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特許7485327伐採用アタッチメント、作業車両及び樹木伐採方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】伐採用アタッチメント、作業車両及び樹木伐採方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 23/087 20060101AFI20240509BHJP
   E02F 3/76 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A01G23/087
E02F3/76 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019218486
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021087375
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592026819
【氏名又は名称】伊東電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135839
【弁理士】
【氏名又は名称】大南 匡史
(72)【発明者】
【氏名】伊東 一夫
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-228920(JP,A)
【文献】特開2016-086764(JP,A)
【文献】実開昭62-083451(JP,U)
【文献】特開2015-166513(JP,A)
【文献】実開昭56-080076(JP,U)
【文献】特開2014-187884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 23/00 - 23/14
E02F 3/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に、剛性を有する態様で取り付けられて使用される伐採用アタッチメントであって、一又は複数のドリル状回転体を有し、前記ドリル状回転体によって対象樹木に当該樹木を倒し得る損傷を与えることが可能であり、
前記車両は排土板を有するものであり、伐採用アタッチメントは、前記排土板に取り付けられるものであることを特徴とする伐採用アタッチメント。
【請求項2】
車両に、剛性を有する態様で取り付けられて使用される伐採用アタッチメントであって、排土板と、前記排土板に取り付けられた一又は複数のドリル状回転体を有し、前記ドリル状回転体によって対象樹木に当該樹木を倒し得る損傷を与えることが可能であることを特徴とする伐採用アタッチメント。
【請求項3】
前記車両は排土板を有するものであり、伐採用アタッチメントは、前記排土板に代わって車両に取り付けられるものであることを特徴とする請求項2に記載の伐採用アタッチメント。
【請求項4】
前記ドリル状回転体は、側面にも切れ刃を有するエンドミル状回転体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の伐採用アタッチメント。
【請求項5】
前記ドリル状回転体を駆動するモータと、当該モータに給電する蓄電池を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の伐採用アタッチメント。
【請求項6】
自走可能な車両部と、請求項1乃至5のいずれかに記載の伐採用アタッチメントを有することを特徴とする作業車両。
【請求項7】
請求項6に記載の作業車両を使用し、前記ドリル状回転体によって対象樹木に損傷を与える工程を有することを特徴とする樹木伐採方法。
【請求項8】
前記ドリル状回転体を対象樹木に突き刺した後、前記ドリル状回転体を横方向に動かして、樹木を横方向に切り込む工程を有することを特徴とする請求項7に記載の樹木伐採方法。
【請求項9】
ドリル状回転体によって対象樹木に損傷を与えた後、当該作業車両及び/又は他の作業機械で対象樹木に外力を加える工程を有することを特徴とする請求項7又は8に記載の樹木伐採方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木等を伐採する用途に使用する伐採用アタッチメントに関するものである。また本発明は、樹木等を伐採する用途に使用する作業車両に関するものである。さらに本発明は、樹木を伐採する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹木を伐採する際には、チェーンソーが用いられる場合が多い。
