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特許7485312引火点決定または燃焼点決定の際の火炎監視
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】引火点決定または燃焼点決定の際の火炎監視
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20240509BHJP
   G01N 25/52 20060101ALI20240509BHJP
   G01J 1/42 20060101ALI20240509BHJP
   G01J 1/44 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G01J1/02 J
G01N25/52
G01J1/42 C
G01J1/44 A
G01J1/42 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022502271
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2020066725
(87)【国際公開番号】W WO2021018465
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】102019120512.3
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519175684
【氏名又は名称】アントン パール プルーブテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストラッサー、フローリアン
(72)【発明者】
【氏名】テュアエヴ、ゼニア
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-063255(JP,U)
【文献】特開昭60-119453(JP,A)
【文献】特開平08-159996(JP,A)
【文献】米国特許第02823824(US,A)
【文献】特開2010-216916(JP,A)
【文献】特開平06-259675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0313774(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0192122(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - G01J 1/60
G01J 11/00
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 25/00 - G01N 25/72
G01N 33/00 - G01N 33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に収容可能な液体試料の引火点決定および/または燃焼点決定および火炎検知する装置において、前記装置は、
前記容器を収容するための容器収容部と、
前記容器の周囲または前記容器の内部の領域内で火炎により生成される光を検出するように配置されている赤外線センサと、
前記赤外線センサと連結されていて、前記赤外線センサの赤外線センサデータを評価して、前記評価に基づき発火および/または爆燃を表示するように構成されている評価システムと
を備える、引火点決定および/または燃焼点決定および火炎検知する装置。
【請求項2】
前記赤外線センサは、熱放射について敏感な領域と、少なくとも一つの光学フィルタとを有し、前記少なくとも一つの光学フィルタは前記熱放射について敏感な領域により、二酸化炭素の少なくとも一つの吸収帯の少なくとも一部分を選択的に検出するように構成および配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記吸収帯は、4.2μm~4.4μmの波長領域内にある、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記赤外線センサ(9)は、一つまたはいくつかの熱電対を有し、前記一つまたはいくつかの熱電対は、熱放射について敏感な領域を規定する、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
二つの電極と、電極に電圧を印加するための電圧源と、水素炎イオン化に依存した前記電極間の抵抗を示す抵抗データを測定するための調整可能な抵抗測定回路を有する水素炎イオン化検出器
をさらに備える、請求項1から4までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記評価システムは、前記水素炎イオン化検出器と連結されていて、前記抵抗データを評価するように構成されていて、前記抵抗の測定された変化と閾値との比較に基づき、発火または爆燃および/またはガス点火炎を推測する、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記評価システムは、
ガス点火器のガス火炎検知および/または
爆燃検知および/または
発火検知
を実施するように構成されていて、
前記発火検知および/または前記爆燃検知について、前記抵抗データと前記赤外線センサデータとが考慮され、
前記ガス火炎検知について、前記抵抗データが考慮される、
請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記抵抗データと前記赤外線センサデータとが、最小期間にわたり、それぞれの閾値を越える増加を示す場合に、発火を検知する、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記抵抗データと前記赤外線センサデータとが、前記最小期間の1/10未満で、それぞれの閾値を越える増加を示す場合に、爆燃を検知する、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
