IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

特許7485253中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法
<>
  • 特許-中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法 図1
  • 特許-中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法 図2
  • 特許-中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法 図3
  • 特許-中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法 図4
  • 特許-中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法 図5
  • 特許-中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法 図6
  • 特許-中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法 図7
  • 特許-中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法 図8
  • 特許-中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法 図9
  • 特許-中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法 図10
  • 特許-中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法 図11
  • 特許-中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/032 20060101AFI20240509BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240509BHJP
   C03B 37/012 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G02B6/032 Z
G02B6/02 411
G02B6/02 356A
C03B37/012 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024504251
(86)(22)【出願日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2023037065
【審査請求日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2022181193
(32)【優先日】2022-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100190470
【弁理士】
【氏名又は名称】谷澤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】榎本 正
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/044891(WO,A1)
【文献】特開2017-15881(JP,A)
【文献】特開2002-323625(JP,A)
【文献】特表2022-541098(JP,A)
【文献】特表2022-502716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0115270(US,A1)
【文献】特表2022-530426(JP,A)
【文献】HOSEN, M. S. et al.,Single Polarization Low Loss Highly Birefringent Hollow-Core Antiresonant Fiber,3RD INTERNATIONAL CONFERENCE ON ELECTRICAL & ELECTRONIC ENGINEERING (ICEEE),2021年12月22日,pp.141-144
【文献】WU, D. et al.,Dependence of Waveguide Properties of Anti-Resonant Hollow- Core Fiber on Refractive Index of Cladding Material,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,2019年11月01日,Vol. 37, No. 21,pp.5593-5599
【文献】WEI, D. et al.,Recent Progress in Low-Loss Hollow-Core Anti-Resonant Fibers and Their Applications,IEEE JOURNAL OF SELECTED TOPICS IN QUANTUM ELECTRONICS,Vol. 26, No. 4,pp.4400312-1- 4400312-12
