(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】免疫療法のためのバイオマーカーとしてのプロガストリン
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20240509BHJP
G01N 33/577 20060101ALI20240509BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240509BHJP
C07K 16/26 20060101ALI20240509BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240509BHJP
C12N 5/16 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
G01N33/574 A
G01N33/577 B
G01N33/53 D
C07K16/26 ZNA
C12P21/08
C12N5/16
(21)【出願番号】P 2020544818
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2019054878
(87)【国際公開番号】W WO2019166499
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-15
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】CNCM I-5158
(73)【特許権者】
【識別番号】519349702
【氏名又は名称】イー、シー、エス、プロガストリン、エス、エー
【氏名又は名称原語表記】ECS-PROGASTRIN SA
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク、ジュベール
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/114976(WO,A1)
【文献】大道和佳子 ほか,LCNECに対しニボルマブが奏功した2症例の検討,癌と化学療法,2017年01月,Vol.44, No.1,pp.59-62
【文献】HEMANDEZ, C. et al.,Progastrin Represses the Alternative Activation of Human Macrophages and Modulates Their Influence on Colon Cancer Epithelial Cells,PLOS ONE,2014年06月05日,Vol.9, No.6, e98458,pp.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C07K 16/26
C12P 21/08
C12N 5/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しやすい癌患者を選択するためのイン・ビトロ方法であって、前記方法が、
a)患者由来の生体サンプルをプロガストリン結合抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させる工程、ここで、前記生体サンプルは血液、血清および血漿から選択される、および
b)前記生体サンプルにおいて前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合フラグメントとプロガストリンとの結合を検出する工程、ここで、前記生体サンプルに
おける3pM
を超えるプロガストリン濃度が前記患者における免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しない癌の存在を示す、
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記方法が、
c)参照サンプルにおいてプロガストリン参照濃度を決定する工程、
d)前記生体サンプルにおけるプロガストリン濃度を前記プロガストリン参照濃度と比較する工程、および
e)工程d)の比較から、前記生体サンプルにおけるプロガストリン濃度が前記プロガストリン参照濃度より低い場合に、前記患者が免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答すると決定する工程
をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロガストリン結合抗体が、
配列番号2で表されるプロガストリン領域のエピトープに結合可能なモノクローナル抗体および
配列番号3で表されるプロガストリン領域のエピトープに結合可能なモノクローナル抗体から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロガストリン結合抗体が、
-それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号25、26および27のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号28、29および30のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号31、32および33のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号34、35および36のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号37、38および39のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、ならびに
-2016年12月27日に、CNCM、パスツール研究所、25-28リュ・ドゥ・ドクトゥール・ルー、75724パリCEDEX15、フランスに参照I-5158として寄託されたハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程a)が、
(i)前記生体サンプルを、プロガストリンの第1の部分に結合する第1のプロガストリン結合抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させること、および
(ii)前記生体サンプルを、プロガストリンの第2の部分に結合する第2のプロガストリン結合抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させること
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のプロガストリン結合抗体またはその抗原結合フラグメントがプロガストリンのC末端内のエピトープと結合する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プロガストリン結合抗体が、2016年12月27日に、CNCM、パスツール研究所、25-28リュ・ドゥ・ドクトゥール・ルー、75724パリCEDEX15、フランスに参照I-5158として寄託されたハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体である、請求項5または6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のプロガストリン結合抗体またはその抗原結合フラグメントがプロガストリンのN末端内のエピトープに結合する、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のプロガストリン結合抗体またはその抗原結合フラグメントが、プロガストリンのN末端内のエピトープに結合するポリクローナル抗体、または以下の3つのCDR、それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、以下の3つのCDR、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体である、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プロガストリンのレベルが工程a)においてELISAで決定される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記生体サンプルが、プロガストリンの第1の部分に結合する第1のプロガストリン結合抗体またはその抗原結合フラグメント、およびプロガストリンの第2の部分に結合する第2のプロガストリン結合抗体またはその抗原結合フラグメントと接触される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記癌が食道癌、肝臓癌、肝細胞癌、消化管癌および消化管間質癌を含む胃癌、膵臓癌、ホジキンリンパ腫、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、肝細胞腫、肝癌、肛門癌、非黒色腫皮膚癌、皮膚黒色腫、子宮頸癌、子宮癌、子宮内膜癌、卵巣癌、または乳癌である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
癌の治療に使用するための免疫チェックポイント阻害剤であって、前記使用が、
a)請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を用いて免疫チェックポイント阻害剤に応答する患者を選択する
前工程を含んでなる、免疫チェックポイント阻害剤。
【請求項14】
癌の治療に使用するための免疫チェックポイント阻害剤であって、前記使用が、
a)患者由来の生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させる工程、ここで、前記生体サンプルは血液、血清および血漿から選択される、
b)前記生体サンプルにおいて前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合フラグメントとプロガストリンとの結合を検出する工程、ここで、前記生体サンプルに
おける3pM
を超えるプロガストリン濃度が前記患者における免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しない癌の存在を示す、および
c)免疫チェックポイント阻害剤治療を工程b)の結果に応じて適合させる工程を含んでなる、免疫チェックポイント阻害剤。
【請求項15】
患者において免疫チェックポイント阻害剤による癌治療の予後を判定するためのイン・ビトロ方法であって、
a)前記患者由来の生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させる工程、ここで、前記生体サンプルは血液、血清および血漿から選択される、および
b)前記生体サンプルにおいて前記プロガストリン結合抗体またはその抗原結合フラグメントとプロガストリンとの結合を検出する工程、ここで、前記生体サンプルに
おける3pM
を超えるプロガストリン濃度が不良な予後を示す、
を含んでなる、方法。
【請求項16】
前記方法が、
c)参照サンプルにおいてプロガストリン参照濃度を決定する工程、
d)前記生体サンプルのプロガストリン濃度と前記プロガストリン参照濃度を比較する工程、および
e)工程d)の比較から、前記生体サンプルにおけるプロガストリン濃度が前記プロガストリン参照濃度より高い場合に、前記免疫チェックポイント阻害剤による癌治療の予後が不良であると判定する工程
をさらに含んでなる、請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
緒論
免疫療法は、癌療法の分野のゲームチェンジャーとなった。免疫チェックポイントに基づく療法の開発は驚異的な速度で進んでいる。免疫炎症性応答が継続的に活性化されないようにするため、ひと度、腫瘍抗原が応答を刺激すると、複数の対照または「チェックポイント」が配備または活性化される。これらのチェックポイントは、ほとんどの場合、周囲の腫瘍微小環境中の細胞上のリガンドへのT細胞受容体の結合によって表され、免疫シナプスを形成し、次にこれがT細胞の機能を調節する。
【0002】
進行癌の治療に免疫療法が有望であるが、いくつかの難題が残っている。一般に、療法に対して耐久力のある長期的応答を達成するのは患者の一部だけである。さらに、腫瘍応答の測定は、応答している患者が最初に腫瘍サイズの増大を受け、またはX線画像で目に見えて新たな病変を生じるという事実により複雑となる。
【0003】
癌免疫療法において特に難しいのは、そのような治療の候補を選択し、疾患管理判断を導くために使用可能な、機序に基づくバイオマーカーを同定することであった(Topalian et al., N Engl J Med, 366(26): 2443-54 (2012))。従って、癌発達のあらゆるステージで免疫療法の有効性に実行可能な洞察が得られる、標準化および検証されたバイオマーカーが切望される。利用可能な療法から利益を得ることのできる患者を特定する助けとなることに加え、バイオマーカーは、治療応答を監視するためにも有用であり得る。これらの指標は、治療の作用機序に光を当てる可能性もあり、このような作用機序は、治療アプローチの最適化および合理的併用療法の規定に重要な洞察を与えるであろう。しかしながら、不均質性、可塑性、および多様性などの悪性腫瘍の固有の特性は、バイオマーカーの開発に難題をもたらす。
【0004】
遺伝子の突然変異は悪性腫瘍のホールマークであり、絶え間ない増殖および転移、または体内拡散などの、癌の生命を脅かす特徴の大多数に関与している。これらの突然変異のいくつかは免疫チェックポイント阻害剤に対する応答に関連している。腫瘍遺伝子変異量(tumour mutational burden)(TMB)と呼ばれる、腫瘍が蓄積している突然変異の数は、それ自体がバイオマーカーである。最近、免疫療法に対する応答は消化管微生物叢の組成によって決まることが示された。これらの特徴は、免疫療法の転帰を予測するためのバイオマーカーを設計するために使用されており、ほとんどは遺伝学的なものである(Yan et al., Front Pharmacol. 9: 1050 2018)。しかしながら、このようなバイオマーカーの使用は次世代シーケンシングを必要とし、臨床検査室で日常的に使用することは困難であり得る。従って、免疫療法に対する患者の応答を予測するために容易かつ信頼をもって使用できるバイオマーカーの必要がなおある。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、癌患者の体液中のプロガストリンを含む特定のバイオマーカーのレベルが免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答する患者の負の予測因子となるという発見に関する。
【0006】
よって、第1の態様において、免疫チェックポイント阻害剤応答表現型または不応答表現型を有する癌患者を選択するための方法が本明細書で提供される。この方法は、プロガストリン結合分子と前記患者の生体サンプルとの結合を検出することを含んでなり、前記結合は、その患者が免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しない、従って、免疫チェックポイント阻害剤不応答表現型を有することを示す。
【0007】
本開示の別の態様において、患者において免疫チェックポイント阻害剤による治療に感受性がない癌のイン・ビトロ(in vitro)診断のための方法が提供される。言い換えれば、前記癌は、免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しない。この方法によれば、プロガストリン分子と前記患者の生体サンプルとの結合は、その癌が前記治療に応答しないことを示す。
【0008】
本明細書で提供される別の方法は、患者において免疫チェックポイント阻害剤による治療に感受性のない転移癌のイン・ビトロ診断に関する。言い換えれば、前記転移癌は、免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しない。この方法によれば、プロガストリン分子と前記患者の生体サンプルとの結合は、その転移癌が前記治療に応答しないことを示す。
【0009】
別の態様において、本発明は、患者において癌免疫チェックポイント阻害剤による治療のイン・ビトロ予後判定の方法に関する。この方法は、プロガストリン結合分子と前記患者の生体サンプルとの結合を検出する工程を含んでなり、前記結合は不良な予後を示す。
【0010】
これらの方法の好ましい実施形態では、前記サンプルにおいてプロガストリンレベルが測定される。前記生体サンプルにおける少なくとも3pM、少なくとも5pM、少なくとも10pM、少なくとも20pM、少なくとも30pMのプロガストリン濃度は、免疫チェックポイント阻害剤による治療が有意な応答をもたらさないことを示す。
【0011】
別の態様は、免疫チェックポイント阻害剤で癌を治療する方法に関する。別の態様では、免疫チェックポイント阻害剤による癌の治療を計画する方法も提供される。前記方法はどちらも、上記の方法のいずれかにより、免疫チェックポイント阻害剤に応答する患者を選択する前工程を含んでなる。
【0012】
本開示はまた、患者において免疫チェックポイント阻害剤による癌の治療を適合させる方法も提供する。この方法もまた、上記の方法のいずれかにより、患者の免疫チェックポイント阻害剤応答表現型または不応答表現型をアッセイする前工程を含んでなる。前記の免疫チェックポイント阻害剤治療の適合は、患者の表現型が不応答であれば、前記治療の軽減または抑制からなり、あるいはまた前記表現型が応答であれば、前記治療の継続からなり得る。
【0013】
本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料は総て本発明の実施または試験において使用可能であるが、好適な方法および材料が本明細書に記載される。本発明の実施は、そうではないこが示されない限り、従来技術またはタンパク質化学、分子ウイルス学、微生物学、組換えDNA技術、および薬理学を使用し、これらは当技術分野の技術の範囲内ある。このような技術は文献に詳しく説明されている(例えば、Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology, Current Protocols; 第5版, 2002; Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第17版, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985; およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press; 第3版, 2001参照)。本明細書に記載の分子および細胞生物学、タンパク質生化学、酵素学および医薬品化学・薬化学に関して使用される名称および実験手法および技術は、当技術分野で周知かつおよび慣用されているものである。本明細書に記載されている特許出願、特許、および他の参照文献は総て、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。さらに、材料、方法、および例は例示にすぎず、特に断りのない限り、限定を意図するものではない。
【0014】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】免疫療法で処置した黒色腫患者の全生存期間。PGレベルは処置前に測定した。死亡した患者のみが試験に含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、本明細書に示される詳細な説明および添付の図面からより詳細に理解されるが、これらは例示として示されるにすぎず、意図される本発明の範囲を限定するものではない。
【0017】
定義
具体的に定義されない限り、本明細書で使用される総ての技術用語および科学用語は、化学、生化学、細胞生物学、分子生物学、および医科学の熟練者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0018】
用語「約」または「およそ」とは、当業者に知られている所与の値または範囲に関する通常の誤差範囲を指す。それは通常、所与の値または範囲の20%以内、例えば、10%以内、または5%以内(または1%以下)を意味する。
【0019】
本明細書で使用する場合、「投与する」または「投与」は、体外に存在する場合の物質(例えば、本明細書で提供される抗プロガストリン抗体)を、粘膜、皮内、静脈内、筋肉内送達および/または本明細書に記載されるもしくは当技術分野で公知の物理的送達の他のいずれかの方法によるなど、患者に注射またはそうでなければ物理的に送達する行為を指す。疾患またはその症状が治療される場合には、物質の投与は一般に、疾患またはその症状の発症後に行う。疾患またはその症状が予防される場合には、物質の投与は一般に疾患またはその症状の発症前に行う。
【0020】
用語「抗体」および「免疫グロブリン」または「Ig」は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、本明細書では最も広義で使用され、具体的には、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEなどの任意のアイソタイプのモノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、およびフラグメントが所望の生物学的機能を保持する限り抗体フラグメントを包含する。これらの用語は、特定の分子抗原に結合能があり、ジスルフィド結合により相互接続された2つの同じポリペプチド鎖対から構成され、各対が1つの重鎖(約50~70kDa)と1つの軽鎖(約25kDa)を有し、各鎖の各アミノ末端部分が約100~約130以上のアミノ酸の可変領域を含み、各鎖の各カルボキシ末端部分が定常領域を含む免疫グロブリン種のポリペプチド内にB細胞のポリペプチド産物を含むことが意図される(Borrebaeck (編) (1995) Antibody Engineering, Second Ed., Oxford University Press.; Kuby (1997) Immunology, 第3版, W.H. Freeman and Company, New York参照)。各重鎖および軽鎖の各可変領域は、超可変領域としても知られる3つの相補性決定領域(CDR)と可変ドメインのより保存性の高い部分である4つのフレームワーク(FR)から構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序で構成されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、宿主組織または免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。いくつかの実施形態では、特定の分子抗原に本明細書で提供される抗体が結合することができ、標的プロガストリンポリペプチド、フラグメントまたはエピトープを含む。特定の抗原と反応性のある抗体は、ファージもしくは類似のベクター中の組換え抗体ライブラリーの選択などの組換え法により、または動物を抗原もしくは抗原コード核酸で免疫することにより生成することができる。
【0021】
抗体にはまた、限定されるものではないが、合成抗体、モノクローナル抗体、組換え生産抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ科抗体、キメラ抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および上記のいずれかの機能的フラグメントが含まれ、前記機能的フラグメントは、そのフラグメントが由来する抗体の生物学的機能の一部または総てを保持する抗体重鎖または軽鎖ポリペプチドの部分を指す。本明細書で提供される抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)、または任意のサブクラス(例えば、IgG2aおよびIgG2b)の免疫グロブリン分子であり得る。
【0022】