容器開口部を有する、前記液体試料を収容するための容器
をさらに備える、請求項から9までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記赤外線センサは、前記容器開口部の上方に配置されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
器カバー
をさらに備え、
前記二つの電極の第一の電極は、前記容器および/または前記容器カバーにより形成されていて、前記電圧源は、前記第一の電極が接地電位にあるように構成されている、
請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記二つの電極の第二の電極は、少なくとも一つの点火先端部と共に金属部分により形成されていて、前記少なくとも一つの点火先端部は、前記液体試料の点火のために、前記容器内へ移動可能であり、
前記電圧源は、前記第二の電極が、正の電位にあるように構成されている、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
電気点火器および/またはガス点火器を有する点火装置をさらに備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
引火点および/または燃焼点を決定するために、前記容器の内側で液状の状態および/またはガス状の状態の前記液体試料の温度を測定するように構成されている温度測定システムと、
前記液体試料の調温のための調温システムと
をさらに備える、請求項1から14までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
容器内に収容可能な液体試料の引火点決定および/または燃焼点決定の際に、火炎監視する方法において、
前記容器を容器収容部内に収容するステップと、
前記容器の周囲または前記容器の内部の領域内で火炎により生成される光を、赤外線センサを用いて検出するステップと、
前記赤外線センサの赤外線センサデータを評価して、前記評価に基づいて、発火および/または爆燃を表示するステップと
を含む、火炎監視する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に収容可能な液体試料の引火点決定および/または燃焼点決定のためおよび火炎監視のための装置に関する。さらに、本発明は、容器内に収容可能な液体試料の引火点決定および/または燃焼点決定の際に火炎監視する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
引火点試験装置は、従来では、燃料(例えば、ディーゼル、ガソリン、灯油、燃料油)、溶媒、潤滑油または化学薬品の特性決定のために使用される。定義によると、引火点は、開放または密閉された容器またはるつぼ内で、定められた条件下で試験されるべき液体から蒸気(空気と混合されたガス状試料)が、容器内または容器外で外部点火により引火可能な試料ガス-空気の混合物が形成される程度の量で発生する最低温度である。
【0003】
引火点および/または燃焼点を決定するために、好ましくは、多様な標準に従って、試験されるべき試料(物質)の規定量を、容器(例えば測定るつぼ)内に充填し、(特に予定の温度にもたらして)制御しながら加熱し、必要な場合に攪拌する。この場合、連続的にガス状の相が、液体試料の上方に形成される。所定の温度より、形成されたガス-空気の試料混合物を点火するために、周期的な時間間隔および/または温度間隔で、容器内に点火源が導入される。所定の試料温度で、燃焼時間が5秒未満である火炎が検出される場合、引火点が測定される。燃焼時間が5秒よりも長い場合、試料の燃焼点が決定される。
【0004】
引火点決定のために、本質的にi)ペンスキー、ii)ペンスキー-マルテンス、iii)アーベル、iv)アーベル-ペンスキー、v)タグ(Tagliabue)およびvi)クリーブランドによる方法により特徴付けられる多様な標準法が適している。
【0005】
引火点決定および/または燃焼点決定の際に、試料の発火の危険が生じる。試料は、例えば(自発的または点火装置により)点火することができ、火炎形成下で持続的に燃焼することができる。さらに、蒸気相が、点火時に短時間で試料空間の外側でまたはその内側でも火炎が生じる程度に急速に生成される場合、いわゆる「爆燃」、すなわち、短時間の意図しない激しい点火が生じることがある。
【0006】
発火または爆燃の危険の際の安全性を保証するために、先行技術では、発火監視のためのセンサ、例えばUVセンサまたは温度センサが使用される。大きな監視空間をカバーするために、試料容器の内側または試料容器の周囲での発火または爆燃を、高信頼性でかつ確実に検知するため、典型的に、発火検知または爆燃検知のために、いくつかの温度センサを予定しかつ配置しなければならない。しかしながら、火炎監視または発火監視および爆燃監視のための温度センサは、応答挙動、応答時間、劣化および機械的敏感性に関して欠点を有する。
【0007】
独国特許出願公開第10324315号明細書の刊行物は、燃料電池の稼動のためにリフォーマから供給されるガス混合物の品質を監視する方法を開示している。この場合、改質物は、品質の決定のために、リフォーマのバーナに供給され、改質物の点火をバーナチャンバ内で自動的に行う。この場合に形成される火炎に依存して、センサにより測定信号が生成され、この測定信号の大きさが、改質物の品質の決定のために評価される。この場合、好ましくは、改質物の炭化水素による汚染の程度を決定するために、水素炎イオン化検出器のイオン化電流信号が評価される。
【0008】
独国特許出願公開第2723157号明細書の刊行物は、調査されるべき可燃性の液体の引火点を測定する方法を開示していて、この場合、水素炎イオン化検出器(FID)を用いて、調査されるべき可燃性の液体の総炭素濃度値が測定される。
【0009】
