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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】歯科用被切削体
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/70 20170101AFI20240509BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A61C5/70
A61C13/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019218792
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021087559
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】514107794
【氏名又は名称】株式会社DentalBank
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】松本 光治
(72)【発明者】
【氏名】森 和浩
(72)【発明者】
【氏名】松本 聖武
(72)【発明者】
【氏名】藤原 弘明
(72)【発明者】
【氏名】木場 慎
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-047017(JP,A)
【文献】国際公開第2016/148287(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0377718(US,A1)
【文献】特開2010-022610(JP,A)
【文献】特表2006-521842(JP,A)
【文献】特開2000-070289(JP,A)
【文献】特開2019-072227(JP,A)
【文献】特開2018-015365(JP,A)
【文献】特開2018-050897(JP,A)
【文献】特表2017-538472(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0317258(US,A1)
【文献】国際公開第2013/122662(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/70
A61C 13/003
A61C 13/00
B23Q 3/18
B23Q 17/00
G05B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切削面から歯科補綴物が切り出される被切削部を有する歯科用被切削体において、
前記被切削面の少なくとも周縁領域の一部または全部に形成された目印であり、CAD/CAM加工装置に取り付けるために装着されるアダプタへの位置決め用の目印として前記被切削部の厚みを示す数値が表示され、かつ前記目印は、前記被切削面全体に形成された格子状の模様を含む歯科用被切削体。
【請求項2】
被切削面から歯科補綴物が切り出される被切削部を有する歯科用被切削体において、
前記被切削面の少なくとも周縁領域の一部または全部に形成された目印であり、CAD/CAM加工装置に取り付けるために装着されるアダプタへの位置決め用の目印として前記被切削部の厚みを示す数値が表示され、かつ前記目印は、前記被切削部の中央を中心とした放射状の仮想線に沿って形成された直線を含む歯科用被切削体。
【請求項3】
前記目印は、前記被切削面の中心から所定の半径方向を基準として円周方向に沿って形成された円周方向の角度を示す度数を含む請求項1または2に記載の歯科用被切削体。
【請求項4】
前記目印は、前記被切削部の材質を識別するための表記を含む請求項1からのいずれかの項に記載の歯科用被切削体。
【請求項5】
前記目印は、前記被切削部の色調を識別するための表記を含む請求項1からのいずれかの項に記載の歯科用被切削体。
【請求項6】
前記目印は、印刷、刻印、突起、またはこれらの組み合わせにより形成された請求項1からのいずれかの項に記載の歯科用被切削体。
【請求項7】
前記目印は、前記被切削部の側周面にも形成された請求項1からのいずれかの項に記載の歯科用被切削体。
【請求項8】
前記被切削部の側周面には、歯科補綴物を削り出すときに切削された前記被切削面における切削領域を示すデータが格納される半導体チップが取り付けられた請求項1からのいずれかの項に記載の歯科用被切削体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダプタに保持させた状態でCAD/CAM加工装置に取り付けられ、歯科用補綴物が削り出される歯科用被切削体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科用被切削体は、例えば、歯科用ディスクと称されたり、ミルブランクと称されたりして、一般的には円盤状に形成されている。歯科用被切削体は、CAD/CAM加工装置により切削されることで、歯冠補綴物やブリッジ、バーなどの歯科用補綴物が削り出される。
【0003】
