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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】育苗部材洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/06 20060101AFI20240509BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A01G9/06
B08B3/02 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020073145
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021168614
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】592026819
【氏名又は名称】伊東電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 政樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正樹
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-167853(JP,U)
【文献】特開平05-277594(JP,A)
【文献】実開昭57-046551(JP,U)
【文献】特開2016-150001(JP,A)
【文献】特開平05-069980(JP,A)
【文献】特開2006-044938(JP,A)
【文献】特開2016-216142(JP,A)
【文献】特開2000-350520(JP,A)
【文献】特開2002-335096(JP,A)
【文献】特開平02-188297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/08
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を水耕栽培する略四角形の育苗部材を洗浄する育苗部材洗浄装置において、
ストックエリアと洗浄エリアと昇降手段を有し、
前記ストックエリアには、複数の育苗部材を、縦姿勢であって隣接する前記育苗部材の表裏面の投影面が重なる状態に保持する縦姿勢維持手段と、前記育苗部材を、縦姿勢を維持した状態で表裏に面する方向に前進させて送り出す送り出し手段があり、
前記洗浄エリアには洗浄手段が配置されており、
前記昇降手段は、ストックエリアから送り出された前記育苗部材を、縦姿勢を維持した状態で上方向又は下方向に移動させて前記洗浄エリアを通過させるものであることを特徴とする育苗部材洗浄装置。
【請求項2】
ストックエリアの前側であって、その上側及び/又は下側に防護壁があり、
前記育苗部材は、前記昇降手段によって前記防護壁の前側を上昇又は下降することを特徴とする請求項1に記載の育苗部材洗浄装置。
【請求項3】
前記昇降手段は、支持部材を有し、当該支持部材が前記育苗部材と係合し、前記支持部材が上昇又は下降して前記育苗部材を上昇又は下降させることを特徴とする請求項1又は2に記載の育苗部材洗浄装置。
【請求項4】
前記支持部材は、上方からの外力を支持し、下方から外力が作用した場合には、姿勢変更して下方からの外力を逃がすものであることを特徴とする請求項3に記載の育苗部材洗浄装置。
【請求項5】
前記昇降手段は、回転部材を有し、当該回転部材が前記育苗部材と係合し、前記育苗部材を上昇又は下降させるものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の育苗部材洗浄装置。
【請求項6】
前記回転部材は、駆動ローラと従動ローラと付勢手段を有し、前記駆動ローラと前記従動ローラは平行に配置されていて、間に育苗部材を進入させることができ、前記付勢手段は、前記駆動ローラと前記従動ローラの少なくともいずれか一方を、他方側に接近するように付勢することを特徴とする請求項5に記載の育苗部材洗浄装置。
【請求項7】
前記昇降手段は、
夫々、前記育苗部材と係合する、
上昇又は下降する支持部材、及び、
回転部材
を有し、かつ、
前記育苗部材を上昇又は下降させるものであり、
さらに、前記支持部材、及び前記回転部材の
いずれか一方で移動させた前記育苗部材を、残りの他方に引き継がせることを特徴とする請求項1又は2に記載の育苗部材洗浄装置。
【請求項8】
ガイド部材を有し、当該ガイド部材は、前記育苗部材が上昇又は下降する際に、前記育苗部材を倒れる方向に姿勢変更するものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の育苗部材洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を水耕栽培する際に使用する育苗部材を洗浄する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農作物を建屋内で連続的に栽培する植物栽培装置が知られている。植物栽培装置は、作物工場と通称される栽培形態に使用されるものである。即ち植物栽培装置は、人工照明を使用して作物に適度の日照を与えると共に、建屋内や室内を生育に適した温度や湿度に保って作物を育成する装置である。
