(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】打撃装置
(51)【国際特許分類】
B25D 13/00 20060101AFI20240509BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B25D13/00
H01F7/16 Z
(21)【出願番号】P 2020062320
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】302038741
【氏名又は名称】新電元メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 信秀
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-093273(JP,A)
【文献】特開2017-069301(JP,A)
【文献】特開平07-164350(JP,A)
【文献】特開昭58-066610(JP,A)
【文献】特開2019-106521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 13/00
H01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材から形成されたケースと、
一部又は全部が前記ケースの内部に配置されたベースと、
前記ケースの内部に配置されたコイルと、
前記コイルに通電したときに前記ベースに吸引されて摺動するように設けられたプランジャを備えている可動部材と、
前記プランジャが前記ベースに吸引される方向とは逆方向に前記可動部材を付勢するように設けられた吊り下げ用スプリングと、
前記可動部材の先端部の近傍に配置されると共に、前記可動部材の前記先端部に当接可能に設けられた打撃具と、
前記可動部材の摺動時における位置を検出する位置センサと、
前記位置センサからの信号を受信するように設けられた信号受信部と、
前記コイルに電流を供給可能に設けられたソレノイド駆動部と、
前記ソレノイド駆動部から前記コイルに所定時間電流を供給して停止している前記プランジャを摺動させた後、前記信号受信部が受信した信号に基づいて前記可動部材が共振するような時間間隔で前記ソレノイド駆動部から前記コイルに電流を繰り返し供給して、前記可動部材の振幅が次第に大きくなるように制御する制御部を有し
、
前記打撃具は、前記可動部材の前記先端部に当接可能な状態と当接不可能な状態との2つの状態に切り換え可能に設けられ、
前記制御部は、前記可動部材の前記振幅が所定の大きさ以上になったと判断したときに、前記打撃具を前記可動部材の前記先端部に当接可能な状態になるように制御することを特徴とする打撃装置。
【請求項2】
前記ケースの内部に配置されると共に、前記打撃具を回動又は転倒させ、かつ、前記打撃具を回動又は転倒した状態から復帰させる衝突回避用ソレノイドをさらに有し、
前記打撃具は、回動又は転倒したときに前記可動部材の前記先端部に当接不可能な状態となり、回動又は転倒した状態から復帰したときに前記可動部材の前記先端部に当接可能な状態となり、
前記ソレノイド駆動部は、前記衝突回避用ソレノイドに電流を供給可能に設けられ、
前記制御部は、前記コイルに1回目の電流を供給した後に前記ソレノイド駆動部から前記衝突回避用ソレノイドに電流を供給して前記打撃具を回動又は転倒させ、前記信号受信部が受信した信号に基づいて摺動している前記プランジャの中心軸の方向における位置を推定し、前記プランジャが前記中心軸の方向において前記ベースに最も接近したと推定されるときに、前記打撃具を回動又は転倒した状態から復帰させるように制御することを特徴とする
請求項1に記載の打撃装置。
【請求項3】
前記可動部材は、シャフトをさらに備えると共に、該シャフトが前記プランジャの前記中心軸に沿って形成された貫通孔に挿入され、
前記打撃具は、前記シャフトの先端部の近傍に配置され、
前記位置センサは、前記シャフトの基端部の近傍に配置されていることを特徴とする
請求項2に記載の打撃装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記信号受信部が受信した信号に基づいて摺動している前記プランジャの前記中心軸の方向における位置及び摺動方向を推定し、前記プランジャが前記中心軸の方向において前記ベースに最も接近したときの位置と最も離隔したときの位置との中間位置及びその近傍にあり、かつ、前記プランジャが前記ベースに接近しつつあると推定されるときに前記ソレノイド駆動部から前記コイルに電流を供給するように動作することを特徴とする
請求項3に記載の打撃装置。
【請求項5】
前記ケースは、略円筒状に形成され、
前記ベースは、前記ケースの先端側に圧入されると共に、中央に貫通孔が形成され、
前記ベースの前記貫通孔の内部に配置された軸受をさらに有し、
前記シャフトは、前記軸受によって摺動可能に支持されていることを特徴とする
請求項3又は
請求項4に記載の打撃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型の打撃装置に関し、特に、ソレノイドによって駆動する打撃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ソレノイドによって駆動する打撃装置においては、打撃具をより加速して撃力を向上させるために、様々な構成のものが発明されている。
図10は、従来技術に係る打撃装置の断面図である。
図10において、100は打撃装置、110は可動磁極、111はシャフト、112は連結部、113はピン、114は前進用コイル、115は後退用コイル、116は円筒状本体、117及び118は側板、119はコッター、120は打撃座である。また、
図11は、従来例の打撃装置の通電手順を示すタイムチャートである。
【0003】
図10は、特開平7-164350公報で開示されている打撃装置である。