【文献】VAN PUTTEN, L. D. et al.,Optimizing the Curvature of Elliptical Cladding Elements to Reduce Leakage Loss in Antiresonant Hollow Core Fibres,42ND EUROPEAN CONFERENCE AND EXHIBITION ON OPTICAL COMMUNICATIONS,2016年09月18日,pp.1034-1036
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02-6/10
G02B 6/44
C03B 37/012
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる領域である中空領域を備える中空コアファイバであって、
前記中空領域は、
中空部が設けられた、光伝送路を構成するガラス構造体と、
前記ガラス構造体を取り囲む外クラッドと、を有し、
前記ガラス構造体の前記長手方向に直交する断面の総面積と同じ面積を有する円の直径を2a、前記ガラス構造体の平均屈折率をn1、前記外クラッドの平均屈折率をn2、前記光伝送路を伝搬する光の波長をλ、前記ガラス構造体と前記外クラッドとの比屈折率差を式(1)で示されるΔとしたとき、n1>n2であり、式(2)で示される正規化周波数vは、2.56以上である、中空コアファイバ。
【数1】

【数2】
【請求項2】
前記長手方向に延びる領域である中実領域をさらに備える中空コアファイバであって、
前記中実領域は、
前記ガラス構造体の材料と同じ材料で構成されるコアと、
前記外クラッドの材料と同じ材料で構成され、前記コアを取り囲むクラッドと、を有し、
前記コアの前記長手方向に直交する断面の面積は、前記ガラス構造体の前記総面積と同じであり、
前記クラッドの前記長手方向に直交する断面の面積は、前記外クラッドの前記長手方向に直交する断面の面積と同じである、
請求項1に記載の中空コアファイバ。
【請求項3】
一対の前記中実領域が、前記中空領域の両端に設けられている、
請求項2に記載の中空コアファイバ。
【請求項4】
一対の前記中空領域が、前記中実領域の両端に設けられている、
請求項2または請求項3に記載の中空コアファイバ。
【請求項5】
前記中実領域は、前記中空コアファイバの端部に設けられ、コア及びクラッドを有する光ファイバと接続されている、
請求項2または請求項3に記載の中空コアファイバ。
【請求項6】
複数の前記中空領域及び複数の前記中実領域は、交互に設けられている、
請求項2または請求項3に記載の中空コアファイバ。
【請求項7】
最も近い2つの前記中実領域は、3km以上20km以下の長さの前記中空領域を間に挟んで設けられている、
請求項2または請求項3に記載の中空コアファイバ。
【請求項8】
前記中実領域の長さは、0.5mm以上である、
請求項2または請求項3に記載の中空コアファイバ。
【請求項9】
前記中空領域および前記中実領域は、同軸に設けられている、
請求項2または請求項3に記載の中空コアファイバ。
【請求項10】
前記正規化周波数vは、11.0以下である、
請求項2または請求項3に記載の中空コアファイバ。
【請求項11】
前記正規化周波数vは、8.0以下である、
請求項2または請求項3に記載の中空コアファイバ。
【請求項12】
前記正規化周波数vは、6.0以下である、
請求項2または請求項3に記載の中空コアファイバ。
【請求項13】
前記中実領域の外径は、前記中空領域の外径より小さい、
請求項2または請求項3に記載の中空コアファイバ。
【請求項14】
前記ガラス構造体は、複数の内クラッド要素を含む、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の中空コアファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法に関する。本出願は、2022年11月11日出願の日本出願第2022-181193号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
中空コアファイバとして、例えば、フォトニック結晶中空コアファイバ(Photonic Crystal Hollow-Core Fiber)および反共振中空コアファイバ(Anti-Resonant Hollow-Core Fiber)が知られている。特許文献1には、フォトニック結晶中空コアファイバが開示されている。特許文献2,3および非特許文献1,2には、反共振中空コアファイバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/044100号
【文献】特表2017-52084号公報
【文献】国際公開第2020/217052号
【非特許文献】
【0004】
【文献】W. Belardi et al., “Hollow antiresonant fibers with reduced attenuation”, OPTICS LETTERS, Vol. 39, No. 7, April 1, 2014, p. 1853-1856
【文献】Jeff Hecht, “Is Nothing Better Than Something?”, OPTICS & PHOTONICS NEWS MARCH 2021, p. 28-34
【発明の概要】
【0005】