独国特許出願公開第19715757号明細書の刊行物は、石炭バーナの運転方法を開示していて、この場合、燃焼させることが決められた石炭からレーザビーム衝撃によりプラズマを生成し、このプラズマが、石炭の成分を測定するためにスペクトル分析にかけられる。
【0010】
米国特許出願公開第2014/0326049号明細書の刊行物は、燃料ガス組成および発熱量をリアルタイム測定する方法を開示していて、この場合、測定装置は、炭化水素と二酸化炭素との濃度を測定するための近赤外線センサを含む。燃焼は、実施されていない。
【0011】
米国特許第5,822,058号明細書の刊行物は、炭化水素-燃料ガスの特性を光学的に測定する方法を開示している。光源は、可視光に近い波長で光を生成し、試料を通過するように透過させる。分光計は、試料を通過する光を分散させ、スペクトル画像が記録され、加工される。
【0012】
独国特許出願公開第10121641号明細書の刊行物は、天然ガスのガス品質を測定する方法および装置を開示していて、この場合、燃焼ガスを赤外線に曝し、二つの波長またはスペクトル領域について赤外線の燃焼ガスにより吸収された成分の各々を検知する。このことから、ガス品質が決定される。
【0013】
米国特許第4,845,040号明細書の刊行物は、例えば、石炭中に存在する多様な硫黄形を分析する方法を開示している。試料を含む混合物を燃焼区域内で燃焼させ、燃焼ガスを、赤外線スペクトルの強度を連続的に監視する赤外線アナライザーを通過するように案内する。多様な赤外線強度パターンから、硫黄の多様な形を推測することができる。
【0014】
カナダ国特許発明第1316800号明細書の刊行物は、上記文献と類似して、多様な硫黄形を分析する方法を開示している。
【0015】
独国特許出願公開第19650302号明細書の刊行物は、ガス混合物のガス品質を決定する方法および装置を開示し、この場合、ガス混合物を、赤外線に曝し、ガス混合物に吸収された、赤外線の成分を測定し、ここから、ガス混合物のメタン価を決定する。
【0016】
従来の引火点試験では、発火検知および爆燃検知は、UV光センサまたは温度センサにより実施される。両方の監視手法は、基本的に火炎の検知に適しているが、例えば次の弱点を有する。
・UV光センサを用いた監視の信頼性は、周囲環境条件に依存する。測定機器の位置決めが不適切に選択され、高UV成分を有する光の入射下で測定が実施される場合、信頼性が損なわれることがある。同様に、所定のUV光フィルタ材料(例えば、窓ガラス)の使用は、信頼できる検出を妨げる。各々の燃焼は、同じ量のUV光を生成しないため、いくつもの試料の検出は問題を引き起こすことがある。
・温度センサの使用は、いくつかの要因により準最適であることがある、すなわち、i)変動する/高い周囲の熱は、障害を引き起こすことがある、ii)応答速度と感度とは、構造により損なわれ、すなわち、材料特異的な熱伝導係数および熱伝導抵抗は、反応時間を制限する、iii)必要な検出面をカバーするために、いくつかのセンサの使用が必要、iv)誤信号が、測定機器の隣接する熱い部分により生じることがある(点火は約1300℃、るつぼカバーまたは試料温度は405℃まで)。ガス点火と発火とを区別するために、いくつかのセンサを、異なる箇所に配置しなければならない。これらのセンサは、発火を確実に検知するために、互いに別々に読み出さなければならず、これは、検出を煩雑にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の課題は、引火点決定および/または燃焼点決定との関連で、火炎監視する装置または方法を創出することであり、発火の検知および/または爆燃の検知は、迅速な応答時間で高い安全性で、確実に可能となる。副次的態様として、本発明の別の課題は、ガス点火器の火炎の存在を確かに確実に監視する方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題は、装置または方法に向けられている独立請求項の主題により解決される。従属請求項は、本発明の特別な実施形態を述べる。
【0019】
本発明の一実施形態によると、容器を収容するための容器収容部と、容器の周囲または内部の領域内の火炎により生成される光を検出するように配置されている赤外線センサと、赤外線センサと連結されていて、赤外線センサの信号を評価して、この評価に基づいて発火および/または爆燃を判別/検知するように構成されている評価システムとを備える、容器内に収容可能な液体試料の引火点決定および/または燃焼点決定のためおよび火炎検知のための装置が提供される。
【0020】
定義によると、引火点は、開放または密閉されたるつぼ内で、定められた条件下で試験されるべき液体から蒸気が、るつぼ内またはるつぼ外で外部点火により点火可能な蒸気-空気の混合物が形成される程度の量で発生する最低温度である。
【0021】
引火点および/または燃焼点の決定のために、試験されるべき物質の規定量を、容器(例えば測定るつぼ)内に充填し、制御しながら加熱し、必要な場合に攪拌し、この際に、試料の液体-蒸気の混合物が連続的に形成される。試料温度変化の所定の間隔で、形成された液体-蒸気の混合物を点火するために、るつぼ内に点火源が導入される。燃焼時間が<5sである火炎が検出される場合、引火点が測定される。燃焼時間が5sよりも長い場合、試料の燃焼点が決定される。
【0022】
この装置は、例えば、以下の(いずれも、少なくとも出願日に有効なバージョンについて)の規格、ASTM D93、DIN EN ISO 2719、GB/T261、IP 34、JIS K 2265、ISO 13736、ISO 1516、ISO 1523、DIN 51755-1(対応する付属品を備えたアーベル-ペンスキー)、ASTM D56、ASTM D3934、ASTM D3941、ASTM D92、DIN EN ISO 2592、IP 36、IP 403の一つまたはいくつかに対応する標準化された引火点決定試験および/または燃焼点決定試験のために適していてよい。実施形態は、さらに、ここに列挙されていない規格に対応することができる。本発明の実施形態は、i)ペンスキーおよび/またはii)ペンスキー-マルテンスおよび/またはiii)アーベルおよび/またはiv)アーベル-ペンスキーおよび/またはv)タグ(Tagliabue)および/またはvi)クリーブランドによる方法の一つまたはいくつかをサポートする。この場合、本発明の実施形態による装置は、以下の(いずれも、少なくとも出願日に有効なバージョンについて)の規格、ASTM D93、EN ISO 2719、GB/T261、IP 34、JIS K2265、ASTM D92、EN ISO 2592、IP 36、IP 403、JIS K2265に対応することができる。