植物栽培装置によると、日照や温度、水分、肥料濃度等が適度に制御された環境で作物を作ることができるので、露地栽培に比べて収穫に要する期間が短くて済む。
また植物栽培装置の多くは水耕栽培によって作物を育成するものであり、露地栽培に比べて清潔である。さらに室内で作物を栽培するので害虫が付かず、無農薬で作物を栽培することができる。そのため植物栽培装置は、レタス等の皮を剥いたりせずに食する野菜を栽培するのに好適である。
【0003】
植物栽培装置には大きく分けて固定式のものと移動式のものがある。
固定式の植物栽培装置は、棚等に培養液が満たされた栽培トレイを設置し、栽培トレイに苗を保持する苗保持部材に取り付け、人口照明等を苗保持部材に保持された苗に照射して苗を育てる。固定式の植物栽培装置では、幼苗から収穫直後まで、同じ位置に置かれた栽培トレイ上で生育される。
【0004】
移動式の植物栽培装置には、養液が満たされた栽培トレイに苗保持部材を装着し、コンベヤ装置等によって栽培トレイを移動させる形式のもの(特許文献1)と、大型の水槽に苗保持部材を浮かべ、苗保持部材を人力等で押し動かす形式のもの(特許文献2)がある。
前者のコンベヤ装置等を備えたものでは、装置の始端に幼苗を植えた栽培トレイを導入し、10日から30日程度の日数をかけて栽培トレイを始端から終端に送る。その間、苗保持部材に保持された苗に照射して苗を育てる。
そして終端で栽培トレイを取り出し、成長した植物を収穫するか、あるいは栽培トレイを再度他の植物栽培装置に搬入して苗をより大きく成長させる。
後者の苗保持部材を人力等で押し動かす形式のものについても、装置の始端に幼苗を植えた苗保持部材を導入し、苗保持部材を始端から終端に流す。その間、苗保持部材に保持された苗に照射して苗を育てる。
収穫を終えると、栽培トレイや苗保持部材を回収し、新たに苗を植えつけて栽培を行う。
【0005】
固定式であっても移動式であっても、栽培期間中、栽培トレイは培養液で満たされているから、収穫を終えた栽培トレイは苔や水垢で汚れている。苗保持部材についても同様であり、苔や水垢で汚れている。
そのため栽培トレイ等を再使用する場合には、栽培トレイや苗保持部材等の育苗部材を洗浄することが望ましい。
従来技術における育苗部材の洗浄は原始的であり、栽培トレイ等を作業場の床に平置き状に配置し、高圧洗浄装置から高圧水や蒸気を噴霧し、ブラシで擦る等の作業によって実施されていた。
【0006】
また特許文献3、4には、栽培トレイ等を洗浄する装置が提案されている。
特許文献3、4に開示された洗浄装置では、栽培トレイ等を平置きした状態で移動させつつ洗浄を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-150001号公報
【文献】特開2017-158437号公報
【文献】特開平6-303848号公報
【文献】特開平6-303849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
栽培トレイ等を作業場の床に平置き状に配置して手作業で洗浄する方法は、作業者に水がかかる作業であり、作業者が汚れる仕事であるため、改善が望まれている。
特許文献に開示された装置は、栽培トレイ等を平置き状にして移動させるものであり、装置が専有する面積が大きいという不満がある。
【0009】
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、栽培トレイや苗保持部材等の育苗部材を洗浄する新たな育苗部材洗浄装置を開発することを課題とするものである。より詳細には、専有する床面積が従来よりも小さい育苗部材洗浄装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の様相は、植物を水耕栽培する略四角形の育苗部材を洗浄する育苗部材洗浄装置において、ストックエリアと洗浄エリアと昇降手段を有し、前記ストックエリアには、複数の育苗部材を、縦姿勢であって隣接する前記育苗部材の表裏面の投影面が重なる状態に保持する縦姿勢維持手段と、前記育苗部材を、縦姿勢を維持した状態で表裏に面する方向に前進させて送り出す送り出し手段があり、前記洗浄エリアには洗浄手段が配置されており、前記昇降手段は、ストックエリアから送り出された前記育苗部材を、縦姿勢を維持した状態で上方向又は下方向に移動させて前記洗浄エリアを通過させるものであることを特徴とする育苗部材洗浄装置である。
【0011】
本様相の育苗部材洗浄装置は、植物を水耕栽培する略四角形の育苗部材を、縦姿勢の状態で移動させて洗浄するものである。
本様相の育苗部材洗浄装置は、ストックエリアと洗浄エリアと昇降手段を有する。
ストックエリアには、複数の育苗部材を、縦姿勢であって隣接する育苗部材の表裏面の投影面が重なる状態に保持する縦姿勢維持手段があるので、ストックエリアでは、複数の育苗部材を縦姿勢で隣接させてストックすることができる。そのため、ストックエリアでは、小さい面積内に、複数の育苗部材を収容することができる。
また、ストックエリアでは、送り出し手段によって、育苗部材を、縦姿勢を維持した状態で表裏に面する方向に前進させて送り出すことができるので、ストックエリア及び送り出し先の領域の占有面積が小さくて済む。
洗浄エリアには洗浄手段が配置されており、ストックエリアから送り出された育苗部材を洗浄することができる。
