(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
B23Q3/06 301E
B23Q3/06 304F
(21)【出願番号】P 2020113156
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(72)【発明者】
【氏名】後藤 純一
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/121960(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/111666(WO,A1)
【文献】特開2018-118347(JP,A)
【文献】特開2017-100272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)の先端壁から先端側に突設されると共に、クランプ対象物(4)の孔(5)に挿入可能となっている筒状のキャップ部材(3,37)と、
前記ハウジング(1)内で移動可能に挿入される出力部材(9)と、
前記キャップ部材(3,37)の筒孔(8,36)内で軸方向および径方向に移動可能となるように挿入されると共に、前記出力部材(9)に当該出力部材(9)の径方向に移動可能となるように連結されるクランプロッド(17)と、
前記キャップ部材(3,37)の筒壁に貫通される案内孔(24)に挿入されると共に、前記クランプロッド(17)によって前記案内孔(24)に沿って移動される係合部材(22)と
、
前記出力部材(9)の先端部に形成される挿入孔(16)であって、前記クランプロッド(17)が挿入される挿入孔(16)と、
前記クランプロッド(17)の外周壁から径方向の外方に突設される位置決め部(28)と、
前記クランプロッド(17)の外周壁であって、前記位置決め部(28)とは別の場所に形成される逃がし部(30)と、
前記挿入孔(16)の内周壁に形成される基準部(31)と、を備え、
前記クランプロッド(17)が前記出力部材(9)に対して水平方向、および、軸方向に移動可能に連結され、前記出力部材(9)に対して前記クランプロッド(17)が軸方向に移動されて、前記位置決め部(28)が前記基準部(31)に対面または当接するときに、前記クランプロッド(17)の径方向への移動が制限され、
前記出力部材(9)に対して前記クランプロッド(17)が軸方向に移動されて、前記逃がし部(30)が前記基準部(31)に対面または当接するときに、前記クランプロッド(17)が径方向へ移動可能となる、
ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
請求項1のクランプ装置において、
前記クランプロッド(17)に軸方向に長くなるように径方向に貫通される長孔(19)と、
前記挿入孔(16)の周壁から前記挿入孔(16)内に向けて突設されると共に、前記長孔(19)に挿入される連結ピン(20)と、を備える、ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項3】
請求項1のクランプ装置において、
前記挿入孔(16)の周壁に径方向に貫通される孔(19A)と、
前記クランプロッド(17)から当該クランプロッド(17)の径方向の外方に突設されると共に、前記孔(19A)に挿入される連結ピン(20A)と、を備える、ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項4】
請求項1のクランプ装置において、
前記挿入孔(16)の周壁に軸方向に長くなるように径方向に貫通される長孔(19B)と、
前記クランプロッド(17)から当該クランプロッド(17)の径方向の外方に突設されると共に、前記長孔(19B)に挿入される連結ピン(20B)と、を備える、ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項5】
ハウジング(1)の先端壁から先端側に突設されると共に、クランプ対象物(4)の孔(5)に挿入可能となっている筒状のキャップ部材(37)と、
前記ハウジング(1)内で移動可能に挿入される出力部材(9)と、
前記キャップ部材(37)の筒孔(8,36)内で軸方向および径方向に移動可能となるように挿入されると共に、前記出力部材(9)に当該出力部材(9)の径方向に移動可能となるように連結されるクランプロッド(17)と、
前記キャップ部材(37)の筒壁に貫通される案内孔(24)に挿入されると共に、前記クランプロッド(17)によって前記案内孔(24)に沿って移動される係合部材(22)と、
前記クランプロッド(17)の外周壁から径方向の外方に突設される位置決め部(47)と、
前記クランプロッド(17)の外周壁であって、前記位置決め部(47)とは別の場所に形成される逃がし部(49)と、
前記キャップ部材(37)の前記筒孔(36)の内周壁に形成される基準部(50)と、を備え、
前記クランプロッド(17)が軸方向に移動されて、前記位置決め部(47)が前記基準部(50)に対面するときに、前記クランプロッド(17)の径方向への移動が制限され、
前記クランプロッド(17)が軸方向に移動されて、前記逃がし部(49)が前記基準部(50)に対面するときに、前記クランプロッド(17)が径方向へ移動可能となっている、ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項6】
請求項1または5のクランプ装置において、
前記ハウジング(1)の先端壁に環状のストッパ(46)が径方向に移動可能となるように装着され、そのストッパ(46)の内周壁に前記係合部材(22)の外面が当接可能となっている、ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項7】
請求項1または5のクランプ装置において、
前記クランプロッド(17)からストッパ(56)が外方に突設され、前記ストッパ(56)が前記係合部材(22)の先端部に所定の隙間をあけて当接可能となっている、ことを特徴とするクランプ装置。
【請求項8】
ハウジング(1)の先端壁から先端側に突設されると共に、クランプ対象物(4)の孔(5)に挿入可能となっている筒状のキャップ部材(37)と、
前記ハウジング(1)内で移動可能に挿入される出力部材(9)と、
