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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】発光装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/042 20060101AFI20240509BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20240509BHJP
   H01S 5/10 20210101ALI20240509BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20240509BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240509BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01S5/042 610
H01S5/343 610
H01S5/10
H01S5/40
G03B21/00 D
G03B21/14 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020039603
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021141266
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 泰斗
(72)【発明者】
【氏名】島田 浩行
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】岸野 克巳
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0013440(US,A1)
【文献】特表2018-521516(JP,A)
【文献】特開2019-012744(JP,A)
【文献】特開2020-025020(JP,A)
【文献】特開2019-153779(JP,A)
【文献】特開2017-065944(JP,A)
【文献】国際公開第2008/114707(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0263227(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0082215(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0217646(US,A1)
【文献】特開2020-106733(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0079469(US,A1)
【文献】特開2019-149503(JP,A)
【文献】国際公開第2018/189205(WO,A1)
【文献】特開2020-161621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0218280(US,A1)
【文献】特表2016-527706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
G03B 21/00
G03B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、
積層体と、
を有し、
前記積層体は、
n型の第1半導体層と、
発光層と、
p型の第2半導体層と、
トンネルジャンクション層と、
n型の第3半導体層と、
を有し、
前記電極は、前記第1半導体層と電気的に接続され、
前記第1半導体層、前記発光層、前記第2半導体層、前記トンネルジャンクション層、前記第3半導体層は、この順で配置され、
前記第1半導体層、前記発光層、前記第2半導体層、および前記トンネルジャンクション層は、柱状部を構成し、
前記第2半導体層は、c面と、ファセット面と、を有し、
前記トンネルジャンクション層は、
前記c面に設けられているc面領域と、
前記ファセット面に設けられているファセット面領域と、
を有し、
前記c面領域の不純物濃度は、前記ファセット面領域の不純物濃度よりも高い、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
記第3半導体層の少なくとも一部は、前記柱状部を構成する、発光装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記トンネルジャンクション層は、前記第2半導体層と前記第3半導体層をトンネル接合する、発光装置。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の発光装置を有する、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーは、高輝度の次世代光源として期待されている。特に、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノピラーなどと呼ばれるナノ構造を有する半導体レーザーは、フォトニック結晶の効果によって、狭放射角で高出力の発光が得られる発光装置が実現できると期待されている。
【0003】
特許文献1には、Si基板の表面に形成された複数のナノコラムの頂部が透明電極で覆われたGaNナノコラムLEDが開示されている。特許文献1では、透明電極として、ITO(indium tin oxide)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-10657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ナノコラムを有する半導体レーザーでは、ナノコラム間を伝搬する光はクラッド間に完全に閉じ込めることができずに、ナノコラム上に形成された電極にも漏れる。そのため、ITOからなる電極を用いた場合、ITOは光吸収係数が大きいため、ナノコラム間を伝搬する光の損失が大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置の一態様は、