昇降手段は、ストックエリアから送り出された育苗部材を、縦姿勢を維持した状態で上方向又は下方向に移動させて洗浄エリアを通過させることができるので、育苗部材洗浄装置の占有する面積が小さくて済む。具体的には、ストックエリアの上方に洗浄エリアを設けると、ストックエリアと洗浄エリアが平面視して重複する。
ここで、「縦姿勢」とは、略四角形の四辺のいずれかの辺が下方となり、当該辺と反対側の辺が上方となる姿勢であり、起立した姿勢である。
【0012】
ストックエリアの前側であって、その上側及び/又は下側に防護壁があり、前記育苗部材は、前記昇降手段によって前記防護壁の前側を上昇又は下降するのが好ましい。
【0013】
この構成によると、ストックエリアの前側であって、その上側及び/又は下側に防護壁があり、育苗部材は、昇降手段によって防護壁の前側を上昇又は下降するので、防護壁によって、洗浄エリア側からストックエリア側へ洗浄水が飛散することを防止することができる。特に、育苗部材を洗浄して汚れた洗浄水が、ストックエリア側に飛散することを防止することができる。
【0014】
前記昇降手段は、支持部材を有し、当該支持部材が前記育苗部材と係合し、前記支持部材が上昇又は下降して前記育苗部材を上昇又は下降させるのが好ましい。
【0015】
この構成によると、昇降手段は、支持部材を有し、当該支持部材が育苗部材と係合し、支持部材が上昇又は下降して育苗部材を上昇又は下降させるので、育苗部材の支持が安定する。
【0016】
前記支持部材は、上方からの外力を支持し、下方から外力が作用した場合には、姿勢変更して下方からの外力を逃がすものであるのが好ましい。
【0017】
この構成によると、支持部材は、育苗部材の降下又は落下を阻止し、上昇を許容する逆止機能を発揮することができる。
【0018】
前記昇降手段は、回転部材を有し、当該回転部材が前記育苗部材と係合し、前記育苗部材を上昇又は下降させるものであるのが好ましい。
【0019】
前記回転部材は、駆動ローラと従動ローラと付勢手段を有し、前記駆動ローラと前記従動ローラは平行に配置されていて、間に育苗部材を進入させることができ、前記付勢手段は、前記駆動ローラと前記従動ローラの少なくともいずれか一方を、他方側に接近するように付勢するのが好ましい。
【0020】
この構成によれば、平行な駆動ローラと従動ローラの間に育苗部材を進入させ、付勢部材がいずれか一方のローラを他方側のローラに接近するように付勢するので、異なる幅寸法(厚み寸法)の育苗部材に容易に対応することができる。すなわち、両ローラで異なる幅寸法の育苗部材を挟持して、良好に支持することができる。
【0021】
前記支持部材と、前記回転部材を有し、いずれか一方で前記育苗部材を移動させて当該育苗部材を他方に引き継がせるのが好ましい。
【0022】
この構成によると、支持部材と回転部材のいずれか一方で育苗部材を移動させて、育苗部材を他方に引き継がせるので、支持部材の上下の往復移動範囲を小さくすることができる。
【0023】
ガイド部材を有し、当該ガイド部材は、前記育苗部材が上昇又は下降する際に、前記育苗部材を倒れる方向に姿勢変更するものであるのが好ましい。
【0024】
この構成によると、ガイド部材によって、育苗部材が上昇又は下降する際に、育苗部材を倒れる方向に姿勢変更させることができる。すなわち、育苗部材を、安定した姿勢(例えば、水平姿勢)に姿勢変更することができる。洗浄は、縦姿勢で行い、洗浄後は安定した水平姿勢にするのが好ましい。洗浄を縦姿勢で行うことにより、洗浄水が周囲に飛散しにくく、また、洗浄エリアの専有面積を小さくすることができる。さらに、育苗部材が縦姿勢であると、付着した洗浄水を切り易い。すなわち、洗浄後、育苗部材に付着した洗浄水を縦姿勢である程度切った後、育苗部材を姿勢変更し、安定した姿勢(例えば、水平姿勢)にするのが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の育苗部材洗浄装置は、専有する床面積が小さく、場所をとらない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る育苗部材洗浄装置の斜視図である。
図2図1において、育苗部材を搭載した状態を示す育苗部材洗浄装置の斜視図である。
図3図1の育苗部材洗浄装置の主要部のみを描写した分解斜視図である。
図4】送り出し装置の分解斜視図である。
図5図1の育苗部材洗浄装置の主要な構成のみを示す三面図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図である。
図6図5において、昇降装置の支持部材に育苗部材が係合した状態を示す三面図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図である。
図7図6に続き、育苗部材が洗浄装置で洗浄されながら昇降装置の下方側駆動機構部でリフトされている状態を示す三面図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図である。
図8図7に続き、育苗部材がさらに上昇し、育苗部材が昇降装置の上方側駆動機構部に支持されると共に、後続の育苗部材が鉛直ラック部材に当接した状態を示す三面図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図である。
図9図8に続き、育苗部材の上端がガイド部材に当接するまで上昇し、上昇した育苗部材が排出される状態を示す三面図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図である。
