(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】水栓装置および水栓装置の組立方法
(51)【国際特許分類】
E03C 1/044 20060101AFI20240509BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
E03C1/044
F16K27/00 C
(21)【出願番号】P 2020044083
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592243553
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】村田 剛
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0266993(US,A1)
【文献】特開2019-112895(JP,A)
【文献】特開2018-053454(JP,A)
【文献】特開2020-007850(JP,A)
【文献】特開2016-191253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/044
F16K 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの供給管と、
前記供給管から
供給される液体についての流通・遮断状態および前記供給管が複数ある場合に夫々の供給管から供給される前記液体の混合状態を切り換えるバルブ部と、
前記バルブ部の下流に前記液体を吐出する吐出管と、
前記バルブ部の状態を切り変える操作部と、
前記吐出管の一部を内包するスパウトと、
前記供給管の一部および前記吐出管の一部が挿入される第1開口と、前記バルブ部が挿入される第2開口とが形成され、前記操作部および前記スパウトが取り付けられる水栓本体と、を有し、
前記供給管の端部近傍に、外方に突出したフランジ状の係止部が設けられ、
前記供給管の端部が前記バルブ部に挿入接続された状態で、前記係止部と係止する固定板が前記係止部の外側に配置され、前記固定板に設けられた雌ねじ部に対する前記第2開口から操作されるネジ部材の螺合により、前記係止部と前記バルブ部との離間が阻止されて前記供給管が固定される水栓装置。
【請求項2】
前記バルブ部が、バルブ本体と、当該バルブ本体を包持した状態で前記水栓本体に内包されるケーシングと、を備え、
前記供給管が前記ケーシングの底部に形成された接続孔に接続されると共に、前記供給管の前記係止部が、前記底部と前記固定板とで挟持固定されるように構成してある請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
前記ネジ部材が前記ケーシングを貫通し、
前記固定板に、前記供給管が前記係止部における自身の延伸方向に対して直交する方向に挿入可能、且つ、前記係止部に係止可能な幅を持つ切欠きが形成されている請求項2に記載の水栓装置。
【請求項4】
前記固定板が前記水栓本体と一体的に形成されている請求項3に記載の水栓装置。
【請求項5】
前記供給管の端部が挿入され、これら供給管および吐出管の相対位置を決定する位置決め部材を備えている請求項1から4の何れか一項に記載の水栓装置。
【請求項6】
前記水栓本体が、前記供給管および前記吐出管が上下方向に配設される第1本体と、前記第1本体に対して外側に突出し前記バルブ部を内包する第2本体と、を備えており、
前記供給管の端部および前記吐出管の端部が前記第2本体の側に向く屈曲部を備えている請求項1から5の何れか一項に記載の水栓装置。
【請求項7】
前記供給管および前記吐出管のうち前記屈曲部の近傍に当接し、前記供給管および前記吐出管が前記バルブ部から抜け出るのを防止する押え部材を前記第1本体の内部に設けてある請求項6に記載の水栓装置。
【請求項8】
端部に屈曲部を有する少なくとも一つの供給管と、
前記供給管から供給される液体についての流通・遮断状態および前記供給管が複数ある場合に夫々の供給管から供給される液体の混合状態を切り換えるバルブ部と、
端部に屈曲部を有し、前記バルブ部の下流に異なる液体あるいは混合液体を吐出する吐出管と、
共に水栓本体を構成し、
前記供給管の一部および前記吐出管の一部が上下方向に挿入される第1開口が形成され、前記吐出管の一部を内包するスパウトが取り付けられた第1本体と、
前記第1本体に対して外側に突出し、前記バルブ部が挿入される第2開口が形成されると共に前記バルブ部の状態を切り変える操作部が取り付けられた第2本体と、
前記供給管および前記吐出管のうち前記屈曲部よりも端部側において、外方に突出したフランジ状の係止部が設けられ、前記バルブ部に接続された前記供給管および前記吐出管が前記バルブ部から離間するのを阻止するよう、前記係止部の外側に配置される固定板と、前記固定板および前記バルブ部を接続するネジ部材と、を備えた水栓装置において、
前記供給管および前記吐出管を、治具で保持した状態で前記第1本体に挿入し、前記第1本体の内部に配置した当接部に前記治具を当接させて、前記供給管の端部および前記吐出管の端部を前記バルブ部の側に移動させて位置合わせし、
