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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ラス複合体
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/04 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
E04F13/04 109A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019235284
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102899
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-08-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591156113
【氏名又は名称】株式会社日総
(74)【代理人】
【識別番号】100095522
【弁理士】
【氏名又は名称】高良 尚志
(72)【発明者】
【氏名】伏木 剛志
(72)【発明者】
【氏名】大西 徹
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-214779(JP,A)
【文献】特開2008-240365(JP,A)
【文献】実開昭51-025825(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0247040(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、複数の裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされたラス複合体であって、
前記表力骨と裏力骨は、前記ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差し、
前記シート状防水材は、少なくとも前記複数の裏力骨がそれぞれ位置する所定位置毎に1又は2以上の接合用孔部を有し、
前記各裏力骨は、前記ラス材に沿った状態で、前記接合用孔部の位置において、前記ラス材により構成される面に対し平行状をなし、前記シート状防水材における前記接合用孔部を通じて前記ラス材の裏側及び前記表力骨の一方又は両方に接合され、
前記各表力骨は、前記ラス材により構成される面に対し平行状に当該ラス材に沿った状態で、前記ラス材の表側及び前記裏力骨の一方又は両方に接合され、
前記シート状防水材が前記ラス材と前記裏力骨の間に保持されていることを特徴とするラス複合体。
【請求項2】
上記表力骨が、上記シート状防水材における接合用孔部の位置において上記ラス材の表側及び上記裏力骨の一方又は両方に接合されている請求項1記載のラス複合体。
【請求項3】
上記シート状防水材は、少なくとも上記表力骨と裏力骨が交差する複数箇所の全部又は部分に対応する所定箇所にそれぞれ接合用孔部を有する請求項1又は2記載のラス複合体。
【請求項4】
上記各表力骨及び各裏力骨が、ラス材に接合されているか又はラス材に接合されている表力骨又は裏力骨に接合されている請求項1乃至3の何れか1項に記載のラス複合体。
【請求項5】
上記表力骨、ラス材及び裏力骨が金属製であり、前記表力骨とラス材の接合、前記裏力骨とラス材の接合、及び、前記表力骨と裏力骨の接合が、何れも溶接によるものである請求項1乃至4の何れか1項に記載のラス複合体。
【請求項6】
複数の表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、複数の裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされ、前記表力骨と裏力骨が、前記ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差したラス複合体を製造する方法であって、
前記複数の裏力骨上に、少なくとも前記表力骨と前記裏力骨が交差する複数箇所の全部又は部分に対応する所定箇所にそれぞれ接合用孔部を有するシート状防水材を、その所定箇所に前記各裏力骨が位置するように重ね、
そのシート状防水材上に前記ラス材を重ね、
そのラス材上に、前記シート状防水材における前記所定箇所に位置するように前記各表力骨を重ね、