図10に示すように、打撃装置100は、円筒状本体116、並びに、側板117及び118によって構成されているケースの内部に、前進用コイル114及び後退用コイル115を設けている。さらに、前進用コイル114及び後退用コイル115の中空部の内部に、前進用コイル114及び後退用コイル115の中心軸に沿って移動可能な可動磁極110を備えている。また、打撃装置100は、円筒状本体116の側板118側に被打撃物であるコッター119との連結部112を備えており、さらにコッター119との連結部112とはピン113によって連結されている。また、円筒状本体116の側板117側には、可動磁極110の打撃座120をそれぞれ備えている。可動磁極110は、シャフト111が摺動可能な状態で挿通されており、前進用コイル114又は後退用コイル115にパルス電流を印加することによって前進又は後退する。
【0004】
打撃装置100によってコッター119を打ち込む場合には、前進用コイル114及び後退用コイル115は、1サイクル(1打撃)でそれぞれ1回だけ励磁させる。すなわち、
図11に示すように、後退用コイル115にt1の間パルス電流を印加し、可動磁極110を打撃開始位置となる後退用コイル115内に位置させておく。所定時間長のインターバルの後、前進用コイル114にt3の間パルス電流を印加し、可動磁極110をコッター119側に加速させ、連結部112の可動磁極210側の端部を打撃する。次に、後退用コイル115にt1と同じ時間長だけパルス電流を印加し、可動磁極110を打撃開始位置に復帰させる。コッター119が所要の位置に打ち込まれるまで、上述の打撃手順を繰り返す。
【0005】
ところで、上述のような手順によって打撃を加える場合、消費電力が非常に大きくなると言う課題が発生する。すなわち、t1とt3のインターバルにおいて前進用コイル114には電流が流れていないので、コッター119は当然静止している。したがって、コッター119を打ち込むのに必要な打撃力を得るためには、t3という短時間の間に可動磁極110を一気に加速する必要がある。短時間で加速するためには、印加するパルス電流が非常に大きくなるので、消費電力も非常に大きくなる。さらに、コイルの径や長さも大きくなる。
【0006】
消費電力を小さくするために、相対的に小さいパルス電流を印すると共に、コッター119の打ち込みを完了するまでの前進用コイル114及び後退用コイル115への通電回数を増やすことは可能である。しかし、コッター119の打ち込みに要する時間が長くなる上に、t3の間に可動磁極110を一気に加速することには変わりがないので消費電力も劇的に小さくなることもないので、十分な解決手段とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するために、ソレノイドによって駆動する打撃装置において、消費電力を大幅に低減できる打撃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、磁性材から形成されたケースと、一部又は全部が前記ケースの内部に配置されたベースと、前記ケースの内部に配置されたコイルと、前記コイルに通電したときに前記ベースに吸引されて摺動するように設けられたプランジャを備えている可動部材と、前記プランジャが前記ベースに吸引される方向とは逆方向に前記可動部材を付勢するように設けられた吊り下げ用スプリングと、前記可動部材の先端部の近傍に配置されると共に、前記可動部材の前記先端部に当接可能に設けられた打撃具と、前記可動部材の摺動時における位置を検出する位置センサと、前記位置センサからの信号を受信するように設けられた信号受信部と、前記コイルに電流を供給可能に設けられたソレノイド駆動部と、前記ソレノイド駆動部から前記コイルに所定時間電流を供給して停止している前記プランジャを摺動させた後、前記信号受信部が受信した信号に基づいて前記可動部材が共振するような時間間隔で前記ソレノイド駆動部から前記コイルに電流を繰り返し供給して、前記可動部材の振幅が次第に大きくなるように制御する制御部を有していることを特徴とする打撃装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記打撃具は、前記可動部材の前記先端部に当接可能な状態と当接不可能な状態との2つの状態に切り換え可能に設けられ、前記制御部は、前記可動部材の前記振幅が所定の大きさ以上になったと判断したときに、前記打撃具を前記可動部材の前記先端部に当接可能な状態になるように制御することを特徴とする打撃装置である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、さらに、前記ケースの内部に配置されると共に、前記打撃具を回動又は転倒させ、かつ、前記打撃具を回動又は転倒した状態から復帰させる突回避用ソレノイドをさらに有し、前記打撃具は、回動又は転倒したときに前記可動部材の前記先端部に当接不可能な状態となり、回動又は転倒した状態から復帰したときに前記可動部材の前記先端部に当接可能な状態となり、前記ソレノイド駆動部は、前記衝突回避用ソレノイドに電流を供給可能に設けられ、前記制御部は、前記コイルに1回目の電流を供給した後に前記ソレノイド駆動部から前記衝突回避用ソレノイドに電流を供給して前記打撃具を回動又は転倒させ、前記信号受信部が受信した信号に基づいて摺動している前記プランジャの中心軸の方向における位置を推定し、前記プランジャが前記中心軸の方向において前記ベースに最も接近したと推定されるときに、前記打撃具を回動又は転倒した状態から復帰させるように制御することを特徴とする打撃装置である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記可動部材は、シャフトをさらに備えると共に、該シャフトが前記プランジャの前記中心軸に沿って形成された貫通孔に挿通され、前記打撃具は、前記シャフトの先端部の近傍に配置され、前記位置センサは、前記シャフトの基端部の近傍に配置されていることを特徴とする打撃装置である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記制御部は、前記信号受信部が受信した信号に基づいて摺動