前記キャップ部材(37)の筒孔(8,36)内で軸方向および径方向に移動可能となるように挿入されると共に、前記出力部材(9)に当該出力部材(9)の径方向に移動可能となるように連結されるクランプロッド(17)と、
前記キャップ部材(37)の筒壁に貫通される案内孔(24)に挿入されると共に、前記クランプロッド(17)によって前記案内孔(24)に沿って移動される係合部材(22)と、
前記キャップ部材(37)の筒壁に長孔(57)が軸方向に長くなるように径方向に貫通され、前記出力部材(9)と前記クランプロッド(17)とを連結させる連結ピン(20C)の端部が前記長孔(57)内に当該長孔(57)に沿って移動可能となるように挿入される、ことを特徴とするクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワークやツール等を固定台やロボット等に固定するためのクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクランプ装置には、従来では、特許文献1(国際公開第2012/073723号)に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
ハウジング内に形成された空間に筒状のキャップ部材が上下方向および水平方向に移動可能となるように挿入され、そのキャップ部材の上部がハウジングの上壁から上方に突設される。そのキャップ部材は、クランプ対象物の孔に挿入可能となっている。そのキャップ部材の筒孔内にクランプロッドが当該筒孔に沿って摺動可能に挿入される。そのクランプロッドが上下方向へ移動されることにより、クランプ対象物を押圧する係合部材が水平方向へ移動される。ハウジングに上下方向に移動可能に挿入されるピストンロッドに、クランプロッドが水平方向へ移動可能となるようにピン連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術は、キャップ部材の軸心とクランプ対象物の孔の軸心が水平方向に位置ずれしている場合であっても、クランプ対象物にキャップ部材を挿入するときに、クランプロッドの軸心がクランプ対象物の孔の軸心に近づけられるようにクランプ対象物がキャップ部材を介してクランプロッドを水平方向へ押して可動範囲内で移動させる。このため、キャップ部材の軸心とクランプ対象物の軸心とをほぼ一致させた状態でクランプ装置がクランプ対象物を確実にクランプできる点で優れている。しかしながら、そのクランプロッドおよびキャップ部材の可動範囲を超えて位置ずれしたクランプ対象物の孔にキャップ部材を挿入することにより、当該クランプ対象物がキャップ部材の可動範囲内となるように水平に移動される場合には、クランプ対象物が水平方向に強力に押圧する力がキャップ部材およびクランプロッドに作用する。この場合、キャップ部材とハウジング内の前記空間との間に摺動隙間が形成されていることにより、前記押圧力によってキャップ部材が摺動隙間の寸法分だけ傾斜される。このため、傾斜されたキャップ部材が挿入されたクランプ対象物が所望する位置や状態からずれて固定されるおそれがある点で改良の余地があった。
本発明の目的は、クランプ対象物を所定範囲内の位置で確実に固定できるクランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、
図1Aから
図18に示すように、クランプ装置を次のように構成した。
ハウジング1の先端壁から筒状のキャップ部材3,37が先端側に突設される。そのキャップ部材3,37がクランプ対象物4の孔5に挿入可能となっている。前記ハウジング1内で出力部材9が移動可能に挿入される。前記キャップ部材3,37の筒孔8,36内でクランプロッド17が軸方向および径方向に移動可能となるように挿入され、そのクランプロッド17が前記出力部材9に当該出力部材9の径方向に移動可能となるように連結される。前記キャップ部材3,37の筒壁に貫通される案内孔24に係合部材22が挿入され、その係合部材22が前記クランプロッド17によって前記案内孔24に沿って移動される。
【0006】
本発明は、次のような作用効果を奏する。
上記キャップ部材がクランプ対象物の孔に挿入されるときに、クランプ装置に対してクランプ対象物が水平方向の所定範囲内の位置にキャップ部材によって移動される。また、出力部材に対してクランプロッドが水平方向に移動可能となっていることにより、ロック駆動時にクランプロッドの軸心がワークの孔の軸心に近づくように移動される。これにより、クランプ対象物が水平方向へ押す力をキャップ部材が受け止めた状態で、クランプロッドの軸心がクランプ対象物の孔の軸心にほぼ一致した位置で、クランプ装置がクランプ対象物を確実に押圧してクランプできる。
【0007】
本発明は、下記(1)から(8)の構成を加えることが好ましい。
(1) 例えば、
図1Aから
図3B,
図4,
図5に示すように、前記出力部材9の先端部に挿入孔16が形成され、その挿入孔16に前記クランプロッド17が挿入される。前記クランプロッド17の外周壁から位置決め部28が径方向の外方に突設される。前記クランプロッド17の外周壁であって、前記位置決め部28とは別の場所に逃がし部30が形成される。前記挿入孔16の内周壁に基準部31が形成される。前記出力部材9に対して水平方向、および、軸方向に移動可能となるように、前記クランプロッド17が前記出力部材9に連結される。前記出力部材9に対して前記クランプロッド17が軸方向に移動されて、前記位置決め部28が前記基準部31に対面または当接するときに、前記クランプロッド17の径方向への移動が制限される。前記出力部材9に対して前記クランプロッド17が軸方向に移動されて、前記逃がし部30が前記基準部31に対面するときに、前記クランプロッド17が径方向へ移動可能となる。
この場合、クランプ装置をロック駆動して、逃がし部が基準部に対面するときに、出力部材に対してクランプロッドが水平方向へ移動可能となっている。また、クランプ装置をリリース駆動して、位置決め部が基準部に対面するときに、クランプロッドの所定位置(例えば、軸心)が、キャップ部材の所定位置(例えば、軸心)に一致する方向へ移動される。従って、キャップ部材にワークを取り付けおよび取り外しするときに、ワークが係合部材に接触して摩耗したり、衝突して破損したりするのを防止できる。
【0008】
(2) 例えば、
図1Aから
図3Bに示すように、前記クランプロッド17に長孔19が軸方向に長くなるように径方向に貫通される。前記挿入孔16の周壁から連結ピン20が前記挿入孔16内に向けて突設される。その連結ピン20が長孔19に挿入されている。
