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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ロープ(ザイル)降下用臨時支点装置
(51)【国際特許分類】
   A62B 1/18 20060101AFI20240509BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A62B1/18 A
E04G21/32 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020147135
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022013540
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】517059447
【氏名又は名称】釘尾 育実
(72)【発明者】
【氏名】釘尾 育実
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-056261(JP,U)
【文献】実開昭64-020865(JP,U)
【文献】実開昭57-095142(JP,U)
【文献】特開平08-158630(JP,A)
【文献】特開2017-193831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0200543(US,A1)
【文献】中国実用新案第207591122(CN,U)
【文献】実開昭51-110399(JP,U)
【文献】特開2000-116450(JP,A)
【文献】実開昭58-157150(JP,U)
【文献】登録実用新案第3163339(JP,U)
【文献】特開2017-176780(JP,A)
【文献】特開2001-178835(JP,A)
【文献】特開2017-185039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 1/18
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
〔固定用ピン〕の抜去により着脱可能で対象物の形状に適応する〔自在受け板〕と摺動性や耐摩耗性に優れる樹脂とアルミ合金の2層構造で形成され、端部にゴム製の〔ボールエンド〕とを備える〔メインチーズ〕とその近傍に降下用のロープを接続する〔スイベル〕とを有する〔メインフレーム〕、対象物の間口に応じて必要数を選択可能な複数の〔延長パーツ〕と〔ボールエンド〕を有する〔エンドパーツ〕とを連結して、それを外包する形状で〔締付けハンドル〕と45°前後の首振り機能を有する〔自在押し板〕が設けられ、〔送りネジ〕により挿通して連結される〔可動チーズ〕にて構成されていることを特徴とするロープ降下用の臨時支点装置。
【請求項2】
〔メインフレーム〕〔延長パーツ〕〔エンドパーツ〕には、それぞれ対象となる間口へ対応出来るように一定の間隔で〔固定ピン用ガイド穴〕が配設され、加えて前述の各パーツの端部は、凹設状と凸設状に形成されており、これを連結することで、各パーツ同士が重合するように連設され、前記〔固定ピン用ガイド穴〕も重合したままの状態で〔固定用ピン〕の任意の位置での連結が可能であり、これらの構造により、設置可能な寸法を最大限まで確保することが出来、かかる応力(荷重)に対する強度は、同外径を有す角棒状のアルミ合金と同程度に担保される構成を備え、前記〔固定用ピン〕により連接された〔メインフレーム〕〔延長パーツ〕〔エンドパーツ〕を外包する構造の〔可動チーズ〕には、前述の各パーツとを任意の位置で嵌合し固定するための〔固定ピン用ガイド穴〕が配設されていることを特徴とする請求項1に記載のロープ降下用臨時支点装置。
【請求項3】
〔メインチーズ〕に配設された〔固定用ピン〕により着脱可能な角度可変式の〔自在受け板〕と〔メインチーズ〕に挿通し〔締付けハンドル〕と連結された45°前後の首振り機能を有する〔自在押し板〕にて対象物を張設することより、確実に支持出来ることを特徴とする請求項1に記載のロープ降下用臨時支点装置。
【請求項4】
複数の〔延長パーツ〕を重合させて連設される(連結させる)ことで2mを超える間口にも対応可能な適応性を有することを特徴とする請求項1に記載のロープ降下用の臨時支点装置。
【請求項5】
〔メインチーズ〕の近傍に配設され降下用のロープの動きへ追従変位する〔スイベル〕を備えることを特徴とする請求項1に記載のロープ降下用臨時支点装置。
【請求項6】
