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特許7485265融着接続装置、無線情報端末、融着接続システム、及び融着接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】融着接続装置、無線情報端末、融着接続システム、及び融着接続方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/255 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
G02B6/255
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023013253
(22)【出願日】2023-01-31
(62)【分割の表示】P 2019561022の分割
【原出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2023052799
(43)【公開日】2023-04-12
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2017246797
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】大木 一芳
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 英明
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103926652(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0238298(US,A1)
【文献】米国特許第6206583(US,B1)
【文献】国際公開第2017/199942(WO,A1)
【文献】特開2006-058474(JP,A)
【文献】特開2009-037244(JP,A)
【文献】特開2017-224076(JP,A)
【文献】特開2003-287643(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108562974(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/36- 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの融着接続を行うように構成された装置であって、無線接続して外部と通信可能な第1通信部を有する融着接続装置と、
前記融着接続装置に無線接続して通信する第2通信部及び前記融着接続に用いる融着条件に関する情報を外部から取得する取得部を有する無線情報端末と、
を備え、
前記取得した融着条件に関する情報は、前記無線情報端末に割り当てられたエリアに応じて設定された情報であり、
前記融着接続装置は、前記無線情報端末によって取得された前記融着条件に関する情報を、前記第1通信部及び前記第2通信部間の無線通信を介して前記無線情報端末から取得し、当該取得された融着条件に関する情報に基づく融着条件によって融着接続を実行する、融着接続システム。
【請求項2】
前記取得した融着条件に関する情報は、前記融着接続装置の識別子に予め関連付けられて設定された情報である、
請求項1に記載の融着接続システム。
【請求項3】
前記融着接続装置は、アーク放電によって前記光ファイバの先端を融着させるための一対の放電電極を有し、
前記融着条件に関する情報は、前記光ファイバの種類と、前記光ファイバを融着する際の前記アーク放電の放電強度と、その放電時間と、前記光ファイバの先端位置と、前記光ファイバの端面角度と、のうち少なくとも1つの条件を含んでいる、
請求項又は請求項に記載の融着接続システム。
【請求項4】
前記融着接続装置は、前記第1通信部と前記第2通信部間の無線接続を確立した場合には融着接続の動作を許可する、
請求項~請求項のいずれか一項に記載の融着接続システム。
【請求項5】
前記融着接続装置の動作を禁止するかを判定する判定部を更に有し、
前記融着接続装置は、前記光ファイバの融着状態を示す融着状態データを作成し、
前記判定部は、前記融着状態データに基づいて、前記融着接続装置の動作を禁止するか判定し、
前記無線情報端末は、前記判定部が前記融着接続装置の動作を禁止すると判定した場合に、前記融着接続装置による融着接続の動作を禁止する指示信号を前記融着接続装置に送信する、
請求項~請求項のいずれか一項に記載の融着接続システム。
【請求項6】
外部と無線接続可能であって光ファイバの融着接続を行うように構成された融着接続装置と、前記融着接続装置に無線接続可能であって融着接続に用いる融着条件に関する情報を外部から取得可能な無線情報端末とを備えた融着接続システムにおいて光ファイバを融着接続する融着接続方法であって、
前記無線情報端末が、外部から前記融着条件に関する情報を取得し、当該融着接続に関する情報を前記融着接続装置に無線送信する工程と、
前記融着接続装置が、前記無線情報端末から無線送信された前記融着条件に関する情報を取得し、当該取得した融着条件に関する情報に基づく融着条件によって融着接続を実行する工程と、を備え
前記取得した融着条件に関する情報は、前記無線情報端末に割り当てられたエリアに応じて設定された情報である、融着接続方法。
【請求項7】
前記取得した融着条件に関する情報は、前記融着接続装置の識別子に予め関連付けられて設定された情報である、
請求項6に記載の融着接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、融着接続装置(fusion splicer)、無線情報端末、融着接続システム、及び融着接続方法に関する。
【0002】
本出願は、2017年12月22日出願の日本出願第2017-246797号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、光ファイバ同士を接続する融着接続装置を開示する。この融着接続装置では、一対の放電電極によってアーク放電が引き起こされ、当該アーク放電によって光ファイバの先端同士が融着接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-141357号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示は、融着接続装置を提供する。この融着接続装置は、光ファイバの融着接続を行う融着接続部と、外部端末に無線接続して通信する通信部と、融着接続部の融着条件を設定する設定部と、を備える。通信部は、外部端末から融着接続部の融着条件に関する情報を取得する。設定部は、取得した融着条件に関する情報に基づいて融着接続部の融着条件を設定する。融着接続部は、設定部によって設定された融着条件によって融着接続を行う。
