(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】電動エアソフトガン
(51)【国際特許分類】
F41B 11/643 20130101AFI20240509BHJP
【FI】
F41B11/643
(21)【出願番号】P 2024040420
(22)【出願日】2024-03-14
【審査請求日】2024-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524099935
【氏名又は名称】原 嘉伸
(74)【代理人】
【識別番号】100129001
【氏名又は名称】林 崇朗
(72)【発明者】
【氏名】原 嘉伸
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-56529(JP,A)
【文献】登録実用新案第3242788(JP,U)
【文献】特表2022-536206(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0115816(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41B 11/64 -11/648
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状の弾丸を圧縮空気によって発射する電動エアソフトガンであって、
前記弾丸が通過する銃身と、
前記銃身へと前記圧縮空気を供給可能に接続されたシリンダと、
前記シリンダにおける前記銃身側の前方側と、前記シリンダにおける前記銃身とは反対側の後方側との間を、前記シリンダの内側において往復移動可能に構成されたピストンと、
前記ピストンを前記前方側に向けて押し付けるスプリングと、
前記ピストンが往復移動する方向に沿って前記ピストンに設けられたラックギアと、
前記ピストンを前記後方側へと移動させる回転動力を出力する電動機と、
前記電動機から出力される前記回転動力を前記ラックギアに伝達する動力伝達機構と、
少なくとも前記動力伝達機構を収容する筐体と
を備え、
前記動力伝達機構は、
前記電動機の出力軸に設けられたピニオンギアと、
前記ピニオンギアに噛み合う傘歯車と、前記傘歯車より歯数の少ない第1の平歯車とを有する第1の二段歯車と、
前記第1の平歯車に噛み合う第2の平歯車と、前記第2の平歯車より歯数の少ない第3の平歯車とを有する第2の二段歯車と、
前記第3の平歯車に噛み合う第4の平歯車と、円周の一部にわたって前記ラックギアに噛み合う歯が形成された第5の平歯車とを有し、前記ピストンを前記後方側へと移動かつ保持するとともに前記ピストンを前記前方側へと解放可能に構成された第3の二段歯車と、
前記第2の二段歯車の逆回転を防止する逆回転防止ユニットと
を含み、
前記逆回転防止ユニットは、
前記第2の二段歯車の回転軸と嵌り合い、前記ピストンを前記後方側へと移動させる正回転方向への前記回転軸の回転を許容し、前記正回転方向とは逆向きへの前記回転軸の回転を阻止するワンウェイクラッチと、
前記ワンウェイクラッチを保持する保持部と、
前記筐体における前記第2の二段歯車の半径方向外側に位置する凹部に嵌り合うピンと、
前記保持部と前記ピンとの間を連結するアーム部材と
を含む、電動エアソフトガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電動エアソフトガンに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
遊戯銃の一つとして電動エアソフトガンが知られている(例えば、特許文献1を参照)。電動エアソフトガンは、シリンダ内においてスプリングで前方に押し付けられたピストンを、電動機の回転動力を用いて後方に移動させた後、ピストンを解放することによりシリンダ内で発生する圧縮空気で球状の弾丸を発射する。このような電動エアソフトガンでは、電動機の回転動力は、複数の歯車で構成された動力伝達機構を介してピストンに伝達される。
【0003】
特許文献2には、動力伝達機構において各種歯車が逆回転することによる誤動作を防止するために、動力伝達機構における歯車の一つに逆転防止ラッチを設けることが記載されている。また、特許文献2には、そのような逆回転による誤動作を防止するために、電動機の出力軸にワンウェイクラッチを設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-234191号公報
【文献】特許第6620956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動エアソフトガンにおいて動力伝達機構の歯車に逆転防止ラッチを設けた場合、逆転防止ラッチとピストンとの間に介在する歯車間におけるバックラッシュ(隙間)の分だけピストンが前方に戻るという問題があった。また、動力伝達機構の歯車に逆転防止ラッチを設けた場合、逆転防止ラッチの作動音が発生するため、その作動音によって遊戯が阻害されるという問題があった。
