(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】耐火被覆構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
E04B1/94 D
(21)【出願番号】P 2024007278
(22)【出願日】2024-01-22
【審査請求日】2024-01-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田村 純太朗
(72)【発明者】
【氏名】藤生 直人
(72)【発明者】
【氏名】榎本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 博則
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-084597(JP,A)
【文献】特開平11-001976(JP,A)
【文献】特開平08-189107(JP,A)
【文献】特開2023-147788(JP,A)
【文献】特開2005-220730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフランジと前記一対のフランジを接続するウェブとを有するH型鋼と、
前記H型鋼を幅方向における外側から覆う幅側被覆部と、
前記H型鋼を成方向における外側から覆うフランジ側被覆部と、
前記H型鋼に支持され、前記H型鋼の成方向における前記一対のフランジの外側において前記幅側被覆部と前記フランジ側被覆部とが接合される外側支持部と、を備え、
前記外側支持部は、
前記フランジに固定される第1外側支持材と、
前記幅側被覆部が幅側接合材によって接合される幅側接合部と前記フランジ側被覆部がフランジ側接合材によって接合されるフランジ側接合部とを有して前記第1外側支持材に連結される第2外側支持材と、を有する
耐火被覆構造。
【請求項2】
前記第2外側支持材は、前記幅側接合材によって前記第1外側支持材に連結されている
請求項1に記載の耐火被覆構造。
【請求項3】
前記幅側被覆部は、前記H型鋼の幅方向において積層された内側耐火材と外側耐火材とを含み、
前記幅側接合部は、前記H型鋼の成方向における前記内側耐火材の外側に配設されて前記幅側接合材によって前記外側耐火材が接合されている
請求項1または2に記載の耐火被覆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H型鋼の耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対のフランジと一対のフランジを接続するウェブとを有するH型鋼の耐火被覆構造が開示されている。特許文献1では、H型鋼を覆う耐火被覆部が貼り付けによりフランジに支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構造では、H型鋼に製造誤差が生じている場合に、その製造誤差を耐火被覆部で吸収しなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する耐火被覆構造は、一対のフランジと前記一対のフランジを接続するウェブとを有するH型鋼と、前記H型鋼を幅方向における外側から覆う幅側被覆部と、前記H型鋼を成方向における外側から覆うフランジ側被覆部と、前記H型鋼に支持され、前記H型鋼の成方向における前記一対のフランジの外側において前記幅側被覆部と前記フランジ側被覆部とが接合される外側支持部と、を備える。前記外側支持部は、前記フランジに固定される第1外側支持材と、前記幅側被覆部が幅側接合材によって接合される幅側接合部と前記フランジ側被覆部がフランジ側接合材によって接合されるフランジ側接合部とを有して前記第1外側支持材に連結される第2外側支持材と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、H型鋼に生じている製造誤差を効果的に吸収しつつ耐火被覆部を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態において、耐火被覆構造の概略構成を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態において、中間支持部の概略構成を示す図であって、
