(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】マイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路、及びそれを用いたマイクロ波加熱装置
(51)【国際特許分類】
H03H 7/38 20060101AFI20240509BHJP
H03F 3/60 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
H03H7/38 Z
H03F3/60
(21)【出願番号】P 2019221196
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】石崎 俊雄
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05432482(US,A)
【文献】国際公開第2019/103134(WO,A1)
【文献】特開2001-077602(JP,A)
【文献】特開2004-266624(JP,A)
【文献】特許第6157036(JP,B2)
【文献】特開2007-266005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P1/20-1/219
7/00-7/10
H03F3/46-3/48
3/54-3/60
3/66
7/00-7/06
H03H1/00-3/00
5/00-7/13
7/30-7/54
H04B1/38-1/58
H05B6/46
6/52-6/64
6/70-6/80
H05H1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路
を有する回路であって、
前記インピーダンス整合回路は、
前記マイクロ波増幅回路の出力が入力される第1端子と負荷に接続される第2端子を有し、
前記第1端子が一端となり前記第2端子が他端となる伝送線路と、
複数個の共振器と、
を具備し、
前記各々の共振器の共振周波数は、前記周波数掃引が行われる前記所定の周波数範囲内において互いに異なるように設定され、
前記複数個の共振器は、前記伝送線路に互いに間隔をあけて接続されて
おり、
前記マイクロ波増幅回路は、
周波数が可変で所定の周波数範囲で周波数掃引が可能な信号源を有し、
前記周波数掃引が行われると、前記負荷の負荷インピーダンスに対して前記第1端子における反射波が抽出されてモニターされ該反射波が最も少ない状態を示した周波数に前記信号源が設定され得ることを特徴とする
マイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路
を有する回路。
【請求項2】
請求項1に記載の
マイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路
を有する回路において、
前記インピーダンス整合回路は、前記複数個の共振器の共振周波数において通過阻止となるフィルタ特性を有することを特徴とする
マイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路
を有する回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の
マイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路
を有する回路において、
前記複数個の共振器はそれぞれ、前記伝送線路に互いに間隔をあけて接続されており、容量とインダクタが直列接続されて前記共振周波数で共振することを特徴とする
マイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路
を有する回路。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の
マイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路
を有する回路において、
前記複数個の共振器はそれぞれ、前記伝送線路に互いに間隔をあけて接続されており、容量と分布定数線路共振器が直列接続されて前記共振周波数で共振することを特徴とする
マイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路
を有する回路。
【請求項5】
請求項4に記載の
マイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路
を有する回路において、
前記分布定数線路共振器は4分の1波長型セラミック同軸共振器であることを特徴とする
マイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路
を有する回路。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の
マイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路
