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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/42 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
H05K3/42 610A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023533201
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2022027124
(87)【国際公開番号】W WO2023282350
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2021114335
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢治
(72)【発明者】
【氏名】酒井 将一郎
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-201416(JP,A)
【文献】特開2002-198461(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0011466(KR,A)
【文献】特開平10-322027(JP,A)
【文献】特開2006-319314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面と反対側に位置する第2面とを有する基材を備え、
前記基材には、前記第1面から前記第2面に到達する貫通孔が形成され、
前記基材の前記第1面には前記貫通孔の開口端である第1開口が形成され、
前記基材の前記第2面には前記貫通孔の開口端である第2開口が形成され、さらに、
少なくとも前記貫通孔の内部に配置された導電体層を備え、
前記基材は、
前記第1開口の縁部から突出する第1凸部を含み、
前記第1開口は、前記第1凸部と前記第1開口の中心とを通り、前記基材の厚み方向に沿った第1断面での第1開口幅を有し、
前記第2開口は、前記第1断面での第2開口幅を有し、
前記第1開口幅は前記第2開口幅より小さい、プリント配線板。
【請求項2】
前記第1断面において、前記貫通孔の幅が、前記第1開口から前記第2開口に向かうにつれて大きくなるように、前記貫通孔の内壁は前記第1面に対して傾斜している、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記第1凸部は、前記導電体層と異なる材料を有する第1導電体層を含む、請求項1または請求項2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記第1導電体層は、前記基材の前記第1面において前記第1開口と隣接する領域にまで延在している、請求項3に記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記第1導電体層を構成する材料はニッケルまたはクロムを含む、請求項3に記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記基材は、前記第2開口の縁部から突出する第2凸部を含み、
前記第2凸部は、前記導電体層と異なる材料を有する第2導電体層を含む、請求項3に記載のプリント配線板。
【請求項7】
前記第2導電体層は、前記基材の前記第2面において前記第2開口と隣接する領域にまで延在している、請求項6に記載のプリント配線板。
【請求項8】
前記第2導電体層を構成する材料はニッケルまたはクロムを含む、請求項6に記載のプリント配線板。
【請求項9】
前記第1凸部は、前記第1面に沿った方向に延びている、請求項1または請求項2に記載のプリント配線板。
【請求項10】
前記第1凸部は、前記第1面と交差する方向に延びている、請求項1または請求項2に記載のプリント配線板。
【請求項11】
前記第1凸部から前記第1開口の前記中心に向かう第1径方向での前記第1凸部の突出長さは、0.1μm以上5μm以下である、請求項1または請求項2に記載のプリント配線板。
【請求項12】
前記第1凸部の前記突出長さは、前記第1開口幅の0.1%以上10%以下である、請求項11に記載のプリント配線板。
【請求項13】
前記第1面に垂直な方向での前記第1凸部の突出高さは、0.01μm以上1μm以下である、請求項10に記載のプリント配線板。
【請求項14】
前記第1凸部の前記突出高さは、前記基材の厚みの0.01%以上10%以下である、請求項13に記載のプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリント配線板に関する。本出願は、2021年7月9日に出願した日本特許出願である特願2021-114335号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の表面および裏面に導電体層が形成されたプリント配線板が知られている(たとえば、特開2019-197750号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-197750号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示のプリント配線板は、基材と導電体層とを備える。基材は、第1面と、当該第1面と反対側に位置する第2面とを有する。基材には、第1面から第2面に到達する貫通孔が形成されている。基材の第1面には貫通孔の開口端である第1開口が形成されている。基材の第2面には貫通孔の開口端である第2開口が形成されている。導電体層は、少なくとも貫通孔の内部に配置されている。基材は第1凸部を含む。第1凸部は、第1開口の縁部から突出する。第1開口は、第1凸部と第1開口の中心とを通り、基材の厚み方向に沿った第1断面での第1開口幅を有する。第2開口は、上記第1断面での第2開口幅を有する。第1開口幅は第2開口幅より小さい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、実施の形態1に係るプリント配線板の部分断面模式図である。