図1に示す一点鎖線2で囲まれた部分の拡大図である。
【
図3】第1実施形態において、外側支持部の概略構成を示す図であって、
図1に示す一点鎖線3で囲まれた部分の拡大図である。
【
図4】第1実施形態において、H型鋼に関する準備工程を示す図である。
【
図5】第1実施形態において、幅側被覆部に関する準備工程を示す図である。
【
図6】第1実施形態において、幅側被覆部配置工程を説明するための図である。
【
図7】第1実施形態において、フランジ側被覆部配置工程を説明するための図である。
【
図8】第1実施形態において、フランジ側被覆部配置工程を説明するための図である。
【
図9】第2実施形態において、耐火被覆構造の概略構成を示す断面図である。
【
図10】第2実施形態において、中間支持部の概略構成を示す図であって、
図9に示す一点鎖線4で囲まれた部分の拡大図である。
【
図11】第2実施形態において、外側支持部の概略構成を示す図であって、
図9に示す一点鎖線5で囲まれた部分の拡大図である。
【
図12】第2実施形態において、H型鋼に関する準備工程を示す図である。
【
図13】第2実施形態において、第1接合工程を説明するための図である。
【
図14】第2実施形態において、第2接合工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1~
図8を参照して、耐火被覆構造の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、第1実施形態において、耐火被覆構造10は、床スラブ11を支持する梁として設置されるH型鋼12に適用される。H型鋼12は、上フランジ13、下フランジ14、および、ウェブ15を有している。なお、以下では、
図1における左右方向を幅方向といい、上下方向を成方向(H型鋼の高さ方向)という。また、
図1におけるH型鋼12を基準にして各方向の内側、外側が規定されている。
【0009】
耐火被覆構造10は、幅側被覆部20、フランジ側被覆部30、中間支持部40、および、外側支持部50を備える。
幅側被覆部20は、幅方向の外側からH型鋼12を被覆する耐火被覆部である。フランジ側被覆部30は、成方向の外側からH型鋼12を被覆する耐火被覆部である。被覆部20,30は、耐火材21,31と木質材22,32とを有する。
【0010】
耐火材21は、幅方向における外側からH型鋼12に対向するように設けられている。耐火材21は、中間支持部40と外側支持部50とを介してH型鋼12に支持されている。耐火材31は、空間を隔てて成方向における外側から下フランジ14に対向するように設けられている。耐火材31は、外側支持部50を介してH型鋼12に支持されている。
【0011】
耐火材21,31は、例えば、1枚あるいは積層された複数枚の石膏ボードなどで構成される。第1実施形態において、耐火材21は内側耐火材21Aと外側耐火材21Bとで構成され、耐火材31は内側耐火材31Aと外側耐火材31Bとで構成されている。内側耐火材21Aは内側耐火材31Aに対して勝ち側となるように、また、外側耐火材21Bは外側耐火材31Bに対して勝ち側となるように設けられている。
【0012】
木質材22,32は、例えばCLT(Cross Laminated Timber)で構成される。木質材22は、幅方向における外側から耐火材21に当接するように設けられている。木質材22は、中間支持部40と外側支持部50とを介してH型鋼12に支持されている。
【0013】
木質材32は、成方向における外側から耐火材31に当接するように設けられている。木質材32は、木質材22の下端部に対して、木質材22が勝ち側となるようにして接合材33によって接合されている。接合材33は、例えばビスである。接合材33は、木質材22に形成された接合用小口34に挿入されたのち、木質材22を貫通するようにして木質材32に打ち込まれる。木質材22と木質材32の接合後、接合用小口34には、接合材33を覆い隠すように埋木35が配設される。
【0014】
中間支持部40は、上フランジ13と下フランジ14との間に設けられる。中間支持部40は、後述する第2接合部42bが成方向における異なる位置に配置されるように設けられる。第1実施形態において、中間支持部40は、幅方向におけるウェブ15の両側に設けられている。外側支持部50は、成方向におけるH型鋼12の外側において、幅方向におけるH型鋼12の各端部に設けられる。