前記各裏力骨を、前記ラス材に沿った状態で、前記接合用孔部の位置において、前記ラス材により構成される面に対し平行状をなすように、前記シート状防水材における前記接合用孔部を通じて前記ラス材の裏側及び前記表力骨の一方又は両方に接合させると共に、前記各表力骨を、前記ラス材により構成される面に対し平行状に当該ラス材に沿った状態で、前記接合用孔部の位置において前記ラス材の表側及び前記裏力骨の一方又は両方に接合させることにより、前記シート状防水材を前記ラス材と前記裏力骨の間に保持させることを特徴とするラス複合体の製造方法。
【請求項7】
複数の表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、複数の裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされ、前記表力骨と裏力骨が、前記ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差したラス複合体を製造する方法であって、
前記複数の表力骨上に前記ラス材を重ね、
そのラス材の裏側上に、少なくとも前記表力骨と前記裏力骨が交差する複数箇所の全部又は部分に対応する所定箇所にそれぞれ接合用孔部を有するシート状防水材を、その所定箇所に前記各表力骨が位置するように重ね、
そのシート状防水材上における前記所定箇所に位置するように前記各裏力骨を重ね、
前記各裏力骨を、前記ラス材に沿った状態で、前記接合用孔部の位置において、前記ラス材により構成される面に対し平行状をなすように、前記シート状防水材における前記接合用孔部を通じて前記ラス材の裏側及び前記表力骨の一方又は両方に接合させると共に、前記各表力骨を、前記ラス材により構成される面に対し平行状に当該ラス材に沿った状態で、前記接合用孔部の位置において前記ラス材の表側及び前記裏力骨の一方又は両方に接合させることにより、前記シート状防水材を前記ラス材と前記裏力骨の間に保持させることを特徴とするラス複合体の製造方法。
【請求項8】
複数の表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、複数の裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされ、前記表力骨と裏力骨が、前記ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差したラス複合体を製造する方法であって、
前記複数の表力骨上に前記ラス材を重ねた状態でラス材の表側に表力骨を前記ラス材により構成される面に対し平行状に当該ラス材に沿った状態で接合させ、
表力骨が接合したラス材の裏側上に、少なくとも裏力骨を位置させる所定位置毎に1又は2以上の接合用孔部を有するシート状防水材を重ねると共に、そのシート状防水材における前記所定位置上に裏力骨を重ね、
その裏力骨を、前記ラス材に沿った状態で、前記接合用孔部の位置において、前記ラス材により構成される面に対し平行状をなすように、前記ラス材の裏側上に重ねたシート状防水材における接合用孔部を通じて前記ラス材の裏側及び前記表力骨の一方又は両方に接合させることにより、前記シート状防水材を前記ラス材と前記裏力骨の間に保持させることを特徴とするラス複合体の製造方法。
【請求項9】
上記表力骨、ラス材及び裏力骨が金属製であり、前記表力骨とラス材の接合、前記裏力骨とラス材の接合、及び、前記表力骨と裏力骨の接合が、何れも溶接によるものである請求項6乃至8の何れか1項に記載のラス複合体の製造方法
【請求項10】
上記表力骨及び裏力骨の形状は、直線状であるか、又は、上記接合用孔部以外の箇所に上記ラス材側とは逆の側に突起する突起部を有するものである請求項1乃至5の何れか1項に記載のラス複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状防水材と力骨を備えたラス複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第4975498号公報には、ラス11と、ラス11の一の面11aに並列配置された第1の力骨12と、当該ラス11の他の面11bに、第1の力骨12に対して略直交する方向へ並列配置された第2の力骨13と、第2の力骨13と、ラス11との間に挿入される裏打ち用紙14と、裏打ち用紙14に対して、第2の力骨13を介して接着剤により貼り合わされる防水紙15とを備え、裏打ち用紙14は、第1の力骨12と略平行方向に延長された帯状で構成された複合ラスが示されている。