本開示の中空コアファイバは、長手方向に延びる領域である中空領域を備える。中空領域は、中空部が設けられた、光伝送路を構成するガラス構造体と、ガラス構造体を取り囲む外クラッドと、を有する。ガラス構造体の長手方向に直交する断面の総面積と同じ面積を有する円の直径を2a、ガラス構造体の平均屈折率をn1、外クラッドの平均屈折率をn2、光伝送路を伝搬する光の波長をλ、ガラス構造体と外クラッドとの比屈折率差を式(1)で示されるΔとしたとき、n1>n2であり、式(2)で示される正規化周波数vは、2.56以上である。
【数1】
【数2】
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る中空コアファイバの長手方向に沿う断面図である。
図2図2は、図1の中空コアファイバの長手方向に直交する断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る中空コアファイバの製造方法の線引き工程を説明するための図である。
図4図4は、第2実施形態に係る中空コアファイバの長手方向に沿う断面図である。
図5図5は、中実領域の断面図である。
図6図6は、中実化工程を含む線引き工程を説明するための図である。
図7図7は、OTDR測定による異常箇所の検出方法について説明する図である。
図8図8は、第3実施形態に係る中空コアファイバの中空領域の断面図である。
図9図9は、中空領域と汎用光ファイバとの接続部分を示す断面図である。
図10図10は、中実領域と汎用光ファイバとの接続部分を示す断面図である。
図11図11は、v値と一つの接続部分に係る損失との関係を示すグラフである。
図12図12は、v値と一つの中実領域に係る損失との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
発明者らは、上述の従来技術について検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、上述の従来技術では、中空コアファイバの端部が開放されたまま放置されると、開放された端部から空孔に大気や水分が侵入する。水分の侵入は、1.38μmの波長帯に損失増をもたらし、大気中の二酸化炭素(CO)の侵入は、1.55μm帯に損失増をもたらす。大気とともにダストが侵入すると、特に金属粒子等の金属成分はガラスからのハロゲン成分と反応して、腐食性金属ハロゲン化物となり、浸食性、腐食性等を示すようになる。この結果、経時劣化により長期に安定して使用できなくなるおそれがある。
【0008】
中空コアファイバの開放された端部からの各種浸入を防ぐために、中空コアファイバの両端部に汎用光ファイバを接続し、端部を封止する手法がよく用いられる。しかしながら、中空コアファイバの中空部と汎用光ファイバの中実部との界面でフレネル反射が発生する。また、中空コアファイバと汎用の光ファイバとの間でモードフィールド径の差が大きい。モードフィールド径の差による接続損失は、TEC(Thermal Expansion Core)技術によって抑制されるが、効果は限定的である。以上のことから、汎用光ファイバによる封止では、接続損失が発生してしまい、中空コアファイバの特性を十分に引き出すことができない。
【0009】
中空コアファイバの端部を中実化することが考えられる。しかしながら、中実化した部分では屈折率が通常一様になることから中心部分に光を閉じ込める機能を有さず、したがって端部から光が漏れ、光を伝搬できなくなるおそれがある。
【0010】
本開示は、汎用光ファイバの接続による端部の封止に伴う接続損失を抑制しながら、光を伝搬可能な中空コアファイバおよび中空コアファイバの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示の中空コアファイバによれば、汎用光ファイバの接続による端部の封止に伴う接続損失を抑制しながら、光を伝搬することができる。
【0012】
[本開示の実施態様の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係る中空コアファイバは、長手方向に延びる領域である中空領域を備える。中空領域は、中空部が設けられた、光伝送路を構成するガラス構造体と、ガラス構造体を取り囲む外クラッドと、を有する。ガラス構造体の長手方向に直交する断面の総面積と同じ面積を有する円の直径を2a、ガラス構造体の平均屈折率をn1、外クラッドの平均屈折率をn2、光伝送路を伝搬する光の波長をλ、ガラス構造体と外クラッドとの比屈折率差を式(1)で示されるΔとしたとき、n1>n2であり、式(2)で示される正規化周波数vは、2.56以上である。
【数3】
【数4】
上記中空コアファイバでは、中空領域の長手方向の一部を中実化したときでも、正規化周波数が上記の範囲であるため、中実領域が光を適切に中継できる。よって、切断による影響を抑制しながら、光を伝搬することができる。
【0013】
(2)上記(1)の中空コアファイバは、長手方向に延びる領域である中実領域をさらに備える中空コアファイバであって、中実領域は、ガラス構造体の材料と同じ材料で構成されるコアと、外クラッドの材料と同じ材料で構成され、コアを取り囲むクラッドと、を有し、コアの長手方向に直交する断面の面積は、ガラス構造体の総面積と同じであり、クラッドの長手方向に直交する断面の面積は、外クラッドの長手方向に直交する断面の面積と同じであってもよい。この場合、中実領域は、中空領域を中実化した構造と同等の構造を有するので、切断による影響を抑制しながら、光を伝搬することができる。
