IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北京茵諾医薬科技有限公司の特許一覧

特許7485366活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用
<>
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図1
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図2
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図3
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図4
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図5
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図6
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図7
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図8
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図9
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図10
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図11
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図12
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図13
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図14
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図15
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図16
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図17
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図18
  • 特許-活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム、その調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/69 20170101AFI20240509BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240509BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240509BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240509BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240509BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20240509BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20240509BHJP
   A61K 49/10 20060101ALI20240509BHJP
   A61K 49/18 20060101ALI20240509BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240509BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240509BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240509BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A61K47/69
A61K39/395 N
A61K47/18
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/61
A61K49/04 210
A61K49/10
A61K49/18
A61P7/02
A61P9/04
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P43/00 101
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020505962
(86)(22)【出願日】2018-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 CN2018082850
(87)【国際公開番号】W WO2018188635
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2020-01-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】201710236679.8
(32)【優先日】2017-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519367359
【氏名又は名称】北京茵諾医薬科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING INNO MEDICINE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 101-301, 3rd Floor, No. 9 Building, Zone 4, Xishan Creative Park, Haidian District, Beijing 100195, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100221523
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】馬 茜
(72)【発明者】
【氏名】孫 潔芳
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】前田 佳与子
【審判官】石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第07/102253(JP,A1)
【文献】Journal of the American College of Cardiology,2016,Vol.68,No.16,Supplement,C49
【文献】Colloids and Surfaces B: Biointerfaces,2014,Vol.121,pp.141-149
【文献】Oncotarget,2016,Vol.7,No.23,pp.34158-34171
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システムであって、セラソームの表面は、ヒアルロン酸によって部分的に修飾され、前記ヒアルロン酸は、活性化CD44分子に特異的に結合でき、
前記セラソーム送達システムは、セラソーム小胞を含み、前記セラソーム小胞は、内部に親水性空洞を有する脂質二重層からなる閉鎖小胞であり、この小胞の表面は、無機ポリシロキサン網状構造およびカップリングされたヒアルロン酸を有し、
前記脂質二重層は、セラソーム単量体分子と、共有結合によるヒアルロン酸とのカップリングに使用されるためのジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)分子と、他の脂質分子とを、3~7:1.5~2.5:1.5~2.5の重量比で含む成分により形成され
前記セラソーム単量体分子は、
【化1】

【化2】
、および
【化3】
から選択される1つ以上であることを特徴とする、セラソーム送達システム。
【請求項2】
前記他の脂質分子は、中性リン脂質、負に帯電したリン脂質、および正に帯電した脂質から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項に記載のセラソーム送達システム。
【請求項3】
前記他の脂質分子は、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-chol)、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリエチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)および1,2-ジオレオイルオキシプロピル-N、N、N-トリメチルアンモニウムブロミド(DOTAP)から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項に記載のセラソーム送達システム。
【請求項4】
前記セラソーム小胞の粒子径の範囲は、50nm~400nmであることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
【請求項5】
前記セラソーム送達システムは、不安定プラークを標的とすることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
【請求項6】
前記セラソームは、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断、予防および/または治療のための物質を担持し、
前記物質は、不安定プラークまたは不安定プラークに関連する疾患の診断、予防および/または治療のための薬物、ペプチド、核酸、およびサイトカインから選択される1つ以上であり、
前記不安定プラーク関連疾患は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈硬化性心疾患(急性冠症候群、無症候性心筋虚血-潜在性冠状動脈性心疾患、狭心症、心筋梗塞、虚血性心疾患、突然死、ステント内再狭窄を含む)、脳動脈硬化症(脳卒中を含む)、末梢血管アテローム性動脈硬化症(頸動脈アテローム性動脈硬化症、腎動脈アテローム性動脈硬化症、下肢アテローム性動脈硬化症、上肢アテローム性動脈硬化症を含む)、大動脈解離、血管腫、血栓塞栓症、心不全、心原性ショックから選択されることを特徴とする、請求項に記載のセラソーム送達システム。
【請求項7】
前記不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患を診断するための物質は、CT用トレーサーおよびMRI用トレーサーから選択されるトレーサーであることを特徴とする、請求項に記載のセラソーム送達システム。
【請求項8】
前記CT用トレーサーは、ヨード系ナノスケール造影剤、金系ナノスケール造影剤、酸化タンタル系ナノスケール造影剤、ビスマス系ナノスケール造影剤、またはランタニド系ナノスケール造影剤から選択され、
前記MRI用トレーサーは、Gd-DTPAおよびその線状や環状のポリアミンポリカルボキシレートキレート、およびそのマンガンポルフィリンキレート、高分子ガドリニウムキレート、生体高分子修飾ガドリニウムキレート、葉酸修飾ガドリニウムキレート、デンドリマー造影剤、リポソーム修飾造影剤およびガドリニウム含有フラーレンから選択されることを特徴とする、請求項に記載のセラソーム送達システム。
【請求項9】
前記CT用トレーサーは、ヨード系造影剤、または金ナノ粒子、イオヘキソール、イオカルミン酸、イオベルソール、イオジキサノール、イオプロミド、イオビトリドール、イオメプロル、イオパミドール、イオキシラン、アセトリゾ酸、イオジパミド、イオベンザミン酸、イオグリカミン酸、ジアトリゾ酸、イオタラム酸ナトリウム、パントパック、イオパン酸、ヨードアルフィオン酸、アセトリゾ酸ナトリウム、ナトリウムヨードメサメート(sodium iodomethamate)、プロピリオドン、ジオドン、イオトロラン、イオピドール、エンドグラフィン(endografin)、イオタラム酸、メグルミンジアトリゾエート、メトリゾ酸、メトリザミド、ヨウ素化油またはエチヨード化油から選択され、
前記MRI用トレーサーは、ガドペンテト酸メグルミン、ガドテル酸メグルミン、ガドベン酸ジメグルミン、ガドジアミド、クエン酸鉄アンモニウム発泡顆粒、または常磁性酸化鉄から選択されることを特徴とする、請求項に記載のセラソーム送達システム。
【請求項10】
前記物質は、CD44活性化剤であることを特徴とする、請求項に記載のセラソーム送達システム。
【請求項11】
前記CD44活性化剤は、CD44抗体mAb、IL5、IL12、IL18、TNF-α、LPS、あるいは分子量が2000~5000Daの範囲である、低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体から選択されることを特徴とする、請求項10に記載のセラソーム送達システム。
【請求項12】
前記セラソームは、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断、予防および/または治療のための物質、およびCD44活性化剤を同時に担持し、あるいは、
前記セラソームは、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質、および分子量が2000~5000Daの範囲である低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体を同時に担持し、あるいは、
前記セラソームは、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断のための物質、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質、任意にCD44活性化剤、および任意に分子量が2000~5000Daの範囲である低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体を同時に担持することを特徴とする、請求項に記載のセラソーム送達システム。
【請求項13】
前記物質は、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質であることを特徴とする、請求項または12に記載のセラソーム送達システム。
【請求項14】
前記不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質が、スタチン系薬物、フィブラート系薬物、抗血小板薬、PCSK9阻害剤、抗凝固薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)、カルシウムイオン拮抗薬、MMPs阻害剤、β受容体遮断薬、および上記薬物の活性構造フラグメントを含むそれらの薬学的に許容される塩から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項13に記載のセラソーム送達システム。
【請求項15】
