(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】乗客コンベアの櫛板の点検システム
(51)【国際特許分類】
B66B 29/06 20060101AFI20240509BHJP
B66B 31/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B66B29/06 A
B66B31/00 D
(21)【出願番号】P 2024513856
(86)(22)【出願日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 JP2024007500
【審査請求日】2024-02-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 英揮
(72)【発明者】
【氏名】瀧井 健二
(72)【発明者】
【氏名】長岡 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 竜平
(72)【発明者】
【氏名】池内 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】長徳 典宏
(72)【発明者】
【氏名】森 伸二
(72)【発明者】
【氏名】岡本 祐輔
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-27790(JP,A)
【文献】特開2019-218173(JP,A)
【文献】特許第7416311(JP,B1)
【文献】特開2010-70299(JP,A)
【文献】特表2009-507739(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3279131(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアに常設され、櫛板を撮影するカメラと、
乗客コンベアの制御装置から駆動装置のブレーキの制動または解放の一方または両方を表す制御信号を受け付け、前記制御信号をトリガとする点検処理において前記カメラに前記櫛板を撮影させる制御部と、
を備える、乗客コンベアの櫛板の点検システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記点検処理において、前記制御信号を受け付けた直後に先行処理を行い、前記先行処理が完了した後に前記カメラに前記櫛板を撮影させる、
請求項1に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
【請求項3】
前記制御部は、乗客コンベアの起動時において前記制御装置が前記ブレーキの解放を実行させる信号を前記制御信号として受け付け、当該制御信号をトリガとして前記点検処理を行う、
請求項1または請求項2に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
【請求項4】
前記制御部は、乗客コンベアの停止時において前記制御装置が前記ブレーキの制動を実行させる信号を前記制御信号として受け付け、当該制御信号をトリガとして前記点検処理を行う、
請求項1または請求項2に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記点検処理において、前記点検処理の開始から少なくとも予め設定された時間が経過した後に前記カメラに前記櫛板を撮影させる、
請求項1または請求項2に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
【請求項6】
前記カメラは、前記櫛板の静止画像を撮影する、
請求項1または請求項2に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
【請求項7】
前記カメラが撮影した前記櫛板の画像を蓄積して記憶する記憶部
を備える、請求項1または請求項2に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
【請求項8】
外部からの要求に応じて、前記記憶部が記憶している前記櫛板の画像を送信する通信部
を備える、請求項7に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
【請求項9】
前記カメラは、前記櫛板の左右方向の外側に配置され撮影窓が設けられたコムスカートの裏側に配置され、前記コムスカートより左右方向の外側かつ前記櫛板より上方から前記撮影窓を通して前記櫛板を撮影する、
請求項1または請求項2に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベアの櫛板の点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、乗客コンベアの櫛板の監視装置の例を開示する。監視装置は、櫛板を撮影するカメラを備える。監視装置は、カメラが撮影した櫛板の画像と、正常時の櫛板の画像との比較によって櫛板が正常であるか異常であるかを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の監視装置において、カメラは、正常時の櫛板の画像と比較しうるように、予め設定された箇所を同一運転方向で同一の踏段が通過するときに櫛板の画像を撮影する。撮影される櫛板の画像は常に同一の踏段と同一の位置関係にある状態の画像であるため、当該踏段との位置関係などによって視認しにくい異常がある場合などに、当該異常が発見されにくい可能性がある。
【0005】
本開示は、このような課題の解決に係るものである。本開示は、撮影された画像における櫛板の異常をより発見しやすくする点検システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る乗客コンベアの櫛板の点検システムは、乗客コンベアに常設され、櫛板を撮影するカメラと、乗客コンベアの制御装置から駆動装置のブレーキの制動または解放の一方または両方を表す制御信号を受け付け、前記制御信号をトリガとする点検処理において前記カメラに前記櫛板を撮影させる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る乗客コンベアの櫛板の点検システムによれば、撮影された画像における櫛板の異常がより発見しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る乗客コンベアの構成図である。