前記固定板に設けられた雌ねじ部に対して前記ネジ部材を前記第2開口から操作し螺合させることで、前記係止部と前記バルブ部との離間を阻止し、前記供給管および前記吐出管と前記バルブ部とを接続する水栓装置の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水や湯等の液体を流通させる供給管や吐出管と、液体の流通・遮断や混合状態を切り換えるバルブ部と、を水栓本体の内部で接続する構成を備えた水栓装置および水栓装置の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような水栓装置に関連する技術としては、例えば以下の特許文献1に示すものがある。
【0003】
この水栓装置では、水道管等からの水を供給する水供給管4や、給湯器からの湯水を供給する湯供給管5等を、吐止水操作や混合操作を行う本体10に接続する際に連結部材8が用いられる。この連結部材8は、水供給管4や湯供給管5と本体10との間に介装される二枚の板状部材である。
【0004】
具体的には、水供給管4等の夫々の端部近傍にはフランジ部42が形成されており、これらのフランジ部42等が下部連結部材82と上部連結部材84とで挟持固定される。一方の下部連結部材82には、各管4~7の胴部の外径とほぼ同じ幅を持つ切欠が形成されている。他方の上部連結部材84には、各管4~7を挿入する孔部が所定の位置に形成されている。
【0005】
つまり、各管4~7が下部連結部材82の切欠きに挿入された状態で所定位置に仮置きされ(
図6)、各管4~7の軸芯方向に沿って上部連結部材84が挿入される。フランジ部42等は下部連結部材82と上部連結部材84とで挟まれる状態に仮組みされる(
図6、
図7)。これにより、各管4~7の相対位置が固定され、連結部材8に対する各管4~7の軸芯方向に沿った出入りが規制される。
【0006】
こうして仮組みされた各管4~7には、下方から筒状の台座18が挿入され、台座18および下部連結部材82、上部連結部材84と、これらを貫通する5本のネジによって各管4~7が本体10に固定される。
【0007】
本構成であれば、予め連結部材8で仮組みした複数の管4~7を本体10に対して一度に連結することができ、各管4~7の接続作業が簡単かつ確実に行えるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この従来技術において、各管4~7を固定するためのネジは各管4~7の側から操作するようである。しかし、各管4~7を挟持する下部連結部材82と上部連結部材84は、水栓本体の開口部からみて奥側に位置する。仮に、これらをネジ固定するためには、密集配置されている各管4~7の間の空間を介して作業しなければならず、ネジ固定の作業が煩雑なものとなる。そのため、この従来技術では、水栓本体の内部に挿入される台座18と、この台座18に形成したネジ孔に挿通する長尺状のネジとを用いて各管4~7が固定される。
【0010】
つまり、直接の固定対象である各管4~7の他に台座18と長尺状のネジが必要となる。そのためには台座18の壁部にネジの挿通孔を加工する必要があり、壁部が厚くなる。この結果、水栓本体の内部空間が狭くなり、各管4~7の配設空間が狭くなるという不都合や、逆に配設空間を広く確保した場合にはコンパクトな意匠が得られないといった不都合が生じる。
【0011】
このように、従来の水栓装置では未だ解決すべき問題があり、組み立て作業が容易で意匠性に優れた水栓装置の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(特徴構成)
本発明に係る水栓装置の特徴構成は、
少なくとも一つの供給管と、
前記供給管から供給される液体についての流通・遮断状態および前記供給管が複数ある場合に夫々の供給管から供給される前記液体の混合状態を切り換えるバルブ部と、
前記バルブ部の下流に前記液体を吐出する吐出管と、
前記バルブ部の状態を切り変える操作部と、
前記吐出管の一部を内包するスパウトと、
前記供給管の一部および前記吐出管の一部が挿入される第1開口と、前記バルブ部が挿入される第2開口とが形成され、前記操作部および前記スパウトが取り付けられる水栓本体と、を有し、
前記供給管の端部近傍に、外方に突出したフランジ状の係止部が設けられ、
前記供給管の端部が前記バルブ部に挿入接続された状態で、前記係止部と係止する固定板が前記係止部の外側に配置され、前記固定板に設けられた雌ねじ部に対する前記第2開口から操作されるネジ部材の螺合により、前記係止部と前記バルブ部との離間が阻止され前記供給管が固定されるように構成された点にある。
【0013】
(効果)
本構成では、フランジ状の係止部が設けられた供給管の端部がバルブ部に挿入接続され、切欠きを有する固定板が係止部の外側に配置される。さらに、この固定板に設けられた雌ねじ部に対して第2開口から操作されるネジ部材が螺合し、係止部とバルブ部との離間が阻止されて供給管が固定される。本構成であれば、供給管および吐出管の接続作業が容易となる。これに対し、仮に供給管の端部に配置した固定板に対してネジ部材を供給管の側から操作するものであれば、各管の長尺部が延出している状態では、水栓本体の内部において固定板へのアクセスが困難となる。