【0023】
引火点決定のために、本質的に、i)ペンスキー、ii)ペンスキー-マルテンス、iii)アーベル、iv)アーベル-ペンスキー、v)タグ(Tagliabue)およびvi)クリーブランドによる方法により特徴付けられている、本発明の実施形態によりサポートされた多様な標準方法が適している。例えば、本発明の実施形態によると、引火点試験についての以下の規格、ASTM D93、DIN EN ISO 2719、GB/T261、IP 34、JIS K 2265、ISO 13736、ISO 1516、ISO 1523、DIN 51755-1(対応する付属品を備えたアーベル-ペンスキー)、ASTM D56、ASTM D3934(フラッシュあり/フラッシュなし)、ASTM D3941(平衡法)、ASTM D92、EN ISO 2592、IP 36、IP 403をサポートする。
【0024】
試料の発火の危険は、引火点測定の間に常に存在している。原因として、例えば誤った条件または未知の試料組成が考えられる。オペレータの安全性を保証するために、引火点測定機器は、発火監視のために、少なくとも一つの赤外線センサ(および、特にFIDセンサも、下記参照)が取り付けられる。それと共に、いわゆる爆燃も、適切な時期に検知することができる。爆燃とは、引火点測定機器内での試料加熱の間に、点火試験の際に、試料空間(つまり容器)の外側(および/または部分的に内側)でまたは試料空間の周囲で、計画外の短時間の引火がりが起こるほど、蒸気相が迅速に形成される場合の現象を言う。試料のこのような突燃は、検出されなければならない、というのも、これに引き続く引火点検知の正確性はもはや保証することができないためである。その結果、測定を中断し、新たな試料を用いて改めて開始しなければならない。
【0025】
容器は、例えば円筒形を有していてよい。引火点決定および/または燃焼点決定の間に、容器は、部分的に、例えば三分の一から半分まで液体試料で充填されていてよい。試料は、例えば、燃料、溶媒、潤滑油または他の化学薬品であってよい。試料は、混合物または純物質であってよい。容器ひいてはその容器内に収容された試料を、引火点決定および/または燃焼点決定の間に、所望の規定温度に調温するため、特に加熱するために、容器収容部は、調温装置を有していてよい。容器収容部は、例えば、金属により仕上げられていて、電気加熱、特に加熱ワイヤを有する加熱ブロックとして実現されていてよい。
【0026】
赤外線センサは、容器収容部に対して固定または可変の空間的関係で設置されていてよい。赤外線センサは、所望の監視領域から放射される赤外線が赤外線センサにより検出可能であるように位置決めされていてよい。監視領域は、容器の内側および/または容器の周囲の領域を含んでいてよい。
【0027】
火炎とは、短時間の火炎(例えば、爆燃の場合)または連続的な火炎(例えば発火の場合)であってよい。赤外線センサは、本発明の一実施形態によると、熱放射を検出することも、例えば、所定のスペクトル領域内の熱放射を検出することにより二酸化炭素の存在も検出することもできるように構成されていてよい。熱放射の存在自体を検出可能であり、二酸化炭素が存在するか、またどのくらい存在するかを検出可能である場合、監視空間内に火炎(例えば、爆燃または発火)が存在するかどうかを赤外線センサにより確実に検出することができる。赤外線センサは、例えば火炎が存在している期間を決定するために、時間的に連続する間隔で連続的に(例えば、示差測定のために)赤外線センサデータを取得することができる。
【0028】
本発明による実施形態によると、赤外線センサは、位置分解型であってよい。したがって、例えば、赤外線センサは、監視領域から放射される全赤外線を記録することができる。それにより、赤外線センサの感度を、好ましくは高めることができる。赤外線センサは、特に開放または密閉された容器の場合、引火点決定および/または燃焼点決定の準備および/または実施および/または後調整の間に、火炎監視を連続的に実施することができる。
【0029】
試料の調温または試料の加熱の際に、容器は、典型的には、容器カバーにより閉鎖されていてよい。試料が、例えば誤って加熱されすぎた場合、試料は、閉鎖された容器の場合、自然発火または外部点火により引火することがあり、これは、「爆燃」(噴射炎に似ている)を引き起こすことがある。このような爆燃は、容器の周囲または容器収容部の周囲の装置の部分に不用意にこぼされた試料の部分によって生じることもある。したがって、爆燃は、例えば閉鎖された容器の場合、および開放された容器の場合でも、容器の内部および/または外部で生じることがあり、これは、赤外線センサにより監視することができる。
【0030】
試料が所望の温度に達する場合、試料の点火試験を実施するために、開放された容器の場合、容器の内部空間内に点火装置を挿入するため、容器カバーを開放するかまたは容器から取り除くことができる。この場合でも、爆燃またはそれどころか発火が生じることがあり、この場合、時間的に長く続く火炎から発火が連想される。開放された容器の場合、発火および/または爆燃も、赤外線センサにより監視および検出することができる。赤外線センサデータが、一つまたはいくつかの期間について、一つまたはいくつかの閾値を越える場合、赤外線センサデータに基づいて、例えば評価システムを用いて、発火または爆燃が表示されてよい。
【0031】
測定空間付近の空間を不必要に占有しないため、また例えば試料ガスもしくは火炎による赤外線センサの損傷を低減またはそれどころか回避するために、好ましくは、赤外線センサは、監視領域から空間的に離れて配置されていてよい。さらに、赤外線センサは、従来から使用されている温度センサよりも迅速な応答時間を有してよい。