図2図2は、図1に示したプリント配線板の部分拡大断面模式図である。
図3図3は、図1に示したプリント配線板の製造方法を説明するための断面模式図である。
図4図4は、図1に示したプリント配線板の製造方法を説明するための断面模式図である。
図5図5は、図1に示したプリント配線板の製造方法を説明するための断面模式図である。
図6図6は、図1に示したプリント配線板の製造方法を説明するための断面模式図である。
図7図7は、図1に示したプリント配線板の第1変形例を示す部分断面模式図である。
図8図8は、図1に示したプリント配線板の第2変形例を示す部分断面模式図である。
図9図9は、図8に示したプリント配線板の部分拡大断面模式図である。
図10図10は、図1に示したプリント配線板の第3変形例を示す部分断面模式図である。
図11図11は、実施の形態2に係るプリント配線板の部分断面模式図である。
図12図12は、図11に示したプリント配線板の第1変形例を示す部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
上記プリント配線板では、基材に貫通孔が形成されている。貫通孔の内部には導電体層の一部が充填されている。貫通孔の内部に充填された導電体層の一部によって、基材の表面側の導電体層と裏面側の導電体層とが電気的に接続されている。上述した従来のプリント配線板では、貫通孔の内部において導電体層にボイドが発生することを抑制するため、貫通孔の幅が、基材の表面側から裏面側にむけて徐々に小さくなっている。
【0007】
しかし、上述したプリント配線板では、貫通孔の内部に配置された導電体層の断面積が裏面側に近いほど小さくなるため、十分な導電特性を得るために貫通孔のサイズをある程度大きくする必要があった。この結果、貫通孔の内部における導電体層でのボイドの発生を抑制しつつ貫通孔を微細化することが難しかった。
【0008】
そこで、本開示は、貫通孔の内部におけるボイドの発生を抑制しつつ貫通孔を微細化する事が可能なプリント配線板を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
本開示によれば、貫通孔の内部におけるボイドの発生を抑制しつつ貫通孔を微細化する事が可能なプリント配線板が得られる。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示のプリント配線板は、基材と導電体層とを備える。基材は、第1面と、当該第1面と反対側に位置する第2面とを有する。基材には、第1面から第2面に到達する貫通孔が形成されている。基材の第1面には貫通孔の開口端である第1開口が形成されている。基材の第2面には貫通孔の開口端である第2開口が形成されている。導電体層は、少なくとも貫通孔の内部に配置されている。基材は第1凸部を含む。第1凸部は、第1開口の縁部から突出する。第1開口は、第1凸部と第1開口の中心とを通り、基材の厚み方向に沿った第1断面での第1開口幅を有する。第2開口は、上記第1断面での第2開口幅を有する。第1開口幅は第2開口幅より小さい。
【0011】
この場合、第1開口の縁部に第1凸部が形成されることで、貫通孔の幅を大きく変更することなく第1開口幅を第2開口幅より小さくできる。このため、貫通孔の内部に導電体層を形成する際、第1開口側において貫通孔を塞ぐように導電体層を形成することができる。その後、貫通孔の内部において、第1開口側から第2開口側に向かって導電体層を成長させることができる。このため、貫通孔の内部が導電体層により充填される前に、第1開口側と第2開口側とが閉塞してボイドが発生することを抑制できる。
【0012】
また、第1凸部を形成することで第1開口幅を調整しているので、貫通孔の側壁を傾斜させて第1開口幅を第2開口幅より狭くする場合のように、貫通孔の内壁自体を第1面に対して傾斜させるといった構造が必要無い。このため、貫通孔の内壁を第1面に対して傾斜させることに起因して、第2開口の幅が第1開口より過剰に大きくなるといった問題は発生しない。したがって、第2面における第2開口の幅を従来より小さくすることで、貫通孔の占有領域を従来より小さくできる。この結果、ボイドの発生を抑制しつつ貫通孔を微細化したプリント配線板を実現できる。
【0013】
(2) 上記(1)のプリント配線板では、第1断面において、貫通孔の幅が、第1開口から第2開口に向かうにつれて大きくなるように、貫通孔の内壁は第1面に対して傾斜していてもよい。この場合、貫通孔の内部におけるボイドの発生をさらに抑制できる。なお、第1凸部により第1開口幅を調整しているので、貫通孔の内壁の傾斜角度を最小限としてもボイドの発生を抑制する効果を得ることができる。
【0014】
(3) 上記(1)または(2)のプリント配線板において、第1凸部は、導電体層と異なる材料を有する第1導電体層を含んでもよい。この場合、第1凸部に導電性を持たせることができるので、第1凸部の表面に電気めっき法を用いて導電体層を容易に形成できる。