前記不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質が、ロバスタチン;アトルバスタチン;ロスバスタチン;シンバスタチン;フルバスタチン;ピタバスタチン;プラバスタチン;ベザフィブラート;シプロフィブラート;クロフィブラート;ゲムフィブロジル;フェノフィブラート;プロブコール;エボロクマブ、アリロクマブ、ボコシズマブ、RG7652、LY3015014およびLGT-209などの抗PCSK9抗体;ALN-PCSscなどのアンチセンスRNAiオリゴヌクレオチド;microRNA-33a、microRNA-27a/b、microRNA-106b、microRNA-302、microRNA-758、microRNA-10b、microRNA-19b、microRNA-26、microRNA-93、microRNA-128-2、microRNA-144、microRNA-145アンチセンス鎖およびロックド核酸のようなそれらの核酸類似体などの核酸;またはBMS-962476などのアドネクチン;アスピリン;アセメタシン;トロキセルチン;ジピリダモール;シロスタゾール;チクロピジン塩酸塩;オザグレルナトリウム;クロピドグレル;プラスグレル;シロスタゾール;チロフィバン;ベラプロストナトリウム;チカグレロル;カングレロル;チロフィバン;エプチフィバチド;アブシキシマブ;IIb/IIIa受容体拮抗薬;未分画ヘパリン;クレキサン;フラキシパリン;フォンダパリヌクスナトリウム;ワルファリン;ダビガトラン;リバロキサバン;アピキサバン;エドキサバン;ビバリルジン;エノキサパリン;テデルパリン;アルデパリン;ビスヒドロキシクマリン;硝酸クマリン;クエン酸ナトリウム;ヒルジン;アルガトロバン;ベナゼプリル;カプトプリル;エナラプリル;ペリンドプリル;フォシノプリル;リシノプリル;モエキシプリル;シラザプリル;ペリンドプリル;キナプリル;ラミプリル;トランドラプリル;カンデサルタン;エプロサルタン;イルベサルタン;ロサルタン;テルミサルタン;バルサルタン;オルメサルタンまたはタソサルタン;ニフェジピン;ニカルジピン;ニトレンジピン;アムロジピン;ニモジピン;ニソルジピン;ニルバジピン;イスラジピン;フェロジピン;ラシジピン;ジルチアゼム;ベラパミル;クロルヘキシジン;ミノサイクリン;MMI-166;メトプロロール;アテノロール;ビソプロロール;プロプラノロール;カルベジロール;バチマスタット;マリマスタット;プリノマスタット;BMS-279251;BAY 12-9566;TAA211;AAJ996A;ナセトラピブ;エバセトラピブ;トルセトラピブおよびダルセトラピブ;ならびに、それらの有効なフラグメントまたは薬学的に許容される塩、および上記薬物の活性構造フラグメントを含む薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項13に記載のセラソーム送達システム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のセラソーム送達システムおよび薬学的に許容される担体を含む薬物。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム含む診断用製剤。
【請求項18】
不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患を診断、予防および/または治療するための薬物の製造における、請求項1~15のいずれか一項に記載のセラソーム送達システムの使用であって、
前記不安定プラーク関連疾患は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈硬化性心疾患(急性冠症候群、無症候性心筋虚血-潜在性冠状動脈性心疾患、狭心症、心筋梗塞、虚血性心疾患、突然死、ステント内再狭窄を含む)、脳動脈硬化症(脳卒中を含む)、末梢血管アテローム性動脈硬化症(頸動脈アテローム性動脈硬化症、腎動脈アテローム性動脈硬化症、下肢アテローム性動脈硬化症、上肢アテローム性動脈硬化症を含む)、大動脈解離、血管腫、血栓塞栓症、心不全、心原性ショックから選択される1つ以上であることを特徴とする、セラソーム送達システムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的指向性薬物送達の技術分野に属し、具体的に、活性化CD44分子を標的とするセラソーム(cerasome)送達システム、特に不安定プラーク(vulnerable plaque)を標的とするセラソーム送達システムに関する。さらに、本発明は、前記セラソーム送達システムの調製方法および使用、特に不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断、予防および治療への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、主に急性心筋梗塞と心臓突然死を伴う急性心血管イベントは、人間の健康にとって最大の脅威となっている。統計によると、世界中で毎年約2000万人が急性心血管イベントで死亡している。中国での状況も楽観的ではない。毎年70万人以上が急性心筋梗塞と心臓突然死で亡くなり、これは中国人の健康を脅かす最も注目すべき病気の1つとなっている。研究では、ほとんどの急性心筋梗塞および心臓突然死は、アテローム性動脈硬化プラークによって引き起こされることが示された。1970年代以来、慢性アテローム性動脈硬化プラークによる急性冠症候群(ACS)および脳卒中の発生過程とメカニズムを模索してきた。
【0003】
1989年、Mullerのグループ(Circadian variation and triggers of onset of acute cardiovascular disease.Circulation.1989;79(4):733-43)は、「不安定プラーク」の概念を提案し、このような「プラーク」がほとんどの急性心血管および脳血管イベントの根本的な原因であると認定した。不安定プラーク(「vulnerable plaque」や「unstable plaque」とも呼ばれる)とは、血栓を形成する傾向があるか、または「犯罪プラーク(criminal plaque)」に急速に進行する可能性が高いアテローム性動脈硬化プラークを指し、主に破綻したプラーク、びらんを起こしたプラーク、および部分的に石灰化した結節性病変を含む。多数の研究により、ほとんどの急性心筋梗塞および脳卒中は、軽度から中程度の狭窄を有する不安定プラークの破裂と、それに続く血栓の形成によって引き起こされることが示されている。Naghaviのグループ(New developments in the detection of vulnerable plaque.Curr Atheroscler Rep.2001;3(2):125-35)は、不安定プラークの組織学的定義と基準を提供した。主な基準には、活動性炎症、薄い線維性被膜と大きな脂質コア、表面での血小板凝集を伴う内皮剥離、プラークの亀裂または損傷、および重度の狭窄が含まれる。副次的な基準には、表面石灰化プラーク、光沢を有する黄色プラーク、プラーク内出血、および陽性リモデリングが含まれる。したがって、不安定プラークに対して、早期の介入が不可欠である。しかし、不安定プラークによる血管狭窄の程度は、通常高くないため、多くの患者が前駆症状を示さない。このため、臨床における不安定プラークの早期診断は非常に難しく、不安定プラークの危険性は非常に高い。従って、如何に不安定プラークをできるだけ早く正確に特定および診断して、効果的な介入を実施することは、急性心筋梗塞の予防と治療における早急に解決すべき課題となっている。
【0004】
現在、一般的に不安定プラークの診断に用いられる技術は、主に冠動脈造影法、血管内超音波(IVUS)、光干渉断層法(OCT)などを含むが、これらの技術は、いずれも診断感度および精度の低い侵襲的検査であるだけでなく、これらの診断技術は費用が高く、ある程度臨床的な普及を制限する。したがって、現在、不安定プラークに対する非侵襲的な診断技術や製剤が必要である。
【0005】
また、不安定プラークを治療する方法は、主に全身投与によるものであり、例えば、スタチン系薬物(ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A(HMG-CoA)レダクターゼ阻害剤)、アスピリン、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害剤および/またはフィブラートなどの経口投与が挙げられる。これらの薬物は、全身の血中脂肪の調節、炎症の抑制、プロテアーゼおよび血小板産生の抑制などによって、プラークにおける脂質を減らし、血管のリモデリングを改善し、プラークを安定化するように作用する。しかしながら、臨床応用では、不安定プラークを治療するための現在の薬物の治療効果は満足できない。例えば、臨床で一般的に使用されるスタチン系薬物は、経口投与時の生物学的利用能が比較的低く、シンバスタチンでは5%未満であり、アトルバスタチンでは約12%であり、ロスバスタチンでは約20%である。動物実験において、スタチン系薬物の投与量を1mg/kg以上に増やした場合のみに、線維性被膜の厚さを増加させ、プラークの体積を減少させる役割を果たした。これにより、スタチンの経口投与の安定性とプラークの反転の効果がボトルネックになった。現在、臨床試験において、スタチン系薬物の経口投与による脆弱性プラークの治療には、不安定プラークを安定化させるために集中的な大量投与が必要であるが、全身的なスタチン系薬物の大量投与による治療は、重篤な副作用(例えば、肝機能異常、横紋筋融解症、II型糖尿病など)の発生率が増加するリスクもあることが確認された。
【0006】
全身投与では、通常、薬物が体内に入った後、活性成分のごく一部のみが実際に病変部位に作用できる。これは、薬物の有効性を制限し、副作用を引き起こす根本的な原因である。標的指向性薬物送達システムとは、標的指向性薬物送達能力を有する薬物送達システムを指す。特定の経路を介して投与される後、標的薬物送達システムに含まれる薬物は、標的プローブを有する担体によって標的部位で特異的に濃縮される。標的指向性薬物送達システムにより、薬物は、特定の病変部位を標的とし、標的病変部位で有効成分を放出することができる。したがって、標的指向性薬物送達システムは、標的病変部位に比較的高濃度の薬物をもたらし、血液循環中の薬物の量を減らすことで、副作用を抑えながら薬物の効果を改善し、正常な組織や細胞への損傷を減らす。
【0007】
現在、標的指向性薬物送達システムで一般的に使用されるナノキャリアは、リポソームである。リポソームは、薬物の効果を改善して副作用を減らすという利点があるが、生体内での安定性が低いため循環時間が不十分であり、最終的に薬物の生物学的利用能の向上に限界がある。また、リポソームは、生体外での安定性も不十分であり、保存中のリン脂質の酸化や加水分解を容易に引き起こし、且つリポソーム小胞同士が互に凝集して融合しやすく、その中に封入された薬物が漏れやすいという問題がある。これらの問題は、標的指向性薬物送達システムの開発をある程度制限する。
【0008】
さらに、不安定プラークの診断および治療の分野では、ナノキャリアをターゲティングリガンドで修飾することにより不安定プラークを診断する技術もある。しかし、臨床応用において、このような不安定プラークを標的とする標的プローブの主要な問題は、標的部位に対するこれらの製剤の特異性が十分ではないことである。例えば、このような製剤は、ほとんどマクロファージを標的部位として選択するが、マクロファージは全身に存在するため、前記プローブの標的特異性は十分ではない。したがって、不安定プラークを標的とする標的指向性製剤の開発の難しさは、不安定プラーク内の細胞に顕著な標的特異性を持つ標的部位の発見にある。
【0009】
CD44は、リンパ球、単球、内皮細胞などの表面に広く分布する接着分子である。CD44分子の主なリガンドは、ヒアルロン酸(hyaluronic acid、「HA」と略される)である。発現細胞の活性化状態に基づいて、CD44は、相対的な静止状態(HAに結合できない)、誘導された活性化状態(活性化した後にHAに結合できる)、および構造的に活性化された状態(活性化しなくてもHAに結合できる)に分類することができる。ほとんどの正常細胞の表面のCD44は、相対的な静止状態となり、HAに結合できない。
【0010】
以前の大量の研究は、CD44が顕著な標的特異性を有する理想的な標的部位ではないことを示した。これは、CD44が人体内に、特に細網内皮に富む器官の表面に広く分布しているためである。したがって、CD44を標的部位とする標的指向性薬物送達システムの開発では、標的細胞の表面のCD44がHAに対する親和性が不十分で顕著な特異性を提供できなければ、そのような標的指向性薬物送達システムは特異的な標的特性を持たないという問題がある。
【0011】
したがって、不安定プラークに存在する特定の標的部位および不安定プラークの標的化に適した標的指向性化薬物送達システムを見つけることにより、不安定プラークを特異的に標的としながら、薬物の安定かつ持続的な放出を達成できる標的指向性薬物送達システムを開発することが、医療分野で解決すべき技術的問題となっている。
【0012】
今まで、主に不安定プラーク内に存在するマクロファージ、単球、内皮細胞、リンパ球および平滑筋細胞の表面におけるCD44の発現状態またはHAに対する親和性に関する報告がない。また、HAとCD44との相互作用および不安定プラークの特定の微小環境のいずれかを利用して、薬物の安定かつ持続的な放出を達成しながら、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患を診断または治療する標的薬物送達システムの設計に関する先行技術もない。
【発明の概要】
【0013】
(1)発明の概要
本発明者らは、正常細胞と比較して、不安定プラークにおける内皮細胞、マクロファージ、平滑筋細胞などの細胞の表面のCD44が、不安定プラークの微小環境(炎症因子など)によって活性化されるため、HAへの結合能力は数十倍に急増することを発見した。この発見は、不安定プラークにおける細胞表面に存在する大量の活性化CD44分子が、HAをターゲティングリガンドとする標的指向性薬物送達システムの理想的な標的部位を提供することを示唆した。そのため、本発明は、活性化CD44分子を特異的に標的とする、特に不安定プラークを標的とする標的薬物送達システムを提供する。
【0014】
また、本発明者らは、不安定プラークにコレステロールなどの脂質が大量存在し、これらの脂質が乳化剤として作用し、通常の標的指向性薬物送達システムのリポソームの安定性に大きな影響を及ぼした結果、リポソームは破壊または侵食(抽出)されて急速に崩壊し、リポソームに封入された薬物が予定より早く放出され、薬物の持続放出の役割を果たすことができないことも発見した。一方、リポソームの代わりに新規の薬物送達システムであるナノキャリアを使用する場合、不安定プラークに封入された薬物の放出特性は、脂質侵食からの影響を受けずに大幅に改善され、不安定プラークにおける微小環境での良好な安定性が維持され、薬物の持続放出を可能にする。このため、本発明は、薬物の安定かつ持続的な放出を達成しながら、不安定プラークを特異的に標的とすることができる標的指向性薬物送達システムをさらに提供する。
【0015】
また、本発明者らは、CD44活性化剤の担持が病変細胞の表面におけるCD44のさらなる活性化を促進し、HAに対するCD44の標的親和性を短時間で増幅し、細胞表面にカップリングされた標的セラソーム組成物の濃度を著しく増加させ、不安定プラークのトレーサー診断および治療に積極的な意義を示すことも発見した。このため、本発明の前記標的指向性薬物送達システムは、CD44活性化剤を担持することができ、短時間でトレーサーまたは治療剤化合物の濃度を著しく増加させて診断感度または治療効果を改善することができる。
【0016】
さらに、本発明者らは、不安定プラークにおいて、CD44の高レベルの活性化および過剰発現とともに、内因性高分子HAが刺激により大量に生成され、細胞表面のCD44に結合し、不安定プラークにおけるマクロファージやリンパ球などの細胞の凝集を促進することを発見した。このような細胞表面のCD44に結合する内因性HAは、薬物の侵入に対するバリアを形成し、薬物の生物学的利用能を低下させる可能性がある。このため、本発明の前記標的指向性薬物送達システムでは、低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合することができるヒアルロン酸誘導体が担持され、これらは、細胞表面における内因性HAに競合的に結合することにより、細胞表面で内因性HAが形成されたバリアを解消し、薬物が病変細胞に順調に侵入することに役立ち、顕著な治療効果を提供する。
【0017】
つまり、本発明は以下の態様に関する。
【0018】
本発明は、活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システムを提供する。
【0019】
また、本発明は、不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムを提供する。
【0020】