【0032】
本発明の一実施形態によると、赤外線センサは、熱放射に敏感な領域と、少なくとも一つの光学フィルタを有してよく、この光学フィルタは、熱放射に敏感な領域から、二酸化炭素の少なくとも一つの吸収帯の少なくとも一部を検出するように構成され、配置されている。
【0033】
光学フィルタは、例えば、二酸化炭素の少なくとも一つ(またはいくつか)の吸収帯の外側にある波長を、二酸化炭素の(一つまたはいくつかの)吸収帯の内側にある波長に対して、本質的に(例えば80%より多く、または90%より多く)弱めることができる。(定義によると)炭素を含む有機燃料の各々の燃焼の際に、部分的に二酸化炭素が生じる。したがって、赤外線センサにより検出された赤外線センサデータが、二酸化炭素の(相対的な)差分の濃度も示す場合、赤外線センサにより検出されたデータは、実際に、燃焼に基づいて推論することができる。したがって、赤外線センサは、監視領域の熱い領域を、程度に差はあるが二酸化炭素が存在するかどうかを区別することができる。
【0034】
容器ならびに場合により容器収容部の部分を、監視領域内に置くこともできる。容器収容部のこの部分または容器自体は、引火点決定または燃焼点決定の通常の実施の際に加熱されるが、加熱の際に二酸化炭素は生じない。容器収容部または容器の加熱は、光学フィルタに基づき、燃焼に基づき生じる熱放射と区別することができる。したがって、火炎監視の特異性または火炎監視の信頼性を高めることができ、特に誤った火炎表示または発火表示または爆燃表示の回数を減らすことができる。
【0035】
本発明の一実施形態によると、吸収帯は、4.2μm~4.4μmの波長領域内にある。別の実施形態では、例えば13~15μmの領域内に二酸化炭素のさらに別の吸収帯が形成されてよい。4.2μm~4.4μmの間の波長領域内で、二酸化炭素は、顕著な吸収帯を有し、この領域内では、他の空気成分またはガス成分は、有意な吸収帯を有していない。したがって、二酸化炭素の存在の検出のための赤外線センサの特異性を改善することができ、それにより、火炎監視の信頼性を高めることができる。
【0036】
本発明の一実施形態によると、赤外線センサは、一つまたはいくつかの熱電対を有し、この熱電対は、熱放射に敏感な領域を規定し、特に熱電対列として構成されている。熱電対列またはサーモパイル(英語でthermopile)は、熱エネルギー(特に熱放射)を電気エネルギーに変換する電気素子として形成されていてよい。熱電対列は、いくつかの熱電対からなっていてよく、これらの熱電対は、熱的に並列接続され、電気的に直列接続されていて、それにより極めて僅かな熱電圧が加算される。熱放射は、直列接続された熱電対に当たることができ、それにより、サーモパイルの一端とサーモパイルの他端との間の電圧は変化することができる。したがって、本発明の実施形態は、従来の入手可能なセンサにより実施することができる。
【0037】
赤外線センサの調整は必要ない。差分測定に基づいて、発火または爆燃を推測することができる。この場合、赤外線センサデータの変化が考慮されてよい。例えば、赤外線センサデータが、規定閾値よりも高い絶対値だけ突然変化する場合、引火を推測することができる。赤外線センサ信号の時間経過は、爆燃または発火が存在するかどうかの情報をさらに与えることができる。
【0038】
本発明の一実施形態によると、装置はさらに、二つの電極と、電極に電圧を印加するための電圧源と、抵抗データの測定のために、引火により生じる空気のイオン化に依存して電極間の抵抗を表示する調整可能な抵抗測定回路、特にホイートストン測定ブリッジとを有する水素炎イオン化検出器を備える。
【0039】
火炎形成の際に、熱エネルギーに基づき空気分子をイオン化することができ、それにより電子および/またはイオンが遊離される。電子および/またはイオンの量または数は、火炎の強さを表示する。生じる電子および/またはイオンの量および/または濃度に依存して、二つの電極の間の空気環境(空気および試料の蒸気相)の電気抵抗が変化する。抵抗測定回路によって抵抗が測定される場合、電極間の電子および/またはイオンの存在または濃度、ひいては水素炎イオン化を推測することができる。
【0040】
これらの二つの電極は、水素炎イオン化検出により監視されるべき領域が間に置かれるように配置することができる。水素炎イオン化検出により監視されるべき領域は、赤外線センサにより監視されるべき領域とは異なってよく、特により小さくてよい。これらの二つの電極は、容器収容部の上方または容器の上方の少なくとも一つの領域を、水素炎イオン化検出によって監視することができるように配置することができる。この監視領域は、例えば、容器の内部または容器の上側の縁部から、例えば容器(または容器収容部)の上側の縁部の上方の5mm~10mmの間までの空間領域内にあってよい。
【0041】
二つの電極の形状に関して特段の制限は必要なく、電極により監視されるべき領域が電極の間にあるように配置する必要があるだけである。好ましくは、電極の一方は接地されていてよく、他方は、例えば1ボルト~10ボルトの間の低い電圧が印加されてよい。電極の一方または両方は、装置のハウジングの部分によりおよび/または容器もしくは容器カバーの部分により形成されていてよい。
【0042】
本発明の一実施形態によると、評価システムは、水素炎イオン化検出器と連結され、抵抗データを評価するよう構成されていて、この場合、抵抗の測定された変化を閾値と比較することに基づいて、発火または爆燃および/またはガス引火炎が推測される。
【0043】
ホイートストン測定ブリッジは、水素炎イオン化検出器(特に両方の電極)を含むことができる。抵抗ブリッジ(ホイートストン測定ブリッジ)は、二つの並列接続された分圧器からなる回路である。分圧器のタップ間の電圧は、電圧測定機器によって測定される。分圧器-抵抗の比率が同じ大きさである場合、分圧器間の両方のタップは、同じ電位を有する。分圧器の抵抗は、一方で調整を実施して、調整後の測定も実施するために、可変抵抗として構成されていてよい。両方の電極は、分圧器の抵抗として接続されていてよい(または、別の抵抗に並列接続されていてよい)。
