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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】タービン及び過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20240509BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20240509BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
F02B37/24
F02B39/00 D
F01D25/24 G
F01D25/24 E
F01D25/24 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023527558
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2022019082
(87)【国際公開番号】W WO2022259779
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2021095685
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100208591
【弁理士】
【氏名又は名称】井後 智哉
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 健一
(72)【発明者】
【氏名】柴山 隼人
(72)【発明者】
【氏名】淺川 貴男
(72)【発明者】
【氏名】池田 健悟
(72)【発明者】
【氏名】清水 有星
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 太記
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 亮介
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-144546(JP,A)
【文献】実開昭63-014843(JP,U)
【文献】特開2017-067033(JP,A)
【文献】特開平10-121905(JP,A)
【文献】特開2012-167640(JP,A)
【文献】特開2004-278532(JP,A)
【文献】特開2006-207534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F02B 39/00
F01D 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン翼車と、
吸気口から受け入れたガスが流れる流路を含むハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置されると共に前記流路から前記ガスを受けて前記タービン翼車に導く可変容量機構であって、前記タービン翼車に向く主面と背面とを有する円板状のノズルリングと、前記ノズルリングの主面側に配置されるノズルベーンと、前記ノズルベーンから延びると共に前記ノズルリングを貫通するノズル軸、及び前記ノズルリングの背面側に配置されると共に前記ノズル軸の先端に連結されたノズルリンク板を含むノズル翼ユニットと、を有する前記可変容量機構と、
前記ノズル翼ユニットに接触した状態で前記ノズル軸の軸方向に付勢力を加える付勢部材と、を備え、
前記ノズルベーンは、前記付勢力によって前記ノズルベーンに対面する部位に突き当たり、
前記ノズルリンク板は、前記軸方向から見て前記ノズルベーンと重複する第1領域と、前記ノズルベーンと重複しない第2領域と、を含み、
前記ノズルリンク板に前記付勢部材が接触する部位は、前記第2領域に位置する、
タービン。
【請求項2】
前記可変容量機構は、前記ノズルリングと協働して前記ノズルベーンを挟む円板部材をさらに有し、
前記ノズルベーンに対面する部位は、前記円板部材である、請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記ノズル軸が設けられた前記ノズルベーンの端面とは逆側の端面と対面する流路面を含み、
前記ノズルベーンに対面する部位は、前記ハウジングの前記流路面である、請求項1に記載のタービン。
【請求項4】
前記ノズルリングから前記ノズルリンク板までの前記軸方向に沿った距離は、前記ノズルベーンから前記ノズルベーンに対面する部位までの前記軸方向に沿った距離より、大きい、請求項1に記載のタービン。
【請求項5】
タービン翼車と、
吸気口から受け入れたガスが流れる流路を含むハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置されると共に前記流路から前記ガスを受けて前記タービン翼車に導く可変容量機構であって、前記タービン翼車に向く主面と背面とを有する円板状のノズルリングと、前記ノズルリングの主面側に配置されるノズルベーンと、前記ノズルベーンから延びると共に前記ノズルリングを貫通するノズル軸、及び前記ノズルリングの背面側に配置されると共に前記ノズル軸の先端に連結されたノズルリンク板を含むノズル翼ユニットと、を有する前記可変容量機構と、
前記ノズル翼ユニットの前記ノズルリンク板に接触した状態で前記ノズル軸の径方向に付勢力を加える付勢部材と、を備え、
前記ノズル軸は、前記ノズルリングの貫通穴の内周面に突き当たる、タービン。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のタービンを備える過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービン及び過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、可変容量機構を備える過給機を開示する。可変容量機構は、スクロール流路からタービンに供給される排気ガスの流速を制御する。可変容量機構は、ノズルベーンの角度を調整して、排気ガスが流れる流路の断面積を変化させることによって、排気ガスの流速を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-207534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可変容量機構を備えるタービンは、様々な使用環境において所望の性能を発揮できるよう信頼性の向上が望まれている。可変容量機構に不規則な外力が印加されると、信頼性が低下する要因になる。例えば、可変容量機構は、エンジンから排出された排気ガスをタービン翼車に導く経路上に配置される。排気ガスの状態は、エンジンの動作状態に応じて様々に変化する。可変容量機構を構成する部品は、排気ガスの状態変化の影響を受ける。また、可変容量機構を構成する部品は、タービンが受ける振動又は衝撃の影響を受ける。
