(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】吊り具、保持具、および吊持搬送ユニット
(51)【国際特許分類】
B66C 1/62 20060101AFI20240509BHJP
B66C 1/66 20060101ALI20240509BHJP
B66F 9/18 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B66C1/62 Z
B66C1/66 P
B66F9/18 T
(21)【出願番号】P 2024025466
(22)【出願日】2024-02-22
【審査請求日】2024-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591005637
【氏名又は名称】山川エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 裕
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-341974(JP,A)
【文献】特開2000-143148(JP,A)
【文献】実開昭59-133492(JP,U)
【文献】特開昭58-2199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00- 3/20
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物の吊持に用いる吊り具であって、
前記被搬送物に接続可能な接続部と、
前記接続部に接続されている連結部と、
前記連結部を介して前記接続部と連結される被保持部と
を備え、
前記接続部は、
前記被搬送物に接続された状態で、前記被保持部とともに、前記被搬送物の側方と前記被搬送物の上方との間で移動可能に構成される
ことを特徴とする吊り具。
【請求項2】
請求項1に記載の吊り具において、
前記接続部はリング状の部材であり、
前記接続部は、前記リング状の部材を開環させることなく、前記被搬送物が有する帯状または紐状の持ち手部を締結可能に構成される
ことを特徴とする吊り具。
【請求項3】
請求項1に記載の吊り具において、
前記接続部はリング状の部材であり、
前記被保持部は球状体であり、
前記連結部は、前記接続部と前記被保持部とを連結する棒状体である
ことを特徴とする吊り具。
【請求項4】
前記被搬送物を搬送可能な搬送装置に接続され、請求項1に記載の吊り具を保持するために用いる保持具であって、
前記吊り具の前記被保持部を保持する保持部と、
前記搬送装置に接続される被接続部と、
前記保持部によって保持された前記被保持部が前記保持部から脱落することを防止する脱落防止部と、
を備えることを特徴とする保持具。
【請求項5】
請求項4に記載の保持具において、
前記吊り具の姿勢を、前記接続部が前記被保持部より高い位置にある第1姿勢から、前記接続部が前記被保持部の下方に位置する第2姿勢へと反転させる姿勢反転部を備え、
前記保持部は、前記吊り具が前記第2姿勢に反転された状態で前記被保持部を保持する
ことを特徴とする保持具。
【請求項6】
前記被搬送物を搬送可能な搬送装置に接続され、請求項3に記載の吊り具を保持するために用いる保持具であって、
上端に開口部を有しており前記開口部を介して前記被保持部を収容する収容孔と、
前記収容孔を囲繞する位置に配置されており、前記収容孔に収容された前記被保持部の脱落を抑止する抑止壁と、
前記抑止壁の一方の側面と底面とにわたって形成されており前記連結部を案内させる案内溝と、
を備えることを特徴とする保持具。
【請求項7】
請求項6に記載の保持具において、
前記抑止壁の内壁は、前記保持具の上下方向に対して傾斜するように構成されている
ことを特徴とする保持具。
【請求項8】
前記被搬送物を吊持した状態で搬送するために用いる吊持搬送ユニットであって、
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の吊り具、および請求項4ないし請求項7のいずれかに記載の保持具を備えることを特徴とする吊持搬送ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルコンテナを例とする吊荷を吊持した状態で搬送するための吊り具、保持具、および吊持搬送ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
穀物、樹脂ペレット、または土砂などの保管および輸送に用いられるフレキシブルコンテナが知られている(例えば、特許文献1)。フレキシブルコンテナは、フレキシブルな布で構成された産業用コンテナの一種である。フレキシブルコンテナは一般的に、倉庫などにおいて搬送され、多段に積み上げられた状態で保管される。
【0003】
フレキシブルコンテナは、胴体部と、当該胴体部に配設されており持ち手部として機能する吊りベルトとを備えている。すなわちフレキシブルコンテナは全体としてバッグに類似する形状を有しており、フレコンバッグとも呼ばれる。吊りベルトの各々を上方へ吊り上げることにより、フレキシブルコンテナは吊持される。フレキシブルコンテナの一般的なサイズは、直径が114cm~122cm、高さが100cm~200cm程度であり、容量が1000kg以上である。そのため、フレキシブルコンテナを搬送する場合、一般的にクレーンまたはフォークリフトを例とする搬送装置を用いて搬送作業を行う。
【0004】
フレキシブルコンテナを搬送する方法の従来例として、第1に、1または2以上のフックが配設されたクレーンを用いる方法が挙げられる(例えば、特許文献2)。クレーンを用いる第1の従来例では、フレキシブルコンテナの吊りベルトをクレーンのフックに固定する。そしてフレキシブルコンテナをフックで吊持した状態で搬送することで、フレキシブルコンテナを多段に積み上げることができる。当該第1の従来例は、フォークリフトにも応用できる。すなわちフォークリフトのフォーク部をクレーンのフックと見立て、当該フォーク部に吊りベルトを引っ掛けて固定し、フレキシブルコンテナを吊持して搬送できる。
【0005】
フレキシブルコンテナを搬送する方法の従来例として、第2に、フォークリフトと、フォークリフトのフォーク部を挿入可能なパレットとを用いる方法が挙げられる。フォークリフトを用いる第2の従来例では、予めパレットにフレキシブルコンテナを載置させた状態で、フォークリフトのフォーク部をパレットの差込口に挿入させる。パレットに挿入されたフォーク部を上昇させることによって、パレットとともにフレキシブルコンテナが持ち上げられて搬送可能となる。
【0006】
【文献】特開2022-039619号公報
【文献】特開2020-158249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来方法では次のような問題がある。すなわち、フレキシブルコンテナの吊りベルトは主に布製であり、帯状または紐状の部材である。そのため吊りベルトは自立できない構成となっている。そのため、クレーンを用いてフレキシブルコンテナを吊持する第1の従来例では、クレーンのフックにフレキシブルコンテナの吊りベルトを安定に固定させるためには、フレキシブルコンテナの上面部に横臥した状態となっている吊りベルトを起立させ、起立状態となっている吊りベルトにフックまたはフォーク部を通す必要がある。
【0008】
このような吊りベルトを起立状態にさせて搬送装置に固定させる動作を搬送装置の操作のみで実行することは困難である。そのため、吊りベルトを搬送装置に固定させる動作を行うには介助者による玉掛け作業が必須である。そのため第1の従来例では、少なくともクレーン装置を操作する第1の作業者に加えて、玉掛け作業を行う第2の作業者が必要になる。すなわち第1の従来例では2人以上の作業者を必要とする。
【0009】
また、フレキシブルコンテナを多段に積み上げて保管する場合、玉掛け作業を行う介助者は、積載面となるフレキシブルコンテナの上で玉掛け作業を行う必要がある。フレキシブルコンテナの上は足場が不安定であるので、玉掛け作業を行う作業員の疲労が蓄積しやすい。また、労働安全衛生法に則するとフレキシブルコンテナの上での作業は高所作業に分類されるため、介助者の転落防止措置を講ずる必要がある。さらに、玉掛け作業中にフレキシブルコンテナの荷崩れが発生するという事態も懸念される。
【0010】
次に、フォークリフトとパレットを用いる第2の従来例では、フレキシブルコンテナがパレットに載置された状態でなければフレキシブルコンテナを搬送できないので、床などに直接載置されたフレキシブルコンテナを搬送することができない。そのため、フレキシブルコンテナを搬送する作業の前段階として、フレキシブルコンテナを他の方法で吊持して搬送し、パレットに載置させる作業が必要となる。このようなパレットに載置させる作業が付加されることにより、フレキシブルコンテナの搬送効率が大きく低下する。
【0011】
第1の従来例において、玉掛け作業を省略できる構成として、以下のようなものが考えられる。すなわちフレキシブルコンテナの吊りベルトを自立状態にさせる自立部材をフレキシブルコンテナの上面に配設する。そして当該自立部材を用いてフレキシブルコンテナの吊りベルトを自立状態に固定する。自立状態となっている吊りベルトは、クレーン装置の操作によって、クレーン装置に配設されたフックに固定させることが可能である。従って自立部材を用いることにより、玉掛けに要する作業および人員を削減できると考えられる。
【0012】
しかしながら自立部材を用いる搬送方法では、新たな問題が懸念される。すなわち、起立状態となっている自立部材をフレキシブルコンテナの上面に配設することにより、フレキシブルコンテナの上面部の平坦性が大幅に低下する。そのため、自立部材が上面に配設されているフレキシブルコンテナの上に、他のフレキシブルコンテナを載置すると、載置されたフレキシブルコンテナのバランスが崩れることが懸念される。よって、自立部材をフレキシブルコンテナの上面に配設する場合、フレキシブルコンテナを多段に積み上げて保管することが困難となる。すなわちフレキシブルコンテナを保管する場合、フレキシブルコンテナを平面的に配置する方法に限定されることとなるので、フレキシブルコンテナの運用効率が大幅に低下する。このように、搬送に要する人員を削減して搬送効率を向上させつつ、フレキシブルコンテナを多段に積層可能に保管することは従来の方法では困難である。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、被搬送物を多段に積層可能に保管するとともに、被搬送物の搬送効率を向上できる吊り具、保持具、および吊持搬送ユニットを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、被搬送物の吊持に用いる吊り具であって、前記被搬送物に接続可能な接続部と、前記接続部に接続されている連結部と、前記連結部を介して前記接続部と連結される被保持部とを備え、前記接続部は、前記被搬送物に接続された状態で、前記被保持部とともに、前記被搬送物の側方と前記被搬送物の上方との間で移動可能に構成されることを特徴とするものである。
【0015】
(作用・効果)この構成によれば、接続部と、被保持部と、連結部とを有する。接続部は、被搬送物と接続可能である。連結部は、接続部と被保持部とを連結する。接続部は、被搬送物に接続された状態で、被搬送物の側方と被搬送物の上方との間で移動可能に構成される。接続部を被保持部とともに被搬送物の側方へと移動させることにより、被搬送物の上面の平坦性が吊り具によって低下することを回避できる。すなわち接続部を被保持部とともに被搬送物の側方へと移動させることにより、被搬送物の上面の平坦性が担保される。そのため、吊り具を被搬送物に接続させた場合であっても被搬送物を多段に積み上げて運用することが可能となる。
【0016】
接続部が被搬送物の側方に移動している状態では、一例として搬送装置のアームなどが被保持部を保持することにより、当該搬送装置は吊り具を介して被搬送物を保持できる。接続部が被保持部とともに被搬送物の側方に移動することにより、多段積みなどによって被搬送物が高所に載置されている場合であっても、当該被搬送物の側面に移動している被保持部は低所から容易に視認可能である。すなわち被保持部の正確な位置を把握することが容易であるので、吊り具の被保持部を介して被搬送物を精度よく保持することが可能となる。さらに、連結部を介して接続部と連結されている被保持部は、機械的な構成によって保持することが容易である。よって、吊り具を介して被搬送物を保持して吊持する工程において介助者を必要としない。従って、玉掛け作業に要する人員を削減できるとともに、玉掛け作業によって作業者が無用に疲労することを回避できる。
【0017】
接続部が被保持部とともに被搬送物の上方に移動している状態では、接続部または被保持部を上方へ引き上げることにより、被搬送物は接続部を介して引き上げられる。すなわち吊り具の接続部が被搬送物の上方に移動している状態において、吊り具は被搬送物を吊持できる。そして吊り具を介して被搬送物を吊持した状態で被保持部を移動させることにより、吊り具とともに被搬送物を任意の位置に搬送できる。このように状況に応じて、接続部を被保持部とともに被搬送物の側方と上方との間で適宜移動させることにより、玉掛け作業を行う介助者を要することなく、被搬送物を多段に積み上げるように吊持搬送することが可能となる。
【0018】
また、上述した発明において、前記接続部はリング状の部材であり、前記接続部は、前記リング状の部材を開環させることなく、前記被搬送物が有する帯状または紐状の持ち手部を締結可能に構成されることが好ましい。
【0019】
(作用・効果)この構成によれば、接続部はリング状の部材であり、リング状の部材を開環させることなく、前記被搬送物が有する帯状または紐状の持ち手部を締結可能に構成される。そのため接続部は、リング状の部材を開環させる構成、およびリング状部材を再び閉環させる構成を、いずれも必要としない。すなわち接続部の構造が複雑化することを回避できるため、吊り具の製造コストを低減できる。また、リング状の部材を開環または閉環させる構成を有することによって、接続部の強度が低下することも回避できる。従って、吊り具によって被搬送物をより安定に吊持させることが可能となる。
【0020】
また、上述した発明において、前記接続部はリング状の部材であり、前記被保持部は、球状体であり、前記連結部は、前記接続部と前記被保持部とを連結する棒状体であることが好ましい。
【0021】
(作用・効果)この構成によれば、接続部はリング状の部材である。そのため、被搬送物のうち、持ち手を例とする帯状または紐状の部分を吊り具の接続部と接続させることが容易となる。すなわち、吊り具の接続部と被搬送物とをより強固に結合させることができる。