電極と、
積層体と、
を有し、
前記積層体は、
n型の第1半導体層と、
発光層と、
p型の第2半導体層と、
トンネルジャンクション層と、
n型の第3半導体層と、
を有し、
前記電極は、前記第1半導体層と電気的に接続され、
前記第1半導体層、前記発光層、前記第2半導体層、前記トンネルジャンクション層、前記第3半導体層は、この順で配置され、
前記発光層と前記第1半導体層は、柱状部を構成する。
【0007】
本発明に係るプロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図2】トンネルジャンクション層を模式的に示す断面図。
図3】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図4】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図5】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図6】第3実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図7】第4実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図8】柱状部を模式的に示す断面図。
図9】第5実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図10】第6実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図11】第7実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1. 第1実施形態
1.1. 発光装置
まず、第1実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る発光装置100を模式的に示す断面図である。
【0011】
発光装置100は、図1に示すように、基板10と、積層体20と、電極50と、を有している。
【0012】
基板10は、例えば、Si基板、GaN基板、サファイア基板などである。
【0013】
積層体20は、基板10に設けられている。積層体20は、バッファー層22と、第1半導体層32と、発光層34と、第2半導体層36と、トンネルジャンクション層37と、第3半導体層38と、を有している。
【0014】
バッファー層22、第1半導体層32、発光層34、第2半導体層36、トンネルジャンクション層37、および第3半導体層38は、基板10側からこの順で配置されている。すなわち、第1半導体層32と第3半導体層38との間に第2半導体層36が配置され、第1半導体層32と第2半導体層36の間に発光層34が配置され、第2半導体層36と第3半導体層38との間にトンネルジャンクション層37が配置され、基板10と発光層34との間に第1半導体層32が配置されている。
【0015】
バッファー層22は、基板10上に設けられている。バッファー層22は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。バッファー層22上には、柱状部30を形成するためのマスク層60が設けられている。マスク層60は、例えば、チタン層、酸化チタン層、酸化シリコン層、酸化アルミニウム層などである。
【0016】
本明細書では、積層体20の積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)において、発光層34を基準とした場合、発光層34から第2半導体層36に向かう方向を「上」とし、発光層34から第1半導体層32に向かう方向を「下」として説明する。また、「積層体の積層方向」とは、第1半導体層32と発光層34との積層方向をいう。
【0017】
第1半導体層32は、バッファー層22上に設けられている。第1半導体層32は、基板10と発光層34との間に設けられている。第1半導体層32は、n型の半導体層である。第1半導体層32は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。
【0018】
発光層34は、第1半導体層32上に設けられている。発光層34は、第1半導体層32と第2半導体層36との間に設けられている。発光層34は、電流が注入されることで光を発生させる。発光層34は、例えば、不純物がドープされていないi型のGaN層と、i型のInGaN層と、からなる量子井戸構造を重ねた多重量子井戸構造を有している。
【0019】
第2半導体層36は、発光層34上に設けられている。第2半導体層36は、発光層34とトンネルジャンクション層37との間に設けられている。第2半導体層36は、第1半導体層32と導電型の異なる層である。第2半導体層36は、p型の半導体層である。第2半導体層36は、例えば、Mgがドープされたp型のAlGaN層である。なお、第2半導体層36は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層であってもよい。第1半導体層32および第2半導体層36は、発光層34に光を閉じ込める機能を有するクラッド層である。
【0020】
トンネルジャンクション層37は、第2半導体層36上に設けられている。トンネルジャンクション層37は、第2半導体層36と第3半導体層38との間に設けられている。トンネルジャンクション層37は、第2半導体層36と第3半導体層38をトンネル接合する。これにより、n型の第3半導体層38からp型の第2半導体層36に電流を注入できる。トンネルジャンクション層37の膜厚は、例えば、50nm以下である。トンネルジャンクション層37の可視光に対する光吸収係数は、例えば、100cm-1程度である。
【0021】
図2は、トンネルジャンクション層37を模式的に示す断面図である。トンネルジャンクション層37は、第1層37aと、第2層37bと、を有する。
【0022】