【0044】
調整(監視領域内にいかなる火炎もない場合)は、各々の意図した引火点決定および/または燃焼点決定の前に実施されてよい。電極間に火炎が形成されている場合、両方の電極間の抵抗は低下する。抵抗ブリッジの可変抵抗は、両方の分圧器のタップ間に0Vの電圧を再度設定するかまたはゼロに校正された点の偏位を評価する(偏位法)ために、後調節されてよい。可変抵抗の変化は、電極間のガスのイオン化の程度または電極間の抵抗を示し、火炎形成を推測させる。それにより、火炎監視に対して付加的な独立したセンサが提供されている。赤外線センサデータおよび/または抵抗データは、それぞれ別個にまたは組み合わせて、火炎監視のために考慮されてよい。赤外線センサデータと抵抗データとの計算ロジックは、適用ケースに応じて変えることができる。
【0045】
本発明の一実施形態によると、評価システムは、ガス点火器のガス火炎検知および/または爆燃検知および/または発火検知を実施するように構成されていて、この場合、発火検知および/または爆燃検知について、抵抗データも赤外線センサデータも考慮され、ガス火炎検知について、主に抵抗データが考慮される。
【0046】
ガス点火器のガス火炎検知は、引火点決定および/または燃焼点決定の間の通常の操作の間に実施されてよい。この場合、ガス点火器の点火先端部は、電極の近くに、特に、部分的に電極の間に置かれてよい。爆燃は、(部分的に)容器の内側および/または容器の外側で短時間の激しい引火を含むことができる。発火は、容器の内側でまたは容器の外側でも長く維持される火炎を含むことができる。発火検知および/または爆燃検知を可能にするために、抵抗データも、赤外線センサデータも考慮される場合、信頼性を高めることができ、特に、誤った発火検知または爆燃検知の回数を減らすことができる。
【0047】
本発明の一実施形態によると、抵抗データも、赤外線センサデータも、最小期間にわたり各々の閾値を越える増加を示す場合、発火が検知される。この場合、各々の差分測定を考慮することができる。
【0048】
本発明の一実施形態によると、抵抗データも、赤外線センサデータも、発火についての最小期間の1/5または1/10未満で、各々の閾値を越える増加を示す場合、爆燃が検知される。評価ロジックは、適用に応じて変えることができ、またパラメータ(閾値、最小期間等)に関しても合わせることができる。
【0049】
本発明の一実施形態によると、装置はさらに、液体試料を収容するための、容器開口部を含む容器を有する。容器は、金属から仕上げられていてよく、円筒形であってよい。容器は、容器収容部から取り外し可能である。容器開口部は、円形であってよい。したがって、従来の基準に則した引火点決定および/または燃焼点決定がサポートされる。
【0050】
本発明の一実施形態によると、赤外線センサは、容器開口部の上方に配置されていて、特に、容器の上側の縁部から5cm~30cmの範囲内で離れている。したがって、赤外線センサは、この距離に基づいて測定の間の損傷から保護されていてよく、さらに、別の測定装備または取扱のために必要とされる不必要な空間を占有する必要がない。
【0051】
本発明の一実施形態では、装置はさらに、容器カバーを有し、第一の電極は、容器および/または容器カバーによって形成されていて、電圧源は、第一の電極が接地電位にあるように構成されている。したがって、容器または容器カバーは、水素炎イオン化検出の場合でも協働するようにそれぞれ二重の機能を担うことができる。第一の電極が接地電位にある場合、ユーザにとって危険を排除することができる。
【0052】
本発明の一実施形態によると、第二の電極は、金属部分により、特に少なくとも一つの点火先端部を有する点火装置の周囲に形成されていて、この添加先端部は、試料の点火のために、容器内へ、特に直線的に、移動可能であり、電圧源は、第二の電極が、特に1V~10Vの間の正の電位にあるように構成されている。したがって、好ましくは、第二の電極は、付加的なまたは別個の導電性構成要素を設ける必要がない。それにより、装置を簡素化することができる。点火装置の部分は、例えばハウジングまたはジャケットの一部分であってよい。点火装置は、容器内の(蒸気状の)試料を点火するために、容器内へ移動するように設けられている。試料を次の温度値に加熱する際に、点火先端部は、容器の外側に移動し、容器カバーが、容器開口部上に載置されていてよい。
【0053】
本発明の一実施形態によると、点火装置は電気点火器および/または特に取り外し可能なガス点火器を有する。規格または標準化試験に応じて、電気点火および/またはガス点火が必要となることがある。それにより、多様な規格または標準化試験がサポートされる。ガス点火器が取り外し可能である場合、実施されるべき標準化試験にとってガス点火が必要とされない限り、ガス点火器が取り外されていてよい。それにより、装置の取扱性を向上することができる。
【0054】
本発明の一実施形態によると、装置はさらに、引火点および/または燃焼点を決定するために、容器内で液状の状態および/またはガス状の状態の試料の温度を測定するように構成されている温度測定システムを有し、さらに、試料の調温のための調温システムを有する。
【0055】
調温システムは、特に、例えば容器収容部内に設けられている電気ヒータを含み、容器収容部は、例えば調温ブロックまたは加熱ブロックとして実現されていてよい。したがって、装置は、引火点決定および/または燃焼点決定のためのユーザ定義の試験も、標準化試験も実施するように構成されている。
【0056】
引火点決定および/または燃焼点決定のためおよび火炎監視のための装置との関連で個別にまたは任意に組み合わせて記載、開示または適用された特徴は、同様に、本発明の実施形態によると、個別にまたは任意に組み合わせて、引火点決定および/または燃焼点決定の際に火炎監視する方法に適用可能であり、またその逆も同様であることは理解されたい。
【0057】