【0022】
また、被保持部は球状体である。すなわち被保持部は、接続部の向きに依らず、任意の方向から保持されることができる形状を有する。このため、被保持部を保持するために用いる部材を被保持部に近づける方向を、接続部の向きに応じて変更する必要がない。よって、被保持部を保持する工程をより容易かつ迅速に実行できる。
【0023】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明は、前記被搬送物を搬送可能な搬送装置に接続され、上述の吊り具を保持するために用いる保持具であって、前記吊り具の前記被保持部を保持する保持部と、前記搬送装置に接続される被接続部と、前記保持部によって保持された前記被保持部が前記保持部から脱落することを防止する脱落防止部と、を備えることを特徴とするものである。
【0024】
(作用・効果)この構成によれば、保持部と被接続部と脱落防止部とを備える。保持部は、吊り具の被保持部を保持する。被接続部は、搬送装置に接続される。すなわち搬送装置は、保持具の被接続部と保持部とを介して、吊り具の被保持部を保持できる。その結果、吊り具および保持具を介して、搬送装置は被搬送物を保持できる。そして脱落防止部は、 保持部によって保持された被保持部が保持部から脱落することを防止する。そのため搬送装置は、吊り具および保持具を介して、被搬送物をより安定に保持できる。よって、玉掛け作業に要する人員を削減しつつ、被搬送物を多段に積み上げるような吊持搬送を、より安定に実行できる。
【0025】
また、上述した発明において、前記吊り具の姿勢を、前記接続部が前記被保持部より高い位置にある第1姿勢から、前記接続部が前記被保持部の下方に位置する第2姿勢へと反転させる姿勢反転部を備え、 前記保持部は、前記吊り具が前記第2姿勢に反転された状態で前記被保持部を保持することが好ましい。
【0026】
(作用・効果)この構成によれば、保持具が備える姿勢反転部によって、吊り具の姿勢は第1姿勢から第2姿勢へと反転される。保持部は、吊り具が第2姿勢に反転された状態で被保持部を保持する。第2姿勢は、接続部が被保持部の下方に位置する姿勢である。吊り具の被保持部が保持具によって保持される場合、吊り具は第2姿勢の状態である。よって、保持具が吊り具を保持して被搬送物を吊持搬送する場合、吊り具の接続部と被搬送物との接続が被保持部によって妨げられることを回避できる。よって、吊り具が第2姿勢であることにより、吊り具はより安定に被搬送物を吊持できる。
【0027】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち本発明は、前記被搬送物を搬送可能な搬送装置に接続され、上述の吊り具を保持するために用いる保持具であって、上端に開口部を有しており前記開口部を介して前記被保持部を収容する収容孔と、前記収容孔を囲繞する位置に配置されており、前記収容孔に収容された前記被保持部の脱落を抑止する抑止壁と、前記抑止壁の一方の側面と底面とにわたって形成されており前記連結部を案内させる案内溝と、を備えることを特徴とするものである。
【0028】
(作用・効果)この構成によれば、保持具は、収容孔と抑止壁と案内溝とを備えている。収容孔は、吊り具のうち球状体である被保持部を収容する。抑止壁は、収容孔を囲繞する位置に配置されており、収容孔に収容された被保持部の脱落を抑止する。すなわち収容孔に収容された吊り具の被保持部は、抑止壁に抑止されることで安定に保持される。
【0029】
また、収容孔は上端に開口部を有しており、当該開口部を介して吊り具の被保持部を収容する。すなわち保持具が被保持部を掬い上げるように保持具を上方へ移動させることで、吊り具の被保持部は収容孔の開口部を通って、抑止壁に囲繞される収容孔の内部に収容される。よって、搬送装置に接続された保持具を上方へ移動させるという単純な動作で保持具を安定に保持できるので、被搬送物を吊持搬送する工程の機械化がより容易となるとともに、吊持搬送する工程の迅速化が可能となる。
【0030】
抑止壁の側面から底面にわたって、案内溝が形成されている。案内溝は、連結部を案内させる。すなわち収容孔に被保持部が収容された状態で、案内溝が抑止壁の側面から底面へと連結部を案内させることにより、連結部によって連結されている吊り具の接続部は、抑止壁の上方から下方へと移動する。よって、接続部が被保持部より下方に位置する姿勢へと吊り具を変位させることがより容易となる。接続部が被保持部より下方に位置する姿勢をとる場合、吊り具はより安定に被搬送物を吊持できる。従って、安定に被搬送物を吊持できるような姿勢へと吊り具を変化させる操作を容易かつ迅速に実行できる。
【0031】
また、上述した発明において、前記抑止壁の内壁は、前記保持具の上下方向に対して傾斜するように構成されていることが好ましい。
【0032】
(作用・効果)この構成によれば、抑止壁の内壁は保持具の上下方向に対して傾斜する。そのため、開口部を通って収容孔の上端から下方へ被保持部が収容される場合、被保持部は傾斜している抑止壁の内壁に沿って下方へ案内される。すなわち、保持具が吊り具を掬い上げて上方へ移動させる操作を行うことにより、傾斜している抑止壁の内壁に沿って被保持部が案内され、吊り具の姿勢が直立姿勢から傾斜姿勢へと自然に変化する。
【0033】
吊り具の姿勢が傾斜姿勢に変化すると、吊り具に対して保持具をさらに上昇させることで、連結部を抑止壁の底面へと案内させて吊り具の接続部を抑止壁の下方へと移動させることが可能となる。すなわち抑止壁の内壁を傾斜させることにより、吊り具に対して保持具を上昇させるという単純な操作で、吊り具の姿勢をより確実に変位させることが可能となる。従って、安定に被搬送物を吊持できるような姿勢へと吊り具を変化させる操作を容易かつ迅速に実行できる。
【0034】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明は、被搬送物を吊持した状態で搬送するために用いる吊持搬送ユニットであって、上述の吊り具と上述の保持具とを備えることを特徴とするものである。本発明に係る吊持搬送ユニットは、本発明に係る吊り具および保持具を備える。よって、被搬送物を吊持した状態で搬送する動作を好適に実行することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る吊り具、保持具、および吊持搬送ユニットによれば、吊り具は接続部と、被保持部と、連結部とを有する。接続部は、被搬送物と接続可能である。連結部は、接続部と被保持部とを連結する。接続部は、被搬送物に接続された状態で、被搬送物の側方と被搬送物の上方との間で移動可能に構成される。接続部を被保持部とともに被搬送物の側方へと移動させることにより、被搬送物の上面の平坦性が吊り具によって低下することを回避できる。すなわち接続部を被保持部とともに被搬送物の側方へと移動させることにより、被搬送物の上面の平坦性が担保される。そのため、吊り具を被搬送物に接続させた場合であっても被搬送物を多段に積み上げて運用することが可能となる。
【0036】
接続部が被搬送物の側方に移動している状態では、一例として搬送装置のアームなどが被保持部を保持することにより、当該搬送装置は吊り具を介して被搬送物を保持できる。接続部が被保持部とともに被搬送物の側方に移動することにより、多段積みなどによって被搬送物が高所に載置されている場合であっても、当該被搬送物の側面に移動している被保持部は低所から容易に視認可能である。すなわち被保持部の正確な位置を把握することが容易であるので、吊り具の被保持部を介して被搬送物を精度よく保持することが可能となる。さらに、連結部を介して接続部と連結されている被保持部は、機械的な構成によって保持することが容易である。よって、吊り具を介して被搬送物を保持して吊持する工程において介助者を必要としない。従って、玉掛け作業に要する人員を削減できるとともに、玉掛け作業によって作業者が無用に疲労することを回避できる。
【0037】
接続部が被保持部とともに被搬送物の上方に移動している状態では、接続部または被保持部を上方へ引き上げることにより、被搬送物は接続部を介して引き上げられる。すなわち吊り具の接続部が被搬送物の上方に移動している状態において、吊り具は被搬送物を吊持できる。そして吊り具を介して被搬送物を吊持した状態で被保持部を移動させることにより、吊り具とともに被搬送物を任意の位置に搬送できる。このように状況に応じて、接続部を被保持部とともに被搬送物の側方と上方との間で適宜移動させることにより、被搬送物を多段に積み上げるように吊持搬送することが可能となる。従って、被搬送物を多段に積層可能に搬送するとともに、被搬送物の搬送効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】実施例1に係るフレキシブルコンテナの概略構成を説明する斜視図である。
【
図7】実施例1に係る保持具の一部切り欠き斜視断面図である。
【
図10】実施例1に係る接続ユニットの平面図である。
【
図11】実施例1に係るフォーク用アダプタの縦断面図である。
【
図12】実施例1に係る吊持搬送ユニットを用いている状態を示す全体図である。
【
図13】実施例1に係る吊持搬送ユニットを用いる吊持搬送の工程を示すフローチャートである。
【
図14】実施例1に係るステップS1を説明する正面図である。
【
図15】実施例1に係るステップS1を説明する縦断面図である。
【
図16】実施例1に係るステップS1を説明する正面図である。
【
図17】実施例1に係るステップS1を説明する縦断面図である。
【
図18】実施例1に係るステップS2を説明する図である。(a)は補助ロープの先端部を接続部の貫通孔に通す状態を示しており、(b)は補助ロープの先端部を被保持部に通す状態を示しており、(c)は被保持部を通した補助ロープの先端部を接続部の方へ戻しながら補助ロープを締めている状態を示しており、(d)は接続部に補助ロープが締結された状態を示している。
【
図19】実施例1に係るステップS3を説明する正面図である。
【
図20】実施例1に係るステップS4を説明する正面図である。
【
図21】実施例1に係るステップS4において、被保持部を収容孔に嵌入させている状態を説明する図である。(a)は斜視図であり、(b)は正面視における縦断面図である。
【
図22】実施例1に係るステップS4において、連結部および被保持部を下方に案内させている状態を説明する図である。(a)は斜視図であり、(b)は正面視における縦断面図である。
【
図23】実施例1に係るステップS4において、被保持部を収容孔の底部に到達させた状態を説明する図である。(a)は斜視図であり、(b)は正面視における縦断面図である。
【
図24】実施例1に係るステップS4において、連結部および接続部を枢動させて吊り具の姿勢を反転させている状態を説明する図である。(a)は斜視図であり、(b)は正面視における縦断面図である。
【
図25】実施例1に係るステップS4が完了した状態を説明する正面図である。
【
図26】実施例1に係るステップS5が完了した状態を説明する正面図である。
【
図27】実施例1に係るステップS6を説明する正面図である。
【
図28】実施例1に係るステップS7を説明する正面図である。
【
図29】実施例1に係るステップS8を説明する図である。(a)は吊り具の離脱防止状態を解除する工程を示す縦断面図であり、(b)は吊り具を離脱させる工程を示す縦断面図である。
【
図30】実施例1に係るステップS8が完了した状態を説明する正面図である。
【
図31】第1の従来例の問題点を説明する正面図である。
【
図32】第1の従来例に基づく比較例に用いられる自立部材を説明する斜視図である。
【
図33】第1の従来例に基づく比較例の問題点を説明する斜視図である。
【
図34】実施例1の効果を説明する正面図である。(a)は吊り具が上方配置状態である構成を示しており、(b)は吊り具が側方配置状態である構成を示している。
【
図38】実施例1の効果を説明する正面視における縦断面図である。
【
図39】実施例2に係る保持具の図である。(a)は全体構成を示す正面図であり、(b)は要部を示す縦断面図である。
【
図40】実施例2に係る吊持搬送ユニットを用いている状態を示す全体図である。
【
図41】実施例2に係るステップS4を説明する正面図である。
【
図42】実施例2に係るステップS4が完了した状態を説明する正面図である。
【
図45】実施例3に係るステップS4を説明する平面図である。
【
図46】実施例3のステップS4において、回転板を回転させる前の状態を説明する平面図である。
【
図47】実施例3のステップS4において、回転板を回転させた後の状態を説明する平面図である。
【
図48】変形例に係る保持具を説明する斜視図である。
【
図49】変形例に係る吊り具を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0039】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
【0040】
実施例1に係る吊持搬送ユニット50は、吊荷を吊持した状態で搬送するために用いられる。実施例1に係る吊持搬送ユニット50は
図12に示すように、吊り具10と保持具20とを備える。実施例1では、被搬送物である吊荷として、フレキシブルコンテナ1を用いるものとする。また実施例1では、フレキシブルコンテナ1を搬送するための駆動力を発生させる搬送装置として、フォークリフト60を用いるものとする。
【0041】
吊荷であるフレキシブルコンテナ1を吊持して搬送する構成の概要は以下の通りである。すなわち保持具20をフォークリフト60に接続させるとともに、吊り具10をフレキシブルコンテナ1に接続させる。そしてフォークリフト60を操作させることによって、吊り具10を保持具20によって保持させる。保持具20が吊り具10を保持することにより、フォークリフト60は吊持搬送ユニット50を介してフレキシブルコンテナ1を間接的に保持することとなる。
【0042】
なお以下の図において、水平方向をx方向およびy方向とし、鉛直方向をz方向とする。x方向は、フォークリフト60がフレキシブルコンテナ1に接近または離間する方向に相当する。言い換えると、x方向は、フォークリフト60の前後方向に相当する。y方向は、x方向に直交する方向である。すなわちy方向は、フォークリフト60の左右方向に相当する。またx方向のうち、搬送装置であるフォークリフト60が吊荷であるフレキシブルコンテナ1に近づく方向を「方向x1」とする。フォークリフト60がフレキシブルコンテナ1から遠ざかる方向を「方向x2」とする。またフレキシブルコンテナ1を吊持して搬送する倉庫の床面を符号Gで示している。また方向x1を適宜「前方」と記載し、方向x2を適宜「後方」と記載する。