【0006】
本開示は、無線情報端末を提供する。この無線情報端末は、通信部と、検知部と、取得部と、を備える。通信部は、光ファイバの融着接続を行う融着接続装置に無線接続して通信する。検知部は、通信部が通信可能な範囲内に融着接続装置が位置することを検知する。取得部は、融着接続に用いられる融着条件に関する情報を取得する。通信部は、検知部によって検知された融着接続装置に融着条件に関する情報を送信する。
【0007】
本開示は、融着接続システムを提供する。この融着接続システムは、融着接続装置と、無線情報端末と、を備える。融着接続装置は、光ファイバの融着接続を行うように構成された装置であり、無線接続して外部と通信可能な第1通信部を有する。無線情報端末は、融着接続装置に無線接続して通信する第2通信部と、融着接続に用いる融着条件に関する情報をサーバから取得する取得部と、を有する。融着接続装置は、無線情報端末によって取得された融着条件に関する情報を、第1通信部及び第2通信部間の無線通信を介して無線情報端末から取得し、当該取得された融着条件に関する情報に基づく融着条件によって融着接続を実行する。
【0008】
本開示は、融着接続方法を提供する。この融着接続方法は、融着接続装置と無線情報端末とを備えた融着接続システムにおいて光ファイバを融着接続する融着接続方法である。融着接続装置は、外部と無線接続可能であって光ファイバの融着接続を行うように構成されている。無線情報端末は、融着接続装置に無線接続可能であって融着接続に用いる融着条件に関する情報をサーバから取得可能である。この融着接続方法は、無線送信する工程と、融着接続を実行する工程と、を備える。無線送信する工程では、無線情報端末が、サーバから融着条件に関する情報を取得し、当該融着接続に関する情報を融着接続装置に無線送信する。融着接続を実行する工程では、融着接続装置が、無線情報端末から無線送信された融着条件に関する情報を取得し、当該取得された融着条件に関する情報に基づく融着条件によって融着接続を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一態様に係る光ファイバの融着接続装置の斜視図である。
図2図2は、図1に示す融着接続装置における光ファイバの融着接続機構を示す斜視図である。
図3図3は、一態様に係る光ファイバの融着接続システムの機能ブロック図である。
図4図4は、図3に示す融着接続システムの概要を説明するための図である。
図5図5は、図3に示す融着接続装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6図6は、図3に示す無線監視端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
図7図7は、図3に示すサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
図8図8は、図7に示すサーバで行われる処理を説明するためのフローチャートである。
図9図9は、図3に示す融着接続システムで行われる処理を説明するためのシーケンス図である。
図10図10は、図3に示す融着接続システムで行われる処理を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示が解決しようとする課題]
融着接続される光ファイバには複数の種類(例えば、単心光ファイバ、多心光ファイバ、シングルモード光ファイバ又はマルチモード光ファイバなど)があり、融着接続に最適な融着条件は光ファイバの種類によって異なる場合がある。これに対応して、一般的な融着接続装置では、融着条件のパラメータを変更することができる。一般に、融着接続装置において設定可能な上記パラメータの組み合わせの数は数百に及ぶ。このため、作業者が融着接続装置を操作して適切な融着接続の条件(例えば、アーク放電の放電強度、放電時間、及び光ファイバの先端位置等のパラメータ。以下、「融着条件」ともいう。)を設定するには、深い知識と経験が求められる。
【0011】
融着接続された光ファイバにおける伝送損失は、融着条件によって変わり得る。このため、融着接続装置において適切な融着条件が設定されない場合、光ファイバの伝送損失が許容範囲を超えるか又は最適な伝送損失とできないおそれがある。異なる種類の光ファイバを順次接続する場合など、適切な融着条件を都度、設定するのが容易ではない場合がある。
【0012】
[本開示の効果]
本開示によれば、適切な融着条件で容易に光ファイバの融着接続を行うことができる。
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。本開示の一態様に係る融着接続装置は、光ファイバの融着接続を行う融着接続部と、外部端末に無線接続して通信する通信部と、融着接続部の融着条件を設定する設定部と、を備える。通信部は、外部端末から融着接続部の融着条件に関する情報を取得する。設定部は、取得した融着条件に関する情報に基づいて融着接続部の融着条件を設定する。融着接続部は、設定部によって設定された融着条件によって融着接続を行う。
【0014】
上記融着接続装置では、通信部が外部端末に無線接続可能となっており、融着接続部の融着条件に関する情報を、通信部を介して外部端末から取得する。そして、設定部がこの情報に基づいて融着条件を設定し、設定された融着条件によって融着接続が行われる。この場合、各光ファイバの融着接続にとって適切な融着条件に関する情報を、通信部を介して外部より取得することができるため、各光ファイバにとって適切な融着条件で各光ファイバの融着接続を容易に行うことが可能となる。
【0015】
一実施形態として、上記融着接続装置では、融着条件に関する情報は、当該融着接続装置の位置に応じて設定されていてもよい。一般に、敷設される光ファイバの種類は、敷設場所に応じて異なる。したがって、融着接続に適切な融着条件も敷設場所に応じて異なり得る。よって、この融着接続装置によれば、当該融着接続装置の位置に対応して適切な融着条件による融着接続を容易に行うことができる。
【0016】