この場合、連結ピンが長孔にクランプロッドの軸方向および当該長孔の貫通方向に沿って相対移動することができる。
【0009】
(3) 例えば、
図4に示すように、前記挿入孔16の周壁に孔19Aが径方向に貫通される。前記クランプロッド17から連結ピン20Aが当該クランプロッド17の径方向の外方に突設され、その連結ピン20Aが前記孔19Aに挿入される。
この場合、連結ピンが長孔にクランプロッドの軸方向および前記軸方向に交差する方向に相対移動することができる。
【0010】
(4) 例えば、
図5に示すように、前記挿入孔16の周壁に長孔19Bが軸方向に長くなるように径方向に貫通される。前記クランプロッド17から連結ピン20Bが当該クランプロッド17の径方向の外方に突設され、その連結ピン20Bが前記長孔19Bに軸方向および前記クランプロッド17の径方向に相対移動可能に挿入される。
この場合、連結ピンが長孔にクランプロッドの軸方向および当該長孔の貫通方向に沿って相対移動することができる。
【0011】
(5) 例えば、
図6から
図18に示すように、前記クランプロッド17の外周壁から位置決め部47が径方向の外方に突設される。前記クランプロッド17の外周壁であって、前記位置決め部47とは別の場所に逃がし部49が形成される。前記キャップ部材37の前記筒孔36の内周壁に基準部50が形成される。前記クランプロッド17が軸方向に移動されて、前記位置決め部47が前記基準部50に対面するときに、前記クランプロッド17の径方向への移動が制限される。前記クランプロッド17が軸方向に移動されて前記逃がし部49が前記基準部31に対面するときに、前記クランプロッド17が径方向へ移動可能となっている。
【0012】
(6) 例えば、
図6から
図10,
図15および
図16に示すように、前記ハウジング1の先端壁に環状のストッパ46が径方向に移動可能となるように装着され、そのストッパ46の内周壁に前記係合部材22の外面が当接可能となっている。
この場合、クランプロッドが係合部材を当該クランプロッドの径方向の外方へ移動させて、ストッパに当接させた後は、クランプロッドと係合部材とが一体となって当該クランプロッドの軸方向に移動される。クランプロッドに対して係合部材が当該クランプロッドの径方向の外方へ移動することがストッパによって確実に制限される。
【0013】
(7) 例えば、
図11および
図12に示すように、クランプロッド17からストッパ56が外方に突設され、そのストッパ56が係合部材22の先端面に当接可能に所定の隙間をあけて対面される。
この場合、クランプロッドが係合部材を当該クランプロッドの径方向の外方へ移動させて、ストッパが係合部材に当接した後は、クランプロッドと係合部材とが一体となって当該クランプロッドの軸方向に移動される。クランプロッドに対して係合部材が当該クランプロッドの径方向の外方へ移動することがストッパによって確実に制限される。
【0014】
(8) 例えば、
図13および
図14に示すように、前記キャップ部材37の筒壁に長孔57が軸方向に長くなるように径方向に貫通される。前記出力部材9と前記クランプロッド17とを連結させる連結ピン20Cの端部が前記長孔57内に当該長孔57に沿って移動可能となるように挿入される。
この場合、係合部材を当該クランプロッドの径方向に移動させるために、クランプロッドを軸方向に所定距離だけ移動させると、連結ピンがキャップ部材の長孔の端部に当接する。これにより、クランプロッドがキャップ部材を介して係合部材を軸方向へ移動させていく。その結果、上記当接後、クランプロッドに対して係合部材が当該クランプロッドの径方向の外方へ移動することが確実に制限される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1Aは、本発明の第1実施形態を示す断面視の模式図である。
図1Bは、
図1A中の1B-1B線の部分断面図である。
【
図2】
図2Aは、上記クランプ装置のリリース状態を示す断面図であって、上記
図1に類似する図である。
図2Bは、
図2A中の2B-2B線の部分断面図である。
【
図3】
図3Aは、上記クランプ装置のロック状態を示す断面図であって、
図1に類似する図である。
図3Bは、
図3A中の3B-3B線の部分断面図である。
【
図4】
図4は、上記の第1実施形態の第1変形例を示し、
図1Bに類似する部分断面図である。
【
図5】
図5は、上記の第1実施形態の第2変形例を示し、上記
図1Aに類似する断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態を示す断面視の模式図である。
【
図7】
図7Aは、上記クランプ装置のリリース状態を示す断面図であって、上記
図6に類似する部分図である。
図7Bは、
図7A中の7B-7B線の部分断面図である。
【
図8】
図8は、上記クランプ装置の動作説明図であって、上記
図6に類似する図である。
【
図9】
図9は、上記クランプ装置の動作説明図であって、上記
図6に類似する図である。
【
図10】
図10は、上記クランプ装置のロック状態を示す断面図であって、上記
図6に類似する図である。
【
図11】
図11は、上記の第2実施形態の第1変形例を示し、クランプ装置のリリース状態を示す断面図である。
【
図12】
図12は、上記クランプ装置のロック状態を示す断面図であって、
図11に類似する図である。
【
図13】
図13は、上記の第2実施形態の第2変形例を示し、クランプ装置のリリース状態を示す断面図である。
【
図14】
図14は、上記クランプ装置のロック状態を示す断面図であって、
図13に類似する図である。
【
図15】
図15は、上記の第2実施形態の第3変形例を示し、クランプ装置のリリース状態を示す断面図である。
【
図16】
図16は、上記クランプ装置のロック状態を示す断面図であって、
図15に類似する図である。
【
図17】
図17は、上記の第2実施形態の第4変形例を示し、クランプ装置のリリース状態を示す断面図である。
【
図18】
図18は、上記クランプ装置のロック状態を示す断面図であって、
図17に類似する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態を
図1Aから
図3Bによって説明する。