している前記プランジャの前記中心軸の方向における位置及び摺動方向を推定し、前記プランジャが前記中心軸の方向において前記ベースに最も接近したときの位置と最も離隔したときの位置との中間位置及びその近傍にあり、かつ、前記プランジャが前記ベースに接近しつつあると推定されるときに前記ソレノイド駆動部から前記コイルに電流を供給するように動作することを特徴とする打撃装置である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の発明において、前記ケースは、略円筒状に形成され、前記ベースは、前記ケースの先端側に圧入されると共に、中央に貫通孔が形成され、前記ベースの前記貫通孔の内部に配置された軸受をさらに有し、前記シャフトは、前記軸受によって摺動可能に支持されていることを特徴とする打撃装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、可動部材の振幅が十分に大きくなったときに、打撃具に可動部材の先端部を当接させ、円板状打撃具によって対象物に打撃を加えることが可能になるので、従来技術に係る打撃装置よりも使用電力を大幅に削減できる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、可動部材の振幅が十部に大きくなったときのみに打撃を加える構成にしたので、常に適切な大きさの打撃力を加えることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、ロータリソレノイドによって打撃具を回動又は転倒させるので、打撃具が可動部材の先端部を当接しないところまで水平方向に移動させたり、下方に移動したりする構成に比べて、打撃具を配置するのに必要な空間を大幅に小さくすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、蓋部材とエンドキャップとの間隙に位置センサを設けることによって、打撃時に発生する塵埃が位置センサに付着することを防止でき、位置センサとして光学センサを採用することが容易になる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、往復動している可動部材を最も加速しやすいタイミングで加速するので、可動部材を静止状態から打撃を与えるのに必要なところまで相対的に短時間のうちに加速することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、ベースの貫通孔の内部に配置された軸受によってシャフトを支持するので、可動部材を高速で安定的に摺動させることができると共に、繰り返し摺動させたときに発生する摩擦熱を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置の非通電状態における断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置の通電状態における断面図(1)である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置の通電状態における断面図(2)である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置において可動部材が最大限に下降した状態を示す断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置の非通電状態を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置の円板状打撃具及びその周辺部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)乃至(f)は動作時における断面図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置のブロック図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置における共振状態を示すグラフである。
【
図9】本発明の第2の実施の形態に係る打撃装置の円板状打撃具及びその周辺部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)乃至(f)は動作時における断面図である。
【
図11】従来例の打撃装置の通電手順を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置の非通電状態における正面図である。
図1において、10はソレノイド、20は可動部材、21はプランジャ、21aは中空部、21bは基端側端面、21cは先端側端面、22はシャフト、23は先端側大径部、24は基端側小径部、25は基端部、26は係止用貫通孔、27は先端面、28は段差面、30はケース、31は中間部、32は基端側肉薄部、33は基端部、34は先端側肉薄部、35は先端部、36aは基端側段差面、36bは基端部段差面、36cは先端側段差面、36dは先端部段差面、37は非磁性円筒部材、38はベース、38aは段差面、39は補助磁極、40は位置センサ、41はコイル、42はコイルボビン、43は巻胴部、44aは基端側フランジ部、44bは先端側フランジ部、45は吊り下げ用スプリング、46aは基端側係止部、46bは先端側係止部、47は中間部軸受、48はストッパ、49は基端部軸受、50はエンドキャップ、51は天板部、52は側板部、53はフランジ部、54は係止用開口部、55は押し付け用スプリング、56は基端側蓋部材、57はフランジ部、58は円筒状部、59はスリーブ、60は先端側蓋部材、61は開口部、62は円板状打撃具、63は凹陥部、64は回転軸、65は回転軸受、72はロータリソレノイドである。さらに、
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置の非通電状態を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