【
図2】実施の形態1に係る乗客コンベアの乗降口の斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る撮影装置の斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係る撮影装置が取り付けられた乗客コンベアの要部拡大図である。
【
図5】実施の形態1に係る撮影装置が取り付けられた乗客コンベアの要部断面図である。
【
図6】実施の形態1に係る撮影装置の取付位置を説明する図である。
【
図7】実施の形態1に係る点検システムの動作の例を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態1に係る撮影装置が撮影した櫛板の画像の例を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係る点検システムの主要部のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。なお、本開示の対象は以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態の任意の構成要素の変形、または実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る乗客コンベア1の構成図である。
【0011】
乗客コンベア1は、例えば、建物の上階と下階との間に掛け渡される傾斜式のエスカレーターである。このとき、乗客コンベア1は、上階および下階の間で乗客を輸送する。建物の上階側および下階側において、乗客コンベア1の乗降口2が設けられる。乗降口2は、乗客が乗客コンベア1から乗降する場所である。一方の乗降口2は、乗客が乗客コンベア1に乗り込む出発側の乗降口2である。他方の乗降口2は、乗客が乗客コンベア1から降りる到着側の乗降口2である。各々の乗降口2において、前後方向の内側に櫛板3が設けられる。櫛板3は、乗客コンベア1の乗客を輸送する部分の左右方向の幅全体にわたって配置される。櫛板3において、複数の櫛歯4が設けられる。この例において、複数の櫛歯4は、乗客コンベア1の左右方向において等間隔に並ぶ。乗客コンベア1は、トラス5と、駆動装置6と、複数の踏段7と、一対の欄干8と、一対の移動手摺9と、ブレーキ10と、制御装置11と、を備える。
【0012】
トラス5は、乗客コンベア1の構造を支持する枠となる、乗客コンベア1の前後方向に長い部分である。この例において、トラス5は、建物の上階と下階との間に掛け渡される。トラス5の前後方向の一端は、上階側の端部である。トラス5の前後方向の他端は、下階側の端部である。トラス5の上階側の端部において、上部機械室12aが設けられる。トラス5の下階側の端部において、下部機械室12bが設けられる。
【0013】
駆動装置6は、駆動力を発生させる例えばモーターなどの装置を含む。この例において、駆動装置6は、上部機械室12aに配置される。駆動装置6は、例えば、上部機械室12aにおいてスプロケット13を回転駆動する。スプロケット13において、無端状の駆動チェーン14が巻き掛けられている。駆動装置6は、駆動力を発生させることで、駆動チェーン14を循環移動させる。
【0014】
各々の踏段7は、駆動装置6が発生させる駆動力によって循環移動する機器である。各々の踏段7は、例えば、駆動装置6が循環移動させる駆動チェーン14に取り付けられ、駆動チェーン14とともに循環移動する。各々の踏段7は、出発側の乗降口2から到着側の乗降口2まで往路を移動し、到着側の乗降口2から出発側の乗降口2まで往路より下方の帰路を移動する。各々の踏段7の表面において、前後方向に沿うクリートが設けられる。各々の踏段7は、出発側の乗降口2において、櫛板3の櫛歯4と表面のクリートとが隙間を空けて噛み合いながら、櫛板3の下方から繰り出される。各々の踏段7は、到着側の乗降口2において、櫛板3の櫛歯4と表面のクリートとが隙間を空けて噛み合いながら、櫛板3の下方に入り込む。複数の踏段7は、往路において階段状に配置される。
【0015】
一方の欄干8は、複数の踏段7の左側に配置される。他方の欄干8は、複数の踏段7の右側に配置される。すなわち、一対の欄干8は、複数の踏段7に対して左右方向の外側に配置される。
【0016】
各々の移動手摺9は、駆動装置6が発生させる駆動力によって循環移動する機器である。各々の移動手摺9は、出発側の乗降口2から到着側の乗降口2まで往路を移動し、到着側の乗降口2から出発側の乗降口2まで往路より下方の帰路を移動する。各々の移動手摺9は、可撓性を有する環状の部材からなる。一方の移動手摺9は、複数の踏段7の左側に配置される。他方の移動手摺9は、複数の踏段7の右側に配置される。
【0017】
ブレーキ10は、乗客コンベア1の停止時における各々の踏段7の静止保持などを担う装置である。この例において、ブレーキ10は、上部機械室12aに配置される。ブレーキ10は、例えば、駆動装置6のスプロケット13の回転を制動することで、各々の踏段7を静止保持する。
【0018】
制御装置11は、乗客コンベア1の動作を制御する装置である。この例において、制御装置11は、上部機械室12aに配置される。制御装置11は、乗客コンベア1の起動時において、駆動を開始させる信号を駆動装置6に出力し、スプロケット13などを解放させる信号をブレーキ10に出力する。これにより、各々の踏段7の静止保持が解除され、各々の踏段7は循環移動を開始する。その後の通常運転時において、乗客コンベア1は、例えば一方の移動手摺9を掴みながらいずれかの踏段7の上に立ち止まっている乗客を、制御装置11の制御に基づいて駆動装置6が発生させる駆動力によって輸送する。このとき、各々の踏段7は、例えば予め設定された通常速度で往路において進行方向に移動する。各々の移動手摺9は、各々の踏段7に合わせた移動速度で循環移動する。制御装置11は、乗客コンベア1の停止時において、駆動を停止させる信号を駆動装置6に出力し、スプロケット13などを制動させる信号をブレーキ10に出力する。これにより、各々の踏段7は循環移動を停止し、各々の踏段7が静止保持される。乗客コンベア1の起動および停止は、例えば、キースイッチの操作などによって行われる。乗客コンベア1の起動および停止は、乗客が乗車していないときに行われる。