【0005】
本開示は、信頼性を向上できるタービン及び当該タービンを備えた過給機を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様のタービンは、タービン翼車と、吸気口から受け入れたガスが流れる流路を含むハウジングと、ハウジングの内部に配置されると共に流路からガスを受けてタービン翼車に導く可変容量機構であって、タービン翼車に向く主面と背面とを有する円板状のノズルリングと、ノズルリングの主面側に配置されるノズルベーン、ノズルベーンから延びると共にノズルリングを貫通するノズル軸及びノズルリングの背面側に配置されると共にノズル軸の先端に連結されたノズルリンク板を含むノズル翼ユニットと、を有する可変容量機構と、ノズル翼ユニットに接触した状態でノズル軸の軸方向に付勢力を加える付勢部材と、を備える。ノズルベーンは、付勢力によってノズルベーンに対面する部位に突き当たる。
【発明の効果】
【0007】
本開示のタービン及び過給機によれば、信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態のタービンを備えた過給機の断面図である。
図2図2は、図1に示す可変容量機構及び付勢部材を分解して示す斜視図である。
図3図3は、第1実施形態のタービンの可変容量機構と付勢部材の要部を拡大した断面図である。
図4図4は、第1実施形態のタービンの可変容量機構と付勢部材の平面図である。
図5図5は、第2実施形態のタービンの可変容量機構と付勢部材の要部を拡大した断面図である。
図6図6は、第2実施形態のタービンの可変容量機構と付勢部材の平面図である。
図7図7は、第3実施形態のタービンの可変容量機構と付勢部材の要部を拡大した断面図である。
図8図8は、第3実施形態のタービンの可変容量機構と付勢部材の平面図である。
図9図9は、第4実施形態のタービンの可変容量機構と付勢部材の要部を拡大した断面図である。
図10図10は、第4実施形態のタービンの可変容量機構と付勢部材の平面図である。
図11図11は、第1変形例のタービンの可変容量機構と付勢部材の要部を拡大した断面図である。
図12図12は、第2変形例のタービンの可変容量機構と付勢部材の要部を拡大した断面図である。
図13図13は、第3変形例のタービンを備えた過給機の断面図である。
図14図14は、第4変形例のタービンの可変容量機構と付勢部材の要部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一態様のタービンは、タービン翼車と、吸気口から受け入れたガスが流れる流路を含むハウジングと、ハウジングの内部に配置されると共に流路からガスを受けてタービン翼車に導く可変容量機構であって、タービン翼車に向く主面と背面とを有する円板状のノズルリングと、ノズルリングの主面側に配置されるノズルベーン、ノズルベーンから延びると共にノズルリングを貫通するノズル軸及びノズルリングの背面側に配置されると共にノズル軸の先端に連結されたノズルリンク板を含むノズル翼ユニットと、を有する可変容量機構と、ノズル翼ユニットに接触した状態でノズル軸の軸方向に付勢力を加える付勢部材と、を備える。ノズルベーンは、付勢力によってノズルベーンに対面する部位に突き当たる。
【0010】
タービンは、ノズル翼ユニットに対してノズル軸の軸方向へ向く付勢力を与える付勢部材を備える。付勢力が与えられたノズル翼ユニットは、ノズルベーンに対面する部位に突き当たる。ノズルリングに対するノズル翼ユニットの相対的な運動は、ノズル軸周りの回転だけが可能である。そのほかの意図しない振れ回りなどといったノズル翼ユニットの運動は抑制される。従って、ノズルベーンが不規則な外力を受けたとしても、ノズル翼ユニットは、ノズルリングに対する相対的な不規則運動を生じない。可変容量機構を構成する部品群の状態を良好に保てるので、可変容量機構が所望の性能を発揮できる状態を維持できる。よって、可変容量機構を備えたタービンの信頼性を向上できる。
【0011】
可変容量機構は、ノズルリングと協働してノズルベーンを挟む円板部材をさらに有してもよい。ノズルベーンに対面する部位は、円板部材であってもよい。円板部材は、円板部材からノズルリングまでの距離を精密に設定することが可能である。円板部材は、ノズルベーンと円板部材との間に形成される隙間も精度よく設定することが可能である。円板部材は、ノズル軸周りのノズルベーンの回転運動を阻害することなく、ノズルベーンの不規則運動の発生を抑制できるような付勢力を設定することも可能である。
【0012】
ハウジングは、ノズル軸が設けられたノズルベーンの端面とは逆側の端面と対面する流路面を含んでもよい。ノズルベーンに対面する部位は、ハウジングの流路面であってもよい。このような構成によれば、ノズルベーンが接触するための別途の部品が不要になる。したがって、タービンを簡易な構成とすることができる。
【0013】
ノズルリングからノズルリンク板までの軸方向に沿った距離は、ノズルベーンからノズルベーンに対面する部位までの軸方向に沿った距離より、大きくてもよい。ノズルベーンに対面する部位にノズルベーンを確実に接触させることができる。
【0014】
ノズルリンク板は、軸方向から見てノズルベーンと重複する第1領域と、ノズルベーンと重複しない第2領域と、を含んでもよい。ノズルリンク板に付勢部材が接触する部位は、第1領域に位置してもよい。このような構成によれば、付勢部材による付勢力がノズル軸に近い領域に加えられる。ノズルリンク板とノズル軸との連結部分から、付勢力が作用するノズルリンク板上の位置までの距離が短くなる。ノズル軸の回転軸線に対してノズル翼ユニットを傾けようとするモーメントが小さくなる。ノズル軸とノズルリングの貫通穴の内周面との摩擦力が小さくなるので、流路断面積を制御するためのノズルベーンの動きを良好に維持できる。
【0015】
ノズルリンク板は、軸方向から見てノズルベーンと重複する第1領域と、ノズルベーンと重複しない第2領域と、を含んでもよい。ノズルリンク板に付勢部材が接触する部位は、第2領域に位置してもよい。このような構成によれば、付勢力がノズル軸から遠い領域に加えられる。ノズルリンク板にノズル軸が連結された位置から、付勢力が作用するノズルリンク板上の位置までの距離が大きくなる。ノズル軸の回転軸線に対してノズル翼ユニットを傾けようとするモーメントが大きくなる。ノズル軸がノズルリングの貫通穴の内周面に接触することによって発生する摩擦力が大きくなる。したがって、意図しない振れ回りなどの動きがさらに抑制される。
【0016】
