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特許7485333締結装置及びそれを用いた締結体製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】締結装置及びそれを用いた締結体製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/03 20060101AFI20240509BHJP
   F16B 5/04 20060101ALI20240509BHJP
   F16B 4/00 20060101ALI20240509BHJP
   B30B 1/18 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B21D39/03 B
F16B5/04 B
F16B4/00 G
F16B4/00 M
B30B1/18 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020037707
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021137842
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】596112790
【氏名又は名称】三徳コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】原田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】原 守
(72)【発明者】
【氏名】喜多 和也
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0173869(US,A1)
【文献】特開2008-173688(JP,A)
【文献】特開2002-239677(JP,A)
【文献】特開2009-279616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0001392(US,A1)
【文献】特開2002-035864(JP,A)
【文献】特開2007-203307(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0272419(US,A1)
【文献】特開2008-290152(JP,A)
【文献】特開2016-013569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/03
F16B 5/04
F16B 4/00
B30B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ねられた第1及び第2金属板を締結するための締結装置であって、
アクチュエータと、
前記アクチュエータにより往復動されるパンチと、
前記パンチに対向して配置され、前記締結のために前記パンチとともに前記第1及び第2金属板が押し込み可能に設けられたダイと、
前記パンチにより前記第1及び第2金属板に加えられる荷重を測定する荷重測定器と、
前記アクチュエータを介して前記パンチの移動を制御するコントローラと
を備え、
前記コントローラは、前記締結のために前記ダイに向けて前記パンチを移動させるとき、前記荷重測定器により測定される荷重及び前記パンチの位置を監視して、前記荷重が増大し始める前記パンチの位置に応じて前記パンチのストローク量を決定
前記コントローラは、
前記荷重が増大し始める前記パンチの位置の区分毎に予め決定された複数のストローク量を記憶しており、
前記締結のために前記ダイに向けて前記パンチを移動させるとき、前記荷重が増大し始める前記パンチの位置の区分を判定し、判定された区分に対応するストローク量を使用する、
締結装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、サーボモータを含む、
請求項1記載の締結装置。
【請求項3】
互いに重ねられた第1及び第2金属板を締結した締結体を製造するための締結体製造方法であって、
請求項1又は請求項2に記載の締結装置を用いて前記第1及び第2金属板を締結することを含む、締結体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに重ねられた第1及び第2金属板を締結するための締結装置及びそれを用いた締結体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の締結装置としては、例えば下記の特許文献1等に示されている装置を挙げることができる。すなわち、従来装置は、互いに対向して配置されたパンチ及びダイを有している。パンチ及びダイの間には、第1及び第2金属板が互いに重ねられて配置される。パンチとともに第1及び第2金属板がダイに押し込まれることにより、第1及び第2金属板が締結される。