対象とする開口部の短辺と長辺のそれぞれ一辺が壁や柱、床などに接している環境であっても設置および張設が可能となるようにゴム製の〔エンドボール〕を各端部に有し、摺動性や耐摩耗性に優れる樹脂とアルミ合金の2層構造で円柱状に形成された〔メインチーズ〕と〔エンドパーツ〕〔延長パーツ〕を床面に接地させ、開口部へ挿嵌出来るようにした構成を特徴とする請求項1ないし4に記載のロープ降下用臨時支点装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸垂下降する人間を任意に停止又は速やかに下降させるためのロープ(ザイルとも称される。以後[ロープ]と記す)降下作業に関するものであり、特に、即応性、迅速性を要する救助活動や司法警察権の執行時などの特殊作業等に好適な運用性に優れたロープ降下作業における装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物外壁作業等の際に、ワイヤーロープを用いてゴンドラによる下降や停止または上昇を任意に行う、いわゆるゴンドラ作業が知られている。
ロープを用いた災害時の救助活動や建物外壁作業等の際に懸垂下降または登攀する人間を任意に停止又は緩下降させるためには、屋上部の笠木(パラペットとも称される)などに常設設置されている前述したゴンドラ用の跨座式突梁や(パラペット)スタンションに類した装置が用いられている。(例えば、特許文献1ならび特許文献2参照)
【0003】
しかしながら、救助活動など有事の際、救助隊員らが対象となる建築構造物の構造に係る物理的な理由(例えば、屋上へと至る扉が施錠されていたり、屋上へ至る通路が遮断され、その先への進入が困難など)により屋上への侵入そのものが出来ない場合もある。
そうした場合、前述した屋上部の建築躯体(笠木)や支持金物などを利用したロープの展張が行えず、救助用ロープを用いた屋上からの救助活動(いわゆるラペリング作業)が行えない事態も生じる。
【0004】
そして、このようなラペリング作業では、隠密行動(例えば、人質籠城事案における被疑者確保のための近接接近行動や危機対処機関の特殊部隊等による急襲制圧作戦などは前向きの降下も)が求められる場合があり、かかる用途においては、作業時の即応性、迅速性と共に好適な姿勢の保持が必須となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-158630公報
【文献】特開2017-193831公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1ならび特許文献2に記載された先行技術では、前述した建築構造物の屋上へ人が侵入可能で且つ、降下用資機材の搬入が可能であることが必須の条件となる。前述の条件を満たせない場合、救助活動や警察機関の被疑者確保のための接近行動、危機対処機関の特殊部隊等の降下作業に支障をきたす(被疑者等の対象者や敵の部隊などに居所や隠密行動を察知されたり、目標とする地点まで到達できない)といった問題が生じていた。
【0007】
また、前述した先行技術の設置条件である屋上部に侵入できない場合(状況において)は、降下用ロープを結索する支点の構成要件を満たせず、結果、ロープを用いた降下作業自体を断念せざるを得ないことも多い。つまり、救助活動や刑事事案、警備事案等は、その場所を問わず発生するものであり、ほぼ如何なる場所や環境(例えば、ビルの中間階層にある部屋や居室などの仕切りドアや通路(廊下)、その他の開口部、窓枠などの建築躯体の無い空間域が多い場所)であっても、対応できることが望ましい。
【0008】
そこで、本発明は上述した従来技術等の問題点に鑑みてなされたものであり、設置場所における適応性、降下作業時の即応性、迅速性と共に好適な姿勢の保持が確保され、さらには前記した作業を行う際に、必ず伴う装置の携行運搬性にも優れた[ロープ降下用の臨時支点装置]を簡易に構成するものである。
【0009】
また、部屋や居室内のみに限定されることなく、間口が2mを超える公共の施設や学校などの出入口(ドア)などにも設置が可能であり、さまざまな救助活動、刑事事案や警備事案など多くの現場において、公共の利益等に大いに資するものである。
【0010】
さらには、建物外壁作業や熱源器、空調機などの更新工事や保守作業等に係る産業の分野のおいても、自己確保(レストレイン)が担保(確保)出来ない環境下で行う作業やロープ高所作業などにおいて、作業者の安全性を担保しながらも、作業可能となる対象範囲の拡大や作業時間の短縮化が可能となるなど、さまざまな利益がもたらされることで、同産業分野の発展にも寄与することが出来る。
【課題を解決するための手段】
⇒上記の課題を解決するために、本発明のロープ降下用の臨時支点装置は、以下の手段を採用することにより、以下の作用効果を生じるようにした。