図10】(a)は、図9に続き、昇降装置の下方側駆動機構部が下降し、下方に配置された後続の育苗部材の上端に支持部材が当接し、突出姿勢の支持部材が若干傾斜した状態を示す正面図であり、(b)は、(a)に続いて下方側駆動機構部が下降し、支持部材が突出姿勢から退避姿勢になった状態を示す正面図であり、(c)は、(b)に続いて下方側駆動機構部がさらに下降し、支持部材が後続の育苗部材の下端を超えて元の突出姿勢に戻った状態を示す正面図である。
図11】高さ寸法が小さい育苗部材が育苗部材洗浄装置に搭載された状態を示す三面図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図である。
図12図11において、鉛直ラック部材が上昇し、後続の育苗部材が鉛直ラック部材に当接した状態を示す三面図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図である。
図13図12に続き、鉛直ラック部材が下降し、突出姿勢の係止部材が下方で待機中の後続の育苗部材に当接して傾斜した状態を示す三面図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図である。
図14図13に続き、鉛直ラック部材がさらに下降し、係止部材が退避姿勢となると共に、先行の育苗部材が後続の育苗部材の上に重なった状態を示す三面図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図である。
図15図14に続き、鉛直ラック部材がさらに下降し、係止部材が後続の下側の育苗部材の下端に達して突出姿勢となり、後続の育苗部材を支持可能となった状態を示す三面図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図である。
図16図15に続き、鉛直ラック部材が上昇し、先行の上側の育苗部材が上方側駆動機構部の回転部材に挟持された状態を示す三面図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図である。
図17図16に続き、回転部材によって先行の上側の育苗部材のみが上昇し、後続の下側の育苗部材が下方側駆動機構部側に残った状態を示す三面図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図である。
図18図17に続き、回転部材によって先行の上側の育苗部材がさらに上昇し、育苗部材の上端がガイド部材に当接し、排出される状態を示す三面図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図である。
図19図18に続き、鉛直ラック部材が下降し、支持部材が、下方で待機する後続の育苗部材を支持した状態を示す三面図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら説明する。
育苗部材洗浄装置1は、図2に示す育苗部材W(栽培パネル)を洗浄する装置であり、図1に示すように、筐体41、ガイドフレーム12a、12b、ストックエリアA1、洗浄エリアA2、昇降装置2(昇降手段)、防護壁部6(防護壁)を有する。
【0028】
育苗部材Wは、レタス等の植物を水耕栽培する際に使用される、厚みを有する略四角形の箱形状を呈する部材(栽培パネル)である。
【0029】
筐体41は、昇降装置2の周囲を囲っており、後方側には所定の間隔を置いて平行に配されたガイドフレーム12a、12bが接続されており、上方には防護壁部6(防護壁)が接続されている。すなわち、筐体41は、育苗部材洗浄装置1の本体部を構成している。
【0030】
ストックエリアA1は、複数の育苗部材Wを収容する領域である。ストックエリアA1は、育苗部材Wを縦姿勢(起立姿勢)で載置する載置部材10、押圧装置11、ガイドフレーム12a、12bを有する。「縦姿勢」とは、四角形のいずれか一辺を下方に配置し、反対側の辺を上方に配置した状態を意味している。
【0031】
載置部材10は、育苗部材洗浄装置1の前後方向に延びる一対のレール部材13a、13bを備えている。レール部材13a、13bは、横断面が略コの字形を呈する部材であり、互いに離間して平行に配置されている。レール部材13a、13bの上面は、育苗部材Wを載置する載置面14a、14bを構成している。すなわち、載置面14a、14bには、縦姿勢(起立姿勢)の四角形の育苗部材Wの側辺部S(下辺部)が載置される。
【0032】
図1図4に示すように、押圧装置11は、押圧部材15、駆動機構16を備えている。押圧部材15は、育苗部材Wの後側の面に当接する板状の部材である。すなわち、押圧部材15は、育苗部材Wを前方側へ面で押圧することができる。
【0033】
駆動機構16は、押圧部材15を前後方向に移動させる機能を備えた装置である。
図3図4に示すように、駆動機構16は、自走体17と、水平ガイドラック18a、18bを備えている。
自走体17は、載置台19と、モータ内蔵ローラ20を有している。載置台19は、押圧部材15を載置する部材であると共に、モータ内蔵ローラ20の周囲を覆う筐体を構成している。モータ内蔵ローラ20のローラは載置台19に固定されている。すなわち、モータ内蔵ローラ20を駆動すると、両端の軸20a、20bが回転する。軸20a、20bには、ピニオンギヤ21a、21bが装着されている。