図5において、68は第1の支柱、71は第2の支柱であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。くわえて、
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置のブロック図である。
図7において、15は打撃装置、75は制御ユニット、76は信号受信部、77は制御部、78はメモリ、79はソレノイド駆動部であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0023】
なお、以下の本発明の第1及び第2の実施の形態に係る打撃装置の説明において、「先端側」及び「先端部」と記載した場合には、打撃具を配置した側(
図1乃至
図4において下側)、及び、打撃具を配置した側の端部を指すものとする。また、「基端側」及び「基端部」と記載した場合には、位置センサを配置した側(
図1乃至
図4において上側)、及び、位置センサを配置した側の端部を指すものとする。なお、特許請求の範囲における「先端側」及び「先端部」、並びに、「基端側」及び「基端部」も同様とする。さらに、以下の第1及び第2の実施の形態に係る打撃装置の説明において、「中心軸」はプランジャ21の中心軸を指すものとする。なお、プランジャ21の中心軸と、シャフト22及びケース30の中心軸は一致している。なお、特許請求の範囲における「中心軸」も同様とする。
【0024】
まず、本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置15の概要について説明する。打撃装置15は、可搬型で、かつ、直動型のソレノイドを共振させながら直動することによって、構造物等に打撃を与えることを用途とする。すなわち、打撃装置15は、
図1及び
図6に示すように、直動型のソレノイド10と、ソレノイド10の動作を制御する制御ユニット75を備えている。円板状打撃具62は、可動部材20から分離されており、さらに、可動部材20の往復動から独立して回動するように構成されている。制御ユニット75は、ソレノイド10を連続的に動作させず間欠的に動作させて、振幅の大きさ、つまりストローク長を次第に伸ばしてゆく。そして、
図8に示すように、例えばコンクリート構造物や、鉄骨構造物、地盤等の対象物の上方にソレノイド10をあらかじめ設置しておく。そして、可動部材20の振幅の大きさが所定長以上になったときに、対象物に対して円板状打撃具62によって打撃を与える。そして、制御ユニット75が円板状打撃具62による次の打撃に向けてソレノイド10を制御するという手順を繰り返す。したがって、打撃装置15は、打撃具を高速で往復動させて連続的に打撃を与えるという用途以外であれば、様々な用途に適用できる。
【0025】
さらに、打撃装置15が備えているソレノイド10の構成について詳しく説明する。ソレノイド10は、
図5に示すように、略円筒状に形成されたケース30の先端側から円板状打撃具62が突出可能に構成されており、構成部材の大部分がケース30の内部に収納されている。ケース30の径及び長さは、用途によって異なるが、例えば片手で持てる程度の細さから、径200mmあるいはこれ以上にすることも可能である。
図1は、ソレノイド10の非通電状態、つまり、円板状打撃具62が動作していない状態を示すものである。ソレノイド10の可動部材20は、プランジャ21とシャフト22とを備えており、シャフト22が円板状打撃具62に衝突し、円板状打撃具62が対象物に対して打撃を与える構成になっている。円板状打撃具62は、後述するように、制御ユニット75の制御によって可動部材20の振幅の大きさが所定長に満たないときにはシャフト22に接することはなく、可動部材20の振幅の大きさが所定長以上になったときにシャフト22に接する状態になる。なお、打撃装置15の用途によっては、シャフト22を設けず、打撃具等をプランジャ21に直接接続する、つまり可動部材20をプランジャ21のみで構成してもよい。
【0026】
可動部材20は、
図1に示すように、プランジャ21とシャフト22とを備えている。プランジャ21は、略円筒状に形成されており、コイル41に通電することによって、スリーブ59の内部を摺動する。また、プランジャ21は、略円筒状に形成されており、中空部21aにシャフト22の基端側小径部24が挿通されている。また、プランジャ21は、中空部21aに対して基端側小径部24が圧入されているのではなく、両者の間にわずかな間隙がある。しかし、中空部21aの径は、シャフト22の先端側大径部23の径よりも小さいので、プランジャ21が先端側に向かって摺動すると、プランジャ21の先端側端面21cがシャフト22の段差面28に当接した状態で一体的に摺動することになる。また、後述するように、可動部材20は、吊り下げ用スプリング45によって吊り下げられた状態になっている。よって、コイル41に通電していないときには、吊り下げ用スプリング45の引張力と、押し付け用スプリング55の弾発力、及び、可動部材20の自重とが釣り合うところ、つまり
図1の状態で静止している。押し付け用スプリング55は、プランジャ21を先端側に向かって付勢している。
【0027】
シャフト22は、先端側大径部23と基端側小径部24との段差面28がプランジャ21によって押圧されることによって先端側に摺動し、先端面27が円板状打撃具62に衝突する。また、先端側大径部23は中間部軸受47に挿通され、基端側小径部24は基端部軸受49に挿通されている。よって、可動部材20は、中間部軸受47及び基端部軸受49によって摺動可能に支持されている。前述のように、基端側小径部24と中空部21aにとの間にわずかな間隙があるので、プランジャ21の振幅が次第に大きくなって非磁性円筒部材37に衝突すると、シャフト22はプランジャ21から放出されて単独で摺動する。つまり、シャフト22は、プランジャ21から独立して摺動することが可能である。また、基端側小径部24は、ストッパ48にも挿通されている。シャフト22の基端部25は、エンドキャップ50の内部に突出している。また、基端部25の近傍には、位置センサ40が設けられており、基端部25の中心軸の方向における位置を検出する。さらに、基端側小径部24の基端部25の近傍には、係止用貫通孔26が形成されている。係止用貫通孔26は、吊り下げ用スプリング45の先端側係止部46bを係止するにために形成されたものである。