本考案に係るロープ降下用の臨時支点装置の構成は、主に対象となる空間域に架設するための〔メインチーズ〕へと挿通された〔固定用ピン〕により着脱可能な〔自在受け板〕を有する〔メインフレーム〕とそれを外包し、〔自在押し板〕と〔締付けハンドル〕とが挿通し、連結された〔可動チーズ〕と異なる間口に対応するために選択可能な複数の〔延長パーツ〕と〔エンドパーツ〕ロープ等を接続するための〔スイベル〕とから成る。
設置前に対象となる間口を測定する。次いで〔延長パーツ〕の要または不要、必要数を選択し〔メインフレーム〕〔延長パーツ〕〔エンドパーツ〕の側面に等間隔で配設された〔固定ピン用ガイド穴〕と必要に応じて選択された〔延長パーツ〕と〔可動チーズ〕に配設された〔固定ピン用ガイド穴〕とが合致したら〔固定用ピン〕を用いて挿通させ、対象となる間口に合わせて緩嵌させた状態にする。
続いて、前記〔メインフレーム〕の軸上から垂直に継合される〔メインチーズ〕に配設された〔自在受け板〕と〔可動チーズ〕に挿通して〔自在押し板〕に連結された〔締付けハンドル〕を回して〔自在押し板〕を任意の位置へ移動させ、対象物へと押し付けて張設することにより、ロープ等を接続するための支点を構成する。
これにより〔メインチーズ〕の近傍に配設された〔スイベル〕へロープを挿通させ、接続することで(降下作業を開始する際に必要とされる)ロープ用の支点は、確実に構成(担保)される。
また、張設する場所を任意での選択が出来、対象物への応力集中を極力発生させない構成(建築躯体へと荷重を分散させる)により対象物の張設部分を変形や損壊させることなく、当該性能をそのまま担保することが出来る。つまり、設置場所における適応性、簡易性、即応性、迅速性、携行運搬性、そして強度の担保性など複数の要件を具備することを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る[ロープ降下用の臨時支点装置]は、設置場所における適応性、作業時の即応性、迅速性、携行運搬性が担保され、更には好適な姿勢が得やすくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る[ロープ降下用臨時支点装置]は、各種の降下作業において、設置場所をさほど限定されず、救助活動などにおいて求められる即応性、迅速性、携行運搬性などを満たし、且つ、司法警察権の執行時などにおいても好適な姿勢の保持を得やすくすることで、任務完遂の一助となるいう点からも、その効果は大きい。
また、産業分野のおいては、ロープ高所作業に係る作業者や熱源器、空調機などの更新工事や保守作業等に係る産業の分野のおいても、自己確保(レストレイン)が担保(確保)出来ない環境下で行う作業者の安全性をも担保出来得る。
したがって、作業可能となる対象範囲の拡大や作業時間の短縮化が可能となるなど、さまざまな社会的利益が期待出来る。さらには、同産業分野の発展にも寄与することが出来る。
その結果、簡易な構成でありながら、ロープ降下作業のみならず、墜落を防止するための自己確保(レストレイン)を必要とする高所での作業など、様々な作業の高効率化と作業者の安全性の向上を同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1に係る[ロープ降下用の臨時支点装置]の構成を示す模式的側面図である。
図2】本発明の実施形態1に係る[ロープ降下用の臨時支点装置]の構成を示す模式的平面図である。
図3】本発明の実施形態1に係る[ロープ降下用の臨時支点装置]の使用状態とかかる応力を示す模式的側面図である。
図4】本発明の実施形態1に係る[ロープ降下用の臨時支点装置]の使用状態を示す模式的平面図である。
図5】本発明の実施形態2に係る[ロープ降下用の臨時支点装置]の使用状態とかかる応力の構成を示す模式的側面図である。
図6】本発明の実施形態2に係る[ロープ降下用の臨時支点装置]の使用状態を示す模式的平面図である。
図7】本発明の実施形態3に係る[ロープ降下用の臨時支点装置]の使用状態を示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態1
以下に、本発明に係る[ロープ降下用の臨時支点装置]の一実施形態について、図面を参照して説明する。ここで図1図2は、本実施の形態1に係る[ロープ降下用の臨時支点装置]の構成を示す模式図、図3図5は、[ロープ降下用の臨時支点装置]の使用状態とかかる応力を示す模式図、図4図6図7は、使用状態を示す模式図である。
<実施形態1>
【0015】