チェーンソーを使用して樹木を伐採すると、切り株が残る。チェーンソーを使用して樹木を伐採する際には、樹木の地上部に刃を押し当てる必要から、切り株の高さは、地上数十センチに及ぶ場合が多い。
山林を開墾して農地や公園として使用する場合には、樹木の切り株を処理する必要がある。従来技術においては、人力によって切り株を掘り起こしたり、ショベルカー等の土木機械を使用して切り株が取り除かれている。
特許文献1には、手持ち型のオーガや、ハンドドリルを車両に取り付けたパワー機械が開示されている。特許文献1に開示されたパワー機械では、前記したオーガやハンドドリルは、作業者が手で保持して使用するものであり、車両に取り付けられるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-252104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹木の切り株を除去する作業は、誠に大変であり、チェーンソーによる作業に要する時間及び労力の数倍にも及ぶ時間と労力を有する。
本発明は、樹木の切り株の処理を容易に行うことができる装置及び方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するための態様は、車両に、剛性を有する態様で取り付けられて使用される伐採用アタッチメントであって、一又は複数のドリル状回転体を有し、前記ドリル状回転体によって対象樹木に当該樹木を倒し得る損傷を与えることが可能であることを特徴とする伐採用アタッチメントである。
上記した課題を解決するための具体的態様は、車両に、剛性を有する態様で取り付けられて使用される伐採用アタッチメントであって、一又は複数のドリル状回転体を有し、前記ドリル状回転体によって対象樹木に当該樹木を倒し得る損傷を与えることが可能であり、前記車両は排土板を有するものであり、伐採用アタッチメントは、前記排土板に取り付けられるものであることを特徴とする伐採用アタッチメントである。
上記した課題を解決するためのもう一つの具体的態様は、車両に、剛性を有する態様で取り付けられて使用される伐採用アタッチメントであって、排土板と、前記排土板に取り付けられた一又は複数のドリル状回転体を有し、前記ドリル状回転体によって対象樹木に当該樹木を倒し得る損傷を与えることが可能であることを特徴とする伐採用アタッチメントである。
【0006】
本態様の伐採用アタッチメントは、ショベルカーやトラクター等の車両に取り付けて使用される。
本態様の伐採用アタッチメントで樹木を伐採する際には、ドリル状回転体を樹木に押し当て、樹木に孔等の損傷を与える。そして、例えば車両等によって樹木を押し倒すか或いは引き倒す。
例えばドリル状回転体を樹木の根本に押し当てて地下部に孔等をあけ、その後に樹木を倒すことにより、切り株の地上に露出する部分を少なくすることができる。
またドリル状回転体を樹木の地中部に押し当てて地下部に孔等をあけ、その後に樹木を倒すことにより、樹木の地下部の一部を除去することができる。
【0007】
上記した態様において、前記車両は排土板を有するものであり、伐採用アタッチメントは、前記排土板に代わって車両に取り付けられるものであることが望ましい。
【0008】
上記した態様の一つは、前記車両は排土板を有するものであり、伐採用アタッチメントは、前記排土板に取り付けられるものである
【0009】
上記した各態様において、前記ドリル状回転体を駆動するモータと、当該モータに給電する蓄電池を有することが望ましい。
【0010】
上記した各態様において、前記ドリル状回転体は、側面にも切れ刃を有するエンドミル状回転体であることが望ましい。
【0011】
作業車両の態様は、自走可能な車両部と、上記した各態様の伐採用アタッチメントを有することを特徴とする作業車両である。
【0012】
作業車両に関するもう一つの態様は、自走可能な車両部と、一又は複数のドリル状回転体を有し、前記ドリル状回転体によって対象樹木に当該樹木を倒し得る損傷を与えることが可能であることを特徴とする作業車両である。
【0013】
樹木伐採方法に関する発明は、上記した作業車両を使用し、前記ドリル状回転体によって対象樹木に損傷を与える工程を有することを特徴とする。
【0014】
上記した態様において、前記ドリル状回転体を対象樹木に突き刺した後、前記ドリル状回転体を横方向に動かして、樹木を横方向に切り込む工程を有することが望ましい。
【0015】