用語「抗プロガストリン抗体」、「プロガストリンに結合する抗体」、「プロガストリンエピトープに結合する抗体」、および類似の用語は本明細書において互換的に使用され、プロガストリン抗原またはエピトープなどのプロガストリンポリペプチドに結合する抗体を指す。このような抗体には、キメラ抗体およびヒト化抗体を含め、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が含まれる。プロガストリン抗原に結合する抗体は、関連抗原と交差反応し得る。いくつかの実施形態では、プロガストリンに結合する抗体は、例えば、ガストリン遺伝子に由来する他のペプチドまたはポリペプチドなどの他の抗原と交差反応しない。プロガストリンに結合する抗体は、例えば、イムノアッセイ、BIAcore、または当業者に公知の他の技術によって同定することができる。抗体はプロガストリンに結合し、例えば、それがラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの実験技術を用いて判定した場合にいずれかの交差反応性抗原よりも高い親和性でプロガストリンに結合する場合、例えば、プロガストリンと特異的に結合する抗体である。一般に、特異的または選択的反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、バックグラウンドの10倍を超える場合もある。抗体の特異性に関する考察としては、例えば、Paul編, 1989, Fundamental Immunology Second Edition, Raven Press, New York at pages 332-336を参照。いくつかの実施形態では、対象とする抗原と結合する抗体は、抗体がその抗原を発現する細胞または組織の標的化において診断薬および/または治療薬として有用となるように十分な親和性で抗原と結合し、かつ、他のタンパク質と有意に交差反応しないものである。このような実施形態において、抗体の「非標的」タンパク質への結合の程度は、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析または放射性免疫沈降(RIPA)で判定した場合に、その特定の標的タンパク質への抗体の結合の約10%未満である。標的分子への抗体の結合に関して、「特異的結合」または特定のポリペプチドもしくは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「と特異的に結合する」または「に特異的である」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般に結合活性を持たない類似の構造の分子である対照分子の結合に比べて分子の結合を判定することにより測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似する対照分子、例えば、過剰量の非標識標的との競合により判定することができる。この場合、標識された標的のプローブへの結合が過剰量の非標識標的により競合的に阻害されれば、特異的結合が示される。「特異的結合」または特定のポリペプチドもしくは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「と特異的に結合する」または「に特異的である」という用語は、本明細書で使用する場合、例えば、標的に対するKDが少なくとも約10-4M、あるいは少なくとも約10-5M、あるいは少なくとも約10-6M、あるいは少なくとも約10-7M、あるいは少なくとも約10-8M、あるいは少なくとも約10-9M、あるいは少なくとも約10-10M、あるいは少なくとも約10-11M、あるいは少なくとも約10-12Mであるか、またはそれを超える分子により表すことができる。いくつかの実施形態では、「特異的結合」という用語は、分子が他のいずれのポリペプチドまたはポリペプチドエピトープとも実質的に結合せずに特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する場合の結合を指す。いくつかの実施形態では、プロガストリンに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、または≦0.1nMの解離定数(KD)を有する。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「抗原」は、抗体が選択的に結合し得る所定の抗原を指す。標的抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテンまたは他の天然もしくは合成化合物であり得る。いくつかの実施形態では、標的抗原は、例えば、プロガストリンポリペプチドを含むポリペプチドである。
【0024】
用語「抗原結合フラグメント」、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」および類似の用語は、抗原と相互作用し、結合剤にその抗原に対するその特異性および親和性を付与するアミノ酸残基(例えば、相補性決定領域(CDR))を含んでなる抗体の部分を指す。抗体の「抗原結合フラグメント」という表現により、前記抗体の標的(一般に抗原とも呼ばれる)、一般に同じエピトープに結合する能力を保持し、抗体のアミノ酸配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸残基、少なくとも10個の連続するアミノ酸残基、少なくとも15個の連続するアミノ酸残基、少なくとも20個の連続するアミノ酸残基、少なくとも25個の連続するアミノ酸残基、少なくとも40個の連続するアミノ酸残基、少なくとも50個の連続するアミノ酸残基、少なくとも60個の連続するアミノ酸残基、少なくとも70個の連続するアミノ酸残基、少なくとも80個の連続するアミノ酸残基、少なくとも90個の連続するアミノ酸残基、少なくとも100個の連続するアミノ酸残基、少なくとも125個の連続するアミノ酸残基、少なくとも150個の連続するアミノ酸残基、少なくとも175個の連続するアミノ酸残基、または少なくとも200個の連続するアミノ酸残基のアミノ酸配列を含んでなるいずれのペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質も指すことを意図する。特定の実施形態では、前記抗原結合フラグメントは、それが由来する抗体の少なくとも1つのCDRを含んでなる。いっそう好ましい実施形態では、前記抗原結合フラグメントは、それが由来する抗体の2、3、4または5つのCDR、より好ましくは6つのCDRを含んでなる。
【0025】
「抗原結合フラグメント」は、限定されるものではないが、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv、scFv(scは一本鎖を表す)、Bis-scFv、scFv-Fcフラグメント、Fab2、Fab3、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、およびナノボディ、ならびにXTEN(伸長組換えポリペプチド)またはPASモチーフなどの変性ペプチドとの融合タンパク質、ならびにポリ(アルキレン)グリコール、例えば、ポリ(エチレン)グリコール(「ペグ化」)(Fv-PEG、scFv-PEG、Fab-PEG、F(ab’)2-PEGまたはFab’-PEGと呼ばれるペグ化フラグメント)(「PEG」はポリ(エチレン)グリコールを表す)の付加などの化学修飾によるか、またはリポソーム中への組み込みによって半減期が延長されるいずれかのフラグメント(前記フラグメントは、本発明による抗体の特徴的なCDRのうち少なくとも1つを有する)からなる群において選択され得る。好ましくは、前記「抗原結合フラグメント」は、それらが由来する抗体の可変重鎖または軽鎖の部分配列から構成されるか、またはそれを含んでなり、前記部分配列は、それが由来する抗体と同じ結合特異性とそれが由来する抗体の十分な親和性、標的に対する親和性の、好ましくは少なくとも1/100、より好ましい様式では少なくとも1/10に相当する親和性を保持するに十分なものである。このような抗体フラグメントは、例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1989); Myers (編), Molec. Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference, New York: VCH Publisher, Inc.; Huston et al., Cell Biophysics, 22:189-224 (1993); Pluckthun and Skerra, Meth. Enzymol., 178:497-515 (1989)およびDay, E.D., Advanced Immunochemistry, 第2版, Wiley-Liss, Inc., New York, NY (1990)に記載されているのを見出すことができる。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「結合する」または「結合すること」は、生理学的条件下で比較的安定である複合体を形成するような分子間の相互作用を指す。相互作用は、例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、および/またはファンデルワールス相互作用を含む非共有結合的相互作用であり得る。複合体は、共有結合または非共有結合、相互作用または力によって一緒になっている2つ以上の分子の結合も含み得る。抗体上の単一の抗原結合部位とプロガストリンなどの標的分子の単一のエピトープの間の全非共有結合的相互作用の強度が、エピトープに対する抗体または機能的フラグメントの親和性である。抗体の一価抗原に対する会合(k1)と解離(k-1)の比(k1/k-1)が、親和性の指標となる会合定数Kである。Kの値は、抗体および抗原の種々の複合体によって異なり、k1とk-1の両方に依存する。本明細書で提供される抗体の会合定数Kは、本明細書で提供されるいずれかの方法または当業者に周知の他のいずれかの方法を用いて決定することができる。1つの結合部位における親和性は、抗体と抗原の間の相互作用の真の強度をいつも表しているわけではない。多価プロガストリンなどの複数の反復抗原決定基を含有する複合抗原が複数の結合部位を含有する抗体と接触すれば、一部位での抗体と抗原の相互作用は、第2の部位における反応の確率を引き上げることになる。多価抗体と抗原の間でのこのような多重の相互作用の強度は、アビディティと呼ばれる。抗体のアビディティは、その個々の結合部位の親和性よりも、その結合能のより良い指標となり得る。例えば、高いアビディティは、5量体IgM抗体に見られる場合がある低い親和性を補うことができ、IgM抗体はIgGよりも低い親和性を有し得るが、その多価性ゆえにIgMのアビディティは高く、抗原と有効に結合することを可能とする。2つの分子が結合するかどうかを判定するための方法は当技術分野で周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などが含まれる。特定の実施形態では、前記抗体、またはその抗原結合フラグメントは、BSAまたはカゼインなどの非特異的分子への結合に関するその親和性の少なくとも2倍の親和性でプロガストリンに結合する。さらに詳しい実施形態では、前記抗体、またはその抗原結合フラグメントは、プロガストリンのみに結合する。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「生体サンプル」または「サンプル」は、患者または対象などの生体供給源から得られたサンプルを指す。「生体サンプル」は、本明細書で使用する場合、特に、生物全体またはその組織、細胞もしくは成分部分のサブセット(例えば、動脈、静脈および毛細血管を含む血管、限定されるものではないが、血液、血清、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、臍帯血、尿、膣液および精液を含む体液)を指す。「生体サンプル」は、さらに、生物全体あるいはその組織、細胞もしくは成分部分、またはその画分もしくは部分のサブセットから調製されるホモジネート、溶解液または抽出液も指す。最後に、「生体サンプル」は、生物体が増殖された栄養素培養液またはゲルなどの培地を指し、タンパク質または核酸分子などの細胞成分を含有する。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「バイオマーカー」は、生物学的状態の指標として使用される生化学的特徴を包含することが意図され、遺伝子(およびそのような遺伝子のヌクレオチド配列)、mRNA(およびそのようなmRNAのヌクレオチド配列)およびタンパク質(およびそのようなタンパク質のアミノ酸配列)およびタンパク質の翻訳後修飾形態(すなわち、リン酸化形態および非リン酸化形態)が含まれる。バイオマーカーは、特に、疾患もしくは病態を診断するため、またはその進行を評価するために使用することができる物質を指し得、あるいは疾患または病態の治療効果が意味される。バイオマーカーは、例えば、ある個体における癌または別の疾患の存在に関連する核酸、タンパク質、または抗体の存在であり得る。「バイオマーカー発現パターン」は、標準または対照との比較など、対象における1以上のバイオマーカーの発現の定量的または定性的概要を指すことが意図される。
【0029】
用語「遮断」、またはその文法的等価表現は、抗体に関して使用される場合、抗体が結合する抗原の生物学的活性を妨げるまたは停止させる抗体を指す。遮断抗体としては、反応を惹起することなく抗原と結合し、別のタンパク質が後にその抗原を結合または複合体形成しないように遮断する抗体が含まれる。抗体の遮断効果は、その抗原の生物学的活性に測定可能な変化をもたらすものであり得る。
【0030】
用語「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。いくつかの実施形態では、細胞増殖性障害は、腫瘍または癌である。「腫瘍」は、本明細書で使用する場合、悪性であれ良性であれ総ての新生細胞成長および増殖、ならびに総ての前癌および癌性細胞および組織を指す。用語「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」および「腫瘍」は、本明細書で言及される場合、相互排他的でない。用語「癌」および「癌性」は、一般に調節を欠く細胞成長を特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指す、または記載する。「癌」は、本明細書で使用する場合、生物体における望まない成長、浸潤、および特定の条件下では、傷害を受けた細胞の転移から生じる悪性新生物である。癌を生じる細胞は遺伝的に傷害を受け、細胞分裂、細胞遊走挙動、分化状態および/または細胞死機構を制御する能力を通常失っている。ほとんどの癌は腫瘍を形成するが、白血病などのいくつかの造血癌は形成しない。よって、「癌」は、本明細書で使用する場合、良性癌および悪性癌の両方を含み得る。
【0031】
「化学療法薬」は、作用機序にかかわらず、癌の治療に有用な化学薬剤または生物薬剤(例えば、低分子薬または生物工学製品、例えば、抗体または細胞を含む薬剤)である。化学療法薬には、標的療法および従来の化学療法で使用される化合物が含まれる。化学療法薬としては、限定されるものではないが、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生剤、有糸分裂阻害剤、クロマチン機能阻害剤、抗血管新生剤、抗エストロゲン、抗アンドロゲンまたは免疫調節剤が挙げられる。
【0032】
用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来し、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なる供給源または種に由来する抗体を指す。一実施形態では、「キメラ抗体」は、可変領域が、異なる種の、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属す定常領域に連結されるように、定常領域またはその一部が変更、置換、または交換された抗体である。別の実施形態では、「キメラ抗体」は、定常領域が、異なる種の、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属す可変領域に連結されるように、可変領域またはその一部が変更、置換、または交換された抗体を指す。
【0033】
本明細書で使用する場合、「CDR」は、免疫グロブリン(Igまたは抗体)VH β-シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(H1、H2またはH3)のうちの1つ、または抗体VL β-シートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(L1、L2またはL3)のうちの1つを指す。よって、CDRは、フレームワーク領域配列内に散在した可変領域配列である。CDR領域は当業者に周知であり、例えば、Kabatにより、抗体可変(V)ドメイン内の超可変性が最も高い領域として定義されている(Kabat et al., J. Biol. Chem. 252:6609-6616 (1977); Kabat, Adv. Prot. Chem. 32:1-75 (1978))。Kabat CDRは配列の可変性に基づき、最もよく使用されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、それに代わって構造ループの位置を指す(Chothia and Lesk J Mol. Bioi. 196:901-917 (1987))。また、CDR領域配列は、Chothiaにより、構造的には、保存されているβ-シートフレームワークの一部ではなく、従って、異なる立体配座を採ることができる残基として定義されている(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。Chothia CDR-H1ループの末端は、Kabatナンバリング規則を用いてナンバリングした場合、H32とH34とではループの長さに応じて異なる(これはKabatナンバリングスキームではH35AおよびH35Bに挿入を設け、35Aも35Bも存在しなければそのループは32で終わり、35Aだけが存在すればそのループは33で終わり;35Aと35Bの両方が存在すればそのループは34で終わる)。両用語とも当技術分野ではよく認知されている。CDR領域配列は、AbM、ContactおよびIMGTによっても定義されている。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループの折衷案に当たり、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウエアによって使用されている。「contact」超可変領域は、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。最近、ImMunoGeneTics(IMGT)Information System(登録商標)(Lafranc et al., Dev. Comp. Immunol. 27(1):55-77 (2003))という普遍的なナンバリングシステムが開発され、広く採用されている。IMGTユニバーサルナンバリングは、抗原受容体でも、鎖のタイプでも、または種でも、可変ドメインを比較するために定義された[Lefranc M.-P., Immunology Today 18, 509 (1997) / Lefranc M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999)]。IMGTユニバーサルナンバリングでは、例えば、システイン23(1st-CYS)、トリプトファン41(CONSERVED-TRP)、疎水性アミノ酸89、システイン104(2nd-CYS)、フェニルアラニンまたはトリプトファン118(J-PHEまたはJ-TRP)など、保存されているアミノ酸は常に同じ位置を有する。IMGTユニバーサルナンバリングは、フレームワーク領域(FR1-IMGT:位置1~26、FR2-IMGT:39~55、FR3-IMGT:66~104およびFR4-IMGT:118~128)および相補性決定領域:CDR1-IMGT:27~38、CDR2-IMGT:56~65およびCDR3-IMGT:105~117の標準化された境界決定を提供する。ギャップは占有されていない位置を表すので、CDR-IMGT長(括弧内にドットで区切られて示される、例えば[8.8.13])は重要な情報となる。IMGTユニバーサルナンバリングは、IMGT Colliers de Perles[Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., Immunogenetics, 53, 857-883 (2002) / Kaas, Q. and Lefranc, M.-P., Current Bioinformatics, 2, 21-30 (2007)]と呼ばれる2Dグラフで使用され、また、IMGT/3Dstructure-DB[Kaas, Q., Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., T cell receptor and MHC structural data. Nucl. Acids. Res., 32, D208-D210 (2004)]の3D構造で使用される。カノニカルな抗体可変ドメイン内のCDRの位置は、多くの構造の比較によって決定されている(Al-Lazikani et al., J. Mol. Biol. 273:927-948 (1997); Morea et al., Methods 20:267-279 (2000))。超可変領域内の残基の数は抗体が異なれば異なるので、カノニカルな可変ドメインナンバリングスキームでは、カノニカルな位置に対して付加的な残基は、残基番号の隣にa、b、cなどを付けて従来通りにナンバリグされる(Al-Lazikani et al., 前掲(1997))。このような命名法も同様に当業者にはよく知られている。
【0034】
超可変領域は、以下のように「伸長された超可変領域」を含んでなってもよい:VLでは、24-36または24-34(L1)、46-56または50-56(L2)および89-97または89-96(L3)およびVHでは、26-35または26-35A(H1)、50-65または49-65(H2)および93-102、94-102、または95-102(H3)。Kabatら,前掲によれば、これらの定義のそれぞれに関して、可変ドメイン残基は25にナンバリングされる。本明細書で使用する場合、「HVR」と「CDR」は互換的に使用される。
【0035】
本明細書で使用する場合、「チェックポイント阻害剤」は、免疫チェックポイントを標的とし、前記免疫チェックポイントの機能を遮断する分子、例えば、低分子、可溶性受容体、または抗体を指す。より具体的には、「チェックポイント阻害剤」は、本明細書で使用する場合、免疫チェックポイントの生物学的活性のうち1以上を阻害するまたはそうでなければ低減することができる分子、例えば、低分子、可溶性受容体、または抗体である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントタンパク質の阻害剤(例えば、本明細書で提供される拮抗性抗体)は、例えば、前記免疫チェックポイントタンパク質を発現する細胞(例えば、T細胞)の活性化および/または細胞シグナル伝達経路を阻害しまたはそうでなければ低減し、それにより、細胞の生物学的活性を拮抗剤の不在下での生物学的活性よりも阻害することによって働き得る。免疫チェックポイント阻害剤の例としては、低分子薬、可溶性受容体、および抗体が挙げられる。
【0036】
用語「定常領域」または「定常ドメイン」は、抗体の抗原への結合に直接関与しないがFc受容体との相互作用などの種々のエフェクター機能を示す、軽鎖および重鎖のカルボキシ末端部分を指す。この用語は、免疫グロブリンの他の部分、すなわち、抗原結合部位を含む可変ドメインよりもよく保存されているアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2およびCH3ドメインと軽鎖のCLドメインを含む。
【0037】
用語「低減」は、本明細書で使用する場合、対象のバイオマーカー、例えば、プロガストリンのレベルがその参照値よりも少なくとも1倍(例えば、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、1000、10,000分の1またはそれより超える)低いことを指す。「低減」は、対象のバイオマーカー、例えば、プロガストリンのレベルを表す場合、参照サンプルにおけるレベルよりもまたは前記マーカーの参照値に比べて少なくとも5%(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%)、95%)、99%)、または100%)低いことをも意味する。
【0038】
用語「検出」は、本明細書で使用する場合、定量的または定性的検出を包含する。
【0039】
用語「検出可能なプローブ」または「検出可能な薬剤」は、本明細書で使用する場合、検出可能なシグナルを提供する組成物を指す。この用語は、サンプルまたは対象において、本明細書で提供される抗体などの所望の分子の存在を確認するために使用することができる物質を指す。検出可能な薬剤は、可視化され得る物質またはそうでなければ判定および/もしくは測定され得る(例えば、定量により)物質であり得る。この用語には、限定されるものではないが、その活性を介して検出可能なシグナルを提供する任意の蛍光団、発色団、放射性標識、酵素、抗体または抗体フラグメントなどが含まれる。
【0040】
本明細書で使用する場合、「診断」または「を有する対象を特定する」とは、その徴候および症状から疾患、病態、または傷害を特定するプロセスを指す。診断は特に、ある個体が疾患または病気(例えば癌)に罹患しているかどうかを判定するプロセスである。例えば、癌は、例えばプロガストリンなどの癌に関連するマーカーの存在を検出することによって診断される。
【0041】
用語「診断薬」は、対象に投与される疾患の診断を助ける物質を指す。このような物質は、疾病を引き起こすプロセスの存在を明らかにする、正確に指摘するおよび/または定義するために使用することができる。いくつかの実施形態では、診断薬には、対象に投与された際または対象由来のサンプルに接触させた際に、癌、腫瘍形成、または他のいずれかの細胞増殖性疾患、障害または病態の診断を助ける、本明細書で提供される抗体にコンジュゲートされた物質が含まれる。
【0042】
用語「コードする」またはその文法的等価表現は、核酸分子に関して使用される場合、その天然状態のまたは当業者に周知の方法により操作された、転写されてmRNAを生成し、その後、ポリペプチドおよび/またはそのフラグメントに翻訳され得る核酸分子を指す。アンチセンス鎖はこのような核酸分子の相補物であり、コード配列はそれから推定することができる。
【0043】