本発明の一実施形態によると、容器を容器収容部内に収容するステップと、容器の周囲または容器の内部の領域内で火炎により生成される光を、赤外線センサを用いて検出するステップと、赤外線センサの赤外線センサデータを評価して、その評価に基づき発火および/または爆燃を表示するステップとを含む、容器内に収容可能な液体試料の引火点決定および/または燃焼点決定の際に、火炎監視する方法が提供される。
【0058】
次に、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して説明する。これらの実施態様は、例示的であり、本発明の有効範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明の一実施形態による引火点決定および/または燃焼点決定のためおよび火炎監視のための装置の概略図を示す。
図2】本発明の一実施形態による引火点決定および/または燃焼点決定のためおよび火炎監視のための装置の評価システムを概略的に示す。
図3】本発明の実施形態を考慮した、二酸化炭素の透過スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1に側面断面図で概略的に示された、本発明の一実施形態による、容器内に収容可能な液体試料の引火点決定および/または燃焼点決定のためおよび火炎監視のための装置1は、容器5の収容のための容器収容部3を備える。容器5内には液体7が収容されている。装置1を用いて、試料7から、引火点および/または燃焼点を測定することができる。装置1はさらに、容器5の周囲またはその内部の監視領域内に火炎により生成される光11を検出するように配置されている赤外線センサ9を備える。装置1はさらに、赤外線センサ9と信号ライン15を介して連結されていて、赤外線センサデータ17を取得しかつ評価し、その評価に基づき発火または爆燃を知らせ、そのために特に表示画面19が設けられているように構成されている評価システム13を備える。赤外線センサ9は、熱放射に対して敏感な領域に関して選択的に、二酸化炭素の吸収帯の少なくとも一部をフィルタリングするように構成されている、内部に組み込まれた、図示されていない光学フィルタと、保護窓10とを有する。
【0061】
装置1は、水素炎イオン化に依存する電極間の抵抗を示す抵抗データ23を測定するために、二つの電極と、図示されていない電圧源と、図示されていない調整可能な抵抗測定回路とを有する水素炎イオン化検出器21をさらに備える。抵抗データは、データライン25を介して評価システム13に供給され、評価システムは、抵抗データ23を評価するように構成されていて、この場合、抵抗の測定された変化と閾値との比較に基づき、発火または爆燃および/またはガス引火炎が推論される。
【0062】
装置1の部分27は、水素炎イオン化検出器21の第二の電極として実現されている。装置のこの部分27はまた、少なくとも一つの点火先端部31,33を有する点火装置29のハウジングまたはジャケットまたはホルダを形成し、この点火先端部は、試料の点火のために、方向35に沿って容器5内へ直線的に移動可能である。部分27は、金属から形成されていて、下方の容器5に向かう端部で、ほぼ点火先端部31および33にまで達する。この場合、点火先端部31は、ガス点火器37に属し、点火先端部33は、電気点火器39に属する。ガス点火器37は、電気点火器39のジャケットに取り付けられていて、取り外し可能である。点火装置21は、両矢印35により示されている方向に沿って、上下に移動可能である。水素炎イオン化検出器21の第二の電極は、1V~10Vの間の電位であってよい。
【0063】
水素炎イオン化検出器21の第一の電極は、カバー41によりおよび/または容器5によりおよび/または容器収容部3によりおよび/または基体2の上面により形成されている。カバーおよび/または容器5および/または容器収容部3および/または基体2の上面は、アース電位、つまり接地電位であってよい。水素炎イオン化検出器21は、第一の電極41または5と第二の電極27との間の抵抗を測定するために、調整可能な抵抗測定回路をさらに有する。両方の電極の間の抵抗は、火炎形成に基づいて電極間で生成される分子のイオン化に依存して変化する。
【0064】
装置1は、基体2を備え、基体内に容器収容部3が配置されている。容器収容部3は、調温システムを用いて温度調節可能である。特に、容器収容部3は、調温ブロックとして構成されていてよい。接続要素4(例えば、ロッドまたは管)を介して、機器ヘッド6は、基体2と接続されている。この場合、機器ヘッドは、方向8に沿って、基体2に対して相対的に上下に移動可能であってよい。火炎監視の間に、赤外線センサ9は、容器5の上方の縁部から5cm~30cmの範囲内で離れていてよい。赤外線センサは、所望の監視領域をカバーするように選択されている所定の角度侵入範囲43から光11を受け取る。
【0065】
装置1は、引火点および/または燃焼点を決定するために、ガス状の状態の試料の引火点を(特に温度測定センサ47を用いて)測定し、容器5の内部の液状の状態の試料の温度を(図示されていない別の温度測定センサを用いて)測定するように構成されている温度センサシステム45をさらに備える。
【0066】
容器5は、容器5を容器収容部3から取り出すために、グリップ49を介してユーザによって取扱可能である。温度測定センサ47は、容器カバー41内の開口を通して容器5内に達している。点火先端部31または33の一方が、方向35に沿って容器5の内部へ移動する前に、容器カバー41は、その容器カバー上に存在するカバースライド(図示されていない)によって開放可能である。装置5は、(図示されていない)電気モータを用いて、回転運動を行う攪拌機53を有する攪拌装置51をさらに備える。
【0067】
装置1は、本発明の一実施形態によると、引火点決定および/または燃焼点決定の際に、火炎監視する方法を実施するように構成されている。
【0068】
本発明の実施形態は、火炎監視のために、異なる発火監視原理、つまりa)水素炎イオン化検出とb)CO-IR帯の光学測定とに基づく二つのセンサを使用する。