【0006】
また、電動エアソフトガンにおいて電動機の出力軸にワンウェイクラッチを設けた場合、出力軸とピストンとの間に介在する歯車におけるバックラッシュの分だけピストンが前方に戻るという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示する技術は、以下の形態として実現できる。
【0008】
本明細書に開示する一形態は、球状の弾丸を圧縮空気によって発射する電動エアソフトガンであある。この電動エアソフトガンは、前記弾丸が通過する銃身と;前記銃身へと前記圧縮空気を供給可能に前記銃身に接続されたシリンダと;前記シリンダにおける前記銃身側の前方側と、前記シリンダにおける前記銃身とは反対側の後方側との間を、前記シリンダの内側において往復移動可能に構成されたピストンと;前記ピストンを前記前方側に向けて押し付けるスプリングと、;前記ピストンが往復移動する方向に沿って前記ピストンに設けられたラックギアと、;前記ピストンを前記後方側へと移動させる回転動力を出力する電動機と;前記電動機から出力される前記回転動力を前記ラックギアに伝達する動力伝達機構と;少なくとも前記動力伝達機構を収容する筐体とを備える。前記動力伝達機構は、前記電動機の出力軸に設けられたピニオンギアと;前記ピニオンギアに噛み合う傘歯車と、前記傘歯車より歯数の少ない第1の平歯車とを有する第1の二段歯車と;前記第1の平歯車に噛み合う第2の平歯車と、前記第2の平歯車より歯数の少ない第3の平歯車とを有する第2の二段歯車と;前記第3の平歯車に噛み合う第4の平歯車と、円周の一部にわたって前記ラックギアに噛み合う歯が形成された第5の平歯車とを有し、前記ピストンを前記後方側へと移動かつ保持するとともに前記ピストンを前記前方側へと解放可能に構成された第3の二段歯車と;前記第2の二段歯車の逆回転を防止する逆回転防止ユニットとを含む。前記逆回転防止ユニットは、前記第2の二段歯車の回転軸と嵌り合い、前記ピストンを前記後方側へと移動させる正回転方向への前記回転軸の回転を許容し、前記正回転方向とは逆向きへの前記回転軸の回転を阻止するワンウェイクラッチと;前記ワンウェイクラッチを保持する保持部と;前記筐体における前記第2の二段歯車の半径方向外側に位置する凹部に嵌り合うピンと;前記保持部と前記ピンとの間を連結するアーム部材とを含む。この形態の電動エアソフトガンによれば、第2の二段歯車の回転軸にワンウェイクラッチを設けることができるため、回転動力が動力伝達機構で減速される前の電動機にワンウェイクラッチを設けた場合と比較して、歯車間のバックラッシュに起因するピストンの戻りを抑制できる。また、この形態の電動エアソフトガンによれば、第2の二段歯車の回転軸に設けたワンウェイクラッチによって動力伝達機構の逆回転を防止できるため、歯車に逆転防止ラッチを設けた場合と比較して作動音を低減できる。
【0009】
本明細書に開示する技術は、電動エアソフトガンとは異なる種々の形態で実現できる。本明細書に開示する技術は、例えば、電動エアソフトガンの部品および製造方法などの形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】電動エアソフトガンの構成を示す説明図である。
【
図2】逆転防止ユニットの詳細構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、電動エアソフトガン10の構成を示す説明図である。電動エアソフトガン10は、球状の弾丸BBを圧縮空気によって発射する遊戯銃である。電動エアソフトガン10は、筐体100と、補給ユニット110と、トリガ120と、銃身210と、シリンダ220と、ピストン230と、スプリング240と、電動機300と、動力伝達機構500とを備える。
【0012】
電動エアソフトガン10の筐体100は、電動エアソフトガン10の各種部材を収容する。筐体100は、少なくとも動力伝達機構500を収容する。筐体100は、動力伝達機構500のほか、補給ユニット110、銃身210、シリンダ220、ピストン230、スプリング240および電動機300などを収容する。筐体100には、各種部品を固定する凹部、凸部、溝部、穴部などが形成されている。
【0013】
電動エアソフトガン10の補給ユニット110は、銃身210から弾丸BBが発射されるごとに、新しい弾丸BBを銃身210に補給する。
【0014】