【0015】
(4) 上記(3)のプリント配線板において、第1導電体層は、基材の第1面において第1開口と隣接する領域にまで延在していてもよい。この場合、基材の第1面上にまで、電気めっき法を用いて導電体層を容易に形成できる。
【0016】
(5) 上記(3)または(4)のプリント配線板において、第1導電体層を構成する材料はニッケル(Ni)またはクロム(Cr)を含んでもよい。導電体層を構成する材料は、たとえば銅(Cu)を含んでもよい。この場合、第1導電体層を、導電体層を形成する際の下地として利用できる。このため、第1凸部を覆うように導電体層を容易に形成できる。
【0017】
(6) 上記(3)から(5)のプリント配線板において、基材は、第2開口の縁部から突出する第2凸部を含んでもよい。第2凸部は、導電体層と異なる材料を有する第2導電体層を含んでもよい。第2凸部と第2開口の中心とを通る第2断面での第2開口の幅は第1開口幅より大きくてもよい。この場合も、第1開口側から導電体層を成長させることができるので、貫通孔の内部におけるボイドの発生を抑制できる。
【0018】
(7) 上記(6)のプリント配線板において、第2導電体層は、基材の第2面において第2開口と隣接する領域にまで延在してもよい。この場合、基材の第2面上にまで、電気めっき法を用いて導電体層を容易に形成できる。
【0019】
(8) 上記(6)または(7)のプリント配線板において、第2導電体層を構成する材料はニッケル(Ni)またはクロム(Cr)を含んでもよい。この場合、第2導電体層を、導電体層を形成する際の下地として利用できる。このため、第2凸部を覆うように導電体層を容易に形成できる。
【0020】
(9) 上記(1)から(8)のプリント配線板において、第1凸部は、第1面に沿った方向に延びていてもよい。この場合、第1凸部によって第1開口幅を確実に小さくすることができる。
【0021】
(10) 上記(1)から(8)のプリント配線板において、第1凸部は、第1面と交差する方向に延びていてもよい。この場合も、第1凸部は第1開口の縁部から突出しているので、第1凸部によって第1開口幅を小さくすることができる。
【0022】
(11) 上記(1)から(10)のプリント配線板において、第1凸部から第1開口の中心に向かう第1径方向での第1凸部の突出長さは、0.1μm以上5μm以下であってもよい。この場合、貫通孔の内部に導電体層を形成する際、第2開口側より先に第1開口側を導電体層により閉塞することができる。
【0023】
(12) 上記(11)のプリント配線板において、第1凸部の突出長さは、第1開口幅の0.1%以上10%以下であってもよい。この場合も、貫通孔の内部に導電体層を形成する際、第2開口側より先に第1開口側を導電体層により閉塞することができる。
【0024】
(13) 上記(1)から(12)のプリント配線板において、第1面に垂直な方向での第1凸部の突出高さは、0.01μm以上1μm以下であってもよい。この場合、第1凸部を覆うように導電体層を容易に形成できる。
【0025】
(14) 上記(13)のプリント配線板において、第1凸部の突出高さは、基材の厚みの0.01%以上10%以下であってもよい。この場合、第1凸部を覆うように導電体層を容易に形成できる。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態の詳細について説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0027】
(実施の形態1)
<プリント配線板の構成>
図1は、実施の形態1に係るプリント配線板の部分断面模式図である。図2は、図1に示したプリント配線板の部分拡大断面模式図である。
【0028】
図1および図2に示されるように、プリント配線板1は、基材2と導電体層4とを備える。基材2は、第1面2aと、当該第1面2aと反対側に位置する第2面2bとを有する。基材2には、第1面2aから第2面2bに到達する貫通孔3が形成されている。すなわち、基材2は貫通孔3を有する。
【0029】
基材2は、図3に示されるようにベースフィルム20と、第1導電体層21と、第2導電体層22との積層体である。基材2の下面には第1導電体層21が形成されている。基材2の上面には第2導電体層22が形成されている。つまり、基材2は、第1導電体層21、ベースフィルム20、第2導電体層22が順番に積層された積層体である。ベースフィルム20は、絶縁体からなり、板状またはシート状の部材である。ベースフィルム20の材料としては、任意の材料を用いることができるが、たとえばポリイミドなどの樹脂を用いることができる。第1導電体層21および第2導電体層22は、導電体層4と異なる材料を有する。たとえば、導電体層4が銅(Cu)または銅合金により構成される場合、第1導電体層21および第2導電体層22は、ニッケル(Ni)またはクロム(Cr)を含む。第1導電体層21および第2導電体層22は、ニッケルとクロムとの合金を含んでいてもよい。
【0030】
基材2の第1面2aには貫通孔3の開口端である第1開口3aが形成されている。すなわち、基材2の第1面2aは第1開口3aを有する。基材2の第2面2bには貫通孔3の開口端である第2開口3bが形成されている。すなわち、基材2の第2面2bは第2開口3bを有する。第1開口3aおよび第2開口3bの平面形状は、たとえば円形状、楕円形状、四角形状など任意の形状としてもよい。導電体層4は、貫通孔3の内部から第1面2aおよび第2面2b上にまで延在するように形成されている。