上記した態様において、ドリル状回転体によって対象樹木に損傷を与えた後、当該作業車両及び/又は他の作業機械で対象樹木に外力を加える工程を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、樹木の切り株の処理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態の作業車両の概要を示す斜視図である。
図2】(a)は、本発明の実施形態の作業車両の正面図であり、(b)は本発明の実施形態の伐採用アタッチメントの正面図である。
図3図1の作業車両を使用して立木を伐採する際の手順を示す対象樹木及び作業車両の正面図である。
図4】(a)は、図3に続く伐採の手順を示す対象樹木及び作業車両の正面図であり、(b)はその平面図であり、(c)は対象樹木の左側面図であり、(d)は、対象樹木の右側面図である。
図5】(a)は、図4に続く伐採の手順を示す対象樹木及び作業車両の正面図であり、(b)はその平面図であり、(c)は対象樹木の左側面図であり、(d)は、対象樹木の右側面図である。
図6】(a)は、図5に続く伐採の手順を示す対象樹木及び作業車両の正面図であり、(b)はその平面図であり、(c)は対象樹木の左側面図であり、(d)は、対象樹木の右側面図である。
図7図6に続く伐採の手順を示す対象樹木及び作業車両の正面図である
図8】(a)、(b)は、図1の作業車両を使用して立木を伐採する際の他の作業手順を示す説明図である。
図9】(c)、(d)、(e)は、図8に続く伐採の手順を示す説明図である。
図10】改造前の作業車両の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の作業車両1は、図1の様に車両部2に伐採用アタッチメント10が取り付けられたものである。作業車両1は、例えば図10の様な油圧ショベル100の排土板102を取り外し、伐採用アタッチメント10に付け替えたものである。
【0019】
即ち車両部2は、公知の土木作業車の本体であり、下部走行体15と上部旋回体16を有している。
下部走行体15は、公知のクローラ12を備え、所望の方向に走行することができるものである。車両部2は止まった位置で回転し、姿勢を変更することができる。
上部旋回体16は、公知の土木作業車と同様に、操縦席17、ブーム18、アーム20を有している。アーム20の先端にはバケット101が取り付けられている。
【0020】
伐採用アタッチメント10は、排土板21とドリル状回転体22及び当該ドリル状回転体22を駆動する駆動機構23によって構成されている。
排土板21は、ブルドーザの排土板と同様に相当の剛性を有する押し板である。
ドリル状回転体22は、エンドミルと同様の構造を有するものであり、先端部と側面に切れ刃を有している。ドリル状回転体22は、50センチメートル以上、望ましくは80センチメートル以上の長さを有し、横方向の力にも耐える太さを有するものである。即ち、ドリル状回転体22は、軸方向だけでなく、横方向にも相当の剛性を有し、木の幹に突き刺した状態でこじっても折れない。またドリル状回転体22を横方向に動かすことにより、孔を広げることができる。
【0021】
本実施形態では、駆動機構23は、チェーン伝動機構が採用されており、スプロケット27、32、モータ30及びチェーン35によって構成されている。モータ30は、減速機を有するギャードモータである。
【0022】
ドリル状回転体22は、軸受け26を介して排土板21の下端部に片持ち状に取り付けられている。ドリル状回転体22は、排土板21の表面側から先側に向かって突出している。
ドリル状回転体22には、スプロケット27が取り付けられている。
排土板21の背面には保持板28があり、当該保持板28にモータ30と、蓄電池31が搭載されている。モータ30の出力軸にはスプロケット32が取り付けられている。そして、モータ30側のスプロケット32とドリル状回転体22側のスプロケット27の間に、チェーン35が巻回されている。
本実施形態では、蓄電池31がモータ30に接続されており、蓄電池31から電力供給を受けてモータ30が回転する。そして、前記したチェーン伝動機構によって、モータ30の回転力がドリル状回転体22に伝動され、当該ドリル状回転体22が回転する。
【0023】
本実施形態の作業車両1は、図10の様な油圧ショベル100の排土板102を伐採用アタッチメント10に取り換えたものである。
伐採用アタッチメント10は、車両部2に一体的に、剛性を有した状態で取り付けられている。
そしてブルドーザの排土板の様に、油圧によって上下方向に移動する。また油圧によって、角度姿勢を変えることができる。
【0024】