電動エアソフトガン10のトリガ120は、電動エアソフトガン10の使用者の指による操作入力を受け付けるスイッチである。本実施形態では、トリガ120の可動範囲の途中までトリガ120が引かれた場合、電動エアソフトガン10は、シリンダ220内のピストン230を後方側へ移動させることによって、弾丸BBの発射を待機する発射待機状態となる。その後、最大可動範囲にまでトリガ120が引かれた場合、電動エアソフトガン10は、シリンダ220内のピストン230を前方側に解放することによりシリンダ220内で発生する圧縮空気で弾丸BBを発射する。
【0015】
電動エアソフトガン10の銃身210は、シリンダ220から電動エアソフトガン10の前方側へと延びた円筒状の部材である。補給ユニット110によって銃身210に供給された弾丸BBは、シリンダ220で生成された圧縮空気によって銃身210の中を通過した後、電動エアソフトガン10の前方へと飛翔する。
【0016】
電動エアソフトガン10のシリンダ220は、銃身210から電動エアソフトガン10の後方側へと延びた円筒状の部材である。シリンダ220は、銃身210へと圧縮空気を供給可能に銃身210に接続されている。
【0017】
電動エアソフトガン10のピストン230は、シリンダ220における銃身210側の前方側と、シリンダ220における銃身210とは反対側の後方側との間を、シリンダ220の内側において往復移動可能に構成されている。ピストン230の外側には、ピストン230が往復移動する方向に沿ってラックギア235が設けられている。
【0018】
電動エアソフトガン10のスプリング240は、ピストン230を前方側に向けて押し付ける。スプリング240は、ピストン230と共にシリンダ220の内側に収容されている。本実施形態では、スプリング240は、コイルスプリングである。
【0019】
電動エアソフトガン10の電動機300は、ピストン230を後方側へと移動させる回転動力を出力する。電動機300は、トリガ120に対する操作入力に基づいて作動する。電動機300は、回転動力を出力する出力軸305を有する。
【0020】
電動エアソフトガン10の動力伝達機構500は、電動機300から出力される回転動力をピストン230のラックギア235に伝達する。動力伝達機構500は、ピニオンギア505と、第1の二段歯車510と、第2の二段歯車520と、第3の二段歯車530と、逆転防止ユニット600とを備える。
【0021】
動力伝達機構500のピニオンギア505は、電動機300の出力軸305に設けられた歯車である。本実施形態では、ピニオンギア505は、出力軸305の先端に設けられた傘歯車である。
【0022】
動力伝達機構500の第1の二段歯車510は、回転軸511と、傘歯車512と、第1の平歯車514とを有する。第1の二段歯車510には、回転軸511、傘歯車512および第1の平歯車514が一体的に形成されている。回転軸511は、傘歯車512および第1の平歯車514の各歯車に共通する回転軸である。回転軸511は、筐体100に回転可能に保持される。傘歯車512は、ピニオンギア505に噛み合う歯車である。第1の平歯車514は、傘歯車512より歯数の少ない歯車である。本実施形態では、傘歯車512の歯数は40であり、第1の平歯車514の歯数は10である。
【0023】
動力伝達機構500の第2の二段歯車520は、回転軸521と、第2の平歯車522と、第3の平歯車524とを有する。第2の二段歯車520には、回転軸521、第2の平歯車522、第3の平歯車524が一体的に形成されている。回転軸521は、第2の平歯車522および第3の平歯車524の各歯車に共通する回転軸である。回転軸521は、筐体100および逆転防止ユニット600によって回転可能に保持される。第2の平歯車522は、第1の二段歯車510における第1の平歯車514に噛み合う歯車である。第3の平歯車524は、第2の平歯車522より歯数の少ない歯車である。本実施形態では、第2の平歯車522の歯数は40であり、第3の平歯車524の歯数は20である。
【0024】
動力伝達機構500の第3の二段歯車530は、回転軸531と、第4の平歯車532と、第5の平歯車534とを有する。第3の二段歯車530には、回転軸531、第4の平歯車532および第5の平歯車534が一体的に形成されている。回転軸531は、第2の平歯車522および第3の平歯車524の各歯車に共通する回転軸である。第4の平歯車532は、第2の二段歯車520における第3の平歯車524に噛み合う歯車である。第5の平歯車534は、円周の一部にわたってピストン230のラックギア235に噛み合う歯が形成された歯車である。これによって、第3の二段歯車530は、ピストン230を後方側へと移動かつ保持するとともにピストン230を前方側へと解放可能に構成されている。本実施形態では、第4の平歯車532の歯数は32であり、第5の平歯車534の歯数は、半周部分にわたって16であり、残りの半周部分には0である。
【0025】