【0028】
ケース30は、ソレノイドを構成する部品を収納する役割に加えて、コイル41に通電したときに、補助磁極39、プランジャ21及びベース38と共に磁気回路を構成する。また、ケース30は、
図5に示すように、円筒状の外形を有している。さらに、
図1に示すように、中間部31が最も肉厚に形成されており、中間部31の基端側が肉薄の基端側肉薄部32として形成され、中間部31の先端側も肉薄の先端側肉薄部34として形成されている。中間部31と基端側肉薄部32との基端側段差面36aは補助磁極39の圧入深さを規定し、中間部31と先端側肉薄部34との先端側段差面36cはベース38の圧入深さを規定する役割を持つ。くわえて、基端側肉薄部32の基端側には最も肉薄な基端部33が形成され、先端側肉薄部34の先端側にも最も肉薄な先端部35が形成されている。基端側肉薄部32と基端部33との基端部段差面36bは基端側蓋部材56の圧入深さを規定し、先端側肉薄部34と先端部35の先端部段差面36dは先端側蓋部材60の圧入深さを規定する役割を持つ。
【0029】
ベース38は、ケース30の先端側肉薄部34に圧入されている。また、ベース38の段差面38aは、非磁性円筒部材37の圧入深さを規定する役割を持つ。非磁性円筒部材37は、中空部に中間部軸受47が圧入されると共に、プランジャ21の摺動を規制する役割を持つ。エンドキャップ50は、位置センサ40及び吊り下げ用スプリング45を収納する空間を構成している。すなわち、エンドキャップ50の天板部51及び側板部52は、天板部51及び側板部52が有底円筒状の空間を構成すると共に、吊り下げ用スプリング45が可動部材20の往復動によって中心軸に沿って長く伸びることを考慮した長さに形成されている。くわえて、天板部51の中央には、吊り下げ用スプリング45の基端側係止部46aを係止するために係止用開口部54が形成されている。また、フランジ部53は、ケース30の基端部33に対して、基端側蓋部材56のフランジ部57に上から重なるように圧入されている。また、天板部51及び側板部52が構成する空間が比較的大きいので、この空間の内部に制御ユニット75を収納することが望ましい。中間部軸受47と基端部軸受49とは、プランジャ21の先端側と基端側に配置され、シャフト22の先端側大径部23と基端側小径部24とを支持している。なお、中間部軸受47及び基端部軸受49は、ドライブッシュとするが好ましいが、他種の軸受であってもよい。
【0030】
スリーブ59は、プランジャ21の摺動を案内する役割を持つ。すなわち、スリーブ59は、コイルボビン42の巻胴部43及び補助磁極39の中空部に挿入されており、さらに先端部が非磁性円筒部材37に当接し、基端部は基端側蓋部材56に接している。基端側蓋部材56は、先端側に延びる円筒状部58と、円筒状部58の基端側に設けられたフランジ部57を備えている。円筒状部55は、内周面58a側に基端部軸受49が圧入され、外周側は押し付け用スプリング46の基端側に挿入されている。また、円筒状部58の先端側端面にはストッパ48が貼り付けられている。フランジ部57は、ケース30の基端部33に圧入されている。ストッパ48は、プランジャ21の基端側への摺動を規制する役割を有しており、略円筒状に形成されている。また、ストッパ48は、押し付け用スプリング46に挿通された状態で設けられると共に、その中空部にシャフト22の基端側小径部24が挿通されている。なお、ストッパ48は、ストッパ48の中心軸の方向における長さが短い場合には、プランジャ21の基端側端面21bに貼り付けてもよい。
【0031】
また、位置センサ40は、シャフト22の基端部25が所定距離だけ摺動したことを検出するものである。すなわち、シャフト22の基端部25はエンドキャップ50の内部に突出した状態で設けられているので、位置センサ40において、この突出状態を常時検出し、シャフト22が基端側又は先端側に所定距離を摺動したことを示す信号を発信するように構成されている。なお、位置センサ40は、小型で、かつ、簡便なことから光学センサが好ましいが、シャフト22が基端側に所定距離を摺動したことを検出することが可能で、かつ、エンドキャップ50の内部に収納可能なものであれば他種のセンサであってもよい。なお、位置センサ40が信号を発するシャフト22の基端側への摺動距離を自由に調整できるように、エンドキャップ50を貫通するネジ部材を設け、位置センサ40がこのネジ部材と中心軸方向に一体的に移動するような構成してもよい。吊り下げ用スプリング45は、コイル41への通電を停止した後、可動部材20をコイル41への通電前の位置に復帰させると共に、後述するように、共振運動を生成する役割も持つ。コイル41は、コイルボビン42の巻胴部43にコイルワイヤを巻回することによって形成されている。また、コイルボビン42は、所定位置に保持されるように、基端側フランジ部44aと先端側フランジ部44bを補助磁極39とベース38とによって軽く挟持されている。
【0032】
また、打撃装置15は、
図7に示すように、それノイド10と共に制御ユニット75を備えている。制御ユニット75は、信号受信部76、制御部77、メモリ78及びソレノイド駆動部79を備えている。そして、制御部77は、最初にソレノイド駆動部79からコイル41に後述する所定時間電流を供給し、ケース30、補助磁極39、プランジャ21、ベース38を巡り、ケースに30に戻る磁気回路を生成する。この磁気回路によって、プランジャ21がベース38に吸引されて摺動し、可動部材20が往復動し始める。次に、信号受信部76が位置センサ40から受信した信号に基づいてプランジャ21の位置を推定すると共にベース37に接近する方向に摺動しているか判断し、可動部材20が共振するような時間間隔でソレノイド駆動部79からコイル41に電流を繰り返し供給して、可動部材20の往復動の振幅が次第に大きくなるように制御する。次に、制御部77は、可動部材20の振幅の大きさが所定長以上になったと判断したときに、ソレノイド駆動部79からロータリソレノイド72に電流を供給し、後述するように、円板状打撃具62を回動させてシャフト22の先端側大径部23が円板状打撃具62に衝突させる。先端側大径部23が円板状打撃具62に衝突した後は、ソレノイド駆動部79からロータリソレノイド72に電流を供給し、ロータリソレノイド72を逆方向に回動させる。また、メモリ78は、円板状打撃具62に加えて、他の多数の打撃具を選択できるようにした場合、可動部材20の振幅の大きさが所定長以上になったと判断した時点と、ロータリソレノイド72を回動させる時間差等を記憶させるために設けている。