【0043】
<フレキシブルコンテナの構成>
まず、吊荷であるフレキシブルコンテナ1の構成について説明する。フレキシブルコンテナ1は
図1に示すように、胴体部3と、上面部5と、吊りベルト7とを備えている。胴体部3は、四角筒状の布で構成されている。胴体部3は、穀物や樹脂ペレットなどの被収容物を収容する。上面部5は、胴体部3の上端に設けられる。上面部5は、四角形状の布で構成されている。
【0044】
吊りベルト7は、胴体部3の上部外周に固定して取り付けられている。吊りベルト7は、フレキシブルコンテナ1を吊り上げるための把手部として機能する。実施例1では、一対の吊りベルト7が互いに対向する位置に取り付けられている。一対の吊りベルト7のうち、一方を吊りベルト7a、他方を吊りベルト7bとして互いを区別する。均衡する位置に配設されている2つの吊りベルト7aおよび7bを吊り上げることにより、フレキシブルコンテナ1は安定な体勢で吊持される。吊りベルト7は、その内周部と胴体部3の上部外周部分とによって環状の構造を形成している。
【0045】
実施例1において、フレキシブルコンテナ1は円環状の補助ロープ9をさらに備えている。補助ロープ9は、吊りベルト7aおよび7bの各々に連環するように接続されている。補助ロープ9を吊り上げることにより、補助ロープ9に連結されている吊りベルト7aおよび7bの各々が均等に吊り上げられ、フレキシブルコンテナ1は安定な体勢で吊持される。補助ロープ9は、フレキシブルコンテナ1の側面に垂下できる程度に十分な長さを備えるように構成される。補助ロープ9は、フレキシブルコンテナ1を吊り上げることができる程度の強度を有する材料で構成される。
【0046】
<吊り具の構成>
次に、吊持搬送ユニット50のうち、吊り具10の構成について説明する。
図2は実施例1に係る吊り具10の斜視図であり、
図3は吊り具10の平面図である。
【0047】
吊り具10は、接続部11と、被保持部13と、連結部15とを備えている。接続部11は、補助ロープ9を介してフレキシブルコンテナ1と接続可能に構成されている。接続部11は、円板状の本体部17と、本体部17の中央部に形成されている円筒状の貫通孔19とを備えている。すなわち接続部11は、全体としてリング状の形状を有している。接続部11が補助ロープ9と接続されることにより、吊り具10はフレキシブルコンテナ1と接続される。吊り具10は、フレキシブルコンテナ1を吊持できる強度を有する材料で構成される。吊り具10を安定に保持できるという点、および吊り具10が安定にフレキシブルコンテナ1を吊持できるという点において、吊り具10は剛性を有する材料で構成されることが好ましい。吊り具10の構成材料として好ましい一例として、金属または樹脂などが挙げられる。
【0048】
被保持部13は、全体として塊状の部材である。ここでは塊状とは、全方向からの視点における形状が類似した形状であることを意味する。実施例1において、被保持部13は
図2に示すように球体の部材が用いられる。被保持部13の形状としては、球状体であることが好ましい。球状体の例として、球体の他に、球体の一部と錐体とを組み合わせた形状を有する物体、球体の一部と筒状体とを組み合わせた形状を有する物体、球体の一部と錐台とを組み合わせた形状を有する物体などが挙げられる。
【0049】
被保持部13は、保持具20によって保持される。すなわち被保持部13が保持具20によって保持されることにより、保持具20は吊り具10を介してフレキシブルコンテナ1を保持する。
【0050】
吊り具10において、被保持部13は接続部11より重くなるように構成することが好ましい。すなわち吊り具10の重心は、接続部11の側よりも被保持部13の側に偏るように構成されることが好ましい。被保持部13の側に吊り具10の重心を偏らせることにより、
図34(b)に示すように吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方に垂下させた場合、被保持部13の方が接続部11より低い位置となるように、吊り具10の姿勢が定められる。被保持部13を接続部11より低い姿勢とすることにより、保持具20の収容孔22に被保持部13を収容させる操作がより容易となる。
【0051】
連結部15は、接続部11と被保持部13とを連結する棒状の部材である。連結部15の直径L1は、被保持部13の直径L2より短い。また連結部15の直径L1は、接続部11の幅L3より短い。すなわち接続部11と被保持部13と連結部15とのうち、連結部15のみが後述する保持部20の案内溝28に嵌入できるように構成される。
【0052】
なお
図2および
図3に示すように、吊り具10のうち連結部15が延びる方向をa方向とする。貫通孔19が延びる方向、すなわち貫通孔19が接続部11を貫通する方向をb方向とする。a方向およびb方向の各々と直交する方向をc方向とする。
【0053】
<保持具の構成>
次に、吊持搬送ユニット50のうち、保持具20の構成について説明する。
図4は、実施例1に係る保持具20の斜視図であり、
図5は、保持具20の平面図である。
図6は、ベース部23の平面図である。
図7は、保持具20の一部切り欠き斜視断面図である。
図8は、
図5のA-A矢視断面図である。
図8は、正面視における保持具20の縦断面図に相当する。
図9は、
図5のB-B矢視断面図である。
図9は、側面視における保持具20の縦断面図に相当する。
【0054】
実施例1に係る保持具20は、本体部21と、ベース部23と、接続ユニット25とを備えている。本体部21は、基本的に上下方向に延びる四角筒状の部材である。但し実施例1では、本体部21はx1方向に向かって傾斜しつつ上方向へ延びるように構成されている。言い換えると、本体部21は僅かに前傾姿勢となるように上下方向へ延びている。
図4において、本体部21が延びる方向を符号pで示している。
【0055】
本体部21は、上下方向(具体的にはp方向)に貫通する収容孔22と、収容孔22を囲繞する位置に配置されている側壁24とを備えている。収容孔22は、吊り具10の被保持部13を収容しつつ、当該被保持部13を本体部21の上方から下方へと案内する。収容孔22は
図7および
図8などに示すように、テーパ領域26と円柱領域27とが連結した形状となっている。側壁24は、収容孔22に収容された被保持部13が本体部21の外部へ脱落することを抑止する。
【0056】
テーパ領域26は、収容孔22のうち上部を占めている。テーパ領域26は、本体部21の上方から下方に向かって先細りとなるテーパ状の孔部である。テーパ領域26の下端における径の長さは、円柱領域27の径の長さr1と等しくなるように構成されている。テーパ領域26の上端における径の長さr2は、円柱領域27の径の長さr1より長くなるように構成されている。
【0057】
円柱領域27は上下にわたって径が一定となる円柱状の孔部である。円柱領域27における径の長さr1は、被保持部13の直径L2より僅かに長くなるように構成されている。すなわち円柱領域27は、確実に被保持部13を内部に収容して上下方向へ案内できるように構成されている。また円柱領域27における径の長さr1は、接続部11の幅L3より小さいことが好ましい。当該構成により、吊り具10の接続部11が誤って収容孔22に収容されることを防止できる。
【0058】
円柱領域27は、本体部21が延びる方向pに沿って上下方向に延びている。すなわち円柱領域27における側壁24の内壁43は、p方向に前傾した筒状となっている。円柱領域27は、x1方向に向かって傾斜しつつ上方向へ延びるように構成されている。円柱領域27の内壁43は、本体部21の内壁に相当する。内壁43は、被保持部13がx方向またはy方向に移動して本体部21の外部に脱落することを抑止する。
【0059】
本体部21の側壁24は、x1方向側の側面に案内溝28を備えている。案内溝28は、側壁24の上端から下端にわたって、上下方向へ延びるように形成されている。案内溝28の幅w1は、吊り具10の連結部15を案内溝28に挿入した状態で、連結部15を上下方向に案内できる長さとなるように設定される。すなわち案内溝28の幅w1は、連結部15の直径L1より広くなるように構成される。連結部15を案内溝28に挿入した状態は、
図22などに示されている。
【0060】
案内溝28の幅w1は、被保持部13の直径L2より小さくなるように設定される。幅w1を直径L2より小さくすることにより、収容孔22に収容された被保持部13が案内溝28から保持具20の外へと脱落することを防止できる。
【0061】
案内溝28は上端から下端にわたって、収容孔22と連通している。すなわち吊り具10の連結部15を案内溝28に挿入し、かつ吊り具10の被保持部13を収容孔22に収容した状態で、吊り具10を上下方向へと案内させることができる。
【0062】
ベース部23は、本体部21の下部に取り付けられる板状部材である。すなわち本体部21の上端側は収容孔22によって開口部40が形成されている一方、本体部21の下端側はベース部23によって、後述する案内溝29の部分を除いて閉鎖されている。言い換えると、ベース部23の上面30によって、収容孔22の底部32が形成される。ベース部23の上面30において収容孔22の下端が当接する部分、すなわち収容孔22の底部32は、
図6において点線で示されている。収容孔22に収容された被保持部13は、本体部21の側方へ脱落することが側壁24によって抑止され、本体部21の下方へ脱落することが底部32によって抑止される。底部32および側壁24は、本発明における抑止壁に相当する。
【0063】
ベース部23は、x1方向側の側面に案内溝29を備えている。案内溝29は、ベース部23を上下方向に貫通するように形成されている。案内溝29は
図6に示すように、x1方向側におけるベース部23の側面からベース部23の中央部に向かって延びるように形成されている。すなわち案内溝29はx方向に延びている。案内溝29は、被保持部13が収容孔22の底部に到達した状態で、連結部15をさらにx方向に案内させる。連結部15を案内可能とするため、案内溝29の幅w2は、連結部15の直径より若干広くなるように構成される。
【0064】
ベース部23の中央部に延びている案内溝29によって、上下に延びているベース部23の内壁面38が形成される。内壁面38は、連結部15がx2方向へ移動することを抑止する。
【0065】
案内溝29の幅w2は、被保持部13の直径L2より小さくなるように設定される。幅w2を直径L2より小さくすることにより、収容孔22に収容された被保持部13が、案内溝29から保持具20の外へと脱落することを防止できる。案内溝29の幅w2は、接続部11の幅L3より小さくなるように設定される。幅w2を幅L3より小さくすることにより、ベース部23の下方に移動している接続部11が振動などによって上方へ跳ね上がった場合であっても、接続部11が案内溝29を経由して収容孔22に入り込むことを防止できる。すなわち接続部11が振動などによって上方へ跳ね上がった場合であっても、接続部11はベース板23の下面32によって抑止されるので、保持具20に保持されている吊り具10が保持具20から脱落することを防止できる。
【0066】
このように、保持部20のうち本体部21およびベース部23からなる主要部は、全体として、上端に開口部40を有しており内部に収容孔22が形成されている筒状部材である。そして主要部のx1方向の側面から底面にかけて、案内溝28および案内溝29が形成されている。すなわち保持部20は、案内溝28および案内溝29によって、連結部15をベース部23の下方へと案内できる構成となっている。収容孔22はベース部23によって底部32が形成されており、収容孔22に収容された被保持部13は、底部32によって安定に保持される。
【0067】
接続ユニット25は、搬送装置であるフォークリフト60に保持具20を接続させる。接続ユニット25は
図10に示すように、一対のフォーク用アダプタ31と、連結部材33とを備えている。フォーク用アダプタ31は後述するように、フォークリフト60のフォーク部61を受けて接続される。接続ユニット25は、本発明における被接続部に相当する。
【0068】
図10および
図11に示すように、フォーク用アダプタ31はx方向に延びる四角筒状の部材であり、フォーク用アダプタ31の先端側(x1方向側)は閉鎖されている。そして
図11に示すように、フォーク用アダプタ31は基端側(x2方向側)に開口部35を備えている。開口部35は後述するように、フォークリフト60のフォーク部61を差し込む差込口として機能する。平面視においてフォーク部61がフォーク用アダプタ31に差し込まれた状態は、
図5において点線で示されている。
【0069】
一対のフォーク用アダプタ31は、y方向において所定の間隔を開けて配置される。フォーク用アダプタ31の間隔の長さは、一対のフォーク部61の間隔の長さに応じて定められる。連結部材33は、フォーク用アダプタ31の先端部において、一対のフォーク用アダプタ31の各々に連結されている。すなわち一対のフォーク用アダプタ31の各々は、先端側において連結部材33を左右から挟み込むように配置される。フォーク用アダプタ31は、連結部材33を介して本体部21と接続される。
【0070】
連結部材33の先端側(x1方向側)は、保持具20に連結される。具体的に、連結部材33は、保持具20の本体部21のうちx2方向側の側面に接続される。すなわち
図4に示すように、本体部21の対向する一対の側面のうち、一方の側面に案内溝28が形成される。そして本体部21の対向する一対の側面のうち、他方の側面に連結部材33が接続される。
【0071】
<動作の概要>
ここで、実施例1に係る吊持搬送ユニット50を用いて、吊荷であるフレキシブルコンテナ1を吊持搬送する一連の動作を説明する。
図13は、吊持搬送ユニット50すなわち吊り具10および保持具20を用いて、フレキシブルコンテナ1を吊持搬送する一連の過程を説明するフローチャートである。
【0072】
ステップS1(保持具を搬送装置に接続)
まず、搬送装置であるフォークリフト60に対して、保持具20を接続させる工程を行う。ステップS1を開始すると、フォークリフト60のフォーク部61が水平姿勢となるように、チルトシリンダ63などを用いてマスト62の角度を調整する。そして
図14および
図15に示すように、フォークリフト60のフォーク部61を、フォーク用アダプタ31の開口部35に差し込む。なお
図14などにおいて、フォークリフト60の運転席Seに座してフォークリフト60を操作する運転者の記載を省略している。
【0073】
フォーク部61がフォーク用アダプタ31の先端側に向けて十分に差し込まれると、
図16および