一実施形態として、上記融着接続装置では、融着接続部は、アーク放電によって光ファイバの先端を融着させるための一対の放電電極を有してもよい。融着条件に関する情報は、光ファイバの種類と、光ファイバを融着する際のアーク放電の放電強度と、その放電時間と、光ファイバの先端位置と、光ファイバの端面角度とのうち少なくとも1つの条件を含んでいてもよい。この場合、融着接続装置は、光ファイバの融着接続をより適切に行うことができる。
【0017】
一実施形態として、上記融着接続装置は、融着接続部の動作を許可及び禁止するロック部を更に備えてもよい。ロック部は、通信部が外部端末から受信する解除信号に基づいて融着接続装置の動作を許可してもよい。この場合、融着接続装置を外部で管理して、不適切な融着接続を防止することができる。また、融着接続装置の盗難を防止することもできる。
【0018】
一実施形態として、上記融着接続装置では、ロック部は、通信部が外部端末と無線通信を確立した場合には、融着接続部の動作を許可するようにしてもよい。これによれば、融着接続装置は、例えば、盗難防止用にロックされている状態で無線接続を確立した場合に、融着接続装置の使用を許可するといった使用方法を採用することができる。これにより、この融着接続装置によれば、盗難防止の対策と利便性の向上とを両立することができる。
【0019】
一実施形態として、上記融着接続装置は、融着接続部によって融着接続された光ファイバの融着状態を示す融着状態データを作成するデータ作成部を更に備えてもよい。通信部は、データ作成部によって作成された融着状態データを外部端末に送信してもよい。この場合、融着状態データを管理することができると共に、融着状態データに基づいて融着接続装置に指示を行うこともできる。
【0020】
本開示の一態様に係る無線情報端末は、光ファイバの融着接続を行う融着接続装置に無線接続して通信する通信部と、通信部が通信可能な範囲内に融着接続装置が位置することを検知する検知部と、融着接続に用いられる融着条件に関する情報を取得する取得部と、を備える。通信部は、検知部によって検知された融着接続装置に融着条件に関する情報を送信する。
【0021】
上記無線情報端末では、通信部が通信可能な範囲内に融着接続装置が位置することを検知すると共に、検知された融着接続装置に対して融着接続に用いる融着条件に関する情報を送信する。この場合、例えば敷設場所に設けられた無線情報端末の通信可能な範囲で、適切な融着条件に関する情報を融着接続装置に送信することができ、これにより、各光ファイバの融着接続にとって適切な融着条件に関する情報を所定の融着接続装置において設定させることができる。
【0022】
一実施形態として、上記無線情報端末では、融着条件に関する情報は、当該無線情報端末に割り当てられたエリアに応じて設定されていてもよい。この場合、各無線情報端末に割り当てられたエリア毎に適切な融着条件に関する情報を、各エリア内の融着接続装置においてそれぞれ設定させることができる。
【0023】
一実施形態として、上記無線情報端末では、融着条件に関する情報は、光ファイバの種類と、光ファイバを融着する際のアーク放電の放電強度と、その放電時間と、光ファイバの先端位置と、光ファイバの端面角度とのうち少なくとも1つの条件を含んでいてもよい。この場合、光ファイバの融着接続をより適切に行うことができる。
【0024】
本開示の一態様に係る融着接続システムは、光ファイバの融着接続を行うように構成された装置であって、無線接続して外部と通信可能な第1通信部を有する融着接続装置と、融着接続装置に無線接続して通信する第2通信部及び融着接続に用いる融着条件に関する情報をサーバから取得する取得部を有する無線情報端末と、を備える。融着接続装置は、無線情報端末によって取得された融着条件に関する情報を、第1通信部及び第2通信部間の無線通信を介して無線情報端末から取得する。融着接続装置は、当該取得された融着条件に関する情報に基づく融着条件によって融着接続を実行する。
【0025】
上記融着接続システムでは、融着接続装置の第1通信部が無線情報端末の第2通信部に無線接続して、融着接続装置における融着条件に関する情報を無線情報端末から取得する。そして、取得された情報に基づく融着条件によって融着接続装置は融着接続を行う。この場合、各光ファイバの融着接続にとって適切な融着条件に関する情報を、両通信部を介して取得することができるため、各光ファイバにとって適切な融着条件で各光ファイバの融着接続を容易に行うことが可能となる。
【0026】
一実施形態として、上記融着接続システムでは、融着条件に関する情報は、当該無線情報端末に割り当てられたエリアに応じて設定されていてもよい。この場合、エリアに対応して適切な融着条件による融着接続が容易に行われ得る。
【0027】
一実施形態として、上記融着接続システムでは、融着接続装置は、アーク放電によって光ファイバの先端を融着させるための一対の放電電極を有してもよい。融着条件に関する情報は、光ファイバの種類と、光ファイバを融着する際のアーク放電の放電強度と、その放電時間と、光ファイバの先端位置と、光ファイバの端面角度とのうち少なくとも1つの条件を含んでいてもよい。この場合、融着接続システムは、光ファイバの融着接続をより適切に行うことができる。
【0028】
一実施形態として、上記融着接続システムでは、融着接続装置は、第1通信部と第2通信部間の無線接続を確立した場合には融着接続の動作を許可してもよい。これによれば、融着接続システムは、例えば、盗難防止用にロックされている融着接続装置が無線接続を確立した場合に、融着接続装置の使用を許可することができる。このため、盗難防止の対策と利便性の向上とが両立され得る。
【0029】
一実施形態として、上記融着接続システムは、融着接続装置の動作を禁止するかを判定する判定部を更に有してもよい。融着接続装置は、光ファイバの融着状態を示す融着状態データを作成し、判定部は、融着状態データに基づいて、融着接続装置の動作を禁止するかを判定する。無線情報端末は、判定部が融着接続装置の動作を禁止すると判定した場合に、融着接続装置による融着接続の動作を禁止する指示信号を融着接続装置に送信してもよい。これによれば、例えば、上記融着状態データに基づいて、光ファイバの融着接続が適切に行われていない場合には、融着接続システムは、融着接続装置による融着接続の動作を禁止することができる。
【0030】