本開示の別の態様のタービンは、タービン翼車と、吸気口から受け入れたガスが流れる流路を含むハウジングと、ハウジングの内部に配置されると共に流路からガスを受けてタービン翼車に導く可変容量機構であって、タービン翼車に向く主面と背面とを有する円板状のノズルリングと、ノズルリングの主面側に配置されるノズルベーンと、ノズルベーンから延びると共にノズルリングを貫通するノズル軸、及びノズルリングの背面側に配置されると共にノズル軸の先端に連結されたノズルリンク板を含むノズル翼ユニットと、を有する可変容量機構と、ノズル翼ユニットに接触した状態でノズル軸の径方向に付勢力を加える付勢部材と、を備える。ノズル軸は、ノズルリングの貫通穴の内周面に突き当たる。
【0017】
ノズル軸は、ノズルリングの貫通穴の内周面に突き当たる。その結果、ノズルリングに対するノズル翼ユニットの相対的な運動は、ノズル軸周りの回転だけが可能である。つまり、そのほかの意図しない振れ回りといったノズル翼ユニットの運動は抑制される。従って、ノズルベーンが不規則な力を受けたとしても、ノズル翼ユニットは、不規則運動を生じない。可変容量機構を構成する部品群の状態を良好に保てるので、可変容量機構が所望の性能を発揮できる状態を維持できる。よって、可変容量機構を備えたタービンの信頼性を向上できる。
【0018】
本発明の別の態様は、上記のタービンを備えた過給機である。過給機は、上述のタービンを備えているので、信頼性を向上することができる。
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本開示のタービンを備えた過給機を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
<第1実施形態>
図1に示すように、過給機1は、可変容量型である。過給機1は、例えば、船舶又は車両の内燃機関に適用される。過給機1は、タービン10とコンプレッサ20とを有する。タービン10は、タービンハウジング11と、タービン翼車12と、可変容量機構30と、ベアリングハウジング3と、を有する。コンプレッサ20は、コンプレッサハウジング21と、コンプレッサ翼車22と、を有する。
【0021】
タービン翼車12は、シャフト2の第1の端部に設けられている。コンプレッサ翼車22は、シャフト2の第2の端部に設けられている。タービンハウジング11とコンプレッサハウジング21との間には、ベアリングハウジング3が設けられている。ベアリングハウジング3にはベアリング4が配置される。シャフト2は、ベアリング4を介してベアリングハウジング3に回転可能に支持される。
【0022】
タービンハウジング11は、吸気口11Rと、スクロール流路13と、流出口14と、を有する。吸気口11Rは、内燃機関から排出された排気ガスをタービンハウジング11に受け入れる。スクロール流路13は、タービン翼車12の周囲において、回転軸線AXを中心とした周方向に延びる。スクロール流路13は、吸気口11Rから受け入れたガスをタービン翼車12に導く。可変容量機構30を経由してタービン翼車12に導かれた排気ガスは、タービン翼車12を回転させる。タービン翼車12を回転させた後、排気ガスは、流出口14を通じてタービンハウジング11の外部に流出する。
【0023】
より詳細には、タービン10は、接続流路Sを有する。接続流路Sは、スクロール流路13からタービン翼車12へ排気ガスを導く。接続流路Sは、複数のノズルを含む。複数のノズルは、複数のノズルベーン34によって形成される。より詳細には、1個のノズルは、一対のノズルベーン34と後述するCCプレート31とノズルリング32とに囲まれた空間である。複数のノズルベーン34は、回転軸線AXを中心とする基準円上に等間隔に配置される。ノズルベーン34は、回転軸線AXに平行なノズル軸線NXの周りに回転する。複数のノズルベーン34が回転することで、ノズルの断面積が調整される。ノズルの断面積を調整する機構として、タービン10は、可変容量機構30を有する。
【0024】
コンプレッサハウジング21は、スクロール流路23と、吸入口24と、吐出口21Rと、を有する。タービン翼車12の回転に伴って、シャフト2を介してコンプレッサ翼車22が回転する。回転するコンプレッサ翼車22は、吸入口24を通じて外部の空気を吸入する。吸入された空気は、コンプレッサ翼車22及びスクロール流路23を通過することにより圧縮される。空気は、圧縮空気として吐出口21Rから吐出される。圧縮空気は、内燃機関に供給される。
【0025】
可変容量機構30は、クリアランスコントロールプレート(Clearance Control Plate)と、ノズルリング32と、を有する。クリアランスコントロールプレートは、以下「CCプレート31」と呼ぶ。CCプレート31は、円板形状を有する。ノズルリング32は、円板形状を有する。CCプレート31の中心軸線は、ノズルリング32の中心軸線と重複する。CCプレート31の中心軸線は、回転軸線AXと重複する。ノズルリング32の中心軸線は、回転軸線AXと重複する。CCプレート31は、回転軸線AXの方向において、タービンハウジング11側に位置する。ノズルリング32は、回転軸線AXの方向において、ベアリングハウジング3側に位置する。CCプレート31とノズルリング32との間隔は、接続流路Sである。CCプレート31とノズルリング32との間には、複数のノズルベーン34が配置される。
【0026】
図2に示すように、可変容量機構30は、CCプレート31と、ノズルリング32と、クリアランスコントロールピン(Clearance Control Pin)と、駆動リング35と、を有する。クリアランスコントロールピンは、以下「CCピン33」と呼ぶ。さらに、可変容量機構30は、ノズル翼ユニット300を有する。
【0027】
CCプレート31は、プレート主面31aと、プレート背面31bと、プレート穴31hと、を有する。プレート主面31aは、タービンハウジング11の内面に対面する(図1参照)。プレート背面31bは、ノズルリング32に対面する。プレート穴31hは、プレート主面31aからプレート背面31bに至る貫通穴である。CCプレート31には、プレートピン穴31pが設けられている。プレートピン穴31pは、少なくともプレート背面31bに形成された開口を含む。プレートピン穴31pには、プレート背面31bに形成された開口からCCピン33が差し込まれる。
【0028】
ノズルリング32は、ノズルリング本体32dと、ノズルリングフランジ32fと、を有する。ノズルリング本体32dは、円筒状の部分である。ノズルリング本体32dは、複数のノズル軸穴32sを有する。ノズル軸穴32sは、貫通穴である。複数のノズル軸穴32sの周方向における間隔は、互いに等しい。ノズルリングフランジ32fは、ノズルリング本体32dの外周側面から径方向に突出する。ノズルリングフランジ32fは、フランジピン穴32pを有する。フランジピン穴32pの中心軸線は、プレートピン穴31pの中心軸線と重複する。