【0014】
しかし、ネジ部材の操作が第2開口から行える本構成では、バルブ部の形状が比較的コンパクトであって長尺状ではないことが多いためネジ部材の操作が容易となる。
【0015】
また、第2開口を利用できることで、供給管等の接続作業のための別の開口を設ける必要がなく、水栓装置の意匠性が向上する。
【0016】
さらに、第2開口にはバルブ部の操作部を取り付けることができるため、供給管等の接続作業が終了したのちネジ部材を隠すことができる。これにより水栓装置の意匠性がさらに向上する。
【0017】
(特徴構成)
本発明に係る水栓装置にあっては、前記バルブ部が、バルブ本体と、当該バルブ本体を包持した状態で前記水栓本体に内包されるケーシングと、を備え、前記供給管が前記ケーシングの底部に形成された接続孔に接続されると共に、前記供給管の前記係止部が、前記底部と前記固定板とで挟持固定される構成とすることができる。
【0018】
(効果)
本構成のように、バルブ部をバルブ本体とケーシングとに分割構成する場合、ケーシングは、例えば周囲の壁部が主となるように構成することができる。供給管はケーシングの底部に形成された接続孔に接続され、供給管の係止部が、底部と固定板とで挟持固定される。ネジ部材がケーシングの向う側にある供給管の係止部にアクセスする際には、ケーシングの比較的薄い壁部を貫通できればよい。よって供給管の固定作業が極めて容易となる。
【0019】
(特徴構成)
本発明に係る水栓装置としては、前記ネジ部材が前記ケーシングを貫通し、前記固定板に、前記供給管が前記係止部における自身の延伸方向に対して直交する方向に挿入可能、且つ、前記係止部に係止可能な幅を持つ切欠きが形成されていると好都合である。
【0020】
(効果)
このような固定板を用いることで、供給管が所定の相対位置関係に固定される。このため、作業空間にあまり余裕のない水栓本体の内部に供給管を配置する際にも、供給管の位置が維持され、バルブ部の接続部に対する供給管の位置合わせが容易となる。よって、供給管の接続作業の効率が向上する。
【0021】
(特徴構成)
本発明に係る水栓装置にあっては、前記固定板が前記水栓本体と一体的に形成されていてもよい。
【0022】
(効果)
固定板が水栓本体に一体形成されていれば、供給管の端部を極めて正確な位置に設定することができる。一方、バルブ部を水栓本体に配置する場合にも、水栓本体にバルブ部の設置位置を規定するガイド部等を形成することは容易であるから、バルブ部に設けた接続部を各管に対して確実に位置合わせすることができる。よって、本構成においても供給管等とバルブ部との接続作業の効率が向上する。
【0023】
(特徴構成)
本発明に係る水栓装置にあっては、前記供給管の端部が挿入され、これら供給管の相対位置を決定する位置決め部材を備えていると好都合である。
【0024】
(効果)
本構成の位置決め部材は、供給管を挿入する構成であり、位置決め部材に挿入された供給管は自身の軸芯方向に直角な方向への移動が規制される。よって、供給管の端部の位置がバルブ部の接続部に対してより正確に位置決めすることができる。
【0025】
たとえば、上記切欠きを有する固定板と併用する場合、固定板の切欠きに供給管を係入させたのち、供給管を当該位置決め部材に挿通する。これにより、供給管の相対位置が固定され、固定板が各管から脱落しなくなる。よって、固定板と供給管とを予め仮組して水栓本体の内部に挿入配置させる場合に、当該配置作業が確実なものとなり、水栓装置の組立作業が効率化される。
【0026】
(特徴構成)
本発明に係る水栓装置にあっては、前記水栓本体が、前記供給管および前記吐出管が上下方向に配設される第1本体と、前記第1本体に対して外側に突出し前記バルブ部を内包する第2本体と、を備えており、前記供給管の端部および前記吐出管の端部が前記第2本体の側に向く屈曲部を備えた構成にすることができる。
【0027】
(効果)
本構成のように、バルブ部を水栓本体の外部に偏位させ、屈曲部を有する供給管等を接続する構成とすることで、水栓本体の内部において供給管および吐出管を挿通させる空間の形状がシンプルなものとなり、当該空間の確保が容易となる。
【0028】
また、各管を挿通する空間とバルブ部を設置する空間とがある程度独立し、各管とバルブ部との設置作業が別に行えるから、各管とバルブ部とを仮接続した状態で水栓本体の内部に挿入する必要はない。よって、夫々の空間の縮小が可能となり、水栓装置がコンパクトになるなど意匠性を高めることができる。
【0029】
(特徴構成)
本発明に係る水栓装置にあっては、前記供給管および前記吐出管のうち前記屈曲部の近傍に当接し、前記供給管および前記吐出管が前記バルブ部から抜け出るのを防止する押え部材を前記第1本体の内部に設けておくことができる。
【0030】
(効果)
供給管および吐出管の接続端部が屈曲している場合、水栓本体の内部で当該接続端部とバルブ部との挿通作業がやや煩雑となる。しかし、屈曲部の近傍に当接する押え部材を設けておくことで、上記固定部材の操作に際して供給管等が逃げて上手く接続できないという不都合が解消される。
【0031】