【0015】
(中間支持部)
図2に示すように、中間支持部40は、第1中間支持材41と第2中間支持材42とを有する。第1中間支持材41は、H型鋼12に固定される鋼材である。第1中間支持材41は、第1固定部41aと第1連結部41bとを有する。第1固定部41aは、例えば溶接によってH型鋼12に固定される部位である。第1連結部41bは、第2中間支持材42が連結される部位である。
【0016】
第1実施形態において、第1中間支持材41は、H型鋼12の延在方向が材軸方向となるように配設されるアングル材によって構成されている。第1中間支持材41は、第1連結部41bが幅方向の外側に向かって延びるように第1固定部41aがウェブ15に溶接されている。
【0017】
第2中間支持材42は、第1中間支持材41に連結されるとともに幅側被覆部20が接合される鋼材である。第2中間支持材42は、第2連結部42aと第2接合部42bとを有する。
【0018】
第2連結部42aは、第1中間支持材41の第1連結部41bに連結される部位である。第2接合部42bは、幅側被覆部20が当接する当接面を有するとともに幅側被覆部20が接合される面状の部位である。第2中間支持材42は、所望の位置に当接面が配置されるように第2接合部42bの位置調整が行われたのち、第1連結部41bに第2連結部42aが連結される。
【0019】
第1実施形態において、第2中間支持材42は、H型鋼12の延在方向が材軸方向となるように配設される角鋼管によって構成されている。第2中間支持材42は、第2連結部42aと第2接合部42bとを有するものであればよく、アングル材であってもよいし、チャンネル材であってもよい。第2中間支持材42は、ボルトとナットで構成される締結部材45によって第2連結部42aが第1中間支持材41の第1連結部41bに連結されている。
【0020】
第1連結部41bおよび第2連結部42aには、締結部材45のボルトが貫通する締結孔が形成されている。第1連結部41bおよび第2連結部42aの一方には、締結孔として、幅方向に長い長穴が形成されている。これにより、締結部材45が仮止め状態にあるとき、幅方向において、第1中間支持材41に対する第2中間支持材42の位置調整が可能となる。
【0021】
第2接合部42bには、接合材46によって幅側被覆部20が接合される。接合材46は、例えばビスである。接合材46は、幅側被覆部を中間支持部に接合する中間接合材である。接合材46は、木質材22に形成された接合用小口47に挿入されたのち、幅側被覆部20を貫通するようにして第2接合部42bに接合される。幅側被覆部20の接合後、接合用小口47には、接合材46を覆い隠すように埋木48が配設される。
【0022】
各中間支持部40については、H型鋼12の延在方向に間隔を空けて並ぶように複数の第2接合部42bが配置されていればよい。そのため、第1中間支持材41は、第2接合部42bの位置に応じて局所的に設けられる部材であってもよいし、H型鋼12の一端部から他端部まで延びる通し材であってもよい。なお、第2中間支持材42についても同様である。
【0023】
(外側支持部)
図3に示すように、外側支持部50は、第1外側支持材51と第2外側支持材52とを有する。第1外側支持材51は、H型鋼12の下フランジ14に固定される鋼材である。
【0024】
第1外側支持材51は、第1固定部51aと第1連結部51bとを有する。第1固定部51aは、例えば溶接によってH型鋼12の下フランジ14に固定される部位である。第1連結部51bは、第2外側支持材52が連結されるとともに幅側被覆部20が接合される部位である。
【0025】
第1実施形態において、第1外側支持材51は、H型鋼12の延在方向が材軸方向となるように配設されるアングル材によって構成されている。第1外側支持材51は、幅方向における下フランジ14の外側端面のやや内側から成方向における外側へ第1連結部51bが延びるように第1固定部51aが下フランジ14に溶接されている。具体的には、第1外側支持材51は、下フランジ14と第1連結部51bとが形成する角部に、後述する第2外側支持材52の幅側接合部52aが配置可能な位置に設けられる。
【0026】