【0034】
水平ガイドラック18a、18bは、レール部材13a、13b内に設けられており、前後方向に直線状に延びている。水平ガイドラック18a、18bの歯面は上向きである。この水平ガイドラック18a、18bに、自走体17側のピニオンギヤ21a、21bが係合している。そして、モータ内蔵ローラ20を駆動すると、ピニオンギヤ21a、21bが回転し、自走体17が、水平ガイドラック18a、18b(レール部材13a、13b)に沿って前後方向に移動する。
【0035】
図1図2に示すガイドフレーム12a、12bは、互いに離間して平行に対向配置されたフレーム部材であり、両者の間にストックエリアA1が形成されている。ガイドフレーム12a、12bの間(ストックエリアA1)に、前述の駆動機構16が配置されている。
【0036】
図2に示すように、ストックエリアA1には、縦姿勢(起立姿勢)であって隣接する複数の四角形の育苗部材Wの表裏面の投影面が重なる状態で収容することができる。具体的には、複数の育苗部材Wの表裏面を重ねた状態でストックエリアA1に収容することができる。
【0037】
複数の育苗部材Wの束の後端側が、押圧装置11(押圧部材15)で押圧され、育苗部材Wの束の前端側が、後述の昇降装置2の鉛直ラック部材24a、24bの平坦部35a、35bに当接している。すなわち、複数の育苗部材Wの束を後方側から押圧装置11が押圧し、最も前方側の育苗部材Wが平坦部35a、35bに押し付けられている。そのため、育苗部材Wの束は、前方側と後方側の両端が支持されており、縦姿勢を維持することができる(縦姿勢維持手段)。また、押圧装置11は、育苗部材Wを前方へ送り出す送り出し手段として機能する。
【0038】
次に昇降装置2(昇降手段)について説明する。
昇降装置2は、ストックエリアA1の前側に配置されており、育苗部材Wを上方向に移動させることができる。図3に示すように、昇降装置2は、下方側駆動機構部22と上方側駆動機構部23で構成されている。下方側駆動機構部22の上方に、上方側駆動機構部23が配置されている。
【0039】
下方側駆動機構部22は、ストックエリアA1の前方に配置されており、鉛直ラック部材24a、24bと、水平軸周りに回転する駆動ローラ25を有する。
【0040】
駆動ローラ25は、モータ内蔵ローラであり、所定の高さ位置で水平姿勢で筐体41(図1図2)に取り付けられている。駆動ローラ25の筒状のローラ本体の両端部分にピニオンギヤ34a、34bが設けられている。駆動ローラ25を駆動すると、ピニオンギヤ34a、34bが同時に回転する。
【0041】
鉛直ラック部材24a、24bは、長尺の部材であって、平坦部35a、35bと、ラック歯面33a、33bを有する。ラック歯面33a、33bと平坦部35a、35bは、互いに背中合わせの位置関係にある。
【0042】
鉛直ラック部材24a、24bは、ラック歯面33a、33bが前側となり、平坦部35a、35bが後ろ側となるように、鉛直姿勢で互いに離間して平行に対向配置されている。また、鉛直ラック部材24a、24bは、駆動ローラ25の後ろ側に配置されている。鉛直ラック部材24a、24bのラック歯面33a、33bは、駆動ローラ25のピニオンギヤ34a、34bと係合している。
【0043】
鉛直ラック部材24a、24bの互いに対向する面の下端付近の部位には、ピン27a、27bが設けられている。また、鉛直ラック部材24a、24bにおけるピン27a、27bの下方には、それぞれ下部ストッパ28a、28bが設けられており、ピン27a、27bの上方には、それぞれ上部ストッパ29a、29bが設けられている。すなわち、ピン27a、27bは、下部ストッパ28a、28bと上部ストッパ29a、29bの間に設けられている。下部ストッパ28a、28b、及び上部ストッパ29a、29bは、突起状の部位であり、互いに接近する方向に突出している。
【0044】
ピン27a、27bには、支持部材26a、26bが取り付けられている。支持部材26a、26bは、ピン27a、27bを中心に回動可能である。
【0045】
支持部材26a、26bは、台形形状を呈しており、下部当接部30a、30b、載置部31a、31b、及び斜面部32a、32bを有している。下部当接部30a、30bと載置部31a、31bは平行である。斜面部32a、32bは、下部当接部30a、30bと連続している。斜面部32a、32bは、下部当接部30a、30bから離れた部位ほど載置部31a、31bに接近し、支持部材26a、26bの一端には先細りした部位が形成されている。
【0046】
支持部材26a、26bにおける、載置部31a、31bに近い側であって、先細りした部位から離れた部位が、ピン27a、27bを介して鉛直ラック部材24a、24bに回動可能に取り付けられている。
【0047】
鉛直ラック部材24a、24bには、支持部材26a、26bの回動を制限する下部ストッパ28a、28b(符号28aは図示できず)と、上部ストッパ29a、29b(符号29bは図示できず)が設けられている。下部ストッパ28a、28bと上部ストッパ29a、29bは、ピン27a、27bの上下の位置に設けられている。
【0048】
支持部材26a、26bは、下部当接部30a、30bが下部ストッパ28a、28bに当接することにより、それ以上の回動が阻止される。このとき、載置部31a、31bは、鉛直ラック部材24a、24bと直交し、載置部31a、31bは水平状態になる。また、支持部材26a、26bは、鉛直ラック部材24a、24bの平坦部35a、35bよりも後方に突出する。