この実施形態では、クランプ装置をホールクランプに適用した場合を例示してある。
【0017】
固定台としてのテーブルTにハウジング1がボルト固定されている。ハウジング本体2から筒状のキャップ部材3が当該ハウジング本体2と一体となるように上方へ突設される。そのキャップ部材3がワーク(クランプ対象物)4の孔5に挿入可能となっている。なお、本実施形態のキャップ部材3の外径寸法は、ワーク4の孔5の内径寸法より小さく設定されている。また、ハウジング1内にシリンダ孔7が上下方向に形成され、そのシリンダ孔7がキャップ部材3の筒孔8に連通される。そのシリンダ孔7に出力部材9が上下方向(当該シリンダ孔7の軸方向)に移動可能に挿入される。その出力部材9は、シリンダ孔7に挿入されるピストン9aと、そのピストン9aの上面から上方に突設されるピストンロッド9bとを有する。
【0018】
上記ピストン9aの上側にロック室11が形成されると共に、ピストン9aの下側にリリース室12が形成される。そのロック室11内に保持バネ13が装着され、その保持バネ13がピストン9aを下方に付勢する。また、圧油源からの圧油が、ハウジング1内に形成されるロック用給排路14を通ってロック室11に給排されると共に、リリース用給排路15を通ってリリース室12に給排される。
【0019】
上記ピストンロッド9bの上端部(先端部)に挿入孔16が上下方向(軸方向)に形成され、その挿入孔16にクランプロッド17の下端部(基端部)18が水平方向に隙間をあけて挿入される。ピストンロッド9bに対してクランプロッド17が水平方向に移動可能となるようにピン連結される。なお、本実施形態では、ピストンロッド9bの筒壁から連結ピン20が径方向の内方に向けて突設される。その連結ピン20が、クランプロッド17に貫通される長孔19に水平方向および上下方向へ移動可能に挿入される。このため、クランプロッド17がピストンロッド9bに対して連結ピン20に沿って水平方向に移動可能、および、長孔19に沿って上下方向に移動可能となっている。
【0020】
上記クランプロッド17の外周壁に3つの楔部21が先端側に向かうにつれて広がる(径寸法が大きくなる)ように周方向に所定の間隔をあけて形成されている。各楔部21に係合部材22の受け部23が当接される。楔部21の傾斜面に沿ってアリ溝21aが設けられ、そのアリ溝21aには、受け部23に形成されるガイドレール23aが挿入される。また、係合部材22が、キャップ部材3の筒壁に形成される案内孔24に移動可能に挿入される。なお、本実施形態では、案内孔24の内周壁の天井部および底部には、係合部材22の上面および下面と摺動隙間をあけて挿入されると共に、案内孔24の内周壁の側面と係合部材22の側面との間に摺動隙間よりも大きな隙間をあけて係合部材22が挿入されている。その係合部材22の外壁に押圧部25が形成され、その押圧部25がワーク4の孔5の内周面に当接可能となっている。ここで、本実施形態のクランプ装置では、クランプロッド17の外周壁に所定の間隔をあけて3つの係合部材22a,22b,22cを備えることに代えて、2つの係合部材22a,22bを備えるようにしてもよい。
【0021】
本実施形態のホールクランプは、リリース駆動するときにクランプロッド17の軸心をピストンロッド9bの軸心に一致させるように当該クランプロッド17を移動させる戻し機構Rを備える。その戻し機構Rは、クランプロッド17の外周壁とピストンロッド9bの挿入孔16の内周壁との間に設けられ、次のように構成される。
【0022】
上記クランプロッド17の下端部の外周面から位置決め部28が水平方向(当該クランプロッド17の径方向)に向けて周方向に連続して突設される。その位置決め部28の下側にテーパ部29と逃がし部30とが順に形成される。また、ピストンロッド9bの挿入孔16の内周壁に基準部31が形成される。上記クランプロッド17に対してピストンロッド9bが上方に移動されて、位置決め部28が基準部31に対面するときに、クランプロッド17の水平方向への移動が制限される。また、上記クランプロッド17に対してピストンロッド9bが下方に移動されて、逃がし部30が基準部31に対面するときに、クランプロッド17の水平方向への移動が許容される。本実施形態の戻し機構Rは、位置決め部28とテーパ部29と逃がし部30と基準部31とによって構成される。なお、本実施形態では、位置決め部28がクランプロッド17の外周面から水平方向に向けて周方向に連続して突設されるように構成したが、これに限られず、周方向に所定の間隔をあけて2つまたは3つ以上に分けて備えるようにしてもよい。これと同様に、本実施形態では、基準部31がピストンロッド9bの内周面に周方向に連続して突設されるように構成したが、これに限られず、周方向に所定の間隔をあけて2つまたは3つ以上に分けて備えるようにしてもよい。
【0023】
上記ホールクランプは、
図1Aから
図3Bに示すように、次のように作動する。
図1Aおよび
図1Bの初期状態(リリース状態)では、ロック室11から圧油が排出されていると共に、リリース室12に圧油が供給されている。このため、リリース室12の圧油の押圧力が保持バネ13の付勢力に抗してピストン9aを上限位置に移動させている。従って、ピストン9aがピストンロッド9bを介してクランプロッド17を上限位置に移動させている。よって、クランプロッド17がアリ溝21aとガイドレール23aとを介して係合部材22を径方向の内方に移動させている。このとき、クランプロッド17の位置決め部28がピストンロッド9bの基準部31に対面しており、ピストンロッド9bに対するクランプロッド17の水平方向への移動が制限される。また、クランプロッド17の軸心がピストンロッド9bの軸心と略一致している。このため、係合部材22は、その外面がキャップ部材3の外周面より内側となるようにキャップ部材3内に収容されている。これにより、キャップ部材3がワーク4の孔5が外嵌めされるときに、ワーク4の孔5の周壁が係合部材22に衝突することが防止されている。その結果、衝突による係合部材22やワーク4の摩耗や破損が防止される。
【0024】
上記リリース状態のホールクランプの上方にワーク4が移動される。このとき、ホールクランプのシリンダ孔7の軸心からワーク4の孔5の軸心が距離Aだけ水平方向に位置ずれしている。そのワーク4を下降させていくと、ワーク4の孔5の周壁がホールクランプのキャップ部材3のテーパ部3aに当接する。その後、ワーク4がキャップ部材3のテーパ部3aに沿って右方へ移動しながら下降されていく。そして、