第2外側支持材52は、第1外側支持材51に連結されるとともに、幅側被覆部20とフランジ側被覆部30の耐火材31とが接合される鋼材である。第2外側支持材52は、幅側被覆部20を第1外側支持材51および第2外側支持材52に接合する接合材53によって第1外側支持材51に連結されている。接合材53は、幅側被覆部を外側支持部に接合する幅側接合材である。
【0027】
第2外側支持材52は、幅側接合部52aとフランジ側接合部52bとを有する。幅側接合部52aは、幅方向における第1外側支持材51の外側を成方向に延びて幅側被覆部20が当接する当接面を有するとともに、幅側被覆部20が接合される面状の部位である。フランジ側接合部52bは、成方向における第1外側支持材51の外側を幅方向に延びてフランジ側被覆部30が当接する当接面を有するとともに、フランジ側被覆部30の耐火材31が接合される面状の部位である。第1実施形態において、第2外側支持材52は、例えば、H型鋼12の延在方向が材軸方向となるように配設されるアングル材によって構成されている。
【0028】
幅側接合部52aには、接合材53によって幅側被覆部20が接合される。接合材53は、例えばビスである。接合材53は、木質材22に形成された接合用小口54に挿入されたのち、幅側被覆部20を貫通して幅側接合部52aと第1外側支持材51の第1連結部51bとに接合される。幅側被覆部20の接合後、接合用小口54には、接合材53を覆い隠すように埋木55が配設される。フランジ側接合部52bには、接合材56によって耐火材31が接合される。接合材56は、例えばビスとワッシャとで構成される。接合材56は、フランジ側被覆部を外側支持部に接合するフランジ側接合材である。
【0029】
(耐火被覆構造の施工方法)
図4~
図7を参照して、耐火被覆構造10の施工方法の一例について説明する。ここでは、工場などにおいて、H型鋼12が幅側被覆部20およびフランジ側被覆部30で被覆される場合について説明する。
【0030】
耐火被覆構造10の施工方法は、準備工程、幅側被覆部配置工程、フランジ側被覆部配置工程、および、接合工程を備える。
図4に示すように、準備工程では、H型鋼12に対する各種作業を行う。なお、
図4では、上方に下フランジ14が位置するようにH型鋼12を示している。
【0031】
具体的には、中間支持部40の第1中間支持材41と外側支持部50の第1外側支持材51とを所定の位置に溶接する。また、締結部材45を用いて第1中間支持材41に中間支持部40の第2中間支持材42を仮止め状態に取り付ける。その後、幅方向における第2中間支持材42の位置調整を行う。位置調整は、例えば、幅方向における外側から上フランジ13、下フランジ14、および、第2中間支持材42に板状材を押し当てることにより行われる。また、位置調整は、例えば、H型鋼12の寸法を計測した結果に基づいて行われる。位置調整後、第2中間支持材42は、締結部材45を本締めすることにより第1中間支持材41に連結される。
【0032】
また、
図5に示すように、準備工程では、幅側被覆セットを作製する。具体的には、各小口34,47,54が形成された木質材22に図示されないビスなどを用いて耐火材21を取り付ける。また、耐火材21および木質材22に対して図示されないビスなどを用いて外側支持部50の第2外側支持材52を所定位置に取り付ける。
【0033】
図6に示すように、幅側被覆部配置工程では、接合材46,53を用いた各支持部40,50への接合が可能な位置に幅側被覆部20を配置する。具体的には、下フランジ14を上方に向けてH型鋼12を配置する。そして、上方から幅側被覆セットを近づけて外側支持部50の第1外側支持材51に第2外側支持材52を引っ掛けたのち、H型鋼12の延在方向における幅側被覆セットの位置調整が行われる。
【0034】
図7に示すように、フランジ側被覆部配置工程では、まず、外側支持部50の第2外側支持材52に耐火材31を接合する。具体的には、幅方向における一対の耐火材21の間に耐火材31を上方から嵌め込む。その後、接合材56を用いて耐火材31を外側支持部50の第2外側支持材52に接合する。
【0035】
次に、
図8に示すように、フランジ側被覆部配置工程では、木質材32を配置する。具体的には、幅方向における一対の木質材22の間に上方から嵌め込むようにして木質材32を配置する。
【0036】