【0003】
同公報には、この複合ラスの発明について、「裏打ち用紙に接着剤を塗布し、これを防水紙と貼り合わせるのみで、これらを容易に一体化させることができ、いわゆる防水機能付きのラス材として構成することができる。このため、作業工程をより簡略化させることが可能となる。また、これと同時に、ラスに取り付けられる第1の力骨及び第2の力骨は防水紙が障壁になることが無く容易に固着させることができ、作業効率を向上させることができ、ひいては製造コストを削減することが可能となる。」と述べられている。
【0004】
しかしながら、この複合ラスの製造には、防水紙15の他に、裏打ち用紙14と接着剤が必要となり、その裏打ち用紙14を第2の力骨13とラス11との間に挿入し、更に、裏打ち用紙14に対して、第2の力骨13を介して接着剤により防水紙15を貼り合わせるという作業が必要となる
【0005】
一方、特許6285985号公報に示されているラス複合体は、表力骨F、ラス材L、シート状防水材W、裏力骨Bを、表側から裏側にこの順に重ね合わせ、表力骨Fと裏力骨Bは、シート状防水材W及びラス材Lを挟んで、それぞれラス材Lの表側及びシート状防水材Wの裏側に添設された状態で交差する。
【0006】
このラス複合体の場合、接着剤によりシート状防水材Wを貼り合わせる必要はないが、表力骨Fと裏力骨Bが交差する複数箇所の全部又は部分である所定箇所において、ラス材L及びシート状防水材Wに円形の切欠孔LC・WCが互いに重なるように形成されており、表力骨Fには表力骨突起部Fa設けられ、裏力骨Bには裏力骨突起部Baが設けられている。更に、表力骨突起部Faは、ラス材L及びシート状防水材Wに円形の切欠孔LC・WCを裏側へ貫通し、裏力骨突起部Baに交差して両者が溶接により接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許4975498号公報
【文献】特許6285985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、より効率的に得ることができる、シート状防水材と力骨を備えたラス複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のラス複合体は、例えば次のように表すことができる。
【0010】
(1) 複数の表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、複数の裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされたラス複合体であって、
前記表力骨と裏力骨は、前記ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差し、
前記シート状防水材は、少なくとも前記それぞれの裏力骨が位置する所定位置毎に1又は2以上の接合用孔部を有し、
前記各裏力骨は、前記シート状防水材における前記接合用孔部を通じて前記ラス材の裏側及び前記表力骨の一方又は両方に接合され、
前記各表力骨は、前記ラス材の表側及び前記裏力骨の一方又は両方に接合され、
前記シート状防水材が前記ラス材と前記裏力骨の間に保持されていることを特徴とするラス複合体。
【0011】
複数の表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、複数の裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされ、表力骨と裏力骨は、ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差する。
【0012】
各裏力骨は、シート状防水材における接合用孔部を通じてラス材の裏側及び表力骨の一方又は両方に接合され、各表力骨は、ラス材の表側及び裏力骨の一方又は両方に接合され、シート状防水材がラス材と裏力骨の間に保持される。
【0013】
(2) 上記表力骨が、上記シート状防水材における接合用孔部の位置において上記ラス材の表側及び上記裏力骨の一方又は両方に接合されている上記(1)記載のラス複合体。
【0014】
(3) 上記シート状防水材は、少なくとも上記表力骨と裏力骨が交差する複数箇所の全部又は部分に対応する所定箇所にそれぞれ接合用孔部を有する上記(1)又は(2)記載のラス複合体。
【0015】