本実施形態1に係る[ロープ降下用の臨時支点装置]は、図1図2に模式的に示すように略ト字型形状の〔メインフレーム〕には、その端部から一定の距離を設けて配設され、アルミ合金と耐摩耗性に優れる樹脂の2層から成り、円柱状に形成された〔メインチーズ〕、そしてその端部に〔ボールエンド〕と中間部には〔固定用ピン〕を挿通させて連結させた〔自在受け板〕とが一体的に形成されている。
また、前記〔メインチーズ〕の近傍には、ロープの結索始点となる〔スイベル〕が並設され、そこから一定の距離を設けた〔メインフレーム〕の側面には、等間隔で〔固定用ピン〕を用いて挿通させるための〔固定ピン用ガイド穴〕が配設されている。
これを使用して〔メインフレーム〕と〔エンドパーツ〕とを〔固定用ピン〕を用いて挿通させ、その両端部にボールエンドが配設される状態に連結する。
略T字型形状の〔可動チーズ〕には、その端部から一定の距離も設けて配設される角柱状の支管が形成されている。その中間部には〔送りネジ〕を挿通させて連結させた〔締付けハンドル〕と45°前後の首振り機能を有する〔自在押し板〕とが一体的に形成され、更には〔可動チーズ〕と〔メインフレーム〕または〔延長パーツ〕〔エンドパーツ〕とを〔固定用ピン〕を挿通させて連結させるための〔固定ピン用ガイド穴〕が配設されている。
【0016】
ロープを結索するための〔スイベル〕は、ロープの展張(荷重の発生する)方向へ自然と追従変位する構成となっている。
また、複数のロープを直接接続(直接結索しても良い)または、間接的に接続することが可能であり、カラビナなどの器具を用いることが出来る利点もある。
加えて〔スイベル〕に直接〔ロープ〕や〔スリング〕などを挿通させるか、または、〔スイベル〕の近傍に巻着して連結することで、バックアップ用途またはガイライン用としての利用を可能としている。([0030]にて『ガイライン』を解説する)
【0017】
また、本実施の形態1に係る[ロープ降下用の臨時支点装置]は、図3図4に模式的に示すにおいて〔メインフレーム〕と〔可動チーズ〕の端部は、対象となる間口(空間域)の長短に関わらず〔スイベル〕を介して発生する応力(荷重)を受け持つように配設される。
【0018】
〔メインフレーム〕と〔可動チーズ〕とを対象物へと押し付けて張設する際に対象物の凹凸がある(例えば、窓サッシのレール部など)場合でも適応出来るように当り面が追従可変し、且つ、着脱可能な〔自在受け板〕と任意の張設が可能となる〔締付けハンドル〕が連結されている45°前後の首振り機能を有する〔自在押し板〕が配設されるているため、その設置する高さについての制限は無く、開口部の上端や中間部または下端など、任意で選択することが可能である。(例えば、予め好適なロープの降下姿勢を得たい場合は、その開口部の上端へ設置することにより、降下者に接続された下降器との間に必要となる高低差を自然と担保することが出来る)
<実施形態2>
【0019】
次に、本発明の実施形態2について図5図6を参照して説明する。本実施形態は間口が2mを超える大型の窓や両開きドア(例えば、公共の施設や教室などの出入口)などを模した対象物に適応させる際の使用状態とかかる応力を示している。
実施形態1において許容(適応)可能な間口を超える場合は、前述の〔延長パーツ〕を〔メインフレーム〕と〔エンドパーツ〕との間に必要数を連結して対象となる空間に張設する。先の実施形態と同様な部材や手順に関しては、同様な符号を付し、その詳細な説明は省略する。
<実施形態3>
【0020】
続いて、本発明の実施形態3について図7を参照して説明する。本実施形態は、ドアや開口部に接する長辺側の一辺が、壁や柱などと接していて、実施形態1と2において説明した張設の方法では設置が出来ない場合の使用状態を示している。
図7に模式的に示すように、開口部の長辺側の一辺は壁や柱と接しており、短辺側の一辺も床面と接している。そこで、前述の制限を受けて(壁など他の建築躯体と接して)いない短辺側の一辺と長辺側の一辺を結んだ対角線上に張設した使用状態を示している。
先ず、前記の対角線の長さを測定する。次いで〔延長パーツ〕の必要数を選択して〔メインフレーム〕と〔エンドパーツ〕と連結させ、対象となる空間域に対して緩嵌する程度の状態にする。続いて〔メインチーズ〕に連結された〔自在受け板〕は〔固定用ピン〕を抜去して取外す。次いで〔メインチーズ〕の円柱部分を制限を受けていない側の天面に接触させながら、壁や柱と接触するまで移動させる(必ず接触させなくてもよい)。続いて〔エンドパーツ〕の端部にある〔ボールエンド〕を制限を受けていない側の床面に接地させる。続けて〔メインフレーム〕に継合されている〔メインチーズ〕が前述の天面へ接触させたままの状態を保持する。そして〔自在押し板〕にて張設が出来るように〔可動チーズ〕の作用する範囲内を見定め〔メインフレーム〕とを〔固定用ピン〕で挿通させ連結させる。その状態で〔締付けハンドル〕を回して連結されている〔自在押し板〕を制限を受けていない長辺側の一辺に押し当てて張設する。