また、各管の接続作業が完了した後は、各管を確実に押さえることができる。このため、供給管や吐出管に高圧が作用し、固定部材の固定力に抗って各管が抜け出そうとする場合などにも当該抜出しを確実に阻止することができる。よって、耐久性の高い水栓装置を得ることができる。
【0032】
(特徴構成)
本発明に係る水栓装置の組立方法は、
端部に屈曲部を有する少なくとも一つの供給管と、
前記供給管から供給される液体についての流通・遮断状態および前記供給管が複数ある場合に夫々の供給管から供給される液体の混合状態を切り換えるバルブ部と、
端部に屈曲部を有し、前記バルブ部の下流に異なる液体あるいは混合液体を吐出する吐出管と、
共に水栓本体を構成し、
前記供給管の一部および前記吐出管の一部が上下方向に挿入される第1開口が形成され、前記吐出管の一部を内包するスパウトが取り付けられた第1本体と、
前記第1本体に対して外側に突出し、前記バルブ部が挿入される第2開口が形成されると共に前記バルブ部の状態を切り変える操作部が取り付けられた第2本体と、
前記供給管および前記吐出管のうち前記屈曲部よりも端部側において、外方に突出したフランジ状の係止部が設けられ、前記バルブ部に接続された前記供給管および前記吐出管が前記バルブ部から離間するのを阻止するよう、前記係止部の外側に配置される固定板と、前記固定板および前記バルブ部を接続するネジ部材と、を備えた水栓装置において、
前記供給管および前記吐出管を、治具で保持した状態で前記第1本体に挿入し、前記第1本体の内部に配置した当接部に前記治具を当接させて、前記供給管の端部および前記吐出管の端部を前記バルブ部の側に移動させて位置合わせし、
前記固定板に設けられた雌ねじ部に対して前記ネジ部材を前記第2開口から操作し螺合させることで、前記係止部と前記バルブ部との離間を阻止し、前記供給管および前記吐出管と前記バルブ部とを接続する点に特徴を有する。
【0033】
(効果)
本手段のように、端部に屈曲部を有する供給管や吐出管をバルブ部に接続する場合、水栓本体に対するこれ等の挿入方向と、バルブ部に対する挿入方向とが異なり、固定板およびネジ部材の固定に際しての供給管等とバルブ部との挿入接続作業が煩雑となる。
【0034】
そこで、供給管および吐出管を治具で保持しつつ第1本体に挿入することで、これら部材の挿入作業が容易となる。
【0035】
さらに、本手段では、第1本体の内部に設けた当接部によって治具の移動方向を変更することができる。つまり、例えば治具を単に押し込む力を作用させるだけで供給管等の端部をバルブ部の側に容易に移動させ接続することができる。よって、供給管等の接続作業が極めて効率的なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】第1実施形態に係る水栓装置の外観を示す説明図
【
図2】第1実施形態に係る供給管等とバルブ部との接続部を示す斜視図
【
図4】第3実施形態に係る水栓装置の外観を示す説明図
【
図5】第3実施形態に係る供給管等とバルブ部との接続部を示す斜視図
【
図6】供給管等とバルブ部との接続部の詳細構成を示す分解斜視図
【
図7】供給管等とバルブ部との接続状態を示す断面図
【
図9】第4実施形態に係る供給管等とバルブ部との接続部を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0037】
〔第1実施形態〕
(概要)
本発明の水栓装置Uは、台所などへの設置に際して供給管Paや吐出管Pbの接続作業を容易にするものである。以下には本発明の水栓装置Uに係る第1実施形態を
図1及び
図2と共に示す。
【0038】
図1に示すように、本実施形態に係る水栓装置Uは、水や湯を供給する少なくとも一つの供給管Paが接続されるバルブ部Vを備えている。バルブ部Vは、水や湯などの液体を供給する供給管Paの流通・遮断状態を切り換え、さらに、夫々の供給管Paから供給される水や湯の混合状態を切り換える機能を有する。バルブ部Vの外周面には、水や湯或いはこれらの混合液体を吐出する一若しくは二以上の吐出路Tが形成されている。バルブ部Vは、水栓装置Uの外殻部を形成する水栓本体1の内部に挿入し固定される。
【0039】
水栓本体1には、バルブ部Vを切り替え操作する操作部2が設けられる。また、水栓本体1には、吐出路Tから延出する吐出管Pbを内包するスパウトSが接続される。このスパウトSは水栓本体1に対して所定の角度範囲において回転自在である。
【0040】
水栓本体1は、第1開口H1と第2開口H2を有しており、供給管Paが第1開口H1から挿入される。また、バルブ部Vが第2開口H2から挿入され、水栓本体1の内部において供給管Paとバルブ部Vとが接続される。これらの接続は、水栓本体1を台所の流し台等に接続する前に行う。
【0041】
図2に示すように、供給管Paの端部には、ゴム製などの第1シールリングR1が少なくとも一つ取り付けられ、バルブ部Vの接続孔JPに挿入固定される。その固定のために、供給管Paの端部近傍には例えばフランジ状に外方に突出した係止部Fが設けられている。
【0042】
(固定部材)
この係止部Fには固定部材Gが作用し、係止部Fがバルブ部Vから離間して供給管Paが抜け出すことが防止される。固定部材Gは、例えば