第1層37aは、第2半導体層36上に設けられている。第1層37aは、p型の半導体層である。第1層37aは、例えば、Mgが高濃度にドープされたp型のGaNである。第1層37aのMgの濃度は、第2半導体層36のMgの濃度よりも高い。例えば、第1層37aのMgの濃度は、1×1019~1×1022cm-3であり、第2半導体層36のMgの濃度よりも一桁程度高い。なお、第1層37aの材質は、GaNに限定されず、例えば、AlN、GaN、InNおよびこれらの混晶からなる窒化物半導体であってもよい。また、第1層37aのドーパントは、Mgに限定されず、その他のp型ドーパントを用いてもよい。
【0023】
第2層37bは、第1層37a上に設けられている。第2層37bは、n型の半導体層である。第2層37bは、例えば、Siが高濃度にドープされたn型のGaN層である。第2層37bのSiの濃度は、第1半導体層32のSiの濃度および第3半導体層38のSiの濃度よりも高い。例えば、第2層37bのSiの濃度は、1×1019~1×1022cm-3であり、第1半導体層32のSiの濃度よりも一桁程度高い。なお、第2層37bの材質は、GaNに限定されず、例えば、AlN、GaN、InNおよびこれらの混晶からなる窒化物半導体であってもよい。また、第2層37bのドーパントは、Siに限定されず、その他のn型ドーパントを用いてもよい。
【0024】
第3半導体層38は、トンネルジャンクション層37上に設けられている。第3半導体層38は、n型の半導体層である。第3半導体層38は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。なお、第3半導体層38は、Siがドープされたn型のAlGaN層であってもよい。第3半導体層38は、トンネルジャンクション層37を介して第2半導体層36にトンネル接合されている。
【0025】
第3半導体層38は、発光層34に電流を注入するための電極として機能する。第3半導体層38は、電流を積層方向と直交する積層体20の面内方向に拡散させ、複数の柱状部30に電流を供給する。そのため、発光装置100では、ITO等からなる透明電極が不要である。
【0026】
ここで、ITOの可視光に対する光吸収係数は、例えば、2000cm-1程度であり、光吸収係数が大きい。トンネルジャンクション層37の光吸収係数は、ITOの光吸収係数よりも1桁程度小さい。また、n型のGaN層である第3半導体層38の光吸収係数は極めて小さい。n型のGaN層である第3半導体層38の光吸収係数は、ITOの光吸収係数よりも小さく、p型のGaN層である第2半導体層36の光吸収係数よりも小さい。
【0027】
したがって、発光装置100では、トンネルジャンクション層37を介して第2半導体層36にトンネル接合された第3半導体層38を電極として用いているため、例えばITOからなる電極を用いた場合と比べて、柱状部30間を伝搬する光の損失を低減できる。
【0028】
電極50は、バッファー層22上に設けられている。バッファー層22は、電極50とオーミックコンタクトしていてもよい。電極50は、第1半導体層32と電気的に接続されている。図示の例では、電極50は、バッファー層22を介して、第1半導体層32と電気的に接続されている。電極50は、発光層34に電流を注入するための一方の電極である。すなわち、発光装置100では、電極50と第3半導体層38によって、発光層34に電流を注入する。電極50としては、例えば、バッファー層22側から、Cr層、Ni層、Au層の順序で積層したものなどを用いる。
【0029】
第1半導体層32および発光層34は、柱状部30を構成している。積層体20は、複数の柱状部30を有している。柱状部30は、バッファー層22上に設けられている。柱状部30は、バッファー層22から上方に突出した柱状の形状を有している。柱状部30は、例えば、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノピラーとも呼ばれる。柱状部30の平面形状は、例えば、多角形、円などである。
【0030】
柱状部30の径は、例えば、50nm以上500nm以下である。柱状部30の径を500nm以下とすることによって、高品質な結晶の発光層34を得ることができ、発光層34に内在する歪みを低減することができる。これにより、発光層34で発生する光を高い効率で増幅できる。複数の柱状部30の径は、例えば、互いに等しい。
【0031】
なお、「柱状部の径」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、直径であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の直径である。例えば、柱状部30の径は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の直径であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の直径である。
【0032】
柱状部30は、複数設けられている。隣り合う柱状部30の間隔は、例えば、1nm以上500nm以下である。複数の柱状部30は、積層方向から見た平面視において、所定の方向に所定のピッチで配列されている。複数の柱状部30は、三角格子状に配置されている。なお、複数の柱状部30の配置は、特に限定されず、正方格子状に配置されていてもよい。複数の柱状部30は、フォトニック結晶の効果を発現することができる。
【0033】
なお、「柱状部のピッチ」とは、所定の方向に沿って隣り合う柱状部30の中心間の距離である。「柱状部の中心」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、該円の中心であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の中心である。例えば、柱状部30の中心は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の中心であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の中心である。
【0034】
第2半導体層36は、複数の柱状部30に跨がって設けられた1つの層である。すなわち、第2半導体層36は、柱状部30を構成していない。同様に、トンネルジャンクション層37は、複数の柱状部30に跨がって設けられた1つの層であり、柱状部30を構成していない。同様に、第3半導体層38は、複数の柱状部30に跨がって設けられた1つの層であり、柱状部30を構成していない。