歯科用被切削体は、アダプタに保持させた状態で、CAD/CAM加工装置に取り付けて歯科用補綴物を加工した際に、一部分だけが使用されることで、まだ歯科用補綴物を切り出す余地が残ることがある。このとき、他の材質の歯科補綴物が要望された場合、一旦、切り出す余地がある歯科用被切削体(以下、未済被切削体と称す。)がアダプタから取り外されて保管される。そして、要望に応じて他の材質の歯科用被切削体をCAD/CAM加工装置に装着して歯科補綴物を加工した後、再び、未済被切削体にアダプタを装着して、CAD/CAM加工装置に取り付けて、加工される。
【0004】
このように、未済被切削体と他の材質の歯科用被切削体とを交互に交換しながら切削加工する際に、アダプタに対する装着位置が、気を付けていても、元の位置から、ずれるときがある。そうなると、CAD/CAM加工装置は設定された座標データ通りに加工するために、既に歯科補綴物を切り出した場所を再度加工しようとするおそれがある。
このような歯科用被切削体について、アダプタに装着する際に容易に位置合わせすることが可能なものが、特許文献1に記載されている。
【0005】
特許文献1に記載の歯科補綴用セラミックス体は、歯科補綴用セラミックス体は円形の平面形状で円盤状の外形形状に成形され、50mm以上の直径を有し、平面方向から見た時に片面上の中心を除く箇所に、外形形状の方向を示す印が設けられている。円形部の周縁に沿って凸部が形成されたものであるときには、凸部を周縁方向で途切れさせる凹部を外形形状の方向を示す印とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-47017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この特許文献1に記載の歯科補綴用セラミックス体(従来の歯科用被切削体)では、位置を示す印が、周囲面に形成された凹部であるため、CAD/CAM加工装置に取り付けるためのアダプタで周囲面全体を保持させると、周囲面に形成された凸部はアダプタにより隠れる。そのため、印は被切削面となる天面の周縁から窪む凹部がわずかに見えるだけとなる。
【0008】
従って、この従来の歯科用被切削体をアダプタに保持させた状態で、CAD/CAM加工装置に取り付けるときには、歯科補綴用セラミックス体をよく観察しなければ、印を見つけにくい。
そうなると、従来の歯科用被切削体をアダプタに保持させた状態で、CAD/CAM加工装置に取り付ける際に位置ずれすることが抑止できても、CAD/CAM加工装置に取り付けるに時間を要してしまう。
【0009】
そこで本発明は、簡単に位置合わせのための目印を認識可能とすることで、アダプタを付けたり外したりして断続的に切削加工したとしても正確に位置決めすることが可能な歯科用被切削体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、被切削面から歯科補綴物が切り出される被切削部を有する歯科用被切削体において、前記被切削面の少なくとも周縁領域の一部または全部に、CAD/CAM加工装置に取り付けるために装着されるアダプタへの位置決め用の目印が形成されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の歯科用被切削体によれば、被切削面の周縁領域の一部または全部に目印が形成されているため、被切削面に数多くの歯科補綴物が削り出されるときに、周縁領域からも歯科補綴物が削り出されても、周縁領域以外の領域を中心に歯科補綴物が削り出されるので、周縁領域のいずれかの箇所には目印が残る。従って、作業者が被切削面側から被切削部を見れば、目印を容易に視認することができる。
【0012】
前記目印を、格子状の模様に形成することができる。目印が格子状の模様であると、周縁領域に歯科補綴物が切り出されても、目印が残る確率が高くなる。従って、周縁領域全体にわたってぎりぎりまで、歯科補綴物を切り出しても、目印を目標に位置決めすることができる。
【0013】
前記目印を、前記被切削部の中央を中心とした放射状の仮想線に沿って形成された直線することもできる。目印を放射状に沿って形成することにより、歯科補綴物が切り出されても、目印が残る確率を高くすることもできる。
【0014】
前記目印は、前記被切削部の厚みを示す数値が、前記周縁領域を含む範囲に表示されたものとすることができる。位置合わせを容易とするだけでなく、アダプタを取り付けたままでも、被切削面側から見ただけで、被切削部の厚みを把握することができる。
【0015】
前記目印は、前記被切削面の中心から所定の半径方向を基準として、円周方向の角度を示す度数が円周方向に沿って形成されたものとすることができる。被切削面に、度数が形成されていることで、位置合わせを容易とするだけでなく、被切削面の中央を中心に回転しても、回転位置を容易に把握することができる。
【0016】
前記目印は、前記被切削部の材質を識別するための表記とすることができる。材質を識別するための表記が形成されていれば、作業者は、表記を見ただけで、材質を正確に把握することができる。
【0017】
前記目印は、前記被切削部の色調を識別するための表記とすることができる。色調を識別するための表記が形成されていれば、作業者は、表記を見ただけで、色調を正確に把握することができる。
【0018】
前記目印を、印刷、刻印、突起、またはこれらの組み合わせにより形成することができる。目印が印刷、刻印、突起、またはこれらの組み合わせにより形成されていることで容易に形成することができる。
【0019】