図2Aに示すように、ワーク4の孔5がキャップ部材3を外嵌めする。このとき、ホールクランプのシリンダ孔7の軸心からワーク4の孔5の軸心が距離Bだけ水平方向に位置ずれしている。ここで、本実施形態において、軸心間距離Aは、許容される位置ずれ許容範囲を超える距離であり、軸心間距離Bは、許容される位置ずれ許容範囲内の距離である。すなわち、キャップ部材3にワーク4の孔5を外嵌めすることにより、キャップ部材3がワーク4を位置ずれ許容範囲外から位置ずれ許容範囲内に移動させている。
【0025】
上記ホールクランプを
図2Aおよび
図2Bのリリース状態から
図3Aおよび
図3Bのロック状態にロック駆動するときに、リリース室12から圧油が排出されると共に、ロック室11に圧油が供給される。すると、ロック室11の圧油による押圧力と保持バネ13の付勢力がピストン9aとピストンロッド9bを介してクランプロッド17を下降していき、そのクランプロッド17が係合部材22を当該クランプロッド17の径方向の外方に移動させていく。このとき、クランプロッド17の位置決め部28がピストンロッド9bの挿入孔16から抜き出されて、テーパ部29または逃がし部30が基準部31に対面する。このため、クランプロッド17がキャップ部材3に対して水平方向に移動可能となる。次いで、
図2Aおよび
図2Bにおいて、クランプロッド17の軸心より右側にある係合部材22b,22cの押圧部25がワーク4の孔5の内周壁に受け止められる。その後、クランプロッド17が下降されると共に、左方へ移動されていく。この間に、クランプロッド17が、当該クランプロッド17の軸心より左側にある係合部材22aを左方に押し出していく。すると、左側の係合部材22aの押圧部25がワーク4の孔5の内周面に当接する。このとき、ハウジング1のシリンダ孔7の軸心に対してワーク4の軸心が水平方向に距離Bだけ位置ずれしているが、クランプロッド17の軸心とワーク4の孔5の軸心とは一致している。これにより、3つの係合部材22a,22b,22cがワーク4の孔5の内周壁を均等に押圧する。その結果、上記ホールクランプが
図2Aのリリース状態から
図3Aのロック状態に切り換えられる。
【0026】
上記ホールクランプを
図3Aのロック状態から
図2Aのリリース状態にリリース駆動するときには、ロック室11から圧油が排出されると共に、リリース室12に圧油が供給される。すると、リリース室12の圧油による押圧力が保持バネ13の付勢力に抗してピストン9aを上方に移動させていく。ピストン9aがピストンロッド9bを介してクランプロッド17を上方へ移動させていくと、クランプロッド17が3つの係合部材22a,22b,22cを当該クランプロッド17の径方向の内方に移動させていく。そして、クランプロッド17のテーパ面29がピストンロッド9bの筒状先端部の周壁に当接されると、クランプロッド17と3つの係合部材22a,22b,22cとが、クランプロッド17の軸心がハウジング1の軸心に一致するように右方に移動されていく。そして、クランプロッド17の位置決め面28が基準面31に対面されて、ピストンロッド17に対するクランプロッド17の水平方向への移動が制限される。その後、ピストン9aがハウジング1の上壁に受け止められて停止される。その結果、ホールクランプは、
図3Aのロック状態から
図2Aのリリース状態に切り換えられる。
【0027】
上記の実施形態は次の長所を奏する。
ワーク4の孔5をキャップ部材3に外嵌めするときに、キャップ部材3がワーク4を許容範囲外の位置から許容範囲内の位置(所望する位置)となるように移動させる。このとき、ワーク4がキャップ部材3を水平方向(図中においては、左方)に押圧する力が作用するが、ハウジング本体2に一体に形成されているのでキャップ部材3が傾くことがない。このため、ワーク4が位置ずれしていても所定範囲の位置に着座される。また、出力部材9に対してクランプロッド17が水平方向に移動可能となっていることにより、ロック駆動時にクランプロッド17の軸心がワーク4の孔5の軸心に近づくように移動される。これにより、係合部材22がワーク4の孔5の内周壁を均等に押圧するので、クランプ装置はワーク4を確実にクランプできる。
【0028】
また、ロック状態からリリース状態に切り換えられるときに、テーパ面29が基準部31に当接してクランプロッド17の軸心がハウジング1の軸心に近づくように移動され、位置決め部28が基準部31に対面することによりクランプロッド17の軸心とハウジング1の軸心とが略一致する。これにより、これにより、リリース状態で、係合部材22がキャップ部材3内に収納される。その結果、キャップ部材3に対してワークを取り付けるとき、または、取り外すときに、ワーク4の孔5の周壁によって係合部材22が摩耗したり、破損したりするのを防止できる。
【0029】
上記第1実施形態のクランプ装置の連結ピン20や長孔19等の配置位置や形状を、
図4および
図5に示す第1実施形態の第1変形例及び第2変形例に示すようにしてもよい。
【0030】
図4に示す第1実施形態の第1変形例では、上記第1実施形態の長孔19を円形の孔19Aに変更している。すなわち、連結ピン20Aの直径寸法よりも大きい直径寸法となるように設定される円形の孔19Aがクランプロッド17に貫通され、その孔19Aに連結ピン20Aが、摺動隙間よりも大きい隙間をあけて挿入される。これにより、ピストンロッド9bに対してクランプロッド17が上下方向及び水平方向へ移動可能となっている。本変形例の孔19Aの形状は、円形に限られず、楕円形や略多角形などであってもよい。
【0031】
また、
図5に示す第1実施形態の第2変形例では、ピストンロッド9bの筒状先端部の筒壁に長孔19Bが上下方向に長くなるように貫通される。また、クランプロッド17の下端部18の外周面から連結ピン20Bが当該クランプロッド17の径方向に突設されて、その連結ピン20Bが長孔19Bに上下方向へ摺動移動可能に挿入される。本変形例の孔19Bの形状は、例示した長孔に限られず、円形や楕円形や略多角形などであってもよい。
【0032】
図6から
図10は、本発明の第2実施形態を示している。この第2実施形態においては、上記の第1実施形態の構成部材と同じ部材(または類似する部材)には原則として同一の参照数字を付けて説明する。
【0033】
この第2実施形態は、上記の第1実施形態とは次の点で異なる。