(4) 上記各表力骨及び各裏力骨が、ラス材に接合されているか又はラス材に接合されている表力骨又は裏力骨に接合されている上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載のラス複合体。
【0016】
(5) 上記表力骨、ラス材及び裏力骨が金属製であり、前記表力骨とラス材の接合、前記裏力骨とラス材の接合、及び、前記表力骨と裏力骨の接合が、何れも溶接によるものである上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載のラス複合体。
【0017】
(6) 複数の表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、複数の裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされ、前記表力骨と裏力骨が、前記ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差したラス複合体を製造する方法であって、
前記複数の裏力骨上に、少なくとも前記表力骨と前記裏力骨が交差する複数箇所の全部又は部分に対応する所定箇所にそれぞれ接合用孔部を有するシート状防水材を、その所定箇所に前記各裏力骨が位置するように重ね、
そのシート状防水材上に前記ラス材を重ね、
そのラス材上に、前記シート状防水材における前記所定箇所に位置するように前記各表力骨を重ね、
前記各裏力骨を、前記シート状防水材における前記接合用孔部を通じて前記ラス材の裏側及び前記表力骨の一方又は両方に接合させると共に、前記各表力骨を、前記接合用孔部の位置において前記ラス材の表側及び前記裏力骨の一方又は両方に接合させることにより、前記シート状防水材を前記ラス材と前記裏力骨の間に保持させることを特徴とするラス複合体の製造方法。
【0018】
(7) 複数の表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、複数の裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされ、前記表力骨と裏力骨が、前記ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差したラス複合体を製造する方法であって、
前記複数の表力骨上に前記ラス材を重ね、
そのラス材の裏側上に、少なくとも前記表力骨と前記裏力骨が交差する複数箇所の全部又は部分に対応する所定箇所にそれぞれ接合用孔部を有するシート状防水材を、その所定箇所に前記各表力骨が位置するように重ね、
そのシート状防水材上における前記所定箇所に位置するように前記各裏力骨を重ね、
前記各裏力骨を、前記シート状防水材における前記接合用孔部を通じて前記ラス材の裏側及び前記表力骨の一方又は両方に接合させると共に、前記各表力骨を、前記接合用孔部の位置において前記ラス材の表側及び前記裏力骨の一方又は両方に接合させることにより、前記シート状防水材を前記ラス材と前記裏力骨の間に保持させることを特徴とするラス複合体の製造方法。
【0019】
(8) 複数の表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、複数の裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされ、前記表力骨と裏力骨が、前記ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差したラス複合体を製造する方法であって、
前記複数の表力骨上に前記ラス材を重ねた状態でラス材の表側に表力骨を接合させ、
表力骨が接合したラス材の裏側上に、少なくとも裏力骨を位置させる所定位置毎に1又は2以上の接合用孔部を有するシート状防水材を重ねると共に、そのシート状防水材における前記所定位置上に裏力骨を重ね、
その裏力骨を、前記ラス材の裏側上に重ねたシート状防水材における接合用孔部を通じて前記ラス材の裏側及び前記表力骨の一方又は両方に接合させることにより、前記シート状防水材を前記ラス材と前記裏力骨の間に保持させることを特徴とするラス複合体の製造方法。
【0020】
(9) 上記表力骨、ラス材及び裏力骨が金属製であり、前記表力骨とラス材の接合、前記裏力骨とラス材の接合、及び、前記表力骨と裏力骨の接合が、何れも溶接によるものである上記(6)乃至(8)の何れか1項に記載のラス複合体の製造方法
【発明の効果】
【0021】