図17に示すように、フォークリフト60の運転者はマスト62の角度を調整してフォーク部61を後傾させる。すなわち水平姿勢であったフォーク部61は、先端部61aが基端部61bよりも僅かに高い位置となるように、姿勢が変化する。
【0074】
フォーク部61が後傾することにより、フォーク用アダプタ31の内壁上面36に対してフォーク部61の先端部61aが当接し、さらに先端部61aが内壁上面36を上方向に押圧する。また、フォーク用アダプタ31の内壁下面37に対してフォーク部61の基端部61bが当接し、さらに基端部61bが内壁下面37を下方向に押圧する。そのため
図17に示すように、z方向における上向きへの力t1が内壁上面36に対して作用するとともに、z方向における下向きへの力t2が内壁下面37に対して作用する。
【0075】
z方向への力t1および力t2がフォーク部61からフォーク用アダプタ31へと作用することにより、フォーク用アダプタ31の内部においてフォーク部61がx方向へ移動することを防止できる。このように、フォーク用アダプタ31に差し込まれたフォーク部61を後傾させることで、フォーク用アダプタ31がフォーク部61に固定される。フォーク用アダプタ31がフォーク部61に固定されることにより、フォークリフト60に対して保持具20が安定に接続される。保持具20をフォークリフト60へ接続させることにより、ステップS1の工程は完了する。
【0076】
ステップS2(吊り具を吊荷に接続)
保持具20をフォークリフト60へ接続させた後、吊荷であるフレキシブルコンテナ1に吊り具10を接続させる。実施例1では、吊りバンド7に連結されている環状の補助バンド9を、吊り具10におけるリング状の接続部11に締結させることによって、フレキシブルコンテナ1に吊り具10を接続させる。
【0077】
図18の各図は、実施例1において補助バンド9を接続部11に締結させる工程を示している。まずは
図18(a)に示すように、補助バンド9の先端部9aを、接続部11の貫通孔19に挿通させる。貫通孔19の下方から上方へと補助バンド9の先端部9aを挿通させた後、
図18(b)に示すように、当該先端部9aを被保持部13の上方まで引き出す。そして被保持部13が下方から上方へと補助バンド9の環を通るように、補助バンド9の先端部9aを被保持部13の上方から下方へと移動させる。
【0078】
被保持部13を補助バンド9の環に通した後、
図18(c)に示すように、補助バンド9の先端部9aを被保持部13の下方から接続部11の下方へと移動させつつ、補助バンド9の環を締める。補助バンド9の環を締めることにより、
図18(d)に示すように、いわゆるヒバリ結び(カウヒッチ)の要領で、補助バンド9は接続部11の本体部17に緊締される。補助バンド9を本体部17に締結させることにより、補助バンド9および吊りバンド7を介して、フレキシブルコンテナ1に対して吊り具10が堅固に連結される。フレキシブルコンテナ1に対して吊り具10を接続させることにより、ステップS2の工程は完了する。
【0079】
フレキシブルコンテナ1に吊り具10を接続させる方法は
図18に示すヒバリ結びに限ることはなく、適宜変更してよい。但し
図18に示すように、環状となっている補助バンド9および本体部17をいずれも開環させることなく、両者を接続させることが好ましい。補助バンド9を所定の箇所で切断して開環させ、線状となった補助バンド9を本体部17に通して結ぶ場合、結び目の部分において補助バンド9と本体部17との結合力が低下する。すなわち開環させることなく補助バンド9と本体部17とを接続させることにより、当該結び目がほどけて補助バンド9と本体部17との接続が意図せず解除されるという事態を防止できる。
【0080】
また本体部17を開環させる構成とする場合、
図40に示すフック71に取り付けられる脱落防止部材72を例とする、本体部17を開環させるとともに再度本体部17を閉環させる構成が必要となる。その結果、本体部17の構造が複雑化するので吊り具10の製造コストが増大する。本体部17を開環させることなくフレキシブルコンテナ1に接続部11を接続させる構成とすることにより、接続部11と被保持部13と連結部15とが一体化した吊り具10を実現できる。この場合、一体成型などの製造方法によって吊り具10の全体部分を製造できるので、吊り具10を容易に大量生産できるとともに吊り具10の製造コストを低減できる。
【0081】
ステップS3(吊荷の側方に吊り具を配置)
フレキシブルコンテナ1に吊り具10を接続させた後、吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方に配置させる。すなわち吊りベルト7の各々を上面部5に横臥させ、吊りベルト7の各々に連結されている補助ロープ9とともに、吊り具10をx2方向側に引き出す。そして
図19に示すように、フレキシブルコンテナ1の胴体部3のうちx2方向側の側面において、補助ロープ9に締結されている吊り具10を、胴体部3の上端から垂下させる。
【0082】
吊り具10を胴体部3の上端から垂下させることにより、吊荷であるフレキシブルコンテナ1の側方に吊り具10が配置される。フレキシブルコンテナ1は、補助ロープ9を介して接続部11に接続される。そのため接続部11に補助ロープ9が緊締されている部分を上側として、吊り具10は垂下される。すなわち吊り具10を垂下させた場合、吊り具10の姿勢は、接続部11が被保持部13よりも高い位置となるような姿勢となる。
【0083】
また、吊り具10において、接続部11より被保持部13が重い。すなわち吊り具10の重心は被保持部13の側に偏っているので、吊り具10を垂下させることにより、より確実に被保持部13の方が接続部11より低い位置となるように吊り具10の姿勢が定められる。実施例1では、フレキシブルコンテナ1の側方に吊り具10を配置させた場合、吊り具10は接続部11が被保持部13の上方に位置する姿勢をとるものとする。以下、接続部11が被保持部13の上方に位置するような吊り具10の姿勢を「直立姿勢」とする。フレキシブルコンテナ1の側方に吊り具10を配置させることにより、ステップS3の工程は完了する。
【0084】
搬送の対象となるフレキシブルコンテナ1が複数ある場合、搬送対象となるフレキシブルコンテナ1の各々に対してステップS2およびステップS3の工程を実行する。すなわち搬送対象となるフレキシブルコンテナ1の各々に対して吊り具10を接続させ、当該フレキシブルコンテナ1の側方に吊り具10を直立姿勢で配置させる。
【0085】
吊持搬送ユニット50を用いてフレキシブルコンテナ1を搬送する一連の工程のうち、ステップS1ないしステップS3までの工程は、フレキシブルコンテナ1を搬送するための準備工程に相当する。
図12は、ステップS1ないしステップS3までの工程が完了した状態を示している。すなわち
図12は、フレキシブルコンテナ1の各々に吊り具10が接続され、フォークリフト60に保持具20が接続された状態を示している。なおステップS1ないしS3の工程の順番は適宜変更してよい。すなわちステップS1の工程をステップS3の後に行ってもよい。
【0086】
ステップS4(吊り具を保持具で保持)
ステップS1ないしステップS3の工程が完了した後、ステップS4の工程、すなわち吊り具10を保持具20で保持する工程を開始する。運転者はフォークリフト60の運転席に搭乗し、
図20に示すように、フォークリフト60をx1方向側に進行させる。そしてマスト62に配設されている昇降レール64に沿ってフォーク部61の高さを適宜調整させつつ、符号Pkで示すように、吊り具10の下方から保持具20を接近させる。なお
図20などにおいて、説明の便宜上、フレキシブルコンテナ1における吊りベルト7の記載を適宜省略している。
【0087】
吊り具10はステップS3において、接続部11よりも被保持部13の方が低い位置となる姿勢で、フレキシブルコンテナ1の側方に垂下されている。そのため吊り具10の下方から保持具20を近づけた場合、保持部20の上端にある開口部40は、吊り具10のうち被保持部13へ最初に近接する。
【0088】
運転者は、吊り具10が備える被保持部13の下方に保持具20の収容孔22が移動するように保持具20の位置を調整する。保持具20の位置を調整した後、運転者はフォーク部61をさらに上昇させることで、保持具20を上方へ移動させる。保持具20を上方へ移動させることにより、被保持部13を収容孔22に収容させる。すなわちフォークリフト60の運転者は、被保持部13を掬い上げるように、保持具20を上昇させる操作を行う。
【0089】
図21ないし
図24の各図は、収容孔22に被保持部13を収容させる状態を経時的に示している。保持具20を上方へ移動させることにより、
図21(a)および
図21(b)に示すように、吊り具10の被保持部13は、開口部40を経由して、収容孔22のテーパ領域26に収容される。収容孔22のテーパ領域26は、下方から上方にわたって幅広となる形状となっている。すなわちテーパ領域26の上端は下端より幅広であるので、平面視における収容孔22と被保持部13との位置が多少ずれていた場合であっても、被保持部13をより確実に収容孔22のテーパ領域26へと収容できる。
【0090】
被保持部13が開口部40を通ってテーパ領域26に収容されると、運転者はさらにフォーク部61とともに保持具20を上昇させる。保持具20が上昇することにより、吊り具10は保持具20に対して下降する。保持具20に対して吊り具10が下降することにより、被保持部13はテーパ領域26の側面である傾斜面41に沿って下方へと案内される。すなわち
図22(a)および
図22(b)に示すように、被保持部13はテーパ領域26円柱領域27へと案内される。そして被保持部13は、内壁43に沿ってさらに下方へと案内される。
【0091】
図22(b)に示すように、側壁24の内壁43は、x1方向かつ上方向に向かって傾斜している。言い換えると、内壁43は下方向に向かってx2方向へ傾斜している。すなわち被保持部13が下降して内壁43に接触し、被保持部13が内壁43に沿って下方へ案内されると、被保持部13の移動方向はz方向の下向き方向から、z方向の下向きであってx2方向成分を含む方向(方向E1)に変化する。そのため
図21(a)および
図21(b)においては直立姿勢であった吊り具10は、接続部11の方が被保持部13よりx1方向側に位置する姿勢となるように傾斜する(符号Rsを参照)。以下、接続部11の方が被保持部13よりx1方向側に位置する姿勢を「横臥姿勢」とする。
【0092】
吊り具10が横臥姿勢をとることにより、連結部15は被保持部13からx1方向側に傾斜する(突出する)姿勢となる。そのため、横臥姿勢となっている吊り具10が保持具20に対して下降することにより、側壁24におけるx1方向側の側面に形成されている案内溝28の上端に、吊り具10の連結部15が嵌入する。案内溝28の上端に嵌入された連結部15は、案内溝28に沿って本体部の上側から下側へと案内される。案内溝28に沿って連結部15が下方へと案内されるとともに、収容孔22の円柱領域27に沿って被保持部13が下方へ案内されることにより、吊り具10は全体として本体部21の下側へと移動する。
【0093】
被保持部13が円柱領域27に収容されると、運転者はさらにフォーク部61とともに保持具20をさらに上昇させる。保持具20が上昇することにより、吊り具10は保持具20に対してさらに下降する。その結果、
図23(a)および
図23(b)に示すように、吊り具10の被保持部13は、収容孔22の底部32に到達して抑止される。言い換えると、円柱領域27に沿って下側へ案内された被保持部13は、ベース部23の上面30によって、下方への移動が抑止される。
【0094】
また、底部32に到達した被保持部13は、側壁24の内壁43によって、x方向およびy方向への移動が抑止される。すなわち吊り具10の被保持部13は、収容孔22の底部32および側壁24の内壁43に抑止されることで、安定な姿勢で保持具20に保持される。
【0095】
被保持部13が収容孔22の底部32に到達した後、運転者はさらにフォーク部61とともに保持具20をさらに上昇させる。被保持部13が底部32によって抑止された状態で保持具20が上昇することにより、吊り具10のうち案内溝28から保持具20の外側へとx1方向に突出している接続部11は、保持具20に対してさらに下方へ引き下げられる。また連結部15は、案内溝28に連通されている案内溝29に沿って、ベース部23の側面から中央部へとx2方向に案内される。
【0096】
被保持部13が底部32に抑止されて下方への移動が阻止されている状態で、横臥姿勢である吊り具10が下方へ案内されると、
図24(a)および
図24(b)に示すように、被保持部13を支点として、連結部15および接続部11が枢動する。すなわち連結部15および接続部11は、枢動することによって保持具20の側方から保持具20の下方へと移動する。連結部15および接続部11が枢動する方向は、符号Phで示されている。なお、案内溝29に沿ってx2方向に案内された連結部15は、ベース部23の中央部に到達すると、案内溝29の内壁面38によってx2方向への移動が抑止される。
図24の各図において、
図23における接続部11の位置は点線で示されている。すなわち
図24において、接続部11は点線で示される位置から実線で示される位置へと移動する。
【0097】
収容孔22の底部32において被保持部13が保持されていることにより、保持具20に対する被保持部13の高さは一定となる。一方、保持具20の側方から保持具20の下方へと連結部15および接続部11が枢動することにより、保持具20に対する連結部15および接続部11の高さは低くなる。その結果、保持具20の側方から保持具20の下方へと連結部15および接続部11が枢動することにより、吊り具10の姿勢が上下方向に反転する。すなわち接続部11より被接続部13が低い位置となる姿勢であった吊り具10は、当該枢動によって、被接続部13が接続部11の上方に位置する姿勢へと反転する。以下、被接続部13が接続部11の上方に位置する吊り具10の姿勢を「逆立姿勢」とする。
【0098】
吊り具10の被保持部13が保持具20によって保持されることにより、フォークリフト60はフォーク部61および保持具20を介して吊り具10を保持することとなる。そしてフォークリフト60はフォーク部61の操作によって、吊り具10の位置を任意に調整することが可能となる。吊り具10の被保持部13が保持具20によって保持され、被接続部13より接続部11が低い位置となる姿勢へと吊り具10を反転させることによって、ステップS4は完了する。フォークリフト60が保持具20を上昇させることでステップS4を完了させた状態は、
図25に示される通りである。
【0099】
ステップS5(吊荷の上方に吊り具を移動)