ハウジング1の上部に支持筒35が突設される。その筒孔36に筒状のキャップ部材37が上下方向(筒孔36の軸心方向)に移動可能に挿入される。そのキャップ部材37は、支持筒35の筒孔36に挿入される大径部38と、その大径部38の上側に突設される小径部39とを有する。その小径部39がワーク4の孔5に挿入可能になっている。その大径部38の内部と小径部39の内部とにわたって筒孔が形成され、その筒孔内にピストンロッド9bの一部とクランプロッド17とが上下方向に移動可能に挿入される。その大径部38の外周壁に取り付け溝40が周方向に形成され、その取り付け溝40に弾性リング41が装着される。その弾性リング41は、金属によって形成されるリング状の弾性部材であって、周壁に形成されるスリット42を有する略C字形状の部材である。その弾性リング41が、支持筒35の筒孔36の内周壁に形成される係止溝43に挿入されるときに、その弾性リング41の弾性復元力によって拡径して、係止溝43と支持筒35の筒孔36の内周面との間に形成される段差部44に係合する。このとき、キャップ部材37の下方への移動が制限される。その弾性リング41が縮径するときに、キャップ部材37の下方への移動が許容される。本実施形態の弾性リング41が金属によって形成されることに限られず、ゴムや樹脂などによって形成されてもよく、また、スリット42を省略してもよい。
【0034】
上記の支持筒35の上部にリング状のカバー45が当該支持筒35の上端面との間に隙間をあけて取り付けられ、その隙間にリング状のストッパ46が水平方向に移動可能に挿入される。そのストッパ46の内径寸法は、ワーク4の孔5の内径寸法と同じか、孔5の内径寸法よりも小さくなるように設定されている。そのストッパ46の内周面に2つの係合部材22a,22bの外周面が当接可能となっている。
【0035】
本実施形態のクランプ装置は、リリース駆動するときにクランプロッド17の軸心をキャップ部材37の軸心に一致させるように当該クランプロッド17を移動させる戻し機構Rを備える。その戻し機構Rは、クランプロッド17の外周壁とキャップ部材37の内周壁との間に設けられ、次のように構成される。
【0036】
上記クランプロッド17の外周壁から位置決め部47が径方向の外方に突設されるように周方向に形成される。位置決め部47の上側にテーパ部48が上方に向かうにつれて先細るように形成される。そのテーパ部48の上側に逃がし部49が形成される。キャップ部材37の筒孔の内周壁に基準部50が形成される。基準部50に位置決め部47が対面するときに、クランプロッド17の水平方向への移動が制限される。クランプロッド17がキャップ部材37に対して下方へ移動されることにより、キャップ部材37の基準部50から位置決め部47が抜き出されて、基準部50に逃がし部49が対面するときに、クランプロッド17の水平方向への移動が許容される。本実施形態の戻し機構Rは、位置決め部47とテーパ部48と逃がし部49と基準部50とによって構成される。
【0037】
上記の係合部材22の外壁から突起部53が外方に向けて突設され、その突起部53の下面によって押圧部25が構成される。その押圧部25がワーク4の孔5の周壁に上方から当接可能となっている。
【0038】
上記ピンクランプは、
図6から
図10に示すように、次のように作動する。
図6の初期状態では、ピストン9aがピストンロッド9bを介してクランプロッド17を上限位置に移動させている。このとき、クランプロッド17の位置決め部47がキャップ部材37の基準部50に対面しており、キャップ部材37に対するクランプロッド17の水平方向への移動が制限される。また、クランプロッド17の軸心がキャップ部材37の軸心と略一致している。
【0039】
上記初期状態のピンクランプの上方にワーク4が移動されている。このとき、キャップ部材37の軸心からワーク4の孔5の軸心が距離Aだけ水平方向に位置ずれしている。そのワーク4を下降させていくと、ワーク4の孔5の周壁がキャップ部材37のテーパ部37aに当接する。その後、ワーク4がキャップ部材37のテーパ部37aに沿って右方へ移動しながら下降されていく。このとき、キャップ部材37の大径部38の外周面が支持筒35の筒孔36の内周面に広い面積で支持されるので、ワーク4がキャップ部材37を水平方向へ押してもキャップ部材37がハウジング1に対してほとんど傾斜されることがない。引き続いて、ワーク4の孔5がキャップ部材37を外嵌めする。このとき、キャップ部材37の軸心からワーク4の孔5の軸心が距離Bだけ水平方向に位置ずれしている。
【0040】
上記ピンクランプを
図7Aおよび
図7Bのリリース状態から
図10のロック状態にロック駆動するときに、リリース室12から圧油が排出されると共に、ロック室11に圧油が供給される。すると、ロック室11の圧油による押圧力と保持バネ13の付勢力がピストン9aとピストンロッド9bとを介してクランプロッド17を下降させていき、そのクランプロッド17が係合部材22を当該クランプロッド17の径方向の外方に移動させていく。そのクランプロッド17が所定高さ位置まで下降されて、キャップ部材37の基準部50から位置決め部47が抜き出されて、基準部50に逃がし部49が対面する。このため、クランプロッド17がキャップ部材37に対して水平方向に移動可能となる。次いで、
図8に示すように、右側の係合部材22bの外面がワーク4の孔5の内周壁に当接する。その後、クランプロッド17が下降されると共に、左方へ移動されていく。引き続いて、
図9に示すように、左側の係合部材22aの外面がストッパ46の内周面に係合すると共に、右側の係合部材22bの外面もストッパ46の内周面に係合する。このため、左右両側の係合部材22a,22bとクランプロッド17との相対移動が制限される。この後、クランプロッド17と係合部材22とが一体に下降されていき、係合部材22がキャップ部材37を下方へ押していく。このため、キャップ部材37に装着される弾性リング41が支持筒35の筒孔36内の段差部44によって縮径されて、クランプロッド17と係合部材22とキャップ部材37とが一体に下降されていく。これにより、
図10に示すように、係合部材22の押圧部25がワーク4の孔5の内周壁を上方から押圧する。その結果、キャップ部材37の軸心に対してワーク4の軸心が水平方向に距離Bだけ位置ずれすると共に、クランプロッド17の軸心がワーク4の孔5の軸心と略一致した状態で、上記ピンクランプが
図7のリリース状態から
図10のロック状態に切り換えられる。
【0041】