接合工程では、接合材46を用いて幅側被覆部20が中間支持部40に接合されるとともに接合材53を用いて幅側被覆部20が外側支持部50に接合される。また、接合材33を用いて木質材22と木質材32とが接合される。そして、各小口34,47,54に埋木35,48,55が配設される。このようにして幅側被覆部20およびフランジ側被覆部30によって耐火被覆が施されたH型鋼12は、設置場所へと搬送されたのち、所望の位置に設置される。
【0037】
第1実施形態の作用および効果について説明する。
(1-1)幅側被覆部20は、中間支持部40を介してH型鋼12に支持されている。中間支持部40は、H型鋼12に固定される第1中間支持材41と、第1中間支持材41に連結され、幅側被覆部20が当接する当接面を有し、接合材46によって幅側被覆部20が接合される第2中間支持材42と、を有する。
【0038】
こうした構成によれば、成方向における第2接合部42bの配置についての自由度が向上することから、H型鋼12の成方向が大きくなったとしても、成方向における適切な位置に幅側被覆部20の支持点を設けることができる。また、第2中間支持材42が当接面を有することで、中間支持部40に対して幅側被覆部20を強固に接合することができる。その結果、火災が発生したとしても幅側被覆部20の脱落をより確実に抑えることができる。
【0039】
また、第1中間支持材41に対する位置調整を行ったうえで第2中間支持材42を連結することができる。これにより、幅方向におけるフランジ13,14の外側端部の位置に依存することなく、幅側被覆部20が当接する当接面を配置することができる。すなわち、H型鋼12の製造誤差に応じた所望の位置に第2接合部42bを容易に配置することができる。
【0040】
(1-2)第2中間支持材42は、第1中間支持材41に締結部材45によって連結されている。第1中間支持材41および第2中間支持材42の一方には、幅方向に長い長穴形状の締結孔が形成されている。こうした構成によれば、第1中間支持材41に対する第2中間支持材42の位置調整を容易に行うことができる。
【0041】
(1-3)第1中間支持材41は、ウェブ15に固定されている。こうした構成によれば、中間支持部40を介して幅側被覆部20をウェブ15で支持することができる。
(1-4)第1中間支持材41がアングル材によって構成されている。これにより、アングル材の一方の辺部をウェブ15に固定することができるため、ウェブ15と第1中間支持材41との接合強度を高めることができる。また、一対のフランジ13,14間の空間において、第1中間支持材41が占める領域を少なくすることができる。
【0042】
(1-5)第2中間支持材42が角鋼管によって構成されている。これにより、幅側被覆部20が接合される第2中間支持材42の強度を高めることができる。
(1-6)耐火被覆構造10は、幅側被覆部20とフランジ側被覆部30とを支持する外側支持部50を備える。外側支持部50は、下フランジ14に固定される第1外側支持材51と、第1外側支持材51に連結され、幅側被覆部20が接合される幅側接合部52aとフランジ側被覆部30が接合されるフランジ側接合部52bとを有する第2外側支持材52と、を有する。こうした構成によれば、H型鋼12に生じている製造誤差を外側支持部50で効果的に吸収することができる。
【0043】
(1-7)第1外側支持材51と第2外側支持材52とが接合材53によって連結される。これにより、第1外側支持材51と第2外側支持材52とを連結する前に幅側被覆部20に第2外側支持材52を接合しておくことができる。そのため、上方に下フランジ14が位置するようにH型鋼12を配置することにより、第1外側支持材51に第2外側支持材52を引っ掛けて幅側被覆部20を支持することができる。その結果、幅側被覆部20でH型鋼12を被覆する際の施工性を向上させることができる。また、第1外側支持材51から離れた位置に幅側接合部52aを配置することができるため、H型鋼12に生じている製造誤差をさらに効果的に吸収することができる。
【0044】
(1-8)外側支持部50の第2外側支持材52がH型鋼12の一端部から他端部まで延びる通し材である。これにより、火災発生時に耐火材21と耐火材31との繋ぎ目部分が消失したとしても内部への炎の侵入を抑えることができる。
【0045】
(第2実施形態)
図9~