図2に示すように、係止部Fの外径サイズよりも小さな幅の切欠きGsを有する円盤状の固定板Gaと、この固定板Gaに螺合するネジ部材Gbとで構成される。
【0043】
固定板Gaは、供給管Paの係止部Fに対してバルブ部Vとは反対側に配置する。本実施形態では、固定板Gaには供給管Paの本数に等しい数として例えば二箇所の切欠きGsが設けてあり、供給管Paを係止部Fにおける自身の延伸方向に対して直交する方向に移動させつつ各切欠きGsに挿入する。この状態で、固定板Gaの切欠きGsの周囲の表面が供給管Paの係止部Fに当接する。
【0044】
また、固定板Gaには、ネジ部材Gbが螺合する複数の雌ネジ部Ghが形成してある。一方のネジ部材Gbは、係止部Fを挟んで固定板Gaとは反対側から雌ネジ部Ghに螺合させる。ネジ部材Gbは第2開口H2から操作可能である。
【0045】
このような固定板Gaを用いることで、複数の供給管Paを所定の位置関係に固定することができる。このため作業空間にあまり余裕のない水栓本体1の内部に複数の供給管Paを配置する際にも、各供給管Paの相対位置が維持され、バルブ部Vの接続部に対する各供給管Paの位置合わせが容易となって接続作業の効率が向上する。
【0046】
尚、上記係止部Fおよび固定部材Gは、本実施形態の形状に限らない。例えば、係止部Fを、供給管Paの外表面を溝状に切り欠いた形状とし、固定部材Gを、この係止部Fに係合可能な爪部を有するものとすることができる。
【0047】
(位置決め部材)
接続作業に際し、固定板Gaに挿入された供給管Paに対して、係止部Fを挟んで固定板Gaと反対側から位置決め部材3を外挿する。位置決め部材3は二つのリング部が連結されたものである。
【0048】
これにより、各供給管Paの相対位置が固定され、固定板Gaから各供給管Paが脱落しなくなる。よって、固定板Gaと各供給管Paとを予め仮組して水栓本体1の内部に挿入配置させる場合に、当該配置作業が確実なものとなり、水栓装置Uの組立作業が効率化される。
【0049】
(ケーシング)
本実施形態においては、
図1に示すようにバルブ部Vは、カップ状のケーシングVcとバルブ本体Vaとで構成してある。バルブ本体Vaの構造は省略するが、
図1に示すように、バルブ本体VaはケーシングVcに内包された状態で水栓本体1に取り付けられる。本実施形態では、供給管Paの係止部Fは、まず、ケーシングVcの底部と固定板Gaとで挟持固定されるように構成してある。そのために、ケーシングVcの底部には、供給管Paを挿通する接続孔JPと、ネジ部材Gbを挿通させる孔部JGが形成してある。
【0050】
尚、図示は省略してあるが、水栓本体1に対するケーシングVcの取り付けは、例えば上記雌ネジ部Ghとは別にケーシングVcの底部に設けた取付孔と別の取付ネジとによって行われる。この取付ネジも第2開口H2の側から行えるものであり、ケーシングVcの固定作業を容易にしている。
【0051】
ケーシングVcの円筒状の外面の一部には例えば凸部4が形成されており、水栓本体1の内面に形成した位置決め用の凹部5に係入可能である。これにより、ケーシングVcの挿入方向周りの回転姿勢が一定となり、底部に形成した接続孔JPと、供給管Paとの位置合わせを容易にしている。供給管Paが接続孔JPに挿入されたあとネジ部材Gbを用いて固定板GaとケーシングVcの底部とで各供給管Paの係止部Fを挟持固定する。ネジ部材Gbの取り付けに際して、バルブ本体Vaは未だケーシングVcに挿入されていないから、第2開口H2を介してのネジ部材Gbの締結作業は極めて容易である。よって供給管Paの固定作業が効率化される。
【0052】
接続孔JPの周囲は凹状に形成されており、夫々の供給管Paの先端が挿入された状態で、各供給管Paの外面と接続孔JPとの間にはシール用の第1シールリングR1がスペーサ6を介して夫々二個配置される。尚、各供給管Paに装着される第1シールリングR1の数は任意である。
【0053】
〔第2実施形態〕
図3(a)に示すように、上記固定板Gaは水栓本体1と一体的に形成されていてもよい。ここでは、水栓本体1の内面に向けてフランジ状に突出した固定部G1を形成する。
図3(b)に示すように、この固定部G1には水栓本体1の長手方向に沿って見たとき、中央部から外方に向けて供給管Paを固定する二つの切欠きGsと、供給管Paの係止部Fを挿通させる補助切欠きGs1が形成してある。この補助切欠きGs1を介して、係止部Fを固定部G1に対してバルブ部Vの側に挿通し、各切欠きGsに位置決めする。
【0054】
二本の供給管Paの位置合わせが終了すると、第2開口H2の側から位置決め部材3を外挿し、供給管Paの位置を固定する。この状態で、第2開口H2からケーシングVcを挿入し、底部の接続孔JPに各供給管Pa等を挿通させる。固定部G1には、ネジ部材Gbを螺合する雌ネジ部Ghが形成してあり、第2開口H2の側からネジ部材Gbを操作して底部を固定部G1に固定する。
【0055】
本構成のように固定板Gaが水栓本体1に一体形成されていれば、供給管Paの夫々の端部をより正確に位置決めすることができる。一方、ケーシングVcを水栓本体1に配置する場合にも、水栓本体1の内面がガイド面となって、各供給管Paに対するケーシングVcの位置決めは正確に行われる。よって、本構成においても供給管Paとバルブ部Vとの接続作業の効率が向上する。