を有する回路を用いたマイクロ波加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波領域の高周波領域において周波数を掃引することでインピーダンス整合を行うマイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路、及びそれを用いたマイクロ波加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波の周波数領域で動作するマイクロ波増幅回路は、マイクロ波加熱装置(例えば、電子レンジなどのマイクロ波調理装置やマイクロ波鉗子などのマイクロ波手術装置等)など様々な装置に用いられている。このようなマイクロ波増幅回路を始めとする高周波回路では、電力を効率良く負荷に伝送するためにそれが有するインピーダンス(負荷インピーダンス)に対して、インピーダンス整合回路を用いてインピーダンス整合を行うことが必要である。しかしながら、負荷によっては動作時に負荷インピーダンスが変化してしまうものが多々あり、インピーダンス整合回路のインピーダンスを特定の値に固定できない場合も少なくない。その場合、多くは、インピーダンス整合回路の中でバラクタダイオードを使用し、整合しているかどうかをモニターしながらバラクタダイオードの可変容量値を変化させることによってインピーダンス整合を行う方法が採られているが、バラクタダイオードを使用した回路は損失が大きく、また、耐電力を大きくするのが容易ではない。
【0003】
一方、その他のインピーダンス整合を行う方法として、周波数に応じてインピーダンスが変化するインピーダンス整合回路を用いて、マイクロ波加熱装置などの装置で使用可能な範囲内(例えば、2.4GHzから2.5GHzまでの100MHzの帯域幅)で周波数を変化させ最適な周波数を選択することによってインピーダンス整合を行う方法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、高周波加熱装置において、インピーダンス整合回路としてインピーダンス検出部とインピーダンス調整部を備え、それらで加熱室への給電部分のインピーダンスを検出して固体化発振部の発振周波数を制御するものが開示されている。ここで、整合すべき負荷インピーダンスは、加熱室と非加熱物が合体された負荷のインピーダンスと考えられる。また、非特許文献1には、インピーダンス整合回路として第1伝送線路部材と第2伝送線路部材を備え、第2伝送線路部材に長い線路の同軸ケーブルを用いたものが開示されている。このインピーダンス整合回路は、2.4GHzから2.5GHzまで周波数を掃引すると、スミスチャートの原点を始点とする渦巻き状のインピーダンス軌跡を描いてスミスチャートの全面を満遍なくカバーすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】鈴木麻子、外5名、“スミスチャート上に渦巻軌跡を描く周波数掃引インピーダンス整合回路”、信学技報、一般社団法人電子情報通信学会、2019年、第118巻、第506号、MW2018-164、p.43-48
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示のインピーダンス整合回路は、詳細な開示がないために、整合すべき全領域(換言すれば、スミスチャートの全面)にわたってインピーダンス整合が可能かどうか不明であり、また、小型か大型かも不明である。また、非特許文献1に開示のインピーダンス整合回路は、第2伝送線路部材が長い線路であるため、かなり体積的に大きくなり、また、損失も大きくなり易い。
【0008】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、周波数を掃引するとインピーダンス軌跡を描いてスミスチャートの全面を満遍なくカバーすることができ、しかも、小型化や低損失化を図ることができるマイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のマイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路は、マイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路であって、前記インピーダンス整合回路は、前記マイクロ波増幅回路の出力が入力される第1端子と負荷に接続される第2端子を有し、前記第1端子が一端となり前記第2端子が他端となる伝送線路と、複数個の共振器と、を具備し、前記各々の共振器の共振周波数は、前記周波数掃引が行われる前記所定の周波数範囲内において互いに異なるように設定され、前記複数個の共振器は、前記伝送線路に互いに間隔をあけて接続されており、前記マイクロ波増幅回路は、周波数が可変で所定の周波数範囲で周波数掃引が可能な信号源を有し、前記周波数掃引が行われると、前記負荷の負荷インピーダンスに対して前記第1端子における反射波が抽出されてモニターされ該反射波が最も少ない状態を示した周波数に前記信号源が設定され得ることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載のマイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路は、請求項1に記載のマイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路において、前記インピーダンス整合回路は、前記