本開示の一態様に係る融着接続方法は、外部と無線接続可能であって光ファイバの融着接続を行うように構成された融着接続装置と、融着接続装置に無線接続可能であって融着条件に関する情報をサーバから取得可能な無線情報端末とを備えた融着接続システムにおいて光ファイバを融着接続する融着接続方法である。この融着接続方法は、無線情報端末が、サーバから融着条件に関する情報を取得し、当該融着接続に関する情報を融着接続装置に無線送信する工程と、融着接続装置が、無線情報端末から無線送信された融着条件に関する情報を取得し、当該取得された融着条件に関する情報に基づく融着条件によって融着接続を実行する工程と、を備える。
【0031】
上記融着接続方法では、融着接続装置が無線情報端末に無線接続して、融着接続装置における融着条件に関する情報を無線情報端末から取得する。そして、融着接続装置は、取得された情報に基づく融着条件によって融着接続を行う。この場合、各光ファイバの融着接続にとって適切な融着条件に関する情報を、無線接続を介して取得することができるため、各光ファイバにとって適切な融着条件で各光ファイバの融着接続を容易に行うことが可能となる。
【0032】
[本発明の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光ファイバの融着接続装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本発明はこれらの例示に限定されるものでなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0033】
まず、融着接続システム1に用いられる融着接続装置10の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1及び図2は、融着接続装置の外観を示す斜視図である。図1は、風防カバーが閉じている状態の融着接続装置の外観を示し、図2は、風防カバーが開けられて融着接続装置の内部構造が見える状態の外観を示す。融着接続装置10は、光ファイバ同士を融着接続するための装置であり、図1及び図2に示すように、箱状の筐体2を備えている。筐体2の上部には、光ファイバ同士を融着するための融着機構3と、融着機構3で融着される光ファイバの融着接続部に被せられるファイバ補強スリーブを加熱収縮させる加熱器4と、ユーザが操作することによって融着接続装置10の電源のONとOFFとを切り替えるスイッチ5とが設けられている。融着接続装置10は、筐体2の内部に配置されたカメラ(図示せず)によって撮像された光ファイバ同士の融着接続状況を表示するモニタ6を備えている。さらに、融着接続装置10は、融着機構3への風の進入を防止するための風防カバー7を備えている。
【0034】
融着機構3は、図2に示すように、一対のファイバ位置決め部3aと、一対の放電電極3bと、一対の光ファイバホルダ3cを載置可能なホルダ載置部と、を有している。融着対象の光ファイバそれぞれは光ファイバホルダ3cに保持固定され、当該光ファイバホルダはそれぞれホルダ載置部に載置固定される。各光ファイバホルダ3cは、一対のファイバ位置決め部3aの間に配置される。一対のファイバ位置決め部3aは、光ファイバホルダ3cのそれぞれに保持された光ファイバの先端を位置決めする。一対の放電電極3bは、ファイバ位置決め部3a同士の間に配置され、アーク放電によって一対の光ファイバの先端同士を融着する。
【0035】
融着接続装置10では、光ファイバを融着する際における、ファイバ位置決め部3aによって位置決めする光ファイバの先端位置、及び、放電電極3bによるアーク放電の条件(例えば、放電強度及び放電時間)などの融着条件に関する情報が、後述する記憶部12に保存される。融着条件に関する情報は、光ファイバの種類、ファイバを融着する際のアーク放電の放電強度及び放電時間、光ファイバの先端位置、並びに、光ファイバの端面角度の少なくとも1つの条件を含む。融着接続装置10は、後述するRAM10b等に動作ソフトウェアを格納している。ファイバ位置決め部3a及び放電電極3bは、記憶部12に保存されている、融着条件に関する情報にしたがって、上述した動作ソフトウェアで制御される。融着接続装置10には、後述する無線通信モジュール10e(又は無線内蔵カード)が搭載されており、上述した動作ソフトウェアの更新及び記憶部12に保存された融着条件に関する情報の書き換え等が無線接続によって行われる。
【0036】
次に、融着接続装置10を用いた、本実施形態に係る融着接続システムについて、図3図7を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る融着接続システムの機能ブロック図である。図4は、本実施形態に係る融着接続システムの利用例を示している。図5は、図3に示す融着接続装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図6は、図3に示す無線情報端末のハードウェア構成を示すブロック図である。図7は、図3に示すサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0037】
融着接続システム1は、図3に示すように、上述した融着接続装置10、複数の無線情報端末20、及びサーバ30を備える。融着接続装置10は、各無線情報端末20と無線通信を行う。サーバ30は、各無線情報端末20と無線通信(一部、インターネット等の電気通信回線を含む)を行う。
【0038】
図4に示されている複数の無線情報端末20は、それぞれ異なる敷設場所に設けられている。各敷設場所では、互いに異なる種類の光ファイバが敷設されている。複数の無線情報端末20は、それぞれ半径約10mの周囲(エリアα,β,γ)に電波を発信している。このため、例えば、図4に示されているように、敷設場所で融着接続を行うためにユーザがエリアαに融着接続装置10を運ぶと、融着接続装置10とエリアαに電波を発信している無線情報端末20とが通信を開始する。換言すれば、エリアαに電波を発信する無線情報端末20は、エリアαに進入した融着接続装置10と通信を開始する。本実施形態では、無線情報端末20と融着接続装置10との通信は、双方向の通信である。当該通信は、無線情報端末20が融着接続装置10の情報(ID、機種情報など)を取得して融着接続装置10に情報を送信する一方向の通信でもよい。無線情報端末20と融着接続装置10との通信距離(エリアα,β,γの半径)は、無線通信方式の種類や環境によって異なるが、例えば、wi-fiの場合およそ半径数10mから100m程度であり、Bluetooth(ブルートゥース エスアイジー,インコーポレイテッドの登録商標)の場合およそ半径数mから10数mである。
【0039】
