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特許7485318データ処理装置、データ処理方法及びプログラム
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  • 特許-データ処理装置、データ処理方法及びプログラム 図1
  • 特許-データ処理装置、データ処理方法及びプログラム 図2
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  • 特許-データ処理装置、データ処理方法及びプログラム 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/04 20120101AFI20240509BHJP
   G06Q 40/12 20230101ALI20240509BHJP
【FI】
G06Q30/04
G06Q40/12 410
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024014518
(22)【出願日】2024-02-02
【審査請求日】2024-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516380407
【氏名又は名称】ファーストアカウンティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛 鴻鵬
(72)【発明者】
【氏名】松田 顕
(72)【発明者】
【氏名】小俣 智
(72)【発明者】
【氏名】森 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】早川 将和
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-038949(JP,A)
【文献】特開2023-129008(JP,A)
【文献】特開2021-071991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引証憑書類が起票された取引について、当該取引の取引先から適正な適格請求書が発行されているかどうかを判定する判定部と、
前記適格請求書が発行されていないと前記判定部が判定した場合に、前記取引の内容及び費用を示す取引内容テキストを参照することにより、前記取引の内容と前記費用に基づく金額とが記載された仕入明細書を作成する作成部と、
前記仕入明細書を前記取引先に発行するべく出力する出力部と、
を有するデータ処理装置。
【請求項2】
前記作成部は、前記取引先に対応する適格請求書発行事業者の登録番号を示すデータを参照することにより、前記登録番号が記載された前記仕入明細書を作成する、
請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記取引に対する仕訳処理が開始されたことに応じて、前記適格請求書が発行されているかどうかを判定する、
請求項1又は2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記取引証憑書類に記載された取引日又は費用支払日に、前記適格請求書が発行されているかどうかを判定する、
請求項1又は2に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記作成部は、前記取引内容テキストと、前記仕入明細書を作成する指示を含む指示テキストと、を大規模言語モデルに入力して当該大規模言語モデルから提供される暫定仕入明細書に基づいて前記仕入明細書を作成する、
請求項1又は2に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記作成部は、前記大規模言語モデルから提供された前記暫定仕入明細書に取引年月日が含まれていない場合、又は前記暫定仕入明細書に記載されている取引年月日に誤りがある場合に、前記適格請求書が発行されているかどうかを前記判定部が判定した日を取引年月日として前記暫定仕入明細書に記載することにより前記仕入明細書を作成する、
請求項5に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記作成部は、前記取引内容テキストと、取引年月日を特定するための指示を含む指示テキストと、を大規模言語モデルに入力して当該大規模言語モデルから提供される取引年月日を示すテキストを取得することにより、前記取引年月日を特定する、
請求項6に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記取引内容テキストには適格請求書発行事業者の登録番号が記載されており、
前記作成部は、前記取引内容テキストに記載された前記登録番号を含む前記暫定仕入明細書を前記大規模言語モデルから取得する、
請求項5に記載のデータ処理装置。
【請求項9】
コンピュータに、
取引証憑書類が起票された取引について、当該取引の取引先から適正な適格請求書が発行されているかどうかを判定するステップと、