本発明のラス複合体においては、各裏力骨は、シート状防水材における接合用孔部を通じてラス材の裏側及び表力骨の一方又は両方に接合され、各表力骨は、ラス材の表側及び裏力骨の一方又は両方に接合され、シート状防水材がラス材と裏力骨の間に保持される。
【0022】
本発明の製造方法においては、本発明のラス複合体を効率的に製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ラス複合体の模式的な正面図である。
図2】ラスの模式的な正面図である。
図3】シート状防水材の正面図である。
図4】ラス複合体の模式的な要部拡大平面図である。
図5】ラス複合体の模式的な要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[1] 本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(1) 図1乃至図5は何れも本発明の実施の形態の一例としてのラス複合体に関するものである。
【0026】
このラス複合体Aは、6本の表力骨Fと、ラス材Lと、シート状防水材Wと、5本の裏力骨Bが、表側から裏側にこの順に重ね合わされ、表力骨Fと裏力骨Bが、ラス材L及びシート状防水材Wを挟んで、それぞれラス材Lの表側及びシート状防水材Wの裏側に添設された状態で交差したものであり、例えば基材としての木製パネルに固定されて使用される。
【0027】
(2) ラス材Lは、モルタル塗工の下地として用いられる菱形網目の縦長長方形状の平ラスである。
【0028】
(3) シート状防水材Wは、縦長長方形状のターポリン紙からなり、モルタル塗工壁におけるモルタル塗工体の裏側に配装されてモルタル塗工体からの水分浸透を防ぐためのものである。ラス材Lとシート状防水材Wは、ラス複合体Aを隣接配列する場合に備えて、縦横にそれぞれ重ね代に相当する分をずらして重ね合わされている。
【0029】
(4) 表力骨Fは 軸線方向が横方向であり、縦方向等間隔おきに6本が互いに平行状にラス材Lの表側に配されている。
【0030】
一方、裏力骨Bは軸線方向が縦方向であり、横方向等間隔おきに5本が互いに平行状にラス材Lの裏側にシート状防水材Wを挟んで配されている。
【0031】
表力骨F及び裏力骨Bは、ラス材Lである平ラスを構成する線状材よりも剛性及び強度の高い同一の鋼製線材からなり、全体として直線状であり、ラス材Lにより構成される面に対し平行状をなす。表力骨Fと裏力骨Bの交差角度は90度である。
【0032】
(5) シート状防水材Wには、表力骨Fと裏力骨Bが交差する30箇所全部である所定箇所(二次元的に均等状に分散した所定箇所)に、それぞれ同一大きさの円形の接合用孔部WHが形成されている。従って、裏力骨Bが位置する縦方向の5箇所の所定位置毎に、6箇所の接合用孔部WHを有する。
【0033】
(6) 各接合用孔部WH(所定箇所)の位置において(接合用孔部WHの内側に対応する位置において)、交差する裏力骨Bと表力骨Fが、シート状防水材Wにおける接合用孔部WH及びラス材Lの目を通じてスポット溶接されている。その交差する裏力骨Bと表力骨Fの間にラス材Lを構成する線状材が位置する場合は、スポット溶接により、裏力骨Bがラス材Lを構成する線状材の裏側に接合され、その線状材の表側に表力骨Fが接合されている。これにより、シート状防水材Wがラス材Lと裏力骨Bの間に保持されている。
【0034】
なお、例えば各表力骨F(又は各裏力骨B)のうち5箇所の接合用孔部WH同士の間の中間位置又は各接合用孔部WH内における裏力骨B(又は表力骨F)と交差していない部分を、ラス材Lを構成する線状材にスポット溶接して接合することもできる。
【0035】
[2] 本発明の実施の形態を、上記以外の形態を含めて更に説明する。
【0036】
本発明のラス複合体は、複数の表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、複数の裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされ、表力骨と裏力骨が、ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差したものである。
【0037】
(1) ラス材は、木製パネル等の基材に固定されてモルタル又はその他の塗工材の下地として用い得るものを好適に使用し得る。
【0038】
ラス材の例としては、平ラス、メタルラス、ワイヤラス、エキスパンドメタル、溶接金網、ひし形金網、きっ甲金網等を挙げることができるが、これらに限るものではない。