融着接続装置10は、機能的には、図3に示すように、融着接続部11、記憶部12、通信部13、設定部14、ロック部15、データ作成部16、及び、表示部17を備えている。融着接続装置10は、その制御部として、図5に示すように、CPU10a、RAM10b、ROM10c、入力装置10d、無線通信モジュール10e、補助記憶装置10f、及び出力装置10g等のハードウェアを備えるコンピュータを含むものとして構成される。これらの構成要素がプログラム等によって動作することで、後述する融着接続装置10の各機能が発揮される。また、融着接続装置10は、制御部以外としては、GPS10h及び各種の融着接続機構10iを含む。融着接続装置10は、GPS10hにより経度や緯度といった位置情報を取得することができる構成であってもよい。融着接続機構10iは、上述した融着機構3において融着接続を行う機構であり、一対のファイバ位置決め部3a、一対の放電電極3b、一対の光ファイバホルダ3c等を含む。
【0040】
無線情報端末20は、機能部として、図3に示すように、通信部21(第2通信部)、検知部22、判定部23、指示部24、取得部25、及び記憶部26を備えている。無線情報端末20は、図6に示すように、CPU20a、RAM20b、ROM20c、入力装置20d、無線通信モジュール20e、補助記憶装置20f、及び出力装置20g等のハードウェアを備えるコンピュータを含むものとして構成される。これらの構成要素がプログラム等により動作することにより、後述する無線情報端末20の各機能が発揮される。
【0041】
サーバ30は、機能部として、図3に示すように、通信部31、格納部32、推定部33、判定部34、及びデータベース35を備えている。サーバ30は、図7に示すように、CPU30a、RAM30b、ROM30c、入力装置30d、通信モジュール30e、補助記憶装置30f、及び出力装置30g等のハードウェアを備えるコンピュータを含むものとして構成される。これらの構成要素がプログラム等により動作することにより、後述するサーバ30の各機能が発揮される。
【0042】
融着接続部11は、上述した融着接続機構10iによって構成されており、融着接続装置10に配置された一対の光ファイバの融着接続を行う。融着接続部11で融着接続に用いられる融着条件は、記憶部12に記憶される。記憶される融着条件は、例えば、光ファイバの種類、光ファイバを融着する際のアーク放電の放電強度とその放電時間、光ファイバの先端位置、及び光ファイバの端面角度などである。
【0043】
融着接続装置10の通信部13は、外部端末である無線情報端末20の通信部21に無線接続して通信する。例えば、通信部13は、無線LANカードなどを含んで構成され、IEEE802.11に準拠した2.4GHz帯での無線通信を後述する無線情報端末20との間で行う。各融着接続装置10固有の無線アクセスポイント(無線AP)のSSID(Service Set Identifier、識別子)は、例えば半径10m程度の範囲で無線送信されるようになっている。例えば、1台目の融着接続装置10の無線APのSSIDは「T71C_420000001」であり、2台目の融着接続装置10の無線APのSSIDは「T71C_420000002」であり、3台目の融着接続装置10の無線APのSSIDは「T71C_420000003」であり、4台目の融着接続装置10の無線APのSSIDは「T71C_420000004」である。このように、各融着接続装置10が互いに異なる識別子を有する。
【0044】
融着接続装置10の通信部13は、無線情報端末20の通信部21を介して無線情報端末20から、融着接続に用いる融着条件に関する情報を取得する。例えば、融着接続装置10がエリアαに侵入すると、通信部13は、エリアα内での融着接続に用いる融着条件を無線情報端末20から取得する。融着条件に関する情報は、無線情報端末20に割り当てられたエリアに応じて設定されている。換言すれば、融着条件に関する情報は、当該融着接続装置の位置に応じて設定されている。本実施形態では、融着接続装置10が起動する際に、融着接続部11の動作の禁止(ロック)が設定される。通信部13は、融着接続装置10に設定されたロックを解除する解除信号も無線情報端末20から受信する。融着接続装置10は、融着接続部11の動作を禁止するロック機能を有していなくてもよい。
【0045】
融着接続装置10の設定部14は、通信部13によって無線情報端末20から取得された融着条件に関する情報に応じて、融着接続部11に融着条件を設定する。例えば、設定部14は、無線情報端末20から取得された融着条件に関する情報に応じて、エリアα内での融着接続に用いる融着条件を融着接続部11に設定してもよい。融着接続装置10は、通信部21が融着条件に関する情報として、無線情報端末20が位置するエリアαを示す情報を無線情報端末20から取得し、設定部14がエリアαに応じて融着条件を自動で設定してもよい。融着接続部11は、設定部14によって設定された融着条件によって融着接続を行う。
【0046】
融着接続装置10のロック部15は、融着接続装置10が起動する際に融着接続部11の動作の禁止(ロックの設定)を行う。その後、ロック部15は、通信部13と無線情報端末20との通信に応じて、融着接続部11の動作を許可及び禁止する(ロックを解除及び設定する)。本実施形態では、ロック部15は、通信部13が無線情報端末20から受信するロックの解除信号にしたがって、ロックを解除し、融着接続部11の動作を許可する。ロック部15は、通信部13が無線情報端末20と無線通信を確立した場合には、融着接続部11の動作を許可する。ロック部15は、通信部13と、対応する無線情報端末20との通信が切断された場合に、融着接続部11の動作を禁止する(ロックを設定する)。すなわち、ロック部15は、通信部13が無線情報端末20と無線通信していない場合には、融着接続部11の動作を禁止する。
【0047】
融着接続装置10のデータ作成部16は、融着接続部11によって融着接続が行われた後に、融着接続された光ファイバの融着状態を示す融着状態データを作成する。ここでいう融着状態とは、例えば、光ファイバ間の軸ずれ、接続角度ずれ、間隙、接続部分の外径及び長さ、並びに、接続部分における気泡の発生の有無などである。融着接続装置10の通信部13は、データ作成部16によって作成された融着状態データを無線情報端末20に送信する。
【0048】
融着接続装置10の表示部17は、融着接続装置10の各種状態に関する情報(例えば、融着接続部11の動作が禁止されていること)、融着接続装置10の設定操作情報、及び融着接続された光ファイバ間の状態等をモニタ6に表示する。例えば、表示部17は、無線情報端末20から受信された情報に基づいて、モニタ6にメンテナンスが必要であることを表示する。