【0049】
この状態から下部当接部30a、30bが下部ストッパ28a、28bから離れる方向に、支持部材26a、26bがピン27a、27bを中心に回動すると、載置部31a、31bが上部ストッパ29a、29bに当接し、支持部材26a、26bのそれ以上の回動が阻止される。このとき、支持部材26a、26bが、鉛直ラック部材24a、24bの平坦部35a、35bよりも前側にくる。
【0050】
載置部31a、31bが上部ストッパ29a、29bに当接した状態の支持部材26a、26bは、ピン27a、27b回りの回転に関して思案点を超えておらず、外力による支持がない状態では、支持部材26a、26bの自重による回転モーメントで、載置部31a、31bが上部ストッパ29a、29bから離れる方向に回動する。そして、支持部材26a、26bは、下部当接部30a、30bが下部ストッパ28a、28bに当接するまで回動する。すなわち、支持部材26a、26bは、下部当接部30a、30bが下部ストッパ28a、28bに当接した状態が、最も安定した状態(姿勢)となる。このとき、載置部31a、31bは、水平状態になり、平坦部35a、35bよりも後方へ突出する。
【0051】
鉛直ラック部材24a(24b)の外側の面には、ガイドコロ36a、37a(36b、37b)が設けられている。ガイドコロ36a、37aは、鉛直ラック部材24aの上下に離間した位置に設けられている。同様に、ガイドコロ36b、37bは、鉛直ラック部材24bの上下に離間した位置に設けられている。
【0052】
ガイドコロ36a、37aは、筐体と一体の鉛直ガイドレール38a内に配置されている。鉛直ガイドレール38aは、横断面がコの字形を呈する部材であり、コの字の内部の領域にガイドコロ36a、37aが配置されている。すなわち、ガイドコロ36a、37aが鉛直ガイドレール38aに支持されており、鉛直ラック部材24aが上下移動する際には、ガイドコロ36a、37aが鉛直ガイドレール38aに沿って移動する。ガイドコロ36b、37bと鉛直ガイドレール38bも、ガイドコロ36a、37aと鉛直ガイドレール38aと同様の関係である。
【0053】
上方側駆動機構部23は、水平姿勢の駆動ローラ39と従動ローラ40(回転部材)を有する。駆動ローラ39はモータ内蔵ローラであり、従動ローラ40は空転ローラである。駆動ローラ39と従動ローラ40の少なくとも一方の軸芯は、水平方向に移動可能であり、両ローラ39、40の間隔を広げることができる。すなわち、図5(c)に示すように、従動ローラ40を駆動ローラ39側へ付勢(押圧)する付勢機構45(付勢手段)が設けられている。両ローラ39、40の間に、育苗部材Wが通過する際、両ローラ39、40の間隔が育苗部材Wの幅と一致するように、付勢機構45の付勢力に抗して拡がり、両ローラ39、40の間から育苗部材Wがなくなると、両ローラ39、40の間隔が狭まるように、付勢機構45は作用する。付勢機構45は、本実施形態では圧縮バネを採用しているが、その他の付勢手段(例えば、流体圧を利用するもの等)であってもよい。
【0054】
両ローラ39、40の間に育苗部材Wが侵入する際、付勢機構45によって両ローラ39,40の間隔が広げられ、育苗部材Wは両ローラ39、40によって挟持される。具体的には、育苗部材Wが両ローラの間隔を押し広げながら両ローラ39、40間に侵入する。そして、駆動ローラ25が回転駆動されると、育苗部材Wが上昇し、上方側駆動機構部23(両ローラ39、40)の上方へ排出される。また、駆動ローラ39を逆回転させることにより、育苗部材Wを下降させることもできる。ここで、両ローラ39、40の間隔は変更可能であるので、育苗部材Wの幅寸法(厚み寸法)に容易に対応することができる。すなわち、両ローラ39、40は、幅寸法の異なる育苗部材Wを容易に挟持することができる。
【0055】
昇降装置2の下方側駆動機構部22と上方側駆動機構部23の間に、洗浄エリアA2が設けられている。洗浄エリアA2には、洗浄液(洗浄水)を噴射する噴射ノズル50(洗浄手段)が設けられている。すなわち、洗浄エリアA2は、噴射ノズル50によって噴射された洗浄水(洗浄液)が届く範囲である。噴射ノズル50は、洗浄エリアA2を通過する育苗部材Wの周囲に配置されており、育苗部材Wに向けて洗浄液を噴射供給することができる。
【0056】
図1図3に示すように、噴射ノズル50は、配管の途中の部位に設けた複数の孔で構成されている。なお、図5図19では、描写の都合上、単体形状のノズルで噴射ノズル50を描写しているが、図1図3のものと同一のものである。
【0057】
防護壁部6(防護壁)は、筐体41に固定された板状の部材で構成されており、ストックエリアA1と昇降装置2の間に設けられている。
【0058】
図1に示すように、防護壁部6は、洗浄エリアA2の後ろ側と、左右両側の三方を覆うように構成されている。そのため、洗浄エリアA2で噴射ノズル50から噴射された洗浄水が、後ろ側(ストックエリアA1側)へ飛散することが阻止されている。
【0059】