前記適格請求書が発行されていないと判定した場合に、前記取引の内容及び費用を示す取引内容テキストを参照することにより、前記取引の内容と前記費用に基づく金額とが記載された仕入明細書を作成するステップと、
前記仕入明細書を前記取引先に発行するべく出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
コンピュータが実行する、
取引証憑書類が起票された取引について、当該取引の取引先から適正な適格請求書が発行されているかどうかを判定するステップと、
前記適格請求書が発行されていないと判定した場合に、前記取引の内容及び費用を示す取引内容テキストを参照することにより、前記取引の内容と前記費用に基づく金額とが記載された仕入明細書を作成するステップと、
前記仕入明細書を前記取引先に発行するべく出力するステップと、
を有するデータ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置、データ処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本ではインボイス制度が導入され、適格請求書を受領及び保存した場合に消費税の仕入税額控除を受けることができる。特許文献1には、受領した適格請求書が適切に作成されているか否かを確認するためのシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6794564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
取引先から適格請求書が発行されなかったり、適格請求書に必要な情報(例えば適格請求書発行事業者登録番号)が記載されていなかったりする場合、費用を支払う事業者が仕入税額控除を受けられないという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、適正な適格請求書を受け取っていない場合であっても、費用を支払う事業者が仕入税額控除を受けられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のデータ処理装置は、取引証憑書類が起票された取引について、当該取引の取引先から適正な適格請求書が発行されているかどうかを判定する判定部と、前記適格請求書が発行されていないと前記判定部が判定した場合に、前記取引の内容及び費用を示す取引内容テキストを参照することにより、前記取引の内容と前記費用に基づく金額とが記載された仕入明細書を作成する作成部と、前記仕入明細書を前記取引先に発行するべく出力する出力部と、を有する。
【0007】
前記作成部は、前記取引先に対応する適格請求書発行事業者の登録番号を示すデータを参照することにより、前記登録番号が記載された前記仕入明細書を作成してもよい。
【0008】
前記判定部は、前記取引に対する仕訳処理が開始されたことに応じて、前記適格請求書が発行されているかどうかを判定してもよい。
【0009】
前記判定部は、前記取引証憑書類に記載された取引日又は費用支払日に、前記適格請求書が発行されているかどうかを判定してもよい。
【0010】
前記作成部は、前記取引内容テキストと、前記仕入明細書を作成する指示を含む指示テキストと、を大規模言語モデルに入力して当該大規模言語モデルから提供される暫定仕入明細書に基づいて前記仕入明細書を作成してもよい。
【0011】
前記作成部は、前記大規模言語モデルから提供された前記暫定仕入明細書に取引年月日が含まれていない場合、又は前記暫定仕入明細書に記載されている取引年月日に誤りがある場合に、前記適格請求書が発行されているかどうかを前記判定部が判定した日を取引年月日として前記暫定仕入明細書に記載することにより前記仕入明細書を作成してもよい。
【0012】
前記作成部は、前記取引内容テキストと、取引年月日を特定するための指示を含む指示テキストと、を大規模言語モデルに入力して当該大規模言語モデルから提供される取引年月日を示すテキストを取得することにより、前記取引年月日を特定してもよい。
【0013】
前記取引内容テキストには適格請求書発行事業者の登録番号が記載されており、前記作成部は、前記取引内容テキストに記載された前記登録番号を含む前記暫定仕入明細書を前記大規模言語モデルから取得してもよい。
【0014】
本発明の第2の態様のプログラムは、コンピュータに、取引証憑書類が起票された取引について、当該取引の取引先から適正な適格請求書が発行されているかどうかを判定するステップと、前記適格請求書が発行されていないと判定した場合に、前記取引の内容及び費用を示す取引内容テキストを参照することにより、前記取引の内容と前記費用に基づく金額とが記載された仕入明細書を作成するステップと、前記仕入明細書を前記取引先に発行するべく出力するステップと、を実行させてもよい。
【0015】