【0049】
無線情報端末20の通信部21は、融着接続装置10の通信部13に無線接続して通信する。通信部21は、サーバ30とも無線及び有線にて接続して通信を行う。例えば、通信部21は、IEEE802.11に準拠した2.4GHz帯での無線通信を融着接続装置10の通信部13との間で行う。
【0050】
無線情報端末20の取得部25は、通信部21を介して各種の情報を取得する。取得部25は、通信部21以外から各種の情報を取得してもよい。取得部25によって取得された各種の情報は、記憶部26に保存される。
【0051】
本実施形態では、取得部25は、通信部21を介して、当該無線情報端末が位置するエリア(例えば、エリアα)内で融着接続などの動作が許可されている融着接続装置10の情報(例えば、機種、SSID、又はシリアル番号)と、当該エリア内で許可する作業の種別と、融着接続装置10の融着接続に用いられる融着条件とを取得する。記憶部26は、当該無線情報端末が位置するエリア内で融着接続などの動作が許可されている融着接続装置10の情報と、当該エリア内で許可する作業の種別と、融着接続装置10の融着接続に用いられる融着条件とを互いに関連付けて保存する。
【0052】
無線情報端末20の取得部25は、通信部13を介して、データ作成部16で作成された融着状態データを取得する。記憶部26は、取得部25によって取得された融着状態データを保存する。
【0053】
無線情報端末20の検知部22は、通信部21が通信可能な範囲(例えば、エリアα)内に、融着接続装置10が侵入したことを検知する。検知部22は、通信部21が通信可能な範囲内に入った融着接続装置10のSSIDを検知する。通信部21は、検知部22によってSSIDが検知されると、融着接続装置10の通信部13にSSIDが検知されたことを通知する。無線情報端末20の判定部23は、記憶部26を参照して、検知部22によって検知された融着接続装置10の動作が、当該無線情報端末20が位置するエリア(例えば、エリアα)内で許可されているか否かを判定する。
【0054】
無線情報端末20の指示部24は、融着接続装置10のロック部15に、ロックの設定及び解除を指示する。指示部24は、融着接続の動作が許可されていると判定部23によって判定された融着接続装置10に、ロックの解除を指示する。指示部24は、記憶部26を参照して、融着接続の動作を禁止する融着接続装置10にロックの設定を指示する。具体的には、指示部24は、記憶部26にシリアル番号(又はSSID)が記憶されていない融着接続装置10に、ロックの設定を指示する。無線情報端末20の通信部21は、融着接続装置10の通信部13に、指示部24からのロックの設定及び解除(融着接続の禁止及び許可)を指示する信号を送信する。通信部21は、融着接続の動作が許可されていると判定部23によって判定され、かつ、指示部24からロックの解除を指示された場合、ロックの解除を指示する解除信号に加えて、融着条件に関する情報を融着接続装置10に送信する。
【0055】
サーバ30の通信部31は、無線情報端末20の通信部21に有線及び無線にて接続して通信する。例えば、通信部31は、通常のインターネット回線等(無線含む)を介して、無線情報端末20の通信部21との間で通信を行う。通信部31は、無線情報端末20の通信部21を介して、データ作成部16で作成された融着状態データを取得する。
【0056】
サーバ30の格納部32は、融着接続装置10の機種ごとに使用が許可されるエリア(例えば、エリアα)の情報をデータベース35に格納する。格納部32は、融着接続装置10のシリアル番号(又はSSID)ごとに、融着接続装置10で行われ得る各作業の許可情報及び禁止情報をデータベース35に格納する。許可情報は、融着接続装置10において作業ごとに実行が許可されているか否かを示す情報である。禁止情報は、融着接続装置10において作業ごとに実行が禁止されているか否かを示す情報である。格納部32は、エリア(例えば、エリアα,β,γ)、融着接続装置10の機種、及び許可する作業の組み合わせごとに、融着接続に用いる融着条件をデータベース35に格納する。格納部32は、通信部31を介して無線情報端末20から取得した融着状態データも、融着接続装置10のシリアル番号(又はSSID)に関連付けてデータベース35に格納する。
【0057】
サーバ30の推定部33は、データベース35に格納された融着状態データから融着接続装置10の状態を推定する。例えば、光ファイバホルダ3cにゴミが存在する場合には、光ファイバ間において軸ずれ又は接続角度ずれが発生するおそれがある。融着接続部11において放電強度が弱すぎる又は放電時間が短すぎる場合には、光ファイバ間に気泡が含まれるおそれがある。融着接続部11において放電強度が強すぎる又は放電時間が長すぎる場合には、光ファイバが接続されないおそれがある。一対の光ファイバの先端が互いに対向する方向において、融着接続を行う際の光ファイバの押し込み量が過剰である場合には、光ファイバ間の接続部分が太くなったり変形したりするおそれがある。一対の光ファイバの先端が互いに対向する方向において、融着接続を行う際の光ファイバの押し込み量が不足した場合には、光ファイバが確実に接続されないおそれがある。このように、融着接続装置10の状態によって、光ファイバ間の融着状態に様々な問題が生じる。したがって、推定部33は、光ファイバ間の融着状態を示す融着状態データから融着接続装置10の状態を推定することができる。
【0058】
サーバ30の判定部34は、データ作成部16で作成された融着状態データに基づいて、融着接続装置10(融着接続部11)の動作を禁止するか否かを判定する。具体的には、判定部34は、推定部33による推定結果から融着接続装置10の状態が悪いと判定される場合に、融着接続装置10(融着接続部11)の動作を禁止すると判定する。例えば、推定部33において、放電強度又は放電時間が適切に設定されないと推定された場合、及び、光ファイバの押し込み量が過剰又は過少であると推定された場合に、判定部34は融着接続装置10の状態が悪いと判定する。
【0059】
サーバ30の通信部31は、判定部34が融着接続装置10の動作を禁止すると判定した場合に、融着接続の動作を禁止する融着接続装置10のシリアル番号(又はSSID)を無線情報端末20に送信する。無線情報端末20の取得部25は、通信部21を介してサーバ30の通信部31から送信されたシリアル番号(又はSSID)を取得する。無線情報端末20の記憶部26は、取得部25が取得したシリアル番号(又はSSID)に応じて、記憶部26に記憶されている動作が許可されている融着接続装置10の情報を更新する。具体的には、記憶部26は、融着接続の動作を禁止するシリアル番号に対応する融着接続装置10の情報を削除する。