また、本発明は、本発明の前記不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムを調製する方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、本発明の前記不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムと、薬学的に許容される担体とを含む薬物を提供する。
【0022】
また、本発明は、本発明の前記不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムを含む診断用製剤を提供する。
【0023】
また、本発明は、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患を予防および/または治療するための薬物の調製への、本発明の前記不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムの使用を提供する。
【0024】
また、本発明は、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患を診断するための診断用製剤の調製への、本発明の前記不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムの使用を提供する。
【0025】
また、本発明は、必要とする対象に、本発明の前記不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムを投与することを含む、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療の方法を提供する。
【0026】
また、本発明は、必要とする対象に、本発明の前記不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムを投与することを含む、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断の方法をさらに提供する。
【0027】
以下、本発明の技術構成の具体的な実施形態およびそれらの意味を詳細に説明する。
【0028】
(2)技術用語およびその意味
本明細書で言及される用語は、以下の意味を有する。
【0029】
「不安定プラーク(vulnerable plaque)」は「unstable plaque」とも呼ばれ、血栓を形成する傾向があるか、または「犯罪プラーク(criminal plaque)」に急速に進行する可能性が高いアテローム性動脈硬化プラークを指し、主に破綻したプラーク、びらんを起こしたプラーク、および部分的に石灰化した結節性病変を含む。多数の研究により、ほとんどの急性心筋梗塞および脳卒中は、軽度から中程度の狭窄を有する不安定プラークの破裂と、それに続く血栓の形成とによって引き起こされることが示されている。不安定プラークの組織学的発現には、活動性炎症、薄い線維性被膜と大きな脂質コア、表面での血小板凝集を伴う内皮剥離、プラークの亀裂または損傷、および重度の狭窄、ならびに、表面石灰化プラーク、光沢を有する黄色プラーク、プラーク内出血、および陽性リモデリングが含まれる。
【0030】
「不安定プラーク関連疾患」とは、主に、病気の発生と発展が「不安定プラーク」に関連する疾患、「不安定プラーク」を特徴する疾患、または「不安定プラーク」に続発する疾患を指す。「不安定プラーク関連疾患」として、主にアテローム性動脈硬化症、冠状動脈硬化性心疾患(急性冠症候群、無症候性心筋虚血-潜在性冠状動脈性心疾患、狭心症、心筋梗塞、虚血性心疾患、突然死、ステント内再狭窄を含む)、脳動脈硬化症(脳卒中を含む)、末梢血管アテローム性動脈硬化症(頸動脈アテローム性動脈硬化症、腎動脈アテローム性動脈硬化症、下肢アテローム性動脈硬化症、および上肢アテローム性動脈硬化症を含む)、大動脈解離、血管腫、血栓塞栓症、心不全、心原性ショックなどの疾患が挙げられる。
【0031】
「標的指向性薬物送達システム」とは、標的指向性薬物送達の能力を有する薬物送達システムを指す。特定の経路を介した投与の後、標的指向性薬物送達システムに含まれる薬物は、特別な担体または標的弾頭(例えば、ターゲティングリガンド)の作用によって標的部位で特異的に濃縮される。標的指向性薬物送達を実現するための現在知られている手段として、様々な微粒子送達システムの受動的標的化特性の利用、微粒子送達システムの表面への化学修飾の導入、特定の物理的および化学的特性の利用、抗体媒介標的指向性薬物送達の利用、リガンド媒介標的指向性薬物送達の利用、プロドラッグ標的指向性薬物送達の利用などが挙げられる。その中でも、リガンド媒介標的指向性薬物送達は、ある器官および組織における特定の受容体がその特定のリガンドに特異的に結合できる特性を利用し、薬物担体とリガンドを組み合わせることで、薬物を特定の標的組織に導く。
【0032】
「セラソーム」は、1990年代後半に開発された新規の構造的に安定した脂質キャリアである。本発明の前記セラソームは、活性物質の送達システムであり、形態的には、内部に親水性空洞を有する脂質二重層からなる閉鎖小胞である。前記脂質二重層は、セラミック単量体分子を含む脂質成分からなるものである。前記セラソミック単量体分子は、セラソームを形成できる無機-有機複合脂質分子であり、この分子は、シロキサン構造を有する頭部と疎水性尾部とで構成され、この疎水性尾部は疎水性有機二分子鎖である。前記セラソーム単量体分子は、通常、トリアルコキシシリル化脂質であり、このトリアルコキシシリル化脂質は、in situゾルゲル(sol-gel)プロセスでシロキサン結合(Si-O-Si)を形成することで、セラソームの表面にその自身が剛性を有する無機ポリシロキサン網状構造が形成される。本発明で使用される不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムは、「不安定プラークにおける細胞表面に存在する多数の活性化CD44分子がHAに特異的に結合する」という知見に基づいて設計されたリガンド媒介標的指向性薬物送達システムである。
【0033】
「ヒアルロン酸(hyaluronic acid、「HA」と略される)」は、(C1421NO11の式で表される高分子ポリマーである。これは、D-グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンの単位からなる高級多糖類である。D-グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンはβ-1,3-グリコシド結合により連結され、二糖単位はβ-1,4-グリコシド結合により連結される。ヒアルロン酸は、その独特な分子構造と物理的および化学的特性で、例えば、関節の潤滑、血管壁の透過性の調節、タンパク質、水、および電解質の拡散と輸送の調節、創傷治癒の促進など生体内のさまざまな重要な生理学的機能を示す。ヒアルロン酸が特別な保水効果を持ち、今まで自然界で見られる最高の保湿特性を持つ物質であることが特に重要である。
【0034】
本発明で使用される「ヒアルロン酸の誘導体」とは、ヒアルロン酸が不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合する能力を維持することができるヒアルロン酸の任意の誘導体を指す。ヒアルロン酸の薬学的に許容される塩、低級アルキル(1~6個の炭素原子を含むアルキル)エステル、生体内で加水分解または他の手段によりヒアルロン酸を形成できるプロドラッグなどが挙げられるが、これらに限定されない。ある物質が「ヒアルロン酸の誘導体」であるかどうかは、この物質が不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合する能力を測定することにより判断し、これは当業者が備えている技術の範囲内である。
【0035】
「CD44分子」は、リンパ球、単球、内皮細胞などの細胞の細胞膜に広く発現される膜貫通プロテオグリカン接着分子であり、細胞外セグメント、膜貫通セグメント、および細胞内セグメントの3つのセグメントからなる。CD44分子は、細胞と細胞との間、および細胞と細胞外マトリックスとの間の複数の相互作用を媒介し、生体内の複数の信号の伝達に関与し、細胞の生物学的機能を変化させることができる。CD44分子の主要なリガンドはヒアルロン酸であり、CD44分子とヒアルロン酸の受容体-リガンド結合により、細胞外マトリックスにおける細胞の接着および/または遊走を決定する。さらに、CD44分子はヒアルロン酸の代謝にも関与する。
【0036】
「アルキル」は、所定の個数の炭素原子を有する分岐鎖および直鎖の両方を含む飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「C1-6アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチルなどの1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルキルを意味する。同様に、「C10-24アルキル」は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24個の炭素原子を有するアルキルを意味する。
【0037】
「アルケニル」は、所定の個数の炭素原子および1個以上(好ましくは1、2、3、4、5または6個などの1~6個)の炭素-炭素二重結合(鎖における任意の安定点に存在する可能性がある)を有する直鎖または分岐鎖を含む不飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「C10-24アルケニル」は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24個の炭素原子および1個以上(好ましくは、1、2、3、4、5または6個などの1~6個)の炭素-炭素二重結合を有する。
【0038】
「約」は、その後の数値の±5%の範囲内のすべての値からなる集合を表す。
【0039】
(3)発明の詳細な説明
本発明の一態様によれば、本発明は、活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システムを提供し、前記セラソームの表面は、ターゲティングリガンドによって部分的に修飾され、前記ターゲティングリガンドは、活性化CD44分子に特異的に結合できるリガンドである。
【0040】
本発明の一態様によれば、本発明は、不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムを提供し、前記セラソームの表面は、ターゲティングリガンドによって部分的に修飾され、前記ターゲティングリガンドは、不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるリガンドである。
【0041】
本発明の一態様によれば、本発明は、セラソーム小胞を含む、不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムを提供し、前記セラソーム小胞の表面は、ターゲティングリガンドによって部分的に修飾される。
【0042】
一実施形態において、前記セラソーム小胞は、内部に親水性空洞を有する脂質二重層からなる閉鎖小胞であり、この小胞の表面は、無機ポリシロキサン網状構造およびカップリングされたターゲティングリガンドを有する。
【0043】
一実施形態において、前記脂質二重層は、セラソーム単量体分子と、共有結合でターゲティングリガンドにカップリングしたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)分子と、必要に応じて他の脂質分子とを含む成分により形成される。
【0044】
一実施形態において、前記セラソーム単量体分子と、共有結合でターゲティングリガンドにカップリングしたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)分子と、必要に応じて他の脂質分子との重量比は、1~10:0.2~1:1~9である。
【0045】
一実施形態において、前記セラソーム単量体分子と、共有結合でターゲティングリガンドにカップリングしたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)分子と、必要に応じて他の脂質分子の重量比は、2~10:1~3:0~3である。
【0046】
一実施形態において、前記セラソーム単量体分子と、共有結合でターゲティングリガンドにカップリングしたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)分子と、必要に応じて他の脂質分子の重量比は、3~7:1.5~2.5:1.5~2.5である。
【0047】
一実施形態において、前記セラソーム単量体分子と、共有結合でターゲティングリガンドにカップリングしたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)分子と、必要に応じて他の脂質分子の重量比は、3~7:0.5~1:1.5~2.5である。
【0048】
一実施形態において、前記セラソーム単量体分子と、共有結合でターゲティングリガンドにカップリングしたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)分子と、必要に応じて他の脂質分子の重量比は、4~6:0.5:2である。
【0049】
一実施形態において、前記セラソーム単量体分子と、共有結合でターゲティングリガンドにカップリングしたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)分子と、必要に応じて他の脂質分子の重量比は、4~6:2:2である。
【0050】
一実施形態において、前記セラソーム単量体分子は、セラソームを形成できる無機-有機複合脂質分子であり、前記無機-有機複合脂質分子は、シロキサン構造を有する頭部と疎水性尾部で構成され、この疎水性尾部は疎水性有機二分子鎖である。
【0051】
一実施形態において、前記セラソーム単量体分子は、以下の一般式を有する単量体分子である。
(RO)Si-L-C(O)-N(R)(R
ただし、
はC1-6アルキルを表し、
Lは、4~12個の炭素原子(好ましくは4~10個の炭素原子)および1~2個の窒素原子からなるリンカーであり、ここで、以下の条件下で、前記リンカーにける0~1個の炭素原子はオキソ基で置換され、つまりカルボニル基が形成され、条件(1):前記リンカーにカルボニル基が存在する場合、このカルボニル基が窒素原子に隣接し;条件(2):前記リンカーにおける1個の窒素原子が四級化され、且つこの四級化された窒素原子が適合な対イオンと塩を形成し、
およびRは、それぞれ独立してC10-24アルキル又はC10-24アルケニルを表す。
【0052】
一実施形態において、前記セラソーム単量体分子は、
【化1】

【化2】
、および
【化3】
から選択される1つ以上である。
【0053】
一実施形態において、前記脂質二重層の成分は他の脂質分子を含む。
【0054】
一実施形態において、前記他の脂質分子は、中性リン脂質、負に帯電したリン脂質、および正に帯電した脂質から選択される1つ以上である。
【0055】
一実施形態において、前記脂質は、ホスファチジルコリン、グリセロリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン、セリンホスファチド、およびホスファチジン酸から選択される1つ以上である。
【0056】
一実施形態において、前記他の脂質分子はホスファチジルコリンである。
【0057】
一実施形態において、前記他の脂質分子は正に帯電した脂質である。
【0058】
一実施形態において、前記正に帯電した脂質は、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-chol)、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリエチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)および1,2-ジオレオイルオキシプロピル-N、N、N-トリメチルアンモニウムブロミド(DOTAP)から選択される1つ以上である。
【0059】