防護壁部6の上部は、前方側へ突出するように湾曲した湾曲部55(ガイド部材)が設けられている。湾曲部55は、洗浄エリアA2の上方を覆っており、洗浄エリアA2を通過した育苗部材Wの上端が当接する高さ位置に配置されている。湾曲部55は、上に凸となるように湾曲するガイド部材である。本実施形態では、湾曲部55は防護壁部6と一体の形態である場合について説明したが、湾曲部55は、防護壁部6とは別部材とし、防護壁部6に取り付けてもよい。
【0060】
次に、育苗部材洗浄装置1の動作について図5図10を参照しながら説明する。
図5(a)~図5(c)に示すように、育苗部材洗浄装置1は、ストックエリアA1に複数の育苗部材W1~W4をストックしている。図5では、以降の図6図10の描写を理解し易くするために、敢えて育苗部材W1~W4の束と、昇降装置2(鉛直ラック部材24a、24b)とが離間した状態を示している。
【0061】
また、図5(a)、図5(b)では、都合上、図5(c)に示す後述の防護壁部6(ガイド部材)の描写を省略しており、図5(c)では、都合上、鉛直ラック部材24aの描写を省略している。
【0062】
実際には、育苗部材W1~W4の束は、図6(a)~図6(c)に示すように、最も後方側にある育苗部材W4が押圧装置11で押圧されており、最も前方側にある育苗部材W1が昇降装置2の鉛直ラック部材24a、24bの平坦部35a、35bに当接している。すなわち、育苗部材W1~W4の束は、ストックエリアA1で縦姿勢(起立姿勢)を維持した状態でストックされており、押圧装置11と昇降装置2の鉛直ラック部材24a、24b(平坦部35a、35b)によって挟持されている(縦姿勢維持手段)。この状態では、各育苗部材W1~W4が、自身の表裏面が重なる状態で保持されている。また、この状態では、最も前方側にある育苗部材W1が、鉛直ラック部材24a、24bに設けられた支持部材26a、26b上に載置されている。
【0063】
図6に示す状態から、昇降装置2の駆動ローラ25(下方側駆動機構部22)を駆動すると、図7(a)~図7(c)に示すように、鉛直ラック部材24a、24bが上昇し、育苗部材W1が上方へ移動する。そして、育苗部材W1は、上側から下側に順に洗浄エリアA2に入り、噴射ノズル50から噴射された洗浄水によって洗浄される。
【0064】
また、育苗部材W1は、図8(a)~図8(c)に示すように、上方側駆動機構部23である駆動ローラ39と従動ローラ40の間に進入(圧入)し、両ローラ39、40で挟持されて支持される。駆動ローラ39が駆動されると、育苗部材W1は、鉛直ラック部材24a、24b(支持部材26a、26b)から離れ、上方側駆動機構部23(駆動ローラ39及び従動ローラ40)によってさらに上方へ移動させられる。
【0065】
そして、図9(a)~図9(c)に示すように、さらに上昇した育苗部材W1の上端が、防護壁部6の湾曲部55(ガイド部材)に衝突(当接)する。上端が湾曲部55に衝突した育苗部材W1は、上方側駆動機構部23によってさらに押し上げられ、図9(c)において二点鎖線で示すように、湾曲部55に沿って前方(側方)へ倒れ、保管棚60に保管される。保管棚60に、図示しないトレイを配置し、育苗部材W1をトレイ内に投入するようにしてもよい。
【0066】
育苗部材W1が、上方側駆動機構部23に引き取られた後、下方側駆動機構部22の駆動ローラ25を逆方向に駆動し、鉛直ラック部材24a、24bを下降させる。その際、後方に突出した支持部材26a、26bの下部当接部30a、30bが、図10(a)に示すように、下方の育苗部材W2の上端に当接し、ピン27a、27bを中心に若干回動して傾斜する。
【0067】
鉛直ラック部材24a、24bが、さらに下降すると、図10(b)に示すように、支持部材26a、26bが、育苗部材W2に押圧され、ピン27a、27bを中心にさらに回動し、斜面部32a、32bが、鉛直ラック部材24a、24bの平坦部35a、35bが面する平面と一致する。すなわち、支持部材26a、26bが鉛直ラック部材24a、24b(平坦部35a、35b)よりも後方側に突出しなくなる。換言すると、支持部材26a、26bは、前方側へ退避する。その結果、鉛直ラック部材24a、24bは、育苗部材W2の前方側を下降することができるようになる。その際、支持部材26a、26bは、育苗部材W2の前方側の面を擦りながら下降する。
【0068】
そして、支持部材26a、26bが、育苗部材W2の下端よりも下方に移動すると、支持部材26a、26bは、後方へ突出する。そのため、図10(c)に示すように、支持部材26a、26bの載置部31a、31b上に育苗部材W2を載置することができる。以下、前述の動作を繰り返し、ストックエリアA1の残りの育苗部材W2~W4を、順に洗浄エリアA2で洗浄すると共に、保管棚60に保管する。
【0069】
次に、高さ寸法が小さい育苗部材W5~W8を育苗部材洗浄装置1で洗浄する場合について、図11図19を参照しながら説明する。育苗部材W5~W8は高さ寸法が小さいため、図5図10に示す育苗部材W1~W4のように、下方側駆動機構部22側から上方側駆動機構部23側に、受け渡すことができない。
【0070】
育苗部材W5~W8の高さが低い場合であっても、以下に説明するように育苗部材洗浄装置1を操作することにより、各育苗部材W5等を洗浄し、保管棚60に保管することができる。
【0071】
まず、図11(a)~図11(c)に示す状態から、昇降装置2の駆動ローラ25を正回転駆動し、図12(a)~図12(c)に示すように、鉛直ラック部材24a、24bを上昇させる。ストックエリアA1に残された育苗部材W6~W8の束は、押圧装置11によって押圧されて前方へ移動し、鉛直ラック部材24a、24bの平坦部35a、35bの下端付近の部位に当接して停止する。すなわち、育苗部材W6が、育苗部材W5の直下で待機する。