【0003】
締結強度は、第1及び第2金属板の圧下率と関係を有する。圧下率は、締結時にパンチ及びダイにより第1及び第2金属板をどの程度圧し潰したかを表す指標であり、締結前の第1及び第2金属板の合計板厚をTbとし、締結によって圧し潰された後の第1及び第2金属板の合計板厚をTaとしたとき、{(Tb-Ta)/Tb}×100[%]で表すことができる。圧下率は、パンチのストローク量(変位量)の設定を変更することにより調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-13569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来装置を用いた締結体の製造ラインでは、異なる板厚を有する種々の金属板が用いられることがある。すなわち、締結の対象となる第1及び第2金属板の合計板厚が変わることがある。
【0006】
締結強度を高くするため、第1及び第2金属板の合計板厚を事前に調査し、合計板厚が変わる度にその合計板厚に最適なストローク量を採用することが考えられる。しかしながら、このような場合には、合計板厚の事前調査及びストローク量の設定変更に時間を要するため、締結体の製造効率が低下してしまう。また、ストローク量の設定ミスも考えられる。一方、製造効率の低下を回避するため、想定されるどの合計板厚であっても所定の締結強度を確保できるように平均的なストローク量を採用することも考えられる。しかしながら、平均的なストローク量を採用した場合、合計板厚に応じた最適なストローク量を用いた場合と比較して、締結強度が低下してしまう虞がある。また、平均的なストロークを採用した際、合計板厚が適正板厚より薄い場合にはパンチ及びダイに意図を超えた応力が繰返し掛かることになり、パンチ及びダイの消耗が早まってしまう虞が生じる。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、締結体の製造効率の低下を回避しつつ、締結強度を向上できる締結装置及びそれを用いた締結体製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る締結装置は、互いに重ねられた第1及び第2金属板を締結するための締結装置であって、アクチュエータと、アクチュエータにより往復動されるパンチと、パンチに対向して配置され、締結のためにパンチとともに第1及び第2金属板が押し込み可能に設けられたダイと、パンチにより第1及び第2金属板に加えられる荷重を測定する荷重測定器と、アクチュエータを介してパンチの移動を制御するコントローラとを備え、コントローラは、締結のためにダイに向けてパンチを移動させるとき、荷重測定器により測定される荷重及びパンチの位置を監視して、荷重が増大し始めるパンチの位置に応じてパンチのストローク量を決定し、コントローラは、荷重が増大し始めるパンチの位置の区分毎に予め決定された複数のストローク量を記憶しており、締結のためにダイに向けてパンチを移動させるとき、荷重が増大し始めるパンチの位置の区分を判定し、判定された区分に対応するストローク量を使用する。
【0009】
本発明に係る締結体製造方法は、互いに重ねられた第1及び第2金属板を締結した締結体を製造するための締結体製造方法であって、上述の締結装置を用いて第1及び第2金属板を締結することを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の締結装置及びそれを用いた締結体製造方法によれば、コントローラは、締結のためにダイに向けてパンチを移動させるとき、荷重測定器により測定される荷重及びパンチの位置を監視して、荷重が増大し始めるパンチの位置に応じてパンチのストローク量を決定するので、締結体の製造効率の低下を回避しつつ、締結強度を向上できる。また、平均的なストロークを採用する場合と比較して、パンチ及びダイの消耗を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態による締結装置を示す説明図である。
図2図1のパンチ及びダイを示す一部断面の正面図である。
図3図2のパンチ及びダイにより締結された後の第1及び第2金属板の接合部分の断面図である。
図4図1の第1及び第2金属板の締結時に荷重測定器によって測定される荷重とパンチの位置との関係を示すグラフである。
図5図1のコントローラによる制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態による締結装置を示す説明図である。図1に示す締結装置は、互いに重ねられた第1及び第2金属板1,2を締結するための装置である。締結は、第1及び第2金属板1,2を互いに乾式接合することと理解できる。特に、本実施の形態の締結装置では、リベット等の副資材を用いずに第1及び第2金属板1,2を接合できる。本実施の形態の締結装置による接合をかしめ接合又はクリンチかしめ接合と呼ぶこともある。しかしながら、本発明はリベット等の副資材を使用した第1及び第2金属板1,2の締結においても応用できる。