一実施形態において、前記脂質は、1,2-ジオレオイルオキシプロピル-N、N、N-トリメチルアンモニウムブロミド(DOTAP)である。
【0060】
一実施形態において、前記ターゲティングリガンドは、分子量が5万~40万Daである。
【0061】
一実施形態において、前記ターゲティングリガンドは、分子量が8万~15万Daである。
【0062】
一実施形態において、前記ターゲティングリガンドは、分子量が約10万Daである。
【0063】
一実施形態において、前記セラソーム小胞の粒子径の範囲は、50nm~400nmである。
【0064】
一実施形態において、前記セラソーム小胞の粒子径の範囲は、50nm~300nmである。
【0065】
一実施形態において、前記セラソーム小胞の粒子径の範囲は、150nm~250nmである。
【0066】
一実施形態において、前記セラソーム小胞の粒子径の範囲は、180nm~220nmである。
【0067】
本発明のセラソーム送達システムにおいて、前記送達システムにおけるターゲティングリガンドは、GAG、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、セレクチン、オステオポンチン(OPN)、およびモノクローナル抗体HI44a、HI313、A3D8、H90、IM7、或いは、ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体から選択される。
【0068】
本発明のセラソーム送達システムでは、CD44分子の活性化に関連する疾患の診断、予防および/または治療のための物質が担持される。
【0069】
一実施形態において、前記セラソームは、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断、予防および/または治療のための物質を担持する。
【0070】
一実施形態において、前記物質は、不安定プラークまたは不安定プラークに関連する疾患の診断、予防および/または治療のための薬物、ペプチド、核酸、およびサイトカインから選択される1つ以上である。
【0071】
一実施形態において、前記物質は、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患を診断するための物質である。
【0072】
一実施形態において、前記不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患を診断するための物質はトレーサーである。
【0073】
一実施形態において、前記トレーサーは、CT用トレーサーおよびMRI用トレーサーから選択される。
【0074】
一実施形態において、前記CT用トレーサーは、ヨード系ナノスケール造影剤、金系ナノスケール造影剤、酸化タンタル系ナノスケール造影剤、ビスマス系ナノスケール造影剤、ランタニド系ナノスケール造影剤、または類似の構造を有する他のトレーサーから選択される。
【0075】
一実施形態において、前記CT用トレーサーは、ヨード系造影剤または金ナノ粒子、または類似の構造を有する他のトレーサーから選択される。
【0076】
一実施形態では、前記CT用トレーサーは、イオヘキソール、イオカルミン酸、イオベルソール、イオジキサノール、イオプロミド、イオビトリドール、イオメプロル、イオパミドール、イオキシラン、アセトリゾ酸、イオジパミド、イオベンザミン酸、イオグリカミン酸、ジアトリゾ酸、イオタラム酸ナトリウム、パントパック、イオパン酸、ヨードアルフィオン酸、アセトリゾ酸ナトリウム、ナトリウムヨードメサメート(sodium iodomethamate)、プロピリオドン、ジオドン、イオトロラン、イオピドール、エンドグラフィン(endografin)、イオタラム酸、メグルミンジアトリゾエート、メトリゾ酸、メトリザミド、ヨウ素化油またはエチヨード化油、或いは類似の構造を有する他のトレーサーから選択される。
【0077】
一実施形態において、前記MRI用トレーサーは、縦緩和造影剤および横緩和造影剤から選択される。
【0078】
一実施形態において、前記MRI用トレーサーは、常磁性造影剤、強磁性造影剤および超常磁性造影剤から選択される。
【0079】
一実施形態において、前記MRI用トレーサーは、Gd-DTPAおよびその線状や環状のポリアミンポリカルボキシレートキレート、およびそのマンガンポルフィリンキレート、高分子ガドリニウムキレート、生体高分子修飾ガドリニウムキレート、葉酸修飾ガドリニウムキレート、デンドリマー造影剤、リポソーム修飾造影剤およびガドリニウム含有フラーレン、または類似の構造を有する他のトレーサーから選択される。
【0080】
一実施形態において、前記MRI用トレーサーは、ガドペンテト酸メグルミン、ガドテル酸メグルミン、ガドベン酸ジメグルミン、ガドジアミド、クエン酸鉄アンモニウム発泡顆粒、常磁性酸化鉄、または類似の構造を有する他のトレーサーから選択される。
【0081】
本発明のセラソーム送達システムにおいて、CD44活性化剤が担持される。一実施形態において、前記CD44活性化剤は、CD44抗体mAb、またはIL5、IL12、IL18、TNF-α、LPSである。
【0082】
本発明のセラソーム送達システムにおいて、分子量が2000~5000Daの範囲である、低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体が担持される。
【0083】
一実施形態において、前記低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体は、分子量が2500~4500Daの範囲である。
【0084】
一実施形態において、前記低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体は、分子量が3000~4000Daの範囲である。
【0085】
一実施形態において、前記低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体は、分子量が約3411Daである。
【0086】
本発明のセラソーム送達システムにおいて、前記セラソームは、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断、予防および/または治療のための物質、およびCD44活性化剤を同時に担持する。
【0087】
本発明のセラソーム送達システムにおいて、前記セラソームは、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質、および分子量が2000~5000Daの範囲である低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体を同時に担持する。
【0088】
本発明のセラソーム送達システムにおいて、前記セラソームは、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断のための物質、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質、必要に応じてCD44活性化剤、および必要に応じて分子量が2000~5000Daの範囲である低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体を同時に担持する。
【0089】
本発明のセラソーム送達システムにおいて、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質が担持される。
【0090】
一実施形態において、前記不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質は、スタチン系薬物、フィブラート系薬物、抗血小板薬、PCSK9阻害剤、抗凝固薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)、カルシウムイオン拮抗薬、MMPs阻害剤、β受容体遮断薬、および上記薬物の活性構造フラグメントを含むそれらの薬学的に許容される塩から選択される1つ以上である。
【0091】
一実施形態において、前記不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質は、ロバスタチン;アトルバスタチン;ロスバスタチン;シンバスタチン;フルバスタチン;ピタバスタチン;プラバスタチン;ベザフィブラート;シプロフィブラート;クロフィブラート;ゲムフィブロジル;フェノフィブラート;プロブコール;エボロクマブ、アリロクマブ、ボコシズマブ、RG7652、LY3015014およびLGT-209などの抗PCSK9抗体;ALN-PCSscなどのアンチセンスRNAiオリゴヌクレオチド;microRNA-33a、microRNA-27a/b、microRNA-106b、microRNA-302、microRNA-758、microRNA-10b、microRNA-19b、microRNA-26、microRNA-93、microRNA-128-2、microRNA-144、microRNA-145アンチセンス鎖およびロックド核酸のようなそれらの核酸類似体などの核酸;またはBMS-962476などのアドネクチン;アセメタシン;トロキセルチン;ジピリダモール;シロスタゾール;チクロピジン塩酸塩;オザグレルナトリウム;クロピドグレル;プラスグレル;シロスタゾール;チロフィバン;ベラプロストナトリウム;チカグレロル;カングレロル;チロフィバン;エプチフィバチド;アブシキシマブ;未分画ヘパリン;クレキサン;フラキシパリン;フォンダパリヌクスナトリウム;ワルファリン;ダビガトラン;リバロキサバン;アピキサバン;エドキサバン;ビバリルジン;エノキサパリン;テデルパリン;アルデパリン;ビスヒドロキシクマリン;硝酸クマリン;クエン酸ナトリウム;ヒルジン;アルガトロバン;ベナゼプリル;カプトプリル;エナラプリル;ペリンドプリル;フォシノプリル;リシノプリル;モエキシプリル;シラザプリル;ペリンドプリル;キナプリル;ラミプリル;トランドラプリル;カンデサルタン;エプロサルタン;イルベサルタン;ロサルタン;テルミサルタン;バルサルタン;オルメサルタンまたはタソサルタン;ニフェジピン;ニカルジピン;ニトレンジピン;アムロジピン;ニモジピン;ニソルジピン;ニルバジピン;イスラジピン;フェロジピン;ラシジピン;ジルチアゼム;ベラパミル;クロルヘキシジン;ミノサイクリン;MMI-166;メトプロロール;アテノロール;ビソプロロール;プロプラノロール;カルベジロール;バチマスタット;マリマスタット;プリノマスタット;BMS-279251;BAY 12-9566;TAA211;AAJ996A;ナセトラピブ;エバセトラピブ;トルセトラピブおよびダルセトラピブ;ならびに、それらの有効なフラグメントまたは薬学的に許容される塩、および上記薬物の活性構造フラグメントを含む薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上である。
【0092】
本発明のセラソーム送達システムにおいて、前記セラソーム送達システムは、セラソーム小胞を含み、このセラソーム小胞の表面は、ターゲティングリガンドによって部分的に修飾され、このターゲティングリガンドは、ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体である。
【0093】
本発明に係る不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムは、本分野で公知の方法のいずれかに従って調製される。例えば、本発明に係る不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムは、薄膜分散法により調製される。
【0094】
それで、本発明の一態様によれば、本発明は、不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムを調製する方法を提供する。この方法は以下の工程を含む。
【0095】
1)適合な量のセラソームモノマー分子、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)分子、必要に応じて他の脂質分子、および必要に応じて不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断、予防および/または治療のための脂溶性物質を適合な有機溶媒に溶解する。
【0096】
2)回転蒸発またはその他の適合な条件下で有機溶媒を除去して、工程1)における成分を容器の壁に薄膜化させる。
【0097】
3)不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断、予防および/または治療のための、水溶性物質を必要に応じて含む水系媒体を添加し、40~60℃の一定温度で薄膜中の成分を完全に水和させ、粗セラソーム小胞懸濁液を調製する。
【0098】
4)工程3)で得られた粗セラソーム小胞懸濁液を、超音波、振とう、均質化、圧搾または他の適合な方法で処理して、精製されたセラソーム小胞懸濁液を調製する。
【0099】
5)必要に応じて、透析により、工程4)で得られた精製セラソーム小胞懸濁液に含まれる担持されていない、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断、予防および/または治療のための物質を除去する。
【0100】
6)工程4)又は5)で得られた精製セラソーム小胞懸濁液を少なくとも24時間置き、シロキサンの加水分解縮合を促進して、無機ポリシロキサン網状構造を形成する。
【0101】
7)水性条件下で、適量の1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)およびN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(sulfo-NHS)カップリング剤を添加して、ターゲティングリガンドのカルボキシル基を活性化させ、活性化されたターゲティングリガンドを調製する。
【0102】
8)活性化されたターゲティングリガンドを、工程6)で得られたセラソーム小胞懸濁液に添加し、活性化されたターゲティングリガンドとジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)分子との間に、アミド結合を形成することにより結合させ、不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムを調製する。
【0103】
本発明の一態様によれば、本発明は、前記セラソーム送達システムと薬学的に許容される担体とを含む薬剤を提供する。
【0104】
一実施形態において、前記薬剤は、前記不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムおよび薬学的に許容される担体を含む。
【0105】
本発明の一態様によれば、本発明は、前記不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムを含む診断用製剤を提供する。
【0106】
一実施形態では、前記診断用製剤は、前記不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムを含む。
【0107】
本発明の一態様によれば、本発明は、CD44分子の活性化に関連する疾患の診断、予防および/または治療のための薬物の調製への、本発明のセラソーム送達システムの使用を提供する。
【0108】
一実施形態では、本発明は、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断、予防および/または治療のための薬物の調製への、前記セラソーム送達システムの使用を提供する。
【0109】
本発明の一態様によれば、本発明は、本発明のセラソーム送達システムを投与することを含む、CD44分子の活性化に関連する疾患の診断、予防および/または治療の方法を提供する。
【0110】
一実施形態において、本発明は、本発明のセラソーム送達システムを投与することを含む、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断、予防および/または治療の方法を提供する。
【0111】
一実施形態において、前記不安定プラークは、破綻したプラーク、びらんを起こしたプラーク、および部分的に石灰化した結節性病変から選択される1つ以上である。