【0019】
乗客コンベア1において、点検システム15が適用される。点検システム15は、乗客コンベア1の点検に用いられるシステムである。点検システム15は、例えば、保守作業員などが乗客コンベア1の目視点検などを遠隔地から行いうるように、乗客コンベア1の画像または音声などの情報を取得する機能を搭載する。点検システム15は、例えば、既設の乗客コンベア1に新たに適用される。点検システム15は、新設の乗客コンベア1に設置当初から適用されてもよい。点検システム15は、収音装置16と、撮影装置17と、点検盤18と、通信装置19と、を備える。
【0020】
収音装置16は、例えば起動時、通常運転時、および停止時などにおける、乗客コンベア1から発生する音声などの情報を取得する装置である。収音装置16は、例えば、マイクなどを備える。収音装置16は、例えば、駆動装置6およびブレーキ10などが発する音を取得しうるように、上部機械室12aなどに配置される。
【0021】
撮影装置17は、例えば起動時、通常運転時、および停止時などにおける、乗客コンベア1の画像などの情報を取得する装置である。撮影装置17は、櫛板3の画像を撮影しうるように、出発側および到着側の乗降口2の一方または両方に常設される。撮影装置17が撮影する画像は、例えば、櫛板3の櫛歯4の折れの有無の確認などの点検に用いられる。
【0022】
点検盤18は、点検システム15における情報処理などを行う装置である。点検システム15における情報処理は、例えば、収音装置16および撮影装置17の動作の制御などを含む。点検システム15における情報処理は、例えば、取得された情報の記憶、蓄積、削除、更新、および入出力などの管理を含む。点検盤18は、上部機械室12aおよび下部機械室12bの一方または両方に配置される。点検盤18は、制御部20と、記憶部21と、を備える。制御部20は、収音装置16および撮影装置17の動作の制御などを行う部分である。記憶部21は、収音装置16および撮影装置17が取得した情報を蓄積して記憶する部分である。記憶部21は、取得されてから予め設定された期間が経過した蓄積している情報を、例えば新たに取得される情報の上書きなどによって削除してもよい。点検盤18は、乗客コンベア1の制御装置11が例えばブレーキ10などの乗客コンベア1の機器に出力する制御信号などを制御部20が取得しうるように、制御装置11に接続される。点検盤18は、動作指令などの制御信号を出力しうるように、また、収音および撮影された情報を取得しうるように、収音装置16および撮影装置17に接続される。
【0023】
通信装置19は、点検システム15の外部の機器などとの間で情報を通信する装置である。通信装置19は、点検システム15における通信部の例である。通信装置19は、情報を入出力しうるように、点検盤18に接続される。通信装置19は、例えばインターネットまたは電話回線網などの広域な通信網、またはLAN(Local Area Network)などの局所的な通信網に接続される。通信装置19は、例えば、LTE規格(LTE:Long Term Evolution)などの通信網に接続される。この例において、通信装置19は、乗客コンベア1の目視点検などを遠隔地から行う保守作業員などの要求に応じて、点検盤18の記憶部21が記憶している乗客コンベア1の画像または音声などの情報を送信する。保守作業員などの要求は、例えば、インターネットなどの通信網を通じて点検システム15の外部のコンピュータなどから通信装置19に送信される。
【0024】
図2は、実施の形態1に係る乗客コンベア1の乗降口2の斜視図である。
【0025】
各々の欄干8は、手摺ガイド22と、内側板23と、スカートガード24と、インナーデッキ25と、を備える。手摺ガイド22は、移動手摺9の移動を案内する部材である。内側板23は、移動手摺9および手摺ガイド22の下方に配置される。内側板23は、乗客コンベア1に乗車している乗客に左右方向から面する部分である。スカートガード24は、踏段7の側方に配置される。右側の欄干8のスカートガード24の表面は、右側から踏段7の側面に対向する。左側の欄干8のスカートガード24の表面は、左側から踏段7の側面に対向する。スカートガード24は、踏段7の進行方向を長手方向とする板状の部材である。スカートガード24は、垂直に配置される。インナーデッキ25は、スカートガード24の上端部および内側板23の下端部の間に設けられる板状の部材である。各々の欄干8において、スカートガード24およびインナーデッキ25などによって囲まれる部分の内部は、トラス5の内部に通じる。
【0026】
スカートガード24は、コムスカート26を含む。コムスカート26は、乗降口2において、櫛板3の左右方向の外側に配置される板状の部材である。コムスカート26は、櫛板3が設けられる位置の左右方向の外側に取り付けられている。右側の欄干8のコムスカート26の表面は、右側から櫛板3の右端部に対向する、左側を向く面である。左側の欄干8のコムスカート26の表面は、左側から櫛板3の左端部に対向する、右側を向く面である。すなわち、櫛板3は、左右方向において左右の欄干8のコムスカート26の間に配置される。また、右側の欄干8のコムスカート26の裏側の面は、乗客コンベア1の乗客から見えない右側を向く面である。左側の欄干8のコムスカート26の裏側の面は、乗客コンベア1の乗客から見えない左側を向く面である。ここで、左右のいずれか一方の欄干8のコムスカート26は、第1コムスカートの例である。また、左右の他方の欄干8のコムスカート26は、第2コムスカートの例である。第1コムスカートおよび第2コムスカートは、櫛板3を挟んで互いに対向する。
【0027】