【0039】
(2) シート状防水材は、例えばモルタル等の塗工材を塗工してなる塗工体により形成されたモルタル塗工壁等における塗工体の裏側等に配装されて塗工体からの水分浸透を防ぐためのものであって、ラス材の裏側のほぼ全面に重ね合わされる。なお、ラス複合体を隣接配列する場合に備えて、ラス材とシート状防水材を重ね代に相当する分所定の向きにずらしておくこともできる。
【0040】
(2-1) シート状防水材は、少なくとも前記それぞれの裏力骨が位置する所定位置毎に1又は好ましくは2以上の接合用孔部を有する。
【0041】
例えば、縦方向等間隔に互いに平行に配された横方向の表力骨m(正の整数、例えば5)本と、横方向等間隔に互いに平行に配された縦方向の裏力骨n(正の整数、例えば4)本がm×n(20)箇所で直交している場合、m×nの交差箇所全部に接合用孔部を有するものとすることができるほか、m×nのうちの選択した交差箇所(好ましくは、できるだけ均等状に分散した箇所、例えば、縦横それぞれ等間隔となる交差箇所)のみに接合用孔部を有するものとすることもでき、n本の裏力骨が位置する縦方向のn箇所の所定位置のうち、それぞれ表力骨と交差するm箇所及び交差しない箇所に接合用孔部を有するものとすることや、裏力骨が位置する縦方向のn箇所の所定位置のうち表力骨と交差しない箇所にのみ接合用孔部を有するものとすることもできる。更に、表力骨が位置し裏力骨と交差しない箇所にも接合用孔部を有するものとすることもできる。
【0042】
(2-2) またシート状防水材は、少なくとも表力骨と裏力骨が交差する複数箇所の全部又は部分である所定箇所(例えば4以上の所定箇所、好ましくはラス材に対し二次元的[例えば縦横]に分散[できるだけ均等状に分散]した4以上の所定箇所)に接合用孔部を有するものとすることができる。
【0043】
例えば、縦方向等間隔に互いに平行に配された横方向の表力骨5本と、横方向等間隔に互いに平行に配された縦方向の裏力骨4本が20箇所で直交している場合、20の交差箇所全部を所定箇所とすることができるほか、20のうちの選択した交差箇所(好ましくは、できるだけ均等状に分散した箇所、例えば、縦横それぞれ等間隔となる交差箇所)のみを所定箇所とすることもできる。更に、交差箇所以外の裏力骨が位置する箇所又は表力骨が位置する箇所にも接合用孔部を有するものとすることもできる。
【0044】
(2-3) 接合用孔部は、例えば、円形、楕円形、方形、その他の多角形とすることができるが、これらに限るものではない。
【0045】
(2-4) シート状防水材の例としては、透湿防水紙、アスファルトフェルト、ターポリン紙、その他の防水シートを挙げることができるが、これらに限るものではない。
【0046】
(3) 表力骨及び裏力骨としては、ラス材を構成する線状材よりも剛性及び強度の高い線材、例えば鋼製線材を用いることができるが、これに限るものではない。
【0047】
表力骨及び裏力骨の形状は、直線状とすることができるが、これに限るものではなく、例えば、ラス材側とは逆の側に突起する突起部を(例えば、シート状防水材の接合用孔部以外の箇所に)有するものとすることもできる。
【0048】
表力骨及び裏力骨は、それぞれ複数本(好ましくは3本以上)が間隔おきに(好ましくは、それぞれ複数本の表力骨及び裏力骨がそれぞれ等間隔おきに)配置されることが望ましい。
【0049】
表力骨と裏力骨は、ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差している。表力骨と裏力骨の交差角度は、90度とすることが好ましいが、必ずしも90度に限定されるものではない。
【0050】
表力骨及び裏力骨は、ラス材により構成される面に対し平行状にそのラス材に添設されるものとすることができる。
【0051】
(4) 表力骨、裏力骨及びラス材の接合は、次のように行い得る。
【0052】
(4-1) 各裏力骨は、シート状防水材における接合用孔部を通じてラス材の裏側及び表力骨の一方に接合される(例えば、ラス材を構成する線状材の裏側のみ又はラス材の目を通じて表力骨のみに接合される)か、又は、両方に接合される(例えば、裏力骨がラス材を構成する線状材の裏側に接合され、その線状材の表側に表力骨が接合される)。
【0053】