上記ピンクランプを
図10のロック状態から
図7Aのリリース状態にリリース駆動するときには、ロック室11から圧油が排出されると共に、リリース室12に圧油が供給される。すると、リリース室12の圧油による押圧力が保持バネ13の付勢力に抗してピストン9aを上方に移動させていく。ピストン9aがピストンロッド9bを介してクランプロッド17を上方へ移動させていく。このとき、弾性リング41の弾性復元力が支持筒35の筒孔36の内周面に作用することにより、筒孔36の内周面と弾性リング41との間に摩擦力が生じる。この摩擦力によってキャップ部材37が下降位置に取り残される。このため、クランプロッド17が左右両側の係合部材22a,22bを当該クランプロッド17の径方向の内方に移動させていく。次いで、クランプロッド17のテーパ部48がキャップ部材37の基準部50に当接されると、クランプロッド17と左右両側の係合部材22a,22bとが、上昇されながら右方に移動されていく。このため、クランプロッド17の軸心がキャップ部材37の軸心に近づく。そして、クランプロッド17の位置決め部47がキャップ部材37の基準部50に対面されると、クランプロッド17の軸心がハウジング1の軸心にほぼ一致する。このとき、左右両側の係合部材22a,22bがキャップ部材37の内側に収納される。その後、ピストンロッド9bの上面がキャップ部材37を上方に押すと共に、そのキャップ部材37が係合部材22を上方へ押していく。キャップ部材37の大径部38の上面が支持筒35の上壁35aに受け止められて、ピストン9aの上昇が停止される。その結果、ピンクランプは
図10のロック状態から
図7Aのリリース状態に切り換えられる。
【0042】
上記の実施形態は次の長所を奏する。
ワーク4の孔5をキャップ部材3に外嵌めするときに、キャップ部材3がワーク4を許容範囲外の位置から許容範囲内の位置(所望する位置)となるように移動させる。このとき、ワーク4がキャップ部材3を水平方向(図中においては、左方)に押圧する力が作用するが、支持筒35の筒孔36の内周面にキャップ部材37の大径部38の外周面が広い面で支持されるのでハウジング1に対して支持筒35がほとんど傾かない。また、出力部材9に対してクランプロッド17が水平方向に移動可能となっていることにより、ロック駆動時にクランプロッド17の軸心がワーク4の孔5の軸心に近づくように移動される。これにより、係合部材22がワーク4の孔5の周壁を均等に押圧するので、クランプ装置はワーク4を確実にクランプできる。
【0043】
また、ロック状態からリリース状態に切り換えられるときに、テーパ面48が基準部50に当接してクランプロッド17の軸心がキャップ部材37の軸心に近づくように移動され、位置決め部47が基準部50に対面することによりクランプロッド17の軸心とキャプ部材37の軸心とが略一致する。これにより、これにより、リリース状態で、係合部材22がキャップ部材37内に収納される。その結果、キャップ部材3に対してワークを取り付けるとき、または、取り外すときに、ワーク4の孔5の周壁によって係合部材22が摩耗したり、破損したりするのを防止できる。
【0044】
図11および
図12は、上記の第2実施形態の第1変形例を示しており、その第2変形例は、上記の第1実施形態および第2実施形態とは次の点で異なる。
上記の第2実施形態のピンクランプがストッパ46を備えることに代えて、第1変形例のピンクランプでは、クランプロッド17の外周面からストッパピン56が径方向の外方に突設されている。そのストッパピン56が係合部材22を受け止め可能となるように構成されている。これにより、クランプロッド17が下降されて、
図12に示すように、ストッパピン56が係合部材22に当接されると、その後、クランプロッド17と係合部材22とが一体に下降される。その結果、係合部材22が径方向の外方へ移動することが制限される。
【0045】
図13および
図14は、上記の第2実施形態の第2変形例を示しており、その第2変形例は、上記の第1実施形態および第2実施形態とは次の点で異なる。
上記の第2実施形態のピンクランプがストッパ46を備えることに代えて、キャップ部材37の大径部38の周壁に長孔57が上下に長くなるように形成されると共に、連結ピン20Cの端部がその長孔57に挿入されるように構成される。これにより、クランプ装置をロック駆動させるときに、ピストンロッド9bが所定位置に下降されると、連結ピン20Cがキャップ部材37の長孔57の下端面に当接する。その後、ピストンロッド9bが連結ピン20Cを介してキャップ部材37を押し下げていき、そのキャップ部材37が係合部材22を下方へ押して下げていく。また、クランプ装置をリリース駆動させるときに、ピストンロッド9bが上昇されると、連結ピン20Cがキャップ部材37の長孔57の上端面に当接する。その後、ピストンロッド9bが連結ピン20Cを介してキャップ部材37を押し上げていき、そのキャップ部材37が係合部材22を押し上げていく。
【0046】
図15および
図16は、上記の第2実施形態の第3変形例を示しており、その第3変形例は、上記の第1実施形態および第2実施形態とは次の点で異なる。
上記の第2実施形態のクランプ装置では、位置決め部47がクランプロッド17の外周面に当該クランプロッド17の軸方向に平行するようにストレートに形成される。これに対して、第3変形例の位置決め部47Aは、クランプロッド17の外周壁に上方(先端側)に向かうにつれて先細りするテーパ外周面によって構成される。本変形例では、キャップ部材37の内周壁に基準部50Aがテーパ状に形成されている。これにより、位置決め部47Aと基準部50Aとが全周にわたって係合するときに、ピストンロッド9bの軸心とクランプロッド17の軸心がほぼ一致するように構成されている。
【0047】
図17および
図18は、上記の第2実施形態の第4変形例を示しており、その第4変形例は、上記の第1実施形態および第2実施形態とは次の点で異なる。
上記の第2実施形態のクランプ装置では、キャップ部材37に弾性リング41が装着される。これに対して、第2変形例のクランプ装置では、支持筒35の筒孔36内であって、キャップ部材37の下端面とハウジング本体2の上端面との間にバネ64が装着される。このため、ハウジング1に対してバネ64がキャップ部材37を上方へ付勢している。
【0048】
上記のピンクランプは、
図17および
図18に示すように、次のように作動する。