【0035】
発光装置100では、p型の第2半導体層36、発光層34、およびn型の第1半導体層32により、pinダイオードが構成される。発光装置100では、電極50と第3半導体層38との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、発光層34に電流が注入されて発光層34で電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。発光層34で発生した光は、第1半導体層32および第2半導体層36により積層方向と直交する面内方向に伝搬し、複数の柱状部30によるフォトニック結晶の効果により定在波を形成し、発光層34で利得を受けてレーザー発振する。そして、発光装置100は、+1次回折光および-1次回折光をレーザー光として、積層方向に射出する。
【0036】
発光装置100は、例えば、以下の作用効果を奏することができる。
【0037】
発光装置100では、n型の第1半導体層32、i型の発光層34、p型の第2半導体層36、トンネルジャンクション層37、n型の第3半導体層38が、基板10側からこの順で配置されている。発光装置100では、p型の第2半導体層36とn型の第3半導体層38がトンネルジャンクション層37でトンネル接合されるため、n型の第3半導体層38は、トンネルジャンクション層37を介して、p型の第2半導体層36に電流を注入できる。したがって、第3半導体層38を、発光層34に電流を注入するための電極として用いることができる。n型の第3半導体層38は、極めて光吸収係数が小さいため、例えば、ITOからなる電極を用いた場合と比べて、柱状部30間を伝搬する光の損失を低減できる。
【0038】
例えば、ITOからなる電極であっても電極を薄膜化することによって、光の損失を低減できる。しかしながら、電極を薄くすると、電気抵抗が増大し、素子の特性を低下させる。発光装置100では、光吸収係数が小さいn型の第3半導体層38を電極として用いるため、電極を薄膜化しなくても、光の損失を低減できる。したがって、発光装置100では、低抵抗、かつ、低光損失の発光装置を実現できる。
【0039】
1.2. 発光装置の製造方法
次に、第1実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図3および図4は、第1実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0040】
図3に示すように、基板10上にバッファー層22をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などが挙げられる。
【0041】
次に、バッファー層22上に、マスク層60を形成する。マスク層60には、柱状部30を形成するための孔が複数設けられている。
【0042】
図4に示すように、マスク層60をマスクとして、バッファー層22上に、第1半導体層32、発光層34、第2半導体層36、トンネルジャンクション層37、および第3半導体層38をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法などが挙げられる。
【0043】
ここで、第1半導体層32および発光層34をエピタキシャル成長させる際には、積層方向に成長する条件でエピタキシャル成長させる。これにより、第1半導体層32および発光層34は、柱状部30を構成する。また、第2半導体層36をエピタキシャル成長させる際には、積層方向だけでなく、積層方向と直交する面内方向にも成長する条件でエピタキシャル成長させる。これにより、第2半導体層36は、柱状部30を構成せずに、複数の柱状部30に跨がって設けられた1つの層となる。第2半導体層36上に形成されるトンネルジャンクション層37および第3半導体層38は、第2半導体層36と同様に複数の柱状部30に跨がる1つの層として形成される。
【0044】
図1に示すように、バッファー層22上に電極50を形成する。電極50は、例えば、真空蒸着法などにより形成される。
【0045】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0046】
2. 第2実施形態
2.1. 発光装置
次に、第2実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図5は、第2実施形態に係る発光装置200を模式的に示す断面図である。以下、第2実施形態に係る発光装置200において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0047】
上述した発光装置100では、図1に示すように、第1半導体層32および発光層34が柱状部30を構成していた。
【0048】
これに対して、発光装置200では、図5に示すように、第1半導体層32、発光層34、および第2半導体層36の一部が柱状部30を構成している。
【0049】
第2半導体層36は、図5に示すように、柱状部分36aと、層状部分36bと、を有している。
【0050】
柱状部分36aは、第2半導体層36のうちの柱状部30を構成している部分である。柱状部分36aは、発光層34に接している。層状部分36bは、第2半導体層36のうちの複数の柱状部30に跨がって設けられた層状の部分である。すなわち、層状部分36bは、柱状部30を構成していない。層状部分36bは、トンネルジャンクション層37に接している。
【0051】
発光装置200では、上述した発光装置100と同様に、柱状部30間を伝搬する光の損失を低減できる。
【0052】
2.2. 発光装置の製造方法
発光装置200の製造方法は、第2半導体層36をエピタキシャル成長させる際に、積層方向に成長する条件でエピタキシャル成長させて柱状部分36aを形成した後、積層方向だけでなく面内方向にも成長する条件でエピタキシャル成長させて層状部分36bを形成する。その他の工程は、上述した発光装置100の製造方法と同様である。
【0053】
3. 第3実施形態
3.1. 発光装置