【0029】
ノズルリング32は、ノズルリング主面32aと、ノズルリング背面32bと、リング穴32hと、を含む。ノズルリング主面32aは、CCプレート31と対面する。ノズルリング主面32aは、タービン翼車12の方向に向いている。ノズルリング背面32bは、本体背面32b1と、フランジ背面32b2と、を含む。本体背面32b1は、ノズルリング本体32dの端面である。本体背面32b1は、ベアリングハウジング3に向いている。本体背面32b1には、ノズル軸穴32sの開口が形成される。本体背面32b1上には、ノズルリンク板36の一部分が配置される。従って、本体背面32b1の一部は、ノズルリンク板36に対面する。フランジ背面32b2は、ノズルリングフランジ32fの端面である。フランジ背面32b2も、ベアリングハウジング3に向いている。フランジ背面32b2上には、後述する駆動リング35が配置される。従って、フランジ背面32b2は、駆動リング35に対面する。
【0030】
CCピン33は、CCプレート31をノズルリング32に連結する。CCピン33は、プレートピン穴31pに差し込まれる。CCピン33は、フランジピン穴32pにも差し込まれる。CCピン33は、CCプレート31とノズルリング32との間の隙間を規定する。
【0031】
駆動リング35は、ノズルリングフランジ32f上に配置される。より詳細には、駆動リング35は、フランジ背面32b2上に配置される。駆動リング35は、回転軸線AXを中心とするリング状の部材である。駆動リング35は、駆動リング穴35hを有する。駆動リング35は、駆動リング穴35hに配置されたノズルリング本体32dを周方向に囲む。駆動リング35は、ノズルリング32に対して同軸である。駆動リング35は、回転軸線AXを中心にノズルリング32に対して回転可能である。
【0032】
駆動リング35は、駆動リング主面35aと、駆動リング背面35bと、を有する。駆動リング主面35aは、ノズルリング32に対面する。より詳細には、駆動リング主面35aは、ノズルリング32のフランジ背面32b2に対面する。駆動リング背面35bの上には、複数のノズルリンク板36が配置される。駆動リング背面35bの一部は、ノズルリンク板36に対面する。また、駆動リング背面35bの上には、1個の駆動リンク板38も配置される。
【0033】
駆動リング35は、ジョイント35Jを含む。ジョイント35Jには、ノズルリンク板36がはめ込まれる。複数のジョイント35Jは、周方向において等間隔に設けられている。ジョイント35Jは、一対の起立部35J1を含む。起立部35J1は、駆動リング背面35bから突出する。起立部35J1は、ベアリングハウジング3に向かって突出する。一対の起立部35J1の間には、ノズルリンク板36のリンク板先端36eがはめ込まれる。
【0034】
ノズル翼ユニット300は、ノズルベーン34と、ノズル軸37と、ノズルリンク板36と、を有する。ノズル翼ユニット300は、ノズルリング32のノズル軸穴32sごとに配置される。ノズル翼ユニット300は、駆動リング35のジョイント35Jごとに配置される。ノズル翼ユニット300の配置間隔は、円周方向に等間隔である。
【0035】
図3に示すように、ノズルベーン34は、CCプレート31とノズルリング32との間に配置される。ノズルベーン34は、ベーン主面34aと、ベーン背面34bと、を含む。ベーン主面34aは、CCプレート31のプレート背面31bに対面する。ベーン背面34bは、ノズルリング32のノズルリング主面32aに対面する。さらに、ベーン主面34aからベーン背面34bまでのノズル軸線NXの方向に沿った長さを、ノズルベーン幅として規定する。CCプレート31のプレート背面31bからノズルリング主面32aまでの距離を、接続流路幅として規定する。接続流路幅は、ノズルベーン幅よりわずかに大きい。従って、ベーン主面34aとプレート背面31bとの間にわずかな第1の隙間C1が存在する。さらに、ベーン背面34bとノズルリング主面32aとの間にもわずかな第2の隙間C2が存在する。ノズルベーン34は、CCプレート31に対して回転軸線AXの方向に第1の隙間C1の長さだけ相対的に動くことができる。ノズルベーン34は、ノズルリング32に対して回転軸線AXの方向に第2の隙間C2の長さだけ相対的に動くことができる。
【0036】
ベーン背面34bには、ノズル軸37が取り付けられている。より詳細には、ノズル軸37は、ノズル軸基端37fとノズル軸先端37eとを含む。ベーン背面34bには、ノズル軸基端37fが固定される。ノズル軸37は、ノズルリング32のノズル軸穴32sを挿通する。ノズル軸先端37eは、ノズルリング32の本体背面32b1から突出した位置に配置される。ノズル軸37は、ノズル軸外周面37sを含む。ノズル軸外周面37sは、ノズル軸穴32sの内周面32s1に対して対面する。内周面32s1とノズル軸外周面37sとの間には、ノズル軸37の回転を許す程度のわずかな第3の隙間C3が存在する。ノズル軸先端37eには、ノズルリンク板36が固定される。
【0037】
ノズルリンク板36は、棒状の部材である。ノズルリンク板36は、リンク板主面36aと、リンク板背面36bと、を含む。ノズルリンク板36は、ノズルリング背面32b上に配置される。より詳細には、ノズルリンク板36は、本体背面32b1に配置される部分と、フランジ背面32b2に配置される部分と、を含む。リンク板主面36aは、ノズルリング32のフランジ背面32b2に対面し、駆動リング背面35bに対面し、ノズルリング32の本体背面32b1に対面する。リンク板背面36bは、ベアリングハウジング3のベアリングハウジング主面3aに対面する。リンク板背面36bは、後述する皿ばね39にも対面する。
【0038】
ノズルリンク板36は、第1の端部であるリンク板基端36fと、第2の端部であるリンク板先端36eと、を含む。リンク板基端36fは、本体背面32b1上に配置される。リンク板基端36fには、リンク板穴36sが設けられている。リンク板穴36sには、ノズル軸37のノズル軸先端37eが差し込まれている。ノズル軸先端37eは、カシメ加工によって、ノズルリンク板36に対して固定される。リンク板先端36eは、フランジ背面32b2に配置される。リンク板先端36eは、ジョイント35Jに嵌め込まれている(図2参照)。より詳細には、リンク板先端36eは、一対の起立部35J1の間に配置される。リンク板先端36eは、一対の起立部35J1に対して固定されていない。ノズルリンク板36は、駆動リング35に対して固定されていない。
【0039】
上述したように、ノズル軸37は、ノズルベーン34に対して固定される。ノズルリンク板36は、ノズル軸37に対して固定される。ノズルベーン34、ノズル軸37及びノズルリンク板36は、1個の部品であるノズル翼ユニット300としてみなすことができる。