【0014】
第1及び第2金属板1,2としては、種々の金属板を用いることができ、限定はされないが例えば鋼板、ステンレス鋼板、アルミ板若しくは銅板又はそれらに表面処理を施した物等を用いることができる。表面処理には、塗装及びめっきが含まれる。第1及び第2金属板1,2の板厚は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、第1及び第2金属板1,2として、異なる板厚を有する種々の金属板が使用され得る。用いられる金属板によって、第1及び第2金属板1,2の合計板厚が変わることもある。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態の締結装置は、アクチュエータ3、パンチ4、ダイ5、ダイベース6、荷重測定器7及びコントローラ8を含んでいる。
【0016】
アクチュエータ3は、パンチ4を往復動させるための機器である。本実施の形態のアクチュエータ3は、サーボモータ30、第1プーリ31、第2プーリ32、ボールネジ33、伝達部材34、ロッド35及びパンチベース36を有している。
【0017】
サーボモータ30は、コントローラ8の制御に応じて動作される。サーボモータ30の動力は交流電源及び直流電源のいずれでもよい。
【0018】
第1プーリ31は、サーボモータ30の回転軸に取り付けられており、その回転軸と一体に回転可能とされている。第2プーリ32は、ボールネジ33の一端に取り付けられており、そのボールネジ33と一体に回転可能に設けられている。伝達部材34は、第1及び第2プーリ31,32に巻き掛けられた部材であり、サーボモータ30の駆動力をボールネジ33に伝えることができる。本実施の形態の伝達部材34はベルトによって構成されている。しかしながら、例えばチェーン又は鋼索等の他の部材によって構成されてもよい。
【0019】
ボールネジ33は、他端側の外周面にネジ溝が設けられた長手状の部材である。本実施の形態では、ボールネジ33は、サーボモータ30の側方に配置されるとともに、サーボモータ30の回転軸と平行に延在されている。
【0020】
ロッド35は、内側に挿通空間を有する長手状の部材である。挿通空間はロッド35の一端において開口されており、ロッド35の一端から挿通空間内にボールネジ33が挿通されている。挿通空間の内周面には、ボールネジ33の外周面に設けられたネジ溝と螺合するロッド側ネジ溝が設けられている。
【0021】
パンチベース36は、ロッド35の先端に固定された部材である。パンチベース36の先端には、パンチ4が取り付けられている。
【0022】
サーボモータ30の駆動力によりボールネジ33が回転駆動されることにより、長手方向35aに沿ってロッド35及びパンチベース36が進退され得る。これらロッド35及びパンチベース36の進退により、パンチ4を往復動させることができる。
【0023】
アクチュエータ3がサーボモータ30を含むことにより、パンチ4の往復動の応答性を良くすることができる。しかしながら、アクチュエータ3の構成は任意であり、アクチュエータ3は例えば油圧シリンダ又は空気シリンダ等の他の構成を採ってもよい。
【0024】
パンチ4は、アクチュエータ3により往復動される部材である。ダイ5は、パンチ4に対向して配置されている。本実施の形態では、ダイ5は、パンチ4の下方に配置されている。ダイ5は、ダイベース6に取り付けられている。これらパンチ4及びダイ5の間に、締結の対象である第1及び第2金属板1,2が配置される。ダイ5は、締結のためにパンチ4とともに第1及び第2金属板1,2が押し込み可能に設けられている。パンチ4及びダイ5の構造については後に図を用いて説明する。
【0025】
荷重測定器7は、パンチ4により第1及び第2金属板1,2に加えられる荷重を測定するための機器である。荷重測定器7は、第1及び第2金属板1,2にパンチ4が押し当てられた際の反力を荷重として測定することができる。荷重測定器7の配置は任意である。
【0026】
コントローラ8は、アクチュエータ3を介してパンチ4の移動を制御するものであり、例えばプログラムに基づいて演算処理を行うコンピュータ又は専用回路等の機器により構成することができる。本実施の形態のコントローラ8は、サーボモータ30及び荷重測定器7に接続されており、締結のためにダイ5に向けてパンチ4を移動させるとき、荷重測定器7により測定される荷重及びパンチ4の位置を監視することができる。コントローラ8は、パンチ4の移動を制御しているため、パンチ4の位置を認識できる。また、コントローラ8は、エンコーダ等の位置測定器(図示せず)からの信号に基づいてパンチ4の位置を監視する。
【0027】
後に詳しく説明するように、本実施の形態のコントローラ8は、締結のためにダイ5に向けてパンチ4を移動させるとき、荷重測定器7により測定される荷重が増大し始めるパンチ4の位置に応じてパンチ4のストローク量を決定できる。ここでいうストローク量とは、パンチ4の基準位置から下死点までのパンチ4の変位量である。ストローク量を変更することは、パンチ4の下死点を変更することと理解することができる。