【0031】
基材2は第1凸部31を含む。第1凸部31は、第1開口3aの縁部から突出する。第1凸部31は、図1に示されるように第1開口3aの対向する2つの縁部に形成されている。第1凸部31は、第1開口3aの縁部の全周に形成されていてもよい。あるいは、第1凸部31は、第1開口3aの縁部の一部のみに形成されていてもよい。ここで、第1開口3aの縁部とは、第1開口3aにおいて内壁3cを第1面2aに向けて延長した仮想面と第1面2aとが交差する環状線を考えた場合に、当該環状線を外周側から囲むとともに当該環状線に隣接する、基材2の一部分である。
【0032】
第1凸部31は、第1面2aに沿った方向に延びるように形成されている。第1凸部31は、第1開口3aの縁部から当該第1開口3aの中心3aaに向かう方向に延びるように形成されている。第1凸部31は、導電体層4に埋め込まれた状態となっている。第1開口3aは、図1に示される断面、すなわち第1凸部31と第1開口の中心3aaとを通り、基材2の厚み方向に沿った第1断面での第1開口幅W1を有する。第2開口3bは、図1に示される第1断面での第2開口幅W2を有する。第2開口幅W2は、第2開口3bにおける中心3baを通り基材2の厚み方向に沿った断面における第2開口3bの幅である。図1に示したプリント配線板1において、第1開口幅W1は第2開口幅W2より小さい。なお、第1開口幅W1および第2開口幅W2は、たとえば10μm以上150μm以下である。第1開口幅W1および第2開口幅W2が10μm未満である場合、貫通孔3における導電体層4の電気抵抗が大きくなる。また、第1開口幅W1および第2開口幅W2が150μmを超える場合、プリント配線板1に形成される回路の省スペース化を阻害する要因となる恐れがある。第1開口幅W1および第2開口幅W2は、好ましくは15μm以上100μm以下である。第1開口幅W1および第2開口幅W2は、より好ましくは20μm以上75μm以下である。
【0033】
図2に示されるように、プリント配線板1において、第1凸部31から第1開口3aの中心3aaに向かう第1径方向での第1凸部31の突出長さW3は、0.1μm以上5μm以下である。第1凸部31の突出長さW3は、0.2μm以上3μm以下であってもよく、0.3μm以上1.0μm以下であってもよく、0.4μm以上0.8μm以下であってもよい。また、第1凸部31の突出長さW3は、第1開口幅W1の0.1%以上10%以下である。第1凸部31の突出長さW3は、第1開口幅W1の0.2%以上8%以下であってもよく、0.3%以上5%以下であってもよく、0.5%以上3%以下であってもよい。
【0034】
第1凸部31に含まれる第1導電体層21は、図2に示されるように第1面2aに沿った方向に延びている。なお、第1凸部31において、第1導電体層21は、第1凸部31の先端側においてベースフィルム20から剥離している部分を有していてもよい。剥離している部分とは、ベースフィルム20と第1導電体層21が分岐している形態であってもよい。または、剥離している部分とは、先端が分岐しておらず、ベースフィルム20と第1導電体層21の突出長さが異なるために第1凸部31の先端においては第1導電体層21のみ含まれる形態であってもよい。当該剥離している部分は、第1凸部31でのベースフィルム20が伸びる方向と異なる方向に伸びていてもよい。第1凸部31において、第1導電体層21の先端の位置は、ベースフィルム20の先端の位置より第1開口3aにおける中心3aaに近くなっていてもよい。
【0035】
第1凸部31の形状は、第1開口3aの縁部から突出していれば任意の形状とすることができる。たとえば、第1凸部31はシート状または板状であってもよい。第1凸部31の厚みは0.1μm以下であってもよい。図1および図2に示される断面において、第1凸部31は1つまたは複数の屈曲部を有していてもよい。たとえば、当該断面において、第1凸部31の先端部が下向きに伸びるように、屈曲部を有していてもよい。第1凸部31の厚みは、第1開口3aの縁部から離れるにしたがって薄くなってもよい。あるいは、第1凸部31において、第1開口3aの縁部に相対的に近い第1位置での第1厚みより、当該縁部から見て第1位置より離れた位置での第2厚みが厚くなっていてもよい。
【0036】
導電体層4は、貫通孔3の内部から基材2の第1面または第2面上にまで延在する下地導電体層4aと、当該下地導電体層4a上に配置された上層導電体層4bとを含む。なお、下地導電体層4aとしてはたとえば無電解めっき層を用いることができる。上層導電体層4bとしては電気めっき層を用いることができる。下地導電体層4aおよび上層導電体層4bを構成する材料は、同じ材料であっても良いが異なる材料であってもよい。当該材料として、任意の金属を用いることができるが、たとえば銅または銅合金を用いることができる。
【0037】
<プリント配線板の製造方法>
図3から図6は、図1に示したプリント配線板1の製造方法を説明するための断面模式図である。以下、図1に示したプリント配線板1の製造方法を説明する。
【0038】
図3に示されるように、まず基材2を準備する工程(S1)を実施する。基材2は、上述のようにベースフィルム20と第1導電体層21と第2導電体層22との積層体である。第1導電体層21は、たとえばベースフィルム20の裏面上に形成されたニッケルおよびクロムを含む第1層と、当該第1層上に積層された第2層とを含んでもよい。第2層としては、たとえば銅などの金属層を用いることができる。第2層を構成する金属層は、たとえばスパッタ法により形成される。