【0033】
続けて、
図6に基づいて説明する。
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置の円板状打撃具及びその周辺部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)乃至(f)は動作時における断面図である。
図6において、66は第1のカバー部材、67aは第1の開口部、67bは第2の開口部、69は第1の支持用スプリング、70は第2のカバー部材、73は回転軸、74は滑り止めカバーであり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0034】
図6(a)、(b)及び(c)に示すように、円板状打撃具62は、シャフト22の先端側大径部23には接続されず、かつ、シャフト22の先端面27に接近した状態に設けられている。すなわち、円板状打撃具62は、略円板状に形成されると共に、上方に開口し、かつ、中心側に深く切れ込んだ凹陥部63が形成されている。凹陥部63は、シャフト22が下限まで摺動した場合においても、先端側大径部23の先端面27に接しないように形成されている。また、円板状打撃具62は、中心部を貫通している回転軸64と、回転軸64を支持する回転軸受65によって回動可能に支持されている。回転軸64は、中心軸に対して直交する方向に配置されている。回転軸64の両端部の近傍部分は、第1のカバー部材66の内部に収納された第1の支持用スプリング69と、第2のカバー部材70の内部に収納された図示していない第2の吊り下げ用スプリングに支持されている。また、ロータリソレノイド72は、可動部材20が往復動しているときに意図せずに円板状打撃具62にシャフト22の先端面27が衝突することを防止するための衝突回避用ソレノイドであり、ケース30の先端側肉薄部34に固定されている。第1の支持用スプリング69と第2の吊り下げ用スプリングとは、下側の一部が第1の支柱68と第2の支柱71とに挿通された状態でそれぞれ設けられている。また、第1のカバー部材66には、回転軸64を挿通するために、上下方向に延びる第1の開口部67aと第2の開口部67bとが相対向するように形成されており、第2のカバー部材70にも図示していない2つの開口部が形成されている。したがって、円板状打撃具62が上方から強く押圧されると、回転軸64が第1の支持用スプリング69と第2の吊り下げ用スプリングとを押し縮めながら下降する。また、円板状打撃具62の外周面は、ロータリソレノイド72の回転シャフト73に付設された滑り止めカバー74に接している。ロータリソレノイド72は左右両方向に回動可能であるので、円板状打撃具62もロータリソレノイド72の動作に応じて回動する。なお、ソレノイド10が大型のもので、ケース30の内部に衝突回避用ソレノイドとして直動型ソレノイドを設けることが可能である場合などには、直動型ソレノイドによって円板状打撃具62を回転させてもよい。
【0035】
さらに、本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置の動作について説明する。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置の通電状態における断面図(1)である。さらに、
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置の通電状態における断面図(2)である。また、
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置において可動部材が最大限に下降した状態を示す断面図である。
図2乃至
図4において用いた符号は、すべて
図1と同じものを示す。くわえて、
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置における共振状態を示すグラフである。
【0036】
本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置15は、前述のように、可動部材20を共振させることによって、相対的に小さな消費電力で大きな打撃力を得られることに特徴がある。
図8(a)及び(b)は、打撃装置15の動作開始時刻t0からの時間経過と、可動部材20の振幅の大きさ(ストローク長)lとの関係を示している。
図8において、t1、t2、t3及びt4はコイル41に通電している時間である。また、点Cは先端側大径部23の先端面27が円板状打撃具62に打撃した瞬間であり、tCは点Cに対応する時刻である。また、-dの位置の水平線は、プランジャ21が非磁性円筒部材38に衝突する、すなわち、シャフト22がプランジャ21から放出される位置を示す。
図7において、(a)のグラフは通電時間を短時間として消費電力を抑える通電方法の一例を示し、(b)のグラフは相対的に重い可動部材の往復動の振幅を短時間の内に大きくする通電方法の一例を示す。なお、以下の説明は(a)と(b)とのいずれの通電方法にも共通する。ささらに、
図1乃至
図3と
図7との対応関係について説明する。グラフ上の動作開始時刻t0は、可動部材20が
図1に示す位置、つまりコイル41への通電前の位置に対応している。くわえて、グラフ上の点A及び点Cは可動部材20が
図2に示す位置、点Bは可動部材20が