【0014】
(3)上記(2)において、一対の中実領域が、中空領域の両端に設けられていてもよい。この場合、中空領域に大気や水分等が侵入することを確実に抑制できる。
【0015】
(4)上記(2)または(3)において、一対の中空領域が、中実領域の両端に設けられていてもよい。この場合、一対の中空領域のうちの、一方の中空領域に大気や水分等が侵入しても、他方の中空領域に影響が及ぶことを抑制できる。
【0016】
(5)上記(2)から(4)のいずれか一つにおいて、中実領域は、中空コアファイバの端部に設けられ、コア及びクラッドを有する光ファイバと接続されていてもよい。この場合、端部でのいわゆる汎用光ファイバとの接続性を確保することができる。これにより、コネクタ等との接続性も確保することができる。
【0017】
(6)上記(2)から(5)のいずれか一つにおいて、複数の中空領域及び複数の中実領域は、交互に設けられていてもよい。この場合、長距離にわたって切断による影響を抑制しながら、光を伝搬することができる。
【0018】
(7)上記(2)から(6)のいずれか一つにおいて、最も近い2つの中実領域は、3km以上20km以下の長さの中空領域を間に挟んで設けられていてもよい。この場合、中空領域の長さが3km以上であるため、付加的損失の増加を抑制できる。また、中空領域の長さが20km以下であるため、破断時の特性劣化領域を制限するという中実化による効果が薄くなることを抑制できる。
【0019】
(8)上記(2)から(7)のいずれか一つにおいて、中実領域の長さは、0.5mm以上であってもよい。この場合、中実領域が光をさらに適切に中継できる。
【0020】
(9)上記(2)から(8)のいずれか一つにおいて、中空領域および中実領域は、同軸に設けられていてもよい。
【0021】
(10)上記(2)から(9)のいずれか一つにおいて、正規化周波数vは、11.0以下であってもよい。この場合、中空コアファイバを中実化した中実点一点あたりの損失を0.3dB以下とすることができる。
【0022】
(11)上記(2)から(9)のいずれか一つにおいて、正規化周波数vは、8.0以下であってもよい。この場合、中空コアファイバを中実化した中実点一点あたりの損失を0.25dB以下とすることができる。
【0023】
(12)上記(2)から(9)のいずれか一つにおいて、正規化周波数vは、6.0以下であってもよい。この場合、中空コアファイバを中実化した中実点一点あたりの損失を0.20dB以下とすることができる。
【0024】
(13)上記(2)から(12)のいずれか一つにおいて、中実領域の外径は、中空領域の外径より小さくてもよい。
【0025】
(14)上記(1)から(13)のいずれか一つにおいて、ガラス構造体は、複数の内クラッド要素を含んでもよい。
【0026】
(15)本開示の一態様に係る中空コアファイバの製造方法は、中空部が設けられた光伝送路を構成するガラス構造体と、ガラス構造体を取り囲む外クラッドと、を有するガラスファイバの長手方向の一部を側面から加熱により溶融させて中実化する工程を含む。
上記中空コアファイバの製造方法では、中実領域を備える中空コアファイバを容易に製造することができる。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
本実施形態に係る中空コアファイバの具体例を、必要により図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されず、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る中空コアファイバの長手方向に沿う断面図である。図2は、図1の中空コアファイバの長手方向に直交する断面図である。図1及び図2に示されるように、第1実施形態に係る中空コアファイバ1は、反共振中空コアファイバの構造を有している。中空コアファイバ1の長手方向は、中空コアファイバ1の中心軸AXに沿う方向である。中空コアファイバ1は、長手方向に延びる領域である中空領域Rhを備える。中空コアファイバ1は、長手方向の全領域にわたる中空領域Rhを備える。中空領域Rhは、ガラス構造体11と、外クラッド12と、ジャケット層13と、樹脂被覆14と、を備える。なお、図1では、内部領域12bの構造を省略して示す。
【0029】
ガラス構造体11は、コア領域15となる空間を取り囲んでいる。コア領域15は、中空光導波領域として機能する。コア領域15は、中心軸AXに沿って延びている。ガラス構造体11は、光を中心に閉じ込める反共振層として機能する。ガラス構造体11は、中空部が設けられた光伝送路を構成する伝送路構成部である。
【0030】
ガラス構造体11は、複数の第1内クラッド要素16を含む。本実施形態では、ガラス構造体11は、6つの第1内クラッド要素16を含む。複数の第1内クラッド要素16は、外クラッド12の内周面12aに一点で溶着した状態で、コア領域15となる空間を取り囲むように配置されている。複数の第1内クラッド要素16は、互いに離隔して配置されている。複数の第1内クラッド要素16は、等間隔で離隔して配置されている。第1内クラッド要素16は、中心軸AXに沿って延びたパイプ形状を有する薄肉管である。第1内クラッド要素16の中心軸は、中心軸AXからずれて配置されている。
【0031】