【0021】
〔自在受け板〕と近傍にある〔ボールエンド〕へと至る〔メインフレーム〕の天面と〔自在押し板〕と近傍にある〔ボールエンド〕へと至る〔可動チーズ〕の天面には対象物保護の観点から、緩衝作用のある素材を配した方が良い。
【0022】
〔メインチーズ〕に連結された〔自在受け板〕は〔固定用ピン〕を抜去することにより取外すことが出来る。また、予め摺動性と耐摩耗性に優れる樹脂を用いて円柱状に形成されている。これにより、建築躯体部分(例えば、制限を受けていない側の天面など)に接触させながら、移動させる際に対象物への攻撃性を低減出来る。
【0023】
また、ロープ降下により発生する荷重(応力)のかかる建築躯体への設置適応性を高めるという観点からは、バックアップ用ロープまたはガイライン用ロープを用いた補助的支点を別途に構成(荷重を分散)することが好ましい。
このように、前述した補助的な支点を構成することで、様々な建築構造物への適応性をも同時に実現することができる。
【0024】
尚、動的なロープ降下作業が繰り返し行われることを想定して、金属疲労の生じ難い耐衝撃性、耐腐食性、耐力性、耐磨耗性、耐熱性などの高い機械的性質を有する金属にて形成することが好ましい。尚、本実施の形態では、比較的に比重が小さなアルミ合金にて形成されている。
【0025】
また、本実施の形態では、耐候性、耐腐食性等の観点から陽極酸化処理による表面処理が施されている。
【0026】
〔メインフレーム〕〔延長パーツ〕〔エンドパーツ〕には、それぞれ対象となる間口へ対応出来るように一定の間隔で〔固定ピン用ガイド穴〕が配設されている。
加えて前述の各パーツの端部は、凹設状と凸設状に形成されており、これを連結することで、各パーツ同士が重合するように連設され、前記〔固定ピン用ガイド穴〕も重合したままの状態で〔固定用ピン〕の任意の位置での挿通(連結)が可能となるように形成されている。
これらの構造により、設置可能な寸法を最大限まで確保することが出来、かかる応力(荷重)に対する強度は、角棒状のアルミ合金と同程度に担保されている。
〔可動チーズ〕には、前述の各パーツとを任意の位置で嵌合固定をするための〔固定ピン用ガイド穴〕が配設されている。
【0027】
尚、実施の形態において、降下用ロープの適応径は、救助活動などにおいて最も多く運用されている概ね10.5から12.5mm以外にも対応できるように設定されている。
【0028】
このように〔メインフレーム〕と〔可動チーズ〕から成る簡易な構成でありながら、対象となる空間(間口)の長短にも、必要数の〔延長パーツ〕を連結して使用することで様々な場所でロープ降下用の臨時支点を構成することが出来る。また、ロープ降下作業を行う際に、必ず伴う装置の携行運搬性も含めて簡易に実現することが出来る。
したがって、救助活動や警察ならびに軍事用等特殊作業の際に要求される現場での適応性をはじめ、作業時の即応性、迅速性と共に好適な姿勢の保持を得やすくすることが出来る。また、前述した産業分野においてもロープ降下作業のみならず、墜落を防止するための自己確保(レストレイン)を必要とする高所での作業など、様々な作業の高効率化と作業者の安全性の向上を同時に実現することが出来る。
以上説明したように、本発明に係る[ロープ降下用の臨時支点装置]によれば、簡易な構成と別途に設ける補助的な支点とを構成することで、様々な建築構造物への設置が可能となり、既存の降下用ロープや付帯する下降器などの各種器材は、そのまま流用が出来る。
また、救助活動や警察ならびに軍事用等の際に要求される降下作業の即応性、迅速性と共に好適な姿勢の保持性が担保され、さらには作業を行う際に、必ず伴う装置の携行運搬性も含めて、簡易に実現することができる。
【0029】
なお、本発明の技術的範囲は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲において変更もしくは改良を加え得るものである。
【用語の説明】
【0030】
ガイラインとは、ロープワークにおいて、脆弱な支点を補助(バックアップ)または動作を制限する目的で別に設けられる支点(ロープを結索する対象物)やその接続。
【符号の説明】
【0031】
00 ロープ降下用の臨時支点装置
1 メインフレーム
11 メインチーズ
12 自在受け板
13 スイベル
2 可動チーズ
3 自在押し板
31 締付けハンドル
32 送りネジ
4 延長パーツ
5 エンドパーツ
6 固定用ピン
61 固定用ピンA
62 固定用ピンB
63 固定ピン用ガイド穴
7 ボールエンド
RP ロープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7