前記目印は、前記被切削部の側周面にも形成されたものとすることができる。目印が、被切削部の側周面にも形成されていると、被切削部の周縁領域における目印の位置を、側周面側からも視認することができるので、より正確に位置合わせをした状態でアダプタに取り付けることができる。
【0020】
前記被切削部の側周面には、歯科補綴物を削り出すときに切削された前記被切削面における切削領域を示すデータが格納される半導体チップが取り付けられたものとすることができる。半導体チップに切削領域を示すデータが格納されていることで、CAD/CAM加工装置から、すぐに切削領域を示すデータが読み出せるので、CAD/CAM加工装置にて、個々の切削データを取り違えや、前回の切削データの読み出しに時間を要したりすることが防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の歯科用被切削体は、周縁領域には、いずれかの箇所には目印が残り、作業者が被切削面側から見れば、目印を容易に視認することができるため、簡単に位置合わせのための目印を認識することを可能とすることで、アダプタを付けたり外したりして断続的に切削加工したとしても正確に位置決めすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態1に係る歯科用被切削体を示す斜視図である。
図2図1に示す歯科用被切削体の平面図である。
図3図1に示す歯科用被切削体から歯科補綴物を削り出した状態の斜視図である。
図4】本発明の実施の形態2に係る歯科用被切削体を示す平面図である。
図5】本発明の実施の形態3に係る歯科用被切削体を示す斜視図である。
図6】本発明の実施の形態4に係る歯科用被切削体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る歯科用被切削体を図面に基づいて説明する。
図1に示す歯科用被切削体10は、全体形状が円盤状に形成されている。歯科用被切削体10は、金、金合金、銀、銀合金、ジルコニア、コバルト-クロム合金、チタン、チタン合金、ハイブリッドレジン、セラミックス、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ワックスなどで形成されている。
【0024】
歯科用被切削体10は、歯科補綴物が切削される被切削部となる円盤部11を有している。円盤部11の側周面12には、側周面12全体にわたって出っ張る環状凸部13が形成されている。環状凸部13は、側周面12の幅W1(円盤部11の厚みT)より狭い幅W2に形成されている。
この円盤部11の側周面12と環状凸部13との段差である環状凹部14が、アダプタへの取付溝となる。
【0025】
円盤部11における円形状の一方の面(被切削面15)には、CAD/CAM加工装置に取り付けるために装着されるアダプタへの位置決め用の格子状の目印M11が天面STに形成されている。
本実施の形態1では、図2に示すように、目印M11が被切削面15の周縁領域S1(円形状の点線により外側の領域)の全体を含む被切削面15全体に形成されている。本実施の形態では、周縁領域S1は外周から1cm内側の領域としている。
目印M11は、被切削面15の外周上の一方の端部から他方の端部に延びた直線であり、約1cm間隔の平行な直線が直交した格子することで、被切削面15全体に形成されている。
【0026】
また、周縁領域S1には、目印M12として、円盤部11の厚みを示す数値Nが円周方向に沿って表示されている。
本実施の形態1に係る歯科用被切削体10では、数値N(円盤部11の厚み)が20mmであることを示しており、数値Nは、円周方向F1に沿って等間隔に配置されており、22.5度ごとに配置することで、16箇所に配置されている。
【0027】
この目印M11となる格子や目印M12となる数値Nは、印刷、刻印、突起、またはこれらの組み合わせとすることができる。
印刷は、転写や吹付、塗布などとすることができる。刻印はレーザ刻印、打刻などとすることができる。突起は周囲面の削り出しや、別体とした目印M11を被切削面15に接着することにより形成することができる。
【0028】
このような歯科用被切削体10から歯科補綴物を削り出すときには、図3に示すように、被切削面15における周縁領域S1以外の残余の領域である円形領域S2を中心に歯科補綴物Pが数多く削り出されるが、周縁領域S1からも歯科補綴物Pが削り出されることがある。しかし、周縁領域S1は切削から残る箇所が多くある。従って、周縁領域S1からも歯科補綴物Pが削り取られても、この周縁領域S1に目印M11,M12を形成することにより、いずれかの箇所で残った目印M11,M12を位置決めのための目印とすることができる。従って、作業者が被切削面15を見れば、目印M11,M12を容易に視認することができる。
【0029】
従って、未済歯科用被切削体となった歯科用被切削体10からアダプタ(図示せず)を取り外して、再び、このアダプタを取り付けるときに、周縁領域S1のいずれかの目印M11,M12を目標に、アダプタの特定の位置に合わせることで、歯科用被切削体10とアダプタとを、正確に位置決めすることができる。また、歯科用被切削体10は、位置合わせだけでなく、被切削面15である天面STの片面のみに目印が形成されていることで、切削後に歯科補綴物P(図3参照)が歯科用被切削体10(円盤部11)から除去されても円盤部11の表裏の判別を容易に行うことができる。