少なくともいずれかのコムスカート26において、コムライト27および操作部28が設けられていてもよい。コムライト27は、乗降口2において櫛板3の近傍を照らす照明装置である。操作部28は、例えば、乗客コンベア1の起動時、停止時、非常時、点検時、またはその他の場合に操作されるボタンまたはスイッチなどを含む。操作部28において、ボタンカバーなどが設けられていてもよい。
【0028】
図3は、実施の形態1に係る撮影装置17の斜視図である。
【0029】
撮影装置17は、カメラ29と、固定箱30と、を備える。この例において、撮影装置17は、左右のいずれか一方のコムスカート26である第1コムスカートの裏側に取り付けられる。
【0030】
カメラ29は、櫛板3の画像を撮影しうるように、例えばレンズおよび撮像素子などを備える。この例において、カメラ29は、制御部20の制御に従って、櫛板3の静止画像を撮影する。
【0031】
固定箱30は、カメラ29を固定する部分である。固定箱30は、外箱31と、内部支持体32と、隠し板33と、を備える。
【0032】
外箱31は、固定箱30の外郭をなす箱状の部材である。外箱31は、カメラ29を内部に収納する。外箱31は、前面がコムスカート26の裏側の面に対向するように、例えばネジなどによってコムスカート26の裏側に取り付けられる。この例において、外箱31は、前面に設けられた2箇所のタブ34でコムスカート26にネジ留めされる。外箱31において、前面に凹部35が設けられる。外箱31のタブ34は、例えば凹部35の縁などに設けられる。外箱31において、前面に撮影口39が設けられる。カメラ29は、外箱31の内部から撮影口39を通して櫛板3の撮影を行う。外箱31において、底部に入線口36が設けられる。入線口36は、カメラ29に配線される通信線および電力供給線などを通す開口である。
【0033】
内部支持体32は、外箱31の内部においてカメラ29を支持する部材である。内部支持体32は、例えば、曲げられた板状の部材などである。内部支持体32は、基部37および支持部38を有する。基部37は、内部支持体32の下側の部分である。基部37は、外箱31の底部などに固定される。基部37は、外箱31の内部において、鉛直方向に立ち上がるように配置される。支持部38は、カメラ29が取り付けられる部分である。支持部38は、内部支持体32の上側の部分である。支持部38は、鉛直方向から固定箱30の前方に向けて曲げられた部分である。支持部38の前面の法線は、下側を向く。支持部38の前面にカメラ29が取り付けられることで、カメラ29は、下側を向くように固定される。内部支持体32は、カメラ29を支持している状態で、外箱31の内部に収められる。
【0034】
隠し板33は、半透明の板状の部材である。隠し板33は、例えば、アクリル平板などである。この例において、隠し板33の色は、櫛板3の色と異なる色である。例えば、櫛板3が黄色である場合に、ブルースモークのアクリル板などが隠し板33として用いられる。隠し板33は、固定箱30の前面に、撮影口39を覆うように取り付けられる。隠し板33の厚さは、固定箱30の前面の凹部35の縁の高さを超えない。すなわち、隠し板33は、凹部35に収められるように取り付けられる。隠し板33の厚さは、固定箱30の前面の凹部35の縁の高さと同じであってもよい。
【0035】
図4は、実施の形態1に係る撮影装置17が取り付けられた乗客コンベア1の要部拡大図である。
図4において、撮影装置17が裏側に取り付けられたコムスカート26が示される。
【0036】
撮影装置17の固定箱30は、カメラ29を内部に固定した状態で、コムスカート26の裏側に取り付けられる。この例において、撮影装置17は、コムライト27より上方に取り付けられる。この図において、乗客コンベア1の左右方向に平行で櫛板3を通る鉛直面である仮想平面Vが示される。撮影装置17のカメラ29は、仮想平面Vの面内に配置される。
【0037】
撮影装置17が取り付けられるコムスカート26において、撮影窓40が設けられる。撮影窓40は、コムスカート26の裏側から隠し板33によって覆われる。このとき、隠し板33は、撮影窓40の縁に接していてもよい。カメラ29は、コムスカート26の裏側から隠し板33および撮影窓40を通して櫛板3の撮影を行う。
【0038】
図5は、実施の形態1に係る撮影装置17が取り付けられた乗客コンベア1の要部断面図である。
図5において、
図4の仮想平面Vによる断面図が示される。
【0039】
固定箱30は、コムスカート26の裏側に収められ、コムスカート26の表側の表面から乗客コンベア1の左右方向の内側に突出しない。固定箱30は、撮影窓40の上端より上方においてカメラ29を固定する。固定箱30は、櫛板3を向くようにカメラ29を下側に向けた状態で、カメラ29を内部に固定する。カメラ29は、コムスカート26より左右方向の外側かつ櫛板3より上方から、撮影窓40を通して櫛板3を撮影する。
【0040】
図6は、実施の形態1に係る撮影装置17の取付位置を説明する図である。
【0041】
撮影装置17のカメラ29は、例えば、個々の櫛歯4を画像上で識別しうるように、櫛板3を上方から撮影する。ここで、櫛歯4のピッチをd、櫛板3からのカメラ29の高さをH、カメラ29からいずれかの櫛歯4までの距離をRとする。カメラ29および当該櫛歯4を結ぶ線は、水平面と角度θをなす。櫛歯4のピッチdに対してカメラ29までの距離Rは十分遠いので、隣接する櫛歯4は、カメラ29が撮影する画像上でd×sinθだけ離れて見えると評価できる。隣接する櫛歯4を識別するためには、この画像上の間隔がカメラ29の分解能xより大きければよいので、条件d×sinθ>xが満たされればよい。ここで、カメラ29の分解能xは、例えば、カメラ29の画角、解像度、および撮影位置などによって定まり、撮影された画像上において識別可能な長さなどを表す。また、sinθ=H/Rなので、カメラ29は条件H/R>x/dが満たされるように、すなわち、距離Rに対するカメラ29の高さHの比が櫛歯4のピッチdに対するカメラ29の分解能xの比より大きくなるように配置される。
【0042】