【0112】
一実施形態において、前記不安定プラーク関連疾患は、冠状動脈アテローム性硬化性心疾患、アテローム性動脈硬化症、血管腫、血栓塞栓症、狭心症、心筋梗塞、心臓突然死、心不全、心原性ショック、虚血性心筋症、脳卒中から選択される1つ以上である。
【0113】
本発明は、上記実施形態(様々な好ましい実施形態を含む)のいずれかの任意の組み合わせを含む。また、任意の所定範囲について、本発明は、その範囲の端点値、その範囲内の任意の特定の値、およびその範囲内の任意の2つの特定の値で構成されるサブ範囲を含む。
【0114】
つまり、本発明のセラソーム送達システムは、CD44分子の活性化に関連する疾患に対して以下の利点を有する。
【0115】
1)本発明のセラソーム送達システムは、活性化されたCD44分子に特異的に結合でき、薬物の安定した持続放出を実現することができる。
【0116】
2)不安定プラークにおける細胞表面のCD44は、細胞外マトリックスの微小環境によって誘導されることにより活性化され、大量に過剰発現し、且つCD44-HAの親和性が著しく向上するため、不安定プラークにおけるCD44とHAとの相互作用は、非常に顕著な特異的親和性を示す。したがって、不安定プラークにおけるCD44は、本発明に係る不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムの好適な標的として作用する。
【0117】
3)本発明の不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムは、不安定プラークを能動的に標的として進入し、病変細胞に結合することができる。したがって、このセラソーム送達システムは、病変部での担持物質の持続放出を実現し、病変部の物質の濃度を著しく増加し、維持することにより、この送達システムの診断または治療の効果を改善することができる。
【0118】
4)本発明の不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムは、分子量が2000~5000Daの範囲である低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体を封入することができる。上記低分子ヒアルロン酸およびその誘導体は、細胞表面の内因性ヒアルロン酸との競合的に結合することにより、細胞表面の内因性ヒアルロン酸によるバリアを解消し、それにより診断または治療活性物質が病変細胞へ順調に侵入することに役立つ。
【0119】
5)不安定プラークには、酸化された低密度リポタンパク質(ox-LDL)を大量に含む巨大な脂質プールがある。リポソームは、このような内部環境で不安定で、崩壊しやすいため、放出制御機能を実現できない。一方、本発明に係る不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムは、不安定プラークの脂質プールにおいて比較的安定であり、薬物を連続的に放出することができるため、病変部の薬物濃度を維持することができる。
【0120】
6)本発明に係る不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムでは、CD44の活性化を促進する物質、すなわち、IL5、IL12、IL18、TNF-αおよびLPSなどのCD44活性化剤が担持される。CD44活性化剤が担持される場合、病変細胞の表面のCD44のさらなる活性化が促進され、ヒアルロン酸に対するCD44の標的親和性が短時間で増幅され、細胞表面に結合した標的指向性セラソーム組成物の濃度が大幅に増加されることは、トレーサーまたは治療剤の化合物の濃度を短時間で大幅に増加させ、診断の分解能または治療効果を高めるため、不安定プラークのトレーサー診断と治療に積極的な意義を示す。
【0121】
6)不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムは、良好な機械的安定性、熱安定性および不安定プラーク微小環境における安定性、および良好な貯蔵安定性を有する。セラソーム単量体分子は、Si-C、Si-O結合を含み、このような化学組成は、その生物分解を可能にする。セラソーム小胞には、脂溶性物質、両性化合物、または水溶性物質を担持しても良い。セラソーム小胞の表面の無機ポリシロキサン網状構造の縮合度と空隙を調整することで、セラソーム小胞の形態安定性を破壊することなく、生体内および生体外での活性物質の放出を制御できる。
【0122】
なお、当業者は、従来の技術に基づいて本発明に開示された内容を参照することにより、本発明を実施できる。さらに、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に類似の改善および同等の置換を行うことができ、これらの類似の改善および同等の置換は、当業者には明らかであり、本発明に含まれることが意図されている。例えば、本発明のセラソーム送達システムに担持可能な物質として、セラソームに組み込まれて診断、予防および/または治療のために用いられる限り、本発明に記載される物質を含むが、これらに限定されない。一般に、上記物質が水相および有機溶媒の両方に不溶性の物質または水相および有機溶媒の両方に非常に良い可溶性の物質でない限り、容易にセラソームに組み込まれる。好ましくは、上記物質は、脂溶性物質、両性化合物または水溶性物質である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
以下、本発明の内容を十分に理解するために、好適な実施形態および添付の図面を参照することにより、本発明をさらに詳細に説明する。
図1図1は、本発明に係る不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムを構築する概略図である。
図2図2は、ロスバスタチンを担持したCL1がHAに結合する前(黒、下線)および後(赤、上線)の赤外線スペクトルを含む、HA-CL1の赤外線スペクトルを示す。
図3図3は、4℃で90日保存した、本発明のセラソーム送達システムおよび対照としてのリポソーム送達システムの粒子サイズの変化を示すグラフである。
図4図4は、4℃で90日保存した、本発明のセラソーム送達システムおよび対照としてのリポソーム送達システムの薬物の封入率の変化を示すグラフである。
図5図5は、本発明のセラソーム送達システムおよび対照としてのリポソーム送達システムの累積薬物放出率の変化を示すグラフである。
図6図6は、本発明の3つのセラソーム送達システムの累積薬物放出率の変化を示すグラフである。
図7図7は、実施例4で構築されたマウスアテローム性動脈硬化不安定プラークモデルの核磁気共鳴画像を示す。
図8図8は、本発明のセラソーム送達システムおよび対照としてのリポソーム送達システムを投与したマウスの頸動脈プラークにおける薬物曝露の百分率を示すグラフである。
図9図9は、マウスモデルの正常な動脈血管壁の内皮細胞および動脈不安定プラークの内皮細胞の表面のCD44含有量の測定結果(半定量的積分で表される)を示すグラフである。
図10図10は、マウスモデルの正常な動脈血管壁の内皮細胞および動脈不安定プラークの内皮細胞の表面のCD44のHAに対する結合力の測定結果(結合力の積分で表される)を示すグラフである。
図11図11は、マウスモデルの正常な動脈血管壁の内皮細胞および動脈不安定プラークの内皮細胞の表面のCD44のそれぞれのリガンド/抗体に対する結合力の測定結果(結合力の積分で表される)を示すグラフである。
図12図12は、マウスモデルのプラーク外のマクロファージおよび動脈不安定プラーク内のマクロファージの表面のCD44のHAに対する結合力の測定結果(結合力の積分で表される)を示すグラフである。
図13図13は、マウスモデルのプラーク外のマクロファージおよび動脈不安定プラーク内のマクロファージの表面のCD44のそれぞれのリガンド/抗体に対する結合力の測定結果(結合力の積分で表される)を示すグラフである。
図14図14は、マウスモデルの頸動脈不安定プラークに対する本発明のセラソーム送達システムの生体内での治療効果(プラーク進行の百分率で表される)を示すグラフである。
図15図15は、マウスモデルの頸動脈不安定プラークに対する本発明のセラソーム送達システムの生体内での追跡効果(CT値で表される)を示すグラフである。
図16図16は、動脈の不安定プラークに対するセラソーム-HA-イオジキサノール送達システムの生体内でのCT追跡を示す。
図17図17は、動脈不安定プラークに対するセラソーム-HA-ガドテル酸メグルミン送達システムの生体内でのMRI追跡を示す。
図18図18は、動脈不安定プラークに対するそれぞれのモノクローナル抗体-CD44-セラソーム-ガドテル酸メグルミン送達システムの生体内でのMRI追跡を示す。
図19図19は、動脈不安定プラークに対するそれぞれのリガンド-CD44-セラソーム-ガドジアミド送達システムの生体内でのMRI追跡を示す。
【発明を実施するための形態】
【0124】
以下、本発明をさらに理解するために、実施例を参照して本発明の具体的な実施形態を詳細に説明するが、これらの説明は、本発明の特徴および利点をさらに理解することのみを意図しており、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0125】
実施例1:本発明で使用される3つのセラソーム単量体
本発明のセラソーム送達システムで使用されるセラソーム単量体C1、C2およびC3は既知であり、参考文献に記載されている調製方法に従って得られる。
セラソーム単量体C1:N,N-ジセチル-Nα-(6-((3-トリエトキシシリル)プロピルジメチルアンモニオ)ヘキサノイル)アラニンアミドブロミドの調製については、Nature Protocols,2006,1(3),1227-1234を参照する。
【化4】
【0126】
セラソーム単量体C2:N,N-ジセチル-N’-(3-トリエトキシシリルプロピル)スクシンアミドの調製については、J.Am,Chem.Soc.,2002,124,7892-7893を参照する。
【化5】
【0127】
セラソーム単量体C3:N,N-ジセチル-N’-[(3-トリエトキシシリル)プロピル]尿素の調製については、Thin Solid Films,2003,438-439,20-26を参照する。
【化6】
【0128】
実施例2:送達システムの調製
1.治療剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの調製
この実施例において、治療剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rは、薄膜分散法によって調製された。上記3つのセラソーム送達システムにおけるセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって部分的に修飾され、且つ、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質であるロスバスタチン(「R」と略される)を担持した。これらの違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1に記載の上記セラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
【0129】
HA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの調製方法は、具体的には以下の工程を含む。
【0130】
(1)セラソーム小胞懸濁液の調製
6mgのC1(5mgのC2または4mgのC3)、2mgの1,2-ジオレオイルオキシプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロミド(DOTAP)および2mgのジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)を丸底フラスコに秤量し、10mLのクロロホルムで溶解した。回転蒸発(55℃の水浴、90r/分、30分)によって有機溶媒を完全に除去して、フラスコの壁に薄膜を形成した。10mLのロスバスタチン水溶液(濃度2mg/mL)を添加し、フラスコを50℃の恒温水浴に入れ、薄膜を30分間で十分に水和させて、粗セラソーム小胞懸濁液を調製した。粗セラソーム小胞懸濁液を水浴で10分間超音波処理した後、プローブ型超音波装置で懸濁液を5分間(振幅20、間隔3秒間)超音波処理し、セラソーム小胞懸濁液を十分に分散して形成された安定した系、即ち、精製セラソーム小胞懸濁液を得た。精製セラソーム小胞懸濁液中の未封入のロスバスタチンは、透析バッグによって除去された。次いで、セラソーム小胞懸濁液を少なくとも24時間放置して、セラソーム単量体分子をセラソームの表面にその自身が剛性を有する無機ポリシロキサン網状構造を形成することを促進した。
【0131】
(2)ヒアルロン酸(「HA」)の活性化およびカップリング
HA(分子量約100KDa)1gを超純水に完全に溶解し、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)0.1gおよびN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(sulfo-NHS)0.12gをカップリング剤として添加し、カルボキシル基を活性化した。溶液を室温で1時間撹拌した後、アセトンを加えて活性化HAを沈殿させた。沈殿物を濾過し、エタノールで洗浄し、真空で乾燥させて、活性化HAを得た。この活性化HAを0.1mg・mL-1の水溶液に調製し、0.2mLの溶液を上記工程(1)で得られたセラソーム小胞懸濁液に移して溶解させ、活性化HAにおける活性化カルボキシル基と、セラソーム小胞の脂質二重層に組み込まれたDSPE分子のアミノ基とを、アミド結合を介してカップリングした。治療剤を担持した3つのセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rを得た。
【0132】
HAとCLとのカップリングは、赤外線特性評価によって確認された。赤外線特性評価に使用するサンプルは、ロスバスタチンを担持したHA-CL1@Rサンプルである。その調製方法は、以下の通りである。6mgのC1および1mgのDSPEを丸底フラスコに秤量し、10mLのクロロホルムで溶解した。回転蒸発(55℃の水浴、90r/分、30分)によって有機溶媒を完全に除去して、フラスコの壁に薄膜を形成した。10mLのロスバスタチン水溶液(濃度2mg/mL)を添加し、フラスコを50℃の恒温水浴に入れ、薄膜を30分間で十分に水和させた。水浴で10分間超音波処理し、さらにプローブ型超音波装置で5分間(振幅20、間隔3秒間)超音波処理して、セラソーム小胞を得た。セラソーム小胞を少なくとも24時間放置して、セラソーム単量体分子をセラソームの表面にその自身が剛性を有する無機ポリシロキサン網状構造を形成することを促進した。0.1gのHA(分子量約100KDa)を超純水に十分に溶解し、10mgのEDC・HClおよび12mgのsulfo-NHSカップリング剤を加えて、カルボキシル基を活性化した。室温で反応液を1時間撹拌した後、アセトンを加えて活性化HAを沈殿させた。沈殿物を濾過し、エタノールで洗浄し、真空で乾燥させて、活性化HAを得た。この活性化HAを0.1mg・mL-1の水溶液に調製し、0.2mLの溶液を上記工程(1)で得られたセラソーム小胞懸濁液に移して溶解させ、活性化HAにおける活性化カルボキシル基と、セラソーム小胞の脂質二重層に組み込まれたDSPE分子のアミノ基とを、アミド結合を介してカップリングした。標的指向性セラソームHA-CL1@R1を得た。カップリング反応の開始から24時間後、12000rpmの高速遠心分離によりHA-CL1@Rを分離して、真空乾燥した後、赤外線スペクトルの特性評価に使用した。図2に示すように、1100cm -1 の吸収ピークはセラソームの存在を示し、1700cm -1 および2910cm -1 の吸収ピークはセラソームとHAとのカップリングを示した。
【0133】
2.低分子ヒアルロン酸を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@LMHA、HA-CL2@LMHAおよびHA-CL3@LMHAの調製