本発明の第3の態様のデータ処理方法は、コンピュータが実行する、取引証憑書類が起票された取引について、当該取引の取引先から適正な適格請求書が発行されているかどうかを判定するステップと、前記適格請求書が発行されていないと判定した場合に、前記取引の内容及び費用を示す取引内容テキストを参照することにより、前記取引の内容と前記費用に基づく金額とが記載された仕入明細書を作成するステップと、前記仕入明細書を前記取引先に発行するべく出力するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、適正な適格請求書を受け取っていない場合であっても、費用を支払う事業者が仕入税額控除を受けられるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】データ処理システムSの概要を説明するための図である。
図2】取引先が発行する請求書の一例を示す図である。
図3】データ処理装置1の構成を示す図である。
図4】取引証憑書類の一例である業務委託契約書の例を示す図である。
図5】作成部132が作成する仕入明細書の一例を示す図である。
図6】データ処理装置1における仕入明細書の作成処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[データ処理システムSの概要]
図1は、データ処理システムSの概要を説明するための図である。データ処理システムSは、経理処理をする必要がある事業者(例えば法人又は個人事業主)が使用するシステムであり、請求書データを管理したり、仕入明細書を発行したりする機能を有する。
【0019】
データ処理システムSは、データ処理装置1と、1以上の情報端末2と、を備える。データ処理装置1は、例えば事業者の経理部門が使用するコンピュータである。データ処理装置1は、経理部門に設けられていてもよく、クラウドサーバであってもよい。データ処理装置1は、一つの事業者に専用のコンピュータであってもよく、複数の事業者が共用するコンピュータであってもよい。データ処理装置1は、仕訳入力(伝票の起票)、帳簿作成、入金管理及び支払管理等の少なくとも一部の会計処理機能を有する。
【0020】
情報端末2は、データ処理装置1を利用する事業者の職員又は取引先が使用するコンピュータであり、ネットワークNを介して請求書データをデータ処理装置1に送信する。情報端末2が事業者の職員が使用するコンピュータである場合、ネットワークNは例えばイントラネットであり、情報端末2が取引先で使用されるコンピュータである場合、ネットワークNは例えばインターネットである。ネットワークNには、請求書データを送受信するための電子インボイスネットワークであるPeppol(Pan European Public Procurement Online)が含まれていてもよい。
【0021】
図2は、取引先が発行する請求書の一例を示す図である。図2に示す請求書においては、請求書を発行した取引先の名称(図2においてはBBB株式会社)に関連付けて、取引先の適格請求書発行事業者の登録番号が記載されており、図2に示す請求書は適格請求書の要件を満たしている。データ処理装置1がネットワークNを介して受信する請求書データは、図2に示すような請求書の電子データである。
【0022】
データ処理装置1は、このような適格請求書に対応する請求書データを管理するための請求書データベースを記憶している。請求書データベースにおいては、取引先及び請求書発行日等のように請求書データの検索に使用されるテキストと請求書データとが関連付けられている。
【0023】
事業者が適格請求書を受領した場合、事業者は適格請求書に記載されている消費税の仕入税額控除を受けることができる。したがって、事業者にとっては、費用を支払う必要がある取引に対する適格請求書を受領することが重要である。ところが、取引先のミスにより適格請求書が発行されないという場合がある。例えば、取引先が請求書を発行すること自体を忘れてしまうこともあれば、請求書が適格請求書の要件を満たしていないという場合もある。また、口座振替で費用を支払う場合のように、適格請求書が発行されないという取引もある。
【0024】
このように適格請求書が発行されない場合、費用を支払う事業者が取引先に対して適格請求書の発行を要求することもできる。しかしながら、適格請求書の発行を要求するためには経理担当者の作業が必要であり業務効率が低下してしまう。また、適格請求書の発行を要求しても、取引先が適格請求書を発行してくれないという場合もある。そこで、データ処理装置1は、取引先から適格請求書が発行されない場合に仕入明細書を発行することで、費用を支払う事業者が適格請求書を受領できていない場合であっても仕入税額控除を受けることを可能にする。以下、データ処理装置1の構成及び動作を詳細に説明する。
【0025】
[データ処理装置1の構成]
図3は、データ処理装置1の構成を示す図である。データ処理装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を有する。制御部13は、判定部131と、作成部132と、出力部133と、を有する。
【0026】
通信部11は、ネットワークNに接続するための通信インターフェースであり、情報端末2との間でデータを送受信するための通信コントローラを有する。通信部11は、作成部132が作成した仕入明細書を取引先に送信する。通信部11は、情報端末2から受信した請求書データを記憶部12に記憶させてもよい。