図17に示す初期状態のピンクランプの上方にワーク4が移動されている。このとき、ピンクランプのキャップ部材37の軸心からワーク4の孔5の軸心が距離Aだけ水平方向に位置ずれしている。そのワーク4を下降させていくと、ワーク4の孔5の周壁がピンクランプのキャップ部材37のテーパ部37aに当接する。その後、ワーク4がキャップ部材37のテーパ部37aに沿って右方へ移動しながら下降されていく。引き続いて、ワーク4の孔5がキャップ部材37を外嵌めする。このとき、キャップ部材37の軸心からワーク4の孔5の軸心が距離Bだけ水平方向に位置ずれしている。
【0049】
上記ピンクランプを
図17のリリース状態から
図18のロック状態にロック駆動するときに、リリース室12から圧油が排出されると共に、ロック室11に圧油が供給される。すると、ロック室11の圧油による押圧力と保持バネ13の付勢力がピストン9aとピストンロッド9bを介してクランプロッド17を下降させていく。このとき、クランプロッド17が所定高さ位置に下降されたときに、キャップ部材37の基準部50からクランプロッド17の位置決め部47が離間(対面状態が解除)されて、基準部50に逃がし部49が対面するので、クランプロッド17の水平方向への移動が許容される。そのクランプロッド17が係合部材22を当該クランプロッド17の径方向の外方に移動させていく。次いで、右側の係合部材22の外面がワーク4の孔5の内周壁に当接する。その後、クランプロッド17が下降されると共に、左方へ移動されていく。左側の係合部材22aの外面がワーク4の孔5の内周壁に当接する。このため、クランプロッド17と係合部材22との相対移動が制限される。その後、クランプロッド17と係合部材22とが一体に下降されていくと共に、その係合部材22がキャップ部材37をバネ64の付勢力に抗して下方へ押していく。これにより、キャップ部材37の軸心がワーク4の孔5の軸心に対して水平方向に距離Bだけ位置ずれしていると共に、クランプロッド17の軸心がキャップ部材37の軸心にほぼ一致した状態で、係合部材22の押圧部25がワーク4の孔5の周縁を上方から確実に押圧する。その結果、上記ピンクランプが
図17のリリース状態から
図18のロック状態に切り換えられる。
【0050】
上記ピンクランプを
図18のロック状態から
図17のリリース状態にリリース駆動するときには、ロック室11から圧油が排出されると共に、リリース室12に圧油が供給される。すると、リリース室12の圧油による押圧力が保持バネ13の付勢力に抗してピストン9aを上方に移動させていく。ピストン9aがピストンロッド9bを介してクランプロッド17を上方へ移動させていくと、クランプロッド17が左右両側の係合部材22a,22bを当該クランプロッド17の径方向の内方に移動させていく。このとき、バネ64の付勢力がキャップ部材37を上方へ押し上げていく。次いで、クランプロッド17のテーパ部48がキャップ部材37の基準部50に当接されると、クランプロッド17と左右両側の係合部材22とは、クランプロッド17の軸心がキャップ部材37の軸心に近づくように右方に移動されていく。クランプロッド17の位置決め部47がキャップ部材37の基準部50に対面されると、クランプロッド17の軸心がハウジング1の軸心にほぼ一致する。これにより、係合部材22がキャップ部材37の内側に収納される。上記バネ64がキャップ部材37を上方へ押すと共に、そのキャップ部材37が係合部材22を上方へ押していく。キャップ部材37の大径部の上面が支持筒35の上壁に受け止められると共に、ピストンロッド9bがキャップ部材37に受け止められてピストン9aの上昇が停止される。その結果、ピンクランプはロック状態からリリース状態に切り換えられる。
【0051】
上記の各実施形態は次のように変更可能である。
上記ワークやパレットやツールなどの孔の内周面を押圧するクランプ装置(ホールクランプ)、前記ワークなどの孔の周壁を上方から押圧するクランプ装置(ピンクランプ)に本発明を適用することに限られず、他のクランプ装置やロボットのツールチェンジャ等に適用してもよい。
上記クランプ装置を駆動させるために供給される圧力流体は、例示した圧油に代えて、他の液体または圧縮空気等の気体であってもよい。
上記の保持バネ13をロック室11に装着するのに代えて、リリースバネをリリース室12に装着する構成としてもよい。
また、上記実施形態で例示した複動式のシリンダに代えて単動式のシリンダであってもよい。
さらには、例示した油圧シリンダに代えて、空圧シリンダや電動アクチュエータであってもよい。
上記キャップ部材3,37は、ハウジング1と一体となるように突設されても、ハウジング1に上下方向へ移動可能に挿入されてもよい。
上記の出力部材9は、ピストン9aおよびピストンロッド9bを有することに代えて、ピストンのみによって構成されるようにしてもよい。この場合、ピストンの上部に形成される挿入孔にクランプロッド17が水平方向および上下方向にまたは、水平方向のみに移動可能となるようにピン連結される。
上記係合部材22は、クランプロッド17の外周壁に2または3つ設けられることに限られず、4つ以上設けられてもよい。
上記の基準部31,50,50Aがキャップ部材3,37の筒孔の内周壁に設けられてもよく、ピストンロッド9bの挿入孔16の内周壁などの他の壁に形成されてもよい。また、基準部31,50,50Aは、キャップ部材3,37の筒孔の内周壁、または,ピストンロッド9bの挿入孔16の内周壁に当該筒孔または挿入孔の軸心に平行となるようにストレートに形成されても、当該筒孔または挿入孔の軸心に対して傾斜するようにテーパ状に形成されてもよい。
上記キャップ部材3,37を上限位置に保持するために、上記第2実施形態のように弾性リングと段差部等を備えることに代えて、上記第2実施形態の第2変形例のようにバネ64を備えてもよく、また、その逆であってもよい。
その他に、当業者が想定できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1:ハウジング,3:キャップ部材,4:クランプ対象物(ワーク),5:孔,8:筒孔,9:出力部材,16;挿入孔,17:クランプロッド,19,19A,19B;長孔,20,20A,20B,20C;連結ピン,22:係合部材,24:案内孔,28:位置決め部,30:逃がし部,31:基準部,36:筒孔,37:キャップ部材,46:ストッパ,47:置決め部,49:逃がし部,50:基準部,56:ストッパ,57:長孔.