次に、第3実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図6は、第3実施形態に係る発光装置300を模式的に示す断面図である。以下、第3実施形態に係る発光装置300において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0054】
上述した発光装置100では、図1に示すように、第1半導体層32および発光層34が柱状部30を構成していた。
【0055】
これに対して、発光装置300では、図6に示すように、第1半導体層32、発光層34、および第2半導体層36が柱状部30を構成している。
【0056】
発光装置300では、上述した発光装置100と同様に、柱状部30間を伝搬する光の損失を低減できる。
【0057】
3.2. 発光装置の製造方法
発光装置300の製造方法は、第2半導体層36をエピタキシャル成長させる際に、積層方向に成長する条件でエピタキシャル成長させ、トンネルジャンクション層37をエピタキシャル成長させる際に、積層方向だけでなく面内方向にも成長する条件でエピタキシャル成長させる。その他の工程は、上述した発光装置100の製造方法と同様である。
【0058】
4. 第4実施形態
4.1. 発光装置
次に、第4実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図7は、第4実施形態に係る発光装置400を模式的に示す断面図である。以下、第4実施形態に係る発光装置400において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
上述した発光装置100では、図1に示すように、第1半導体層32および発光層34が柱状部30を構成していた。
【0060】
これに対して、発光装置400では、図7に示すように、第1半導体層32、発光層34、第2半導体層36、およびトンネルジャンクション層37が柱状部30を構成している。
【0061】
図8は、柱状部30を模式的に示す断面図である。
【0062】
第1半導体層32は、例えば、ウルツ鉱型結晶構造を有するGaN結晶である。第1半導体層32は、c面2aと、ファセット面4aと、を有している。c面2aは、例えば、図7に示す基板10の主面に対して平行である。基板10の主面は、積層体20が設けられている面である。ファセット面4aは、例えば、基板10の主面に対して傾斜している。
【0063】
発光層34は、第1半導体層32のc面2aに設けられているc面領域342と、第1半導体層32のファセット面4aに設けられているファセット面領域344と、を有している。c面領域342は、発光層34のうちの第1半導体層32のc面2aの影響を受けて結晶成長した領域である。ファセット面領域344は、発光層34のうちの第1半導体層32のファセット面4aの影響を受けて結晶成長した領域である。c面領域342は、積層方向から見て、ファセット面領域344に囲まれている。
【0064】
ここで、c面領域342は、第1半導体層32のc面2aの影響を受けて結晶成長するため、ファセット面領域344に比べて、Inを取り込みやすい。そのため、c面領域342のインジウムの濃度は、ファセット面領域344のインジウムの濃度よりも高い。
【0065】
発光層34は、c面2bと、ファセット面4bと、を有している。c面2bは、例えば、図7に示す基板10の主面に対して平行である。ファセット面4bは、例えば、基板10の主面に対して傾斜している。
【0066】
第2半導体層36は、発光層34のc面2bに設けられているc面領域362と、発光層34のファセット面4bに設けられているファセット面領域364と、を有している。c面領域362は、第2半導体層36のうちの発光層34のc面2bの影響を受けて結晶成長した領域である。ファセット面領域364は、第2半導体層36のうちの発光層34のファセット面4bの影響を受けて結晶成長した領域である。c面領域362は、積層方向から見て、ファセット面領域364に囲まれている。
【0067】
第2半導体層36は、c面2cと、ファセット面4cと、を有している。c面2cは、例えば、図7に示す基板10の主面に対して平行である。ファセット面4cは、例えば、基板10の主面に対して傾斜している。
【0068】
トンネルジャンクション層37は、第2半導体層36のc面2cに設けられているc面領域372と、第2半導体層36のファセット面4cに設けられているファセット面領域374と、を有している。c面領域372は、トンネルジャンクション層37のうちの第2半導体層36のc面2cの影響を受けて結晶成長した領域である。ファセット面領域374は、トンネルジャンクション層37のうちの第2半導体層36のファセット面4cの影響を受けて結晶成長した領域である。c面領域372は、積層方向から見て、ファセット面領域374に囲まれている。
【0069】
ここで、c面領域372は、第2半導体層36のc面2cの影響を受けて結晶成長するため、ファセット面領域374に比べて、不純物を取り込みやすい。したがって、c面領域372の不純物濃度は、ファセット面領域374の不純物濃度よりも高い。そのため、c面領域372では、ファセット面領域374と比べて、トンネル効果が発現しやすい。すなわち、c面領域372の電気抵抗は、ファセット面領域374の電気抵抗よりも小さい。よって、トンネルジャンクション層37において、c面領域372から選択的に電流を注入する電流狭窄構造を形成できる。この結果、発光層34のIn濃度が高いc面領域342に効率よく電流を注入できる。
【0070】
また、発光装置400では、トンネルジャンクション層37は、柱状部30を構成している。そのため、発光装置400では、トンネルジャンクション層37を結晶欠陥が低減された高品質な結晶とすることができ、結晶欠陥が導入されることによるトンネルジャンクション層37の特性の悪化を低減できる。
【0071】
発光装置400では、発光装置100と同様に、柱状部30間を伝搬する光の損失を低減できる。
【0072】
4.2. 発光装置の製造方法
発光装置400の製造方法は、第2半導体層36およびトンネルジャンクション層37をエピタキシャル成長させる際に、積層方向に成長する条件でエピタキシャル成長させる。また、第3半導体層38をエピタキシャル成長させる際に、積層方向だけでなく面内方向にも成長する条件でエピタキシャル成長させる。その他の工程は、上述した発光装置100の製造方法と同様である。