薬剤、例えば、医薬製剤の「有効量」は、所望の治療または予防結果を達成するために必要な用量および期間で有効な量を指す。有効量は1以上の投与、適用または用量で投与することがでる。このような送達は、個々の用量単位が使用される期間、薬剤のバイオアベイラビリティ、投与経路などを含むいくつかの変数に依存する。いくつかの実施形態では、有効量はまた、特定の結果(例えば、T細胞の活性化の調整などの免疫チェックポイント生物学的活性の阻害)を達成するための、本明細書で提供される抗体の量も指す。いくつかの実施形態では、この用語は、所与の疾患、障害もしくは病態および/またはそれに関連する症状の重症度および/または持続期間を軽減および/または改善するのに十分な療法(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)の量を指す。この用語はまた、所与の疾患、障害もしくは病態の進展もしくは進行の軽減もしくは改善のために、所与の疾患、障害もしくは病態の再発、発生もしくは発症の軽減もしくは改善のために、および/または別の療法(例えば、前記免疫チェックポイント阻害剤以外の療法)の予防もしくは治療効果を改善もしくは増強するために必要な量も包含する。いくつかの実施形態では、抗体の有効量は、約0.1 mg/kg(対象の体重kg当たりの抗体のmg)~約100mg/kgである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体の有効量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、3 mg/kg、5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg 約90mg/kgまたは約100mg/kg(またはその間の範囲)である。
【0044】
用語「エピトープ」は、本明細書で使用する場合、プロガストリンポリペプチドまたはプロガストリンポリペプチドフラグメントなどの、抗体が結合する抗原の領域を指す。好ましくは、エピトープは、本明細書で使用する場合、プロガストリンポリペプチドまたはプロガストリンポリペプチドフラグメントなどの、抗体の1以上の抗原結合領域に結合することができ、かつ、哺乳動物(例えば、ヒト)などの動物において、免疫応答を惹起し得る抗原活性または免疫原活性を有する、抗原表面に限局化された領域である。免疫原活性を有するエピトープは、動物において抗体応答を惹起するポリペプチドの部分である。抗原活性を有するエピトープは、当技術分野で周知のいずれかの方法、例えば、イムノアッセイにより決定されるような抗体が結合するポリペプチドの部分である。抗原エピトープは、必ずしも免疫原性である必要はない。エピトープは通常、アミノ酸などの化学的に活性な表面分子群からなり、特定の三次元構造特徴ならびに特定の電荷特徴を有する。特定の実施形態では、エピトープは、糖側鎖、ホスホリル基、またはスルホニル基などの化学的に活性な表面分子群である決定基を含んでよく、特定の実施形態では、三次元構造特徴および/または特定の電荷特徴を有し得る。エピトープは、連続する残基によって形成されても、または抗原タンパク質の折り畳みにより近接する不連続残基によって形成されてもよい。連続するアミノ酸により形成されるエピトープは一般に変性溶媒に曝されても保持されるが、不連続アミノ酸により形成されるエピトープは一般に前記の曝露下では消失する。一般に、抗原は、いくつかのまたは多くの異なるエピトープを有し、多くの異なる抗体と反応する。抗体が結合するエピトープの決定は、当業者に公知のいずれのエピトープマッピング技術によって行ってもよい。
【0045】
用語「重鎖」は、抗体に関して使用する場合、アミノ末端部分が約120~130またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分が定常領域を含む、約50~70kDaのポリペプチド鎖を指す。定常領域は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と呼ばれる5つの異なるタイプのうちの1つであり得る。異なる重鎖はサイズが異なる:α、δおよびγはおよそ450個のアミノ酸を含み、μおよびεはおよそ550個のアミノ酸を含む。軽鎖と組み合わせると、これらの異なるタイプの重鎖は、IgGの4つのサブクラス、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む、5つの周知のクラスの抗体、それぞれIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMを生じる。重鎖はヒト重鎖であり得る。
【0046】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」および「宿主細胞培養物」は互換的に使用され、外因性の核酸が導入された細胞を指し、このような細胞の後代も含む。宿主細胞には、「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、初代形質転換細胞および、継代培養数にかかわらずそれらの由来する後代が含まれる。後代は、親細胞と核酸含量が完全に同一でなくてもよく、突然変異を含み得る。本明細書には、当初の形質転換細胞に関してスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する突然変異後代も含まれる。
【0047】
「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体を指す。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのCDR由来の残基が、所望の特異性、親和性、および/または能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合、骨格セグメント残基(フレームワークを表すFRと呼ばれる)のいくつかは、当業者に公知の技術(Jones et al., Nature, 321:522-525, 1986)に従って、結合親和性を保存するように改変することができる。いくつかの実施形態では、ヒト免疫グロブリンのFR残基が対応する非ヒト残基で置換される。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、一般には2つの可変ドメインの実質的に総てを含んでなり、ここで、CDRの総てまたは実質的に総てが非ヒト抗体のCDRに相当し、FRの総てまたは実質的に総てがヒト抗体のFRに相当する。ヒト化抗体は場合により、抗体定常領域(Fc)、一般にはヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部を含んでなり得る。「ヒト化型」の抗体、例えば、非ヒト抗体は、ヒト化を受けていない抗体を指す。ヒト化の目的は、抗体の完全な抗原結合親和性および特異性を維持しつつ、ヒトに導入するために、マウス抗体などの異種抗体の免疫原性を軽減することである。さらに詳しくは、例えば、Jones et al, Nature 321: 522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照。また、例えば、Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998); Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995); Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994);ならびに米国特許第6,982,321号および同第7,087,409号も参照。
【0048】
本明細書で使用する場合、病態を有する対象に関して「特定する」とは、対象を評価し、その対象が病態を有する、例えば、癌に罹患していると判定するプロセスを指す。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「免疫チェックポイント」または「免疫チェックポイントタンパク質」は、T細胞などのいくつかのタイプの免疫系細胞、およびいくつかの癌細胞によって作製される特定のタンパク質を指す。このようなタンパク質は、免疫系においてT細胞の機能を調節する。特に、このようなタンパク質は、免疫応答を支配下に維持する助けをし、T細胞が癌細胞を死滅させないように保つことができる。前記免疫チェックポイントタンパク質は、T細胞にシグナルを送り、本質的にT細胞機能のスイッチを切るかまたは阻害する特定のリガンドと相互作用することによってこの結果を達成する。これらのタンパク質の阻害は、T細胞機能の回復および癌細胞に対する免疫応答をもたらす。チェックポイントタンパク質の例としては、限定されるものではないが、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4(分子のCD2ファミリーに属し、総てのNK、γδ、および記憶CD8+(αβ)T細胞で発現される)、CD160(BY55とも呼ばれる)、CGEN-15049、CHK1およびCHK2キナーゼ、IDO1、A2aRおよび種々のB-7ファミリーリガンドが挙げられる。
【0050】
用語「増加」は、本明細書で使用する場合、対象のバイオマーカー、例えば、プロガストリンのレベルがその参照値よりも少なくとも1倍(例えば、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、1000、10,000倍またはそれを超える)高いことを指す。「増加」は、対象のバイオマーカー、例えば、プロガストリンのレベルを表す場合、参照サンプルにおけるレベルよりもまたは前記マーカーの参照値に比べて少なくとも5%(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%)、95%)、99%)、または100%)高いことも意味する。
【0051】
本明細書で使用する場合、「阻害剤」または「拮抗剤」は、上記の免疫チェックポイントタンパク質のいずれか1つなどの標的タンパク質の生物学的活性のうち1以上を阻害する、またはそうでなければ低減することができる分子を指す。
【0052】
「単離された」抗体は、その天然環境の成分から分離されたものである。いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相HPLC)で決定した場合に95%または99%を超える純度まで精製される。抗体純度の評価のための方法の総説としては、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007)を参照。
【0053】
「単離された」核酸は、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、通常核酸分子を含む細胞に含まれる核酸分子を含むが、核酸分子は染色体外またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置にも存在する。
【0054】
本明細書で意図される場合、バイオマーカー、例えば、プロガストリンの「レベル」は、サンプル、例えば、癌患者から採取したサンプル中の前記予後マーカーの定量的値からなる。いくつかの実施形態では、前記定量的値は、実際に測定される絶対的値からならず、むしろ、使用するアッセイ形式で生じるシグナル/ノイズ比を考慮すること、および/またはアッセイ間の癌マーカーのレベルの測定の再現性を高めるために使用される較正参照値を考慮することから得られる最終値からなる。いくつかの実施形態では、バイオマーカー、例えば、プロガストリンの「レベル」は、重要なのは同じ種類の任意の単位が(i)アッセイ間、または(ii)癌患者間、または(iii)同じ患者について異なる時期に行ったアッセイ間、または(iv)患者のサンプルで測定されたバイオマーカーレベルと所定の参照値(本明細書では「カットオフ」値と呼ばれることもある)の間で比較されることであるため、任意の単位として表される。
【0055】
用語「軽鎖」は、抗体に関して使用する場合、アミノ末端部分が約100~約110またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分が定常領域を含む、約25kDaのポリペプチド鎖を指す。軽鎖のおよその長さは、211~217アミノ酸である。定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)またはラムダ(λ)と呼ばれる2つの異なるタイプがある。軽鎖アミノ酸配列は当技術分野で周知である。軽鎖はヒト軽鎖であり得る。
【0056】
本明細書で使用する場合、「疾患進行を監視する」とは、疾患または病気(例えば、癌)に罹患している個体において疾患の重症度または病期を決定するプロセスを指す。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」は、ほぼ均質な抗体集団から生じる抗体を表し、集団は、最小の割合で見られ得る、可能性のあるいくつかの天然の突然変異を除いては同一の抗体を含んでなる。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマなどの単細胞クローンの増殖から生じ、1つのクラスおよびサブクラスの重鎖と1つのタイプの軽鎖によって特徴付けられる。
【0058】
本明細書で使用する場合、2つの核酸またはアミノ酸配列間の「同一性パーセンテージ」または「同一性%」は、最適なアラインメントの後に得られる比較する2配列間で同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージを指し、このパーセンテージは単に統計的なものであり、2配列間の差異は、長さに沿ってランダムに分布している。2つの核酸配列またはアミノ酸配列の比較は、それらを最適にアラインした後に配列を比較することによって伝統的に行われ、前記比較は、セグメントによってまたは「アラインメントウインドウ」を用いることによって行うことができる。比較のための配列の最適なアラインメントは、手による比較の他、当業者に公知の方法によって行うことができる。
【0059】
参照アミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を示すアミノ酸配列では、好ましい例として、参照配列、特定の改変、特に、少なくとも1個のアミノ酸の欠失、付加もしくは置換、短縮または伸長を含むものが挙げられる。1以上の保存的または非保存的アミノ酸の置換の場合、置換されるアミノ酸が「等価の」アミノ酸で置換される置換が好ましい。ここで、「等価のアミノ酸」という表現は、対応する抗体および以下に定義される特定の例の生物学的活性を改変することなく、構造アミノ酸の1つをいずれかのアミノ酸で置換可能であることを示すことを意味する。等価のアミノ酸は、それらが置換されるアミノ酸とのそれらの構造的相同性で、または生成され得る種々の抗体間での生物学的活性の比較試験の結果で判定することができる。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「ポリクローナル抗体」は、1以上の他の同一でない抗体の中で、またはその存在下で生産された抗体を指す。一般に、ポリクローナル抗体は、同一でない抗体を生産するいくつかの他のBリンパ球の存在下で、Bリンパ球から生産される。通常、ポリクローナル抗体は、免疫動物から直接得られる。
【0061】
用語「プロガストリン」は、本明細書で使用する場合、哺乳動物プロガストリンペプチド、特に、ヒトプロガストリンを指す。疑念を避けるため、何ら特定することなく、「ヒトプロガストリン」または「hPG」という表現は、配列番号1の配列のヒトPGを指す。ヒトプロガストリンは、特に、上述の生物学的に活性なガストリンホルモン形態には存在しないN末端ドメインおよびC末端ドメインを含んでなる。好ましくは、前記N末端ドメインの配列は配列番号2で表される。別の好ましい実施形態では、前記C末端ドメインの配列は配列番号3で表される。
【0062】
「プロガストリン結合分子」とは、本明細書では、プロガストリンと結合するが、ガストリン-17(G17)、ガストリン-34(G34)、グリシン伸長ガストリン-17(G17-Gly)、またはグリシン伸長ガストリン-34(G34-Gly)およびC末端フランキングペプチド(CTFP)とは結合しないいずれの分子も指す。本発明のプロガストリン結合分子は、例えば、抗体分子または受容体分子などのいずれのプロガストリン結合分子であってもよい。好ましくは、プロガストリン結合分子は、抗プロガストリン抗体(抗hPG抗体)またはその抗原結合フラグメントである。
【0063】
本明細書で使用する場合、「予後」は、疾患または病気(例えば、癌)に罹患している個体における疾患のあり得る経過および転帰、または疾患(例えば、癌)からの個体の回復の可能性を予測するプロセスを指す。「予後」は、本明細書で使用する場合、特に、疾患からの回復の可能性または疾患のあり得る発症もしくは転帰の予測を意味する。例えば、対象由来のサンプルがプロガストリンの存在に関して陰性であれば、その対象の「予後」は、サンプルがプロガストリン陽性である場合よりも良好である。
【0064】
用語「参照値」は、本明細書で使用する場合、参照サンプルにおける検討下のバイオマーカー(例えば、プロガストリン)の発現レベルを指す。「参照サンプル」は、本明細書で使用する場合、疾患がないことが知られる対象、好ましくは、2以上の対象から、あるいは一般集団から得られるサンプルを意味する。バイオマーカーの好適な参照発現レベルは、いくつかの好適な対象における前記バイオマーカーの発現レベルを測定することにより決定することができ、このような参照レベルは特定の対象集団に対して補正することができる。参照値または参照レベルは、絶対値;相対値;上限または下限を有する値;値の範囲;平均値(average value);中央値、平均値(mean value)、または特定の対照もしくはベースライン値と比較した値であり得る。参照値は、例えば、試験する対象由来のサンプルから、早期の時点で得られた値などの個体サンプル値に基づくことができる。参照値は、暦年齢の一致する群の対象の集団などの多数のサンプルに基づいてもよいし、または試験するサンプルを含むもしくは除くサンプルのプールに基づいてもよい。
【0065】
本明細書で使用する場合、「応答」は、治療による改善を指す。前記改善は、臨床症状の観察によって検出することができる。妨げるものではないが、このような改善の観察はそれに関連する障害、病態または症状が完全に除去されることを必要としないことが認識されるであろう。患者が示し得る応答のタイプは、完全応答(CR;complete response)、部分応答(PR;partial response)、進行性疾患(PD;progressive disease)、および安定状態(SD;stable disease)である。
【0066】
本明細書で使用する場合、「選択」は、特定された対象が病態(例えば、癌)の発症を処置するために薬剤を受容することを決定するプロセスを指す。選択は、例えば、家族歴、生活様式、年齢、人種、または他の因子による特定の疾患または病態に対する個々の感受性に基づき得る。
【0067】
「低分子薬」は、本明細書では、一般に約1000未満の分子量を有する有機、無機、または有機金属化合物を指して広く使用される。本発明の低分子薬は、約1000未満の分子量を有するオリゴペプチドおよび他の生体分子を包含する。
【0068】
「可溶性受容体」とは、本明細書では、受容体の細胞外ドメインを含んでなるがその膜貫通ドメインまたは細胞質ドメインは含まないペプチドまたはポリペプチドを指す。
【0069】
本明細書に記載される方法論に従い得る「対象」は、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ブタ、ブタ類、ヒツジおよびサルを含む哺乳動物のいずれであってもよい。ヒト対象は患者として知られ得る。一実施形態では、「対象」または「必要とする対象」は、癌に罹患している、または癌に罹患している疑いのある、または癌と診断されている哺乳動物を指す。本明細書で使用する場合、「癌罹患対象」は、癌に罹患しているまたは癌と診断されている哺乳動物を指す。「対照対象」は、癌に罹患していない哺乳動物、および癌に罹患している疑いのない哺乳動物を指す。
【0070】
本明細書で使用する場合、対象において疾患を「治療する」または疾患を有する対象を「治療する」とは、疾患の程度が軽減されるようにまたは疾患が予防されるように、対象が薬物治療、例えば、薬物の投与を受けることを指す。例えば、治療は、疾患または病態の少なくとも1つの徴候または症状の軽減をもたらす。治療は(限定されるものではないが)、医薬組成物などの組成物の投与を含み、予防的に、または病的イベントの誘発の後に実施され得る。治療は、薬剤の投与および/または2回以上の処置を必要とし得る。
【0071】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」と呼ばれる場合がある。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と呼ばれる場合がある。これらのドメインは一般に抗体の最も可変な部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0072】
用語「ベクター」は、本明細書で使用する場合、それが連結される別の核酸を増幅することができる核酸分子を指す。この用語には、自己複製する核酸構造としてのベクターならびにそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターが含まれる。ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結された核酸の発現を指令することができる。このようなベクターは、本明細書では、「発現ベクター」と呼ばれる。
【0073】
診断方法
101個のアミノ酸のペプチド(アミノ酸配列参照:AAB19304.1)であるヒトプレプロガストリンは、ガストリン遺伝子の一次翻訳産物である。プロガストリンは、プレプロガストリンから最初の21個のアミノ酸(シグナルペプチド)を切断することによって形成される。プロガストリン80個のアミノ酸鎖は、切断と、数種の生物学的に活性なガストリンホルモン形態:ガストリン34(G34)およびプロガストリンのアミノ酸38~71を含んでなるグリシン伸長ガストリン34(G34-Gly)、ガストリン17(G17)およびプロガストリンのアミノ酸55~71を含んでなるグリシン伸長ガストリン17(G17-Gly)への酵素修飾によってさらにプロセシングされる。
【0074】
プロガストリン(PG)は結腸直腸腫瘍細胞によって生産され、細胞死に至るプロセスを含む細胞の正常な分化プロセスを遮断するシグナル伝達経路を誘発することによってこれらの細胞の増殖を刺激すると考えられる。プロガストリンをコードするガストリン遺伝子転写産物の枯渇は、イン・ビトロおよびイン・ビボ(in vivo)癌モデルにおいて腫瘍細胞で細胞分化およびプログラム細胞死を誘導して腫瘍細胞の増殖を低減する。実施のいずれの理論にも拘束されるものではないが、PGの結合によって、抗hPG抗体はそのシグナル伝達相手と相互作用するその能力を遮断または阻害すると考えられる。これは次に、そうでなければ増殖に至る結腸直腸腫瘍細胞においてシグナル伝達経路を阻害する。PGは、従前に、癌を診断するための特に有用な手段であることが示されている。例えば、結腸直腸癌に関してはWO2011/083088、乳癌に関してはWO2011/083090、膵臓癌に関してはWO2011/083091、結腸直腸癌および消化管癌に関してはWO2011/116954、肝疾患に関してはWO2012/013609およびWO2011/083089、卵巣癌に関してはWO2017114972、食道癌に関してはWO2017114976、胃癌に関してはWO2017114975、肺癌に関してはWO2018178364および前立腺癌に関してはWO2018178352を参照。
【0075】
以下、本願は、免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答する可能性に関する臨床上重要な負の予測マーカーとしてプロガストリンを開示する。本発明者らは、意外にも、治療前の体液においてプロガストリンが検出可能なレベルであれば、患者がその療法に応答する可能性が小さいことを示すことを見出した。実際に、本発明者らは、このカテゴリーの患者が有意に短い全生存期間を示すことを見出した。対照的に、治療前に体液中でプロガストリンが検出不能である患者は寿命が2倍である。
【0076】
これは重要かつ医学的に有用な発見に値する。この発見は、治療前に患者を、免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答する可能性のある患者群と応答しない可能性が最も高く、従って特殊な標的療法を必要とする患者群に識別することを可能とする。患者が免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しない可能性があるという判定は、医師がその癌に対して有効である可能性のより高い別の療法を決定する助けとなり得る。従って、この診断ツールは、このような患者を重大な副作用を伴うコストの高い治療から救うとともに、患者がそのような状況で最も有効な療法を受けることを保証し得る。
【0077】
以下、本発明は、免疫療法に応答しやすい癌患者のイン・ビトロ同定のための方法を提供し、前記方法は、対象由来の生体サンプルにおいてプロガストリンを検出することを含んでなる。好ましくは、前記サンプル中のプロガストリンの量が決定され、よって、プロガストリンの定量を可能とする。
【0078】
第1の態様において、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤応答表現型を有する癌患者の選択方法に関し、前記方法は、対象由来の生体サンプルにおいてプロガストリンを検出する工程を含んでなる。サンプル中のプロガストリンの存在は、その患者が免疫チェックポイント阻害剤不応答表現型を示すことを示す。
【0079】
よって、第1の実施形態では、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤応答または不応答表現型を有する癌患者を選択するためのイン・ビトロ法に関し、前記方法は、