距離Rは、例えば、乗客コンベア1の左右の中央にある櫛歯4までの、カメラ29からの距離などである。このとき、乗客が通過することで折れが生じやすい中央部の櫛歯4が識別できるように櫛板3が撮影されるので、櫛歯4の折れの有無がより確実に確認できるようになる。また、距離Rは、例えば、撮影装置17が設けられたコムスカート26からの距離が左右のコムスカート26の間の幅の3/4の位置にある櫛歯4までの、カメラ29からの距離などである。このとき、左右2列に並んだ乗客が通過することで折れが生じやすい位置の櫛歯4が識別できるように櫛板3が撮影されるので、櫛歯4の折れの有無がより確実に確認できるようになる。また、距離Rは、例えば、撮影装置17が設けられたコムスカート26の反対側の端部にある櫛歯4までのカメラ29からの距離などである。このとき、櫛板3の櫛歯4全体が識別できるように櫛板3が撮影されるので、櫛歯4の折れの有無がより確実に確認できるようになる。なお、画像上で個々の櫛歯4が識別できない範囲においても、例えば櫛歯4の部分の画像の色彩の濃淡およびその変化または連続性などに基づいて、保守作業員は目視点検によって櫛歯4の折れの有無を確認しうる。また、撮影装置17は、左右の両側のコムスカート26の裏側に設けられていてもよい。このとき、各々の撮影装置17が左右中央の櫛歯4までを識別できれば、左右両側の撮影装置17によって、左右の幅全体の櫛歯4を識別可能な画像が取得できるようになる。
【0043】
続いて、撮影装置17の取付方法の例を説明する。この例において、既設の乗客コンベア1に、点検システム15が新たに適用される。
【0044】
取付作業を行う作業員は、乗客コンベア1から既設のコムスカート26を取り外す。この際、作業員は、櫛板3および踏段7などを乗客コンベア1から取り外してもよい。
【0045】
その後、作業員は、新設のコムスカート26の裏側に、撮影装置17の固定箱30を取り付ける。この際、固定箱30は、内部にカメラ29を固定している。なお、新設のコムスカート26において、撮影窓40が設けられている。作業員は、隠し板33を撮影窓40の位置に合わせて、2箇所のタブ34のネジ留めなどによって固定箱30を取り付ける。
【0046】
その後、作業員は、固定箱30を取り付けた新設のコムスカート26を、乗客コンベア1に取り付ける。
【0047】
続いて、
図7および
図8を用いて、点検システム15を用いた乗客コンベア1の点検の例を説明する。
【0048】
図7は、実施の形態1に係る点検システム15の動作の例を示すフローチャートである。
図8は、実施の形態1に係る撮影装置17が撮影した櫛板3の画像の例を示す図である。
【0049】
図7のステップS1において、制御部20は、乗客コンベア1の制御装置11がブレーキ10に出力する制御信号を受け付けたか否かを判定する。当該制御信号は、例えば、ブレーキ10の制動を表しブレーキ10の制動を実行させる制御信号、またはブレーキ10の解放を表しブレーキ10の解放を実行させる制御信号などである。当該制御信号は、例えば、ブレーキ10の制動および解放を表す制御信号であってもよい。当該制御信号は、例えば、ブレーキ10の制動および解放の切換えを実行させる制御信号などであってもよい。当該制御信号は、例えば、乗客コンベア1の起動時または停止時などにおいて受け付けられる。制御装置11からの制御信号を受け付けていないと制御部20が判定するときに、点検システム15の処理は、ふたたびステップS1に進む。一方、制御装置11からの制御信号を受け付けたと制御部20が判定するときに、点検システム15の処理は、ステップS2に進む。
【0050】
ステップS2において、制御部20は、録音処理を実行する。録音処理において、制御部20は、収音装置16に音声の取得を開始させる。収音装置16は、開始から予め設定された時間が経過した後、音声の取得を終了する。当該時間は、例えば、ブレーキ10の解放から踏段7の移動速度が一定の定格速度に達するまでの時間、ブレーキ10の制動から踏段7が完全に停止するまでの時間、またはこれらの時間を含む十分な長さの一定の時間などである。制御部20は、収音装置16が取得した音声の情報を取得する。録音処理において、制御部20は、例えば、収音装置16から取得した音声の情報の後処理を行ってもよい。後処理は、例えば、エンコード処理などを含む。その後、点検システム15の処理は、ステップS3に進む。
【0051】
ステップS3において、制御部20は、音声記録処理を実行する。音声記録処理において、制御部20は、必要な後処理が行われた後の、収音装置16から取得した音声の情報を、記憶部21に記憶させる。記憶部21は、制御部20から出力される当該情報を、例えば予め設定された日数分だけ蓄積して記憶する。その後、点検システム15の処理は、ステップS4に進む。
【0052】
ステップS4において、制御部20は、撮影処理を実行する。撮影処理において、制御部20は、撮影装置17に画像の取得を実行させる。撮影装置17のカメラ29は、制御部20からの指示に基づいて櫛板3の静止画像を撮影する。撮影処理において、制御部20は、例えば、撮影装置17から取得した画像の情報の後処理を行ってもよい。後処理は、例えば、フォーマット変換処理または圧縮処理などを含む。その後、点検システム15の処理は、ステップS5に進む。
【0053】
ステップS5において、制御部20は、画像記録処理を実行する。画像記録処理において、制御部20は、必要な後処理が行われた後の、撮影装置17から取得した画像の情報を、記憶部21に記憶させる。記憶部21は、制御部20から出力される当該情報を、例えば予め設定された日数分だけ蓄積して記憶する。その後、点検システム15の処理は、ステップS1に進む。
【0054】
ステップS2からステップS5までの処理は、制御装置11がブレーキ10に出力する制御信号をトリガとして開始される点検処理の例である。点検処理は、当該制御信号の直後に開始される先行処理を含む。ステップS2からステップS3までの処理は、先行処理の例である。先行処理は、その他の処理を含んでもよい。ステップS4の撮影処理は、先行処理が完了した後に開始される。
【0055】
図8において、撮影装置17が撮影した、櫛歯4が折れている状態の櫛板3の画像の例が示される。
【0056】