図14を参照して、耐火被覆構造の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、第1実施形態と同様の部分については同様の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
【0046】
(耐火材)
図9に示すように、耐火材21において、内側耐火材21Aは、成方向における端部がフランジ13,14に対して幅方向の外側から対向するように設けられている。また、耐火材31において、内側耐火材31Aは、端面が耐火材21の外側耐火材21Bと当接するように設けられている。
【0047】
(中間支持部)
中間支持部60は、第1中間支持材61と第2中間支持材62とを有する。
第1中間支持材61は、上フランジ13および下フランジ14の各々に例えば溶接によって固定される鋼材からなる固定材である。第2中間支持材62は、架設材63と被覆部支持材64とで構成されている。架設材63は、上フランジ13に固定された第1中間支持材61と下フランジ14に固定された第1中間支持材61とに架設される鋼材である。架設材63は、第1中間支持材61に締結部材45によって連結されている。第1中間支持材61および架設材63の一方には、締結部材45のボルトが貫通する締結孔として、幅方向に長い長穴が形成されている。架設材63は、締結部材45が仮止め状態にあるときに幅方向に位置調整可能に構成されている。架設材63は、被覆部支持材64を支持している。被覆部支持材64は、溶接等によって架設材63に固定される鋼材である。
【0048】
図10に示すように、第2実施形態において、第1中間支持材61は、成方向における内側に向かって開口して、H型鋼12の幅方向が材軸方向となるように配設されるチャンネル材によって構成されている。チャンネル材の底面部は第1固定部61aであり、チャンネル材の側面部は第1連結部61bである。
【0049】
また、架設材63は、H型鋼12の成方向が材軸方向となるように配設される角鋼管によって構成されている。架設材63において、成方向における各端部は第2連結部62aである。被覆部支持材64は、H型鋼12の延在方向が材軸方向となるように配設される角鋼管によって構成されている。被覆部支持材64において、幅方向の外側に臨む側面部は第2接合部62bである。被覆部支持材64は、局所的に設けられる部材であってもよいし、H型鋼12の一端部から他端部まで延びる通し材であってもよい。また、
図9において、1つの架設材63に2つの被覆部支持材64が接合されているが、1つの架設材63に3以上の被覆部支持材64を接合することも可能である。
【0050】
(外側支持部)
図11に示すように、外側支持部70においては、第1外側支持材51の第1連結部51bと第2外側支持材52の幅側接合部52aとが溶接により接合されている。
【0051】
第1外側支持材51は、幅方向における位置調整後、下フランジ14に固定される。第1外側支持材51は、幅方向における下フランジ14の外側端面のやや外側から成方向における外側へ第1連結部51bが延びるように第1固定部51aが下フランジ14に溶接されている。具体的には、第1外側支持材51は、第2外側支持材52の幅側接合部52aが成方向における内側耐火材21Aの外側に配設され、かつ、幅側被覆部20の外側耐火材21Bに当接するように幅方向において位置調整がなされたうえで下フランジ14に溶接される。
【0052】
第2外側支持材52は、第1外側支持材51の第1連結部51bに対して幅側接合部52aが溶接により接合されている。具体的には、第2外側支持材52は、第1外側支持材51の第1連結部51bに対して幅側接合部52aに当接させた状態で、成方向における位置調整が行われる。位置調整後、第2外側支持材52は、第1外側支持材51の第1連結部51bに対して幅側接合部52aが溶接される。なお、外側支持材51,52の位置調整は、例えば、H型鋼12の寸法を計測した結果に基づいて行われる。
【0053】
(耐火被覆構造の施工方法)
図12~
図14を参照して、耐火被覆構造10の施工方法の一例について説明する。ここでは、工場などにおいて、H型鋼12が幅側被覆部20およびフランジ側被覆部30で被覆される場合について説明する。
【0054】
耐火被覆構造10の施工方法は、準備工程、第1接合工程、および、第2接合工程を備える。