【0073】
5. 第5実施形態
5.1. 発光装置
次に、第5実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図9は、第5実施形態に係る発光装置500を模式的に示す断面図である。以下、第5実施形態に係る発光装置500において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0074】
上述した発光装置100では、図1に示すように、第1半導体層32および発光層34が柱状部30を構成していた。
【0075】
これに対して、発光装置500では、図9に示すように、第1半導体層32、発光層34、第2半導体層36、トンネルジャンクション層37、および第3半導体層38の一部が柱状部30を構成している。
【0076】
第3半導体層38は、図9に示すように、柱状部分38aと、層状部分38bと、を有している。
【0077】
柱状部分38aは、第3半導体層38のうちの柱状部30を構成している部分である。柱状部分38aは、トンネルジャンクション層37に接している。層状部分38bは、第3半導体層38のうちの複数の柱状部30に跨がって設けられた層状の部分である。すなわち、層状部分38bは、柱状部30を構成していない。発光装置500では、層状部分38bにおいて、電流を面内方向に拡散させ、複数の柱状部30に電流を供給する。
【0078】
発光装置500では、第2半導体層36、トンネルジャンクション層37、および第3半導体層38の一部が柱状部30を構成している。そのため、例えば、第3半導体層38が柱状部30を構成していない場合と比べて、積層体20において発光層34よりも上側、すなわち発光層34よりも第3半導体層38側の面内方向の平均屈折率を低くできる。したがって、発光装置500では、発光層34で発生した光の第3半導体層38側への漏れを低減できる。
【0079】
発光装置500では、発光装置400と同様に、トンネルジャンクション層37が柱状部30を構成しているため、トンネルジャンクション層37において、電流狭窄構造を形成できる。
【0080】
発光装置500では、発光装置400と同様に、トンネルジャンクション層37が柱状部30を構成しているため、トンネルジャンクション層37を結晶欠陥が低減された高品質な結晶とすることができ、結晶欠陥が導入されることによるトンネルジャンクション層37の特性の悪化を低減できる。
【0081】
発光装置500では、発光装置100と同様に、柱状部30間を伝搬する光の損失を低減できる。
【0082】
5.2. 発光装置の製造方法
発光装置500の製造方法は、第2半導体層36、トンネルジャンクション層37をエピタキシャル成長させる際に、積層方向に成長する条件でエピタキシャル成長させる。また、第3半導体層38をエピタキシャル成長させる際に、積層方向に成長する条件でエピタキシャル成長させて柱状部分38aを形成した後、積層方向だけでなく面内方向にも成長する条件でエピタキシャル成長させて層状部分38bを形成する。その他の工程は、上述した発光装置100の製造方法と同様である。
【0083】
6. 第6実施形態
6.1. 発光装置
次に、第6実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図10は、第6実施形態に係る発光装置600を模式的に示す断面図である。以下、第6実施形態に係る発光装置600において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0084】
上述した発光装置100では、図1に示すように、第1半導体層32および発光層34が柱状部30を構成していた。
【0085】
これに対して、発光装置600では、図10に示すように、第1半導体層32、発光層34、第2半導体層36、トンネルジャンクション層37、および第3半導体層38が柱状部30を構成している。また、発光装置600は、電極50(以下「第1電極50」ともいう)と、電流を面内方向に拡散させ、複数の柱状部30に電流を供給する電極である第2電極70と、を有する。
【0086】
第2電極70は、発光層34で発生した光を透過させる透明電極である。第2電極70としては、例えば、ITOなどを用いる。第2電極70は、複数の柱状部30に跨がって設けられた1つの層である。
【0087】
発光装置600では、発光層34と第2電極70との間に、第3半導体層38が設けられている。そのため、例えば、発光層34と第2電極70との間に、第3半導体層38が設けられていない場合と比べて、第2電極70を発光層34から遠ざけることができる。したがって、発光装置600では、柱状部30間を伝搬する光の第2電極70への漏れを低減でき、柱状部30間を伝搬する光の損失を低減できる。
【0088】
発光装置600では、発光装置400および発光装置500と同様に、トンネルジャンクション層37が柱状部30を構成しているため、トンネルジャンクション層37において、電流狭窄構造を形成できる。
【0089】
また、発光装置600では、発光装置400および発光装置500と同様に、トンネルジャンクション層37が柱状部30を構成しているため、トンネルジャンクション層37を結晶欠陥が低減された高品質な結晶とすることができ、結晶欠陥が導入されることによるトンネルジャンクション層37の特性の悪化を低減できる。
【0090】
発光装置600では、第2半導体層36、トンネルジャンクション層37、および第3半導体層38が柱状部30を構成している。そのため、例えば、第3半導体層38が柱状部30を構成していない場合と比べて、積層体20において発光層34よりも第3半導体層38側の面内方向の平均屈折率を低くできる。したがって、発光装置600では、発光層34で発生した光の第3半導体層38側への漏れを低減できる。
【0091】
発光装置600では、発光装置100と同様に、柱状部30間を伝搬する光の損失を低減できる。
【0092】
6.2. 発光装置の製造方法