乗客コンベア1の点検作業を遠隔地から行うときに、保守作業員は、自身が操作する情報端末装置および当該装置が接続するサーバコンピュータなどを通じて、通信装置19に情報の送信を要求する。通信装置19は、点検盤18の記憶部21に記憶された櫛板3の画像などの情報を、保守作業員が操作する情報端末装置などに返送する。保守作業員の情報端末装置は、例えば、
図8に示される櫛板3の画像を通信装置19から受信する。
【0057】
保守作業員は、情報端末装置に表示される櫛板3の画像を目視確認して、櫛歯4の折れの有無などを確認する。櫛歯4が折れている場合に、保守作業員は、例えば、櫛板3の交換などの対応を行う。櫛歯4が折れていない場合に、保守作業員は、例えば、櫛板3について櫛歯4の折れなどの異常がない旨の点検報告書を作成する。
【0058】
保守作業員は、他の点検をあわせて行ってもよい。保守作業員は、例えば、櫛板3を撮影した画像に映っている操作部28を目視確認することで、操作部28に破損または汚損などの異常がないかの点検を行う。
【0059】
以上に説明したように、実施の形態1に係る点検システム15は、カメラ29と、制御部20と、を備える。カメラ29は、乗客コンベア1に常設される。カメラ29は、櫛板3を撮影する。制御部20は、駆動装置6のブレーキ10の制動または解放の一方または両方を表す制御信号を、乗客コンベア1の制御装置11から受け付ける。制御部20は、当該制御信号をトリガとして点検処理を実行する。制御部20は、点検処理においてカメラ29に櫛板3を撮影させる。
【0060】
このような構成により、点検システム15において、制御装置11からブレーキ10の制御信号が出力されるときに櫛板3の画像が撮影される。ブレーキ10の制御信号は、踏段7の位置に依らずに出力される。このため、ブレーキ10の制御信号が出力されるたびに、異なる踏段7のクリートが異なる位置で櫛歯4と噛み合っているときの櫛板3の画像が撮影されるようになる。したがって、櫛板3の画像上において、特定の踏段7の特定の位置によって視認しにくい異常があった場合でも、当該異常が発見されやすくなる。また、点検システム15は、ブレーキ10の制御信号を取得するだけで、櫛板3の撮影を含む点検処理を開始できる。このため、古い機種などを含む多様な種類の乗客コンベア1に点検システム15が適用できるようになる。
【0061】
また、制御部20は、点検処理において、制御信号を受け付けた直後に先行処理を行い、先行処理が完了した後にカメラ29に櫛板3を撮影させる。
【0062】
このような構成により、ブレーキ10の制動直後または解放直後ではないタイミングで櫛板3の画像が撮影されるようになる。これにより、制動直後または解放直後の踏段7の振動などによる画像のブレが生じにくくなる。このため、より鮮明な櫛板3の画像が撮影されるようになり、画像による櫛板3の点検がより正確に行われるようになる。
【0063】
また、制御部20は、乗客コンベア1の起動時において制御装置11がブレーキ10の解放を実行させる信号、または乗客コンベア1の停止時において制御装置11がブレーキ10の制動を実行させる信号の一方または両方を制御信号として受け付ける。制御部20は、当該制御信号をトリガとして点検処理を行う。
【0064】
このような構成により、起動時および停止時などの乗客がいないタイミングで櫛板3の画像が撮影されるようになる。これにより、乗客の靴などによって櫛板3が隠れることなどがないため、自動的に撮影される画像を用いた櫛板3の点検がより確実に行われるようになる。また、起動時および停止時の両方において櫛板3の画像を撮影する場合に、起動および停止のそれぞれに対応する異なる時間帯の画像が撮影されるようになる。一般に、時間帯などの状況によって、外部光の当たり方などの撮影条件が異なることがある。このとき、櫛板3の画像上の見え方が変わることがある。このため、異なる撮影条件下での櫛板3の画像が取得されるので、撮影条件による見落としの発生などが抑えられ、画像による櫛板3の点検がより正確に行われるようになる。
【0065】
また、制御部20は、点検処理において、点検処理の開始から少なくとも予め設定された時間が経過した後に、カメラ29に櫛板3を撮影させる。なお、予め設定された時間は、例えば、録音処理において収音装置16が音声の取得を行う時間などである。制御部20は、当該時間において、録音処理などの情報処理を行っていてもよい。あるいは、制御部20は、当該時間において、計時の他の情報処理を行わなくてもよい。
【0066】
このような構成により、ブレーキ10の制動または解放から少なくとも予め設定された時間が経過した後で櫛板3の画像が撮影されるようになる。これにより、制動直後または解放直後の踏段7の振動などによる画像のブレが生じにくくなる。このため、より鮮明な櫛板3の画像が撮影されるようになり、画像による櫛板3の点検がより正確に行われるようになる。また、踏段7の移動状態を監視するセンサなどを必要とせずに、踏段7の一定速度運転または完全停止などの動作が安定した状態での櫛板3の画像を撮影できるようになる。
【0067】
また、カメラ29は、櫛板3の静止画像を撮影する。
【0068】
このような構成により、踏段7の運動などの不要な情報が含まれないため、乗客コンベア1の起動時および停止時などの条件の違う画像に対して同様に点検作業を行うことができるようになる。これにより、画像を用いた乗客コンベア1の点検作業がより効率化される。
【0069】
また、点検システム15は、記憶部21を備える。記憶部21は、カメラ29が撮影した櫛板3の画像を蓄積して記憶する。また、点検システム15は、通信装置19を備える。通信装置19は、外部からの要求に応じて、記憶部21が記憶している櫛板3の画像を送信する。
【0070】
このような構成により、乗客コンベア1の保守作業員は遠隔地から櫛板3の目視点検を行うことができるようになる。保守作業員は、乗客コンベア1が設置された現地を訪問することなく点検作業を行うことができるので、点検作業の作業効率がより高められる。また、保守作業員の訪問点検の際の、乗客コンベア1の管理者などの立ち合いが不要になるので、管理者の負担などが低減される。また、点検システム15は、画像認識などの高度な情報処理を必要としないので、点検盤18に要求される処理性能が抑えられる。これにより、点検システム15の適用の際のコストが抑えられる。