【0040】
ノズルリング32に対する駆動リング35の回転位置に応じて、ノズルリンク板36は、ノズル軸線NXを中心として揺動する。ノズルリンク板36の揺動に応じて、ノズル軸37は、ノズル軸線NXを中心として回転する。ノズルリンク板36の揺動に応じて、ノズル軸37に固定されたノズルベーン34は、ノズル軸線NXを中心として揺動する。
【0041】
一方、ノズル翼ユニット300は、上記の動きとは別の動きをすることがあり得る。ノズル翼ユニット300と、ノズル翼ユニット300に隣接する別の部品との間には、わずかな隙間が存在する。ノズル翼ユニット300は、ノズル翼ユニット300と隣接する別の部品との間の隙間だけ相対的に動くことが許容される。ノズル翼ユニット300には、駆動リング35から与えられる力だけでなく、意図しない外力が加わることもある。例えば、ノズル翼ユニット300には、排気ガスの脈動に起因する外力がノズルベーン34を介して加わる。また、ノズル翼ユニット300を含む可変容量機構30は、例えば内燃機関といった他の装置からランダム振動又は衝撃を受けることもある。ランダム振動又は衝撃が隣接する別の部品に作用すると、意図しない外力となる。部品間の隙間と、意図しない外力の作用とによって、ノズル翼ユニット300は、意図しない動きを生じる可能性がある。
【0042】
意図しない動きとして、ノズル翼ユニット300の振れ回りを例示する。意図しない動きは、振れ回りだけに限定されない。ノズル翼ユニット300の振れ回りとは、ノズル軸37が首を振るように動く動きを意味する。振れ回りによると、例えば、駆動リング35のジョイント35Jに対してノズルリンク板36のリンク板先端36eが不規則かつ断続的に衝突する現象を発生させる。
【0043】
振れ回りは、3つの隙間の存在によって生じる。第1に、ノズルベーン34のベーン主面34aとCCプレート31のプレート背面31bとの第1の隙間C1である。第2に、ノズルベーン34のベーン背面34bとノズルリング主面32aとの第2の隙間C2である。第3にノズル軸外周面37sとノズル軸穴32sの内周面32s1との第3の隙間C3である。
【0044】
意図しない動きは、隙間の存在と外力の作用とによって生じると述べた。振れ回りは、上述した第1の隙間C1、第2の隙間C2及び第3の隙間C3が全て存在する場合に生じる。そこで、第1実施形態のタービン10は、第1の隙間C1、第2の隙間C2及び第3の隙間C3のうち、少なくとも1つの隙間を解消する機構を備える。第1実施形態のタービン10は、第1の隙間C1を解消することによって意図しない振れ回りの発生を抑制する。第1の隙間C1を解消する部品として、タービン10は、付勢部材である皿ばね39を備える。
【0045】
「隙間の解消」とは、ベーン主面34aの全面がプレート背面31bに接することを要しない。振れ回りは、ベーン主面34aの全面がプレート背面31bから離間している状態であるときに生じる。ベーン主面34aの一部分がプレート背面31bに接していれば、ノズルベーン34の動きが制限されるので、振れ回りも生じない。ベーン主面34aの一部分がプレート背面31bに接している状態も、隙間が解消される状態であるとする。
【0046】
「隙間」とは、互いに対面する部品同士が全く接触していない状態を意味する。例えば、「第1の隙間C1が存在する」とは、ベーン主面34aがプレート背面31bに全く接触していない状態をいう。従って、図3に示すように、ベーン主面34aの一部がプレート背面31bに接触している状態は、厳密には、第1の隙間C1が存在している状態とは呼ばない。図3では、説明の便宜上「第1の隙間C1」を示している。
【0047】
図3及び図4に示すように、皿ばね39は、ベアリングハウジング3と可変容量機構30との間に配置される。皿ばね39は、回転軸線AXを中心としたリング状に形成される。皿ばね39の形状は、外径から内径にかけて傾斜する。皿ばね39の外径は、駆動リング35の外径よりも小さい。すべてのノズルリンク板36に対し、一つの皿ばね39が配置される。
【0048】
皿ばね39は、ばね主面39aと、ばね背面39bと、を含む。ばね主面39aは、可変容量機構30に対面する。より詳細には、ばね主面39aは、駆動リング35と、ノズルリンク板36と、ノズルリング32と、に対面する。皿ばね39は、円板状である。したがって、皿ばね39は、可変容量機構30が備える全てのノズル翼ユニット300に対面する。1個の皿ばね39は、複数個のノズル翼ユニット300を押圧する。さらに、ばね主面39aは、駆動リング35の駆動リング背面35bに対面する。ばね主面39aは、ノズルリンク板36のリンク板背面36bにも対面する。ばね主面39aは、ノズルリング32の本体背面32b1にも対面する。ばね主面39aは、ばね主面外周部39a1と、ばね主面内周部39a2と、を含む。ばね主面外周部39a1は、ノズル翼ユニット300に接触する。より詳細には、ばね主面外周部39a1は、ノズルリンク板36のリンク板背面36bに接触する。ばね主面内周部39a2は、ノズル翼ユニット300に接触しない。ばね主面内周部39a2は、リンク板背面36bから離間する。例えば、ばね主面内周部39a2は、ノズル軸先端37eから離間すると共に、ノズル軸先端37eに対面する。
【0049】
ばね背面39bは、ベアリングハウジング主面3aに対面する。ばね背面39bは、ばね背面外周部39b1と、ばね背面内周部39b2と、を含む。ばね背面外周部39b1は、ベアリングハウジング主面3aから離間する。ばね背面内周部39b2は、ベアリングハウジング主面3aに接触する。
【0050】
皿ばね39は、ノズルリンク板36とベアリングハウジング3とに挟まれている。ノズルリンク板36からベアリングハウジング3までの距離は、皿ばね39の自然長よりも短い。従って、皿ばね39は、回転軸線AXの方向に圧縮される。皿ばね39の圧縮によって、皿ばね39は付勢力としての弾性力を発生する。弾性力は、ばね主面外周部39a1がリンク板背面36bに接触する部分を力点PAとして、ノズルリンク板36に作用する。
【0051】
ノズル翼ユニット300に力が加えられると、ノズル軸37が軸方向に沿って移動する。ノズル軸37の移動に伴って、ノズルベーン34が軸方向に沿って移動する。ノズルベーン34は、ノズルベーン34に対面する部位であるCCプレート31に突き当たる。その結果、第1の隙間C1が解消される。
【0052】