保持具20によって吊り具10を保持した後、吊荷であるフレキシブルコンテナ1の上方へと吊り具10を移動させる。すなわち
図26に示すように、運転者は吊り具10がフレキシブルコンテナ1の上面部5より高い位置へと上昇するようにフォーク部61を上昇させつつ、フォークリフト60をx1方向へ前進させる。フォークリフト60の操作により、フレキシブルコンテナ1の側方に配置されていた吊り具10は、フレキシブルコンテナ1の上方へと移動する。なお
図25において、フレキシブルコンテナ1の側方に配置されていた吊り具10の位置は、
図26において点線で示されている。すなわち吊り具10は、フレキシブルコンテナ1の上面部5の中央部の上方に相当する位置へと移動する。
【0100】
逆立姿勢となっている吊り具10をフレキシブルコンテナ1の上方へ移動させることにより、吊り具10は補助ロープ9を介して吊りベルト7の各々を引き上げることができる。すなわち吊り具10をフレキシブルコンテナ1の上方へ移動させることにより、吊り具10は吊りベルト7の各々を引き上げてフレキシブルコンテナ1を吊持することが可能となる。フレキシブルコンテナ1の上方へと吊り具10を移動させることにより、ステップS5の過程は完了する。
【0101】
保持部20を上昇させることによって被保持部13を収容孔22の底部32に収容して保持するとともに吊り具10の姿勢を反転させる。当該、保持部20を上昇させる操作によって保持部20および吊り具10が移動する経路は、ステップS5において吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方から上方へと移動させる経路の一部である。すなわちステップS4において保持部20を上昇させる工程は、吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方から上方へと移動させる工程の初期段階において実行される。
【0102】
ステップS6(吊荷を吊持して搬送)
フレキシブルコンテナ1の上方へと吊り具10を移動させた後、フレキシブルコンテナ1を吊持して搬送する工程を開始する。すなわち運転者は昇降レール64に沿ってフォーク部61をさらに上昇させ、吊り具10を保持具20とともに上昇させる。吊り具10が上昇することにより、吊りベルト7が吊り具10によって引き上げられる。吊りベルト7が引き上げられると、フレキシブルコンテナ1は床面Gから浮き上がり、フレキシブルコンテナ1が吊り具10によって吊持される。
【0103】
フレキシブルコンテナ1が吊り具10によって吊持された後、運転者はフォークリフト60を適宜操作してフレキシブルコンテナ1を所望の位置へと搬送する。
図27は、吊り具10によって吊持された状態のフレキシブルコンテナ1を、床面Gに静置された状態となっている別のフレキシブルコンテナ1の上に搬送する状態を示している。
【0104】
実施例1において、フレキシブルコンテナ1を吊持する場合は吊り具10をフレキシブルコンテナ1の上方に配置される一方、フレキシブルコンテナ1を吊持しない場合は吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方に配置される。フレキシブルコンテナ1の側方に吊り具10を配置させることにより、フレキシブルコンテナ1の上面部5を平坦な状態に維持できる。すなわちフレキシブルコンテナ1の上にフレキシブルコンテナ1を載置する場合において、吊り具10が当該載置する工程の妨げとならない。よって、吊持搬送ユニット50を用いることにより、フレキシブルコンテナ1を2段以上に段積みすることが可能となる。
【0105】
フレキシブルコンテナ1を所定の場所に搬送して載置することにより、ステップS6の工程は完了する。ステップS4ないしステップS6の工程により、吊持搬送ユニット50を介してフォークリフト60はフレキシブルコンテナ1を吊持し、当該フレキシブルコンテナ1を所定の位置へと搬送する。すなわちステップS4ないしS6の工程は、吊荷を吊持搬送する一連の工程のうち、実際にフレキシブルコンテナ1を搬送する本工程に相当する。
【0106】
なお実施例1のステップS4において、被保持部13を収容孔22の底部32に収容させ、連結部15を案内溝28、29に沿って案内させることで吊り具10を逆立姿勢へと反転させる。吊り具10が逆立姿勢になるとともに連結部15が内壁面38で抑止されることにより、吊り具10は脱落防止状態となる。
【0107】
脱落防止状態とは、収容孔22に収容された被保持部13とベース部23の下方に移動した接続部11とがベース部23を挟んで対向しており、かつ連結部15が案内溝29を上下方向に貫通しつつ内壁面38によって抑止されている状態である(
図24の各図を参照)。吊り具10が脱落防止状態となることにより、フレキシブルコンテナ1を吊持搬送する際に振動などによって吊り具10が上方へ跳ね上がった場合、またはフレキシブルコンテナ1を載置する際に保持具20を下降させすぎて吊り具10がフレキシブルコンテナ1の上面部5に当接して上方に押し上げられた場合などにおいて、吊り具10が上方へ浮き上がって保持具20から脱落されることが防止される。
【0108】
収容孔22およびベース部23などによって吊り具10の脱落を防止する構成の詳細について説明する。ベース部23に設けられている案内溝29の幅w2は、連結部15の直径L1より広い。一方、案内溝29の幅w2は、接続部11の幅L3より小さくなるように設定される。幅w2を幅L3より小さくすることにより、
図38に示すように、ベース部23の下方に移動している接続部11が振動などによって上方へ跳ね上がった場合であっても、接続部11が案内溝29を経由して収容孔22に入り込むことを防止できる。すなわち接続部11が振動などによって上方へ跳ね上がった場合であっても、接続部11はベース板23の下面34によって抑止される。
【0109】
吊り具10の接続部11がベース部23の下方に位置している状態において、接続部11をベース部23より上方へ移動させるためには、吊り具10を保持している保持具20を、少なくともx2方向の成分を含む方向へ移動させ、連結部15を案内溝29に沿って案内させることで接続部11をベース部23の側方へ枢動させる必要がある(
図29を参照)。しかしながら吊り具10が脱落防止状態である場合に吊り具10が上面部5との接触または振動によって上方への力を受けたとしても、接続部11は被保持部13の下方に位置しているので、当該上方への力では接続部11を枢動させることはできない。よって、保持具20に保持されている吊り具10が開口部40を経由して保持具20の外部へと脱落することを確実に防止できる。すなわち上下に反転した状態となった吊り具10は、確実に保持具20に保持されることができる。
【0110】
ステップS7(吊荷の側方に吊り具を移動)
フレキシブルコンテナ1を所定の場所へ搬送した後、フレキシブルコンテナ1の側方へ吊り具10を再び移動させる。ステップS7において行われる動作は、基本的にステップS5において行われる動作の逆工程となる。すなわち
図28に示すように、運転者はフォークリフト60をx2方向へ後退させつつ、フレキシブルコンテナ1の上面より高い位置にあるフォーク部61を下降させる。フォークリフト60の操作により、フレキシブルコンテナ1の上方に配置されていた吊り具10は、フレキシブルコンテナ1の側方へと移動する。すなわち吊り具10は、
図28において点線で示されている位置から実線で示されている位置へと移動する。
【0111】
吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方へ移動させることにより、補助ロープ9および吊りベルト7は、フレキシブルコンテナ1の上面部5に横臥される。そして吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方へ移動させることにより、吊り具10によってフレキシブルコンテナ1が吊持されている状態(吊持状態)が解除される。フレキシブルコンテナ1の側方へと吊り具10を移動させることにより、ステップS7の過程は完了する。
【0112】
ステップS8(吊り具の保持を解除)
吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方へ移動させることにより、フレキシブルコンテナ1の吊持状態を解除させた後、吊り具10の保持を解除する工程を行う。すなわちステップS8において、吊り具10を保持具20で保持している状態を解除する工程を行う。ステップS8において行われる動作は、基本的にステップS4において行われる動作の逆工程となる。すなわちステップS8における吊り具10と保持具20との位置関係は、
図24の各図に示す位置関係から開始されて、
図23の各図、
図22の各図、
図21の各図で示す位置関係へと順に変化する。
【0113】
ステップS8が開始されると、運転者はフォーク部61とともに保持具20をx2方向および下方向に移動させる。このとき保持具20に作用する力の方向を、
図29(a)において符号J1で示している。保持具20がx2方向に移動することにより、まずは、保持具20の下方から保持具20の側方へと連結部15および接続部11が枢動する。すなわち保持具20がx2方向に移動することにより、吊り具10の接続部11は、フレキシブルコンテナ1に固定されている補助ロープ9によってx1方向へ引っ張られる。すなわち保持具20がx2方向に移動することにより、接続部11に対してx1方向への力が作用する。
【0114】
このとき、被保持部13は収容孔22の底部32にあるので、本体部21の内壁によって被保持部13は支持される。そのため接続部11に対してx1方向への力が作用することにより、被保持部13が底部32に支持されている状態を維持しつつ、連結部15は案内溝29に沿って、ベース部23の中央部から側面部へとx1方向に案内される。その結果、吊り具10は
図29(a)において点線で示される位置から実線で示される位置へと移動する。すなわち、被保持部13を支点として、保持具20の下方から保持具20の側方へと連結部15および接続部11が枢動する。言い換えると、
図24に示される符号Phとは逆方向に、連結部15および接続部11が枢動する。
図29(a)に示すように連結部15および接続部11が枢動することによって、吊り具10の脱落防止状態が解除される。
【0115】
連結部15および接続部11が保持具20の側方へと枢動した後、運転者はさらにフォーク部61とともに保持具20を下降させる。このとき保持具20に作用する力の方向は、
図29(b)において符号J2で示している。保持具20が下降することにより、吊り具10は保持具20に対して上昇する。その結果、
図29(b)で示すように、案内溝28に沿って連結部15が上方へと案内されるとともに、収容孔22の円柱領域27に沿って被保持部13が上方へ案内される。すなわち保持具20を下降させる操作により、底部32が被保持部13を保持している状態は解除される。連結部15および被保持部13が上方へ案内されることにより、接続部11も上方へと移動する。
【0116】
さらにフォーク部61とともに保持具20を下降させることにより、連結部15は案内溝28に沿って下方から上方へと移動していき、案内溝28の上端から保持具20の外部へと離脱する。また連結部15の移動に伴って、被保持部13は収容孔22の円柱領域27からテーパ領域26へと移動する。そして収容孔22に収容されていた被保持部13は、開口部40を経由して保持具20の外部へと離脱する。このように、保持具20が装着されたフォーク部61を操作して、吊り具10をフレキシブルコンテナ1の上方から側方へ移動させ、さらに保持具20を下方へ移動させるという一連の単純な操作により、吊り具10の脱落防止状態が解除されるとともに保持具20から吊り具10が離脱される。
【0117】
吊り具10が保持具20の外部へと離脱することにより、吊り具10を保持具20で保持している状態が解除される。吊り具10を保持具20で保持している状態が解除されることにより、ステップS8の工程は完了する。フォークリフト60が保持具20を下降させることでステップS8を完了させた状態は、
図30に示される通りである。ステップS7およびS8は、吊荷を吊持搬送する一連の工程のうち、吊荷の搬送が完了した後に行う後工程に相当する。
【0118】
ステップS8までの工程が完了することにより、1つのフレキシブルコンテナ1を吊持して搬送する動作が完了する。他に吊持して搬送する対象となるフレキシブルコンテナ1が存在する場合はステップS4に戻り、当該他のフレキシブルコンテナ1に対してステップS4ないしステップS8の工程を実行する。なお搬送対象であるフレキシブルコンテナ1に吊り具10が接続されていない場合、ステップS2ないしステップS8の工程を実行する。吊持して搬送する対象となるフレキシブルコンテナ1を全て搬送し終えた場合、フォークリフト60から保持具20を外して一連の過程を完了させる。
【0119】
<実施例1の構成による効果>
ここでフレキシブルコンテナ1を吊持して搬送する従来の方法と比較しつつ、実施例1に係る吊持搬送ユニット50の効果について説明する。
【0120】
従来、フレキシブルコンテナ1を吊持して搬送する方法の第1の例として、クレーン車70に備えられたフック71を用いる方法が上げられる。当該第1の従来例では
図31に示すように、脱落防止部材72を備えるフック71をフレキシブルコンテナ1の吊りベルト7に係止させる。そしてフック71を搬送装置であるクレーン車70で引き上げることで、吊りベルト7とともにフレキシブルコンテナ1を吊り上げて搬送する。
【0121】
しかしながら第1の従来例では、以下のような問題が懸念される。すなわち、フレキシブルコンテナ1の吊りベルト7は一般的に布を例とする材料で構成されているため、静止状態において自立しない構成となっている。よって、吊りベルト7にフック71を係止させて固定する工程、および脱落防止部材72を操作してフック71を開環状態/閉環状態にする工程をフレキシブルコンテナ1の近傍で行う作業者が必要になる。言い換えると、
クレーン車70の座席Seに座ってクレーン車70を運転する第1の作業者(運転者)に加え、フレキシブルコンテナ1に対して玉掛け工程を行う第2の作業者Maが必要になる。
【0122】
そして
図31に示すように、多段に積み上げて保管されているフレキシブルコンテナ1に対して積み下ろし作業を行う場合、玉掛け作業を行う第2の作業者Maは、多段に積み上げられたフレキシブルコンテナの上で玉掛け作業を行う必要がある。フレキシブルコンテナの上は足場が不安定であるので、玉掛け作業を行う作業員の疲労が蓄積しやすい。また、玉掛け作業によってフレキシブルコンテナの荷崩れを発生させるという事態も懸念される。
【0123】
このような第1の従来例において玉掛け作業を省略できる変形従来例として、