外クラッド12は、ガラス構造体11を取り囲んでいる。外クラッド12は、光学クラッドとして機能する。外クラッド12は、中心軸AXに沿って延びたパイプ形状を有する薄肉管である。外クラッド12の中心軸は、中心軸AXと一致している。外クラッド12の内周面12aは、ガラス構造体11を収容する内部領域12bを画定している。内部領域12bのうち、複数の第1内クラッド要素16が占める部分を除いた残りの部分が光伝送路の中空部である。内部領域12bは、中空部が設けられた光伝送路に相当する。
【0032】
ジャケット層13は、外クラッド12を取り囲んでいる。ジャケット層13は、外クラッド12の外周面と接触している。ジャケット層13は、外クラッド12の外周面を覆っている。ジャケット層13は、物理クラッドとして機能する。樹脂被覆14は、ジャケット層13を取り囲んでいる。樹脂被覆14は、ジャケット層13の外周面と接触している。樹脂被覆14は、ジャケット層13の外周面を覆っている。
【0033】
ガラス構造体11の長手方向に直交する断面の総面積と同じ面積を有する円の直径を2a、ガラス構造体11の平均屈折率をn1、外クラッド12の平均屈折率をn2としたとき、n1>n2である。更に、光伝送路を伝搬する光の波長をλ、ガラス構造体11と外クラッド12との比屈折率差を式(1)で示されるΔとしたとき、式(2)で示される正規化周波数vは、2.56以上11.0以下である。ここで、ガラス構造体11の断面の総面積は、複数の第1内クラッド要素16の間の空間領域の面積や各第1内クラッド要素16の内側の空間領域の面積を含まない、ガラス部分のみの面積である。
【数5】
【数6】
正規化周波数vをこの範囲とすることにより、中空コアファイバ1を加熱等により中実化した際にも、その中心部分に信号光が伝搬しうる構造が形成される。これにより、中空コアファイバ1を中実化した中実点一点あたりの損失を0.3dB以下とすることができる。正規化周波数vは、2.56以上8.0以下であってもよい。この場合、中実点一点あたりの損失を0.25dB以下とすることができる。正規化周波数vは、2.56以上6.0以下であってもよい。この場合、中実点一点あたりの損失を0.20dB以下とすることができる。なお、波長とは、中空コアファイバ1の使用を想定する通信波長、すなわち、中空コアファイバ1により伝搬される光の波長であり、例えば、1.55μmである。
【0034】
次に、中空コアファイバ1の製造方法について説明する。中空コアファイバ1の製造方法は、線引き工程を含む。図3は、第1実施形態に係る中空コアファイバ1の製造方法の線引き工程を説明するための図である。
【0035】
図3に示された線引き装置10は、加圧装置300と、ヒーター400と、樹脂塗布装置500と、巻き取り装置600と、ローラー610と、を備える。加圧装置300は、線引き対象の光ファイバ母材100の内部を加圧する。ヒーター400は、光ファイバ母材100の一端を加熱する。樹脂塗布装置500は、線引きされたガラスファイバ2の表面に樹脂を塗布し、中空コアファイバ1を形成する。巻き取り装置600は、中空コアファイバ1を巻き取る。ローラー610は、中空コアファイバ1の進行方向を調整する。
【0036】
光ファイバ母材100は、パイプ形状を有し線引き後に外クラッド12となる外クラッド部120と、パイプ形状を有し線引き後に第1内クラッド要素16となる複数の第1内クラッド要素部160と、線引き後にジャケット層13となるジャケット部130と、により構成される。外クラッド部120の内周面120aに囲まれた内部領域120bには、複数の第1内クラッド要素部160のそれぞれが内周面120aに接触した状態で外クラッド部120の中心を取り囲むように配置されている。また、外クラッド部120の外周上にはジャケット部130が設けられている。
【0037】
ヒーター400により光ファイバ母材100の一端が加熱により軟化される。巻き取り装置600のドラムが矢印Sで示された方向に回転することにより、光ファイバ母材100の一端から中空のガラスファイバ2が引き出される。その際、外クラッド部120の内部空間および複数の第1内クラッド要素部160のそれぞれの内部空間には、加圧装置300により圧力制御用ガスや空気が供給されており、これらの内部空間はパイプ形状が変形しないように加圧状態になっている。ガラスファイバ2は、コア領域15となる空間を取り囲み、ガラス構造体11に相当するガラス構造体と、当該ガラス構造体を取り囲み、外クラッド12に相当する外クラッドとを有する。
【0038】
光ファイバ母材100から引き出されたガラスファイバ2の表面には、樹脂塗布装置500により樹脂が塗布され、中空コアファイバ1が得られる。得られた中空コアファイバ1は、最終的に、ローラー610を介して巻き取り装置600のドラムに巻き取られる。
【0039】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る中空コアファイバの長手方向に沿う断面図である。図4に示されるように、第2実施形態に係る中空コアファイバ1Aは、長手方向に延びる領域である中空領域Rhに加えて、長手方向に延びる領域である中実領域Rsをさらに備える点で、中空コアファイバ1と相違している。中空領域Rhは、中空コアファイバ1の中空領域Rhと同じ構成を有している。中空領域Rhおよび中実領域Rsは、同軸に設けられている。なお、図4では、中空領域Rhの内部領域12b(図2参照)の構造を省略して示す。