複数個の共振器の共振周波数において通過阻止となるフィルタ特性を有することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載のマイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路は、請求項1又は2に記載のマイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路において、前記複数個の共振器はそれぞれ、前記伝送線路に互いに間隔をあけて接続されており、容量とインダクタが直列接続されて前記共振周波数で共振することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載のマイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路は、請求項1又は2に記載のマイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路において、前記複数個の共振器はそれぞれ、前記伝送線路に互いに間隔をあけて接続されており、容量と分布定数線路共振器が直列接続されて前記共振周波数で共振することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載のマイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路は、請求項4に記載のマイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路において、前記分布定数線路共振器は4分の1波長型セラミック同軸共振器であることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載のマイクロ波加熱装置は、請求項1~5のいずれか1項に記載のマイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路を用いたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマイクロ波増幅回路とインピーダンス整合回路を有する回路によれば、周波数を掃引するとインピーダンス軌跡を描いてスミスチャートの全面を満遍なくカバーすることができ、しかも、小型化や低損失化を図ることができる。本発明のマイクロ波加熱装置によれば、小型化や低損失化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るインピーダンス整合回路の概略平面図である。
【
図2】同上のインピーダンス整合回路の回路図である。
【
図3】同上のインピーダンス整合回路の他の回路図である。
【
図4】同上のインピーダンス整合回路の
図3の回路図の分布定数線路共振器を等価な集中定数で表した回路図である。
【
図5】同上のインピーダンス整合回路の
図3の回路図に対応する例示であって、(a)が平面図、(b)が(a)のA-Aで示す面で切断した断面図である。
【
図6】同上のインピーダンス整合回路の
図3に対応するシミュレーション用の回路図である。
【
図7】同上のインピーダンス整合回路の特性図である。
【
図8】同上のインピーダンス整合回路の特性をスミスチャート上に示した特性図であって、第1端子の反射特性である。
【
図9】同上のインピーダンス整合回路の特性をスミスチャート上に示した特性図であって、第2端子の反射特性である。
【
図10】同上のインピーダンス整合回路を用いたマイクロ波増幅回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係るインピーダンス整合回路1は、後に詳述するように接続された負荷のインピーダンスに対して周波数掃引によってインピーダンスが整合状態に設定されるものである。
【0018】
インピーダンス整合回路1は、
図1に示すように、伝送線路10と複数個(
図1では4個)の共振器11、12、13、14を具備している。複数個の共振器11、12、13、14は、互いに共振周波数が異なる。複数個の共振器11、12、13、14は、伝送線路10に互いに間隔をあけて接続されている。また、伝送線路10は、その一端が第1端子10a、他端が第2端子10bとなっている。伝送線路10は、直線状に延びている。
【0019】
インピーダンス整合回路1は、複数個の共振器11、12、13、14の共振周波数において通過阻止となるフィルタ特性を有するようにすることができる(後述する
図7のS12参照)。
【0020】
そのためには、
図2に示すように、複数個の共振器11、12、13、14はそれぞれ、直列接続された容量11aとインダクタ11b、直列接続された容量12aとインダクタ12b、直列接続された容量13aとインダクタ13b、直列接続された容量14aとインダクタ14b、とすることができる。直列接続された容量11aとインダクタ11b、直列接続された容量12aとインダクタ12b、直列接続された容量13aとインダクタ13b、直列接続された容量14aとインダクタ14bは、互いに異なる共振周波数で共振する。インダクタ11b、12b、13b、14bはそれぞれ、集中定数素子である。なお、
図2(及び後述する
図3等)において、伝送線路10は、分割して、伝送線路10