図32に示すような自立部材80を用いる方法が考えられる。自立部材80は、リング状の下面リング81と、下面リング81に立設された支柱82と、支柱82の上端を横架するように配置された上面リング83とを備えている。自立部材80は金属を例とする、フレキシブルコンテナ1の吊持に耐えることができる程度の強度を有する材料で構成されており、フレキシブルコンテナ1の上面部5において自立することができる。下面リング81は中央部に貫通孔84を備えており、貫通孔84を通して吊りベルト7の各々を締結する。上面リング83は中央部に貫通孔85を備えており、貫通孔85を通してフック71を係止させる。
【0124】
自立部材80を用いる変形従来例では、
図33に示すように、フレキシブルコンテナ1の上面部5に自立部材80を配設し、予め、吊りベルト7の各々を下面リング81に締結させる。そして脱落防止部材72を外して開環状態となっているフック71を上面リング83に引っ掛けて係止させることにより、フック71は自立部材80を介して吊りベルト7に固定される。運転者がクレーン車70を操作してフック71を引き上げることにより、玉掛け作業を行うことなくフレキシブルコンテナ1を吊持できる。また搬送装置としてフォークリフト60を用いる場合、フォーク部61を上面リング83の下面に差し込んで持ち上げることにより、自立部材80とともにフレキシブルコンテナ1を吊持することが可能となる。
【0125】
しかしながら当該変形従来例では、自立姿勢となっている自立部材80をフレキシブルコンテナ1の上面部5に配置することによって、上面部5の平坦性が大幅に低下する。上面部5の平坦性が低下することにより、自立部材80が上面部5に配設された別のフレキシブルコンテナ1の上に、フレキシブルコンテナ1を安定に積載することが困難となる(
図33の符号NDを参照)。
【0126】
また、クレーン車70などの搬送装置を運転する運転者と比べて高い場所に配置されているフレキシブルコンテナ1を吊持する場合、当該フレキシブルコンテナ1の上面部5を運転席Seから視認することは困難である(
図35の符号Kbを参照)。すなわち、高所に配置されているフレキシブルコンテナ1に対して、自立部材80にフック71を精度良く係止させることは困難である。その結果、フレキシブルコンテナ1を多段に積み上げることが困難となるので、変形従来例ではフレキシブルコンテナ1の保管効率が大幅に低下する。
【0127】
このような従来の構成に対し、実施例1ではフークリフト60やクレーン車70を例とする搬送装置を利用してフレキシブルコンテナ1の搬送を行う場合、吊持搬送ユニット50を用いる。実施例1に係る吊持搬送ユニット50は、吊り具10と保持具20とを備える。実施例1に係る吊り具10は、フレキシブルコンテナ1に接続された状態で、フレキシブルコンテナ1の側方とフレキシブルコンテナ1の上方との間で移動可能に構成される。
【0128】
図34(a)は、吊り具10がフレキシブルコンテナ1の上方に配置された状態(上方配置状態)を示している。
図34(b)は、吊り具10がフレキシブルコンテナ1の側方に配置された状態(側方配置状態)を示している。側方配置状態における吊り具10の位置、すなわちフレキシブルコンテナ1の側方に相当する位置は、
図34(a)などにおいて符号D1で示されている。上方配置状態における吊り具10の位置、すなわちフレキシブルコンテナ1の上方に相当する位置は、
図34(a)などにおいて符号D2で示されている。
【0129】
具体的に、吊り具10は、接続部11と被保持部13とが連結部15によって連結された構造を有している。接続部11は、補助ロープ9または吊りベルト7を介して、フレキシブルコンテナ1に接続される。そして接続部11は、フレキシブルコンテナ1に接続された状態で、フレキシブルコンテナ1の側方とフレキシブルコンテナ1の上方との間で移動可能に構成される。被保持部13は、搬送装置に接続される保持具20によって保持される。
【0130】
吊持搬送ユニット50を用いてフレキシブルコンテナ1を吊持搬送する場合、フォークリフト60を例とする搬送装置に保持具20を接続する(ステップS1)。また吊り具10をフレキシブルコンテナ1に接続した後、側方配置状態にする(ステップS2、S3)。そして保持具20で吊り具10の被保持部13を保持した後(ステップS4)、吊り具10を上方配置状態へと移行させる(ステップS5)。上方配置状態である場合、保持具20とともに吊り具10を引き上げることによって、フレキシブルコンテナ1を吊持できる(ステップS6)。フレキシブルコンテナ1の吊持搬送が終了すると、吊り具10を上方配置状態から側方配置状態に移行させ(ステップS7)、保持具20が吊り具10を保持している状態を解除する(ステップS8)。
【0131】
このように実施例1に係る搬送方法では、フレキシブルコンテナ1を吊持搬送する場合は吊り具10を上方配置状態に切り換え、フレキシブルコンテナ1を吊持搬送しない場合は吊り具10を側方配置状態に切り換える。
【0132】
吊り具10が
図34(b)に示すような側方配置状態である場合、フレキシブルコンテナ1の側方に吊り具10が垂下されている。
図35に示すように、搬送装置の運転席Seに着座している運転者は、フレキシブルコンテナ1の側方に配置されている吊り具10を確実に視認できる。特に、フレキシブルコンテナ1が高所に積み上げられている場合であっても、当該フレキシブルコンテナ1の側方に垂下されている吊り具10は、運転者から確実に視認可能である(符号Kaを参照)。よって、フォークリフト60の運転者は搬送対象であるフレキシブルコンテナ1の側方に配置されている吊り具10を保持することにより、保持具20および吊り具10を介して、搬送装置は当該フレキシブルコンテナ1と確実に接続された状態となる。すなわちフレキシブルコンテナ1が多段に積み上げられている場合であっても、運転者は任意のフレキシブルコンテナ1を保持できる。
【0133】
また、フレキシブルコンテナ1の上面部5に横臥している吊りベルト7の各々を直接搬送装置に保持させる工程は、搬送装置の運転によって実行することは困難であり、玉掛け作業を行う介助者が必要となる。一方、フレキシブルコンテナ1の側方D1に移動している吊り具10を保持する工程は、搬送装置の運転者のみで容易に実行できる。そのため、介助者を必要とすることなく、フレキシブルコンテナ1の吊りベルト7の各々に接続されている吊り具10を安定かつ確実に保持させることができる。
【0134】
吊り具10が
図34(a)に示すような上方配置状態である場合、吊り具10に対して上方への力を加えることにより、吊り具10に接続されている吊りベルト7の各々は横臥状態から起立状態となる。そして吊り具10に上方への力をさらに加えることで吊りベルト7の各々を介して、フレキシブルコンテナ1を吊り挙げる力が作用する。その結果、フレキシブルコンテナ1を安定な姿勢で吊持できる。保持具20で吊り具10を保持することにより、搬送装置は保持具20を経由して吊り具10に対して上方への力を加えることができる。この場合、運転者が搬送装置を操作することによって、吊り具10を持ち上げてフレキシブルコンテナ1を吊持できる。そのため、運転者のみによってフレキシブルコンテナ1を吊持できる。言い換えると、玉掛けに要する作業および人員を要することなく、確実にフレキシブルコンテナ1を吊持搬送できる。
【0135】
このように、フレキシブルコンテナ1を吊持して搬送するタイミングに応じて、吊り具10を上方配置状態と側方配置状態との間で適宜切り換える構成とすることにより、玉掛けに要する人員を削減しつつ、フレキシブルコンテナ1を吊持搬送して多段に積み上げることが可能となる。
【0136】
また、吊り具10はリング状の接続部11と、球状体を例とする塊状の被保持部13とが連結部15を介して連結された構造を有する。そしてリング状の接続部11をフレキシブルコンテナ1と接続させるとともに、塊状の被保持部13を保持具20によって保持させる。吊り具10を当該構成とすることにより、以下のような効果を実現できる。
【0137】
まず、接続部11はリング状の部材である。リング状の部材は、環状の部材と堅固に締結させることが容易である。すなわち、補助ロープ9または吊りベルト7を例とする環状部材を、接続部11へ堅固に締結することが容易である。すなわちリング状部材である接続部11は、環状部材を介してフレキシブルコンテナ1に接続させることが容易である。また接続部11はリング状の部材であるので、締結された環状部材を容易に解くことができる。従って、リング状部材である接続部11を用いることにより、吊り具10とフレキシブルコンテナ1とを容易に固定できるとともに当該固定を容易に解除できる。
【0138】
そしてリング状の部材と環状部材とを締結させた場合、リング状の部材は環状部材に沿って移動させることが容易である。そのため、接続部11が補助ロープ9に沿って、フレキシブルコンテナ1の側方と上方との間で往復移動することは容易である。すなわち接続部11をリング状の部材とすることで、吊り具10を上方配置状態と側方配置状態との間で切り換えることが容易となる。
【0139】
次に、被保持部13は、球状体を例とする塊状の部材である。そして保持具20は当該塊状の部材である被保持部13を収容孔22に収容することによって、被保持部13を容易に保持できる。すなわち被保持部13の下方から保持具20を近づけ、収容孔22に被保持体13を収容させた状態で保持具20を上昇させるという単純な操作によって、保持具20は吊り具10を安定に保持できる。また、特に被保持部13を球状体とすることにより、吊り具10が側方配置状態である場合において、吊り具10の姿勢に依らず保持具20は吊り具10を容易に保持することができる。保持具20が吊り具10を容易に保持できる効果について、
図36および
図37などを用いて説明する。
【0140】
補助ロープ9が締結された吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方に垂下させた場合、吊り具10は補助ロープ9が締結されている接続部11の部分を支点として、z方向の軸回りに回転可能な状態となる(
図36の符号Rtを参照)。すなわち吊り具10がz方向に回転することにより、吊り具10の姿勢が変化する。
図19は、側方配置状態である吊り具10の姿勢の一例として、接続部11の貫通孔19の向きbがx方向と一致する場合を示している。
図36は、側方配置状態である吊り具10の姿勢の他の例として、接続部11の貫通孔19の向きbがy方向と一致する場合を示している。
【0141】
吊り具10において保持される部分の形状がリング状である場合、吊り具10がz方向に回転して吊り具10の姿勢が変化すると、吊り具10を保持することが困難になることがある。
図37は比較例として、リング状の接続部11と、リング状の被保持部13Pとを備える吊り具10Pを示している。被保持部13Pがリング状である場合、フック71などを被保持部13Pに係止することで吊り具10Pを保持できる。
【0142】
しかしながらリング状である被保持部13Pの貫通孔Cnが
図37に示すようにx方向を向く場合、被保持部13Pに対してx方向に沿ってフック71を近づけなければ、フック71は被保持部13Pを保持できない(符号Mxを参照)。一例として被保持部13Pに対してフック71をy方向に沿って近づけた場合、リング状となっている被保持部13の本体部がフック71と干渉するため、貫通孔Cnにフック71を引っかけることができない。このように、接続部11を例とするリング状の構造を対象として吊り具10を保持する場合、吊り具10の姿勢(貫通孔19の向き)に応じて、保持具20を近づける方向を精度良く一致させる必要がある。そのため、吊り具10を保持具20で保持する動作に要する時間が長期化する。
【0143】
一方、実施例1に係る吊り具10では被保持部13が球状体であるので、貫通孔19の向きに依らず、被保持部13の形状は一定である。すなわち
図36に示すように貫通孔19がx方向を向いている条件において、保持具20をx方向およびy方向のいずれに沿って近づけた場合であっても精度良く収容孔22に被保持部13を収容して保持できる(符号NxおよびNyを参照)。すなわち、保持具20をどの方向から吊り具10に近づけた場合であっても、収容孔22に被保持部13を収容して保持できる。
【0144】
また
図19に示すように、貫通孔19がx方向を向いている条件においても同様に、保持具20をx方向およびy方向のいずれに沿って近づけた場合であっても精度良く収容孔22に被保持部13を収容して保持できる。このように被保持部13が球状などの塊状とすることにより、接続部11の三次元的な向きによらず、被保持部13を容易かつ確実に保持具20で保持することができる。すなわち接続部11の貫通孔19がどの方向を向いていた場合であっても、保持具20を任意の方向から吊り具10に近づけて、精度良く収容孔22に被保持部13を収容して保持できる。
【0145】
また実施例1に係る保持具20は、側面に設けられた案内溝28および底面に設けられた案内溝29に沿って連結部15を案内させることにより、吊り具10を上下に反転させた状態で保持する。すなわち吊り具10は、側方配置状態において、接続部11が被保持部13より高い位置となる姿勢である。一方、吊り具10は上方配置状態において、側方配置状態と比べて姿勢が反転する。すなわち吊り具10は上方配置状態において、保持具20に保持されている被保持部13の方が、補助ロープ9などを介してフレキシブルコンテナ1と接続されている接続部11よりも高い位置となる。
【0146】
上方配置状態において被保持部13の方が接続部11よりも高い位置となることで、接続部11に締結されている補助ロープ9などが被保持部13または連結部15に絡むことを防止できる。すなわち補助ロープ9などが絡むことに起因してフレキシブルコンテナ1の吊持搬送が妨げられるという事態を回避できる。被保持部13の方が接続部11よりも低い位置でフレキシブルコンテナ1を吊持搬送した場合、接続部11が被保持部13を支点として枢動することが考えられる。当該枢動が発生すると、吊り具10およびフレキシブルコンテナ1に対して無用な振動が作用して吊持搬送の妨げとなる。よって、吊り具10を反転させて保持し、接続部11の枢動を回避することで、フレキシブルコンテナ1の吊持搬送をより好適に実行できる。
【0147】
またベース部23に設けられている案内溝29の幅w2は、連結部15の直径L1より広い。一方、案内溝29の幅w2は、接続部11の幅L3より小さくなるように設定される。幅w2を幅L3より小さくすることにより、