【0060】
次に、図8を参照して、融着接続システム1において事前に行われる処理を説明する。まず、サーバ30の格納部32は、融着接続装置10の機種ごとに使用が許可されるエリアα,β,γをデータベース35に格納する(ステップS1)。次に、格納部32は、融着接続装置10のシリアル番号(又はSSID)ごとに、融着接続装置10で行われ得る各作業の許可情報及び禁止情報をデータベース35に格納する(ステップS2)。次に、格納部32は、エリアα,β,γ、許可する作業、融着接続装置10の機種の組み合わせごとに、融着接続に用いる融着条件をデータベース35に格納する(ステップS3)。
【0061】
次に、図9及び図10を参照して、融着接続システム1において行われる処理を説明する。
【0062】
特定のエリア(以下、「エリアα」ともいう。)に設けられた無線情報端末20(以下、単に「無線情報端末20」ともいう。)の取得部25は、通信部21を介してサーバ30から、エリアαで動作が許可されている融着接続装置10のシリアル番号(又はSSID)を取得する(ステップS11)。無線情報端末20の記憶部26は、サーバ30から取得したシリアル番号(又はSSID)を保存する(ステップS12)。続いて、無線情報端末20の取得部25は、通信部21を介してサーバ30から、エリアαで動作が許可されている融着接続装置10の機種、及び許可する作業と、融着条件との関係を取得する(ステップS13)。無線情報端末20の記憶部26は、サーバ30から取得した、融着接続装置10の機種及び許可する作業と融着条件との関係を保存する(ステップS14)。
【0063】
次に、無線情報端末20の検知部22は、エリアα内に侵入した融着接続装置10があるか否かを判定する(ステップS15)。ステップS15において、エリアα内に入った融着接続装置10があると判定された場合には、処理はステップS19へ進む(ステップS15でYES)。ステップS15において、エリアα内に侵入した融着接続装置10がないと判定された場合には、処理はステップS15を繰り返す(ステップS15でNO)。
【0064】
融着接続装置10は、ユーザがスイッチ5を操作することによって電源をONし、起動する(ステップS16)。融着接続装置10のロック部15は、起動された直後に、融着接続部11の動作を禁止する(ステップS17)。すなわち、ロック部15は、ステップS17において、ロックを設定する。次に、融着接続装置10は、通信部13を無線通信が可能な状態に設定する(ステップS18)。本実施形態では、ステップS18において通信部13は、融着接続装置10の周囲に電波を発信する。
【0065】
無線情報端末20の通信部21は、エリアα内に融着接続装置10が侵入したと判定された場合に、融着接続装置10の通信部13にSSIDが検知されたことを通知する(ステップS19)。無線情報端末20の検知部22は、ステップS19においてSSIDを検知すると、記憶部26を参照して、検知されたSSIDの融着接続装置10の動作がエリアαで許可されているか否かを判定する(ステップS20)。ステップS20において、検知されたSSIDを有する融着接続装置10の動作がエリアαで許可されていないと判定された場合には、処理はステップS21へ進む(ステップS20でNO)。検知されたSSIDを有する融着接続装置10の動作がエリアαで許可されていると判定された場合には、処理はステップS22へ進む(ステップS20でYES)。
【0066】
無線情報端末20の通信部21は、検知されたSSIDを有する融着接続装置10の動作がエリアαで許可されていないと判定された場合に、当該融着接続装置10との通信を終了し(ステップS21)、処理はステップS15へ戻る。無線情報端末20の指示部24は、検知されたSSIDを有する融着接続装置10の動作がエリアαで許可されていると判定された場合に、通信部21を介して当該融着接続装置10へロックの解除を指示する解除信号を送信する(ステップS22)。融着接続装置10のロック部15は、通信部13を介して無線情報端末20からロックの解除を指示する解除信号を受信すると、ロックを解除し、融着接続部11の動作を許可する(ステップS23)。
【0067】
続いて、図10に示すように、無線情報端末20の通信部21は、記憶部26を参照して、エリアαで許可された作業、及び融着接続装置10の機種に対応する融着条件を融着接続装置10に送信する(ステップS24)。続いて、融着接続装置10の融着接続部11は、通信部13を介して無線情報端末20から受信した融着条件を設定する(ステップS25)。融着接続装置10の融着接続部11は、設定した融着条件で融着接続を実行する(ステップS26)。融着接続装置10のデータ作成部16は、融着接続が実行された後に、融着接続を行った光ファイバの融着状態データを作成する(ステップS27)。無線情報端末20の取得部25は、通信部21を介して、融着接続装置10で作成された融着状態データを取得する(ステップS28)。無線情報端末20の記憶部26は、取得した融着状態データを保存する(ステップS29)。無線情報端末20の通信部21は、保存した融着状態データをサーバ30に送信する(ステップS30)。
【0068】
続いて、サーバ30の格納部32は、無線情報端末20から受信した融着状態データをデータベース35に保存する(ステップS31)。サーバ30の推定部33は、保存した融着状態データから、融着接続装置10の状態を推定する(ステップS32)。サーバ30の判定部34は、推定した融着接続装置10の状態が悪いか否かを判定する(ステップS33)。判定部34によって融着接続装置10の状態が悪くないと判定された場合、処理は、ステップS31より前、すなわち融着状態データを受信する前の待機状態に戻る。判定部34によって融着接続装置10の状態が悪いと判定された場合、判定部34は、当該融着接続装置10の動作を禁止すると判定する。この場合、処理はステップS34へ進む。サーバ30の通信部31は、判定部34が融着接続装置10の動作を禁止すると判定した場合、融着接続の動作を禁止する融着接続装置10のシリアル番号を無線情報端末20に送信する(ステップS34)。
【0069】