【0072】
育苗部材W5の高さ寸法が小さいため、鉛直ラック部材24a、24bが、最も高い位置まで移動しても、育苗部材W5は、上方側駆動機構部23(駆動ローラ39及び従動ローラ40)に係合することができない。
【0073】
次に、駆動ローラ25を逆回転駆動し、図13(a)~図13(c)に示すように、鉛直ラック部材24a、24bを、一旦下降させる。その際、支持部材26a、26bは、下方で待機した育苗部材W6に当接し、育苗部材W6を回避しながら下降する。
【0074】
そして、図14(b)、図14(c)に示すように、育苗部材W5が育苗部材W6上に重なる。さらに鉛直ラック部材24a、24bが下降すると、図15(b)、図15(c)に示すように、支持部材26a、26b上に育苗部材W6が載置される。この状態で、駆動ローラ25を正回転させ、鉛直ラック部材24a、24bと共に、育苗部材W5、W6を上昇させる。育苗部材W5は、育苗部材W6上に積み重なっているため、図12に示す状態のときよりも、育苗部材W6の高さ分だけ鉛直ラック部材24a、24bに対して高い位置にある。
【0075】
そのため、鉛直ラック部材24a、24bが上昇すると、図16(a)~図16(c)に示すように、育苗部材W1は、上方側駆動機構部23の駆動ローラ39、従動ローラ40の間に進入して挟持される。そして、駆動ローラ39が駆動され、育苗部材W5のみがさらに上昇し(図17(b)、図17(c))、育苗部材W5は、湾曲部55(ガイド部材)に沿って側方へ移動し、保管棚60に保管される(図18(c))。
【0076】
育苗部材W6は、鉛直ラック部材24a、24bの支持部材26a、26b上に残っている。また、育苗部材W6の直下には、押圧装置11に押圧されて移動した後続の育苗部材W7が待機している。そのため、鉛直ラック部材24a、24bが下降すると、図18(a)~図18(c)に示すように、途中で育苗部材W6が育苗部材W7上に載置され、図19(a)~図19(c)に示すように、最終的に育苗部材W7が支持部材26a、26b上に載置される。
【0077】
以下、上述の動作を繰り返すことにより、ストックエリアA1の育苗部材W7までは、洗浄エリアA2で洗浄すると共に、保管棚60へ投入することができる。
【0078】
最も後ろ側の育苗部材W8は、例えば、育苗部材に代わるダミーの部材を育苗部材W8の後方側に配置することにより、洗浄エリアA2で洗浄すると共に、保管棚60へ投入することができる。
【0079】
以上説明した例では、洗浄エリアA2が、ストックエリアA1よりも上方にある場合について説明したが、洗浄エリアA2は、ストックエリアA1よりも下方に設けてもよい。すなわち、育苗部材を、昇降装置2によって洗浄エリアA2がある下方向に移動させる。この場合には、育苗部材に噴射供給されて飛散した洗浄水が、上方にあるストックエリアA1側に飛散しにくく、ストックエリアA1にストックされた待機中の育苗部材が汚れることを回避することができる。
【0080】
本実施形態では、昇降装置2(下方側駆動機構部22)として鉛直ラック部材24a、24bと、ピニオンギヤ34a、34bを有する駆動ローラ25を使用する例を示したが、下方側駆動機構部22としては、ベルトコンベヤ式、ロボットアーム式等、様々な昇降手段を採用することができる。
【0081】
また、本実施形態では、噴射ノズル50を、育苗部材Wの片方の面側からのみ噴射した例を示したが、レイアウトが許す限り、様々な位置に噴射ノズル50を設置することができる。
【0082】
育苗部材洗浄装置1の動作は、図示しない制御装置によって制御するのが好ましい。また、ストックエリアA1に育苗部材Wが存在することを検知するセンサや、鉛直ラック部材24a、24bの昇降位置を検知するセンサを設けるのが好ましい。
すなわち、各センサによって検出された信号に基づいて、制御装置が育苗部材洗浄装置1の各動作を司るようにするのが好ましい。
【0083】
また、育苗部材Wの高さに応じて、防護壁部6(湾曲部55)の高さ位置を変更することができるのが好ましい。すなわち、防護壁部6(湾曲部55)を昇降させる機構を設けるのが好ましい。このような機構を設けると、育苗部材の高さ寸法に応じて、湾曲部55の高さを適切に設定し、洗浄後の育苗部材を適切に保管棚60へ排出することができる。
【0084】
本実施形態に係る育苗部材洗浄装置1では、育苗部材W1~W4、W5~W8を縦姿勢で重ねてストックエリアA1にストック(保管)し、昇降装置2によって育苗部材W1~W4、W5~W8を、順に上方又は下方の洗浄エリアA2を通過させて洗浄するので、専有する床面積が従来の育苗部材洗浄装置よりも小さい。
【符号の説明】
【0085】
1 育苗部材洗浄装置
2 昇降装置(昇降手段)
6 防護壁部(防護壁)
11 押圧装置(縦姿勢維持手段、送り出し装置)
22 下方側駆動機構部(昇降手段)
26a、26b 支持部材
35a、35b 鉛直ラック部材の平坦部(縦姿勢維持手段)
39 駆動ローラ(回転部材)
40 従動ローラ(回転部材)
50 噴射ノズル(洗浄手段)
55 湾曲部
A1 ストックエリア
A2 洗浄エリア
W 育苗部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19