図38に示すように、ベース部23の下方に移動している接続部11が振動などによって上方へ跳ね上がった場合であっても、接続部11が案内溝29を経由して収容孔22に入り込むことを防止できる。すなわち接続部11が振動などによって上方へ跳ね上がった場合であっても、接続部11はベース板23の下面34によって抑止される。吊り具10の接続部11がベース部23の下方に位置している状態において、接続部11をベース部23より上方へ移動させるためには、吊り具10を保持している保持具20を、少なくともx2方向の成分を含む方向へ移動させ、連結部15を案内溝29に沿って案内させることで接続部11をベース部23の側方へ枢動させる必要がある。よって、保持具20に保持されている吊り具10が開口部40を経由して保持具20の外部へと脱落することを確実に防止できる。すなわち上下に反転した状態となった吊り具10は、確実に保持具20に保持されることができる。
【0148】
また、吊り具10および保持具20は、搬送装置が備えるような動力発生装置を必要としない。そのため、吊り具10および保持具20からなる吊持搬送ユニット50を用いることにより、玉掛け作業を省略しつつフレキシブルコンテナ1を多段に積むように吊持搬送する工程を、電力、燃料、および動力発生装置を必要とすることなく実現できる。また、吊持搬送ユニット50の製造コストおよび運用コストを低減させることも可能になる。
【0149】
さらに、吊り具10を保持具20で保持することでフレキシブルコンテナ1をフォークリフト60に接続させる工程、および吊り具10から保持具20を解除することでフレキシブルコンテナ1とフォークリフト60との接続を解除させる工程は、いずれもフォークリフト60のフォーク部61を操作することで実行できる。すなわち搬送装置と吊荷とを接続する工程および当該接続を解除する工程は、玉掛け作業を例とする手動操作を必要としない。言い換えると、実施例1に係る吊持搬送方法では、搬送装置と吊荷とを接続する工程および当該接続を解除する工程を、機械による自動操作によって実行できる。そのため吊持搬送ユニット50を用いることにより、人間が立ち入ることが困難である場所において、吊荷を多段に積み上げるように吊持搬送させることが可能となる。人間が立ち入ることが困難である場所の例として、高所、高温または低温の場所、放射線が高い場所、および人体に有害なガスが存在している場所などが挙げられる。
【実施例2】
【0150】
次に、本発明の実施例2を説明する。なお、実施例1に係る吊持搬送ユニット50と同一構成については同一符号を付すに留め、異なる構成部分について詳述する。実施例2では
図40に示すように、搬送装置としてクレーン車70を用いるものとする。すなわち実施例2に係る吊持搬送ユニット50Aのうち、保持具20Aはクレーン車70に接続可能な構成となっている点において、フォークリフト60に接続可能な実施例1の保持具20と相違する。実施例2に係る吊持搬送ユニット50Aのうち、吊り具10の構成は実施例1と共通する。また実施例2では実施例1と同様に、吊荷としてフレキシブルコンテナ1を用いるものとする。
【0151】
図39(a)は実施例2に係る保持具20Aの正面図であり、
図39(b)は実施例2に係る保持具20Aの要部を示す縦断面図である。保持具20Aは、本体部21と、ベース部23と、接続ユニット25Aとを備えている。実施例2における本体部21およびベース部23の構成は実施例1と共通するので、説明を省略する。
【0152】
接続ユニット25Aは、クレーン車70に保持具20Aを接続させる。接続ユニット25Aは
図39(a)に示すように、クレーン用アダプタ89と、連結部材33とを備えている。クレーン用アダプタ89は全体として上下方向に延びる柱状部材であり、下端において連結部材33と接続されている。連結部材33は、本体部21およびベース部23と接続されている。クレーン用アダプタ89は、上端にシャックル90を備えている。クレーン車70が備えるフック71がシャックル90に係止することによって、保持具20Aとクレーン車70とを連結させる。保持具20Aとクレーン車70とが接続された状態は、
図40に示されている。
【0153】
実施例2に係る吊持搬送ユニット50Aを用いて、吊荷であるフレキシブルコンテナ1を搬送する一連の動作は、
図13に示す実施例1の一連の工程と同様である。すなわち、フォークリフト60の代わりにクレーン車70を搬送装置として吊荷を搬送するという点を除いて、実施例2の工程は実施例1と共通する。以下、実施例2に係る吊持搬送の工程について簡略に説明する。
【0154】
実施例2に係る吊持搬送の工程が開始されると、搬送装置であるクレーン車70に対して、保持具20Aを接続させる(ステップS1)。ステップS1では、保持具20Aのクレーン用アダプタ89に設けられているシャックル90に対して、クレーン車70のフック71を引っ掛けて固定する。フック71がシャックル90に係止されることにより、クレーン車70は接続ユニット25Aを介して保持具20Aの本体部21およびベース部23と接続される。
【0155】
クレーン車70が保持具20Aに接続されると、吊り具10をフレキシブルコンテナ1に接続する(ステップS2)。ステップS2の工程は、実施例2と実施例1において共通する。すなわち一例として
図18に示すようなヒバリ結びの要領で、吊り具10の接続部11に対して補助ロープ9を締結させる。補助ロープ9が締結されることにより、吊り具10はフレキシブルコンテナ1に接続される。
【0156】
吊り具10がフレキシブルコンテナ1に接続されると、吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方に配置させる(ステップS3)。ステップS3の工程は、実施例2と実施例1において共通する。すなわち
図19に示すように、フレキシブルコンテナ1のx2方向側の側面に吊り具10を垂下させる。
図19に示す側方配置状態において、吊り具10は接続部11の方が被保持部13より高い位置となる姿勢をとる。これらステップS1ないしS3の工程を行うことで、吊持搬送の準備段階(前段階)が完了する。
【0157】
吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方に配置させた後、吊り具10を保持具20Aで保持する(ステップS4)。運転者はクレーン車70の運転席Seに搭乗し、
図41に示すように、保持具20Aを保持しているフック71の高さを適宜調整させつつ、吊り具10の下方から保持具20Aを接近させる。そして符号Pkで示されるように、x1方向に僅かに移動させつつ保持具20Aを上昇させることにより、吊り具10の被保持部13を保持具20Aの収容孔22に収容させる。
【0158】
被保持部13が保持具20Aの収容孔22に収容される状態は、実施例1と同様である(
図21ないし
図24の各図を参照)。すなわち本体部21の開口部40を経由して、収容孔22のテーパ領域26に被保持部13を案内させる(
図21の各図)。そして連結部15を案内溝28に嵌入させ、案内溝28に沿って連結部15を下方へ案内させつつ(
図22の各図)、被保持部13を円柱領域27に沿って下方へ案内させて収容孔22の底部32に到達させる(
図23の各図)。
【0159】
被保持部13が底部32によって支持されている状態で、連結部15を案内溝29に沿ってベース部29のx1方向側の側面からベース部23の中央部へと案内させることにより、連結部15および接続部11は被保持部13を支点として枢動する。当該枢動によって吊り具10の姿勢は反転し、吊り具10は被保持部13の方が接続部11より高い位置となる姿勢をとる(
図24の各図)。
【0160】
吊り具10が反転して接続部11がベース部23の下方へ移動することにより、接続部11が浮き上がることはベース部23の下面34によって抑止される。すなわち吊り具10を反転させることによって、保持具20Aは吊り具10をより安定に保持できる。実施例2においてステップS4が完了した状態は、
図42に示されている。
【0161】
このように、側方配置状態にある吊り具10に保持具20Aを近づけ、被保持部13を本体部21で掬い上げるように保持具20Aを上方へ移動させ、収容孔22に被保持部13を収容する。被保持部13が収容孔22に収容させると、運転者はクレーン車70を操作して保持具20Aを吊り具10とともにフレキシブルコンテナ1の側方から上方へと移動させる。フレキシブルコンテナ1の上方へと移動させるべく保持具20Aを上昇させる過程においてステップS4の工程が実行され、被保持部13は収容孔22の底部32によって保持されるとともに吊り具10の姿勢が反転して脱落防止状態となる。すなわち保持具20Aを吊り具10の下方から上昇させるという単純な動作によって、保持具20Aは吊り具10を安定に保持できる。
【0162】
保持具20Aが吊り具10を保持して吊り具10の姿勢が反転すると、運転者はさらに保持具20Aを吊り具10とともにx1方向かつ上方向へと移動させ、吊り具10をフレキシブルコンテナ1の上方へ移動させて上方配置状態にする(ステップS5)。
【0163】
吊り具10が上方配置状態になると、フレキシブルコンテナ1を吊持して搬送する工程を行う(ステップS6)。吊り具10がフレキシブルコンテナ1の上方へ移動した状態で吊り具10をさらに上昇させることにより、吊りベルト7の各々は吊り具10によって引き上げられて自立姿勢となる。また、吊りベルト7の各々が引き上げられることで、フレキシブルコンテナ1は吊持されて床面Gから浮き上がる(
図40を参照)。運転者はクレーン車70を適宜操作して、搬送対象であるフレキシブルコンテナ1を所望の位置へと搬送して載置する。
【0164】
フレキシブルコンテナ1を所望の位置へ搬送した後、実施例1と同様に、吊り具10を上方配置状態から側方配置状態へと移行させる(ステップS7)。すなわち運転者は、クレーン車70をx2方向へ後退させつつ、フレキシブルコンテナ1の上面より高い位置にあるフック71を下降させる。クレーン車70の操作により、フレキシブルコンテナ1の上方に配置されていた吊り具10は、フレキシブルコンテナ1の側方へと移動する。吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方へ移動させることにより、補助ロープ9および吊りベルト7は、フレキシブルコンテナ1の上面部5に横臥される。そして吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方へ移動させることにより、吊り具10によってフレキシブルコンテナ1が吊持されている状態(吊持状態)が解除される。
【0165】
吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方へ移動させた後、吊り具10の保持を解除する工程が行われる(ステップS8)。すなわち運転者はクレーン車70を操作して、x2方向および下方向へ保持具20Aを移動させる。被保持部13が底部32および本体部21の内壁で支持されている状態で保持具20Aをx2方向に移動させることにより、接続部11をx1方向に引っ張る力が作用する。その結果、連結部15は案内溝29に沿ってx1方向に案内され、被保持部13を支点として、保持具20の下方から保持具20の側方へと連結部15および接続部11が枢動する。
【0166】
連結部15および接続部11が枢動した後、保持具20Aを下方向へ移動させることにより、吊り具10は案内溝28および収納孔22に沿って下方から上方へと案内される。このとき吊り具10の姿勢は再び反転し、接続部11の方が被保持部13より高い位置にある姿勢となる。そして吊り具10が上方へと案内されることにより、被保持部13は開口部40を経由して保持具20Aの外部へと離脱する。吊り具10が保持具20Aの外部へと離脱することにより、吊り具10を保持具20Aで保持している状態が解除される。吊り具10を保持具20Aで保持している状態が解除されることにより、ステップS8の工程は完了する。ステップS8までの工程が完了することにより、1つのフレキシブルコンテナ1を吊持して搬送する動作が完了する。
【0167】
このように、実施例2ではクレーン車70用の接続ユニット25Aを本体部21に連結させた保持具20Aを用いることで、クレーン車70を搬送装置として、実施例1と同様にフレキシブルコンテナ1を好適に吊持搬送できる。すなわちクレーン車70のフック71をフレキシブルコンテナ1の吊りベルト7または補助ロープ9へ直接接続させるのではなく、吊持搬送ユニット50Aを介して、クレーン車70とフレキシブルコンテナ1とを間接的に接続させる。
【0168】
すなわち、フック71に保持部20Aを接続させる工程と、フレキシブルコンテナ1の吊りベルト7または補助ロープ9に吊り具10を接続させる工程とを、準備工程として予め行っておく(ステップS1~S3)。そして保持部20Aで吊り具10を保持することにより、クレーン車70は吊持搬送ユニット50Aを介してフレキシブルコンテナ1を保持することとなる。保持部20Aで吊り具10を保持する工程は手動で行う必要がなく、搬送装置の操作によって実行できる。そのため、吊持搬送ユニット50Aを介して吊荷と搬送装置とを間接的に接続させる構成では、玉掛け作業に要する人員を省略できる。すなわち搬送装置の操作者のみによって、フレキシブルコンテナ1を吊持搬送することができる。
【0169】
保持具20Aは保持具20と同様に、収容孔22に被保持部13を収容しつつ、案内溝28および29によって連結部15を案内させる。案内溝28および29によって連結部15を案内させることで、吊り具10の姿勢は反転して接続部11が被保持部13より低い位置となる。姿勢を反転させることにより、接続部11に締結されている補助ロープ9が保持具20Aに絡まって吊持搬送の妨げになることを回避できる。また案内溝28および29によって連結部15を案内させて吊り具10の姿勢を反転させることで、ベース部23の案内溝29を挟んで、吊り具10は接続部11と被保持部13とが対向する体勢となる。
【0170】
案内溝29の幅w2は、連結部15の直径L1より大きい。一方で、案内溝29の幅w2は被保持部13の直径L2より小さく、案内溝29の幅w2は接続部11の幅L3よりも小さい。すなわち、振動などに起因して接続部11が浮き上がった場合であっても、当該浮き上がった接続部11は案内溝29を通ることはなくベース部23の下面34によって抑止される。そのため、吊り具10の姿勢を反転させた状態では、ベース部23の案内溝29を通って吊り具10が上方へ抜け落ちることを回避できる。従って、手動操作による保持動作を行うことなく、保持具20Aは吊り具10を安定して保持できる。よって、保持具20Aが吊り具10をより安定に保持した状態で、フレキシブルコンテナ1を吊持搬送できる。言い換えると、フレキシブルコンテナ1の姿勢をより安定させた状態で、フレキシブルコンテナ1を吊持搬送できる。
【実施例3】
【0171】