よって、歯科用被切削体10は、簡単に位置合わせのための目印M11,M12を認識することを可能とすることで、アダプタを付けたり外したりして断続的に切削加工したとしても正確に位置決めすることが可能である。
【0030】
特に、本実施の形態1では、目印M11の格子が、周縁領域S1の全体だけでなく、被切削面15の全面に形成されているため、周縁領域S1まで切削部分が入り込んでも目印M11が残る確率を高くすることができる。切削から残った円形領域S2から周縁領域S1に続く目印M11は、より視認しやすく、切り出した歯科補綴物Pの位置から被切削面15における目印M11の位置関係を把握しやすい。従って、歯科用被切削体10の回転位置をより正確に位置決めすることができる。
【0031】
また、目印M11が格子状であるため、歯科用被切削体10をアダプタに装着する際に、円盤部11(天面ST)の中央を中心として軸回転すれば、作業者が、初期位置にあった目印M11から傾斜したことを容易に視認することができるので、歯科用被切削体10の回転方向のずれを容易に修正することができる。
【0032】
目印M11,M12が印刷により形成されていれば、1回の印刷で目印M11,M12を形成することができる。
また、目印M11,M12が刻印により形成されていれば、被切削面15が他の物に擦れて消えてしまうことが防止できる。更に、目印M11,M12を突起により形成すれば、手で触れても目印M11,M12を認知することができる。
【0033】
従来の歯科用被切削体には、円盤部の側周面に、円盤部の厚みが表記されていることがある。しかし、アダプタを取り付けると、円盤部の側周面は隠れて見えなくなるため、作業者が円盤部の厚みを確認するためには、複数の止めねじを外してアダプタを取り外すか、ノギスなどで、円盤部の厚みを測定するしかない。
本実施の形態1に係る歯科用被切削体10では、周縁領域S1に、円盤部11の厚みTを示す数値が、円周方向F1(図2参照)に沿って表示されているため、アダプタを取り付けたままでも、被切削面15側から見ただけで、円盤部11の厚みT(図1参照)を把握することができる。
【0034】
なお、本実施の形態1では、目印M11,M12が円盤部11の天面STのみに形成されているが、底面SBのみに形成されていても、歯科用被切削体10の表裏の判別を容易に行うことができる。
また、表裏の判別が容易ではなくなるが、目印M11,M12を天面STおよび底面SBの両方に形成していてもよい。
更に、目印M11,M12は、周縁領域S1の全部に形成されていたが、天面ST側から視認でき、アダプタへの位置合わせができれば、周縁領域S1の一部でもよい。
【0035】
以上、本実施の形態1に係る歯科用被切削体を説明した。本実施の形態1に係る歯科用被切削体では、目印M11として格子模様と、目印M12として円盤部11の厚みを示す数値Nとの両方が表示されていたが、いずれか一方でもよい。また、目印M12として数値Nを表示するときには、円周方向F1(図2参照)に沿って表示されているが、天面STの全面に縦列および横列に表示するようにしてもよい。目印M12として数値Nの向きを同じ方向にして縦列および横列に天面STの全面に表示した場合には、円盤部11が中央を中心として軸回転しても容易に把握することができる。
【0036】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る歯科用被切削体を図面に基づいて説明する。なお、図4においては、図2と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図4に示す歯科用被切削体100は、円盤部11の天面STにおける周縁領域S1に被切削面15の中心Oを中心とした放射状の仮想線Lに沿って目印M21が直線により形成されている。
本実施の形態2では、目印M21は、外周から周縁領域S1を抜け、円形領域S2に入るまで延びる直線が、30度ごとに円周方向F1に沿って等間隔に形成されている。
また、円盤部11には、目印M22として、円盤部11の中心Oから所定の半径方向を基準として、円周方向の角度を示す度数Aが円周方向に沿って形成されている。
更に、周縁領域S1には、実施の形態1と同様に、目印M12として、円盤部11の厚みを示す数値Nが円周方向に沿って表示されている。
【0037】
このように、目印M21が放射状に形成されており、また、目印M22として角度を示す度数Aが円周方向に沿って形成されているため、歯科補綴物が切り出されても、実施の形態1と同様に、目印M21,M22が残る確率を高くすることもできる。
また、度数Aが形成されていることで、天面STの中央を中心に回転しても、回転位置を容易に把握することができる。
【0038】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る歯科用被切削体を図面に基づいて説明する。なお、図5においては、図1から図4と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図5に示す本実施の形態3に係る歯科用被切削体110は、円盤部11の側周面12と環状凸部13には目印M31が形成されたものである。また、歯科用被切削体110の被切削面15の周縁領域S1には、被切削部である円盤部11の材質を識別するための表記と、円盤部11の色調を識別するための表記とが、目印M32,M33として形成されている。
【0039】