【0071】
また、実施の形態1に係る点検システム15の撮影装置17は、櫛板3を撮影する装置である。櫛板3は、乗客コンベア1の乗降口2において左右方向の一対のコムスカート26の間に配置される。撮影装置17は、カメラ29と、固定箱30と、を備える。一方のコムスカート26に、撮影窓40が設けられる。カメラ29は、当該コムスカート26より左右方向の外側かつ櫛板3より上方から、撮影窓40を通して櫛板3を撮影する。固定箱30は、当該コムスカート26の裏側に取り付けられる。固定箱30は、櫛板3を向くようにカメラ29を下側に向けた状態でカメラ29を内部に固定する。
また、実施の形態1に係る撮影装置17の取付方法は、一方の既設のコムスカート26を、櫛板3が設けられる位置の左右方向の外側から取り外すことを含む。また、当該取付方法は、撮影窓40が設けられた新設のコムスカート26の裏側に、固定箱30をカメラ29とともに取り付けることとを含む。また、当該取付方法は、固定箱30を取り付けた当該新設のコムスカート26を、櫛板3が設けられる位置の左右方向の外側に取り付けることを含む。
【0072】
このような構成により、乗客の足元のコムスカート26の裏側に撮影装置17が設けられるので、乗客コンベア1の外観への影響が抑えられる。また、点検システム15の適用の際には、コムスカート26の表面に撮影窓40があれば十分であるため、乗客コンベア1の外観への影響が抑えられる。また、撮影装置17の通信線および電力供給線などについて、トラス5の内部などの乗客から見えない箇所に配線できるようになる。このため、乗客コンベア1の外観への影響が抑えられる。また、乗客コンベア1の内部に撮影装置17が設けられるので、点検システム15の適用に際して、乗客コンベア1が適用される建物などに追加の装置などを設ける必要がない。また、固定箱30の内部にカメラ29への配線を引きまわした状態でコムスカート26への取付けができるので、取付作業がより容易になる。また、固定箱30の内部においてカメラ29の向きなどの調整が既に行われているため、取付後のカメラ29の調整などが不要となり、撮影装置17の取付作業がより容易になる。また、カメラ29が乗客から見えない位置において下向きに配置されるので、例えばプライバシーの観点からの不安感または不快感などを乗客に与えにくくなる。また、撮影装置17の取付の際にコムスカート26を交換すれば点検システム15が適用できるようになるため、点検システム15の既設の乗客コンベア1への対応が容易になる。
【0073】
また、カメラ29は、仮想的な鉛直平面Vの面内に配置される。鉛直平面Vは、乗客コンベア1の左右方向に平行で、櫛板3を含む。
【0074】
このような構成により、カメラ29は、櫛板3を左右の幅方向に対して真っすぐ撮影できるため、より点検しやすい画像が撮影されるようになる。このため、画像による櫛板3の点検がより正確に行われるようになる。
【0075】
また、固定箱30は、半透明の隠し板33を備える。隠し板33は、撮影窓40をコムスカート26の裏側から覆う。
【0076】
通常、固定箱30の内部は外部より暗い。このため、隠し板33によって、カメラ29が設けられる固定箱30の内部が外部から見えにくくなる。これにより、例えばプライバシーの観点からの不安感または不快感などをより乗客に与えにくくなる。
【0077】
また、固定箱30において、コムスカート26の裏側に対向する面に凹部35が設けられる。隠し板33は、凹部35に収められるように取り付けられる。
【0078】
このような構成により、固定箱30の前面をコムスカート26の裏側に密着させられるようになる。これにより、固定箱30の位置合わせなどが容易になるので、撮影装置17の取付作業がより容易になる。
【0079】
また、隠し板33の色は、櫛板3の色と異なる色である。
【0080】
このような構成により、撮影された画像において櫛板3が背景に紛れにくくなる。このため、画像による櫛板3の点検がより正確に行われるようになる。
【0081】
また、固定箱30は、左右の反対側のコムスカート26に設けられた操作部28を撮影範囲に含むように、カメラ29を固定する。
【0082】
このような構成により、櫛板3の点検の際に、操作部28の目視点検も併せて行えるようになる。これにより、点検可能な項目を増やすことができ、遠隔地からの乗客コンベア1の点検の品質をより高められる。
【0083】
また、固定箱30は、撮影窓40の上端より上方においてカメラ29を固定する。
【0084】
このような構成により、撮影窓40からカメラ29がより見えにくくなる。このため、例えばプライバシーの観点からの不安感または不快感などをより乗客に与えにくくなる。
【0085】
また、固定箱30は、カメラ29から櫛板3の左右方向の中央にある櫛歯4までの距離Rに対する櫛板3からのカメラ29の高さHの比が、櫛板3の櫛歯4のピッチdに対するカメラ29の分解能xの比より大きくなるように、カメラ29を固定する。
【0086】
このような構成により、乗客が通過することで折れが生じやすい中央部の櫛歯4が識別できるように櫛板3が撮影されるので、櫛歯4の折れの有無がより確実に確認できるようになる。
【0087】
また、固定箱30は、コムスカート26の表側の表面から突出しない。
【0088】
このような構成により、撮影装置17による乗客の衣類などへの引っ掛かりが抑制される。
【0089】
なお、乗客コンベア1は、水平式または傾斜式の動く歩道などであってもよい。
【0090】
続いて、
図9を用いて、点検システム15のハードウェア構成の例について説明する。
図9は、実施の形態1に係る点検システム15の主要部のハードウェア構成図である。
【0091】
点検システム15の各機能は、処理回路により実現し得る。処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。処理回路は、プロセッサ100aおよびメモリ100bと共に、あるいはそれらの代用として、少なくとも1つの専用ハードウェア200を備えてもよい。
【0092】