a)前記対象由来の生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、および
b)前記サンプルにおいて前記プロガストリン結合分子とプロガストリンとの結合を検出する工程(前記結合は、患者が免疫チェックポイント阻害剤不応答表現型を示すことを示す)、
を含んでなる。
【0080】
プロガストリン結合分子の結合は、当業者に利用可能な様々なアッセイによって検出することができる。以下に詳説するように、アッセイを行うために好適ないずれの手段も本発明の範囲内に含まれるが、イムノアッセイ、特にELISAを特に挙げることができる。
【0081】
本明細書で使用する場合、「免疫チェックポイント阻害剤応答または不応答表現型」は、前記免疫チェックポイント阻害剤の投与に対する対象の応答状態を指す。「応答状態」は、前記対象(免疫チェックポイント阻害剤(不)応答表現型または(不)応答対象((non-)responding subject)または(不)応答対象((non-)responsive subject)を指す:本願の目的では、これらの用語は本質的に同義である)がその治療に応答するまたは応答しないことを意味する。
【0082】
本発明による方法のさらに詳しい実施形態では、前記生体サンプルにおいて少なくとも3pM、少なくとも5pM、少なくとも10pM、少なくとも20pM、少なくとも30pMのプロガストリン濃度が免疫チェックポイント阻害剤不応答表現型を示す。
【0083】
別の態様において、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しやすい癌患者を選択するためのvitro法に関し、前記方法は、対象由来の生体サンプルにおいてプロガストリンを検出する工程を含んでなる。免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しやすい癌患者は、前記免疫チェックポイント阻害剤を投与した際に免疫チェックポイント阻害剤応答表現型を示す対象である。よって、サンプル中のプロガストリンの存在は、その患者が免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しにくいことを示す。
【0084】
よって、第1の実施形態では、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しやすい癌患者を選択するためのイン・ビトロ法に関し、前記方法は、
a)前記対象由来の生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、および
b)前記サンプルにおいて前記プロガストリン結合分子とプロガストリンとの結合を検出する工程(前記結合はその患者が免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しないこと示す)、
を含んでなる。
【0085】
好ましい実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しやすい癌患者のイン・ビトロ選択のための本発明による方法は、
a)前記対象由来の前記生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、
b)前記生体サンプルにおけるプロガストリン濃度を決定する工程(前記生体サンプルにおいて少なくとも3pMのプロガストリン濃度が免疫チェックポイント阻害剤による治療に対して反応性がないことを示す)、
を含んでなる。
【0086】
サンプル中に存在するプロガストリンの濃度が決定されれば、その結果を、癌に罹患しており、免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しないことが知られている個体由来であることを除いて、試験サンプルと同様の方法で得られた対照サンプルの結果と比較することができる。プロガストリン濃度が試験サンプルにおいて有意により上昇していれば、それに由来する対象が免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しない可能性が高いと結論付けることができる。別の実施形態では、サンプル中に存在するプロガストリンの濃度を、癌に罹患しており、免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答することが知られている個体由来であることを除いて、試験サンプルと同様の方法で得られる対照サンプルのプロガストリン濃度と比較することができる。試験サンプルにおいてプロガストリンの濃度が有意に低ければ、それが由来する対象が免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答する可能性が高いと結論付けることができる。
【0087】
よって、より好ましい実施形態において、本方法は、
c)参照サンプルにおいてプロガストリンの参照濃度を決定する工程、
d)前記生体サンプルにおけるプロガストリン濃度を前記参照プロガストリン濃度と比較する工程、
e)工程d)の比較から、前記患者が免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答するかしないかを決定する工程
をさらに含んでなる。
【0088】
別の態様によれば、本発明は、対象における免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答する癌のイン・ビトロ診断のための方法に関し、生体サンプルにおけるプロガストリン濃度の決定を含んでなる。より詳しくは、前記対象の生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させるが、前記プロガストリン結合分子は抗体、またはその抗原結合フラグメントである。
【0089】
よって、この実施形態は、対象において免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答する癌を診断するためのvitro法を提供し、前記方法は、
a)前記対象由来の生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、および
b)前記サンプルにおける前記プロガストリン結合分子とプロガストリンとの結合を検出する工程(前記結合はその癌が免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答する癌ではないことを示す)、
を含んでなる。
【0090】
好ましい実施形態では、本発明は、対象における免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答する癌のイン・ビトロ診断のための方法に関し、
a)記対象由来の前記生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、
b)前記生体サンプルにおけるプロガストリン濃度を決定する工程(前記生体サンプルにおける少なくとも3pMのプロガストリン濃度は、免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しない癌の存在を示す)、
を含んでなる。
【0091】
本発明による方法のさらに詳しい実施形態では、前記生体サンプルにおける少なくとも3pM、少なくとも5pM、少なくとも10pM、少なくとも20pM、少なくとも30pMのプロガストリン濃度は、前記対象において免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しない癌の存在を示す。
【0092】
より好ましい実施形態では、対象において免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答する癌を診断することは、前記対象の前記生体サンプルにおいて測定されたプロガストリン濃度を参照サンプルのプロガストリン濃度と比較することを含む。
【0093】
よって、本方法は、
c)参照サンプルにおいてプロガストリンの参照濃度を決定する工程、
d)前記生体サンプルにおけるプロガストリン濃度を前記プロガストリン参照レベルまたは濃度と比較する工程、
e)工程d)の比較から、前記癌が免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答するかしないかを診断する工程
をさらに含んでなる。
【0094】
別の態様によれば、本発明は、対象において免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答する転移癌を診断するためのイン・ビトロ法に関し、前記方法は、
a)前記対象からの生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、および
b)前記サンプルにおいて前記プロガストリン結合分子とプロガストリンと結合検出する工程(前記結合は、免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しない転移癌を示す)、
を含んでなる。
【0095】
好ましい実施形態では、本発明は、対象の生体サンプルから、対象における免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答する転移癌のイン・ビトロ診断のための方法に関し、
a)前記生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、
b)生化学アッセイにより、前記生体サンプルにおけるプロガストリンレベルまたは濃度を決定する工程(前記生体サンプルにおける少なくとも3pMのプロガストリン濃度が前記対象における免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しない転移癌の存在を示す)、
を含んでなる。
【0096】
本発明による方法のさらに詳しい実施形態では、前記生体サンプルにおける少なくとも3pM、少なくとも5pM、少なくとも10pM、少なくとも20pM、少なくとも30pMのプロガストリン濃度は、前記対象における免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しない転移癌の存在を示す。
【0097】
より好ましい実施形態において、本方法は、
c)参照サンプルにおいて参照プロガストリン濃度を決定する工程、
d)前記生体サンプルにおけるプロガストリン濃度を前記参照プロガストリン濃度と比較する工程、
e)工程d)の比較から、前記癌が免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答するかしないかを診断する工程
をさらに含んでなる。
【0098】
別の態様によれば、本発明は、対象における免疫チェックポイント阻害剤による癌治療のイン・ビトロ予後判定のための方法に関し、生体サンプルにおけるプロガストリン濃度の決定を含んでなる。より詳しくは、前記対象の生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させ、前記プロガストリン結合分子は、抗体、またはその抗原結合フラグメントである。
【0099】
よって、この実施形態は、対象において免疫チェックポイント阻害剤による癌治療の予後を判定するためのイン・ビトロ法を提供し、前記方法は、
a)前記対象からの生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、および
b)前記サンプルにおいて前記プロガストリン結合分子とプロガストリンとの結合を検出する工程(前記結合は予後が不良であることを示す)、
を含んでなる。
【0100】
好ましい実施形態では、本発明は、対象における免疫チェックポイント阻害剤による癌治療のイン・ビトロ予後判定のための方法に関し、
a)前記対象由来の前記生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、
b)前記生体サンプルにおいてプロガストリン濃度を決定する工程(前記生体サンプルにおける少なくとも10pMのプロガストリン濃度が不良な予後を示す)、
を含んでなる。
【0101】
本発明による方法のさらに詳しい実施形態では、前記生体サンプルにおける少なくとも3pM、少なくとも5pM、少なくとも10pM、少なくとも20pM、少なくとも30pMのプロガストリン濃度が不良な予後を示す。
【0102】
より好ましい実施形態において、対象において免疫チェックポイント阻害剤による癌治療の予後を判定することは、対象の前記生体サンプルで測定されたプロガストリン濃度を参照サンプルにおけるプロガストリン濃度と比較することを含む。
【0103】
よって、本発明の方法は、
c)参照サンプルにおいて参照プロガストリン濃度を決定する工程、
d)前記生体サンプルにおけるプロガストリン濃度を前記プロガストリン参照レベルまたは濃度と比較する工程、
e)工程d)の比較から、前記免疫チェックポイント阻害剤による癌治療の予後を判定する工程
をさらに含んでなる。
【0104】
抗hPG抗体
本方法において使用するためのPG結合分子は、PGポリペプチド、PGポリペプチドフラグメント、またはPGエピトープを含むプロガストリンに結合するが、ガストリン-17(G17)、ガストリン-34(G34)、グリシン伸長ガストリン-17(G17-Gly)、またはグリシン伸長ガストリン-34(G34-Gly)およびC末端フランキングペプチド(CTFP)とは結合しない分子である。好ましくは、PG結合分子は、ヒトプロガストリン、すなわち、配列番号1で表されるアミノ酸配列のポリペプチドと結合する。
【0105】
一実施形態において、PG結合分子は、PGに結合する抗体(抗PG抗体)またはその抗原結合フラグメントである。好ましくは、前記抗プロガストリン抗体はhPGに結合する(抗hPG抗体)。
【0106】
特定の実施形態では、前記プロガストリン結合抗体、またはその抗原合フラグメントは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ラクダ化抗体、IgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体およびIgM抗体からなる群から選択される。
【0107】
より具体的な実施形態では、本抗PG抗体はプロガストリンのエピトープを認識し、前記エピトープは、プロガストリンのN末端部分のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、hPGの残基10~14、hPGの残基9~14、hPGの残基4~10、hPGの残基2~10またはhPGの残基2~14を含んでよく、hPGのアミノ酸配列は配列番号1である。
【0108】
より具体的な実施形態では、抗PG抗体は、プロガストリンのエピトープを認識し、前記エピトープは、プロガストリンのC末端部分のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、hPGの残基71~74、hPGの残基69~73、hPGの残基71~80(配列番号40)、hPGの残基76~80、またはhPGの残基67~74を含んでよく、hPGのアミノ酸配列は配列番号1である。
【0109】
さらに詳しい実施形態では、抗PG抗体は、本明細書に記載されるものなどの方法で決定した場合に、プロガストリンに対して少なくとも5000nM、少なくとも500nM、100nM、80nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、7nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.1nM、50pM、10pM、5pM、1pM、または少なくとも0.1pMの親和性を有する。
【0110】
別の特定の実施形態では、プロガストリンに結合する抗体は、アミノ酸配列がプロガストリンのアミノ酸配列の全部または一部を含んでなるペプチドを免疫原として使用し、当業者に公知の免疫法によって得られたものである。より詳しくは、前記免疫原は:
・アミノ酸配列が全長プロガストリン、特に、配列番号1の全長ヒトプロガストリンのアミノ酸配列を含んでなる、またはからなるペプチド、
・アミノ酸配列がプロガストリン、特に、配列番号1の全長ヒトプロガストリンのアミノ酸配列の一部に相当するペプチド、
・アミノ酸配列がプロガストリンのN末端部分の一部または全アミノ酸配列に相当するペプチド、特に、アミノ酸配列:SWKPRSQQPDAPLG(配列番号2)を含んでなる、またはからなるペプチド、および
・アミノ酸配列がプロガストリンのC末端部分の一部または全アミノ酸配列に相当するペプチド、特に、アミノ酸配列:QGPWLEEEEEAYGWMDFGRRSAEDEN(配列番号3)を含んでなる、またはからなるペプチド、
・アミノ酸配列がプロガストリンのC末端部分のアミノ酸配列の一部に相当するペプチド、特に、プロガストリンのアミノ酸71~80に相当するアミノ酸配列FGRRSAEDEN(配列番号40)を含んでなるペプチド
の中から選択されるペプチドを含んでなる。
【0111】
当業者は、このような免疫化が所望によりポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかを生成するために使用可能であることを理解するであろう。これらのタイプの抗体のそれぞれを得るための方法は当技術分野で周知である。よって、当業者ならば、いずれの所与の抗原に対するポリクローナル抗体および/またはモノクローナル抗体を作製するための方法も容易に選択および実施することができるであろう。
【0112】
ヒトプロガストリンのアミノ酸配列1~14(N末端)に相当するアミノ酸配列「SWKPRSQQPDAPLG」を含んでなる免疫原を使用することにより生成されたモノクローナル抗体の例としては、限定されるものではないが、以下の表1~表4に記載されるようなmAb3、mAb4、mAb16、およびmAb19およびmAb20と呼称されるモノクローナル抗体が挙げられる。他のモノクローナル抗体も記載されているが、これらの抗体は実際にプロガストリンと結合するかどうかは明らかでない(WO2006/032980)。エピトープマッピングの試験結果は、mAb3、mAb4、mAb16、およびmAb19およびmAb20は、前記hPG N末端アミノ酸配列(配列番号2)内のエピトープと特異的に結合することを示す。配列番号2で表されるプロガストリンのN末端内のエピトープを特異的に認識するポリクローナル抗体は、当技術分野で記載されている(例えば、WO2011/083088参照)。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
ヒトプロガストリンのアミノ酸配列55~80に相当するアミノ酸配列「QGPWLEEEEEAYGWMDFGRRSAEDEN」(プロガストリンのC末端部分)を含んでなる免疫原を使用することにより作製され得るモノクローナル抗体の例としては、限定されるものではないが、以下の表5および6でmAb8およびmAb13と呼称される抗体が挙げられる。このようにして生成され得るモノクローナル抗体の別の例は、WO2011/083088に記載されているハイブリドーマ2H9F4B7によって産生される抗体Mab14である。ハイブリドーマ2H9F4B7は、ブダペスト条約の下、2016年12月27日に、CNCM、パスツール研究所、25-28リュ・ドゥ・ドクトゥール・ルー、75724パリCEDEX15、フランスに参照I-5158として寄託されたものである。エピトープマッピング実験結果は、これらの抗体が前記hPG C末端アミノ酸配列(配列番号3)内のエピトープと特異的に結合することを示す。
【0118】
【0119】
【0120】
他の例としては、配列番号40のアミノ酸配列を含んでなる免疫原を使用することにより生成される抗hPGモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体が挙げられる。
【0121】
本方法のさらに詳しい実施形態では、前記生体サンプルを抗hPG抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させるが、前記抗hPG抗体は、N末端抗hPG抗体およびC末端抗hPG抗体の中から選択される。
【0122】
用語「N末端抗hPG抗体」および「C末端抗hPG抗体」は、それぞれhPGのN末端部分に位置するアミノ酸を含んでなるエピトープまたはhPGのC末端部分に位置するアミノ酸を含んでなるエピトープに結合する抗体を表す。好ましくは、用語「N末端抗hPG抗体」は、配列が配列番号2で表されるプロガストリンのドメイン内に位置するエピトープに結合する抗体を指す。別の好ましい実施形態では、用語「C末端抗hPG抗体」は、配列が配列番号3で表されるプロガストリンのドメイン内に位置するエピトープに結合する抗体を指す。
【0123】
特定の実施形態では、前記抗体は、
・それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号4、5および6の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号7、8および9の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
・それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号10、11および12の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号13、14および15の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
・それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号16、17および18の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号19、20および21の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
・それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号22、23および24の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号25、26および27のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号25、26および27の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
・それぞれ配列番号28、29および30のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号28、29および30の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には少なくとも3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号31、32および33のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号31、32および33の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、ならびに
・それぞれ配列番号34、35および36のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号34、35および36の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号37、38および39のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号37、38および39の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体
からなる群から選択されるモノクローナル抗体である。
【0124】
別の実施形態では、抗体は、2016年12月27日に、CNCM、パスツール研究所、25-28リュ・ドゥ・ドクトゥール・ルー、75724パリCEDEX15、フランスに参照I-5158として寄託されたハイブリドーマにより生産されるモノクローナル抗体である。
【0125】
さらに詳しい実施形態では、前記抗体は、
・配列番号41のアミノ酸配列の重鎖と配列番号42のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体;
・配列番号43のアミノ酸配列の重鎖と配列番号44のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体;
・配列番号45のアミノ酸配列の重鎖と配列番号46のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体;
・配列番号47のアミノ酸配列の重鎖と配列番号48のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体;
・配列番号49のアミノ酸配列の重鎖と配列番号50のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体;および
・配列番号51のアミノ酸配列の重鎖と配列番号52のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体
からなる群から選択されるモノクローナル抗体である。
【0126】