【0028】
次に、図2は、図1のパンチ4及びダイ5を示す一部断面の正面図である。図2に示すように、パンチ4には、基端部40、先端部41、中間部42及び緩衝部材43が設けられている。
【0029】
基端部40、先端部41及び中間部42は、一体に構成されている。基端部40は、図1のパンチベース36に装着される部分である。先端部41は、パンチ4の先端を構成する部分であり、円柱状に形成されている。先端部41は、第1及び第2金属板1,2に押し当てられるとともに、これら第1及び第2金属板1,2とともにダイ5に押し込められる。中間部42は、基端部40及び先端部41の中間に位置する部分である。中間部42には、先端部41の外径よりも大きな外径を有するフランジ部42aが設けられている。
【0030】
緩衝部材43は、先端部41を囲むように配置された円筒状の部材である。緩衝部材43の上面はフランジ部42aの下面に固着されている。緩衝部材43の下面43aは先端部41の下面41aよりも下方に位置されており、先端部41よりも先に緩衝部材43が第1及び第2金属板1,2に押し当てられる。緩衝部材43とダイ5とにより第1及び第2金属板1,2を挟み込むことにより、先端部41が第1及び第2金属板1,2に押し当てられる前に、第1及び第2金属板1,2を互いに密着させることができる。緩衝部材43とダイ5とにより第1及び第2金属板1,2を挟み込むことをプリクランプと呼ぶことがある。緩衝部材43は例えばゴム等の可撓性を有する素材により構成されている。緩衝部材43が第1及び第2金属板1,2に押し当てられた後にパンチ4がダイ5に向けてさらに変位されることにより、緩衝部材43が圧縮されるとともに、先端部41が第1及び第2金属板1,2に押し当てられる。
【0031】
ダイ5は、ケース50、アンビル51及び複数のブレード52を有している。
【0032】
ケース50には、基端部50a及び収容部50bが設けられている。基端部50aは、図1のダイベース6に装着される部分である。収容部50bは、基端部50aの上部に設けられた有底筒状の部分である。収容部50bの内側にアンビル51及びブレード52が収容されている。
【0033】
アンビル51は、円柱状の基部51aと、基部51aの上面から突出された円柱状の凸部51bとを有している。凸部51bの外径は基部51aの外径よりも小さくされており、収容部50bの内周面と凸部51bの外周面との間に空隙が形成されている。凸部51bの軸中心は、基部51aの軸中心と一致されていることが好ましい。
【0034】
複数のブレード52は、凸部51bの周方向に互いに間隔を置いて凸部51bの外周面と収容部50bの内周面との間に配置されている。各ブレード52は、図示しないバネ等の付勢手段により凸部51bの径方向内側に向かって付されており、付勢手段の付勢を超える外力が作用した際に凸部51bの径方向外側に向かって変位可能に構成されている。各ブレード52の上面は、アンビル51の凸部51bの上面よりも上方に設けられている。
【0035】
アンビル51の凸部51bの上面及び各ブレード52の内周面は、凹部53を形成している。緩衝部材43とブレード52の上面とにより第1及び第2金属板1,2が挟み込まれた後、パンチ4がダイ5に向けてさらに変位されたとき、パンチ4並びに第1及び第2金属板1,2が凹部53内に押し込まれる。凹部53内へのパンチ4並びに第1及び第2金属板1,2の押し込みが進むにつれて凸部51bの径方向外側に向かう外力が各ブレード52に作用し、その外力が付勢手段の付勢を超えた際に各ブレード52が凸部51bの径方向外側に向けて変位する。
【0036】
次に、図3は、図2のパンチ4及びダイ5により締結された後の第1及び第2金属板1,2の接合部分10の断面図である。パンチ4並びに第1及び第2金属板1,2が凹部53内に押し込まれることにより、図3に示す接合部分10が第1及び第2金属板1,2に形成される。
【0037】
接合部分10には、圧縮部100及びかしめ部101が形成されている。
【0038】
圧縮部100は、パンチ4の先端部41とアンビル51の凸部51bとにより第1及び第2金属板1,2が板厚方向に圧縮された部分である。圧縮部10aにおける第1及び第2金属板1,2の合計板厚(締結によって圧し潰された後の第1及び第2金属板1,2の合計板厚Ta)は、パンチ4の先端部41とアンビル51の凸部51bとにより圧縮されていない部分における第1及び第2金属板1,2の合計板厚(締結前の第1及び第2金属板1,2の合計板厚Tb)よりも薄くなっている。
【0039】