【0027】
記憶部12は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部12は、取引先が発行した請求書データが関連付けられた請求書データベースを記憶する。記憶部12は、例えば通信部11が受信した請求書データを含む請求書データベースを記憶する。請求書データベースは、データ処理装置1と異なる装置に記憶されていてもよい。
【0028】
記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶する。さらに、記憶部12は、作成部132が仕入明細書を作成するために使用する各種のデータを記憶する。記憶部12は、例えば、取引先に関連付けて、取引の内容を示す情報が含まれる取引証憑書類の電子データを記憶する。取引証憑書類は、注文書、納品書、請求書、領収書、取引契約書、稟議書又は会計伝票等であり、複数の事業者間での取引の内容を示す書類である。会計伝票の電子データは、例えばデータ処理装置1又は他のコンピュータにインストールされた会計処理ソフトウェアにより作成された、取引先、取引内容、取引日及び取引額等が含まれるデータである。
【0029】
図4は、取引証憑書類の一例である業務委託契約書の例を示す図である。図4に示す業務委託契約書においては、データ処理装置1を利用する事業者(株式会社AAA事務所)の登録番号と、取引先(BBB株式会社)の登録番号と、が記載されている。また、図4に示す業務委託契約書においては、業務委託料と請求書発行日についても記載されている。
【0030】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、判定部131、作成部132及び出力部133として機能する。
【0031】
判定部131は、取引証憑書類が起票された取引について、当該取引の取引先から適正な適格請求書が発行されているかどうかを判定する。適正な適格請求書は、仕入税額控除を受けるための要件を満たす請求書である。適格請求書として認められる要件は、原則として、適格請求書を受け取る事業者名、適格請求書発行事業者の事業者名・登録番号、適用税率ごとの合計金額・消費税額、適用税率、取引の内容及び取引年月日が記載されていることである。
【0032】
判定部131は、記憶部12に記憶された請求書データベースを参照することにより、取引先から適格請求書が発行されているか否かを判定する。判定部131は、取引先からの請求書が発行されていない場合、取引先から適格請求書が発行されていないと判定する。取引先から請求書が発行されているとしても、発行された請求書が適格請求書の要件を満たしていない場合、判定部131は、取引先から適格請求書が発行されていないと判定する。判定部131は、判定結果を作成部132に通知する。
【0033】
判定部131は、例えば、取引に対する仕訳処理が開始されたことに応じて、当該取引に対応する適格請求書が発行されているかどうかを判定する。具体的には、判定部131は、仕訳のための伝票を起票する操作が行われた日、又は仕訳日として予め設定された日に、適格請求書が発行されているか否かを判定する。
【0034】
判定部131は、取引証憑書類に記載された取引日又は費用支払日に、適格請求書が発行されているかどうかを判定してもよい。判定部131は、例えば、取引先により発行された過去の複数の請求書の記載内容に基づいて、判定日を特定する。具体的には、判定部131は、過去の複数の請求書の発行日が月末である場合に、月末を判定日とする。
【0035】
判定部131は、取引先との間でやり取りされた発注書、納品書又は契約書等の取引証憑書類において支払額を示すテキストに最も近い位置に記載された日に基づいて判定日を特定してもよい。判定部131は、例えば、支払額を示すテキストに最も近い位置に記載された日、又はその翌日を判定日とする。支払額を示すテキストは、例えば、「支払」、「税抜」又は「税別」といったテキストである。判定部131は、支払額を示すテキストに最も近い複数の日の全部又は一部の日に判定処理を行い、通信部11を介して、判定結果を経理担当者に通知してもよい。
【0036】
判定部131は、適格請求書が発行されていないと判定した場合、判定結果を作成部132に通知する。判定部131は、適格請求書が発行されていないと判定した場合に、出力部133を介して警告情報を出力し、経理担当者から仕入明細書を作成するための操作が行われた場合に、仕入明細書を作成する指示を作成部132に通知してもよい。
【0037】
作成部132は、判定部131から通知された判定結果に基づいて仕入明細書を作成する。作成部132は、判定部131が適格請求書を発行していないと判定した場合に、取引の内容及び費用を示す取引内容テキストを参照することにより、取引の内容と費用に基づく金額とが記載された仕入明細書を作成する。作成部132は、経理担当者から指示を受けたことに応じて仕入明細書を作成してもよい。取引内容テキストは、例えば取引証憑書類のデータに含まれているテキストである。取引内容テキストは、取引証憑書類のデータ自体であってもよく、取引証憑書類に基づいて特定された取引内容を示すテキストであってもよい。