【0040】
図5は、中実領域Rsの断面図である。図5に示されるように、中実領域Rsは、コア21と、クラッド22と、ジャケット層23と、樹脂被覆24と、を備える。コア21の中心軸は、中心軸AXと一致している。コア21は、ガラス構造体11の材料と同じ材料で構成される。コア21は、中空部を有さない中実体である。コア21は、ガラス構造体11に相当するガラス構造体が加熱により溶融され、中実化されてなる。コア21の長手方向に直交する断面の面積は、ガラス構造体11の長手方向に直交する断面の総面積と同じである。ここで「同じ」には、±5%程度の誤差の範囲で異なる場合も含まれる。
【0041】
コア21の断面積は、例えば、屈折率プロファイルから求められる。すなわち、コア21とクラッド22との境界を屈折率の勾配が最大となる位置として求めた後、この境界に基づいて、コア21の直径を求めれば、コア21の断面積を求めることができる。ガラス構造体11の総断面積は、例えば、中空領域Rhの断面の画像解析により求めてもよいし、中空領域Rhを加熱により中実化した後、屈折率プロファイルから求めてもよい。
【0042】
クラッド22は、コア21を取り囲んでいる。クラッド22は、コア21の外周面と接触している。クラッド22は、コア21の外周面を覆っている。クラッド22は、光学クラッドとして機能する。クラッド22は、外クラッド12の材料と同じ材料で構成される。クラッド22の長手方向に直交する断面の面積は、外クラッド12の長手方向に直交する断面の面積と同じである。ここで「同じ」には、±5%程度の誤差の範囲で異なる場合も含まれる。
【0043】
ジャケット層23は、クラッド22を取り囲んでいる。ジャケット層23は、クラッド22の外周面と接触している。ジャケット層23は、クラッド22の外周面を覆っている。ジャケット層23は、物理クラッドとして機能する。ジャケット層23は、ジャケット層13の材料と同じ材料で構成される。樹脂被覆24は、ジャケット層23を取り囲んでいる。樹脂被覆24は、ジャケット層23の外周面と接触している。樹脂被覆24は、ジャケット層23の外周面を覆っている。樹脂被覆24は、樹脂被覆14の材料と同じ材料で構成される。
【0044】
中空領域Rhは、中空部を含むので、中実領域Rsの外径は中空領域Rhの外径より小さくなる。図4では、中空領域Rhの外径と中実領域Rsの外径とが簡易的に同等で示されている。
【0045】
中実領域Rsの構造によれば、中空領域Rhのモードフィールド径(以下、MFD)と中実領域RsのMFDとのずれ幅は一定以下に抑えられているので、MFDのミスマッチによる増加損失が抑制される。ガラス構造体11が中実化された場合の中空領域Rhは、実質的に中実領域Rsと同じ構成を有する。
【0046】
本実施形態では、中空コアファイバ1Aは、複数の中空領域Rh及び複数の中実領域Rsを備える。複数の中空領域Rhおよび複数の中実領域Rsは、長手方向に沿って交互に接続されている。中実領域Rsは、中空コアファイバ1Aの長手方向において、3km以上20km以下の間隔で設けられている。間隔が短すぎると、付加的損失が増える。間隔が長すぎると、破断時の特性劣化領域を制限するという中実化による効果が薄くなる。
【0047】
中空領域Rhを挟んで隣り合う一対の中実領域Rsがなす間隔は、3km以上20km以下であると言える。最も近い2つの中実領域Rsは、3km以上20km以下の長さの中空領域Rhを間に挟んで設けられているとも言える。さらに言い換えると、1つの中空領域Rhの長手方向の長さは、3km以上20km以下である。中実領域Rsの長手方向の長さは、0.5mm以上である。
【0048】
複数の中実領域Rsは、一対の中実領域Rs1、および、一または複数の中実領域Rs2を含む。一対の中実領域Rs1は、中空コアファイバ1Aの両端部に設けられている。各中実領域Rs1の一端には、中空領域Rhが設けられている。中実領域Rs1の他端には、例えば、コア及びクラッドを有する光ファイバ(いわゆる汎用光ファイバ)が接続されている。各中空領域Rhの両端には、中実領域Rs(中実領域Rs1または中実領域Rs2)が設けられている。中実領域Rs2の両端には、中空領域Rhが設けられている。中実領域Rs2は、一対の中空領域Rhの間に設けられている。なお、中空コアファイバ1Aは、少なくとも中空領域Rh及び中実領域Rsを備えればよく、中空領域Rhの数及び中実領域Rsの数は制限されない。中空コアファイバ1Aは、例えば、1つの中空領域Rhと、その両端に設けられた一対の中実領域Rs1で構成されてもよい。
【0049】
次に、中空コアファイバ1Aの製造方法について説明する。中空コアファイバ1Aの製造方法は、線引き工程が中実化工程を含む点で、中空コアファイバ1の製造方法と相違している。図6は、中実化工程を含む線引き工程を説明するための図である。
【0050】
図6に示された線引き装置10Aは、加熱溶融装置410を備える点で、図3に示された線引き装置10と相違している。加熱溶融装置410は、光ファイバ母材100から引き出された中空のガラスファイバ2の長手方向の一部を側面から加熱し、中実化する。加熱溶融装置410によれば、ガラスファイバ2の長手方向に断続的に中実化された領域を形成することができる。加熱溶融装置410は、例えば、COレーザの照射によりガラスファイバ2を加熱溶融する。COレーザの照射パターンを調整することにより、中実領域Rsの間隔および長さを調整することができる。加熱溶融装置410は、COレーザの照射のかわりに、例えば、マイクロ波の照射またはアーク放電によりガラスファイバ2を加熱溶融してもよい。