力Fの大きさは、ノズル翼ユニット300に要求される動きを阻害しない程度とされる。理想的には、力Fの大きさは、ノズルベーン34のベーン主面34aがCCプレート31のプレート背面31bに触れる程度とされる。ベーン主面34aがプレート背面31bに押圧されるようになると、ベーン主面34aとプレート背面31bとの間に摩擦力が生じてしまうからである。ベーン主面34aとプレート背面31bとの接触によって発生する摩擦力は、駆動リング35の動きに応じるノズルベーン34の揺動を阻害しない程度であれば、許容してもよい。弾性力は、ベーン主面34aからプレート背面31bに対して押圧力が作用する程度の大きさに設定されてもよい。ベーン主面34aからプレート背面31bに対して押圧力が作用する状態によれば、排気ガスの脈動に起因してノズルベーン34に作用する不規則な外力に対して対抗することができる。弾性力は、想定される外力の大きさに基づいて設定されてもよい。
【0053】
上述した第1の隙間C1の解消には、皿ばね39による弾性力の付与の他に、可変容量機構30を構成する部品の位置も関係する。ノズルリンク板36に力Fを加えて、第1の隙間C1を解消するためには、ベーン主面34aがプレート背面31bに接触するまで移動できることを要する。リンク板主面36aと本体背面32b1との間の第4の隙間C4が、ベーン主面34aとプレート背面31bと間の第1の隙間C1よりも大きいという関係を満たすことにより実現できる。例えば、ベーン主面34aがプレート背面31bに接触した状態において、リンク板主面36aと本体背面32b1との間には第4の隙間C4が未だ存在する。
【0054】
力点PAの位置についてさらに詳細に述べる。
【0055】
ノズルリンク板36のリンク板背面36bは、第1領域S1と、第2領域S2と、を有する。第1領域S1は、ノズル軸線NXに沿った軸方向から見たノズルベーン34の投影領域SBと重複する。第1領域S1は、リンク板基端36fを含む。第1領域S1は、ノズル軸先端37eに近い領域である。第2領域S2は、リンク板背面36bにおいて第1領域S1を除いた残りの部分である。第2領域S2は、ノズル軸線NXに沿った軸方向から見たノズルベーン34の投影領域SBと重複しない。第2領域S2は、ノズルリンク板36のリンク板基端36fから遠い領域である。第2領域S2は、ノズルリンク板36のリンク板先端36eまでの領域を含む。第2領域S2は、ノズル軸37から遠い領域である。第2領域S2の面積は、第1領域S1の面積よりも大きくてもよい。
【0056】
第1実施形態における皿ばね39の力点PAは、上述の第2領域S2に位置する。力点PAは、ノズルリンク板36のリンク板基端36fから遠い領域に位置する。
【0057】
上述した第1実施形態のタービン10によれば、ノズルリング32に対するノズル翼ユニット300の相対的な運動は、ノズル軸線NXを中心とした回転だけが可能である。したがって、そのほかの意図しない振れ回りといったノズル翼ユニット300の運動は、抑制される。従って、ノズルベーン34が不規則な外力を受けたとしても、ノズル翼ユニット300は、ノズルリング32に対する相対的な不規則運動を生じない。可変容量機構30を構成する部品群の状態を良好に保てるので、可変容量機構30が所望の性能を発揮できる状態を維持できる。よって、可変容量機構30を備えたタービン10の信頼性を向上させることができる。
【0058】
CCプレート31を備えることによって、CCプレート31からノズルリング32までの距離を精密に設定することが可能である。ノズルベーン34と円板部材(CCプレート31又はノズルリング32)との間に形成される隙間も精度よく設定することが可能になる。ノズル軸37周りのノズルベーン34の回転運動を阻害することなく、ノズルベーン34の不規則な運動の発生を抑制できるような力が設定しやすくなる。
【0059】
さらに、ノズルリング32からノズルリンク板36までの回転軸線AXの方向に沿った距離(第4の隙間C4)は、ノズルベーン34からノズルベーン34に対面するCCプレート31までの回転軸線AXの方向に沿った距離(第1の隙間C1)より、大きい。力Fによって、ノズルリンク板36がノズルリング32に突き当たる前に、ノズルベーン34がCCプレート31に突き当たる。ノズルベーン34に対面する部位であるCCプレート31にノズルベーン34を確実に接触させることができる。
【0060】
ノズル軸37には、ノズル軸線NXからずれた位置で力Fが加えられる。このような構成によれば、皿ばね39による力Fがノズル軸37から遠い領域(第2領域S2)に加えられる。力Fが作用する力点PAとなるノズルリンク板36上の位置から、ノズルリンク板36がノズル軸37に連結された部分までの距離が大きくなる。ノズル翼ユニット300のノズル軸37を傾けようとするモーメントが発生する。ノズル軸穴32sの内周面32s1との接触に起因する摩擦力が生じるので、意図しない振れ回りなどの運動がさらに抑制される。
【0061】
ノズルベーン34とCCプレート31との間の第1の隙間C1の解消は、振れ回りの抑制の他にさらなる効果も奏する。
【0062】
図1に示すように、可変容量機構30から排出された排気ガスは、タービン翼車12の羽根部12sに受け止められる。可変容量機構30からタービン翼車12に送られる排気ガスの状態は、場所によらず一様であることが理想的である。しかし、可変容量機構30における接続流路Sの構成によって、タービン翼車12に送られる排気ガスの状態は、場所に応じて変わることがある。例えば、ノズルベーン34とCCプレート31との間の第1の隙間C1及びノズルベーン34とノズルリング32との間の第2の隙間C2は、排気ガスの状態に影響を及ぼす。排気ガスを良好な状態に近づけるためには、第1の隙間C1及び第2の隙間C2は存在しない方がよい。
【0063】
第1実施形態では、ノズルベーン34をCCプレート31に接触させることによって、第1の隙間C1を解消する。ノズルベーン34とノズルリング32との間の第2の隙間C2は、依然として存在する。
【0064】
タービン翼車12に注目すると、排気ガスの流路は、タービン翼車12とタービンハウジング11とによって囲まれた空間である。タービン翼車12とタービンハウジング11とが対面する部分には、僅かな隙間C5が形成される。隙間C5は、流れの状態に影響を及ぼしやすい。したがって、隙間C5が形成される部分には、理想的な状態に近い排気ガスを提供することが望まれる。タービン翼車12とタービンハウジング11とが互いに対面する部分は、ノズルベーン34とCCプレート31とが互いに対面する部分の下流に位置する。ノズルベーン34とCCプレート31とが互いに対面する部分では第1の隙間C1が解消される。したがって、排気ガスの乱れが抑制される傾向にある。乱れが抑制された排気ガスが、ノズルベーン34とCCプレート31とが対面する部分に供給される。その結果、タービン翼車12には、理想的な状態に近い排気ガスが提供されるようになる。したがって、排気ガスが有するエネルギをタービン翼車12によって効率的に回収することが可能になるから、過給機1の性能の向上に寄与できる。