【0039】
次に、図4に示されるように、基材2に貫通孔3を形成する工程(S2)を実施する。この工程(S2)では、基材2の一部を除去することにより貫通孔3を形成する。貫通孔3を形成する方法としては、任意の方法を採用できるが、たとえば矢印に示すようにレーザ光照射により基材2の一部を除去してもよい。このとき、レーザ光の出力などの照射条件を調整することで、貫通孔3の第1開口3aにおける縁部に基材2の一部を残存させてもよい。当該基材2の残存した一部により、第1凸部31を形成してもよい。
【0040】
あるいは、薬液などを用いて貫通孔3および第1凸部31を形成してもよい。たとえば、基材2の構成として、第1面2aを構成する第1表面層、第2面2bを構成する第2表面層、および第1表面層と第2表面層との間に配置された中間層からなる多層構造を採用してもよい。第1表面層、第2表面層および中間層とは異なる材料により構成してもよい。基材2に貫通孔3を任意の方法で形成した後、第1表面層に対して、中間層および第2表面層を選択的に溶解する薬液を貫通孔3の内部に供給することで、中間層および第2表面層の一部を除去してもよい。この結果、第1表面層の一部が貫通孔3の第1開口3aの縁部から突出した状態となり、第1凸部31を形成できる。
【0041】
次に、図5に示されるように、貫通孔3が形成された基材2の表面に下地導電体層4aを形成する工程(S3)を実施する。この工程(S3)では、貫通孔3の内部、第1凸部31、第1面2aおよび第2面2bを覆うように下地導電体層4aを形成する。下地導電体層4aを形成する方法としては、任意の方法を採用できるが、たとえば無電解めっき法を用いることができる。
【0042】
次に、図6に示されるように、上層導電体層4bを形成する工程(S4)を実施する。この工程(S4)では、下地導電体層4a上に上層導電体層4bを形成する。上層導電体層4bを形成する方法としては任意の方法を採用できるが、たとえば電気めっき法を用いることができる。このとき、図1に示されるように、第1凸部31が形成されているため貫通孔3において第1開口幅W1が第2開口幅W2より狭くなっている。そのため、図6に示すように第1開口3a側で先に上層導電体層4bにより貫通孔3が閉塞する。その後、第1開口3a側から第2開口3b側に向けて、上層導電体層4bが形成されていく。この結果、貫通孔3の内部は上層導電体層4bによって充填され、ボイドの発生を抑制できる。このように上層導電体層4bが十分に形成されることで、図1に示すプリント配線板1を得ることができる。
【0043】
<作用効果>
本実施の形態に係るプリント配線板1は、基材2と導電体層4とを備える。基材2は、第1面2aと、当該第1面2aと反対側に位置する第2面2bとを有する。基材2には、第1面2aから第2面2bに到達する貫通孔3が形成されている。基材2の第1面2aには貫通孔3の開口端である第1開口3aが形成されている。基材2の第2面2bには貫通孔3の開口端である第2開口3bが形成されている。導電体層4は、少なくとも貫通孔3の内部に配置されている。基材2は第1凸部31を含む。第1凸部31は、第1開口3aの縁部から突出する。第1開口3aは、第1凸部31と第1開口の中心3aaとを通り、基材2の厚み方向に沿った第1断面での第1開口幅W1を有する。第2開口3bは、上記第1断面での第2開口幅W2を有する。第1開口幅W1は第2開口幅W2より小さい。
【0044】
この場合、第1開口3aの縁部に第1凸部31が形成されることで、貫通孔3の延在方向における中央部での幅を大きく変更することなく、第1開口幅W1を第2開口幅W2より小さくできる。このため、貫通孔3の内部に導電体層4を形成する際、第1開口3a側において貫通孔3を塞ぐように導電体層4を形成することができる。その後、貫通孔3の内部において、第1開口3a側から第2開口3b側に向かって導電体層4を成長させることができる。このため、貫通孔3の内部が導電体層4により充填される前に、第1開口3a側と第2開口3b側とが共に閉塞してボイドが発生することを抑制できる。
【0045】
また、第1凸部31を形成することで第1開口幅W1を調整しているので、貫通孔3の内壁3cを傾斜させて第1開口幅W1を第2開口幅W2より狭くする場合のように、貫通孔3の内壁3c自体を第1面2aに対して傾斜させるといった構造が必要無い。このため、貫通孔3の内壁3cを第1面2aに対して傾斜させることに起因して、第2開口幅W2が第1開口幅W1より過剰に大きくなるといった問題は発生しない。したがって、第2面2bにおける第2開口3bの幅(第2開口幅W2)を従来より小さくすることで、貫通孔3の占有領域を従来より小さくできる。この結果、ボイドの発生を抑制しつつ貫通孔3を微細化したプリント配線板1を実現できる。
【0046】
上記プリント配線板1において、第1凸部31は、導電体層4と異なる材料を有する第1導電体層21を含む。この場合、第1凸部31に導電性を持たせることができるので、第1凸部31の表面に電気めっき法を用いて導電体層4を容易に形成できる。
【0047】
上記プリント配線板1において、第1導電体層21は、基材2の第1面において第1開口3aと隣接する領域にまで延在してもよい。この場合、基材2の第1面2a上にまで、電気めっき法を用いて導電体層4を容易に形成できる。
【0048】
上記プリント配線板1において、第1導電体層21を構成する材料はニッケル(Ni)またはクロム(Cr)を含んでもよい。導電体層4を構成する材料は、たとえば銅(Cu)を含んでもよい。この場合、第1導電体層21を、導電体層4を形成する際の下地として利用できる。このため、第1凸部31を覆うように導電体層4を容易に形成できる。