【0051】
上述のように、加熱により軟化された光ファイバ母材100の一端から中空のガラスファイバ2が引き出される。中実化工程は、引き出されたガラスファイバ2の長手方向の一部に対して行われる。中実化工程では、加熱溶融装置410によりガラスファイバ2の長手方向の一部を側面から加熱により溶融させて中実化する。中実化工程は、加熱溶融装置410を制御することにより、中実化された領域が所定の長さとなり、かつ、3km以上20km以下の間隔で配置されるように実施される。長手方向の一部が中実化されたガラスファイバ2の表面には、上述のように、樹脂塗布装置500により樹脂が塗布され、中空コアファイバ1Aが得られる。得られた中空コアファイバ1Aは、最終的に、ローラー610を介して巻き取り装置600のドラムに巻き取られる。
【0052】
中空コアファイバ1Aは、中実領域Rsを備えるので、長手方向の一部に破断が生じ、破断箇所から中空領域Rhに水分、CO、または、微粒子ダストが侵入しても、他の中空領域Rhに影響が及ぶことが抑制される。したがって、破断箇所を含む中空領域Rhのみを廃却すれば、それ以外を製品とすることができる。すでに敷設され、使用されている中空コアファイバ1Aの場合は、破断箇所を含む中空領域Rhのみを新しい中空コアファイバ1Aと交換すればよい。
【0053】
図7は、中空コアファイバにおける異常発生箇所の特定方法を説明する図である。図7に示されるように、中実領域を備えない中空コアファイバの場合、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)で検出される光強度Pは、中空コアファイバの一端からの距離Lにかかわらず、略一定である。中実領域を備える中空コアファイバの場合も、中空領域の光強度Pは、距離Lにかかわらず略一定である。中実領域の光強度Pは、距離Lが増えるにつれて、直線状に低下する。異常が発生した場合、中実領域の光強度Pは、異常発生箇所の前後で大きく変化する。これにより、異常が発生した領域を特定することができる。
【0054】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係る中空コアファイバの中空領域の断面図である。図8に示されるように、第3実施形態に係る中空コアファイバ1Bは、ガラス構造体11が複数の第2内クラッド要素17および複数の第3内クラッド要素18を有している点で、第1実施形態に係る中空コアファイバ1、及び、第2実施形態に係る中空コアファイバ1Aと相違している。図示を省略するが、中空コアファイバ1Bが中実領域Rsを備える場合、中空コアファイバ1Bの中実領域Rsは、中空コアファイバ1Aの中実領域Rsと同等の構造を有している。本実施形態では、ガラス構造体11は、5つの第1内クラッド要素16、5つの第2内クラッド要素17、及び、5つの第3内クラッド要素18を含む。
【0055】
第2内クラッド要素17は、中心軸AXに沿って延びたパイプ形状を有する薄肉管である。第2内クラッド要素17は、第1内クラッド要素16の内部に1つずつ配置されている。第2内クラッド要素17の数は、第1内クラッド要素16の数と同じである。第2内クラッド要素17は、例えば、第1内クラッド要素16の材料と同じ材料(ガラス材料)で構成される。
【0056】
第3内クラッド要素18は、中心軸AXに沿って延びたパイプ形状を有する薄肉管である。第3内クラッド要素18は、第2内クラッド要素17の内部に1つずつ配置されている。第3内クラッド要素18の数は、第2内クラッド要素17の数と同じである。第3内クラッド要素18は、例えば、第1内クラッド要素16の材料と同じ材料(ガラス材料)で構成される。
【0057】
第2内クラッド要素17及び第3内クラッド要素18は、第1内クラッド要素16と外クラッド12との溶着部に溶着された状態で配置されている。すなわち、第1内クラッド要素16、第2内クラッド要素17及び第3内クラッド要素18は、外クラッド12の内周面12aに共通の一点で溶着した状態で配置されている。第2内クラッド要素17及び第3内クラッド要素18の直径や肉厚等の寸法は、通信波長帯の光を比較的低損失で伝搬可能なように設計されている。
【0058】
以下、実験例について説明する。なお、本開示は実施例に限定されない。
【0059】
(実施例1)
実施例1として、第3実施形態に係る中空コアファイバ1Bに対応する構成を有する中空コアファイバを製造した。具体的には、第1実施形態に係る中空コアファイバ1の製造方法と同様にして、中空領域のみで構成される中空コアファイバを製造した。その後、得られた中空コアファイバの端部にCOレーザを照射して中実領域を形成した。中実領域の長さは10mmとした。外クラッドの外径を150μm、外クラッドの内径を79.7μm、第1内クラッド要素の直径を28.1μm、第1内クラッド要素の厚さを0.5μm、第2内クラッド要素の直径を22.6μm、第2内クラッド要素の厚さを0.5μm、第3内クラッド要素の直径を7.6μm、第3内クラッド要素の厚さを0.5μmとした。ガラス構造体の長手方向に直交する断面の総面積は458.6μmであり、これと同じ面積を有する円の直径は24.2μmであった。
【0060】