別の特定の実施形態では、本発明の方法において使用される抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化の目的は、抗体の完全な抗原結合親和性および特異性を維持しつつ、ヒトに導入するために、マウス抗hPG抗体などの異種抗体の免疫原性を低減することである。本発明のヒト化抗体またはそのフラグメントは、当業者に公知の技術(例えば、文献Singer et al., J. Immun., 150:2844-2857, 1992に記載されているものなど)によって作製することができる。このようなヒト化抗体は、イン・ビトロ診断またはイン・ビボにおける予防的処置および/もしくは治療的処置を含む方法におけるそれらの使用に好ましい。他のヒト化技術も当業者に公知である。実際に、抗体は、CDRグラフティング(EP0451261;EP0682040;EP0939127;EP0566647;US5,530,101;US6,180,370;US5,585,089;US5,693,761;US5,639,641;US6,054,297;US5,886,152;およびUS5,877,293)、ベニヤリング(veneering)またはリサーフェイシング(resurfacing)(EP0592106;EP0519596;Padlan E. A., 1991 , Molecular Immunology 28(4/5): 489-498; Studnicka G. M. et al., 1994, Protein Engineering 7(6): 805-814; Roguska M.A. et al., 1994, Proc. Natl. Acad. ScL U.S.A., 91:969-973)、およびチェーンシャッフリング(米国特許第5,565,332号)を含む様々な技術を用いてヒト化することができる。ヒト抗体は、ファージディスプレー法を含む当技術分野で公知の様々な方法によって作製することができる。米国特許第4,444,887号、同第4,716,111号、同第5,545,806号、および同第5,814,318号;ならびに国際特許出願公開番号WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735、およびWO91/10741も参照。
【0127】
さらに詳しい実施形態では、前記抗体は、
・それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号4、5および6の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号7、8および9の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるヒト化抗体、
・それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号10、11および12の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号13、14および15の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるヒト化抗体、
・それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号16、17および18の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号19、20および21の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるヒト化抗体、
・それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号22、23および24の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号25、26および27のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号25、26および27の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるヒト化抗体、
・それぞれ配列番号28、29および30のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号28、29および30の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号31、32および33のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号31、32および33の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるヒト化抗体、ならびに
・それぞれ配列番号34、35および36のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号34、35および36の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号37、38および39のアミノ酸配列、または最適なアラインメントの後にそれぞれ配列番号37、38および39の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるヒト化抗体
からなる群から選択されるヒト化抗体であり、前記抗体はまた、ヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域も含んでなる。
【0128】
別のより詳しい実施形態では、前記抗体は、
・配列番号53のアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号54のアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなるヒト化抗体;
・配列番号55のアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号56のアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなるヒト化抗体;
・配列番号57、58、および59の中から選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号60、61、および62の中から選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなるヒト化抗体;
・配列番号63、64、および65の中から選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号66、67、および68の中から選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなるヒト化抗;
・配列番号69~71から選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号70~72から選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなるヒト化抗体;ならびに
・配列番号75~76から選択されるアミノ酸配列の重鎖可変領域と配列番号77~78から選択されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域とを含んでなるヒト化抗体
からなる群から選択されるヒト化抗体であり、前記抗体はまた、ヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域も含んでなる。
【0129】
本明細書にはまた、診断適用および治療適用において使用するために誘導体化された、共有結合的に改変された、または他の分子とコンジュゲートされた抗hPG抗体も含まれる。例えば、限定されるものではないが、誘導体化された抗体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などにより改変された抗体が含まれる。多くの化学修飾はいずれも、限定されるものではないが、特定の化合切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む既知の技術によって実施することができる。加えて、誘導体は1以上の非典型的アミノ酸を含み得る。
【0130】
別の例では、本開示の抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分と結合させることができる。特定の実施形態では、抗体は抗体フラグメントであり、PEG部分は、例えば、遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシルまたはカルボキシル基など、抗体フラグメントに存在する利用可能ないずれかのアミノ酸側鎖または末端アミノ酸官能基を介して結合される。このようなアミノ酸は、抗体フラグメントに天然に存在し得るか、または組換えDNA法を用いてフラグメントに操作することもできる。例えば、米国特許第5,219,996号参照。2つ以上のPEG分子を結合させるためには複数の部位を使用することができる。PEG部分は、抗体フラグメント内に位置する少なくとも1個のシステイン残基のチオール基を介して共有結合させることができる。チオール基が結合点として使用される場合、適宜活性化されたエフェクター部分、例えば、マレイミドおよびシステイン誘導体などのチオール選択性誘導体を使用することができる。
【0131】
具体例において、抗hPG抗体コンジュゲートは、例えばEP0948544に開示されている方法に従ってペグ化された、すなわち、それに共有結合されたPEG(ポリ(エチレングリコール))を有する修飾されたFab’フラグメントである。Poly(ethyleneglycol) Chemistry, Biotechnical and Biomedical Applications, (J. Milton Harris (編), Plenum Press, New York, 1992); Poly(ethyleneglycol) Chemistry and Biological Applications, (J. Milton Harris and S. Zalipsky編, American Chemical Society, Washington D.C., 1997);およびBioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences, (M. Aslam and A. Dent編, Grove Publishers, New York, 1998);およびChapman, 2002, Advanced Drug Delivery Reviews 54:531-545も参照。PEGは、ヒンジ領域においてシステインと結合させることができる。一例では、PEG修飾Fab’フラグメントは、修飾されたヒンジ領域において単一のチオール基に共有結合されたマレイミド基を有する。このマレイミド基にリシン残基を共有結合させることができ、このリシン残基上のアミン基のそれぞれに、およそ20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーを結合させることができる。従って、Fab’フラグメントに結合されているPEGの総分子量はおよそ40,000Daであり得る。
【0132】
抗hPG抗体には、診断適用に有用な標識抗体が含まれる。これらの抗体は、診断的に、例えば、特定の細胞、組織、もしくは血清において対象とする標的の発現を検出するために;または例えば所与の治療計画の有効性を決定するための臨床試験手順の一部として免疫応答の生成もしくは進行をモニタリングするために使用することができる。検出は、抗体を検出可能な物質または「標識」にカップリングさせることによって補助することができる。標識は本開示の抗hPG抗体に直接または間接的にコンジュゲートさせることができる。この標識はそれ自体検出可能であり得(例えば、放射性同位元素標識、同位元素標識、または蛍光標識)、または酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物または組成物の化学的変化を触媒することができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、様々な陽電子放射断層撮影法を用いる場合の陽電子放射金属、および非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。検出可能な物質は、直接的に抗体(またはそのフラグメント)に、または当技術分野で公知の技術を用いて中間体(例えば、当技術分野で公知のリンカーなど)を介して間接的にカップリングまたはコンジュゲートさせることができる。酵素標識の例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。好適な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;好適な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロライド、またはフィコエリトリンなどが挙げられ;発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ;好適な同位元素標識物質としては、13C、15N、および重水素が挙げられ;ならびに好適な放射性物質の例としては、125I、131I、111Inまたは99Tcが挙げられる。
【0133】
抗hPG抗体を用いたプロガストリンの検出
例えば、抗PG抗体などのプロガストリン結合分子は、免疫チェックポイント阻害剤療法に応答しやすい対象の特定などのPG検出に依存する適用に有用である。よって、抗PG抗体を含むプロガストリン結合分子は、本明細書に記載される方法のいずれにおいても使用可能である。一般に、前記方法は、本開示の抗hPG抗体を使用する患者から得られたサンプルにおいてプロガストリンを測定することを含んでなり、サンプルにおける少なくとも3pM、少なくとも5pM、少なくとも10pM、少なくとも20pM、少なくとも30pMのプロガストリンの測定は、免疫チェックポイント阻害剤療法に対する応答性がないことを示す。プロガストリンは、例えば、血液、血清、血漿、組織、および/または細胞のサンプルで測定することができる。hPG検出は、ELISA、サンドイッチELISA、免疫ブロット法(ウエスタンブロット法)、免疫沈降、BIAcore技術などの当技術分野で公知のおよび/または本明細書に記載されるアッセイを用いて行うことができる。
【0134】
しかしながら、本明細書で示すように、プロガストリンは、ガストリン遺伝子産物の翻訳後プロセシングから生じるいくつかの異なるポリペプチドの1つである。本明細書に記載される診断、経過観察およびその他の方法は、分解産物を含む他のガストリン遺伝子産物ではなくhPGを特異的に検出する。プロガストリンのレベルは、当業者に公知のいずれの方法によって測定することもできる。
【0135】
好ましくは、サンプルにおけるプロガストリンレベルの決定は、前記サンプルをプロガストリン結合分子と接触させることおよび前記プロガストリン結合分子とプロガストリンとの結合を測定することを含む。
【0136】
発現レベルがタンパク質レベルで測定される場合、それは特に、例えば抗体などの特異的なプロガストリン結合分子を用いて、特に、ビオチン化または他の等価技術とその後の特異的抗体を用いた免疫沈降を用いる細胞膜染色、ウエスタンブロット、ELISAまたはELISPOT、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光(IF)、抗体マイクロアレイ、または免疫組織化学と組み合わせた組織マイクロアレイなどの周知の技術を用いて行うことができる。他の好適な技術としては、FRETまたはBRET、単一または複数の励起波長を用いおよび適した光学的方法のいずれかを適用する単細胞顕微鏡法または組織化学法、例えば、電気化学的方法(電圧測定および電流測定技術)、原子間力顕微鏡法、および高周波法、例えば、多極共鳴分光法、共焦点および非共焦点、蛍光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率、および複屈折または屈折率の検出(例えば、表面プラズモン共鳴、偏光解析法、レゾナントミラー法、回折格子カプラー導波管法(grating coupler waveguide method)法または干渉法)、細胞ELISA、フローサイトメトリー、放射性同位元素、磁気共鳴画像法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)による分析;HPLC質量分析;液体クロマトグラフィー/質量分析/質量分析(LC-MS/MS))が挙げられる。これらの技術は総て当技術分野で周知であり、ここでさらに詳しく述べる必要はない。これらの種々の技術は、プロガストリンレベルを測定するために使用することができる。
【0137】
本発明のプロガストリン結合分子、特に、抗プロガストリン抗体は、イムノアッセイにおいて特に有用である。イムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫拡散アッセイ、または免疫検出アッセイ、例えば、表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、Biacore(登録商標)アッセイ)、ELISPOT、スロットブロット、またはウエスタンブロットであり得る。このような技術の一般的な指針としては、例えば、Ausubel et al. (編) (1987) in “Current Protocols in Molecular Biology” John Wiley and Sons, New York, N.Y.を参照。
【0138】
抗体は、医学、獣医学およびその他の免疫検出分野で使用される多くのアッセイ技術において重要な試薬である。このような試験には、例えば、酵素結合ELISA、RIA、IHC、およびIFアッセイなどの、慣用される多くのイムノアッセイ技術が含まれる。プロガストリンレベルは優先的には、前記タンパク質に対する抗体を用い、当業者に公知のいずれかの方法によってアッセイされる。好ましくは、プロガストリンレベルは、好ましくは、RIAおよびELISAから選択される技術に基づく免疫酵素アッセイを、少なくとも1つのプロガストリン結合分子とともに用いて決定される。最も好ましくは、前記レベルは、ELISAにより、少なくとも1つのプロガストリン結合分子を用いて決定される。より好ましくは、プロガストリンレベルは、免疫酵素アッセイ、最も好ましくは、ELISAアッセイを用い、1つのプロガストリン結合分子を用いて測定される。
【0139】
特に有用な実施形態では、本明細書で開示される方法は、対象由来の生体サンプルにおいてプロガストリンレベルを、プロガストリン結合分子とともに、免疫酵素アッセイを用いて、好ましくは、RIAおよびELISAから選択される技術に基づいて決定することを含んでなる。
【0140】
一般に、抗hPG抗体を用いてhPGレベルを決定するためのELISA法は以下の通りである。既知量の、hPGに対する第1の「捕捉」抗体が結合した96ウェルプレートのウェルなどの表面が調製される。捕捉抗体は、例えば、hPGのC末端またはN末端と結合する抗hPG抗体であり得る。ブロッキングの後、試験サンプルをこの表面に適用した後、インキュベーションを行う。次に、この表面を洗浄して結合しなかった抗原を除去し、hPGに対する第2の「検出」抗体を含有する溶液を適用する。検出抗体が捕捉抗体とは異なるエピトープに結合する限り、検出抗体は、本明細書に記載される抗hPG抗体のいずれであってもよい。例えば、捕捉抗体がhPGのC末端ペプチド領域と結合する場合には、好適な検出抗体はhPGのN末端ペプチド領域と結合するものであろう。あるいは、捕捉抗体がhPGのN末端ペプチド領域と結合する場合には、好適な検出抗体はhPGのC末端ペプチド領域と結合するものであろう。プロガストリンレベルは、直接(例えば、検出抗体が検出可能な標識にコンジュゲートされている場合)検出することもできるし、または間接的に(検出抗hPG抗体と結合する標識された二次抗体を介して)検出することもできる。
【0141】
特定の実施形態では、hPGレベルは、試験サンプルから以下のように測定される。96ウェルマイクロタイタープレートを0.5~10μg/mLのウサギC末端抗hPGポリクローナル抗体でコーティングし、一晩インキュベートする。次に、プレートをPBS-Tween(0.05%)で3回洗浄し、PBS-Tween(0.05%)中、2%(w/v)の脱脂ドライミルクでブロッキングする。別途、試験サンプル、対照サンプル(ブランクまたはPG陰性血漿または血清サンプル)、および約5pM(0.5×10-11M)および約0.1nM(1×10-10M)のhPG参照標準(PG陰性血漿または血清中に希釈した凍結乾燥hPG)を適当な希釈剤(例えば、PBS-Tween0.05%)で調製する。サンプルをコーティングプレート上で、37℃にて2~4時間、あるいはまた21℃にて12~16時間インキュベートする。インキュベーション後、プレートをPBS-Tween(0.05%)で3回洗浄し、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Nakane et al., 1974, J. Histochem. Cytochem. 22(12): 1084-1091)にカップリングした0.001~0.1μg/mLの本明細書に記載されるようなN末端抗hPGモノクローナル抗体とともに、21℃で30分間インキュベートする。次に、プレートをPBS-Tween(0.05%)で3回洗浄し、HRP基質を21℃で15分間加える。100μLの0.5M硫酸を加えることによって反応を停止し、405nmで光学密度の測定を行う。試験サンプルのhPGレベルは、hPG参照標準から得られた測定値から作成した標準曲線と比較することによって決定する。
【0142】
第1の実施形態において、本発明による方法は、生体サンプルを、hPGのC末端部分内に位置するエピトープに、またはhPGのN末端部分内に位置するエピトープに結合する抗hPG抗体と接触させることを含んでなる。
【0143】
より具体的な実施形態では、本発明による方法は、生体サンプルを、hPGのエピトープに結合する抗hPG抗体と接触させることを含んでなり、前記エピトープは、hPGのアミノ酸10~14、hPGのアミノ酸9~14、hPGのアミノ酸4~10、hPGのアミノ酸2~10およびhPGのアミノ酸2~14に相当するアミノ酸配列の中から選択されるプロガストリンのN末端部分のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を含み、hPGのアミノ酸配列は配列番号1である。
【0144】
より具体的な実施形態では、本発明による方法は、生体サンプルをhPGのエピトープに結合する抗hPG抗体と接触させることを含んでなり、前記エピトープは、hPGのアミノ酸71~74、hPGのアミノ酸69~73、hPGのアミノ酸71~80(配列番号40)、hPGのアミノ酸76~80、およびhPGのアミノ酸67~74に相当するアミノ酸配列の中から選択されるプロガストリンのC末端部分のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を含み、hPGのアミノ酸配列は配列番号1である。
【0145】
PGを検出する本方法の特定の実施形態では、前記方法は、対象由来の生体サンプルを、プロガストリンの第1の部分と結合する第1の分子およびプロガストリンの第2の部分と結合する第2の分子と接触させる工程を含んでなる。前記プロガストリン結合分子が抗体であるさらに詳しい実施形態では、対象由来生体サンプルを、プロガストリンの第1のエピトープに結合する抗体およびプロガストリンの第2のエピトープに結合する第2の抗体と接触させる。
【0146】
好ましい実施形態によれば、前記第1の抗体を、不溶性のまたは部分的可溶性の担体に結合させる。前記第1の抗体がプロガストリンに結合すると、その結果、前記生体サンプルからプロガストリンが捕捉される。好ましくは、前記第1の抗体は、hPGのエピトープに結合す抗体であり、前記エピトープは、上記のように、プロガストリンのC末端部分のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を含む。より好ましくは、前記第1の抗体は、WO2011/083088に記載されているハイブリドーマ2H9F4B7により生産されるモノクローナル抗体Mab14である。ハイブリドーマ2H9F4B7は、ブダペスト条約の下、2016年12月27日に、CNCM、パスツール研究所、25-28リュ・ドゥ・ドクトゥール・ルー、75724パリCEDEX15、フランスに参照I-5158として寄託されたものである。
【0147】
別の好ましい実施形態によれば、前記第2の抗体は、下記のように、検出可能な部分で標識されている。第2の抗体がプロガストリンに結合すると、その生体サンプル中に存在したプロガストリン分子の検出が可能となる。さらに、第2の抗体がプロガストリンに結合すると、その生体サンプル中に存在したプロガストリン分子の定量も可能となる。好ましくは、前記第2の抗体は、hPGのエピトープに結合する抗体であり、前記エピトープは、上記のように、プロガストリンのN末端部分のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を含む。より好ましくは、前記N末端抗体は、上記のように、ポリクローナル抗体である。あるいは、プロガストリンのN末端内のエピトープと結合するモノクローナル抗体、例えば、上記のN末端モノクローナル抗体、特に、それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、配列番号19、20および21のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体を使用することも可能である。
【0148】
特に好ましい実施形態では、第1の抗体を不溶性のまたは部分的可溶性の担体に結合させ、第2の抗体を検出可能な部分で標識する。
【0149】