次に、本発明の実施例3を説明する。実施例3に係る吊持搬送ユニット50Bは、吊り具10と保持具20Bとによって構成される。実施例3に係る保持具20Bは、回転板93を備えているという点において、実施例2に係る保持具20Aと相違する。実施例3では実施例2と同様に、搬送装置としてクレーン車70を用いるものとする。
【0172】
図43は、実施例3に係る保持具20Bの正面図である。
図44は、実施例3に係る保持具20Bの平面図である。回転板93は
図43に示すように、保持具20Bの底面に配設される平板状の部材である。回転板93は、連結部材33の下面に接続配置されている。回転板93は
図44に示すように、平面視において本体部21より広い略半円状の板状部材である。そのため、保持具20Bを床面Gに載置する場合、回転板93は自立スタンドとして機能するので保持具20Bを安定に載置できる。
【0173】
回転板93は
図44に示すように、x2方向側の外周近傍に沿って、複数の貫通孔94が所定の間隔を空けて形成されている。貫通孔94の各々は、回転板93を上下方向に貫通している。少なくとも1つの貫通孔94には、介錯ロープ95が取り付けられている。貫通孔94を介して回転板93に締結されている介錯ロープ95を引っ張ることにより、介錯ロープ95が取り付けられている貫通孔94の位置に応じて、回転板93はz方向の軸周りに回転する。
【0174】
回転板93は連結部材33に固定されており、連結部材33は本体部21およびベース部23に固定されている。そのため回転板93がz方向の軸周りに回転することにより、本体部21およびベース部23もz方向の軸周りに回転する。すなわち回転板93がz方向の軸周りに回転することにより、保持具20Bは全体としてz方向の軸周りに回転する。保持具20Bが回転することにより、平面視において案内溝28が向く方向Dhが変化する。すなわち実施例3に係る保持具20Bは、側方配置状態となっている吊り具10の連結部15が延びる方向aに対応するように、案内溝28が向く方向Dhを調節できるように構成されている。
【0175】
実施例3では、2つの介錯ロープ95が回転板93に取り付けられている。回転板93の左側(
図44では下側)に配設されている貫通孔94に取り付けられている介錯ロープ95を介錯ロープ95aとする。そして回転板93の右側(
図44では上側)に配設されている貫通孔94に取り付けられている介錯ロープ95を介錯ロープ95bとして両者を区別する。介錯ロープ95の各々は、一端側が貫通孔94を介して回転板93に取り付けられており、他端側は搬送装置の運転者によって把持される。
図44などにおいて、介錯ロープ95の他端側は、図示を省略している。
【0176】
実施例3に係る吊持搬送ユニット50Bを用いて、吊荷であるフレキシブルコンテナ1を搬送する一連の動作は、実施例2の工程と共通する。但し実施例3ではステップS4において、吊り具10の連結部15が延びる方向aに対応するように、案内溝28が向く方向Dhを調節できる。ここで、実施例3に係る保持具20Bにおいて、回転板93を用いて案内溝28が向く方向Dhを調節する操作について説明する。
【0177】
図45は、ステップS4における吊持搬送ユニット50Bなどの平面図である。ステップS3において吊り具10をフレキシブルコンテナ1の側方に配置させた後、ステップS4において吊り具10を保持具20Bで保持する動作を行う。運転者はクレーン車70の運転席Seに搭乗し、保持具20Bを保持しているフック71の高さを適宜調整させつつ、吊り具10の下方から保持具20Bを接近させる(
図41を参照)。
【0178】
しかしながら
図45に示すように、保持具20Bにおいて案内溝28が向く方向Dhと、吊り具10において連結部15が延びる方向aとが正確に一致していない場合がある。言い換えると、案内溝28と連結部15とが正確に対向しておらず、方向Dhと方向aとがズレている場合がある。
【0179】
連結部15が延びる方向aと案内溝28が向く方向Dhとがズレている状態で被保持部13を収容孔22に収容しようとした場合、
図46に示すように、平面視において案内溝28と連結部15とが正確に重複しない。このような状態で保持具20Bを上昇させた場合、被保持部13は開口部40を経由して収容孔22に嵌入する一方で、連結部15は案内溝28に嵌入できずに本体部21の上面に干渉してしまう。その結果、連結部15を案内溝28に沿って下方に案内できないので、吊り具10を保持具20Bで保持することができない。
【0180】
そこで連結部15が延びる方向aと案内溝28が向く方向Dhとがズレている場合、介錯ロープ95を用いて回転板93を回転させ、案内溝28が向く方向Dhを調節する。すなわち
図47に示すように、図示しないクレーン車70の運転者は、介錯ロープ95の各々を適宜引っ張ることによって、回転板93をz方向の軸周りに回転させる。
図47において符号Puで示すように、介錯ロープ95aを引っ張る場合、回転板93は左回りに(反時計回りに)回転する(符号Lfを参照)。なお介錯ロープ95bを引っ張る場合、回転板93は右回りに(時計回りに)回転する。介錯ロープ95の各々を引っ張る力を調節することにより、回転板93が回転する角度を調節できる。
【0181】
回転板93がz方向の軸周りに回転することにより、回転板93に連結されている本体部21およびベース部23もz方向の軸周りに回転する。その結果、本体部21のx1方向側の側面に設けられている案内溝28が向く方向Dhもz方向の軸周りに回転する。そして運転者は介錯ロープ95の各々を適宜引っ張って回転板93を回転させることにより、
図47に示すように、案内溝28が向く方向Dhが方向aに精度良く一致するように調整される。
【0182】
案内溝28の方向Dhと連結部15の方向aとを一致させることにより、
図47に示すように、被保持部13を収容孔22に収容させつつ、連結部15を案内溝28へと嵌入させることができる。連結部15を案内溝28へと嵌入させた後、運転者はクレーン車70を操作して保持具20Bを上昇させる。保持具20Bを上昇させることにより、案内溝28に沿って連結部15を下方へ案内させつつ(
図22の各図)、被保持部13を円柱領域27に沿って下方へ案内させて収容孔22の底部32に到達させることができる(
図23の各図)。実施例3における他の工程は、実施例2と共通するので、説明を省略する。
【0183】
このように、実施例3では回転板93を保持具20Bに設けることにより、平面視において案内溝28が向く方向Dhを任意に変更できる。そのため、案内溝28の方向Dhと連結部15の方向aとが一致しないことに起因して、連結部15を案内溝28に沿って案内させる操作が妨げられることを回避できる。なお、実施例3に係る回転板93は、実施例1に係る保持具20に適用してもよい。すなわち保持具20の底部に回転板93を備え、保持具20をz方向の軸周りに回転可能としてもよい。
【0184】
<他の実施形態>
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。例として、本発明は下記のように変形実施することができる。
【0185】
(1)各実施例において、フレキシブルコンテナ1は2つの吊りベルト7を備える構成を例示したがこれに限られない。一例として、四角筒状である胴体部3の各々の側面に、合わせて4つの吊りベルト7を備える構成であってもよい。また他の例として、胴体部3の各々の角部に、合わせて4つの吊りベルト7を備える構成であってもよい。吊りベルト7の数および位置は、フレキシブルコンテナ1を安定に吊持できるように適宜変更できる。このとき、吊り具10の接続部11は全ての吊りベルト7と接続されている構成に限ることはなく、フレキシブルコンテナ1を安定な姿勢で吊持できるように、接続部11が複数の吊りベルト7と接続されていればよい。一例として、対向配置される一対の吊りベルト7の各々が、接続部11と接続されている場合、吊り具10をフレキシブルコンテナ1の上方へ移動させて引き上げることで、吊り具10はフレキシブルコンテナ1を安定な姿勢で吊持できる。
【0186】
(2)各実施例において、搬送装置としてフォークリフト60およびクレーン車70を例示したが、これに限られない。搬送装置は、保持具20と連結可能であり、保持具20を三次元的に移動させることが可能な装置であれば適宜利用してよい。一例として、可動アームを備える重機または搬送ロボットなどを搬送装置として用いることができる。特に搬送装置として可動アームを備える無人機を用いた場合、吊持搬送ユニット50を用いることで、フレキシブルコンテナ1を多段に積層可能な吊持搬送過程を、作業員を要することなく全自動で実現できる。
【0187】
(3)各実施例において、被保持部13の形状は球状に限ることはなく、複数方向から視認した形状が類似するような立体形状であれば適宜の形状としてよい。複数方向から視認した形状が類似することにより、吊り具10が側方配置状態である場合、接続部11における貫通孔19の向きに依らず、保持具20を多方向から近づけて被保持部13を保持できる(
図36を参照)。被保持部13の好ましい形状の例として、立方体、直方体、正八面体、多角柱、円柱などが挙げられる。
【0188】
(4)各実施例において、フレキシブルコンテナ1の形状は四角筒状に限ることはなく、円筒状を例とする適宜の形状としてよい。
【0189】
(5)各実施例において、吊荷としてフレキシブルコンテナ1を用いる構成を例示したが、これに限られない。吊荷の他の例として、横臥状態と起立状態とを切り換え可能な把手部を有する蛇籠またはレジ用カゴを例とする、バッグ状の被搬送物などが挙げられる。
【0190】
(6)各実施例において、吊り具10の接続部11に対して、吊りベルト7に連環された補助ロープ9を締結させる構成を例示したが、これに限られない。接続部11に対して、吊りベルト7の各々を直接締結させてもよい。吊りベルト7の各々の長さが、吊り具10を吊荷の側方に配置できる程度に十分な長さである場合、接続部11に対して吊りベルト7の各々を直接締結できる。
【0191】
(7)各実施例において、保持具20の本体部21に配設される案内溝28は、上下方向にわたって幅w1が一定である構成を例示しているが、これに限られない。すなわち
図48に示すように、案内溝28は本体部21の上端側から下端側に向かって幅w1が狭くなるように構成されてもよい。当該変形例に係る保持具20Dにおいて、y方向における案内溝28の幅w1は、上端部において最大となっている一方、下端部において最小となっている。y方向における案内溝28の幅w1の最大値は、被保持部13の直径L2より小さく、かつ、y方向における案内溝28の幅w1の最小値は、連結部15の直径L1より大きくなるように、案内溝28が構成される。またy方向における案内溝28の幅w1の最小値は、y方向における案内溝29の幅w2と等しいことが好ましい。
【0192】
案内溝28の幅w1を上端側において最大とすることにより、保持具20で被保持部13を掬い上げて保持するステップS4において、連結部15をより確実に案内溝28へと嵌入させることができる。すなわち被保持部13を収容孔22に収容する際に、連結部15または接続部11が本体部21の上面に干渉して吊り具10を下方に案内することが妨げられる事態を、より確実に回避できる。そしてy方向における案内溝28の幅w1の最大値を被保持部13の直径L2より小さくすることにより、被保持部13が案内溝28を経由して保持具20の外部に離脱することを確実に防止できる。
【0193】
y方向における案内溝28の幅w1の最小値を連結部15の直径L1より大きくすることにより、連結部15は確実に案内溝28の上端から下端にわたって嵌入されることができる。すなわち連結部15は案内溝28によって確実に案内されるので、被保持部13の離脱を防止しつつ、吊り具10を本体部21の上方から下方へと案内させることができる。
【0194】
y方向における案内溝28の幅w1の最小値を案内溝29の幅w2と等しくすることにより、案内溝28の下端と案内溝29との間に段差が発生することを回避できる。すなわち案内溝28の下端に案内された連結部15が当該段差に干渉して案内溝28から案内溝29への移動が妨げられる事態を防止できる。よって、吊り具10を本体部21の下方に案内させて逆立姿勢に反転させる動作をよりスムーズに実行できる。
【0195】
(7)各実施例において、被保持部13は
図2に示すような球体の部材が用いられる構成を例として説明したがこれに限られない。被保持部13の形状としては、球状体であることが好ましい。球状体は、球体に類似した形状を有する立体であるものとする。球状体の例として、球体の他に、
図49に示すような、球体の一部と錐体とを組み合わせた形状を有する物体が挙げられる。
【0196】
図49に示す変形例において、被保持部13は、球体の一部に相当する形状(球体の一部が欠けた形状)を有する第1部材13pと、錐体に相当する形状を有する第2部材13sとが組み合わされた構成を備えている。なお、第2部材13sは、先端13tが丸みを帯びた形状であってもよい。なお球状体の他の例として、球体の一部と筒状体とを組み合わせた形状を有する物体、球体の一部と錐台とを組み合わせた形状を有する物体などが挙げられる。
【符号の説明】
【0197】
1 … フレキシブルコンテナ
3 … 胴体部
5 … 上面部
7 … 吊りベルト
9 … 補助ロープ
10 … 吊り具
11 … 接続部
13 … 被保持部
15 … 連結部
17 … 本体部
19 … 貫通孔
20 … 保持具
21 … 本体部
22 … 収容孔
23 … ベース部
25 … 接続ユニット
26 … テーパ領域
27 … 円柱領域
28 … 案内溝
29 … 案内溝
30 … 上面
32 … 底面
33 … 連結部材
34 … 下面
35 … 差込口
40 … 開口部
41 … 傾斜面
60 … フォークリフト
61 … フォーク部
70 … クレーン車
71 … フック
93 … 回転板
94 … 貫通孔
95 … 介錯ロープ
【要約】
【課題】被搬送物を多段に積層可能に保管するとともに、被搬送物の搬送効率を向上できる吊り具、保持具、および吊持搬送ユニットを提供する。
【解決手段】
フレキシブルコンテナ1の吊持に用いる吊り具10は、フレキシブルコンテナ1の側方D1とフレキシブルコンテナ1の上方D2との間で移動可能に構成される。吊り具10が側方D1にある状態では、介助者を要することなくフォークリフト60などが吊り具10の被保持部13を保持できる。そのため、玉掛け作業に要する人員を削減できる。また、吊り具10が側方D1にある状態では、フレキシブルコンテナ1の上面部5の平坦性を確保できるので、フレキシブルコンテナ1を多段に積み上げることができる。その結果、フレキシブルコンテナ1を多段に積層して保管する作業を容易かつ安全に実施できる。
【選択図】
図34