この実施例において、低分子ヒアルロン酸を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@LMHA、HA-CL2@LMHAおよびHA-CL3@LMHAは、薄膜分散法によって調製される。上記3つのセラソーム送達システムにおけるセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって部分的に修飾され、且つ、約3411Daの分子量の低分子ヒアルロン酸((C1421NO11の分子式、n=9、以下、「LMHA」と略される)を担持した。これらの唯一の違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1に記載の上記セラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
【0134】
HA-CL1@LMHA、HA-CL2@LMHAおよびHA-CL3@LMHAの具体的な調製方法は、上記セラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの調製方法と同じである。これら方法の違いは、工程(1)において、10mLのロスバスタチン水溶液(濃度2mg/mL)の代わりに、分子量3411Da(濃度0.5mg/mL)の低分子ヒアルロン酸の水溶液10mLを使用し、且つ精製セラソーム小胞懸濁液における未封入の低分子ヒアルロン酸を透析バッグで除去したことにある。
【0135】
3.治療剤および低分子ヒアルロン酸を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R+LMHA、HA-CL2@R+LMHA、およびHA-CL3@R+LMHAの調製
この実施例において、治療剤であるロスバスタチンおよび低分子ヒアルロン酸を同時に担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R+LMHA、HA-CL2@R+LMHA、およびHA-CL3@R+LMHAは、薄膜分散法によって調製された。上記3つのセラソーム送達システムにおけるセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって部分的に修飾され、且つ、治療剤であるロスバスタチン(「R」と略される)および約3411Daの分子量の低分子ヒアルロン酸を同時に担持した。これらの違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1に記載のセラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
HA-CL1@R+LMHA、HA-CL2@R+LMHAおよびHA-CL3@R+LMHAの具体的な調製方法は、上記1に記載の上記治療剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの調製方法と実質的に同じである。これらの方法の違いは、工程(1)において、10mLのロスバスタチン水溶液(濃度2mg/mL)と10mLの分子量3411Daの低分子ヒアルロン酸水溶液(濃度0.5mg/mL)と同時に使用し、且つ精製セラソーム小胞懸濁液における未封入のロスバスタチンおよび低分子ヒアルロン酸を透析バッグで除去したことにある。
【0136】
4.CD44活性化剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@S、HA-CL2@SおよびHA-CL3@Sの調製
この実施例において、CD44活性化剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@S、HA-CL2@SおよびHA-CL3@Sは、薄膜分散法によって調製された。上記3つのセラソーム送達システムのセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって部分的に修飾され、且つ、CD44活性化剤-CD44抗体mAb(「S」と略される)を担持した。これらの違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1に記載のセラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
HA-CL1@S、HA-CL2@SおよびHA-CL3@Sの具体的な調製方法は、上記1に記載の上記治療剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの調製方法と同じである。これらの方法の違いは、工程(1)において、10mLのロスバスタチン水溶液(濃度2mg/mL)の代わりに、10mLのCD44抗体mAb水溶液(濃度0.7mg/mL)を使用し、且つ精製セラソーム小胞懸濁液における未封入のCD44抗体mAbをデキストランゲルカラムG-100で分離して除去したことにある。
同様に、CD44活性化剤は、LPSを使用して調製することもでき、同様の結果が得られた。
【0137】
5.治療剤およびCD44活性化剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R+S、HA-CL2@R+S、およびHA-CL3@R+Sの調製
この実施例において、治療剤およびCD44活性化剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R+S、HA-CL2@R+SおよびHA-CL3@R+Sは、薄膜分散法によって調製された。上記3つのセラソーム送達システムのセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって部分的に修飾され、且つ、治療薬であるロスバスタチン(「R」と略される)とCD44活性化剤-CD44抗体mAb(「S」と略される)とを同時に担持した。これらの違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1に記載のセラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
【0138】
HA-CL1@R+S、HA-CL2@R+SおよびHA-CL3@R+Sの具体的な調製方法は、上記1に記載の上記治療剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの調製方法と同じである。これらの方法の違いは、工程(1)において、10mLのロスバスタチン水溶液(濃度2mg/mL)および10mLのCD44抗体mAb水溶液(濃度0.7mg/mL)を同時に使用し、且つ精製セラソーム小胞懸濁液における未封入のロスバスタチンおよびCD44抗体mAbをデキストランゲルカラムG-100で分離して除去したことにある。
同様に、CD44活性化剤は、LPSを使用して調製することもでき、同様の結果が得られた。
【0139】
6.トレーサーを担持したセラソーム送達システムHA-CL1@T、HA-CL2@TおよびHA-CL3@Tの調製
この実施例において、トレーサーを担持したセラソーム送達システムHA-CL1@T、HA-CL2@TおよびHA-CL3@Tは、薄膜分散法によって調製された。上記3つのセラソーム送達システムのセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって部分的に修飾され、且つ、MRI用トレーサーであるガドペンテト酸(「T」と略される)を担持した。これらの違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1に記載のセラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
HA-CL1@T、HA-CL2@TおよびHA-CL3@Tの具体的な調製方法は、上記1に記載の上記治療剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの調製方法と同じである。これらの方法の違いは、工程(1)において、10mLのロスバスタチン水溶液(濃度2mg/mL)の代わりに、10mLのガドペンテト酸の水溶液(濃度3mg/mL)を使用し、且つ精製セラソーム小胞懸濁液における未封入のガドペンテト酸を透析バッグで除去したことにある。
同様に、トレーサーは、ガドテル酸メグルミンまたはガドジアミドを使用して調製することもでき、同様の結果が得られた。
【0140】
7a.トレーサーを担持したセラソーム送達システムHA-CL1@AuNPs、HA-CL2@AuNPsおよびHA-CL3@AuNPsの調製
この実施例において、トレーサーを担持したセラソーム送達システムHA-CL1@AuNPs、HA-CL2@AuNPsおよびHA-CL3@AuNPsは、薄膜分散法によって調製された。上記3つのセラソーム送達システムのセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって部分的に修飾され、且つ、CTトレーサーである金ナノ粒子(「AuNPs」と略される)を担持した。これらの違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1に記載の上記セラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
HA-CL1@AuNPs、HA-CL2@AuNPsおよびHA-CL3@AuNPsの具体的な調製方法は、上記1に記載の上記治療剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの調製方法と同じである。これらの方法の違いは、工程(1)において、10mLのロスバスタチン水溶液(濃度2mg/mL)の代わりに、10mL金ナノ粒子溶液(濃度1mg/mL)を使用し、且つ精製セラソーム小胞懸濁液における未封入の金ナノ粒子をデキストランゲルカラムG-100で分離して除去したことにある。
【0141】
7b.トレーサーを担持したセラソーム送達システムHA-CL1@イオジキサノール、HA-CL2@イオジキサノールおよびHA-CL3@イオジキサノールの調製
【0142】
この実施例において、トレーサーを担持したセラソーム送達システムHA-CL1@I、HA-CL2@IおよびHA-CL3@Iは、薄膜分散法によって調製された。上記3つのセラソーム送達システムのセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって部分的に修飾され、且つ、CTトレーサーであるイオジキサノールまたはイオプロミド(「I」と略される)を担持した。これらの違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1に記載の上記セラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
【0143】
HA-CL1@I、HA-CL2@IおよびHA-CL3@Iの具体的な調製方法は、上記1に記載の上記治療剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの調製方法と同じである。これらの方法の違いは、工程(1)において、10mLのロスバスタチン水溶液(濃度2mg/mL)の代わりに、10mLイオジキサノールまたはイオプロミド溶液(濃度1μg/mL)を使用し、且つ精製セラソーム小胞懸濁液における未封入のイオジキサノールまたはイオプロミドをデキストランゲルカラムで分離して除去したことにある。
【0144】
8a.トレーサーおよびCD44活性化剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@AuNPs+S、HA-CL2@AuNPs+SおよびHA-CL3@AuNPs+Sの調製
この実施例において、トレーサーおよびCD44活性化剤を同時に担持したセラソーム送達システムHA-CL1@AuNPs+S、HA-CL2@AuNPs+SおよびHA-CL3@AuNPs+Sは、薄膜分散法によって調製された。上記3つのセラソーム送達システムのセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって部分的に修飾され、且つ、CTトレーサー金ナノ粒子(「AuNPs」「HA」と略される)およびCD44活性化剤--CD44抗体mAb(「S」と略される)を同時に担持した。これらの違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1に記載の上記セラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
HA-CL1@AuNP+S、HA-CL2@AuNP+SおよびHA-CL3@AuNP+Sの具体的な調製方法は、上記1に記載の上記治療剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの調製方法と実質上同じである,これらの方法の違いは、工程(1)において、10mLの金ナノ粒子溶液(濃度1mg/mL)および10mLのCD44抗体mAbの水溶液(濃度0.7mg/mL)を同時に使用し、且つ精製セラソーム小胞懸濁液における未封入の金ナノ粒子およびCD44抗体mAbをデキストランゲルカラムG-100で分離して除去したことにある。
【0145】
8b.トレーサーおよびCD44活性化剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@I+S、HA-CL2@I+SおよびHA-CL3@I+Sの調製
この実施例において、トレーサーおよびCD44活性化剤を同時に担持したセラソーム送達システムHA-CL1@I+S、HA-CL2@I+SおよびHA-CL3@I+Sは、薄膜分散法によって調製された。上記3つのセラソーム送達システムのセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって部分的に修飾され、且つ、CTトレーサーであるイオジキサノールまたはイオプロミド(「I」と略される)およびCD44活性化剤-LPS(「S」と略される)を同時に担持した。これらの違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1に記載の上記セラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
HA-CL1@I+S、HA-CL2@I+SおよびHA-CL3@I+Sの具体的な調製方法は、上記1に記載の上記治療剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの調製方法と実質的に同じである。これらの方法の違いは、工程(1)において、10mlのイオジキサノールまたはイオプロミド水溶液(1μg/mL)および10mlのLPSの水溶液(濃度0.7mg/mL)を同時に使用し、且つ精製セラソーム小胞懸濁液における未封入のイオジキサノールまたはイオプロミドおよびLPSをデキストランゲルカラムG-200で分離して除去したことにある。
【0146】
9.治療剤、低分子ヒアルロン酸、トレーサーおよびCD44活性化剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R+LMHA+T+S、HA-CL2@R+LMHA+T+SおよびHA-CL3@R+LMHA+T+Sの調製
この実施例において、治療剤ロスバスタチン、低分子ヒアルロン酸、トレーサーであるガドペンテト酸およびCD44活性化剤を同時に担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R+LMHA+T+S、HA-CL2@R+LMHA+T+SおよびHA-CL3@R+LMHA+T+Sは、薄膜分散法によって調製された。上記3つのセラソーム送達システムのセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって部分的に修飾され、且つ、治療剤であるロスバスタチン(「R」と略される)、分子量約3411Daの低分子ヒアルロン酸、MRIトレーサーであるガドペンテト酸(「T」と略される)およびCD44活性化剤-CD44抗体mAb(「S」と略される)を同時に担持した。これらの違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1記載のセラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