【0038】
作成部132は、取引の内容及び費用に加えて仕入税額控除を受けるための要件を満たすための情報を含む仕入明細書を作成する。作成部132は、例えば、記憶部12に記憶された、取引先に対応する適格請求書発行事業者の登録番号を示すデータを参照することにより、登録番号が記載された仕入明細書を作成する。作成部132は、取引先との間でやり取りされた注文書、納品書、取引契約書又は過去の請求書等の取引証憑書類のデータを参照することにより、取引証憑書類に記載されている取引の内容及び金額が記載された仕入明細書を作成する。
【0039】
図5は、作成部132が作成する仕入明細書の一例を示す図である。図5に示す仕入明細書においては、取引先の名称(BBB株式会社)、及び取引先の登録番号が記載されている。また、図4に示した業務委託契約書に記載されていた業務委託料である20,000円と、業務委託料に対する消費税2,000円が記載されている。
【0040】
作成部132は、例えば、記憶部12に記憶された仕入明細書のテンプレートに、取引証憑書類に記載されている取引先の登録番号、取引の内容、金額及び取引年月日を入力することにより仕入明細書を作成する。作成部132は、取引内容テキストと、仕入明細書を作成する指示を含む指示テキストと、を大規模言語モデルに入力して当該大規模言語モデルから提供される暫定仕入明細書に基づいて仕入明細書を作成してもよい。
【0041】
取引内容テキストに適格請求書発行事業者の登録番号が記載されている場合、作成部132は、取引内容テキストを大規模言語モデルに入力することにより、取引内容テキストに記載された登録番号を含む暫定仕入明細書を大規模言語モデルから取得することができる。これにより、記憶部12に仕入明細書のテンプレートが記憶されていない場合、又は記憶部12に仕入明細書を作成するためのプログラムが記憶されていない場合であっても、作成部132が適正な仕入明細書を作成することができる。
【0042】
指示テキストは、例えば、「以下の取引証憑書類の内容に基づいて仕入明細書を作成してください」という文を含む。指示テキストには、取引証憑書類の内容を示すテキストがさらに含まれる。これにより、外部のコンピュータが有する大規模言語モデルは、データ処理装置1から受信した指示テキストを解析し、取引証憑書類の内容に基づく暫定仕入明細書を作成し、暫定仕入明細書をデータ処理装置1に送信する。正しい暫定仕入明細書が作成される確率を高めるために、作成部132は、仕入明細書の発行事業者の名称と仕入明細書の宛先事業者の名称とを明示するための指示テキストを大規模言語モデルに入力してもよい。
【0043】
作成部132は、大規模言語モデルから提供された暫定仕入明細書が仕入税額控除のために使用するための要件を満たしていない場合に、要件を満たすように暫定仕入明細書を変更することにより仕入明細書を作成する。作成部132は、大規模言語モデルから提供された暫定仕入明細書に取引年月日が含まれていない場合、又は暫定仕入明細書に記載されている取引年月日に誤りがある場合、判定部131が特定した判定日を取引年月日として暫定仕入明細書に記載することにより仕入明細書を作成する。これにより、作成部132は、適正な仕入明細書を作成することができる。
【0044】
作成部132は、取引内容テキストと、取引年月日を特定するための指示を含む指示テキストと、を大規模言語モデルに入力して当該大規模言語モデルから提供される取引年月日を示すテキストを取得することにより、取引年月日を特定してもよい。取引内容テキストは、例えば、請求日又は支払日が記載された取引証憑書類のテキストである。取引内容テキストは、過去の複数の請求書データであってもよい。作成部132が大規模言語モデルを利用して取引年月日を特定することで、取引年月日を特定する機能を判定部131が有していない場合であっても、適切な日付が記載された仕入明細書を作成部132が作成することができる。
【0045】
取引年月日を特定する機能を判定部131が有している場合、作成部132は、判定部131が特定した取引年月日と、大規模言語モデルから提供された取引年月日とを照合してもよい。作成部132は、2つの取引年月日が所定日数(例えば3日)以上ずれている場合に、出力部133を介して警告情報を出力してもよい。
【0046】
出力部133は、仕入明細書を取引先に発行するべく出力する。出力部133は、通信部11を介して、記憶部12に記憶された取引先のアドレスに向けて仕入明細書の電子データを送信する。出力部133は、仕入明細書に記載された金額の送金処理を実行した後に仕入明細書の電子データを送信してもよい。送金処理は、取引先に関連付けて記憶部12に記憶された銀行口座に仕入明細書に記載された金額を送金する処理である。送金処理は、送金が必要であることを経理担当者に通知し、送金が完了したという入力を経理担当者から受け付ける処理であってもよい。
【0047】
[データ処理装置1における処理の流れ]