・水素炎イオン化検出器(FID)21は、空気の抵抗を測定する原理に基づく。物質の燃焼が始まり、火炎が生じる場合、二つのコンデンサプレート(ここでは、一方は電極27と、他方は41または5または3または基体2に上面)の間の観察空間は、熱的にイオン化された蒸気で満たされる。この場合、遊離する電子および/またはイオンは、コンデンサプレートにより捕捉され、信号(例えば23)として記録される。FIDの応答挙動は、爆燃の監視にとって、数ミリ秒の最適範囲内にある。
・使用される第二のセンサ9は、物質特異的な赤外線(IR)透過または吸収帯の原理に基づく。燃焼時に生じる有機試料断片および反応生成物、例えば水(HO)および二酸化炭素(CO)は、IRスペクトル領域内で特徴的な透過帯または吸収帯を有する。約4.3μmの波長領域(波数約2350cm-1)内に、狭く、強く表れる、COに特徴的なピークがあり、このピークは、実施形態によると、火炎監視のために評価される(図3参照)。
【0069】
ガスホース38を介して、ガス点火器37に可燃性ガスが供給される。装置1は、ユーザ定義のまたは標準化された試験に従って、容器5内に導入された試料7の引火点決定および/または燃焼点決定を実施するために、測定進行制御装置をさらに備えてよい。
【0070】
図2は、図1に示された評価システム13を概略図でさらに詳細に示す。評価システム13は、水素炎イオン化検出器21も、ここでは、「サーモパイル」として実現される赤外線検出器もしくは赤外線センサ9も含むセンサシステム57と連結されている。測定ブリッジ回路59を介して、水素炎イオン化検出器21の生データ61は、抵抗データ23に変換される。水素炎イオン化検出器21の生信号61は、この場合、調整された測定ブリッジ59に供給され、両方の電極27,41または5または3または基体2の上面との間の抵抗の推移における差を測定する。測定ブリッジ調整器67は、各測定の前に測定ブリッジ59を改めて調整することを可能にする。このため、測定ブリッジ調整器67は、信号ライン69を介して前処理ユニット65により制御される。赤外線センサ(例えば、サーモパイル)9の信号は、既に図示されていない電子機器により事前に増幅され、信号17としてアナログ値として直接、変換器63に引き渡される。アナログ-デジタル変換器63を介して、アナログの抵抗データ23は、デジタルの抵抗データ24に変換され、評価システム13の前処理ユニット65に供給される。
【0071】
赤外線センサデータ17は、同様に、アナログ-デジタル変換器63を介して、相応するデジタル抵抗データ18に変換され、前処理ユニット65に供給される。
【0072】
評価ユニット13は、ガス火炎検知モジュール71と、爆燃検知モジュール73と、発火検知モジュール75とを有する。発火検知モジュール75および/または爆燃検知モジュール73から、デジタルの抵抗データ24も、デジタルの赤外線センサデータ18も考慮される。ガス火炎検知71のために、抵抗データ24(だけ)が考慮される。特に、本発明の実施形態による水素炎イオン化検出器21は、(1)爆燃検知および発火検知と、(2)るつぼカバー開口領域内のガス火炎監視の課題を有する。
【0073】
1.爆燃検知および発火検知について、爆燃は、るつぼの外部の引火を含むことができる。この爆燃は、期待される引火点が誤って設定された場合に生じることがある。このため、FIDは特に良好に適している、というのも、このFIDは、数ミリ秒の迅速な反応時間に基づいて、このような引火の極めて正確な信号を検知することができるためである。より長く続く火炎の場合、発火が知らされる。
2.ガス火炎監視について、FIDは、電気点火およびガス点火に対する保護プレートとして同時に機能するように構築されていてよい。したがって、FIDは、電気点火またはガス点火(31,33)に極めて近い。ガス火炎が通気により吹き消される場合、ガス火炎を再び点火しなければならない。ガス火炎が存在するかどうかは、空気の一定の高いイオン化により、FID21によって確認される。
【0074】
ガス火炎検知71と、爆燃検知73と、発火検知75との個々の結果72、74、76は、測定状態機械77に供給される。発火検知の場合、例えば、通常の測定プロセスを中断した後に、消火方法を開始することができる。爆燃検知の場合、これをユーザに表示することができ、(例えば、予想される引火点または燃焼点に関して)構成データ入力を点検することをユーザに促すことができる。存在しないガス火炎の検知をユーザに表示することができ、その後、ガス火炎を、例えば電気点火先端部33を用いて再び点火することができる。
【0075】
サーモパイル検出器9は、測定場所に関する大面積の発火監視を実施することができ、爆燃が存在するかどうかまたは試料が水を含むかどうかを決定する際にFIDを支援することができる。発火が存在するかどうかを決定する際に、いわゆる投票者原理(投票原理)を適用することができる。両方のセンサ9,21が、発火が存在するとするとの警告(または表示)を示す場合、直ちに(図示されていない)消火メカニズムをアクティブにすることができる。一方のセンサ(FIDまたはサーモパイル)だけが発火を検知する場合、所定の時間、例えば三秒後に初めて消火がアクティブにされる。
【0076】
図3は、赤外線領域における二酸化炭素の透過スペクトル79を示し、横座標81は、マイクロメートルで表す波長を示し、縦座標83は、パーセントで表す透過放射線の強度を示す。波長領域85において、透過スペクトル79は、低下された透過の透過帯80(これは、高められた吸収の吸収帯に相当する)を示し、この透過帯は、本発明の実施形態によると、相応するバンドパスフィルタを用いて選択的に赤外線センサに通され、この場合、他の波長の放射線は、その強度が著しく低減される。
【0077】
図1に示される装置1は、赤外線センサ9も、水素炎イオン化検出器21も備えているが、別の実施形態では、この装置は、水素炎イオン化検出器を備える必要なく、赤外線検出器だけを備える。装置1の必須の特徴は、独立形式の装置の請求項に特定されている。図1およびそれに所属する説明における他の全ての詳細または特徴は任意であり、本発明の別の実施形態を形成するために、任意の様式で組み合わせることができる。
図1
図2
図3