1、10
2、10
3、10
4、10
5で示している。
【0021】
或いは、
図3に示すように、共振器11、12、13、14をそれぞれ、直列接続された容量11aと分布定数線路共振器11c、直列接続された容量12aと分布定数線路共振器12c、直列接続された容量13aと分布定数線路共振器13c、直列接続された容量14aと分布定数線路共振器14c、とすることができる。直列接続された容量11aと分布定数線路共振器11c、直列接続された容量12aと分布定数線路共振器12c、直列接続された容量13aと分布定数線路共振器13c、直列接続された容量14aと分布定数線路共振器14cは、互いに異なる共振周波数で共振する。分布定数線路共振器11c、12c、13c、14cはそれぞれ、等価な集中定数で表すと、
図4に示すように、並列接続された容量成分11caとインダクタンス成分11cbの並列共振器、並列接続された容量成分12caとインダクタンス成分12cbの並列共振器、並列接続された容量成分13caとインダクタンス成分13cbの並列共振器、並列接続された容量成分14caとインダクタンス成分14cbの並列共振器、となる。従って、この場合、共振器11、12、13、14の共振周波数はそれぞれ、容量11aと容量成分11caで決まる容量値とインダクタンス成分11cbのインダクタンス値、容量12aと容量成分12caで決まる容量値とインダクタンス成分12cbのインダクタンス値、容量13aと容量成分13caで決まる容量値とインダクタンス成分13cbのインダクタンス値、容量14aと容量成分14caで決まる容量値とインダクタンス成分14cbのインダクタンス値、により決まってくる。
【0022】
分布定数線路共振器11c、12c、13c、14cは、物理的サイズなどを変えることで必要なインダクタンス値などを容易に得ることができる。従って、分布定数線路共振器11c、12c、13c、14cは、マイクロ波の周波数領域において、インダクタ11b、12b、13b、14bよりも良好な特性を得易い。
【0023】
分布定数線路共振器11c、12c、13c、14cは、セラミック同軸共振器を用いることができる。このセラミック同軸共振器は、通常、4分の1波長型セラミック同軸共振器であるが、その他のセラミック同軸共振器とすることも可能である。
【0024】
図5(a)、(b)は、
図3の回路図に対応するインピーダンス整合回路1の平面図と断面図の例示である。インピーダンス整合回路1は、プリント基板1aの一面においては、ストリップ線路の伝送線路10を形成し、チップ型の容量11a、12a、13a、14aと4分の1波長型セラミック同軸共振器の分布定数線路共振器11c、12c、13c、14cを実装している。また、プリント基板1aの他面においては、接地電極1bを全面に形成し、複数個のスルーホール1cを介してプリント基板1aの一面に配線している。4分の1波長型セラミック同軸共振器の分布定数線路共振器11cは、
図5(b)に示すように、軸方向に中空部が設けられたセラミック体11c
1の外周面には接地電極11c
2が形成され、セラミック体11c
1の中空部には電極棒11c
3が挿入されている。電極棒11c
3は、ジャンパー配線1dにより容量11aに接続されている。分布定数線路共振器12c、13c、14cも、分布定数線路共振器11cと同様である。
【0025】
次に、インピーダンス整合回路1のシミュレーション結果に基づいて、その特性について説明する。ここでのインピーダンス整合回路1は、
図3の回路図で示されるものであり、シミュレーションでは、
図6に示すように、インピーダンス整合回路1の第1端子10a及び第2端子10bにそれぞれ、50Ωの抵抗1A、1Bを接続している。分布定数線路共振器11c、12c、13c、14cは、4分の1波長型セラミック同軸共振器としている。
【0026】
4個の共振器11、12、13、14の共振周波数は、2.4GHzから2.5GHzまでの間で、互いに異なるように設定している。そのために、伝送線路10の特性インピーダンスは50Ωとし、分割した伝送線路101、102、103、104、105のそれぞれの電気長は、周波数2.45GHzで、90.00度、46.65度、42.15度、37.65度、90.00度としている。容量11a、12a、13a、14aはそれぞれ、0.092pF、0.074pF、0.076pF、0.082pFとしている。
【0027】
分布定数線路共振器11c、12c、13c、14cのそれぞれの電気長は、周波数2.45GHzで、86.42度、87.92度、89.05度、89.74度とし、特性インピーダンスは25Ωとしている。等価な集中定数で表すと、分布定数線路共振器11c、12c、13c、14cのそれぞれの容量成分11ca、12ca、13ca、14caは、2.094pF、2.059pF、2.008pF、1.958pFであり、インダクタンス成分11cb、12cb、13cb、14cbは、2.0nH、2.0nH、2.0nH、2.0nHである。
【0028】
図7において、破線で示されるS11とS22はそれぞれ、第1端子10aの反射特性、第2端子10bの反射特性を示すものであり、重なっている。
図7において、実線で示されるS12は第1端子10aから第2端子10bへの通過特性を示すものである。インピーダンス整合回路1は、