図12に示すように、準備工程では、H型鋼12に対する各種作業を行う。なお、
図12では、上方に下フランジ14が位置するようにH型鋼12を示している。
【0055】
具体的には、中間支持部60の第1中間支持材61を各フランジ13,14の所定位置に溶接する。また、架設材63の所定位置に被覆部支持材64を溶接して第2中間支持材62を作製する。そして、締結部材45を用いて一対の第1中間支持材61に第2中間支持材62を仮止め状態に架設する。その後、被覆部支持材64に幅側被覆部20が当接可能となるように幅方向における第2中間支持材62の位置調整を行う。位置調整後、第2中間支持材62は、締結部材45を本締めすることで第1中間支持材61に連結される。
【0056】
また、外側支持部70の第1外側支持材51の位置調整を行ったのち、第1外側支持材51を下フランジ14に溶接する。また、第2外側支持材52の位置調整を行ったのち、第1外側支持材51に第2外側支持材52を溶接する。
【0057】
さらに、準備工程では、幅側被覆部20を作製する。具体的には、各小口34,47,54が形成された木質材22に図示されないビスなどを用いて耐火材21を取り付ける。
図13に示すように、第1接合工程では、外側支持部50の第2外側支持材52に耐火材31を接合する。具体的には、下フランジ14を上方に向けてH型鋼12を配置したのち、上方から耐火材31を近づけて第2外側支持材52のフランジ側接合部52bに載置する。そして、耐火材31の位置調整が行われたのち、接合材56によってフランジ側接合部52bに耐火材31が接合される。
【0058】
図14に示すように、第2接合工程では、接合材46を用いて幅側被覆部20が中間支持部60に接合されるとともに接合材53を用いて幅側被覆部20が外側支持部50に接合される。また、接合材33を用いて木質材22と木質材32とが接合される。そして、各小口34,47,54に埋木35,48,55が配設される。このようにして幅側被覆部20およびフランジ側被覆部30によって耐火被覆が施されたH型鋼12は、設置場所へと搬送されたのち、所望の位置に設置される。
【0059】
第2実施形態の耐火被覆構造によれば、第1実施形態の(1-1)、(1-2)、(1-6)、(1-8)に記載した作用および効果に加えて、以下のような作用および効果を得ることができる。
【0060】
(2-1)中間支持部60は、フランジ13,14の各々に固定される第1中間支持材61と、第1中間支持材61に架設される架設材63と架設材63に接合された被覆部支持材64とで構成される第2中間支持材62と、を有する。こうした構成によれば、1つの架設材63に3以上の被覆部支持材64の接合が可能である。すなわち、2つの第1中間支持材61に対して配置可能な第2接合部62bの自由度が向上することから、H型鋼12に対する第1中間支持材61の固定作業の負荷を軽減することができる。
【0061】
(2-2)幅方向における架設材63の位置調整をすることによって、成方向に並ぶ複数の第2接合部62bの位置調整を同時期に行うことができる。
(2-3)外側支持部70においては、第1外側支持材51に対して第2外側支持材52が溶接により連結されている。そのため、上方に下フランジ14が位置するようにH型鋼12を配置することにより、第2外側支持材52に載置した状態で耐火材31の接合作業を行うことができる。その結果、耐火材31の接合する際の施工性を向上させることができる。
【0062】
(2-4)耐火材21が幅方向に積層された内側耐火材21Aと外側耐火材21Bとで構成されている。また、外側支持部70は、幅方向において下フランジ14の外側端面からはみ出すように設けられている。こうした構成によれば、幅方向においてはH型鋼12に対する第1外側支持材51の接合位置、成方向においては第1外側支持材51に対する第2外側支持材52の接合位置によって、被覆部20,30の位置を調整することができる。その結果、H型鋼12を耐火材で被覆しつつ、H型鋼12の製造誤差がより確実に吸収されるように外側支持部70を設けることができる。
【0063】
第1および第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第1実施形態、第2実施形態、および、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0064】