【0056】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係る水栓装置Uを
図4乃至
図7に示す。ここでは、バルブ部Vに供給管Paに加えて吐出管Pbが接続され、吐出管Pbの先端には、スパウトSから引き出し可能なフレキシブルホースが接続されている。また、水栓本体1は、鉛直方向に配置され下方に第1開口H1を有する第1本体1aと、そこから側方に突出し、第2開口H2を有する第2本体1bとを備えている。第1本体1aには主に供給管Paと吐出管Pbが挿通され、第2本体1bにはバルブ部Vと操作部2が設けられる。
【0057】
図4に示すように、例えば上方が少し窄んだ略円筒状の水栓本体1が流し台に取り付けられ、水栓本体1の上端の第3開口H3にはU字状のスパウトSが取り付けられている。スパウトSは水栓本体1に対して所定の角度に亘って回転する。スパウトSは、水栓本体1に連接され水栓本体1に対して左右に回転するホルダ部S1と、このホルダ部S1に抜き差し自在に接続されるヘッド部S2(
図4(b))とを備えている。ヘッド部S2には吐出管Pbとして機能するフレキシブルホースが接続され、ホルダ部S1の内部を介して水栓本体1の下方に敷設されている。
【0058】
ヘッド部S2の内部には、浄水用のカートリッジCを装着することができる。ホルダ部S1の先端にはホルダ部S1に対して回転操作できる吐水部S3が設けられ、吐水部S3の操作によって吐出する流体を原水と浄水とに切り換えることができる。
【0059】
水栓本体1のうち第2本体1bには、流体である水と湯とを適宜の混合比率に調節することができ、吐水状態と吐水停止状態とを切り替えるバルブ部Vと、当該バルブ部Vを操作する操作部2とが設けられている。バルブ部Vには、水あるいは湯をバルブ部Vに供給する二本の供給管Paと、水や湯或いはバルブ部Vで混合された混合水を吐出する吐出管Pbが接続されている。
【0060】
供給管Paや吐出管Pbは、設置作業時に手による曲げ加工を可能にするために銅管が用いられ柔らかく構成されている。本実施形態では、
図5に示すように先端をL字状に曲げた供給管Paと吐出管Pbを、第1本体1aの下方の第1開口H1からバルブ部Vの側方位置まで延出させ、ケーシングVcに接続する。
【0061】
バルブ部Vは、ケーシングVcとバルブ本体Vaからなり、これらは第2開口H2から横向きに挿入される。このため、バルブ部Vに接続される供給管Paおよび吐出管Pbの端部は、ケーシングVcの底面に垂直となるように屈曲部を備えている。
【0062】
本構成のように、バルブ部Vを水栓本体1の外部に偏位させ、屈曲部を有する供給管Pa等を接続する構成とすることで、水栓本体1の内部において供給管Paおよび吐出管Pbを挿通させる空間の形状がシンプルなものとなり、当該空間の確保が容易となる。
【0063】
また、各供給管Pa等を挿通する空間とバルブ部Vを設置する空間とが独立し、各供給管Pa等とバルブ部Vとの設置作業が別に行えるから、各供給管Pa等とバルブ部Vとを仮接続した状態で水栓本体1の内部に挿入する必要はない。よって、第1本体1aと第2本体1bとが夫々コンパクトになり、水栓装置Uの意匠性を高めることができる。
【0064】
供給管Paおよび吐出管Pbの夫々は、ケーシングVcに形成した接続孔JPに挿入され接続される。供給管Pa等は、各々の先端に形成したフランジ状の係止部Fが、三つの切欠きGsを有する固定板Gaに挿入され、位置決め部材3によって互いの相対位置が決定される。供給管Pa等には、スペーサ6を介した二個の第1シールリングR1が挿入され、ケーシングVcの接続孔JPに挿入される。
【0065】
夫々の係止部Fが固定板GaとケーシングVcとで挟まれ、ケーシングVcの一方側から挿入したネジ部材Gbを固定板Gaに螺合させることで係止部FがケーシングVcに固定される。
【0066】
この後、
図6および
図7に示すように、ケーシングVcにバルブ本体Vaを挿入する。さらに、バルブ本体Vaに続けて第2開口H2に固定リング7を螺合させる。これにより、バルブ本体Vaを介してケーシングVcを押し、ケーシングVcの底部の縁部Vc3が第2本体1bの内面に形成した段部1b2に押し付けられて位置固定される。
【0067】
バルブ本体Vaの端面には、ケーシングVcの底部に設けた接続孔JPの位置に合わせた第2シールリングR2が設けてあり、バルブ本体Vaに設けた流路が外部との密封状態を維持した状態で供給管Paおよび吐出管Pbと連通される。
【0068】
図7には、供給管Paおよび吐出管Pb、ケーシングVc、バルブ本体Vaが第2本体1bに固定された状態を示す。具体的には、ケーシングVcが固定リング7によって押し込まれると、ケーシングVcの底面の縁部Vc3と、ケーシングVcの筒状側面のうち底部の近傍に設けた第1側面Vc1が第2本体1bの円筒状の内面に当接する。これにより、ケーシングVcの径方向の位置が安定する。
【0069】