好ましい実施形態では、肺癌の診断のための本発明の方法は、ヒト対象由来の生体サンプルにおけるプロガストリンの検出を含んでなる。
【0150】
免疫チェックポイント阻害剤
第1の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4(CD2ファミリーの分子に属し、NK、γδ、および記憶CD8+(αβ)T細胞の総てで発現される)、CD160(BY55とも呼ばれる)、CGEN-15049、CHK1およびCHK2キナーゼ、IDO1、A2aRおよび様々なB-7ファミリーリガンドのいずれものうちいずれか1つの阻害剤である。
【0151】
例示的免疫チェックポイント阻害剤としては、抗CTLA-4抗体(例えば、イピリムマブ)、抗LAG-3抗体(例えば、BMS-986016)、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗Tim3抗体(例えば、TSR-022、MBG453)、抗BTLA抗体、抗KIR抗体、抗A2aR抗体、抗CD200抗体、抗PD-1抗体(例えば、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピディリズマブ)、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、BMS936559)、抗VISTA抗体(例えば、JNJ61610588)、抗CD28抗体、抗CD80または抗CD86抗体、抗B7RP1抗体、抗B7-H3抗体、抗HVEM抗体、抗CD137抗体(例えば、ウレルマブ)、抗CD137L抗体、抗OX40(例えば、9B12、PF-04518600、MEDI6469)、抗OX40L抗体、抗CD40または抗CD40L抗体、抗GAL9抗体、抗IL-10抗体、PD-1リガンド、例えば、PDL-1またはPD-L2の細胞外ドメインとIgG1(例えば、AMP-224)の融合タンパク質、OX40リガンド、例えば、OX40Lの細胞外ドメインとIgG1(例えば、MEDI6383)、IDO1薬(例えば、エパカドスタット)およびA2aR薬との融合タンパク質が含まれる。いくつかの免疫チェックポイント阻害剤は、承認されているか、現在、臨床試験中である。このような阻害剤としては、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、BMS936559、JNJ61610588、ウレルマブ、9B12、PF-04518600、BMS-986016、TSR-022、MBG453、MEDI6469、MEDI6383、およびエパカドスタットが含まれる。
【0152】
免疫チェックポイント阻害剤の例は、例えば、Marin-Acevedo et al., Journal of Hematology & Oncology 11: 8, 2018; Kavecansky and Pavlick, AJHO 13(2): 9-20, 2017; Wei et al., Cancer Discov 8(9): 1069-86, 2018に挙げられている。
【0153】
好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、LAG-3、Tim3、PD-1、PD-L1、VISTA、CD137、OX40、またはIDO1の阻害剤である。
【0154】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、低分子薬である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、可溶性受容体である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗体である。
【0155】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、拮抗抗体、すなわち、抗原、例えば、本明細書に記載される免疫チェックポイントタンパク質のいずれか1つの生物学的活性のうち1以上を阻害または低減する抗体である。特定の拮抗抗体は、前記抗原の生物学的活性のうち1以上を実質的にまたは完全に阻害する。用語「阻害する」、またはその文法的等価表現は、抗体に関して使用する場合、抗体が結合する抗原の生物学的活性を抑制、制限または低減する抗体を指す。抗体の阻害効果は、抗原の生物学的活性に測定可能な変化をもたらすものであり得る。
【0156】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、BMS936559、JNJ61610588、ウレルマブ、9B12、PF-04518600、BMS-986016、TSR-022、MBG453、MEDI6469、MEDI6383、およびエパカドスタットからなる群から選択される。
【0157】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、またはPD-L1の阻害剤である。好ましい実施形態では、前記免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、またはPD-L1のいずれか1つに対する抗体である。より好ましくは、前記抗体は、拮抗抗体である。いっそうより好ましくは、前記拮抗抗体は、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブの中から選択される。
【0158】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1の阻害剤である。好ましい実施形態では、前記免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1に対する抗体である。より好ましくは、前記抗体は、拮抗抗体である。いっそうより好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、またはピディリズマブである。
【0159】
核酸および発現系
本開示は、抗体、特に、抗hPG抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖遺伝子をコードするポリヌクレオチド、そのような核酸を含んでなるベクター、ならびに本開示の抗体を生産することができる宿主細胞を包含する。
【0160】
第1の態様では、本発明は、抗体、特に、上記のようにプロガストリンと特異的に結合し得る抗体をコードする1以上のポリヌクレオチドに関する。
【0161】
第1の実施形態は、上記の抗hPG抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドを提供する。好ましくは、前記重鎖は、配列番号4、5および6の配列の3つの重鎖CDRを含んでなる。より好ましくは、前記重鎖は、配列番号14の配列の可変領域を含んでなる重鎖を含んでなる。いっそうより好ましくは、前記重鎖は、配列番号16の完全な配列を有する。
【0162】
別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、上記の抗hPG抗体の軽鎖をコードする。好ましくは、前記重鎖は、配列番号7、8および9の配列の3つの重鎖CDRを含んでなる。より好ましくは、前記重鎖は、配列番号15の配列の可変領域を含んでなる重鎖を含んでなる。いっそうより好ましくは、前記重鎖は、配列番17の完全な配列を有する。
【0163】
本発明によれば、本発明の抗体を発現させるために様々な発現系が使用可能である。一態様において、このような発現系は、対象とするコード配列が生産され、次に精製可能なビヒクルに相当するが、適当なヌクレオチドコード配列で一過性にトランスフェクトされた際にイン・サイチュ(in situ)
でIgG抗体を発現可能な細胞でもある。
【0164】
本発明は、上記のポリヌクレオチドを含んでなるベクターを提供する。一実施形態では、このベクターは、対象とする抗体(例えば、抗hPG抗体)の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含有する。別の実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、対象とする抗体(例えば、抗hPG抗体)の軽鎖をコードする。本発明はまた、融合タンパク質、修飾抗体、それらの抗体フラグメント、およびプローブをコードするポリヌクレオチド分子を含んでなるベクターも提供する。
【0165】
対象とする抗体(例えば、抗hPG抗体)の重鎖および/または軽鎖を発現させるために、前記重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、それらの遺伝子が転写配列および翻訳配列に作動可能に連結されるように発現ベクターに挿入される。
【0166】
「作動可能に連結された」配列には、対象とする遺伝子に隣接している発現制御配列およびその対象とする遺伝子にトランスでまたは遠隔で作用する発現制御配列の両方を含む。用語「発現制御配列」は、本明細書で使用する場合、それらが結合されているコード配列の発現およびプロセシングに影響を与えるために必要なポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列としては、適当な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングシグナルおよびポリアデニル化シグナルなどの有効なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;および所望により、タンパク質の分泌を高める配列が含まれる。このような制御配列の性質は宿主生物によって異なり;原核生物では、このような制御配列は一般に、プロモーター、リボゾーム結合部位、および転写終結配列を含み;真核生物では一般に、このような制御配列は、プロモーター配列および転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、存在が発現およびプロセシングに不可欠な最小限の総ての成分を含み、また、存在が有利である付加的成分、例えば、リーダー配列および融合相手の配列も含み得ることが意図される。
【0167】
用語「ベクター」は、本明細書で使用する場合、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すことが意図される。ベクターの1つのタイプが「プラスミド」であり、プラスミドは、付加的なDNAセグメントが連結され得る環状の二本鎖DNAループを指す。ベクターのもう1つのタイプがウイルスベクターであり、付加的なDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞で自律的に複製することができる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込み可能であり、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。
【0168】
特定のベクターは、作動可能に連結された遺伝子の発現を指令することができる。このようなベクターは、本明細書では、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態である。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドはベクターの最も慣用される形態であることから互換的に使用され得る。しかしながら、本発明は、このような形態の発現ベクター、例えば、細菌プラスミド、YAC、コスミド、レトロウイルス、EBV由来エピソーム、および対象とする抗体(例えば、抗hPG抗体)の重鎖および/または軽鎖の発現を確保するために当業者が便宜であることを知る他の総てのベクターを含むことが意図される。当業者ならば、重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチドが異なるベクターにまたは同じベクターにクローン化され得ることを理解するであろう。好ましい実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、2つのベクターにクローニングされる。
【0169】
本発明のポリヌクレオチドおよびこれらの分子を含んでなるベクターは、好適な宿主細胞の形質転換のために使用することができる。用語「宿主細胞」は、本明細書で使用する場合、対象とする抗体(例えば、抗hPG抗体)を発現させるために組換え発現ベクターが導入された細胞を指すことが意図される。このような用語は特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の後代も指すことが意図されると理解されるべきである。突然変異または環境的影響のために後続世代で特定の改変が起こり得るので、このような後代は、事実上、親細胞と同一でなくてもよいが、本明細書で使用する場合、「宿主細胞」という用語の範囲内になお含まれる。
【0170】
形質転換は、細胞宿主にポリヌクレオチドを導入するためのいずれの既知の方法によって行うこともできる。このような方法は当業者に周知であり、デキストラン媒介形質転換、リン酸カルシウム沈殿法、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチドのリポソームへの封入、微粒子銃注入およびDNAの核への直接マイクロインジェクションが含まれる。
【0171】
宿主細胞は、1以上の発現ベクターと共トランスフェクトしてもよい。例えば、宿主細胞は、上記のように対象とする抗体(例えば、抗hPG抗体)の重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターでトランスフェクトすることができる。あるいは、宿主細胞は、対象とする抗体(例えば、抗hPG抗体)の重鎖をコードする第1のベクター、および前記抗体の軽鎖をコードする第2のベクターで形質転換することができる。哺乳動物細胞は、組換え治療免疫グロブリンの発現に、特に、組換え抗体全体の発現に慣用されている。例えば、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要前初期遺伝子プロモーターエレメントを有するものなどの発現シグナルを含むベクターとともに、HEK293またはCHO細胞などの哺乳動物細胞が、本発明のヒト化抗hPG抗体を発現させるために有効な系である(Foecking et al., 1986, Gene 45:101; Cockett et al., 1990, Bio/Technology 8: 2)。
【0172】
さらに、挿入配列の発現を調整するか、または望まれる特定の様式で遺伝子産物を修飾およびプロセシングする宿主細胞を選択することができる。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシングは、そのタンパク質の機能に重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾に特徴および特定の機構を有する。発現される対象抗体の適正な修飾およびプロセシングを確保するように適当な細胞株または宿主系が選択される。ゆえに、一次転写産物の適正なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が使用可能である。このような哺乳動物宿主細胞としては、限定されるものではないが、 CHO、COS、HEK293、NS/0、BHK、Y2/0、3T3または骨髄腫細胞(これらの細胞株は総て、the Collection Nationale des Cultures de Microorganismes、パリ、フランス、またはthe American Type Culture Collection、マナサス、VA、U.S.A.などの公的寄託機関から入手可能である)が挙げられる。
【0173】
組換えタンパク質の長期、高収量生産のためには、安定発現が好ましい。本発明の一実施形態では、抗体を安定発現する細胞株が作出され得る。ウイルス複製起点を含む発現ベクターを使用するよりも、宿主細胞を、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、および当業者に公知の他の適当な配列、および選択マーカーを含む適当な発現調節エレメントの制御下、DNAで形質転換させる。外来DNAの導入の後、操作された細胞を富化培地で1~2日間増殖させ、次いで選択培地に移行することができる。組換えプラスミドの選択マーカーは選択耐性を付与し、細胞が染色体にそのプラスミドを安定に組み込み、拡大培養により細胞株とすることを可能とする。安定細胞株を構築するための他の方法も当技術分野で公知である。特に、部位特異的組み込みのための方法が開発されている。これらの方法によれば、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、および他の適当な配列を含む適当な発現調節エレメントの制御下、形質転換DNAが、宿主細胞ゲノムの、予め開裂された特定の標的部位に組み込まれる(Moele et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 104(9): 3055-3060; US5,792,632;US5,830,729US6,238,924;WO2009/054985;WO03/025183;WO2004/067753)。
【0174】
本発明によれば、限定されるものではないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al., Cell 11:223, 1977)、それぞれtk、hgprtまたはaprt細胞における、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska et al., Proc Natl Acad Sci USA 48: 202, 1992)、メチオニンスルホキシイミドの存在下でのグルタミン酸シンターゼ選択(Adv Drug Del Rev, 58: 671, 2006、およびLonza Group Ltd.のウェブサイトまたは文献)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell 22: 817, 1980)遺伝子を含むいくつかの選択系が使用可能である。また、代謝拮抗物質耐性は、以下の遺伝子の選択に基づいて使用することができる:メトトレキサート耐性を付与するdhfr(Wigler et al., Proc Natl Acad Sci USA 77: 357, 1980);ミコフェノール酸耐性を付与するgpt(Mulligan et al., Proc Natl Acad Sci USA 78: 2072, 1981);アミノグリコシドG-418耐性を付与するneo(Wu et al., Biotherapy 3: 87, 1991);およびハイグロマイシン耐性を付与するhygro(Santerre et al., Gene 30: 147, 1984)。所望の組換えクローンを選択するためには当技術分野で公知の組換えDNA技術の方法が慣例的に適用され、このような方法は例えば、Ausubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1993)に記載されている。抗体の発現レベルは、ベクター増幅により増大され得る。抗体を発現するベクター系におけるマーカーが増幅可能であれば、培養物中に存在する阻害剤のレベルの増加はマーカー遺伝子のコピー数を増加させる。増幅される領域は本発明のIgG抗体をコードする遺伝子と関連するので、前記抗体の生産も増加する(Crouse et al., Mol Cell Biol 3: 257, 1983)。本発明の遺伝子を発現する別の方法も存在し、当業者に公知である。例えば、本発明の遺伝子の上流の発現調節エレメントと結合し得る修飾されたジンクフィンガータンパク質を作出することができ;前記の作出されたジンクフィンガータンパク質(ZFN)の本発明の宿主細胞における発現は、タンパク質生産の増加をもたらす(例えば、Reik et al., Biotechnol. Bioeng., 97(5): 1180-1189, 2006参照)。さらに、ZFNは、DNAの所定のゲノム位置への組み込みを刺激して、高効率の部位特異的遺伝子付加をもたらし得る(Moehle et al, Proc Natl Acad Sci USA, 104: 3055, 2007)。
【0175】
対象とする抗体(例えば、抗hPG抗体)は、所望の抗体を発現するために必要な培養条件下で形質転換宿主細胞の培養物を増殖させることによって作製することができる。次に、生じた発現抗体を培養培地または細胞抽出物から精製することができる。対象とする抗体(例えば、抗hPG抗体)の可溶性形態は、培養上清から回収することができる。次に、それを免疫グロブリン分子の精製に関して当技術分野で公知のいずれかの方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特に、Fcに対するプロテインAアフィニティーなど)、遠心分離、示差溶解度またはタンパク質の精製のための他のいずれかの標準的技術によって精製することができる。精製の好適な方法は当業者に自明である。
【0176】
従って、本発明の別の態様は、本明細書に記載される抗体(例えば、抗hPG抗体)の生産のための方法に関し、前記方法は、
a)上記の宿主細胞を好適な培養条件下、培養培地中で増殖させる工程;および
b)培養培地からまたは前記培養細胞から抗体(例えば、抗hPG抗体)を回収する工程
を含んでなる。
【0177】
医薬組成物
本免疫チェックポイント阻害剤は、組成物として処方することができる。場合により、これらの組成物は、下記の第2の治療薬などの1以上の付加的治療薬を含んでなり得る。これらの組成物は、通常、薬学上許容される担体および/または賦形剤を標準的に含む無菌の医薬組成物の一部として供給される。よって、別の態様において、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤と薬学上許容されるビヒクルおよび/または賦形剤とを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0178】
この組成物は、いずれの好適な形態であってもよい(それを患者に投与する所望の方法に応じる)。本明細書で使用する場合、「投与すること」は、ある用量の化合物(例えば、上記のような免疫チェックポイント阻害剤)または組成物(例えば、医薬組成物、例えば、上記のような免疫チェックポイント阻害剤を含有する医薬組成物)を対象に与える方法を意味する。本明細書に記載される方法において使用される組成物は、例えば、硝子体内に(例えば、硝子体内注射)、点眼剤により、筋肉内に、静脈内に、皮内に、経皮的に、動脈内に、腹膜内に、病巣内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸腔内に、気管内に、くも膜下腔内に、鼻腔内に、腟内に、直腸内に、局所的に、腫瘍内に、腹膜に、皮下に、結膜下に、膀胱内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、眼内に、眼窩内に、経口で、局所的に、経皮的に、吸入により、注射により、移植により、注入により、持続注入により、標的細胞の直接的な局所灌流浴により、カテーテルにより、洗浄により、クリームで、または脂質組成物で投与することができる。本明細書に記載される方法において使用される組成物はまた、全身投与または局所投与することもできる。投与方法は、様々な因子(例えば、投与される化合物または組成物および治療される病態、疾患、または障害の重症度)によって異なり得る。いずれの所与の場合においても最も好適な投与経路は、特定の阻害剤、対象、ならびに対象の疾患および健康状態の性質および重症度によって異なる。免疫チェックポイント阻害剤は、水溶液として処方し、皮下注射によって投与することができる。
【0179】
医薬組成物は、好都合には、一用量当たり所定量の免疫チェックポイント阻害剤を含有する単位投与形で提供することができる。このような単位は、例えば、限定されるものではないが、5mg~5g、例えば10mg~1g、または20~50mgを含有し得る。本開示で使用するための薬学上許容される担体は、例えば、治療される病態または投与経路によって多様な形態を採り得る。
【0180】
本開示の医薬組成物は、所望の純度の抗体を当技術分野で一般に使用される任意選択の薬学上許容される担体、賦形剤または安定剤(これらは総て本明細書では「担体」と呼ばれる)、すなわち、緩衝剤、安定剤、保存剤、等張剤、非イオン性洗剤、抗酸化剤、および他の様々な添加剤と混合することによって、凍結乾燥処方物または水溶液として保存用に調製することができる。Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第16版 (Osol, ed. 1980)参照。このような添加剤は、使用される用量および濃度でレシピエントに無毒でなければならない。
【0181】
緩衝剤は、pHを生理学的条件付近の範囲に維持する助けをする。緩衝剤は、約2mM~約50mMの範囲の濃度で存在することができる。本開示で使用するための好適な緩衝剤としては、有機酸および無機酸の両方ならびにその塩、例えば、クエン酸バッファー(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸バッファー(例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸バッファー(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸バッファー(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸バッファー(例えば、グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸バッファー(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸バッファー(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)および酢酸バッファー(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)が含まれる。さらに、リン酸バッファー、ヒスチジンバッファーおよびトリメチルアミン塩、例えば、Trisが使用可能である。