発光装置600の製造方法は、第2半導体層36、トンネルジャンクション層37、および第3半導体層38をエピタキシャル成長させる際に、積層方向に成長する条件でエピタキシャル成長させる。また、柱状部30上に第2電極70を形成する。第2電極70は、例えば、真空蒸着法などにより形成できる。その他の工程は、上述した発光装置100の製造方法と同様である。
【0093】
7. 第7実施形態
次に、第7実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図11は、第7実施形態に係るプロジェクター900を模式的に示す図である。
【0094】
プロジェクター900は、例えば、光源として、発光装置100を有している。
【0095】
プロジェクター900は、図示しない筐体と、筐体内に備えられている赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bと、を有している。なお、便宜上、図11では、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bを簡略化している。
【0096】
プロジェクター900は、さらに、筐体内に備えられている、第1光学素子902Rと、第2光学素子902Gと、第3光学素子902Bと、第1光変調装置904Rと、第2光変調装置904Gと、第3光変調装置904Bと、投射装置908と、を有している。第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bは、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。投射装置908は、例えば、投射レンズである。
【0097】
赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子902Rに入射する。赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子902Rによって集光される。なお、第1光学素子902Rは、集光以外の機能を有していてもよい。後述する第2光学素子902Gおよび第3光学素子902Bについても同様である。
【0098】
第1光学素子902Rによって集光された光は、第1光変調装置904Rに入射する。第1光変調装置904Rは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第1光変調装置904Rによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0099】
緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子902Gに入射する。緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子902Gによって集光される。
【0100】
第2光学素子902Gによって集光された光は、第2光変調装置904Gに入射する。第2光変調装置904Gは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第2光変調装置904Gによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0101】
青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子902Bに入射する。青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子902Bによって集光される。
【0102】
第3光学素子902Bによって集光された光は、第3光変調装置904Bに入射する。第3光変調装置904Bは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第3光変調装置904Bによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0103】
また、プロジェクター900は、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bから出射された光を合成して投射装置908に導くクロスダイクロイックプリズム906を有することができる。
【0104】
第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム906に入射する。クロスダイクロイックプリズム906は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投射装置908によりスクリーン910上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0105】
なお、上記では、プロジェクター900が、光源として、発光装置100を有する場合について説明したが、プロジェクター900が、光源として、発光装置200、発光装置300、発光装置400、発光装置500、および発光装置600のいずれかを有していてもよい。
【0106】
また、赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bにおいて、トンネルジャンクション層37の膜厚や不純物濃度が互いに異なっていてもよい。
【0107】
トンネルジャンクション層37では、膜厚が薄くなるに従って光吸収は低減するが、電気抵抗は増大する。また、トンネルジャンクション層37では、不純物濃度が低くなるに従って光吸収は低減するが、電気抵抗は増大する。
【0108】
ここで、光の波長が長いほど、トンネルジャンクション層37における光吸収が少ない。そのため、発振波長が長い光源では、発振波長が短い光源に比べて、トンネルジャンクション層37の膜厚を厚く、かつ、不純物濃度を高くして、電気抵抗を下げることができる。例えば、赤色光源100Rのトンネルジャンクション層37の膜厚をT、不純物濃度をNとし、緑色光源100Gのトンネルジャンクション層37の膜厚をT、不純物濃度をNとし、青色光源100Bのトンネルジャンクション層37の膜厚をT、不純物濃度をNとした場合、T>T>T、N>N>Nを満たしてもよい。
【0109】
