基づいて、昇降路4の冠水を検知する部分である。画像処理部31は、昇降路4が冠水している場合に水面を波立たせる揺動部33の動作の後にカメラ32が撮影した画像に基づいて、例えば次のように昇降路4の冠水を検知する。昇降路4が冠水している場合に、カメラ32は、揺動部33の動作によって波立った水面を撮影する。画像処理部31は、水面の波紋などを検出することで、昇降路4の冠水を検知する。一方、昇降路4が冠水していない場合にカメラ32が撮影する範囲に水面がないので、画像処理部31は、揺動部33が動作しても波紋などを検出しない。このため、画像処理部31は、昇降路4の冠水を検知しない。
【0129】
指令部20は、画像処理部31が冠水を検知するときに、冠水した部分までかご9が走行しないように抑制させる制御信号をエレベーター2の制御盤11に出力する。
【0130】
なお、管理システム18は、エレベーター2の運転に用いられる機器を揺動部33として利用してもよい。管理システム18は、例えばピットに配置される図示されないガバナロープ、またはその張り車などの機器を揺動部33として利用してもよい。これらの機器は、かご9の走行に伴って、ピットにおいて動く機器である。このため、昇降路4が冠水している場合に、かご9が走行するとこれらの機器によっても水面が波立つ。このため、管理システム18は、画像処理部31による画像処理の前に、昇降路4が冠水している場合に水面を波立たせる動作として、指令部20による制御信号などを通じてかご9を上方に走行させてもよい。
【0131】
また、画像処理部31は、昇降路4に水が流入している場合に、流入した水による波紋の検出によって昇降路4の冠水を検知してもよい。
【0132】
以上に説明したように、実施の形態6に係る管理システム18は、画像処理部31を備える。画像処理部31は、かご9の下部に設けられたカメラ32が撮影する昇降路4の画像に基づいて、昇降路4の冠水を検知する。指令部20は、画像処理部31が昇降路4の冠水を検知するときに、エレベーター2に昇降路4の冠水した部分までのかご9の走行を抑制させる。
【0133】
このような構成により、冠水検知部14が昇降路4に設けられていないエレベーター2、あるいは冠水検知部14の設置位置が高いエレベーター2においても、ピットの冠水が画像に基づいて検知されるようになる。これにより、冠水などによるエレベーター2の被害がより効果的に低減される。
【0134】
また、エレベーターシステム1は、揺動部33を備える。揺動部33は、昇降路4が冠水している場合に水面を波立たせる動作を行う。画像処理部31は、揺動部33の動作の後に撮影された昇降路4の画像に基づいて、昇降路4の冠水を検知する。
【0135】
このような構成により、画像処理部31は、昇降路4への水の流入が止まっている場合においても、昇降路4の冠水をより確実に検知できるようになる。
【0136】
実施の形態7.
図10は、実施の形態7に係るエレベーターシステム1の構成図である。
【0137】
この例において、冠水検知部14は、既設のエレベーター2に追加で設けられる後付けの機器である。このとき、冠水検知部14は、制御盤11に接続されない。冠水検知部14は、遠隔監視装置15に接続される。冠水検知部14は、遠隔監視装置15の汎用スイッチなどに接続される。
【0138】
以上に説明したように、実施の形態7に係るエレベーターシステム1は、管理システム18と、冠水検知部14と、遠隔監視装置15と、を備える。冠水検知部14は、昇降路4に設けられる。冠水検知部14は、制御盤11に接続されない。冠水検知部14は、昇降路4の冠水を検知する。遠隔監視装置15は、冠水検知部14からの検知の情報を受け付けうるように冠水検知部14に接続される。遠隔監視装置15は、冠水検知部14からの検知の情報を含むエレベーター2の状態の情報を管理システム18に提供する。
【0139】
このような構成により、冠水検知部14による検知の情報が制御盤11を経由せずに管理システム18に提供されるので、制御盤11を含むエレベーター2自体についての仕様変更の工事を必要とせずに、冠水検知部14を導入できるようになる。これにより、管理システム18をより多様なエレベーター2に適用できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本開示に係るエレベーターシステムは、複数の階床を有する施設に適用できる。本開示に係る管理システムは、当該エレベーターシステムに適用できる。
【符号の説明】
【0141】
1 エレベーターシステム、 2 エレベーター、 3 施設、 3a 近隣施設、 4 昇降路、 5 乗場、 6 乗場ドア、 7 巻上機、 8 主ロープ、 9 かご、 10 釣合い錘、 11 制御盤、 12 かごドア、 13 異常検知部、 14 冠水検知部、 15 遠隔監視装置、 16 通信網、 17 情報センター、 18 管理システム、 19 取得部、 20 指令部、 21 監視処理部、 22 管理処理部、 23 気象情報システム、 24 管理端末、 25 施設情報記憶部、 26 近隣情報取得部、 27 学習部、 28 更新部、 29 予測部、 30 補正部、 31 画像処理部、 32 カメラ、 33 揺動部、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 専用ハードウェア