図2は、逆転防止ユニット600の詳細構成を示す説明図である。逆転防止ユニット600は、第2の二段歯車520の逆回転を防止する部品である。逆転防止ユニット600は、ワンウェイクラッチ610と、保持部620と、ピン630と、アーム部材640とを備える。
【0026】
逆転防止ユニット600のワンウェイクラッチ610は、一方の方向のみに回転動力を伝達する円筒状の部材である。ワンウェイクラッチ610は、貫通孔612と、クラッチ機構614とを有する。貫通孔612は、第2の二段歯車520における回転軸521に嵌り合う。貫通孔612の内周面には、一方の方向のみに回転可能なクラッチ機構614が設けられている。ワンウェイクラッチ610は、ピストン230を後方側へと移動させる正回転方向への回転軸521の回転を許容し、正回転方向とは逆向きへの回転軸521の回転を阻止する。
【0027】
逆転防止ユニット600の保持部620は、ワンウェイクラッチ610を保持する部位である。保持部620は、ワンウェイクラッチ610の外側に嵌り合うことによってワンウェイクラッチ610を保持する。保持部620には、第3の二段歯車530との干渉を防止するために保持部620の一部を切り取った跡である切欠部622が形成されている。620には、第1の二段歯車510との干渉を防止するために保持部620の一部を切り取った跡である切欠部624が形成されている。
【0028】
逆転防止ユニット600のピン630は、筐体100における第2の二段歯車520の半径方向外側に位置する凹部102に嵌り合う円柱状の部材である。本実施形態では、凹部102は、逆転防止ラッチ(図示しない)を取り付けるために設計された凹部であり、逆転防止ラッチに代えて逆転防止ユニット600の取り付けに利用されている。
【0029】
逆転防止ユニット600のアーム部材640は、保持部620とピン630との間を連結する棒状の部材である。アーム部材640には、第1の二段歯車510との干渉を防止するためにアーム部材640の一部を切り取った跡である切欠部644が形成されている。
【0030】
以上説明した実施形態の電動エアソフトガン10によれば、第2の二段歯車520の回転軸521にワンウェイクラッチ610を設けることができるため、回転動力が動力伝達機構500で減速される前の電動機300にワンウェイクラッチ(図示しない)を設けた場合と比較して、歯車間のバックラッシュに起因するピストン230の戻りを抑制できる。また、この形態の電動エアソフトガン10によれば、第2の二段歯車520の回転軸521に設けたワンウェイクラッチ610によって動力伝達機構500の逆回転を防止できるため、第2の二段歯車520に逆転防止ラッチ(図示しない)を設けた場合と比較して作動音を低減できる。
【0031】
本明細書に開示する技術は、上述した実施形態、実施例および変形例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、上述した実施形態、実施例および変形例における技術的特徴のうち、発明の概要の欄に記載した各形態における技術的特徴に対応するものは、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えおよび組み合わせることができる。また、本明細書中に必須なものとして説明されていない技術的特徴については、適宜、削除できる。
【符号の説明】
【0032】
10 電動エアソフトガン
100 筐体
102 凹部
110 補給ユニット
120 トリガ
210 銃身
220 シリンダ
230 ピストン
235 ラックギア
240 スプリング
300 電動機
305 出力軸
500 動力伝達機構
505 ピニオンギア
510 第1の二段歯車
511 回転軸
512 傘歯車
514 第1の平歯車
520 第2の二段歯車
521 回転軸
522 第2の平歯車
524 第3の平歯車
530 第3の二段歯車
531 回転軸
532 第4の平歯車
534 第5の平歯車
600 逆転防止ユニット
610 ワンウェイクラッチ
612 貫通孔
614 クラッチ機構
620 保持部
622 切欠部
624 切欠部
630 ピン
640 アーム部材
644 切欠部
【要約】
【課題】電動エアソフトガンにおいて歯車間のバックラッシュに起因するピストンの戻りを抑制する。
【解決手段】電動エアソフトガンは、シリンダと;ピストンと;スプリングと、;ピストンに設けられたラックギアと、;電動機と;動力伝達機構と;筐体とを備える。動力伝達機構は、ピニオンギアと;第1の二段歯車と;第2の二段歯車と;第3の二段歯車と;第2の二段歯車の逆回転を防止する逆回転防止ユニットとを含む。逆回転防止ユニットは、第2の二段歯車の回転軸と嵌り合うワンウェイクラッチと、ワンウェイクラッチを保持する保持部と、筐体における第2の二段歯車の半径方向外側に位置する凹部に嵌り合うピンと、保持部とピンとの間を連結するアーム部材とを含む。
【選択図】
図1