また、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bは、発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御することで、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射装置908は、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン910に投射してもよい。
【0110】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro Mirror Device)が挙げられる。また、投射装置の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0111】
また、光源を、光源からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0112】
上述した実施形態に係る発光装置は、プロジェクター以外にも用いることが可能である。プロジェクター以外の用途には、例えば、屋内外の照明、ディスプレイのバックライト、レーザープリンター、スキャナー、車載用ライト、光を用いるセンシング機器、通信機器等の光源がある。
【0113】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0114】
また、例えば、上述した実施形態および変形例では、基板10に設けられた積層体20において、第1半導体層32、発光層34、第2半導体層36、トンネルジャンクション層37、第3半導体層38は、基板10側からこの順で配置されているが、これに限らず、第3半導体層38、トンネルジャンクション層37、第2半導体層36、発光層34、第1半導体層32が、基板10側からこの順で配置されていてもよい。
【0115】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0116】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0117】
発光装置の一態様は、
電極と、
積層体と、
を有し、
前記積層体は、
n型の第1半導体層と、
発光層と、
p型の第2半導体層と、
トンネルジャンクション層と、
n型の第3半導体層と、
を有し、
前記電極は、前記第1半導体層と電気的に接続され、
前記第1半導体層、前記発光層、前記第2半導体層、前記トンネルジャンクション層、前記第3半導体層は、この順で配置され、
前記発光層と前記第1半導体層は、柱状部を構成する。
【0118】
このような発光装置では、p型の第2半導体層とn型の第3半導体層がトンネルジャンクション層でトンネル接合されるため、n型の第3半導体層はトンネルジャンクション層を介してp型の第2半導体層に電流を注入できる。したがって、第3半導体層を発光層に電流を注入するための電極として用いることができる。n型の第3半導体層は、極めて光吸収係数が小さいため、例えば、ITOからなる電極を用いた場合と比べて、柱状部間を伝搬する光の損失を低減できる。
【0119】
前記発光装置の一態様において、
前記第2半導体層の少なくとも一部は、前記柱状部を構成してもよい。
【0120】
前記発光装置の一態様において、
前記第2半導体層および前記トンネルジャンクション層は、前記柱状部を構成してもよい。
【0121】
このような発光装置では、トンネルジャンクション層が柱状部を構成しているため、トンネルジャンクション層を結晶欠陥が低減された高品質な結晶とすることができ、結晶欠陥が導入されることによるトンネルジャンクション層の特性の悪化を低減できる。
【0122】
前記発光装置の一態様において、
前記第2半導体層は、c面と、ファセット面と、を有し、
前記トンネルジャンクション層は、
前記c面に設けられたc面領域と、
前記ファセット面に設けられているファセット面領域と、
を有し、
前記c面領域の不純物濃度は、前記ファセット面領域の不純物濃度よりも高くてもよい。
【0123】
このような発光装置では、トンネルジャンクション層において、c面領域から選択的に電流を注入する電流狭窄構造を形成できる。
【0124】
前記発光装置の一態様において、
前記第2半導体層、前記トンネルジャンクション層、前記第3半導体層の少なくとも一部は、前記柱状部を構成してもよい。
【0125】
このような発光装置では、例えば、第3半導体層が柱状部を構成していない場合と比べて、積層体において発光層よりも第3半導体層側の面内方向の平均屈折率を低くできる。
【0126】
前記発光装置の一態様において、
前記トンネルジャンクション層は、前記第2半導体層と前記第3半導体層をトンネル接合してもよい。
【0127】
このような発光装置では、n型の第3半導体層がトンネルジャンクション層を介してp型の第2半導体層に電流を注入できる。
【0128】
プロジェクターの一態様は、
前記発光装置の一態様を有する。
【符号の説明】
【0129】
2a…c面、2b…c面、2c…c面、4a…ファセット面、4b…ファセット面、4c…ファセット面、10…基板、20…積層体、22…バッファー層、30…柱状部、32…第1半導体層、34…発光層、36…第2半導体層、36a…柱状部分、36b…層状部分、37…トンネルジャンクション層、37a…第1層、37b…第2層、38…第3半導体層、38a…柱状部分、38b…層状部分、50…第1電極、60…マスク層、70…第2電極、100…発光装置、100R…赤色光源、100G…緑色光源、100B…青色光源、200…発光装置、300…発光装置、342…c面領域、344…ファセット面領域、362…c面領域、364…ファセット面領域、372…c面領域、374…ファセット面領域、400…発光装置、500…発光装置、600…発光装置、900…プロジェクター、902R…第1光学素子、902G…第2光学素子、902B…第3光学素子、904R…第1光変調装置、904G…第2光変調装置、904B…第3光変調装置、906…クロスダイクロイックプリズム、908…投射装置、910…スクリーン
図1
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図11