かしめ部101は、第1及び第2金属板1,2がかしめられた部分である。かしめ部101は、第1金属板1に形成された凸部101aと、第2金属板2に形成された凹部101bとを含んでいる。第1金属板1の凸部101aは、第2金属板2の凹部101bに嵌合されている。かしめ部101の凸部101a及び凹部101bは、圧縮部100が形成される際に、ダイ5の各ブレード52が径方向外方に向けて変位されることにより生じた空間を埋めるように第1及び第2金属板1,2を構成する金属が変形することで形成される。
【0040】
次に、図4は、図1の第1及び第2金属板1,2の締結時に荷重測定器7によって測定される荷重とパンチ4の位置との関係を示すグラフである。
【0041】
図4には、複数の曲線C1~C3が示されている。実線にて示す曲線C1は、第1及び第2金属板1,2として2.3mmの金属板をそれぞれ用いた場合の荷重とパンチ4の位置との関係を示している。パンチ4の位置は、基準位置からのパンチ4の移動量として理解することができる。一点鎖線にて示す曲線C2は、第1及び第2金属板1,2の一方として2.3mmの金属板を用い、他方として1.6mmの金属板を用いた場合の荷重とパンチ4の移動量との関係を示している。二点鎖線にて示す曲線C3は、第1及び第2金属板1,2として1.6mmの金属板をそれぞれ用いた場合の荷重とパンチ4の移動量との関係を示している。すなわち、曲線C1~C3は、第1及び第2金属板1,2の合計板厚が異なる場合の荷重とパンチ4の位置との関係を示している。
【0042】
まず、実線にて示す曲線C1に基づき、荷重測定器7によって測定される荷重とパンチ4の移動量との関係を説明する。
【0043】
第1及び第2金属板1,2の締結には、第1期間P1、第2期間P2及び第3期間P3が含まれる。第1期間P1は、パンチ4が基準位置からダイ5に向けて移動を開始した時からパンチ4の緩衝部材43が第1及び第2金属板1,2に接触するまでの期間である。第2期間P2は、緩衝部材43が第1及び第2金属板1,2に接触した時から第1及び第2金属板1,2がアンビル51の凸部51bの上面に接触するまでの期間である。第3期間P3は、第1及び第2金属板1,2がアンビル51の凸部51bの上面に接触した時からパンチ4が所定の下死点に到達するまでの期間である。
【0044】
曲線C1により表されているように、第1期間P1では、パンチ4の移動に拘わらず荷重測定器7によって測定される荷重の値に大きな変化は生じない。第2期間P2が始まった時、すなわちパンチ4の先端が第1及び第2金属板1,2に接触した時、荷重測定器7によって測定される荷重が急激に増大する。第2期間P2中、荷重が徐々に増大し、第3期間P3が始まった時、すなわち第1及び第2金属板1,2がアンビル51の凸部51bの上面に接触した時に、再び荷重が急激に増大する。荷重測定器7によって測定される荷重は、第1及び第2金属板1,2の締結の進展に応じて非連続に増大する。
【0045】
上述のように、曲線C1~C3は、第1及び第2金属板1,2の合計板厚が異なる場合の荷重とパンチ4の位置との関係を示している。曲線C1~C3を比較することで分かるように、第1及び第2金属板1,2の合計板厚が厚いほど第2期間P2が早く始まる。すなわち、第2期間P2が始まるパンチ4の位置に基づいて第1及び第2金属板1,2の合計板厚を判別することができる。
【0046】
第2期間P2が始まるパンチ4の位置は、荷重測定器7によって測定される荷重とパンチ4の位置とを監視することで検出することができる。すなわち、ダイ5に向けてのパンチ4の移動を開始した後、荷重測定器7によって測定される荷重の増大が始まるタイミングを検出した際、その時のパンチ4の位置を第2期間P2が始まるパンチ4の位置として扱うことができる。荷重の微分値が閾値を超えた時を、荷重の増大が始まるタイミングと扱うことができる。すなわち、荷重測定器7によって測定される荷重とパンチ4の位置とを監視することにより、第1及び第2金属板1,2の合計板厚を判別することができる。
【0047】
次に、図5は、図1のコントローラ8による制御動作を示すフローチャートである。図5に示すように、コントローラ8は、締結のためにダイ5に向けてパンチ4を移動させ始めた後(ステップS1)、荷重測定器7により測定される荷重及びパンチ4の位置を監視する(ステップS2)。コントローラ8は、荷重及び位置を監視しているとき、荷重の増大が始まるか否かを判定する(ステップS3)。コントローラ8は、荷重の微分値が閾値を超えた際に荷重の増大が始まったと判定することができる。荷重及び位置の監視は、荷重の増大が始まるまで実施される。
【0048】
コントローラ8は、荷重の増大が始まったと判定したとき、その時のパンチ4の位置に基づいて第1及び第2金属板1,2の合計板厚を判別する(ステップS4)。本実施の形態のコントローラ8は、荷重が増大し始めるパンチ4の位置の区分(範囲)と第1及び第2金属板1,2の合計板厚との対応関係に係る情報を予め有しており、荷重の増大が始まったと判定した時のパンチ4の位置がどの区分の位置であるかに基づいて、第1及び第2金属板1,2の合計板厚を判別する。
【0049】
コントローラ8は、第1及び第2金属板1,2の合計板厚を判別した後、パンチ4のストローク量を決定する(ステップS5)。