【0065】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態のタービン10Aの要部を拡大して示す断面図である。図6は、第2実施形態のタービン10Aが備える付勢部材を示す平面図である。第2実施形態のタービン10Aは、皿ばね39の代わりに遮熱板41を備える点で第1実施形態のタービン10と相違する。
【0066】
遮熱板41は、タービンハウジング11側の熱を遮断する。また、遮熱板41は、皿ばね39の機能も奏する。遮熱板41は、ノズル翼ユニット300を押圧する。遮熱板41は、円板部42と、ばね部43と、を含む。
【0067】
円板部42の形状は、回転軸線AXを中心とした円板状である。円板部42は、ノズルリング32に対してベアリングハウジング3側に配置される。円板部42は、回転軸線AXに沿った軸方向においてノズルリンク板36から離間する。円板部42は、円板主面42aと、円板背面42bと、を含む。円板主面42aは、ノズルリンク板36に対面する。円板背面42bは、ベアリングハウジング3に接触してもよい。円板部42により、ベアリングハウジング3の温度の上昇が抑制される。
【0068】
ばね部43は、円板主面42aから突出する。円板部42及びばね部43は一体的に形成される。ばね部43は、回転軸線AXを中心としたリング状である。ばね部43の断面形状は、圧縮されることによって復元力を発生することができる形状であれば、特に制限はない。第1実施形態の皿ばね39と同様に、1個のばね部43は、複数のノズルリンク板36に対して接触する。ばね部43は、ばね部43の直径を適宜設定することによって、力点PAの位置を任意に設定できる。図5に示す例では、ばね部43がノズルリンク板36に接触する位置(力点PAの位置)は、第2領域S2である。例えば、図5に示すばね部43よりも直径を小さくすると、力点PAの位置を第1領域S1に設定することも可能である。
【0069】
遮熱板41は、第1実施形態の皿ばね39と同様に、ノズルリンク板36に接触した状態で、ノズルリンク板36に力を加える。第2実施形態のタービン10Aによれば、第1実施形態のタービン10と同様の効果を奏する。
【0070】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態のタービン10Bの要部を拡大して示す断面図である。図8は、第3実施形態のタービン10Bが備える付勢部材を示す平面図である。第1実施形態では、付勢部材として皿ばね39を例示した。第1実施形態では、1個の皿ばね39によって複数のノズル翼ユニット300を押圧する構成を例示した。しかし、付勢部材は、皿ばね39に限定されない。付勢部材は、1個の付勢部材が複数のノズル翼ユニット300を押圧する構成にも限定されない。第3実施形態では、付勢部材としてコイルばね51を例示する。さらに、第3実施形態では、1個のコイルばね51(付勢部材)が1個のノズル翼ユニット300を押圧する構成を例示する。
【0071】
コイルばね51は、ノズルリンク板36とベアリングハウジング3との間に配置される。また、コイルばね51は、ノズル軸37と同軸上に配置される。一つのノズルリンク板36に対し、一つのコイルばね51が配置される(図8参照)。
【0072】
より詳細には、コイルばね51のばね先端51aは、ノズルリンク板36のリンク板背面36bに接する。リンク板背面36bは平坦面であるから、リンク板背面36bからベアリングハウジング主面3aまでの距離は、精度よく設定しやすい。リンク板背面36bからベアリングハウジング主面3aまでの距離は、コイルばね51が発生する力Fの大きさに影響する。リンク板背面36bからベアリングハウジング主面3aまでの距離を精度よく設定できれば、コイルばね51が発生する力Fの大きさも精度よく設定することが可能になる。コイルばね51のばね後端51bは、ベアリングハウジング主面3aに接する。
【0073】
さらに、ばね先端51aは、ノズル軸先端37eを囲むように配置される。コイルばね51の内側に、ノズル軸先端37eが配置される。ばね先端51aは、ノズルリンク板36の第1領域S1に接触すると言える。コイルばね51が発生する力Fの作用線は、ノズル軸線NXに一致するとも言える。力Fの作用線とノズル軸線NXとが一致しない場合には、作用線からノズル軸線NXまでの距離に応じたモーメントが生じる。作用線からノズル軸線NXまでの距離に応じたモーメントは、ノズル軸37を傾ける(図3参照)ので、ノズル軸外周面37sをノズル軸穴32sの内周面32s1に押し付ける作用を生じさせる。一方、力Fの作用線とノズル軸線NXとが一致する場合には、ノズル軸37を傾けるようなモーメントが生じない。従って、ノズル翼ユニット300をノズル軸線NXの方向に移動させる力のみを作用させることができる。
【0074】
第3実施形態のタービン10Bでは、コイルばね51による力がノズル軸37に近い領域に加えられる。したがって、力Fによるノズル軸37のノズル軸線NXに対する傾きが抑制される。ノズル軸37がノズル軸穴32sの内周面32s1に接触することを抑制できる。
【0075】
[第4実施形態]
第1実施形態では、振れ回りを抑制するために第1の隙間C1を解消するための構成を採用した。振れ回りの抑制は、ノズル軸外周面37sとノズル軸穴32sの内周面32s1との第3の隙間C3を解消することによっても、実現できる。第4実施形態では、第3の隙間C3を解消する付勢部材を例示する。
【0076】
図9は、第4実施形態のタービン10Cの要部を拡大して示す断面図である。また、図10は、第4実施形態のタービン10Cが備える付勢部材を示す平面図である。第4実施形態のタービン10Cは、第1実施形態のタービン10に対して、皿ばね39の代わりにリングばね61を備える点で相違する。
【0077】
リングばね61は、ばね部材である。付勢部材として、例えばピストンリング又はガスケットを用いることもできる。リングばね61は、回転軸線AXを中心とする輪状であり、円周上の一部が切り欠かれている。従って、リングばね61を平面視すると、C字状である。リングばね61は、切り欠かれた部分には、互いに離間する一対のばね端61e1、61e2が形成される。第1のばね端61e1を第2のばね端61e2に近づけるように、変形させると、リングばね61の直径が小さくなる。リングばね61には、元の直径に戻ろうとする復元力が発生する。復元力の方向は、リングばね61の直径の方向と同じであると考えてよい。
【0078】