処理回路がプロセッサ100aとメモリ100bとを備える場合、点検システム15の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。そのプログラムはメモリ100bに格納される。プロセッサ100aは、メモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、点検システム15の各機能を実現する。
【0093】
プロセッサ100aは、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。メモリ100bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROMなどの、不揮発性または揮発性の半導体メモリなどにより構成される。
【0094】
処理回路が専用ハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。
【0095】
点検システム15の各機能は、それぞれ処理回路で実現することができる。あるいは、点検システム15の各機能は、まとめて処理回路で実現することもできる。点検システム15の各機能について、一部を専用ハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。このように、処理回路は、専用ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで点検システム15の各機能を実現する。
【0096】
以上の説明をまとめると、本開示に係る技術の取りうる構成は、以下に付記として示す各構成などを含む。
(付記1)
乗客コンベアに常設され、櫛板を撮影するカメラと、
乗客コンベアの制御装置から駆動装置のブレーキの制動または解放の一方または両方を表す制御信号を受け付け、前記制御信号をトリガとする点検処理において前記カメラに前記櫛板を撮影させる制御部と、
を備える、乗客コンベアの櫛板の点検システム。
(付記2)
前記制御部は、前記点検処理において、前記制御信号を受け付けた直後に先行処理を行い、前記先行処理が完了した後に前記カメラに前記櫛板を撮影させる、
付記1に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
(付記3)
前記制御部は、乗客コンベアの起動時において前記制御装置が前記ブレーキの解放を実行させる信号を前記制御信号として受け付け、当該制御信号をトリガとして前記点検処理を行う、
付記1または付記2に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
(付記4)
前記制御部は、乗客コンベアの停止時において前記制御装置が前記ブレーキの制動を実行させる信号を前記制御信号として受け付け、当該制御信号をトリガとして前記点検処理を行う、
付記1から付記3のいずれか一項に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
(付記5)
前記制御部は、前記点検処理において、前記点検処理の開始から少なくとも予め設定された時間が経過した後に前記カメラに前記櫛板を撮影させる、
付記1から付記4のいずれか一項に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
(付記6)
前記カメラは、前記櫛板の静止画像を撮影する、
付記1から付記5のいずれか一項に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
(付記7)
前記カメラが撮影した前記櫛板の画像を蓄積して記憶する記憶部
を備える、付記1から付記6のいずれか一項に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
(付記8)
外部からの要求に応じて、前記記憶部が記憶している前記櫛板の画像を送信する通信部
を備える、付記7に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
(付記9)
前記カメラは、前記櫛板の左右方向の外側に配置され撮影窓が設けられたコムスカートの裏側に配置され、前記コムスカートより左右方向の外側かつ前記櫛板より上方から前記撮影窓を通して前記櫛板を撮影する、
付記1から付記8のいずれか一項に記載の乗客コンベアの櫛板の点検システム。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本開示に係る点検システムは、乗客コンベアの櫛板の点検に適用できる。
【符号の説明】
【0098】
1 乗客コンベア、 2 乗降口、 3 櫛板、 4 櫛歯、 5 トラス、 6 駆動装置、 7 踏段、 8 欄干、 9 移動手摺、 10 ブレーキ、 11 制御装置、 12a 上部機械室、 12b 下部機械室、 13 スプロケット、 14 駆動チェーン、 15 点検システム、 16 収音装置、 17 撮影装置、 18 点検盤、 19 通信装置、 20 制御部、 21 記憶部、 22 手摺ガイド、 23 内側板、 24 スカートガード、 25 インナーデッキ、 26 コムスカート、 27 コムライト、 28 操作部、 29 カメラ、 30 固定箱、 31 外箱、 32 内部支持体、 33 隠し板、 34 タブ、 35 凹部、 36 入線口、 37 基部、 38 支持部、 39 撮影口、 40 撮影窓、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 専用ハードウェア
【要約】
撮影された画像における櫛板の異常をより発見しやすくする点検システムを提供する。点検システム(15)は、カメラ(29)と、制御部(20)と、を備える。カメラ(29)は、乗客コンベア(1)に常設される。カメラ(29)は、櫛板(3)を撮影する。制御部(20)は、駆動装置(6)のブレーキ(10)の制動または解放の一方または両方を表す制御信号を、乗客コンベア(1)の制御装置(11)から受け付ける。制御部(20)は、当該制御信号をトリガとして点検処理を実行する。制御部(20)は、点検処理においてカメラ(29)に櫛板(3)を撮影させる。