側周面12と環状凸部13とに、目印M31が形成されているため、被切削面15の目印M11と側周面12および環状凸部13の目印M31とにより、歯科用被切削体110を、より正確な位置合わせをした状態でアダプタに取り付けることができる。
この目印M31は、被切削面15に形成された格子状の目印M11が円盤部11の外周まで到達した位置から目印M11を延長するように、目印11から連続して、側周面12と環状凸部13との側周面12に形成されている。
そうすることで、円盤部11の周縁領域S1における目印M11の位置を、側周面12側からも視認することができる。
【0040】
また、被切削面15に、円盤部11の材質を識別するための表記が目印M32として、「PMMA」が形成されているため、作業者が歯科用被切削体110の被切削面15を見ただけで、円盤部11の位置合わせを容易とすることができると共に、円盤部11の材質を把握することができる。
更に、被切削面15に、円盤部11の色調を識別するための表記が目印M33として、VITA社製のシェードガイドにおけるクラシカルにて用いられる色調番号「A1」が形成されているため、作業者が歯科用被切削体110の被切削面15を見ただけで、円盤部11の位置合わせを容易とすることができると共に、円盤部11の色調を把握することができる。
【0041】
なお、本実施の形態3では、被切削面15に、格子模様(目印M11)と円盤部11の材質(目印M32)と色調(目印M33)とが形成されていたが、いずれか一つでもよい。
また、円盤部11の材質を識別するための表記として、樹脂の略称としとする以外に、材質を示す化学記号としたり、材質の日本語表記、材質ごとに割り当てた英文字や記号としたりしてもよい。
更に、円盤部11の色調を識別するための表記として、VITA社製のシェードガイドクラシカルにて用いられた色調番号とする以外に、3Dマスターにて用いられる色調番号とすることができ、他のシェードガイドで用いられる色調番号とすることも可能である。また、独自の色調番号とすることができる。
【0042】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る歯科用被切削体を図面に基づいて説明する。なお、図6においては、図1から図5と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図6に示す歯科用被切削体120における円盤部11(被切削部)の側周面12(環状凸部13)に、読み書き可能な半導体チップCが取り付けられたものである。
【0043】
半導体チップCは、歯科用被切削体120が、無線信号が透過しない金属製であれば、外部から読み取り可能なように一方の面が露出している。歯科用被切削体120が、非金属製であれば、半導体チップCを埋設することも可能である。
【0044】
半導体チップCには、歯科用被切削体120の形状に関する情報、例えば、材質や厚み、歯科用被切削体120を特定するための、英文字や数字で表した型式名などが格納されている。また、半導体チップCには、歯科補綴物Pを削り出すときに切削された被切削面15における切削領域Rを示すデータ(座標データ)が格納される。
切削領域を示すデータとは、被切削面15からそれぞれの歯科補綴物Pを削り出すために、歯科補綴物Pの周囲まで切削されるが、このときの切削された周囲範囲の輪郭を示すデータである。
【0045】
図示しないCAD/CAM加工装置のアダプタに半導体チップCの読み取りセンサが取り付けられており、半導体チップCから切削領域Rを示すデータが読み取られる。
CAD/CAM加工装置では、被切削面15の切削領域Rを把握することができる。従って、CAD/CAM加工装置では、個々の歯科用被切削体120について、前回の切削で、どこまで切削したかを呼び出すことなく、半導体チップCから読み込むことができる。そのため、他の歯科用被切削体120に関する切削データと取り違えてしまうことを防止することができ、素早く前回の切削の状態をCAD/CAM加工装置の表示画面に表示させることができる。
【0046】
なお、実施の形態1,3,4では、目印M11(図1,5,6参照)が格子状の模様に、実施の形態2では図4に示す目印M21が部分的な放射状に形成されていたが、目印は、周縁領域S1に円周方向F1に沿って形成された、長さを表す目盛りとしてもよい。
本実施の形態1~4に係る歯科用被切削体10,100,110,120は、円盤状に形成されているが、矩形状でも多角形状でもよい。
また、図4に示す実施の形態2に係る歯科用被切削体100における円周方向の角度を示す度数Aを、実施の形態1に係る歯科用被切削体10や、実施の形態3~4(図5~6参照)の被切削面15に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、アダプタに保持させた状態でCAD/CAM加工装置に取り付けて、歯科補綴物を削り出す歯科用被切削体に好適である。
【符号の説明】
【0048】
10,100,110,120 歯科用被切削体
11 円盤部
12 側周面
13 環状凸部
14 環状凹部
15 被切削面
S1 周縁領域
S2 円形領域
M11,M12,M21,M22,M31,M32,M33 目印
N 数値
A 度数
F1 円周方向
ST 天面
SB 底面
W1,W2 幅
T 厚み
L 仮想線
O 中心
P 歯科補綴物
C 半導体チップ
R 切削領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6