リングばね61は、ばね外周面61aと、ばね内周面61bと、を含む。ばね外周面61aは、ノズルリンク板36のリンク板基端36fに接触する。より詳細には、ばね外周面61aは、リンク板基端36fの基端面に接触する。また、リングばね61は、平面視でC字状である。したがって、1個のリングばね61は、複数のノズルリンク板36を径方向の外向きに押圧する。ばね内周面61bは、ベアリングハウジング3に設けられたばね溝3gに配置される。ばね溝3gは、ベアリングハウジング主面3aからタービンハウジング11に向かって突出するはめ込み部3sの外周面に設けられている。この構成によれば、リングばね61の直径が拡張又は縮小する変形を許すことができる。さらに、リングばね61が回転軸線AXの方向へ移動することを制限できる。従って、リングばね61の位置が回転軸線AXの方向にずれることを防止できるので、ノズルリンク板36が押圧された状態を維持することができる。
【0079】
リングばね61は、ノズルリンク板36に接触した状態で、ノズル軸37の径方向に力を加える。ノズルリンク板36に径方向の力が加えられると、ノズルリンク板36が径方向に沿って移動する。ノズルリンク板36が移動すると、リンク板基端36fに取り付けられたノズル軸37が径方向に沿って移動する。そして、ノズル軸37がノズルリング32のノズル軸穴32sの内周面32s1に突き当たる。ノズルベーン34とノズルリング32との間において、径方向の第3の隙間C3が解消される。
【0080】
第4実施形態のタービン10Cによれば、ノズルリング32に対するノズル翼ユニット300の相対的な運動は、ノズル軸37周りの回転だけが可能とされ、そのほかの意図しない振れ回りなどの運動は抑制される。従って、ノズルベーン34が不規則な力を受けたとしても、ノズル翼ユニット300は、不規則運動を生じない。可変容量機構30を構成する部品群の状態を良好に保てるので、可変容量機構30が所望の性能を発揮できる状態を維持できる。よって、可変容量機構30を備えたタービン10Cの信頼性を向上させることができる。
【0081】
本開示は、前述した実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。例えば、付勢部材の態様は、実施形態で説明した態様に限定されない。
【0082】
<第1変形例>
図11は、第1変形例のタービン10Dの要部を拡大して示す断面図である。第1変形例のタービン10Dは、第3実施形態のタービン10Bに対して、コイルばね51の代わりにばね71を備える点で相違する。
【0083】
ばね71は、例えばコイルばねであってもよいし、皿ばねであってもよい。ばね71は、ノズルリング32とノズルリンク板36との間に配置される。具体的には、ばね71は、ノズルリング32の本体背面32b1とノズルリンク板36のリンク板主面36aとの間に配置される。また、ばね71は、ノズル軸37とほぼ同軸に配置される。一つのノズルリンク板36に対し、一つのばね71が配置される。例えば、ばね71がコイルばねである場合には、コイルばねの内側にノズル軸37が差し込まれる。
【0084】
ばね71は、ノズルリンク板36に接触した状態で、ノズル軸線NXの方向に力Fを加える。ばね71が発生する力Fの向きは、第3実施形態のコイルばね51が発生する力Fの向きと逆である。ノズルリンク板36に軸方向の力Fが加えられると、ノズルリンク板36がノズル軸線NXに沿って移動する。ノズルリンク板36は、ノズルリング32から離間する。ノズルリンク板36がノズルリング32から離間すると、ノズルリンク板36のリンク板基端36fに取り付けられたノズル軸37が軸方向に沿って移動する。ノズル軸基端37fに取り付けられたノズルベーン34がノズル軸線NXに沿って移動する。ノズルベーン34のベーン背面34bがノズルリング主面32aに突き当たる。ノズルベーン34とノズルリング32との間における第2の隙間C2が解消される。
【0085】
第1変形例のタービン10Dによっても、第1実施形態のタービン10と同様に、意図しない振れ回りなどの運動を抑制することができる。
【0086】
<第2変形例>
図12は、第2変形例のタービン10Eの要部を拡大して示す断面図である。第2変形例のタービン10Eは、第3実施形態のタービン10Bに対して、遮熱板81をさらに備える点で相違する。コイルばね51は、ノズルリンク板36と遮熱板81との間に配置される。図12に示すように、コイルばね51はノズルリンク板36に接触する。コイルばね51の他端は、遮熱板81に接触する。コイルばね51は、ノズルリンク板36の第1領域に接触した状態で、ノズル軸線NXの方向に力Fを加える。第2変形例のタービン10Eによれば、第3実施形態のタービン10Bと同様の効果を奏する。
【0087】
<第3変形例>
図13は、第3変形例のタービン10Fを備えた過給機1Fの断面図である。例えば、第1実施形態では、ノズルベーン34に対面する部位がCCプレート31であるとして説明した。図13に示すように、ノズルベーン34に対面する部位は、タービンハウジング11Aであってもよい。タービンハウジング11Aは、ノズル軸37が設けられたノズルベーン34の端面とは逆側の端面と対面する流路面11sを含む。ノズルベーン34は、タービンハウジング11Aの流路面11sに突き当たってもよい。このような構成によれば、ノズルベーン34が接触するための別途の部品であるCCプレート31が不要になる。したがって、タービン10を簡易な構成とすることができる。
【0088】
<第4変形例>
図14は、第4変形例のタービン10Gが備える可変容量機構30Gの要部を拡大して示す断面図である。例えば、第1実施形態では、ノズルベーン34にはベーン背面34bにノズル軸37が設けられた構成を例示した。第1実施形態の支持構成は、いわゆる片持ちである。図14に示すように、ノズルベーン34Gの支持構造は、いわゆる両持ちであってもよい。第4変形例のノズルベーン34Gは、ノズル軸37が設けられたベーン背面34bとは逆側のベーン主面34aにもノズル軸37Kを有してもよい。ノズル軸37Kは、ノズル軸37と同軸上に形成される。ノズル軸37Kは、CCプレート31に形成された穴31qに差し込まれる。ノズル軸37、37Kによって、ノズルベーン34は、CCプレート31Gとノズルリング32との両側で支持される。
【符号の説明】
【0089】
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G タービン
11 タービンハウジング(ハウジング)
11R 吸気口
11s 流路面
12 タービン翼車
30,30G 可変容量機構
31 CCプレート(円板部材)
32 ノズルリング
32b1 本体背面
32s1 内周面
34,34G ノズルベーン
36 ノズルリンク板
37 ノズル軸
39 皿ばね(付勢部材)
61 リングばね(付勢部材)
300 ノズル翼ユニット
F 力(付勢力)
S1 第1領域
S2 第2領域

図1
図2
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図14