【0182】
保存剤は、微生物の増殖を遅延させるために添加することができ、0.2%~1%(w/v)の範囲の量で添加可能である。本開示で使用するために好適な保存剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタ-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、ベンザルコニウムハライド(例えば、クロライド、ブロマイド、およびイオダイド)、塩化ヘキサメトニウム、およびアルキルパラベン、例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、および3-ペンタノールが含まれる。等張剤は、「安定剤」と呼ばれることもあり、本開示の液体組成物の等張性を確保するために加えることができ、多価糖アルコール、例えば、三価以上の糖アルコール、例えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールが含まれる。安定剤は、増量剤から治療薬を安定化する、または変性もしくは容器壁への付着を防ぐ助けをする添加剤までの機能範囲であり得る広いカテゴリーの賦形剤を指す。典型的な安定剤は、多価糖アルコール(上記に列挙);アルギニン、リシン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニンなどのアミノ酸;ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール、ガラクチトール、グリセロールなどの有機糖または糖アルコール(イノシトールなどのシクリトールを含む);ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウムなどの硫黄含有還元剤;低分子量ポリペプチド(例えば、10残基以下のペプチド);ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドン単糖類、例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコースなどの親水性ポリマー;ラクトース、マルトース、スクロースなどの二糖類およびラフィノースなどの三糖類;ならびにデキストランなどの多糖類であり得る。安定剤は、有効タンパク質の重量部当たり0.1~10,000重量部の範囲で存在し得る。
【0183】
非イオン性界面活性剤または洗剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療薬の可溶化を助けるため、ならびに治療タンパク質を振盪により誘発される凝集から保護するために(これはまた処方物をタンパク質の変性を生じずに、応力を受ける剪断面に曝すことを可能とする)添加することができる。好適な非イオン界面活性剤としては、ポリソルベート(20、80など)、ポリオキサマー(184、188など)、プルロニックポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)が含まれる。非イオン界面活性剤は、約0.05mg/ml~約1.0mg/ml、例えば約0.07mg/ml~約0.2mg/mlの範囲で存在し得る。
【0184】
さらなるさまざまな賦形剤としては、増量剤(例えば、デンプン)、キレート剤(例えば、EDTA)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)、および補助溶媒が含まれる。
【0185】
本発明はさらに、少なくとも、
i)免疫チェックポイント阻害剤および
ii)例えば下記のような第2の治療薬
を同時、個別または逐次使用のための組合せ製剤として含んでなる医薬組成物を対象とする。
【0186】
「同時使用」は、本明細書で使用する場合、本発明による組成物の2つの化合物の、単一の同一剤形での投与を指す。
【0187】
「個別使用」は、本明細書で使用する場合、本発明による組成物の2つの化合物の、異なる剤形での同時投与を指す。
【0188】
「逐次使用」は、本明細書で使用する場合、本発明による組成物の2つの化合物の、それぞれ異なる剤形での連続的投与を指す。
【0189】
免疫チェックポイント阻害剤および第2の治療薬の組成物は、単独で、1以上の免疫チェックポイント阻害剤および/もしくは1以上の第2の治療薬の混合物として、癌、特にCRCを治療するために有用な他の薬剤と混合または組み合わせて、または癌、特にCRCのための他の療法の補助として投与することができる。好適な組合せおよび補助療法の例を以下に示す。
【0190】
本明細書に記載される免疫チェックポイント阻害剤を含有する医薬キットが本開示により包含される。医薬キットは、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、凍結乾燥形態かまたは水溶液として)および以下:
・例えば下記のような第2の治療薬;
・免疫チェックポイント阻害剤を投与するためのデバイス、例えば、ペン、針および/またはシリンジ;ならびに
・阻害剤が凍結乾燥形態である場合には、その阻害剤を再懸濁させるための製薬等級水またはバッファー
のうち1以上を含んでなるパッケージである。
【0191】
各単位用量の免疫チェックポイント阻害剤は個別に包装することができ、キットは1以上の単位用量(例えば、2単位用量、3単位用量、4単位用量、5単位用量、8単位用量、10単位用量、またはそれを超える単位用量)を含有することができる。特定の実施形態では、1以上の単位用量はそれぞれシリンジまたはペンに収容される。
【0192】
有効用量
免疫チェックポイント阻害剤は一般に、意図される結果を達成するために有効な量、例えば、上記の方法のいずれかを用いることにより免疫チェックポイント阻害剤応答表現型を示すと特定された対象において癌を治療するために有効な量で使用する。免疫チェックポイント阻害剤を含んでなる医薬組成物は、このような患者(例えば、ヒト対象)に治療上有効な用量で投与することができる。
【0193】
用語「治療上有効な用量」は、有効化合物またはコンジュゲートの、対象において所望の生物学的応答を惹起する量を意味する。このような応答には、治療される疾患もしくは障害の症状の緩和、疾患の症状もしくは疾患それ自体の再発の予防、阻害もしくは遅延、治療を行わなかった場合に比べての対象の寿命の延長、または疾患の症状もしくは疾患それ自体の進行の予防、阻害もしくは遅延が含まれる。より具体的には、「治療上有効な」用量は、本明細書で使用する場合、治療利益を付与する量である。治療上有効な用量は、治療上有益な効果がその薬剤の毒性作用または有害作用を上回る用量でもある。CRC療法に関して、治療利益は、癌の進行(例えば、癌のある病期から次の病期への進行)の停止もしくは緩徐化、癌の症状もしくは徴候の増悪もしくは悪化の停止もしくは遅延、癌の重症度の軽減、癌の寛解の誘導、腫瘍細胞増殖、腫瘍サイズ、もしくは腫瘍数の阻害、またはPG血清レベルの低下のうちのいずれか1つまたは組合せを含む、癌のいずれの改善も意味する。
【0194】
有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らして、当業者の能力の範囲内である。化合物またはコンジュゲートの毒性および治療効力は、細胞培養および実験動物における標準的な薬学手順によって決定することができる。対象に投与する本免疫チェックポイント阻害剤または他の治療薬の有効量は、多発性骨髄腫の病期、カテゴリーおよび状態、ならびに対象の特徴、例えば、健康状態、年齢、性別、体重および薬物忍容性によって異なる。投与する本免疫チェックポイント阻害剤または他の治療薬の有効量はまた、投与経路および投与形によっても異なる。用量および間隔は、所望の治療効果を維持するために十分な有効化合物の血漿レベルを提供するために個々に調整することができる。
【0195】
投与する免疫チェックポイント阻害剤の量は、治療される癌の性質および病期、投与の形態、経路および部位、治療計画(例えば、別の治療薬が使用されるかどうか)、治療される特定の対象の年齢および状態、治療される患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する感受性を含む様々な因子によって異なる。適当な用量は当業者により容易に決定できる。最終的には、医師が使用する適当な用量を決定する。この用量は適当な頻度で反復することができる。副作用が生じれば、通常の臨床実践に従って、用量および/または頻度を変更または低減することができる。適切な用量および治療計画は、当業者に公知の従来技術を用いて治療の進行の経過観察を行うことによって確立することができる。
【0196】
有効用量はまず、イン・ビトロアッセイから評価することができる。例えば、動物において使用するための初期用量は、イン・ビトロで測定した場合に、対応する免疫チェックポイントタンパク質の阻害剤の結合親和性以上の、免疫チェックポイント阻害剤の循環血中濃度または血清濃度を達成するように処方することができる。特定の阻害剤のバイオアベイラビリティを考慮してこのような循環血中濃度または血清濃度を達成するための用量の計算は、十分に当業者の能力の範囲内である。指針として、Fingl & Woodbury, “General Principles” in Goodman and Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics, Chapter 1, 最新版, Pagamonon Pressおよびそこに挙げられている参照文献が参照される。
【0197】
初期用量は動物モデルなどのイン・ビボデータから評価することができる。各癌種を治療するための化合物の有効性を試験するために有用な動物モデルは、当技術分野で周知である。当業者は、ヒト投与に好適な用量を決定するためにこのような情報を慣例的に適合させることができる。
【0198】
本明細書に記載されるような免疫チェックポイント阻害剤の有効用量は、単回(例えば、ボーラス)投与、、多回投与もしくは連続投与当たり約0.001~約75mg/kgの範囲、または単回(例えば、ボーラス)投与、、多回投与もしくは連続投与当たり0.01~5000μg/mlの血清濃度を達成するための範囲、または治療される病態、投与経路ならびに対象の年齢、体重および状態に応じたいずれかの有効な範囲もしくは値であり得る。特定の実施形態では、各用量は、体重キログラム当たり約0.5μg~約50μg、例えば、体重キログラム当たり約3μg~約30μgの範囲であり得る。
【0199】
投与の量、頻度、および期間は、患者の年齢、体重、および病態などの様々な因子によって異なる。投与のための治療計画は、2週間~無期限、2週間~6か月、3か月~5年、6か月~1年または2年、8か月~18か月などで継続することができる。場合によっては、治療計画は、例えば、1日1回、1日2回、2日毎、3日毎、5日毎、1週間毎、2週間毎、または1か月毎の反復投与を提供する。反復投与は、同じ用量であっても異なる用量であってもよい。投与は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれを超えて反復させることができる。治療上有効な量の免疫チェックポイント阻害剤は、単回用量としてまたは治療計画のコースで、例えば、1週間、2週間、3週間、1か月、3か月、6か月、1年、またはそれより長いコースで投与することができる。
【0200】
治療方法
本明細書に開示される方法は、免疫療法に応答する患者の選択を可能とするため、癌を治療するために特に有用である。
【0201】
よって、本開示の態様は、免疫チェックポイント阻害剤を癌患者に投与することを含んでなる癌治療の方法に関し、前記方法は、免疫チェックポイント阻害剤に応答する患者を選択する前工程を含んでなる。
【0202】
別の実施形態では、本発明は、癌治療において使用するための免疫チェックポイント阻害剤に関し、前記使用は、免疫チェックポイント阻害剤に応答する患者を選択する前工程を含んでなる。
【0203】
よって、本明細書では、癌治療において使用するための免疫チェックポイント阻害剤が提供され、前記使用は、
a)本発明による方法を用いて免疫チェックポイント阻害剤に応答する患者を選択すること
を含んでなる。
【0204】
別の実施形態は、癌を治療するための薬剤を製造するための免疫チェックポイント阻害剤の使用に関し、前記治療は、免疫チェックポイント阻害剤に応答する患者を選択する前工程を含んでなる。
【0205】
前記患者選択は、上記の方法のいずれかにより行われる。
【0206】
本開示はまた、癌に罹患している対象のための免疫チェックポイント阻害剤治療を計画するための方法に関し、前記方法は、
a)上記の方法に従って免疫チェックポイント阻害剤応答または不応答表現型を判定すること、および
b)前記の特定された免疫チェックポイント阻害剤応答または不応答表現型に従って免疫チェックポイント阻害剤治療の用量を計画すること
を含んでなる。
【0207】
本開示は、免疫チェックポイント阻害剤による、癌に罹患している対象の治療方法にも引き出され、
a)前記の癌に罹患している対象の生体サンプルから、本発明による方法を用いて免疫チェックポイント阻害剤応答または不応答表現型の存在を判定すること、および
b)工程(a)の結果に関して免疫チェックポイント阻害剤治療を適合させること
を含んでなる。
【0208】
場合によっては、工程(b)で決定された免疫チェックポイント阻害剤の用量を対象に投与する。
【0209】
別の実施形態は、癌の治療において使用するための免疫チェックポイント阻害剤に関し、前記使用は、
a)前記の癌に罹患している対象の生体サンプルから、本発明による方法を用いて免疫チェックポイント阻害剤応答または不応答表現型の存在を判定すること、
b)工程(a)の結果に関して免疫チェックポイント阻害剤治療を適合させること
を含んでなる。
【0210】
場合によっては、工程(b)で決定された免疫チェックポイント阻害剤の用量を対象に投与する。
【0211】
別の実施形態は、癌の治療のための薬剤を製造するための免疫チェックポイント阻害剤の使用に関し、前記治療は、
a)前記の癌に罹患している対象の生体サンプルから、本発明による方法を用いて免疫チェックポイント阻害剤応答または不応答表現型の存在を判定すること、および
b)工程(a)の結果に関して免疫チェックポイント阻害剤治療を適合させること
を含んでなる。
【0212】
前記の免疫チェックポイント阻害剤治療の適合は、
-対象が免疫チェックポイントン阻害剤不応答と特定された場合には、前記免疫チェックポイント阻害剤治療の低減もしくは抑制、または
-対象が免疫チェックポイント阻害剤応答と特定された場合には、前記免疫チェックポイント阻害剤治療の継続
からなり得る。
【0213】
よって、本開示は、必要とする患者において癌を治療する方法を提供する。一般に、これらの方法は、患者に治療上有効な量の本明細書に記載される免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含んでなる。別の実施形態では、本開示は、癌の治療において使用するための本明細書に記載される免疫チェックポイント阻害剤を提供する。本明細書に開示される方法に従って治療することができる癌の例としては、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ系悪性腫瘍が挙げられる。より具体的には、本発明による癌は、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮扁平上皮細胞癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌を含む肺癌、口咽頭癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、腹膜癌、食道癌、肝細胞癌、消化管癌および消化管間質癌を含む胃癌、膵臓癌、膠芽腫、脳癌、神経系癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、胆嚢癌、外陰癌、精巣癌、甲状腺癌、カポジ肉腫、肝癌、肛門癌、陰茎癌、非黒色腫皮膚癌、黒色腫、皮膚黒色腫、表在拡大黒色腫、悪性黒子黒色腫、末端部黒子黒色腫、結節性黒色腫、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫(ホジキンリンパ腫;非ホジキンリンパ腫、例えば、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球型(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびワルデンストロームマクログロブリン血症);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病(CML);急性骨髄芽球性白血病(AML);および移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症に関連する異常な血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、メイグス症候群、脳癌、および口唇・口腔癌を含む頭頸部癌、ならびに関連の転移を含んでなる群から選択される。
【0214】
好ましい実施形態では、前記癌は、肺癌、口唇・口腔癌、口咽頭癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、前立腺癌、食道癌、胆嚢癌、肝臓癌、肝細胞癌、消化管癌および消化管間質癌を含む胃癌、膵臓癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、カポジ肉腫、腎臓癌、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、肝細胞腫、肝癌、肛門癌、甲状腺癌、非黒色腫皮膚癌、皮膚黒色腫、脳癌、神経系癌、精巣癌、子宮頸癌、子宮癌、子宮内膜癌、卵巣癌、または乳癌である。
【0215】
より好ましい実施形態では、前記癌は、食道癌、肝臓癌、肝細胞癌、消化管癌および消化管間質癌を含む胃癌、膵臓癌、ホジキンリンパ腫、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、肝細胞腫、肝癌、肛門癌、非黒色腫皮膚癌、皮膚黒色腫、子宮頸癌、子宮癌、子宮内膜癌、卵巣癌、または乳癌である。
【0216】
本免疫チェックポイント阻害剤が投与される対象は、好ましくは、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)または霊長類(例えば、サルまたはヒト)などの哺乳動物である。対象または患者は、好ましくは、成人患者または小児患者などのヒトである。
【0217】
免疫チェックポイント阻害剤療法に好適な患者は、癌と診断された患者である。癌は、いずれのタイプおよびいずれの臨床病期または臨床発現のものでもよい。好適な対象としては、腫瘍(手術可能または手術不可能)を有する患者、腫瘍が外科的に除去された患者、例えばRASまたはAPCなどの癌遺伝子に突然変異を有する細胞を含んでなる腫瘍を有する患者、免疫チェックポイント阻害剤療法と組み合わせてまたは免疫チェックポイント阻害剤療法の補助として癌のための他の療法を受けたまたは受ける患者が含まれる。癌のための他の療法としては、限定されるものではないが、化学療法薬治療、放射線療法、外科的切除、および以下に詳細に示すような1以上の他の治療抗体による治療が含まれる。
【0218】
他の実施形態によれば、本明細書に開示されるような免疫チェックポイント阻害剤は、転移性癌の予防を必要とする対象に組成物として治療上有効な量で投与される。このような対象としては、限定されるものではないが、原発性癌を有すると判定されたが、癌が遠隔組織または器官に拡散していることが知られていない対象を含む。
【0219】
さらに他の実施形態によれば、本明細書に開示されるような免疫チェックポイント阻害剤は、転移性癌の再発の予防を必要とする対象に組成物として治療上有効な量で投与される。このような対象としては、限定されるものではないが、原発性癌または転移性癌に関して従前に治療を受け、治療の後にこのような癌が見かけ上消失した対象が含まれる。
【0220】
他の実施形態によれば、本明細書に開示されるような免疫チェックポイント阻害剤は、癌幹細胞の増殖の阻害を必要とする対象に組成物として治療上有効な量で投与される。このような対象としては、限定されるものではないが、増殖または転移がその中に癌幹細胞が存在することに少なくとも部分的に帰因する癌を有する対象が含まれる。他の実施形態は、癌幹細胞をそのような細胞の増殖を防ぐまたは阻害するために有効な量の免疫チェックポイント阻害剤組成物と接触させることにより、そのような幹細胞の増殖を防ぐまたは阻害する方法を提供する。このような方法はイン・ビトロまたはイン・ビボで行うことができる。
【0221】
血清PGレベルもまた、癌治療の有効性を評価する上で有用である。よって、本開示は、癌を前記阻害剤で処置される患者においてPGレベルを決定することを含んでなる、免疫チェックポイント阻害剤による癌療法の有効性を経過観察するための方法を提供する。癌療法の有効性を経過観察するための方法は、免疫チェックポイント阻害剤の投与を含んでなる癌治療を受けている癌患者において、本開示の抗PGモノクローナル抗体を用いてhPGレベルを繰り返し決定することを含んでなり、治療期間における患者の循環hPGレベルの低下が治療の有効性を示す。例えば、患者の循環hPGレベルの最初の測定を行った後に、患者が結腸直腸癌の治療を受けている間または受けた後に2回目の測定を行うことができる。その後、これら2回の測定を比較し、hPGレベルの低下が治療利益を示す。
【0222】
免疫チェックポイント阻害剤療法は、1以上の他の治療と組み合わせる、または1以上の他の治療の補助とすることができる。他の治療としては、限定されるものではないが、本明細書に記載されるように、化学療法薬治療、放射線療法、外科的切除、および抗体療法が含まれる。
【0223】
免疫チェックポイント阻害剤療法は、外科的切除を含む他の治療の補助とすることができる。
【0224】
本明細書で提供されるような併用療法は、患者への少なくとも2つの薬剤の投与を含み、その1つは本開示の免疫チェックポイント阻害剤組合せであり、もう1つは他の治療薬である。この実施形態によれば、本発明は、癌の治療のための上記の免疫チェックポイント阻害剤に関し、前記免疫チェックポイント阻害剤は、前記の他の治療薬とともに投与される。免疫チェックポイント阻害剤と他の治療薬は、同時、逐次、または個別に投与することができる。
【0225】
「治療薬」は、抗体、ペプチド、タンパク質、酵素、および化学療法薬などの生物学的薬剤を包含する。治療薬はまた、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)などの細胞結合剤(CBA)と化学化合物免疫複合体を包含する。コンジュゲート中の薬物は、本明細書に記載されるものなどの細胞傷害性薬剤であり得る。
【0226】
本明細書で使用する場合、免疫チェックポイント阻害剤および他の治療薬は、同日に、例えば、同じ患者訪問時に、患者に投与される場合には逐次に投与されると言われる。逐次投与は1、2、3、4、5、6、7または8時間あけて行うことができる。これに対し、本開示の免疫チェックポイント阻害剤および他の治療薬は、それらが異なる日に患者に投与される場合には、個別に投与されると言われ、例えば、本開示の免疫チェックポイント阻害剤および他の治療薬は、1日、2日または3日、1週間、2週間または1か月間隔で投与することができる。本開示の方法において、本開示の免疫チェックポイント阻害剤の投与は、他の治療薬の投与の前または後に行うことができる。
【0227】
限定されない例として、本免疫チェックポイント阻害剤および他の治療薬をある期間に同時に投与し、その後に、本開示の免疫チェックポイント阻害剤と他の治療薬の投与が入れ替わる第2の期間を続けることもできる。
【0228】
本開示の組合せ療法は、相加よりも大きい効果、または相乗効果を生じ、免疫チェックポイント阻害剤も他の治療薬も単独で治療上有効な量で投与されない場合にも治療利益をもたらし得る。よって、このような薬剤は、より低量で投与し、有害作用の可能性および/または重大性を軽減することができる。
【0229】
好ましい実施形態では、他の治療薬は、化学療法薬である。前記化学療法薬は好ましくは、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生剤、有糸分裂阻害剤、クロマチン機能阻害剤、抗血管新生剤、抗エストロゲン、抗アンドロゲンまたは免疫調節剤である。
【0230】
用語「アルキル化剤」は、本明細書で使用する場合、細胞内のいずれかの分子、好ましくは、核酸(例えば、DNA)を架橋またはアルキル化することができるいずれの物質も指す。アルキル化剤の例としては、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、クロリドレート、ピポブロマン、プレドニムスチン、リン酸二ナトリウムもしくはエストラムスチンなどのナイトロジェンマスタード;シクロホスファミド、アルトレタミン、トロフォスファミド、スルホフォスファミドもしくはイフォスファミドなどのオキサゾホリン;チオテパ、トリエチルエナミンもしくはアルテトラミンなどのアジリジンもしくはイミン-エチレン;カルムスチン、ストレプトゾシン、フォテムスチンもしくはロムスチンなどのニトロソ尿素;ブスルファン、トレオスルファンもしくはインプロスルファンなどのアルキルスルホネート;ダカルバジンなどのトリアゼン;またはシスプラチナム、オキサリプラチンおよびカルボプラチンなどの白金錯体が含まれる。