図3に示す位置、点Cは可動部材20が
図4に示す位置にそれぞれ対応している。
【0037】
ところで、点A及び点Cは、振幅0(ゼロ)の位置からわずかに-d側に下降した位置となる。この点A及び点Cの位置は、可動部材20が共振して往復動している時の振幅範囲において、速度の最も早くなる部分であり、点A及び点Cの位置に達したときにワーク75に衝突させると最も大きな打撃力が得られる。したがって、ワーク75に対して、打撃や、押印、切断、切削などの動作(出力)を最も効率よく作用させるためには、振幅0(ゼロ)の位置からわずかに-d側に下降した位置が望ましいと言える。また、前述のように、シャフト22は、プランジャ21の停止後も単独で摺動しつづけ、最大で
図4に示すところまで下降することが可能である。よって、シャフト22が単独で摺動し続けて、
図8(b)に示すようにワーク75に対して動作(出力)を及ぼし続ける。したがって、本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置70には、シャフト22の振幅範囲がプランジャ21の振幅範囲に限定されないという非常に大きな利点がある。また、シャフト22とプランジャ21とが常に一体的に摺動する構成とは異なり、可動部材20の打撃力が最も有効に作用する、つまり最大の打撃力が得られる位置にソレノイド10の推力のピークを設定できるので、ソレノイド10の消費電力を比較的容易に低減できるという利点もある。
【0038】
そして、t0の振幅していない状態において、t1だけコイル41に通電すると、可動部材20が先端側、グラフ上では下(マイナス)側に摺動して、可動部材20が往復動を始める。次に、可動部材20が往復動を1サイクル終える時刻の前後、つまりt2の時間だけコイル41に通電すると、可動部材20が加速されて往復動の振幅(ストローク長)が大きくなる。さらに、可動部材20が2サイクル目の往復動を終える時刻の前後、つまりt3の時間だけ、あるいは、上述した下降している時間帯の全体においてコイル41に通電する。なお、円板状打撃具62は、t3の時間においても
図6(c)の状態を保っている。可動部材20が3サイクル目の往復動を終える時刻の前後、つまりt4の時間においてもコイル41に通電する。t4の時間だけコイル41に通電すると、ソレノイド10の可動部材20に必要となる打撃力が得られるところまで加速される。なお、可動部材20が下降している時間帯の全体に渡って通電することも可能である。また、制御部77は、点Bに到達したとき、つまり
図6(d)の状態になったとき、あるいはその前後からロータリソレノイド72を回動し始める。tCにおいて、
図6(e)に示すように、先端側大径部23の先端面27が円板状打撃具62に衝突する。シャフト22は、
図4に示すように、この衝突後も単独で摺動しつづけ、円板状打撃具62を先端側蓋部材60から突出させる。突出した円板状打撃具62は、対象物に打撃を加える。このとき、ロータリソレノイド72は下降しないので、滑り止めカバー74と円板状打撃具62とは離隔する。前述のように、tCの時刻に到達する前に-dの位置の水平線を越えて下降しているので、tCの時刻ではシャフト22のみが摺動して衝突する。その後は、可動部材20が上昇し、円板状打撃具62も同時に上昇し、
図6(f)に示すように、滑り止めカバー74と円板状打撃具62とが再び接した状態になる。
【0039】
以上のように、t0からtCまでの時間において、コイル41に通電された時間は4回であり、この4回の時間の合計はt0からtCの時間よりもかなり短い。したがって、通電前の静止状態から打撃力を得られるところまでごく短時間のうちに一気に加速する従来技術よりも電力消費を大幅に抑えることが可能となる。通電時間t2、t3及びt4は、位置センサ40から信号受信部76を介して得られた信号に基づいて可動部材20が加速されて可動部材20の往復動の周期を算出しているので、ソレノイド駆動部79からの電力供給が可動部材20の往復動に正確に同期したものとなる。なお、コイル41への通電時間及び通電回数は適宜変更可能である。通電時間に関しては、可動部材20が下降している間通電することができるが、-dの位置の水平線を越えて下降しているときにはプランジャ21はシャフト22を押し下げてはいないので、(可動部材20の往復動の各サイクルにおける)実質的な最大通電時間は、可動部材20の下降開始からプランジャ21が非磁性円筒部材38に当接するまでの時間となる。よって、通電時間は、この実質的な最大通電時間の範囲内で、かつ、必要となる打撃力や許容される打撃の時間間隔などを考慮して決定することになる。さらに、通電回数についても同様であり、必要となる打撃力や許容される打撃の時間間隔などを考慮して、例えば通電回数を2回などに設定する。
【0040】
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係る打撃装置のソレノイド10は、可動部材20の振幅が十分に大きくなったときに、先端側大径部23の先端面27が円板状打撃具62に衝突し、円板状打撃具62が下降して先端側蓋部材60から突出することによって、対象物に打撃を加えることが可能にあるので、従来技術に係る打撃装置よりも使用電力を大幅に削減できる。また、可動部材20の振幅が十部に大きくなったときのみに打撃を加える構成にしたので、常に適切な大きさの打撃力を加えることができる。また、シャフト22がプランジャ21から放出された状態で摺動するので、シャフト22がプランジャ21のストローク長を超えて往復動する、つまり円板状打撃具62が遠くまで届くという利点もある。さらに、ロータリソレノイド72によって円板状打撃具62を回動させるので、打撃具が可動部材の先端部を当接しないところまで水平方向に移動させたり、下方に移動したりする構成に比べて、打撃具を配置するのに必要な空間を大幅に小さくすることができる。くわえて、基端側蓋部材56とエンドキャップ50との間隙に位置センサ40を設けることによって、打撃時に発生する塵埃が位置センサ40に付着することを防止でき、位置センサ40として光学センサを採用することが容易になる。また、往復動している可動部材20を最も加速しやすいタイミングで加速するので、可動部材20を静止状態から打撃を与えるのに必要なところまで相対的に短時間のうちに加速することができる。さらに、ベース38の貫通孔の内部に配置された基端部軸受によってシャフトを支持するので、可動部材20を高速で安定的に摺動させることができると共に、繰り返し摺動させたときに発生する摩擦熱を低減することができる。