次に、作業車両1を使用して、樹木200を伐採する際の手順について説明する。 樹木200を伐採する際には、図3の様に、作業車両1を走行させて、伐採対象の樹木200の近くに移動させる。
前記した様に、ドリル状回転体22は、排土板21の下端部にある。
本実施形態では、ドリル状回転体22を地表の境界部、あるいは少し地中に入り込んだ高さの位置に置く。
この状態で、ドリル状回転体22を回転し、作業車両1を前進させて、ドリル状回転体22を樹木200に突き刺し、図4の様に、樹木200の地表面Aすれすれの位置に孔40をあける。ドリル状回転体22によって樹木200を貫通することが望ましい。
【0025】
続いて、図4(b)の矢印の様に、作業車両1をその位置で回動させる、例えば、時計方向に旋回させる。
その結果、図5の様にドリル状回転体22が水平方向に回動し、樹木200が平面視、扇形に切り込まれる。
さらに、作業車両1を反時計方向に旋回させ、図6の様に樹木200の切り込みを広げてゆく。即ちドリル状回転体22が樹木200の内部で横方向に動き、樹木200を横方向に切り込んでゆく。
【0026】
続いて図7の様に、作業車両1で、樹木200を押し、樹木200を倒す。例えば図7の様に、バケット101で樹木200に外力を加える。
樹木200の幹の地表近くは、大きく切り込まれ、幹は相当に傷ついているので、樹木200は、地表近くの位置で折れることとなる。そのため、地上に切り株が残りにくい。
この様に本実施形態の作業車両1によると、切り株を残さずに樹木200を伐採することができる。
また、仮に樹木200が作業車両1側に倒れてきたとしても、アーム20等によって樹木200が支えられ、操縦席17に倒れこむことはない。そのため、作業者の安全が確保される。
【0027】
倒された樹木200は、チェーンソー等によって、所定の長さに切断され、運搬される。
【0028】
次に、作業車両1を使用して、樹木200を伐採する際のもう一つの作業手順について説明する。
本方法においても、図8(a)の様に、作業車両1を走行させて、伐採対象の樹木200の近くに移動させる。
そして図8(b)の様に、伐採用アタッチメント10の姿勢を下向きに傾斜させる。この状態で、ドリル状回転体22を回転し、作業車両1を前進させて、ドリル状回転体22を斜め方向に向かって地面に突き刺し、図9(c)の様に、樹木200の地下部分に孔をあける。
必要に応じて図9(d)の様に、樹木200の地下部に複数の孔を穿孔する。
【0029】
続いて図9(e)の様に、作業車両1で、樹木200を押し、樹木200を倒す。樹木200の幹の地下部には、多数の孔が穿孔されており、幹は相当に傷ついているので、樹木200は、地下の部分から折れることとなる。そのため、地上に切り株が残りにくい。
この様に本実施形態の作業車両1によると、切り株を残さずに樹木200を伐採することができる。
【0030】
以上説明した実施形態の伐採用アタッチメント10は、ドリル状回転体22を一本だけ有するものであるが、複数本のドリル状回転体を有していてもよい。
また上記した実施形態で、作業車両1自体を前進させてドリル状回転体22を送ったが、伐採用アタッチメント10自体にドリル状回転体22を前進させる送り機構を設けてもよい。
【0031】
また伐採用アタッチメント10をアーム側に取り付けてもよい。
以上説明した実施形態では、ドリル状回転体22は、エンドミルと同様の構造を有するものであり、先端部と側面に切れ刃を有しているが、単に先端側だけに切れ刃を有するものであってもよい。
ドリル状回転体22を駆動する機構は任意であり、ベルトや歯車によってドリル状回転体22に動力伝動するものであってもよい。またモータ30にドリル状回転体22が直結されていてもよい。
モータは、油圧モータであってもよい。
【0032】
以上説明した伐採用アタッチメント10は、排土板21を有し、当該排土板21に、ドリル状回転体22等を取り付けたものであり、作業車両1は、油圧ショベル100の既設の排土板102を取り外し、伐採用アタッチメント10に付け替えたものである。
しかしながら本発明はこの構成に限定されるものではなく、ドリル状回転体22及び当該ドリル状回転体22を駆動する駆動機構23を一体化してアタッチメントとし、これを既設の排土板102に取り付けてもよい。
また既設の排土板102に、ドリル状回転体22等を取り付けて作業車両1を完成させてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 作業車両
2 車両部
10 伐採用アタッチメント
21 排土板
22 ドリル状回転体
23 駆動機構
30 モータ
31 蓄電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10