・耐火被覆構造は、第1実施形態の中間支持部40と第2実施形態の外側支持部70とを組み合わせて実現されてもよいし、第1実施形態の外側支持部50と第2実施形態の中間支持部60とを組み合わせて実現されてもよい。
【0065】
・第2実施形態の中間支持部60においては、固定材に架設材63を溶接等で固定して第1中間支持材とし、締結部材45で架設材63に連結された被覆部支持材64を第2中間支持材としてもよい。
【0066】
・上記実施形態においては、床スラブ11がH型鋼12の上フランジ13を成方向の外側から覆っている。これに限らず、H型鋼12の上フランジ13を成方向の外側から覆うようにフランジ側被覆部30が設けられてもよい。また、フランジ側被覆部30は、接合材56によって耐火材31および木質材32がフランジ側接合部52bに接合されてもよい。
【0067】
・耐火被覆構造は、梁として設置されるH型鋼12に限らず、柱として設置させるH型鋼12に適用されてもよい。
・中間支持部は、フランジ13,14から離れた位置に、幅側被覆部20が当接する当接面を有して接合材46によって幅側被覆部20が接合される第2接合部42bを有していればよい。そのため、中間支持部は、例えば、H型鋼12の延在方向を材軸方向としてウェブ15に接合された角鋼管やチャンネル材によって構成されてもよい。
【0068】
・外側支持部は、H型鋼12の成方向における一対のフランジ13,14の外側において幅側被覆部20とフランジ側被覆部30とが第2外側支持材に接合される構成であればよい。そのため、外側支持部は、例えば、H型鋼12の成方向における一対のフランジ13,14の内側で第1外側支持材51の第1固定部51aが下フランジ14に固定される構成であってもよい。
【0069】
上記実施形態および変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(付記1)
前記耐火被覆構造において、前記第1中間支持材がアングル材によって構成され、前記第2中間支持材が角鋼管によって構成されている。
【0070】
(付記2)
前記耐火被覆構造において、前記第1外側支持材と前記第2外側支持材とが溶接により連結されている。
【0071】
(付記3)
前記耐火被覆構造において、前記第2外側支持材は、前記H型鋼の延在方向において前記H型鋼の一端部から他端部まで延びる通し材である。
【符号の説明】
【0072】
10…耐火被覆構造、11…床スラブ、12…H型鋼、13…上フランジ、14…下フランジ、15…ウェブ、20…幅側被覆部、21…耐火材、21A…内側耐火材、21B…外側耐火材、22…木質材、30…フランジ側被覆部、31…耐火材、31A…内側耐火材、31B…外側耐火材、32…木質材、33…接合材、34…接合用小口、35…埋木、40…中間支持部、41…第1中間支持材、41a…第1固定部、41b…第1連結部、42…第2中間支持材、42a…第2連結部、42b…第2接合部、45…締結部材、46…接合材、47…接合用小口、48…埋木、50…外側支持部、51…第1外側支持材、51a…第1固定部、51b…第1連結部、52…第2外側支持材、52a…幅側接合部、52b…フランジ側接合部、53…接合材、54…接合用小口、55…埋木、56…接合材、60…中間支持部、61…第1中間支持材、61a…第1固定部、61b…第1連結部、62…第2中間支持材、62a…第2連結部、62b…第2接合部、63…架設材、64…被覆部支持材、70…外側支持部。
【要約】
【課題】H型鋼に生じている製造誤差を効果的に吸収しつつ耐火被覆部を支持することのできる耐火被覆構造を提供する。
【解決手段】耐火被覆構造は、一対のフランジと一対のフランジを接続するウェブとを有するH型鋼と、H型鋼に支持され、H型鋼の成方向において一対のフランジの外側に配設される外側支持部50と、外側支持部50に接合材53によって接合され、H型鋼を幅方向における外側から覆う幅側被覆部20と、外側支持部50に接合材56によって接合され、H型鋼を成方向における外側から覆うフランジ側被覆部30と、を備える。外側支持部50は、フランジ14に固定される第1外側支持材51と、幅側被覆部20が接合される幅側接合部52aとフランジ側被覆部30が接合されるフランジ側接合部52bとを有して第1外側支持材51に連結される第2外側支持材52と、を有する。
【選択図】
図3