HA-CL1@R+LMHA+T+S、HA-CL2@R+LMHA+T+SおよびHA-CL3@R+LMHA+T+Sの具体的な調製方法は、上記1に記載の上記治療剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの調製方法と実質的に同じである。これらの方法の違いは、工程(1)において、10mLのロスバスタチン水溶液(濃度2mg/mL)、10mLの分子量3411Daの低分子ヒアルロン酸の水溶液(濃度0.5mg/mL)、10mLのガドペンテト酸水溶液(濃度3.0mg/mL)および10mLのCD44抗体mAbの水溶液(濃度0.7mg/mL)を同時に使用し、且つ精製セラソーム小胞懸濁液における未封入のロスバスタチン、低分子ヒアルロン酸、ガドペンテト酸およびCD44抗体mAbをデキストランゲルカラムG-100で分離して除去したことにある。
同様に、CD44活性化剤ではLPSを使用し、トレーサーではガドテル酸メグルミンを使用して、調製することもでき、同様の結果が得られた。
【0147】
10.ブランクセラソーム送達システムHA-CL1、HA-CL2、HA-CL3(比較例として)の調製
この実施例において、ブランクセラソーム送達システムHA-CL1、HA-CL2、HA-CL3は、薄膜分散法によって調製された。上記3つのセラソーム送達システムのセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって部分的に修飾され、且つ、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断、予防および/または治療のための物質をいずれも担持しなかった。これらの違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1に記載のセラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
HA-CL1、HA-CL2、HA-CL3の具体的な調製方法は、上記1に記載の上記治療剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの調製方法と実質的に同じである。これらの方法の違いは、工程(1)において、10mLのロスバスタチン水溶液(濃度2mg/mL)の代わりに純水を使用し、且つ透析によって未封入物質を除去する工程を省略したことにある。
【0148】
11.治療剤を担持した非標的指向性セラソーム送達システムCL1@R、CL2@RおよびCL3@R(比較例として)の調製
この実施例において、治療剤を担持した非標的指向性セラソーム送達システムCL1@R、CL2@RおよびCL3@Rは、薄膜分散法によって調製された。上記3つのセラソーム送達システムのセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって修飾されなく、且つ不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質であるロスバスタチン(「R」と略される)を担持した。これらの違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1に記載のセラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
CL1@R、CL2@RおよびCL3@Rの具体的な調製方法は、上記1に記載の上記治療剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの調製方法と実質的に同じである。これらの方法の違いは、工程(2)を省略したことにある。
【0149】
12a.トレーサーを担持した非標的指向性セラソーム送達システムCL1@AuNPs、CL2@AuNPsおよびCL3@AuNPs(比較例として)の調製
この実施例において、トレーサーを担持した非標的指向性セラソーム送達システムCL1@AuNP、CL2@AuNPおよびCL3@AuNPは、薄膜分散法によって調製された。上記3つのセラソーム送達システムのセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって修飾されなく、且つCTトレーサー金ナノ粒子(「AuNPs」と略される)を担持した。これらの違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1に記載のセラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
CL1@AuNP、CL2@AuNPおよびCL3@AuNPの具体的な調製方法は、上記7に記載のトレーサーを担持したセラソーム送達システムHA-CL1@AuNPs、HA-CL2@AuNPsおよびHA-CL3@AuNPsの調製方法と実質的に同じである。これらの方法の違いは、工程(2)を省略したことにある。
【0150】
12b.トレーサーを担持した非標的指向性セラソーム送達システムCL1@I、CL2@IおよびCL3@I(比較例として)の調製
この実施例において、トレーサーを担持した非標的指向性セラソーム送達システムCL1@I、CL2@IおよびCL3@Iは、薄膜分散法によって調製された。上記3つのセラソーム送達システムのセラソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって修飾されなく、且つCTトレーサーであるイオジキサノール(「I」と略される)を担持した。これらの違いは、上記3つのセラソーム送達システムの調製に使用されるセラソーム単量体分子が、それぞれ実施例1に記載のセラソーム単量体C1、C2およびC3であることにある。
CL1@I、CL2@IおよびCL3@Iの具体的な調製方法は、上記7に記載のトレーサーを担持したセラソーム送達システムHA-CL1@I、HA-CL2@IおよびHA-CL3@Iの調製方法と実質的に同じである。これらの方法の違いは、工程(2)を省略したことにある。
【0151】
13.治療剤を担持したリポソーム送達システムHA-PL@R(比較例として)の調製
この実施例において、治療剤を担持したリポソーム送達システムHA-PL@Rは、薄膜分散法によって調製された。上記リポソーム送達システムHA-PL@Rのリポソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって部分的に修飾され、且つ不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質であるロスバスタチン(「R」と略される)を担持した。
【0152】
HA-PL@Rの具体的な調製方法は、以下の通りである
(1)リポソーム小胞懸濁液の調製:
4mgのジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、1mgのコレステロール、1mgのジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)(質量比4:1:1)を秤量し、10mLのクロロホルムで溶解した。ゆっくり回転蒸発(65℃の水浴、90r/分、30分間)して有機溶媒を除去し、容器の壁に薄膜を形成した。丸底フラスコに10mLのロスバスタチン水溶液(濃度2.0mg/mL)を添加し、フラスコを50℃の恒温水浴に入れ、薄膜を十分に水和させて、粗リポソーム小胞懸濁液を調製した。粗リポソーム小胞懸濁液を水浴で超音波処理した後、プローブ型超音波装置で3分間(振幅20、間隔3秒間)超音波処理し、リポソーム小胞を十分に分散して形成された安定した系、即ち、精製リポソーム小胞懸濁液を得た。精製リポソーム小胞懸濁液中の未封入のロスバスタチンは、透析バッグによって除去された。
【0153】
(2)ヒアルロン酸(「HA」)的活性化およびカップリング:
HA(分子量約100KDa)1gを超純水に完全に溶解し、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)0.1gおよびN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(sulfo-NHS)0.12gをカップリング剤として添加し、カルボキシル基を活性化した。溶液を室温で1時間撹拌した後、無水エタノールを加えて活性化HAを沈殿させた。沈殿物を濾過し、エタノールで洗浄し、真空で乾燥させて、活性化HAを得た。この活性化HAを0.1mg・mL-1の水溶液に調製し、0.2mLの溶液を上記工程(1)で得られたリポソーム小胞懸濁液に移して溶解させ、活性化HAにおける活性化カルボキシル基と、リポソーム小胞の脂質二重層に組み込まれたDSPE分子のアミノ基とを、アミド結合を介してカップリングした。治療剤を担持したリポソーム送達システムHA-PL@Rを得た。
【0154】
14a.トレーサーを担持したリポソーム送達システムHA-PL@T(比較例として)の調製
この実施例において、トレーサーを担持したリポソーム送達システムHA-PL@Tは、薄膜分散法によって調製された。上記リポソーム送達システムHA-PL@Tのリポソーム小胞の表面は、いずれもターゲティングリガンドであるヒアルロン酸(「HA」と略される)によって部分的に修飾され、且つMRIトレーサーであるガドペンテト酸(「T」と略される)を担持した。
HA-PL@Tの具体的な調製方法は、上記13に記載の治療剤を担持したリポソーム送達システムHA-PL@Rの調製方法と実質的に同じである。これらの方法の違いは、工程(1)において、10mLのロスバスタチン水溶液(濃度2.0mg/mL)の代わりに、10mLのトレーサーであるガドペンテト酸の水溶液(濃度3.0mg/mL)を使用し、且つ精製リポソーム小胞懸濁液における未封入のトレーサーであるガドペンテト酸を透析バッグで除去したことにある。
同様に、トレーサーは、ガドテル酸メグルミンを使用して調製することもでき、同様の結果が得られた。
【0155】
実施例3:本発明のセラソーム送達システムの性質の調査
この実施例において、実施例2で調製された治療剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rを例として、本発明のセラソーム送達システムは、安定かつ制御可能な性質を有することため、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断、予防および治療に適することを証明した。一方、本実施例において、比較の便宜上、実施例2で調製された治療薬を担持したリポソーム送達システムHA-PL@Rを比較例として使用した。
【0156】
1.薬物濃度の測定法
ロスバスタチンは、強い紫外線吸収特性を有するため、ロスバスタチンの紫外線吸収特性を利用して、HPLC-UV法(Waters 2487、Waters Corporation、米国)でその含有量を測定することができる。標準定量式は、HPLCクロマトグラフィーピークのピーク面積(Y)に対する異なる濃度のロスバスタチン溶液の濃度(X)で確立された。
【0157】
2.流体力学径の測定
本発明のセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@R、ならびに比較例としてのリポソーム送達システムHA-PL@Rの流体力学径は、レーザーパーティクルアナライザー(BI-Zeta Plus/90 Plus、Brookhaven Instruments Corporation、米国)によって測定され、結果は表1に示す。
【0158】
3.封入率の測定
1.0mLのセラソーム小胞懸濁液に過剰量のHClを添加することにより懸濁液を強酸性環境にした。さらに、超音波処理を利用して、セラソーム小胞からの薬物の放出を加速した。HPLC(Waters 2487、Waters Corporation、米国)で得られた液体中の薬物含有量を測定し、式1により封入率を算出した。
【0159】
[式1]
【0160】
4.薬物担持率の測定
薬物担持率の測定方法は、計算方法がわずかに異なる以外、封入率を測定する方法と同様である。に過剰量のHClを添加することにより懸濁液を強酸性環境にした。さらに、超音波処理を利用して、セラソーム小胞からの薬物の放出を加速した。HPLC(Waters 2487、Waters Corporation、米国)で得られた液体中の薬物含有量を測定し、式2により薬物担持率を算出した。
【0161】
[式2]
【0162】
【表1】
【0163】
5.長期安定性の調査
本発明のセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@R、ならびに対照としてのリポソーム送達システムHA-PL@Rを、4℃で保存し、異なる時点でサンプリングし、レーザーパーティクルアナライザー(BI-Zeta Plus/90Plus、Brookhaven Instruments Corporation、米国)によってその流体力学径の変化を検出した。結果は図3に示す。リポソーム送達システムHA-PL@Rの粒子径は、保存時間とともに大幅に増加したことが分かった。これは、リポソーム小胞が不安定で、凝集または融合しやすいことによる可能性が非常に高い。さらに、安定性が低いため、リポソーム小胞は、体内の細網内皮系によって容易に除去され、半減期が短くなり、ヒトへの適用が制限される。
これに対して、HA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの平均流体力学径は、90日の保存後もほとんど変化せず、試験期間において相分離、凝集などの現象は見られなかった。HA-PL@Rの平均流体力学径は、183nmから約2μmに増加し、外観から、10日の保存後に明らかな沈殿が現れ、90日の保管後に、HA-PL@Rは綿状沈殿物の形態になり、再分散できなかった。本発明のセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rは、リポソーム送達システムHA-PL@Rよりも優れた保存安定性を有することがわかる。したがって、長期血中滞留性(long-circulating)標的指向性薬物送達システムとしての応用の可能性がある。
【0164】
6.長期封入率の調査
本発明のセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@R、ならびに対照としてのリポソーム送達システムHA-PL@Rを、4℃で保存し、異なる時点でサンプリングし、遊離薬物を限外濾過および遠心分離により除去して、その封入率の変化を検出した。結果を図4に示す。
図に示されるように、セラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rは、90日の静置後、薬物含有量が有意な変化はなかった。一方、リポソーム送達システムHA-PL@Rの薬物含有量は、約30%まで劇的に低下した。これは、封入された薬物の放出速度が脂質二重層の性質に密接に関係していることを示した。セラソーム小胞の表面にある無機ポリシロキサン網状構造は、内部の脂質二重層構造を効果的に保護し、脂質二重層の透過性を低下させるため、薬物は漏れにくくなった。一方、リポソーム小胞は、表面に無機ポリシロキサン網状構造よる保護効果がないため、安定性が低く、薬物は漏れしやすくなった。
上記データによって、本発明のセラソーム送達システムの長期保存安定性が優れており、4℃で3ヶ月間保存しても、粒子径がほとんど変化せず、且つ薬物の漏れ率が低いことが明らかとなった。
【0165】
7.生体外での薬物放出性の調査
2mLの本発明のセラソーム送達システムHA-CL1@Rおよび2mLの対照としてのリポソーム送達システムHAPL@Rを、透析バッグに入れて密封した。次に、透析バッグを50mLの放出媒介(PBS溶液、pH=7.4)に入れ、37℃で120時間インキュベートした。異なる時点で2mLの放出液を採取し、同量のPBS溶液を補充した。HPLC(Waters 2487、Waters Corporation、米国)によって放出液中の薬物含有量を検出し、式3に従って累積薬物放出率を算出した。
【0166】
[式3]
式3の各パラメータの意味は以下の通りである。
CRP:累積薬物放出率
:放出液の交換容積、ここで、Vは2mLである。
:放出系中の放出液の体積、ここで、Vは50mLである。
:i回目の交換およびサンプリング時の放出液中の薬物濃度、単位はμg/mLである。