図6は、データ処理装置1における仕入明細書の作成処理の流れを示すフローチャートである。図6に示すフローチャートは、適格請求書が発行されたか否かを判定する必要があると判定部131が判定した時点から開始している。すなわち、図6に示すフローチャートは、経理担当者が仕訳処理の操作を開始した時点、過去に請求書が発行されていた時点、又は取引証憑書類に記載された取引日若しくは費用支払日に会計処理を開始する操作が行われた時点から開始している。
【0048】
判定部131は、1以上の取引先から、適格請求書が発行されたか否かを判定する対象となる1つの取引先を選択する(S11)。判定部131は、例えば、仕訳処理の操作によって起票された仕訳伝票に記載された取引先を選択する。判定部131は、請求書データベースを参照し(S12)、選択した取引先に対応する請求書が発行済であるか否かを判定する(S13)。請求書が発行済であると判定部131が判定した場合(S13においてYES)、判定部131は、請求書が適格請求書の要件を満たす適正な請求書であるか否かを判定する(S14)。
【0049】
判定部131がS13において請求書が発行済でないと判定した場合(S13においてNO)、又は請求書が適正でないと判定した場合(S14においてNO)、作成部132は、取引先に関連付けて記憶部12に記憶された取引証憑書類データを読み出す(S15)。作成部132は、通信部11を介して、読み出した取引証憑書類データに基づく取引内容テキストと、仕入明細書の作成を指示するための指示テキストと、を大規模言語モデルに送信することで、仕入明細書の作成を指示する(S16)。
【0050】
作成部132は、大規模言語モデルから出力された暫定仕入明細書を取得すると(S17)、暫定仕入明細書に取引年月日が記載されているか否かを判定する(S18)。作成部132は、発行日が記載されていないと判定した場合(S18においてNO)、例えば判定部131又は大規模言語モデルにより特定された取引年月日を、仕入明細書の取引年月日として追記する(S19)。作成部132は、暫定仕入明細書に取引年月日が記載されていると判定した場合(S18においてYES)、暫定仕入明細書を変更することなくS20に処理を進める。
【0051】
また、作成部132は、暫定仕入明細書に取引先の登録番号が記載されているか否かを判定する(S20)。作成部132は、登録番号が記載されていないと判定した場合(S20においてNO)、取引先に関連付けて記憶部12に記憶された登録番号を暫定仕入明細書に追記することにより仕入明細書を作成する(S21)。作成部132は、暫定仕入明細書に登録番号が記載されていると判定した場合(S20においてYES)、暫定仕入明細書に登録番号を追記することなくS22に処理を進める。出力部133は、暫定仕入明細書、又は発行日若しくは登録番号が追記された仕入明細書を通信部11を介して送信することにより、仕入明細書を発行する(S22)。
【0052】
S14において請求書が適正であると判定部131が判定した場合(S14においてYES)、判定部131は、仕入明細書を作成する対象となる他の取引先があるか否かを判定する(S23)。判定部131は、他の取引先があると判定した場合(S23においてYES)、処理をS11に戻してS11からS23までの処理を繰り返す。他の取引先がないと判定部131が判定した場合(S23においてNO)、制御部13は仕入明細書の作成処理を終了する。
【0053】
[データ処理装置1による効果]
以上説明したように、データ処理装置1は、取引証憑書類が起票された取引について、当該取引の取引先から適正な適格請求書が発行されているかどうかを判定する判定部131と、適格請求書が発行されていないと判定された場合に、取引の内容及び費用を示す取引内容テキストを参照することにより、取引の内容と費用に基づく金額とが記載された仕入明細書を作成する作成部132と、を有する。データ処理装置1がこのように構成されていることで、取引先から適格請求書が発行されていない場合であっても、費用を支払う事業者が仕入明細書を容易に発行できるので、適正な適格請求書を受け取っていない場合であっても、費用を支払う事業者が仕入税額控除を受けられるようになる。
【0054】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0055】
1 データ処理装置
2 情報端末
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
131 判定部
132 作成部
133 出力部
【要約】
【課題】適正な適格請求書を受け取っていない場合であっても、費用を支払う事業者が仕入税額控除を受けられるようにする。
【解決手段】データ処理装置1は、取引証憑書類が起票された取引について、当該取引の取引先から適正な適格請求書が発行されているかどうかを判定する判定部131と、適格請求書が発行されていないと判定部131が判定した場合に、取引の内容及び費用を示す取引内容テキストを参照することにより、取引の内容と費用に基づく金額とが記載された仕入明細書を作成する作成部132と、仕入明細書を前記取引先に発行するべく出力する出力部133と、を有する。
【選択図】図3

図1
図2
図3
図4
図5
図6