ケーシングVcの押し込みがさらに進むとケーシングVcの縁部Vc3が、第2本体1bの内面に形成した段部1b2に当接する。また、ケーシングVcの筒状側面のうち他方の端部の近傍に設けた第2側面Vc2が第2本体1bの内面と当接する。これにより、ケーシングVcの筒状側面のうち第1側面Vc1と第2側面Vc2との間の領域が第2本体1bの内面に対して非接触となる。
【0070】
第2本体1bやケーシングVcは、例えば、真鍮やステンレス鋼あるいは亜鉛ダイカスト等の金属で構成することができるが、ケーシングVcと第2本体1bとの接触面積が少なくなると、湯の熱等がバルブ部Vから第2本体1bさらには水栓本体1に逃げ難くなり、断熱効果の高い水栓装置Uを得ることができる。因みに、第2本体1bやケーシングVcを熱断熱性能の良い樹脂材料で構成する場合にも、上記隙間の形成は断熱効果の向上に寄与する。
【0071】
また、腐食防止の観点からは、固定部材Gであるネジ部材Gbが固定板GaやケーシングVcのみに接触するため、仮に、第2本体1bが金属材料で構成されている場合に、ネジ部材Gbの材質に起因する第2本体1bの腐食防止効果が期待できる。
【0072】
ケーシングVcの第2側面Vc2と第2本体1bの内面との間には第3シールリングR3を設けてある。第3シールリングR3は、特に、第2開口H2の側から水などが第2本体1bの内部に侵入するのを防止し、第2本体1bおよび第1本体1aの内部にある各部材が腐食することなどを防止するものである。
【0073】
本構成のように、供給管Paおよび吐出管Pbを水栓本体1の第1開口H1から挿入してバルブ部Vに接続し、第2開口H2から操作する固定部材Gによってこれら供給管Paおよび吐出管Pbの固定が行えるものであれば、供給管Paおよび吐出管Pbの接続作業が容易となる。つまり、供給管Paおよび吐出管Pbの端部に配置した固定部材Gを仮に供給管Pa等の側から操作する場合、各供給管Pa等の長尺部が延出している状態では、水栓本体1の内部において固定部材Gへのアクセスが煩雑となる。
【0074】
しかし、固定部材Gの操作が第2開口H2から行える本構成では、バルブ部Vの形状が比較的シンプルに構成し得るため、固定部材Gの操作が容易となる。また、第2開口H2を利用できることで、供給管Pa等の接続作業のための別の開口を設ける必要がなく水栓装置Uの意匠性が向上する。さらに、第2開口H2にはバルブ部Vの操作部2を取り付けることができるため、供給管Pa等の接続作業が終了したのち固定部材G等を隠すことができる。これにより水栓装置Uの意匠性がさらに向上する。
【0075】
(設置方法)
本実施形態の水栓装置Uにあっては、第1本体1aに対する供給管Pa・吐出管Pbの挿入方向と、ケーシングVcに対する接続方向とが異なるため、以下に示す治具を用いて組み立てを行う。
【0076】
先ず、
図8に示すように、例えば二本の供給管Paと一本の吐出管Pbとを、治具Yの一部を構成する第1治具Y1にセットする。第1治具Y1には、各供給管Pa等の相対位置と屈曲部の形状に応じた受け部Y1aが形成してあり、三本の供給管Pa等の端部を固定板Gaの切欠きGsに挿通した状態で第1治具Y1にセットする。これに対し、係止部Fを挟んで固定板Gaと反対側から位置決め部材3を外挿する。この状態を保持したまま、これらの仮組された部材を第1開口H1から所定の位置まで挿入する。
【0077】
これに続けてケーシングVcを第2開口H2から挿入する。ケーシングVcの奥側端部に設けた凸部4を第2本体1bの内面に設けた凹部5に係合させることで、ケーシングVcの底部の接続孔JPが三本の供給管Pa・吐出管Pbの位置とほぼ一致する。ただし、各供給管Pa等の先端には、夫々少なくとも一個の第1シールリングR1が装着されており、接続孔JPに挿入するのに所定の押し込み力が必要である。よって、
図8に示すように第2治具Y2を用いる。
【0078】
第1治具Y1の裏面と第2治具Y2の表面には共に当接部として機能する傾斜面Y1b,Y2bを設けてある。各供給管Pa等の接続孔JPに対する挿入に際しては、先ず、第2治具Y2を第3開口H3から所定位置まで挿入しておく。これに対し第1治具Y1を第1開口H1から挿入すると、双方の傾斜面Y1b,Y2bの当接により、第1治具Y1がケーシングVcの側に変位する。このときケーシングVcに押し込み力を加えることで各供給管Pa等が管用孔に挿入される。続けて第2開口H2からネジ部材Gbを操作して、ケーシングVcに供給管Paおよび吐出管Pbを固定する。このあと第2治具Y2を第3開口H3から抜き取り、第1治具Y1をバルブ部Vと反対側に変位させたのち第1開口H1から抜き取る。
【0079】
この状態では、ケーシングVcは未だ第2本体1bに固定されていない。そのためには、ケーシングVcの内部に第2開口H2からバルブ本体Vaを挿入設置し(
図6参照)、さらに固定リング7を第2本体1bに螺合させてバルブ本体Vaを押圧する。最後に、バルブ部Vを切り替え操作する操作部2を第2開口H2に装着して操作部2とバルブ部Vとの操作突起とを連結し、さらに、第3開口H3にスパウトSを取り付ける。
【0080】
尚、上記記載に拘らず第2治具Y2は必ずしも必要ではない。例えば、本実施形態の水栓本体1は第3開口H3に向けて細くなる形状である。よって、その内面も同様に細くなる。この面を当接面として、ここに第1治具Y1を当接させてバルブ部Vの側に押し付けるようにすればよい。これにより、第2治具Y2が不要となって組み立て工数が削減される。