無線情報端末20の記憶部26は、通信部21を介してサーバ30から融着接続の動作を禁止するシリアル番号が受信されると、動作が許可されている融着接続装置10の情報(例えば、シリアル番号)を更新する(ステップS35)。無線情報端末20の指示部24は、記憶部26を参照して、融着接続の動作を禁止するシリアル番号を有する融着接続装置10に、通信部21を介して融着接続部11の動作を禁止する指示信号を送信する(ステップS36)。具体的には、指示部24は、記憶部26にシリアル番号が記憶されていない融着接続装置10に、通信部21を介してロックの設定を指示する指示信号を送信する。
【0070】
続いて、融着接続装置10のロック部15は、通信部13を介して無線情報端末20から融着接続部11の動作を禁止する指示(ロックの設定の指示)を受けると、融着接続部11の動作を禁止する(ステップS37)。続いて、表示部17は、モニタ6にメンテナンスが必要であることを表示する(ステップS38)。
【0071】
以上、本実施形態に係る光ファイバの融着接続装置10では、通信部13が外部端末である無線情報端末20に無線接続し、設定部14が通信部13によって無線情報端末20から取得された情報に応じて融着条件を設定する。このため、敷設場所に設けられた無線情報端末20と通信部13とが通信を行うことで、当該無線情報端末20と通信可能な範囲内での融着作業に適した融着条件で融着接続が行われ得る。
【0072】
一般に、敷設されている光ファイバの種類は、敷設場所に応じて異なる。したがって、融着接続に適切な融着条件も敷設場所に応じて異なる。上記の融着接続装置10によれば、無線情報端末20が通信可能な範囲で、当該無線情報端末20に対応して適切な融着条件による融着接続が容易に行われ得る。ゆえに、無線情報端末20の通信可能な範囲を敷設場所に対応させることで、光ファイバの種類等に対応して適切な融着条件が容易に設定され得る。複数の無線情報端末20の各々を光ファイバの種類がそれぞれ異なるエリアに配置されることで、各エリアに適切な融着条件が容易に設定され得る。
【0073】
本実施形態に係る融着接続装置では、融着条件に関する情報は、当該融着接続装置10の位置に応じて設定されている。換言すれば、融着条件に関する情報は、無線情報端末20に割り当てられたエリアに応じて設定されている。この場合、エリアに対応して適切な融着条件による融着接続が容易に行われ得る。
【0074】
本実施形態に係る融着接続装置では、融着条件に関する情報として、光ファイバの種類と、光ファイバを融着する際のアーク放電の放電強度及びその放電時間と、光ファイバの先端位置と、光ファイバの端面角度とのうち少なくとも1つの条件を含んでいる。このため、融着接続装置10は、光ファイバの融着接続をより適切に行うことができる。
【0075】
本実施形態に係る融着接続装置では、ロック部15は、通信部13と無線情報端末20との通信に応じて、融着接続部11の動作を許可及び禁止する。ロック部15は、通信部13が無線情報端末20から受信する解除信号に基づいて融着接続装置10の動作を許可する。このため、融着接続装置10を外部から管理して、不適切な融着接続を防止することができる。
【0076】
本実施形態に係る融着接続装置では、ロック部15は、通信部13が無線情報端末20と無線通信を確立した場合には、融着接続部11の動作を許可する。このため、融着接続装置10は、例えば、盗難防止用にロックされている状態で無線接続を確立した場合に、融着接続装置の使用を許可することができる。このため、盗難防止の対策と利便性の向上とが両立され得る。
【0077】
本実施形態に係る融着接続装置では、通信部13は、データ作成部16によって作成された融着状態データを無線情報端末20に送信する。このため、融着状態データを管理することができると共に、融着状態データに基づいて融着接続装置10に指示を行うこともできる。例えば、サーバ30の判定部34において、融着状態データに基づいて融着接続装置10の状態が悪いと判定された場合に、当該融着接続装置10の動作を禁止することができる。
【0078】
本実施形態に係る無線情報端末では、融着接続装置10に無線接続する通信部21が通信可能な範囲内に融着接続装置10が位置することを検知する。通信部21は、検知部22によって検知された融着接続装置10に、融着接続に用いる融着条件に関する情報を送信する。このため、敷設場所に設けられた無線情報端末20の通信可能な範囲で、当該通信可能な範囲に対応して適切な融着条件に関する情報を融着接続装置10に送信することができる。したがって、無線情報端末20の通信可能な範囲を敷設場所に対応させることで、光ファイバの種類等に対応して適切な融着条件が容易に設定され得る。
【0079】
本実施形態に係る融着接続システムでは、判定部34は、融着状態データに基づいて、融着接続装置10の動作を禁止するか判定する。無線情報端末20の通信部21は、判定部34が融着接続装置10の動作を禁止すると判定した場合に、融着接続装置10による融着接続の動作を禁止する指示信号を融着接続装置10に送信する。このため、例えば、上記融着状態データに基づいて、光ファイバの融着接続が適切に行われていない場合には、融着接続装置10の動作を禁止することができる。
【0080】
以上、本実施形態に係る融着接続装置、無線情報端末、及び融着接続システムについて説明してきた。しかし、本発明に係る融着接続装置、無線情報端末、及び融着接続システムは上記実施形態に限定されるものでなく、種々の変形を適用することができる。
【0081】
例えば、融着接続装置10は、複数の無線情報端末20と同時に通信してもよい。この場合、例えば、融着接続装置10のGPS10hから判断される融着接続装置10の位置に応じて、無線通信を行う無線情報端末20を決定してもよい。
【0082】
融着接続装置10の通信部13と無線情報端末20の通信部21との無線通信は、上記実施形態に限定されない。例えば、これらの無線通信は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、可視光通信、RFID(Radio Frequency Identification)などであってもよい。
【0083】
融着接続装置10の通信部13が、無線情報端末20の通信部21を介さずに、サーバ30の通信部31と直接通信を行ってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…融着接続システム、3b…放電電極、10…融着接続装置、11…融着接続部、13,21…通信部、14…設定部、15…ロック部、16…データ作成部、22…検知部、25…取得部、34…判定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10