【0231】
「代謝拮抗剤」という表現は、本明細書で使用する場合、特定の活性、通常はDNA合成に干渉することにより細胞増殖および/または代謝を遮断する物質を指す。代謝拮抗剤の例としては、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、5-フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、シトシンアラビノシド、6-メルカプトプリン(6-MP)、6-チオグアニン(6-TG)、クロロデスオキシアデノシン、5-アザシチジン、ゲムシタビン、クラドリビン、デオキシコホルマイシンおよびペントスタチンが挙げられる。
【0232】
本明細書で使用する場合、「抗腫瘍抗生剤」は、DNA、RNAおよび/またはタンパク質合成を妨げ得るまたは阻害し得る化合物である。抗腫瘍抗生剤の例としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ダクチノマイシン、ミトラマイシン、プリカマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、およびプロカルバジンが挙げられる。
【0233】
「有糸分裂阻害剤」は、本明細書で使用する場合、細胞周期および有糸分裂の正常な進行を妨げる。一般に、微小管阻害剤またはタキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルは、有糸分裂を阻害することができる。また、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなどのビンカアルカロイドも有糸分裂を阻害することができる。
【0234】
本明細書で使用する場合、用語「クロマチン機能阻害剤」または「トポイソメラーゼ阻害剤」は、トポイソメラーゼIまたはトポイソメラーゼIIなどのクロマチンモデリングタンパク質の正常な機能を阻害する物質を指す。クロマチン機能阻害剤の例としては、トポイソメラーゼIに対しては、カンプトテシンおよびその誘導体、例えば、トポテカンまたはイリノテカン、ならびにトポイソメラーゼIIに対しては、エトポシド、リン酸エトポシドおよびテニポシドが挙げられる。
【0235】
本明細書で使用する場合、用語「抗血管新生剤」は、血管の成長を阻害するいずれの薬物、化合物、物質または薬剤も指す。例示的抗血管新生剤としては、何ら限定されるものではないが、ラゾキシン、マリマスタット、バチマスタット、プリノマスタット、タノマスタット、イロマスタット、CGS-27023A、ハロフジノン、COL-3、ネオバスタット、BMS-275291、サリドマイド、CDC 501、DMXAA、L-651582、スクアラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、インターフェロン-α、EMD121974、インターロイキン-12、IM862、アンギオスタチンおよびビタキシンが挙げられる。
【0236】
本明細書で使用する場合、用語「抗エストロゲン」または「抗エストロゲン作用薬」は、エストロゲンの作用を低減する、その作用に拮抗するまたはその作用を阻害するいずれの物質も指す。抗エストロゲン作用薬の例は、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、アナストロゾール、レトロゾール、およびエキセメスタンである。
【0237】
本明細書で使用する場合、用語「抗アンドロゲン」または「抗アンドロゲン作用薬」は、アンドロゲンの作用を低減する、その作用に拮抗するまたはその作用を阻害するいずれの物質も指す。抗アンドロゲンの例は、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、スピロノラクトン、酢酸シプロテロン、フィナステリドおよびシメチジンである。
【0238】
「免疫調節剤」は、本明細書で使用する場合、免疫系を刺激する物質である。
【0239】
免疫調節剤の例としては、インターフェロン、インターロイキン(アルデスロイキン、OCT-43、デニロイキンジフチトクスおよびインターロイキン-2など)、タソネルミンなどの腫瘍壊死因子、またはレンチナン、シゾフィラン、ロキニメックス、ピドチモド、ペガデマーゼ、チモペンチン、ポリI:Cもしくはレバミゾールと5-フルオロウラシルとの併用などの他の免疫調節剤が挙げられる。
【0240】
さらに詳しくは、当業者は、“Association Francaise des Enseignants de Chimie Therapeutique”により編集され、“Traite de chimie therapeutique”と題されたvol. 6, Medicaments antitumouraux et perspectives dans le traitement des cancers, TEC & DOC, 2003編の手引き書を参照することができる。
【0241】
また、化学薬剤または細胞傷害性薬剤として、例えば、ゲフィチニブまたはエルロチニブなどの総てのキナーゼ阻害剤を挙げることができる。
【0242】
より一般には、好適な化学療法薬の例としては、限定されるものではないが、1-デヒドロテストステロン、5-フルオロウラシルダカルバジン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、アルデスロイキン、アルキル化剤、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、アントラマイシン(AMC))、有糸分裂阻害剤、シス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、ジアミノジクロロ白金、アントラサイクリン、抗生剤、代謝拮抗剤、アスパラギナーゼ、BCG生菌(膀胱腔内)、ベタメタゾンリン酸ナトリウムおよび酢酸ベタメタゾン、ビカルタミド、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、ロイコボリンカルシウム、カリケアマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BSNU)、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルヒチン、結合型エストロゲン、シクロホスファミド、シクロトスファミド、シタラビン、シタラビン、サイトカラシンB、シトキサン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダクチノマイシン(旧称アクチノマイシン)、ダウノルビシンHCL、クエン酸ダウノルビシン、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラセンジオン、ドセタキセル、メシル酸ドラセトロン、ドキソルビシンHCL、ドロナビノール、大腸菌L-アスパラギナーゼ、エメチン、エポエチン-α、エルウィニアL-アスパラギナーゼ、エステル化エストロゲン、エストラジオール、リン酸エストラムスチンナトリウム、臭化エチジウム、エチニルエストラジオール、エチドロネート、エトポシドシトロロルム因子、リン酸エトポシド、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルコナゾール、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、ゲムシタビンHCL、グルココルチコイド、酢酸ゴセレリン、グラミシジンD、グラニセトロンHCL、ヒドロキシ尿素、イダルビシンHCL、イフォスファミド、インターフェロンα-2b、イリノテカンHCL、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロリド、レバミゾールHCL、リドカイン、ロムスチン、メイタンシノイド、メクロレタミンHCL、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メルファランHCL、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、メチルテストステロン、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、酢酸オクトレオチド、オンダンセトロンHCL、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸ジナトリウム、ペントスタチン、ピロカルピンHCL、プリマイシン、カルムスチンインプラントを伴うポリフェプロザン20、ポルフィマーナトリウム、プロカイン、プロカルバジンHCL、プロプラノロール、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾトシン、タモキシフェン、タキソール、テガフール、テニポシド、テノポシド、テストラクトン、テトラカイン、チオエパクロラムブシル、チオグアニン、チオテパ、トポテカンHCL、クエン酸トレミフェン、トラスツズマブ、トレチノイン、バルルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、および酒石酸ビノレルビンが挙げられる。
【0243】
本明細書に開示される免疫チェックポイント阻害剤は、化学療法薬の組合せを受容している、結腸直腸癌の治療を必要とする患者に投与することができる。化学療法薬の例示的組合せとしては、5-フルオロウラシル(5FU)とロイコボリン(フォリン酸またはLV)の組合せ;カペシタビンとウラシル(UFT)およびロイコボリンの組合せ;テガフールとウラシル(UFT)およびロイコボリンの組合せ;オキサリプラチンと5FUとの組合せ、またはカペシタビンとの組合せ;イリノテカンとカペシタビンの組合せ、マイトマイシンCと5FU、イリノテカンまたはカペシタビンとの組合せが挙げられる。また、本明細書に開示される化学療法薬の他の組合せも可能である。
【0244】
関連技術において知られているように、種々の化学療法薬の組合せを用いた結腸直腸癌のための化学療法薬計画が臨床試験において標準化されている。このような計画はしばしば頭字後により知られており、5FU Mayo、5FU Roswell Park、LVFU2、FOLFOX、FOLFOX4、FOLFOX6、bFOL、FUFOX、FOLFIRI、IFL、XELOX、CAPOX、XELIRI、CAPIRI、FOLFOXIRIが含まれる。例えば、Chau, I., et al., 2009, Br. J. Cancer 100:1704-19 and Field, K., et al., 2007, World J. Gastroenterol. 13:3806-15参照(両方とも引用することにより本明細書の一部とされる)。
【0245】
免疫チェックポイント阻害剤はまた、他の治療抗体と組み合わせることもできる。よって、免疫チェックポイント阻害剤療法は、例えば、限定されるものではないが、抗EGFR(EGF受容体)モノクローナル抗体または抗VEGFモノクローナル抗体などの種々のモノクローナル抗体と組み合わせて、または種々のモノクローナル抗体の補助として投与することができる。抗EGFR抗体の具体例としては、セツキシマブおよびパニツムマブが挙げられる。抗VEGF抗体の具体例は、ベバシズマブである。
【0246】
この実施形態によれば、本発明は、癌の治療のための上記の免疫チェックポイント阻害剤に関し、前記阻害剤は、化学療法薬とともに投与される。免疫チェックポイント阻害剤と化学療法薬は、同時、逐次、または個別に投与することができる。
【0247】
診断キット
一態様において、本開示は、抗PG抗体(抗体コンジュゲートを含む)を含有する診断キットを提供する。診断キットは、本開示の少なくとも1つの抗PG抗体(例えば、凍結乾燥形態かまたは水溶液として)および診断アッセイを実施するために有用な1以上の試薬(例えば、希釈剤、抗PG抗体に結合する標識抗体、その標識抗体の適当な基質、陽性対照および参照標準、陰性対照として使用するのに適当な形態のPG)を含んでなるパッケージである。特定の実施形態では、キットは、2つの抗PG抗体を含んでなり、これらの抗体の少なくとも1つは抗PGモノクローナル抗体である。場合によっては、第2の抗体は、ポリクローナル抗PG抗体である。いくつかの実施形態では、本開示のキットは、本明細書に記載されるようなN末端抗PGモノクローナル抗体を含んでなる。
【0248】
抗PG抗体は、上記のように標識することができる。一実施形態では、上述の抗原を有する細胞を診断または特定するために、例えば、キットにおいて包装および使用できるように、検出可能な部分で標識された本明細書において詳説されるような抗PG抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。このような標識の限定されない例としては、フルオレセインイソチオシアネートなどの蛍光団;発色団、放射性核種、ビオチンまたは酵素が挙げられる。このような標識された抗PG抗体は、抗原の組織学的局在、ELISA、細胞選別、ならびに例えば、PG、およびこの抗原を有する細胞を検出または定量するための他の免疫学的技術に使用可能である。
【0249】
あるいは、このキットは、抗PGモノクローナル抗体と結合し、酵素にコンジュゲートされた標識抗体を含み得る。抗PGモノクローナル抗体または他の抗体が検出のために酵素にコンジュゲートされる場合、そのキットは、酵素が必要とする基質および補因子(例えば、検出可能な発色団または蛍光団を提供する基質前駆体)を含み得る。さらに、安定剤、バッファー(例えば、遮断バッファーまたは溶解バッファー)などの他の添加剤も含み得る。診断キットに含まれる抗hPGモノクローナル抗体は、固相表面に固定化することができるか、あるいはまた抗体が固定化できる固相表面(例えば、スライド)がキットに含められる。種々の試薬の相対量は、アッセイの感受性を実質的に最適化する、試薬の溶液中の濃度を提供するために広く変更可能である。抗体および他の試薬は、溶解時に適当な濃度を有する試薬溶液を提供する、賦形剤を含む乾燥粉末、通常は凍結乾燥品として提供され得る(個々にまたは組み合わせて)。
【0250】
キットは、診断方法の実施に関する説明書(例えば、プロトコール)を含む説明資料を含み得る。このような説明資料は一般に、書類または印刷物を含んでなるが、これらに限定されない。このような説明を保存し、それらを末端使用者に伝達し得る媒体が本発明により企図される。このような媒体としては、限定されるものではないが、電子保存媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光媒体(例えば、CD ROM)などが含まれる。このような媒体は、このような説明資料を提供するインターネットサイトのアドレスを含み得る。
【0251】
本発明は以下の通りである。
[1]免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しやすい癌患者を選択するためのイン・ビトロ方法であって、前記方法が、
a)前記対象由来の生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、および
b)前記サンプルにおいて前記プロガストリン結合分子とプロガストリンとの結合を検出する工程(前記結合は前記患者が免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しないことを示す)、
を含んでなる、方法。
[2]前記生体サンプルにおいて少なくとも3pM、少なくとも5pM、少なくとも10pM、少なくとも20pM、少なくとも30pMのプロガストリン濃度が前記対象における免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しない癌の存在を示す、上記[1]に記載の方法。
[3]前記方法が、
c)参照サンプルにおいてプロガストリンの参照濃度を決定する工程、
d)前記生体サンプルにおけるプロガストリン濃度を前記プロガストリン参照濃度と比較する工程、
e)工程d)の比較から、前記患者が免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答するかしないかを決定する工程
をさらに含んでなる、上記[1]または[2]のいずれかに記載の方法。
[4]前記プロガストリン結合分子が抗体またはその抗原結合フラグメントである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、N末端抗プロガストリンモノクローナル抗体およびC末端抗プロガストリンモノクローナル抗体から選択される、上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記プロガストリンに結合する抗体が、
-それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号13、14および15のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号22、23および24のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号25、26および27のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号28、29および30のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号31、32および33のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、
-それぞれ配列番号34、35および36のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号37、38および39のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のうち少なくとも1つ、優先的には少なくとも2つ、優先的には3つを含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体、ならびに
-2016年12月27日に、CNCM、パスツール研究所、25-28リュ・ドゥ・ドクトゥール・ルー、75724パリCEDEX15、フランスに参照I-5158として寄託されたハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体
からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記工程a)の判定が、
(i)前記サンプルを、プロガストリンの第1の部分に結合する第1のプロガストリン結合分子と接触させること、および
(ii)前記サンプルを、プロガストリンの第2の部分に結合する第2のプロガストリン結合分子と接触させること
を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記第1のプロガストリン結合分子がプロガストリンのC末端内のエピトープと結合する、上記[7]に記載の方法。
[9]前記プロガストリン結合分子が、2016年12月27日に、CNCM、パスツール研究所、25-28リュ・ドゥ・ドクトゥール・ルー、75724パリCEDEX15、フランスに参照I-5158として寄託されたハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体である、上記[7]または[8]のいずれかに記載の方法。
[10]第2のプロガストリン結合分子がプロガストリンのN末端内のエピトープに結合する、上記[7]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]前記第2のプロガストリン結合分子が、プロガストリンのN末端内のエピトープに結合するポリクローナル抗体、または以下の3つのCDR、それぞれ配列番号16、17および18のアミノ酸配列のCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含んでなる重鎖と、以下の3つのCDR、それぞれ配列番号19、20および21のアミノ酸配列のCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含んでなる軽鎖とを含んでなるモノクローナル抗体である、上記[7]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記プロガストリンのレベルが工程a)においてELISAで決定される、上記[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]前記生体サンプルが、プロガストリンの第1の部分に結合する第1の分子、およびプロガストリンの第2の部分に結合する第2の分子と接触される、上記[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[14]前記生体サンプルが血液、血清および血漿から選択される、上記[1]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15]前記癌が食道癌、肝臓癌、肝細胞癌、消化管癌および消化管間質癌を含む胃癌、膵臓癌、ホジキンリンパ腫、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、肝細胞腫、肝癌、肛門癌、非黒色腫皮膚癌、皮膚黒色腫、子宮頸癌、子宮癌、子宮内膜癌、卵巣癌、または乳癌である、上記[1]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16]癌の治療に使用するための免疫チェックポイント阻害剤であって、前記使用が、
a)上記[1]~[15]のいずれかに記載の方法を用いて免疫チェックポイント阻害剤に応答する患者を選択する
前工程を含んでなる、免疫チェックポイント阻害剤。
[17]癌の治療に使用するための免疫チェックポイント阻害剤であって、前記使用が、
a)前記対象由来の生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、
b)前記サンプルにおいて前記プロガストリン結合分子とプロガストリンとの結合を検出する工程(前記結合は前記患者が免疫チェックポイント阻害剤による治療に応答しないことを示す)、および
c)免疫チェックポイント阻害剤治療を工程b)の結果に応じて適合させる工程
を含んでなる、免疫チェックポイント阻害剤。
[18]対象において免疫チェックポイント阻害剤による癌治療の予後を判定するためのイン・ビトロ法であって、
a)前記対象由来の生体サンプルを少なくとも1つのプロガストリン結合分子と接触させる工程、および
b)前記サンプルにおいて前記プロガストリン結合分子とプロガストリンとの結合を検出する工程(前記結合は予後が不良であることを示す)、
を含んでなる、方法。
[19]前記生体サンプルにおいて少なくとも3pM、少なくとも5pM、少なくとも10pM、少なくとも20pM、少なくとも30pMのプロガストリン濃度が不良な予後を示す、上記[18]に記載の方法。
[20]前記方法が、
c)参照サンプルにおいてプロガストリンの参照濃度を決定する工程、
d)前記生体サンプルのプロガストリン濃度と前記プロガストリン参照濃度を比較する工程、
e)工程d)の比較から、前記免疫チェックポイント阻害剤による癌治療の予後を判定する工程
をさらに含んでなる、上記[18]および[19]のいずれかに記載の方法。
本発明の他の特徴および利点は、実施例および図面(その説明文は以下に表される)とともに説明の続きで明らかとなる。
【実施例】
【0252】
本試験は、黒色腫患者由来の43の血漿サンプルを、免疫チェックポイント阻害剤療法で治療を始める前に血中プロガストリンレベルに関して試験した。
【0253】
各血漿EDTAサンプルを、ELISAアッセイでウェル当たり50μLの血漿を用いて2反復で試験した。簡単に述べれば、このアッセイは、96ウェルプレートにプレコーティングされた、hPGに特異的な捕捉抗体を使用する。hPGは、WO2011/083088に記載のハイブリドーマ2H9F4B7(ハイブリドーマ2H9F4B7は、ブダペスト条約の下、2016年12月27日に、CNCM、パスツール研究所、25-28リュ・ドゥ・ドクトゥール・ルー、75724パリCEDEX15、フランスに参照I-5158として寄託されたものである)により生産されたC末端モノクローナル抗体mAb14で捕捉される。ウェルに添加した標準およびサンプル中に存在するhPGは、固定化された捕捉抗体に結合する。これらのウェルを洗浄し、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗hPG検出抗体を加えると(検出は、N末端に特異的な標識ポリクローナル抗体で行う)、抗体-抗原-抗体複合体が生じる。2回目の洗浄の後、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液をウェルに加えると、最初のサンプル中に存在するhPGの量に正比例して青色が生成する。停止溶液は色を青から黄に変化させ、この黄色の強度をマイクロプレートリーダーで450nmにて定量する。
【0254】
これらの患者を2群に分ける:プロガストリン血中レベルが3pM未満の患者(n=21)と3pMを超える患者(n=22)。カプラン・マイヤー生存分析は、GraphPadにてログランク検定(マンテル-コックス)およびゲーハン-ブレスロー-ウィルコクソン検定により行った。PG<3pM群およびPG>3pM群の生存期間中央値はそれぞれ151日および68.5日であり、低レベルのPG(PG<3pM)を有する患者の生存期間中央値に2.2倍の増加(1.651と2.758の間の比の95%CI)を示した。
【配列表】