図7に示すように、4個の共振器11、12、13、14の共振周波数の近傍(約2.408GHz、約2.430GHz、約2.462GHz、約2.493GHz)で阻止域を持つ周波数特性になっている。
【0029】
このようなインピーダンス整合回路1は、2.4GHzから2.5GHzまで周波数を掃引すると、
図8及び
図9に示すように、共振器11、12、13、14の共振周波数ごとにスミスチャートの中心付近と外周付近の間で外周付近での位置を変えた円を共振器11、12、13、14の数だけ描くような軌跡となり、スミスチャートの全面を満遍なくカバーするようになる。なお、
図8及び
図9においては、2.4GHzのときを○で、2.5GHzのときを●で示している。
【0030】
従って、いずれかの周波数に設定することによって、第2端子10bに接続される負荷のインピーダンスに対して良好なインピーダンス整合を行うことができる。第1端子10aに負荷を接続した場合も同様である。また、インピーダンス整合の精度を高くするために、共振器11、12、13、14の数を多く(例えば、4個よりも多く)することで理想的なインピーダンス整合の値に近づけることができる。
【0031】
このように、インピーダンス整合回路1は、周波数を掃引するとインピーダンス軌跡を描いてスミスチャートの全面を満遍なくカバーすることができるので、第2端子10b(又は第1端子10a)に接続される負荷のインピーダンスに対して良好なインピーダンス整合を行うことができる。しかも、インピーダンス整合回路1は、非特許文献1に開示のインピーダンス整合回路のような長い線路を用いないので、小型化と低損失化を同時に実現することができる。また、共振器11、12、13、14の各々が、上記のように、4分の1波長型セラミック同軸共振器であると、更なる小型化と低損失化が可能である。
【0032】
以上説明したインピーダンス整合回路1は、
図10に示すようなマイクロ波増幅回路2に用いることができる。インピーダンス整合回路1は、マイクロ波増幅回路2の出力と負荷3との間に設けられる。
図10においては、インピーダンス整合回路1の第1端子10aがマイクロ波増幅回路2の出力に接続され、第2端子10bが負荷3に接続されている。マイクロ波増幅回路2がマイクロ波加熱装置に使用される場合、負荷3は、マイクロ波放射機構などと非加熱物が合体された負荷となる。
【0033】
マイクロ波増幅回路2は、信号源21、パワーアンプ22、反射波抽出器23、反射波検出回路24によって構成することができる。信号源21は、周波数が可変である。パワーアンプ22には、信号源21から信号が入力される。パワーアンプ22の出力には、反射波抽出器23を介して反射波検出回路24が接続されている。パワーアンプ22の出力が、マイクロ波増幅回路2の出力となる。
【0034】
反射波抽出器23は、インピーダンス整合回路1からの反射波(つまり、負荷3により反射される反射波)を抽出できるものであって、例えば、方向性結合器を用いることができる。反射波検出回路24は、反射波の電力に応じた直流電圧を出力する回路であって、市販のRFパワーディテクタを用いることができる。反射波検出回路24は、出力する直流電圧により、後述するように周波数掃引したときに、反射波が最も少ない状態(すなわち、インピーダンス整合回路のインピーダンスの整合状態)を示すことができる。
【0035】
マイクロ波増幅回路2では、信号源21の周波数を変化させることで、負荷3の負荷インピーダンスに対して周波数掃引(例えば、2.4GHzから2.5GHzまでの掃引)を行い、反射波検出回路24の出力がモニターされる。そして、反射波検出回路24の出力からインピーダンス整合回路のインピーダンスの整合状態を示した周波数に信号源21を設定することで、インピーダンス整合回路のインピーダンスが整合状態に設定される。
【0036】
以上、本発明の実施形態に係るインピーダンス整合回路、それを用いたマイクロ波増幅回路及びマイクロ波加熱装置について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載する事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、本発明の実施形態に係るインピーダンス整合回路は、マイクロ波増幅回路以外の高周波回路に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 インピーダンス整合回路
1a プリント基板
1b 接地電極
1c プリント基板のスルーホール
1d ジャンパー配線
1A、1B 抵抗
10 伝送線路
101、102、103、104、105 分割した伝送線路
10a 第1端子
10b 第2端子
11、12、13、14 共振器
11a、12a、13a、14a 容量
11b、12b、13b、14b インダクタ
11c、12c、13c、14c 分布定数線路共振器
11ca、12ca、13ca、14ca 分布定数線路共振器の容量成分
11cb、12cb、13cb、14cb 分布定数線路共振器のインダクタンス成分
11c1 分布定数線路共振器のセラミック体
11c2 分布定数線路共振器の接地電極
11c3 分布定数線路共振器の電極棒
2 マイクロ波増幅回路
21 信号源
22 パワーアンプ
23 反射波抽出器
24 反射波検出回路
3 負荷