【0081】
以上の各手段であれば、第2治具Y2あるいは第1本体1aの内部に設けた当接面によって第1治具Y1の移動方向を変更することができる。つまり、例えば第1治具Y1には単に押込み力を作用させるだけで供給管Pa等の端部をバルブ部Vの側に容易に移動させ接続することができる。よって、供給管Pa等の接続作業が極めて効率的なものとなる。
【0082】
〔第4実施形態〕
図9に示すように、先端に屈曲部を持つ供給管Paおよび吐出管Pbを使用する構成においては、供給管Paおよび吐出管Pbの端部近傍に押え部材Bを設けることもできる。この押え部材Bは、筒状の部材であり、供給管Paと吐出管Pbを設置したのち第1開口H1から第1本体1aに挿入する。
図9では、第1本体1aの内部に設けた雌ネジ部8に対し第2ネジ部材9を用いて締結固定する。
【0083】
押え部材Bを設けることで固定板Gaに対するネジ部材Gbの操作に際して供給管Pa等が逃げることがなく接続作業の効率が向上する。また、供給管Pa等が接続されたのちは、押え部材Bの一方の面が供給管Paや吐出管Pbに対して当接状態あるいは近接状態に配置され、供給管Pa等の抜出しが防止される。
【0084】
固定板Gaの一方には、供給管Paや吐出管Pbを分ける仕切りGpが設けてある。この仕切りGpは、供給管Pa等の接続作業に際して、各管を固定板Gaの所定位置に誘導する組立ガイドとして機能し、誘導後は各管の位置ずれを防止する。また、仕切りGの端部と押え部材Bとを積極的に当接させる場合には、押え部材Bや固定板Gaの固定が仮に緩んだとしても両部材のガタツキを無くすことができる。
【0085】
さらに、押え部材Bの内部は中空であり、第1開口H1と第3開口H3とを連絡する。よって、この中空部分に引き出し可能な吐出管Pbとしてのフレキシブルホースなどを挿通配置する通路として利用することができる。
【0086】
尚、
図9には、固定板Gaとネジ部材Gbによる係止部Fの固定構造が示されているが、供給管Pa等の抜け出しが防止される以上、このような固定構造は省略可能である。
【0087】
〔その他の実施形態〕
水栓本体1を第1本体1aと第2本体1bとで構成する場合に、供給管Pa等の先端部の屈曲角度は直角である必要はなく、直角に対して大小何れの角度であっても良い。即ち、第2本体1bの突出状態は意匠の都合等に応じて任意に設定すればよい。
【0088】
ケーシングVcやバルブ本体Vaにおける供給管Pa等の接続部は、例えば円筒状の底部に限られるものではなく側面に設けるものであっても良い。その場合の固定部材Gも、第2開口H2から操作できるものであれば任意の構成を採ることができる。
【0089】
(材質)
上記各実施形態において、水栓本体1は、真鍮やステンレス鋼、亜鉛ダイカストなど各種の金属で構成することができる。金属で構成することで質感が向上する。また、各種の樹脂材料を用いてもよい。樹脂材料で構成する場合には、表面に金属調の塗装を施すなど任意の装飾を施すことができる。
【0090】
固定板Gaもステンレス鋼などの金属材料で構成するのが好ましい。金属材料であれば高強度を有し、係止部Fの固定に際して薄い部材で構成した場合でも所定の強度を発揮することができる。固定板Gaが薄くなれば、水栓本体1の内部への装着も容易となる。
【0091】
バルブ本体VaやケーシングVc、位置決め部材3は、各種の樹脂製であることが望ましい。樹脂製であれば、例えば通水路等の主要部の形成が容易であり、金属などに比べて熱伝導率も低い。よって、流通させる湯などの温度が低下し難く、また、水栓本体1が加熱されることによる使用時の違和感も生じない。
【0092】
具体的には、成形が容易な熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の中では、特に成形が容易なPP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)、POM(ポリアセタール)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)が好ましい。このうちABSは剛性を備えており、PPSは高強度を備えているから機構部分が内蔵されるバルブ本体Vaに適している。また、ABSやPPSは耐水圧機能も備えている。POMは高い靭性を備えており形成した部材の耐久性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明に係る構成および方法は、水や湯等の液体を流通させる供給管や吐出管と、液体の流通・遮断や混合状態を切り換えるバルブ部とを水栓本体の内部で接続する構成の水栓装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 水栓本体
1a 第1本体
1b 第2本体
2 操作部
3 位置決め部材
B 押え部材
F 係止部
G 固定部材
Ga 固定板
Gb ネジ部材
Gs 切欠き
H1 第1開口
H2 第2開口
Pa 供給管
Pb 吐出管
S スパウト
U 水栓装置
V バルブ部
Va バルブ本体
Vc ケーシング
Y 治具