各表力骨は、ラス材の表側及び裏力骨の一方に接合される(例えば、ラス材を構成する線状材の表側のみ又はラス材の目及び接合用孔部を通じて裏力骨のみに接合される)か、又は、両方に接合される(例えば、表力骨がラス材を構成する線状材の表側に接合され、その線状材の裏側に接合用孔部を通じて裏力骨が接合される)。表力骨がラス材を構成する線状材の表側のみに接合される場合としては、例えば、シート状防水材がラス材に重ねられる前に接合される場合と、シート状防水材がラス材に重ねられた後に接合される場合があり得、何れの場合も、シート状防水材における接合用孔部の位置において又はその他の位置において表力骨がラス材を構成する線状材の表側のみに接合されるものとすることができる。
【0054】
このように、表力骨、裏力骨及びラス材が、表力骨と裏力骨が互いに交差する位置においてラス材の目を通じて接合され、又は、表力骨若しくは裏力骨とラス材の目を形成する線状材が接合されることにより、シート状防水材がラス材と裏力骨の間に保持され、ラス複合体が構成される。
【0055】
なお、シート状防水材とラス材又は表力骨若しくは裏力骨を、更に、所要箇所においてホットメルト接着剤による接着等の接着手段やその他の手段により接合したものとすることもできる。
【0056】
(4-2) 表力骨及び裏力骨とラス材の固定及び表力骨、裏力骨及びラス材全体としての強度や剛性を高める上で、各表力骨及び各裏力骨は、ラス材に接合されているか又はラス材に接合されている表力骨又は裏力骨に接合されているものとすることができる。
【0057】
好ましくは、少なくとも全ての裏力骨とラス材又は全ての表力骨とラス材を、例えば各力骨における間隔おきに(できればなるべく等間隔毎に)又は他の力骨との交差箇所毎又は隣り合う交差箇所同士の中間位置毎に接合するものとすることができる。或いは、全ての力骨とラス材を、例えば各力骨における間隔おきに(できればなるべく等間隔毎に)又は他の力骨との交差箇所毎又は隣り合う交差箇所同士の中間位置毎に接合するものとすることができる。
【0058】
(4-3) 表力骨、ラス材及び裏力骨が金属製である場合、表力骨とラス材の接合、裏力骨とラス材の接合、及び、表力骨と裏力骨の接合は、何れも溶接(例えばスポット溶接)によるものとすることができる。シート状防水材が重ねられた状態での溶接による接合の場合、接合用孔部の位置において接合するものとすることができる。
【0059】
なお、表力骨、ラス材及び裏力骨の接合は、溶接以外の手段で行うこともできる。
【0060】
(5) 複数の表力骨と、ラス材と、シート状防水材と、複数の裏力骨が、表側から裏側にこの順に重ね合わされ、表力骨と裏力骨が、ラス材及びシート状防水材を挟んで、それぞれラス材の表側及びシート状防水材の裏側に添設された状態で交差したラス複合体を製造する方法としては、例えば次のような方法が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0061】
(5-1) 複数の裏力骨上に、少なくとも表力骨と裏力骨が交差する複数箇所の全部又は部分に対応する所定箇所にそれぞれ接合用孔部を有するシート状防水材を、その所定箇所に各裏力骨が位置するように重ね、そのシート状防水材上にラス材を重ね、そのラス材上に、シート状防水材における所定箇所に位置するように各表力骨を重ねるか、
或いは、
複数の表力骨上にラス材を重ね、そのラス材の裏側上に、少なくとも表力骨と裏力骨が交差する複数箇所の全部又は部分に対応する所定箇所にそれぞれ接合用孔部を有するシート状防水材を、その所定箇所に各表力骨が位置するように重ね、そのシート状防水材上における所定箇所に位置するように各裏力骨を重ね、
その上で、
各裏力骨を、シート状防水材における接合用孔部を通じてラス材の裏側及び表力骨の一方又は両方に接合させると共に、各表力骨を、接合用孔部の位置においてラス材の表側及び裏力骨の一方又は両方に接合させることにより、シート状防水材をラス材と裏力骨の間に保持させる。
【0062】
(5-2) 複数の表力骨上にラス材を重ねた状態でラス材の表側に表力骨を接合させ、
表力骨が接合したラス材の裏側上に、少なくとも裏力骨を位置させる所定位置毎に1又は2以上の接合用孔部を有するシート状防水材を重ねると共に、そのシート状防水材における所定位置上に裏力骨を重ね、
その裏力骨を、ラス材の裏側上に重ねたシート状防水材における接合用孔部を通じてラス材の裏側及び表力骨の一方又は両方に接合させることにより、シート状防水材をラス材と裏力骨の間に保持させる。
【符号の説明】
【0063】
A ラス複合体
B 裏力骨
F 表力骨
L ラス材
W シート状防水材
WH 接合用孔部
図1
図2
図3
図4
図5