【0049】
上記プリント配線板1において、第1凸部31は、第1面2aに沿った方向に延びていてもよい。この場合、第1凸部31によって第1開口幅W1を確実に小さくすることができる。
【0050】
上記プリント配線板1において、第1凸部31から第1開口3aの中心3aaに向かう第1径方向での第1凸部の突出長さW3は、0.1μm以上5μm以下であってもよい。また、上記プリント配線板1において、第1凸部31の突出長さW3は、第1開口幅W1の0.1%以上10%以下であってもよい。この場合、貫通孔3の内部に導電体層4を形成する際、第2開口3b側より先に第1開口3a側を導電体層4により閉塞することができる。このため、貫通孔3内部における導電体層4にボイドが発生することを抑制できる。
【0051】
<変形例>
図7は、図1に示したプリント配線板1の第1変形例を示す部分断面模式図である。図7に示したプリント配線板1は、基本的には図1および図2に示したプリント配線板1と同様の構成を備えるが、貫通孔3の構造が図1および図2に示したプリント配線板1と異なっている。具体的には、図7に示したプリント配線板1では、基材2が、第2開口3bの縁部から突出する第2凸部32を含んでいる。ここで、第2開口3bの縁部とは、第2開口3bにおいて内壁3cを第2面2bに向けて延長した仮想面と第2面2bとが交差する環状線を考えた場合に、当該環状線を外周側から囲むとともに当該環状線に隣接する、基材2の一部分である。第2凸部32は、導電体層4と異なる材料を有する第2導電体層22を含む。第2凸部32と第2開口3bの中心3baとを通る第2断面での第2開口3bの幅(第2開口幅W2)は第1開口幅W1より大きい。つまり、図7に示された第2断面は実質的に図1に示された第1断面と同じ断面である。第2凸部32は、第2面2bに沿った方向に延びている。第2凸部32は、第2開口3bの縁部から第2開口3bの中心3baに向かう方向に延びるように形成されている。第2凸部32の形状は、基本的に第1凸部31の形状と同様としてもよい。第1凸部31および第2凸部32は、ともに導電体層4に埋め込まれた状態となっていてもよい。
【0052】
この場合も、第1開口3a側から導電体層4を成長させることができるので、図1および図2に示したプリント配線板1と同様に、貫通孔3の内部におけるボイドの発生を抑制できる。
【0053】
図7に示されるように、第2導電体層22は、基材2の第2面2bにおいて第2開口3bと隣接する領域にまで延在している。図7では、第2導電体層22は、基材2の第2面2b全体を覆うように形成されている。この場合、第2導電体層22を導電体層4のための下地として利用することができる。この結果、基材2の第2面2b上にまで、たとえば電気めっき法を用いて導電体層4を容易に形成できる。
【0054】
上記プリント配線板1において、上述したように、第2導電体層22を構成する材料はニッケル(Ni)またはクロム(Cr)を含んでもよい。この場合、第2導電体層22を、導電体層4を形成する際の下地として利用できる。このため、第2凸部32を覆うように導電体層4を容易に形成できる。
【0055】
上記プリント配線板1において、第2凸部32から第2開口3bの中心3baに向かう第2径方向での第2凸部32の突出長さW4は、0.1μm以上5μm以下であってもよい。第2凸部32の突出長さW4は、0.2μm以上3μm以下であってもよく、0.3μm以上1.0μm以下であってもよく、0.4μm以上0.8μm以下であってもよい。また、第2凸部32の突出長さW4は、第2開口幅W2の0.1%以上10%以下であってもよい。第2凸部32の突出長さW4は、第2開口幅W2の0.2%以上8%以下であってもよく、0.3%以上5%以下であってもよく、0.5%以上3%以下であってもよい。この場合、第2凸部32の周囲を覆うように導電体層4を容易に形成できる。
【0056】
図8は、図1に示したプリント配線板の第2変形例を示す部分断面模式図である。図9は、図8に示したプリント配線板の部分拡大断面模式図である。図8および図9に示したプリント配線板1は、基本的には図1および図2に示したプリント配線板1と同様の構成を備えるが、貫通孔3の構造が図1および図2に示したプリント配線板1と異なっている。具体的には、図8および図9に示したプリント配線板1では、第1凸部31が、第1面2aと交差する方向に延びている。第1凸部31は、第1開口3aの縁部から、第1開口3aの中心3aaに近づくにつれて、第1面2aに垂直な方向において第1面2aから離れるように延びている。この場合も、第1凸部31は第1開口3aの縁部から突出しているので、第1凸部31によって第1開口幅W1を小さくすることができる。
【0057】