【0041】
続けて、本発明の第2の実施の形態に係る打撃装置について説明する。
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る打撃装置の円板状打撃具及びその周辺部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)乃至(f)は動作時における断面図である。
図9において、80は分割型回動打撃具、81は第1の打撃具構成部材、82は切り込み部、83は第2の打撃具構成部材、84は切り込み部、85はロータリソレノイド、86は回転シャフト、87は滑り止めカバー、88はロータリソレノイド、89は回転シャフト、90は滑り止めカバーであり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0042】
本発明の第2の実施の形態に係る打撃装置のソレノイドは、ソレノイドの円板状打撃具62に相当する部材を2つに分割している点に特徴がある。すなわち、分割型回動打撃具80は、第1の打撃具構成部材81と第2の打撃具構成部材83とから構成されている。第1の打撃具構成部材81と第2の打撃具構成部材83とは、設置場所である先端側蓋部材60や回転シャフト86を共有している。一方、第1の打撃具構成部材81にはロータリソレノイド85の回転シャフト86に付設された滑り止めカバー87が接していると共に、第2の打撃具構成部材83にはロータリソレノイド88の回転シャフト89に付設された滑り止めカバー90が接しており、互いに独立して回動可能に構成されている。さらに、第1の打撃具構成部材81と第2の打撃具構成部材83とには、切り込み部82と切り込み部84とがそれぞれ形成されている。切り込み部82と切り込み部84とは、
図9(c)に示すように、シャフト22の先端側大径部23を当接すべきでない時間帯においは、円板状打撃具62の凹陥部63を構成するような角度に停止している。そして、先端側大径部23の先端面27を分割型回動打撃具80に衝突させるときには、
図9(d)及び(e)に示すように回転する。その後は、可動部材20が上昇し、円板状打撃具62も同時に上昇し、
図6(f)に示すように、滑り止めカバー74と円板状打撃具62とが再び接した状態になる。なお、その他の部材について、本発明の第2の実施の形態に係る打撃装置のソレノイド10と同じ形状及び構造なので、説明は省略する。
【0043】
本発明の第2の実施の形態に係る打撃装置のソレノイドは、分割型回動打撃具80を第1の打撃具構成部材81及び第2の打撃具構成部材83から構成しているので、非常に短時間のうちに先端側大径部23の先端面27を衝突させられる状態になるという利点がある。なお、打撃具は、回転可能に配置できるものであれば、円柱状や角柱状であってもよい。また、円柱状や角柱状の打撃具の先端側に回転軸を設け、可動部材20の往復動に応じて、基端部を回転中心として転倒させる、又は、起立させる構成にしてもよい。
【0044】
本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、例えば、打撃力をより大きくするために、シャフト22を比重の大きい材料から形成し、基端側小径部24と中空部21aにとの間に間隙を設けずに、プランジャ21とシャフト22とが常に一体的に摺動する構成にするなど、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の構成にすることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 ソレノイド
15 打撃装置
20 可動部材
21 プランジャ
21a 中空部
21b 基端側端面
21c 先端側端面
22 シャフト
23 先端側大径部
24 基端側小径部
25 基端部
26 係止用貫通孔
27 先端面
28 段差面
30 ケース
31 中間部
32 基端側肉薄部
33 基端部
34 先端側肉薄部
35 先端部
36a 基端側段差面
36b 基端部段差面
36c 先端側段差面
36d 先端部段差面
37 非磁性円筒部材
38 ベース
39 補助磁極
40 位置センサ
41 コイル
42 コイルボビン
43 巻胴部
44a 基端側フランジ部
44b 先端側フランジ部
45 吊り下げ用スプリング
46a 基端側係止部
46b 先端側係止部
47 中間部軸受
48 ストッパ
49 基端部軸受
50 エンドキャップ
51 天板部
52 側板部
53 フランジ部
54 係止用開口部
55 押し付け用スプリング
56 基端側蓋部材
57 フランジ部
58 円筒状部
59 スリーブ
60 先端側蓋部材
61 開口部
62 円板状打撃具
63 凹陥部
64 回転軸
65 回転軸受
66 第1のカバー部材
67a 第1の開口部
67b 第2の開口部
68 第1の支柱
69 第1の支持用スプリング
70 第2のカバー部材
71 第2の支柱
72 ロータリソレノイド
73 回転シャフト
74 滑り止めカバー
75 制御ユニット
76 信号受信部
77 制御部
78 メモリ
79 ソレノイド駆動部
80 分割型回動打撃具
81 第1の打撃具構成部材
82 切り込み部
83 第1の打撃具構成部材
84 切り込み部
85 ロータリソレノイド
86 回転シャフト
87 滑り止めカバー
88 ロータリソレノイド
89 回転シャフト
90 滑り止めカバー
100 打撃装置
110 可動磁極
111 シャフト
112 連結部
113 ピン
114 前進用コイル
115 後退用コイル
116 円筒状本体
117 側板
118 側板
119 コッター
120 打撃座