【0050】
ここで、締結(第1及び第2金属板1,2のかしめによる接合)の強度は、第1及び第2金属板1,2の圧下率と関係を有する。圧下率は、締結時にパンチ4及びダイ5により第1及び第2金属板1,2をどの程度圧し潰したかを表す指標であり、締結前の第1及び第2金属板1,2の合計板厚をTbとし、締結によって圧し潰された後の第1及び第2金属板1,2の合計板厚をTaとしたとき、{(Tb-Ta)/Tb}×100[%]で表すことができる。圧下率は、パンチ4のストローク量(変位量)の設定を変更することにより調整することができる。
【0051】
本実施の形態のコントローラ8は、荷重が増大し始めるパンチ4の位置の区分(すなわち第1及び第2金属板1,2の合計板厚)毎に、予め決定されたパンチ4のストローク量(締結強度を高めるとの観点から最適と考えられるストローク量)を記憶している。コントローラ8は、第1及び第2金属板1,2の合計板厚を判別した後、荷重が増大し始めるパンチ4の位置の区分を判定し、判定された区分に対応するストローク量を使用する。
【0052】
コントローラ8は、パンチ4のストローク量を決定した後、そのストローク量に対応する下死点にパンチ4が到達するか否かを判定する(ステップS6)。コントローラ8は、パンチ4が下死点に到達したと判定した場合、ダイ5から遠ざかるようにパンチ4の移動を反転させて(ステップS7)、第1及び第2金属板1,2の接合部分10からパンチ4を引き抜く。
【0053】
コントローラ8は、パンチ4が下死点に到達したと判定した後、今回の締結の合否を判定する(ステップS8)。コントローラ8は、適正に締結が行われた際の荷重測定器7によって測定される荷重とパンチ4の位置との関係を示す基準情報を有しており、今回の締結時に荷重測定器7によって測定される荷重及びパンチ4の位置と基準情報とを比較して合否を判定することができる。例えば、パンチ4の位置毎又は位置の区分毎に基準情報における荷重と実際に測定された荷重との差が所定範囲内であるとき今回の締結を合格と判定することができる。
【0054】
コントローラ8は、締結を特定する情報に関連づけて、その締結時に判別した合計板厚、その締結時に適用したストローク量及びその締結の合否を記憶するとともに、それらの少なくとも1つを図示しない表示装置に表示させることができる。
【0055】
本実施の形態の締結体を製造するための締結体製造方法は、上述の締結装置を用いて第1及び第2金属板1,2を締結することを含む。製造方法は、図5に示すコントローラ8の各工程を含むことができる。
【0056】
このような締結装置及びそれを用いた締結体製造方法では、コントローラ8は、締結のためにダイ5に向けてパンチ4を移動させるとき、荷重測定器7により測定される荷重及びパンチ4の位置を監視して、荷重が増大し始めるパンチ4の位置に応じてパンチ4のストローク量を決定するので、締結体の製造効率の低下を回避しつつ、締結強度を向上できる。また、平均的なストロークを採用する場合と比較して、パンチ4及びダイ5の消耗を抑えることができる。
【0057】
また、コントローラ8は、荷重が増大し始めるパンチ4の位置の区分毎に予め決定されたストローク量を記憶しており、締結のためにダイ5に向けてパンチ4を移動させるとき、荷重が増大し始めるパンチ4の位置の区分を判定し、判定された区分に対応するストローク量を使用するので、ストローク量の決定に要する演算負荷を低減でき、より確実に締結強度を向上できる。
【0058】
また、アクチュエータ3はサーボモータ30を含むので、パンチ4の往復動の応答性を良くすることができる。
【0059】
なお、実施の形態では、荷重が増大し始めるパンチ4の位置の区分からコントローラ8が第1及び第2金属板1,2の合計板厚を判別するように説明したが、コントローラ8は、荷重が増大し始めるパンチ4の位置と第1及び第2金属板1,2の合計板厚との関係を表す関係式から合計板厚を判別する(すなわち、パンチ4の位置に対して一対一の関係で第1及び第2金属板1,2の合計板厚を算出する)等の他の方法を採ってもよい。
【0060】
また、実施の形態では、荷重が増大し始めるパンチ4の位置の区分からコントローラ8が使用するストローク量を決定するように説明したが、コントローラ8は、荷重が増大し始めるパンチ4の位置と使用すべきストローク量との関係を表す関係式からストローク量を決定する(すなわち、パンチ4の位置に対して一対一の関係でストローク量を決定する)等の他の方法を採ってもよい。
【0061】
また、実施の形態では、第1及び第2金属板1,2を締結するように説明したが、3枚以上の金属板を締結してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 第1金属板
2 第2金属板
3 アクチュエータ
30 サーボモータ
4 パンチ
5 ダイ
7 荷重測定器
8 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5