なお、図8および図9に示されるように、第1凸部31が第1面2aと交差する方向に延びている場合、第1凸部31の突出長さは、図9に示される長さAと長さBとの平均値とすることができる。図9に示される断面において、長さAは、第1凸部31において貫通孔3の内側に面する第1表面部分を構成する部材(図9の第1凸部31を構成するベースフィルム20の一部)の、貫通孔3の内壁からの突出長さである。すなわち、長さAは、図9に示されるように、貫通孔3の内壁と第1凸部31との接続部から、当該第1凸部31の第1表面部分を構成する部材において上記接続部から最も離れた部分(先端部)までの距離である。図9に示される断面において、長さBは、第1凸部31において上記第1表面部分と反対側に位置する第2表面部分を構成する部材(図9の第1凸部31を構成する第1導電体層21の一部)の、第1面2aからの突出長さである。すなわち、長さBは、図9に示されるように、第1面2aの平坦な領域と第1凸部31との接続部から、当該第1凸部31の第2表面部分を構成する部材において当該接続部から最も離れた部分(先端部)までの距離である。上述した第1凸部31の突出長さは、第1凸部31が屈曲部を有する場合にも適応できる。第1凸部31の先端側においてベースフィルム20から第1導電体層21が剥離している部分を有している場合は、貫通孔3の内壁と第1凸部31との接続部から、当該第1凸部31の上記接続部から最も離れた部分(先端部)までの距離と、第1面2aの平坦な領域と第1凸部31との接続部から、当該第1凸部31の当該接続部から最も離れた部分(先端部)までの距離の平均値を第1凸部31の突出長さとする。
【0058】
上記プリント配線板1において、第1面2aに垂直な方向での第1凸部31の突出高さT2は、0.01μm以上1μm以下である。第1凸部31の突出高さT2は、0.02μm以上0.8μm以下であってもよく、0.03μm以上0.7μm以下であってもよく、0.04μm以上0.6μm以下であってもよい。第1凸部31の突出高さT2は、基材2の厚みT1(図1参照)の0.01%以上10%以下である。第1凸部31の突出高さT2は、基材2の厚みT1の0.02%以上8%以下であってもよく、0.03%以上5%以下であってもよく、0.05%以上3%以下であってもよい。この場合、第1凸部31を覆うように導電体層4を容易に形成できる。
【0059】
図10は、図1に示したプリント配線板の第3変形例を示す部分断面模式図である。図10に示したプリント配線板1は、基本的には図7に示したプリント配線板1と同様の構成を備えるが、貫通孔3の構造が図7に示したプリント配線板1と異なっている。具体的には、図10に示したプリント配線板1では、第2凸部32が第2面2bと交差する方向に延びている。第2凸部32は、第2開口3bの縁部から、第2開口3bの中心3baに近づくにつれて、第2面2bに垂直な方向において第2面2bから離れるように延びている。
【0060】
なお、図10に示されるように、第2凸部32が第2面2bと交差する方向に延びている場合、第2凸部32の突出長さは、図10に示される長さCと長さDとの平均値とすることができる。図10に示される断面において、長さCは、第2凸部32において貫通孔3の内側に面する第3表面部分を構成する部材(図10の第2凸部32を構成するベースフィルム20の一部)の、貫通孔3の内壁からの突出長さである。すなわち、長さCは、図10に示されるように、貫通孔3の内壁と第2凸部32との接続部から、当該第2凸部32の第3表面部分を構成する部材において上記接続部から最も離れた部分(先端部)までの距離である。図10に示される断面において、長さDは、第2凸部32において上記第3表面部分と反対側に位置する第4表面部分を構成する部材(図10の第2凸部32を構成する第2導電体層22の一部)の、第2面2bからの突出長さである。すなわち、長さDは、図10に示されるように、第2面2bの平坦な領域と第2凸部32との接続部から、当該第2凸部32の第4表面部分を構成する部材において当該接続部から最も離れた部分(先端部)までの距離である。上述した第2凸部32の突出長さは、第2凸部32が屈曲部を有する場合にも適応できる。第2凸部32の先端側においてベースフィルム20から第2導電体層22が剥離している部分を有している場合は、貫通孔3の内壁と第2凸部32との接続部から、当該第2凸部32の上記接続部から最も離れた部分(先端部)までの距離と、第2面2bの平坦な領域と第2凸部32との接続部から、当該第2凸部32の当該接続部から最も離れた部分(先端部)までの距離の平均値を第2凸部32の突出長さとする。
【0061】
第2面2bに垂直な方向での第2凸部32の突出高さT3は、0.01μm以上1μm以下である。第2凸部32の突出高さT3は、0.02μm以上0.8μm以下であってもよく、0.03μm以上0.7μm以下であってもよく、0.04μm以上0.6μm以下であってもよい。上記プリント配線板1において、第2凸部32の突出高さT3は、基材2の厚みT1(図1参照)の0.01%以上10%以下である。第2凸部32の突出高さT3は、基材2の厚みT1の0.02%以上8%以下であってもよく、0.03%以上5%以下であってもよく、0.05%以上3%以下であってもよい。この場合、第2凸部32を覆うように導電体層4を容易に形成できる。
【0062】
(実施の形態2)
<プリント配線板の構成および作用効果>
図11は、実施の形態2に係るプリント配線板の部分断面模式図である。図11に示したプリント配線板1は、基本的には図1および図2に示したプリント配線板1と同様の構成を備えるが、貫通孔3の構造が図1および図2に示したプリント配線板1と異なっている。具体的には、図11に示したプリント配線板1では、貫通孔3の内壁3cが第1面2aに対して傾斜している。すなわち、貫通孔3では、貫通孔3の幅が、第1開口3aから第2開口3bに向かうにつれて大きくなるように、貫通孔3の内壁3cが第1面2aに対して傾斜している。この場合、第1開口3a側から導電体層4を確実に成長させることができるので、貫通孔3の内部におけるボイドの発生をさらに抑制できる。なお、第1凸部31により第1開口幅W1を調整しているので、貫通孔3の内壁3cの傾斜角度を最小限としてもボイドの発生を抑制する効果を得ることができる。
【0063】
<変形例>