図9は、中空領域と汎用光ファイバとの接続部分を示す断面図である。図9に示されるように、実施例1の中空コアファイバ1Bの中実化される前の端部を融着により汎用光ファイバ60と直接接続した。図10は、中実領域と汎用光ファイバとの接続部分を示す断面図である。図10に示されるように、実施例1の中空コアファイバ1Bの中実化された端部を融着により汎用光ファイバ60と直接接続した。参考のため、図9及び図10では、中空コアファイバ1Bについて、第3実施形態と同じ符号を示す。また、図9及び図10では、中空コアファイバ1Bの内部領域の構造を省略して示すと共に、外クラッド、ジャケット、および、樹脂被覆を簡易的に一層で示す。
【0061】
中空コアファイバ1Bの中空領域RhのMFDは、波長1550nmにおいて25.0μmであり、汎用光ファイバ60のMFDは、波長1550mmにおいて10.0μmであった。図9の場合、一つの接続部分に係る損失は平均0.6dBであった。図10の場合、一つの接続部分に係る損失は式(2)のv値によって変化した。v値は、ガラス構造体と外クラッドとの比屈折率差Δを調整することで、変化させた。
【0062】
表1に、比屈折率差Δ[%]、v値、および、図10の場合の一つの接続部分に係る損失[dB]を示す。
【表1】
【0063】
図11は、v値と一つの接続部分に係る損失との関係を示すグラフである。図11の横軸は、実施例1の中空コアファイバ1Bのv値を示す。図11の縦軸は、図10の場合の一つの接続部分に係る損失[dB]を示す。図11のグラフに対して、近似曲線を求め、近似曲線が0.6dBとなるv値を求めた。この結果、v値が2.56以上であれば、一つの接続部分に係る損失を0.6dBより小さくできることが確認できた。
【0064】
(実施例2)
実施例2として、第3実施形態に係る中空コアファイバ1Bに対応する構成を有する中空コアファイバを製造した。具体的には、第2実施形態に係る中空コアファイバ1Aの製造方法と同様にして、線引き中にCOレーザを5km間隔で照射し、50km長の中空コアファイバを製造した。中実領域の長さは10mmとした。外クラッドの外径及び内径、第1内クラッド要素の直径及び厚さ、第2内クラッド要素の直径及び厚さ、第3内クラッド要素の直径及び厚さ、及び、ガラス構造体の長手方向に直交する断面の総面積は、実施例1に係る中空コアファイバと同様にした。一つの中実領域(中実点)に係る損失は式(2)のv値によって変化した。v値は、ガラス構造体と外クラッドとの比屈折率差Δを調整することで、変化させた。
【0065】
表2に、比屈折率差Δ[%]、v値、および、一つの中実領域に係る損失[dB]を示す。
【表2】
【0066】
図12は、v値と一つの中実領域に係る損失との関係を示すグラフである。図12の横軸は、実施例2の中空コアファイバのv値を示す。図12の縦軸は、一つの中実領域に係る損失(中実点一点あたりの損失)[dB]を示す。図12によれば、v値が11以下であれば、損失が0.30dB以下に抑制され、v値が8.0以下であれば、損失が0.25dB以下に抑制され、v値が6.0以下であれば、損失が0.20dB以下に抑制されることが確認できた。
【0067】
以上、実施形態について説明してきたが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。上記実施形態は、適宜組み合わせられてもよい。
【0068】
第2実施形態に係る中空コアファイバ1Aの製造方法では、光ファイバ母材100から引き出された中空のガラスファイバ2の長手方向の一部を加熱溶融装置410により中実化したが、ガラスファイバ2同士を融着し、融着点に中実領域Rsを形成してもよい。
【0069】
中空領域Rhは、中空部が設けられた光伝送路を構成するガラス構造体11と、外クラッド12とを有していればよく、上記実施形態以外の構成であってもよい。中空領域Rhは、フォトニック結晶中空コアファイバでもよい。
【符号の説明】
【0070】
1,1A,1B…中空コアファイバ
2…ガラスファイバ
10,10A…線引き装置
11…ガラス構造体
12…外クラッド
12a…内周面
12b…内部領域
13…ジャケット層
14…樹脂被覆
15…コア領域
16…第1内クラッド要素
17…第2内クラッド要素
18…第3内クラッド要素
21…コア
22…クラッド
23…ジャケット層
24…樹脂被覆
60…汎用光ファイバ
100…光ファイバ母材
120…外クラッド部
120a…内周面
120b…内部領域
130…ジャケット部
160…第1内クラッド要素部
300…加圧装置
400…ヒーター
410…加熱溶融装置
500…樹脂塗布装置
600…巻き取り装置
610…ローラー
AX…中心軸
L…距離
P…光強度
Rh…中空領域
Rs,Rs1,Rs2…中実領域
S…矢印

【要約】
中空コアファイバは、長手方向に延びる領域である中空領域を備える。中空領域は、中空部が設けられた、光伝送路を構成するガラス構造体と、ガラス構造体を取り囲む外クラッドと、を有する。ガラス構造体の長手方向に直交する断面の総面積と同じ面積を有する円の直径を2a、ガラス構造体の平均屈折率をn1、外クラッドの平均屈折率をn2、光伝送路を伝搬する光の波長をλ、ガラス構造体と外クラッドとの比屈折率差を式(1)で示されるΔとしたとき、n1>n2であり、式(2)で示される正規化周波数vは、2.56以上である。
【数1】
【数2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12