図12は、図11に示したプリント配線板の第1変形例を示す部分断面模式図である。図12に示したプリント配線板1は、基本的には図11に示したプリント配線板1と同様の構成を備えるが、貫通孔3の構造が図11に示したプリント配線板1と異なっている。具体的には、図12に示したプリント配線板1では、基材2が、第2開口3bの縁部から突出する第2凸部32を含んでいる。図12に示したプリント配線板1における第2凸部32の構成は、図7に示したプリント配線板1における第2凸部32の構成と同様である。
【0064】
図12に示されるように、第2凸部32と第2開口3bの中心3baとを通り、基材2の厚み方向に沿った第2断面での第2開口3bの幅(第2開口幅W2)は第1開口幅W1より大きい。つまり、図12に示された第2断面は実質的に図11に示された第1断面と同じ断面である。第2凸部32は、第2面2bに沿った方向に延びている。第2凸部32は、第2開口3bの縁部から第2開口3bの中心3baに向かう方向に延びるように形成されている。第2凸部32の形状は、基本的に第1凸部31の形状と同様であってもよい。第1凸部31および第2凸部32は、ともに導電体層4に埋め込まれた状態となっている。この場合も、図11に示したプリント配線板1と同様に、貫通孔3の内部におけるボイドの発生を抑制できる。
【0065】
(実施例)
本開示に係るプリント配線板の効果について確認するため、下記のような実験を行った。
【0066】
<サンプル>
サンプル1からサンプル4を準備した。サンプル1からサンプル4は、貫通孔が100個形成されたプリント配線板である。サンプル1、サンプル2およびサンプル3の貫通孔の構成は、基本的に図1および図2に示された貫通孔3と同様の構成となっている。
【0067】
サンプル1、サンプル2およびサンプル3は、第1凸部31の突出長さW3がそれぞれ異なるように形成されている。すなわち、サンプル1における第1凸部31の突出長さW3は0.05μmである。サンプル2における第1凸部31の突出長さW3は0.1μmである。サンプル3における第1凸部31の突出長さW3は0.5μmである。
【0068】
サンプル4の貫通孔には、図1に示されたような第1凸部が形成されていない。サンプル4の貫通孔は、第2面2b側での第2開口幅が第1面2a側での第1開口幅より広くなっている。サンプル4の貫通孔は、内壁が第1面2aに対して傾斜している。
【0069】
なお、上述した貫通孔に関する条件以外の条件は、サンプル1からサンプル4において共通している。具体的には、基材は図3に示されるようにベースフィルムと第1導電体層と第2導電体層との積層構造である。ベースフィルムの材料はポリイミドである。ベースフィルムの厚みは75μmである。また、第1導電体層および第2導電体層の材料はニッケル-クロム合金である。第1導電体層および第2導電体層の厚みは10nmである。貫通孔は1mmの間隔で1列に並ぶように形成されている。なお、貫通孔の形成方法としては、レーザ加工を用いた。
【0070】
<試験方法>
導電体層の形成:
上述したサンプル1からサンプル4のそれぞれについて、図5および図6に示された工程を実施し、貫通孔を充填するように導電体層4を形成した。具体的には、無電解銅めっきを行うことで、図5に示された下地導電体層4aとしての銅めっき層を形成した。当該銅めっき層の厚みは0.1μmとした。その後、電気銅めっきを行うことで、図6に示された上層導電体層4bとしての銅めっき層を形成した。電気銅めっきにおける電流密度を2A/dmとした。また、めっき時間を120分とした。
【0071】
ボイドの測定:
サンプル1からサンプル4のそれぞれについて、100個の貫通孔の断面を観察し、ボイドの発生の有無を確認した。具体的には、各サンプルについてミクロトームを用いて断面加工を行った。その後、倍率を500倍とした顕微鏡観察により、ボイドの有無を確認した。各サンプルについて、100個の貫通孔においてボイドの発生した貫通孔の割合をボイド発生率として算出した。
【0072】
<結果>
結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1では、各サンプルについて、第1凸部の有無、第1凸部の突出長さ、第1開口幅W1、第2開口幅W2、ボイド発生率がそれぞれ示されている。なお、第1凸部の突出長さ、第1開口幅、第2開口幅は、各サンプルにおける100個の貫通孔でのデータの平均値である。表1に示されるように、比較例としてのサンプル4では、第1凸部が形成されていないためにボイド発生率が他のサンプルより大きくなっている。一方、実施例としてのサンプル1からサンプル3では、サンプル4よりもボイド発生率は小さくなっている。また、サンプル1よりも、サンプル2およびサンプル3の方がボイド発生率は小さくなっている。
【0075】
このように、プリント配線板の貫通孔における凸部の効果を確認できた。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
1 プリント配線板、2 基材、2a 第1面、2b 第2面、3 貫通孔、3a 第1開口、3aa,3ba 中心、3b 第2開口、3c 内壁、4 導電体層、4a 下地導電体層、4b 上層導電体層、20 ベースフィルム、21 第1導電体層、22 第2導電体層、31 第1凸部、32 第2凸部、T1 厚み、T2 突出高さ、W1 第1開口幅、W2 第2開口幅、W3 長さ、W3,W4 突出長さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12