薬物:セラソームまたはリポソーム送達システム中の薬物の合計質量、単位はμgである。
n:放出液の交換の回数
:放出液のn回目の交換後に測定された放出系中の薬物濃度
【0167】
生体外での放出は、ナノ粒子送達システムを評価するための重要な指標である。図5は、本発明のセラソーム送達システムHA-CL1@Rおよび対照としてのリポソーム送達システムHA-PL@Rの累積薬物放出率の変化を示すグラフである。グラフに示すように、リポソーム送達システムHA-PL@Rは、30時間以内にほぼ100%の薬物を放出した。セラソーム送達システムHA-CL1@Rは、最初の3時間でより速く放出し、3時間以内に約15%放出した。その後、薬物放出率は徐々に低下し、120時間かかても59.5%の薬物しか放出されなかった。初期段階での速い薬物放出速度は、セラソーム小胞の表面に部分的に吸着または沈殿した、急速に溶解して放出媒介に拡散できる薬物の放出挙動が原因である可能性がある。後の段階での薬物放出は、主にセラソーム小胞に封入された薬物の放出であり、持続的且つゆっくりとした放出挙動を特徴とした。生体外放出試験の結果は、セラソーム小胞の表面が無機ポリシロキサン網状構造で覆われるため、セラソーム小胞からの薬物の放出を効果的に遅らせることができ、脂質二重層間の空隙が減少し、脂質二重層の密度が増加した。生体外放出試験の結果は、薬物担体としてのセラソーム小胞が徐放性および持続的な放出特性を有することを示した。
【0168】
さらに、類似の研究により、本発明のセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの生体外での薬物放出特性が似ている。中でも、HA-CL3@Rの薬物放出速度は最も速い(図6を参照)。これは、本発明の3つのセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rが類似の薬物放出メカニズムおよび特性を有することを示した。
【0169】
実施例4:本発明のセラソーム送達システムの生体内での放出安定性の調査
この実施例において、実施例2で調製されたロスバスタチンを担持したセラソーム送達システムHA-CL1@RおよびHA-CL2@Rを例として用い、本発明のセラソーム送達システムは、リポソーム送達システムと比較して、不安定なプラークで比較的安定した状態を保つことができ、長期間持続的に薬物を放出する効果を実現することを証明した。一方、比較の便宜上、この実施例において、比較例として、実施例2で調製されたロスバスタチンを担持したリポソーム送達システムHA-PL@Rを用いた。
【0170】
実験方法:
ApoE-/-SPFマウス(18匹、10週齢、体重20±1g)を実験動物とした。マウスに適応型の高脂肪食(脂肪10%(w/w)、コレステロール2%(w/w)、コール酸ナトリウム0.5%(w/w)、残りはマウスの通常飼料)を供した4週間後、40mg/kgの用量で1%のペントバルビタールナトリウム(1mgのペントバルビタールナトリウムを100mlの生理食塩水に加えて調製)の腹腔内注射により麻酔した。次に、マウスを仰臥位で手術プレートに固定し、75%(v/v)のアルコールで首を中心として消毒し、首の皮膚を縦に切断し、前頸部を鈍く分離し、鼓動した左総頸動脈が気管の左側に観察された。総頸動脈を慎重に分岐部まで分離し、長さ2.5mm、内径0.3mmのシリコンカニューレを左総頸動脈の外周に配置し、カニューレの近位および遠位部分をフィラメントで狭めて固定した。局所的な締め付けは、近位端の急速な血流を引き起こし、せん断力が増加し、血管の内膜を損傷した。頸動脈を復位させ、首の皮膚を断続的に縫合した。すべての操作は、10倍の実体顕微鏡で行われた。手術から目覚めた後、マウスをケージに戻し、周囲温度を20~25℃に維持し、12時間明-12時間暗でサイクルした。手術後4週目に、リポ多糖(LPS)(0.2mlのリン酸緩衝生理食塩水、1mg/kg、Sigma社、米国)を10週間にわたって週2回腹腔内注射して、慢性炎症を誘発した。手術後8週目に、マウスを50mlのシリンジ(十分な通気孔を確保)に入れて、1日6時間、週5日、合計6週間で、拘束性精神的ストレスを引き起こした。マウスにおけるアテローム性動脈硬化不安定プラークのモデルは、手術後14週目に完成した。図7(a)および7(b)は、上記マウスアテローム性動脈硬化不安定プラークモデルの核磁気共鳴画像を示す。矢印が指す部分から、左頸動脈プラークが形成されており、モデリングが成功することを示唆しており、右頸動脈は通常の動脈血管壁として比較のために用いられる。
【0171】
使用した標的指向性送達システムに応じて、マウスを群当たり6匹で3つの群にランダムに分かれた。即ち、セラソーム送達システム群1(実施例2で調製されたロスバスタチンを担持したセラソーム送達システムHA-CL1@Rを使用した)、セラソーム送達システム群2(実施例2で調製されたロスバスタチンを担持したセラソーム送達システムHA-CL2@Rを使用した)、およびリポソーム送達システム群(実施例2で調製されたロスバスタチンを担持したリポソーム送達システムHA-PL@Rを使用し、比較例とした)である。
【0172】
実験の当日に、上記3つの群に対して、体重1kg当たりロスバスタチン5mgの単回用量で静脈内注射により、HA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-PL@Rを投与した。それぞれマウスの。動脈不安定プラークにおける薬物曝露の百分率(実験薬物を注射した後の不安定プラークでのロスバスタチン濃度の経時的な変化を反映するもの)は、液体クロマトグラフィー質量分析法で測定した。
【0173】
(1)標準溶液の調製
0.0141gのロスバスタチンを正確に秤量し、25mLのメスフラスコに入れ、メタノールで溶解し、マークまで希釈し、振盪し、濃度56.4μg/mLのロスバスタチン参照物質ストック溶液を調製した。ロスバスタチン標準物質ストック溶液をメタノールで希釈して、10、1、0.5、0.125、0.05、0.025、0.01、0.002、0.0004μg/mLの一連の標準溶液を作成し、4℃で保存した。
【0174】
(2)内部標準溶液の調製
アセトアミノフェン0.0038gを正確に秤量し、25mLのメスフラスコに入れ、メタノールで溶解し、マークまで希釈し、振盪し、濃度0.152mg/mLのアセトアミノフェンストック溶液を調製した。アセトアミノフェンストック溶液をメタノールで希釈して、15.2ng/mLの内部標準溶液を作成し、4℃で保存した。
【0175】
(3)頸動脈サンプルの前処理
投与前および投与後2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、168時間(7日)に動物を殺処分(各時点で1匹のマウス)した。頸動脈プラークをすばやく取り出して生理食塩水に入れ、表面の水を濾紙で吸収し、各プラークから1cmのサンプルを切り取り、湿重量を計量し、1mlの生理食塩水を加えて均質化してホモジネート液を調製した。
ホモジネート液1mlを取り、メタノール20μL、濃度15.2ng/mLの内部標準溶液100μL、10%(v/v)ギ酸水溶液100μL、酢酸エチル5mLを加え、均一に混合し、14000rpmで10分間遠心分離した。有機層溶液4mlを取り、窒素で乾燥させた。次に、200μLの移動相(0.1%(v/v)ギ酸水溶液とアセトニトリル(40:60、v/v))で溶解し、溶液を14000rpmで10分間遠心分離し、上清を採取し、サンプルボトルに移した。
【0176】
(4)標準曲線のサンプルの調製
一連の濃度のロスバスタチン溶液10μLを取り、500μLのブランク血漿を添加し、ボルテックスして均一に混合し、それぞれ200、20、10、2.5、1、0.5、0.2、0.04、0.008ng/mLの濃度のロスバスタチン模擬薬物含有血漿サンプルを調製した。血漿処理による操作(15.2ng/mLの内部標準溶液50μL、10%(v/v)ギ酸水溶液50μLおよび酢酸エチル2.5mLを加えて均一に混合し、14000rpmで10分間遠心分離し、有機層溶液2mlを取り、窒素で乾燥させた後、100μLの移動相で溶解し、14000rpmで10分間遠心分離し、上清を採取し、サンプルボトルに移した)に従って標準曲線を確立した。ロスバスタチンのピーク面積と内部標準のピーク面積の比を縦座標(y)として、血中濃度を横座標(x)として、重み付き最小二乗法により線形回帰を行った。
【0177】
(5)液体クロマトグラフィー質量分析
液相分離は、Shimadzu modulaRLC system(東京、日本国)を使用して実施した。上記システムは、1つのDGU-20A3R真空脱気装置、2つのLC-20ADXR溶媒送達モジュール、1つのSIL-20ACXRオートサンプラー、1つのSPD-M20A PDAシステム、および1つのCBM-20Aコントローラーを含む。この液体クロマトグラフィシステムは、ESIインターフェースを備えたABSciex 5500 Qtrap質量分析計(FosteRCity、CA、USA)とオンラインで接続された。Analystソフトウェア(Version 1.6.2、ABSciex)は、データの取得と処理に用いられた。
【0178】
Cortecs TM UPLC C18カラム(150mm×2.1mm内径(id)、1.6μm粒度)(Waters社、米国)を使用してクロマトグラフィーを実施し、カラム温度およびサンプルチャンバ温度をそれぞれ40℃および4℃に設定した。移動相は0.1%(v/v)ギ酸水溶液とアセトニトリル(40:60、v/v)、サンプル注入量は2μl、流量は0.2mL/min、単一サンプルの分析時間は4分間とした。
【0179】
質量分析は、陽イオンスキャンモードで、イオン源としてESI源を使用した。スプレー電圧を4500Vに設定し、ソース温度を500℃に設定した。各化合物は、多重反応モニタリング(MRM)によって検出された。各成分のイオンチャネルは、ロスバスタチンカルシウムm/z 482.2→258.2、アセトアミノフェンm/z 152.2→110とした。各化合物の衝突エネルギーおよびコーン電圧は、ロスバスタチン43Vおよび100V、アセトアミノフェン23Vおよび100Vに最適化した。ロスバスタチンカルシウムとアセトアミノフェンの保持時間は、それぞれ2.07minと1.49minであった。
【0180】
(6)標準曲線
ロスバスタチンの線形範囲、相関係数(r)、線形方程式およびLLOQを表2に示す。表に示すように、ロスバスタチンのR値は0.999より大きく、定量分析の要件を満たす。
【0181】
【表2】
【0182】
結果を図8に示す。図に示すように、HA-PL@Rを注射した後、モデルマウスの不安定プラークにおけるロスバスタチンの濃度は、短時間でピークに達した後、急速に低下した。これは、リポソーム小胞が不安定プラークで不安定であり、崩壊しやすく、急速な薬物漏出にもたらすことを示す。これに対して、HA-CL1@RおよびHA-CL2@Rを注射した後、モデルマウスの不安定プラークにおけるロスバスタチンの濃度は、比較的に速くピークに達し、濃度は比較的長期間にわたって穏やかに減少した。これは、本発明のセラソーム送達システムが不安定プラークで安定した状態を保つことができ、長期間にわたって薬物を持続的に放出する効果を実現できることを示す。
【0183】
実施例5:標的グメカニズムの調査
この実施例において、不安定プラークにおける内皮細胞の表面のCD44の密度およびHAに対する親和性を調査したことで、本発明に係る不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムの標的として、不安定プラーク内のCD44を選択することに対して、実験的な根拠を提供する。
【0184】
1)マウス動脈不安定プラークの内皮細胞表面および正常な動脈血管壁の内皮細胞表面のCD44含有量の比較
上記実施例4に記載の方法に従って、アテローム性動脈硬化プラークのマウスモデルを構築した。正常な動脈血管の内皮細胞とモデルマウスの動脈不安定プラークの内皮細胞を採取して、免疫組織化学染色と画像分析によってCD44含有量を測定した。具体的な実験方法は以下の通りである。
【0185】
マウス頸動脈アテローム硬化性不安定プラーク標本を採取し、10mL/Lのホルムアルデヒド水溶液で固定し、パラフィンで包埋し、4μmに切断し、通常の方法で脱ろうし、水和させ、アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体法(SABC)によってCD44含有量を検出した。標本を30mL/LのH水溶液に浸漬して内因性ペルオキシダーゼの活性を遮断し、さらにクエン酸緩衝液に入れ、抗原マイクロ波修復(antigen microwave repair)を行った。次に、50g/Lのウシ血清アルブミン(BSA)ブロッキング液を滴下し、室温で20分間放置した。さらに、マウス抗CD44ポリクローナル抗体(1:100)を滴下し、4℃の冷蔵庫に一晩置き、37℃で1時間インキュベートした。洗浄した後、ビオチン化ヤギ抗マウスIgGを滴下し、37℃で30分間反応させた。次に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識SABC複合体を滴下し、37℃で20分間インキュベートした。上記各ステップにおいていずれもPBSで洗浄した。
【0186】
最後に、DABで発色(発色は顕微鏡で制御された)し、ヘマトキシリンで再び染色し、サンプルを脱水し、密封した。BI-2000画像分析システムの免疫組織化学分析システムにより切片を分析した。正常な動脈血管の内皮細胞および動脈不安定プラークの内皮細胞について、それぞれ3つの切片を採取し、5つの代表的な視野をランダムに選択した。CD44の陽性発現は、細胞膜と細胞質は黄褐色/茶褐色で、且つ背景は鮮明であり、また、色が濃いほどCD44の発現が強くなる。
【0187】
黄褐色の粒子は見られないことは、CD44の陰性発現を意味する。正常な動脈血管の内皮細胞および動脈不安定プラークの内皮細胞の陽性細胞の平均吸光度(A)値を測定し、比較した。結果を図9に示す。
【0188】
図9は、モデルマウスの正常な動脈血管壁の内皮細胞および動脈不安定プラークの内皮細胞のCD44含有量の測定結果(半定量的積分で表される)を示す。図に示すように、動脈不安定プラークの内皮細胞表面のCD44含有量は、正常な動脈血管の内皮細胞表面のCD44含有量の約2.3倍である。
【0189】
2a)HAに対するマウスの動脈不安定プラークの内皮細胞の表面および正常な動脈血管壁の内皮細胞の表面のCD44の親和性の比較
【0190】
モデルマウスの正常な動脈血管壁の内皮細胞および動脈不安定プラークの内皮細胞を採取し、濃度10mg/mlのアミノフルオレセインで標識されたヒアルロン酸(「FL-HA」で表される)を加え、サンプルは、37℃、5%COのインキュベーター内に、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(体積分率10%の牛胎児血清、100U/mlのペニシリン、100U/mlのストレプトマイシンを含む)で培養した。30分間後、フローサイトメトリー(CytoFLEX、Beckman Coulter、USA)で平均蛍光強度(MFI)を測定し、両方の細胞の表面でのFL-HAの結合力の積分(正常な動脈血管壁の内皮細胞の結合力は1とする)を算出した。結果を図10に示す。
【0191】
図10に示すように、動脈不安定プラークの内皮細胞の表面のFL-HAの結合力の積分は、正常な動脈血管壁の内皮細胞の約24倍である。これは、正常な動脈血管壁の内皮細胞の表面のほとんどのCD44がリガンドHAに結合できない静止状態となるが、動脈不安定プラークの内皮細胞の表面のCD44が内部環境における炎症因子などの因子の影響で活性化され、HAに対する親和性は著しく増加することを示す。
【0192】
2b)リガンドおよび抗体に対するマウスの動脈不安定プラークの内皮細胞の表面および正常な動脈血管壁の内皮細胞の表面のCD44の親和性の比較
【0193】
CD44の天然リガンドとして、HA、GAG、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、セレクチン、オステオポンチン(OPN)、およびモノクローナル抗体HI44a、HI313、A3D8、H90、IM7などが挙げられる。
【0194】
モデルマウスの正常な動脈血管壁の内皮細胞および動脈不安定プラークの内皮細胞を採取し、濃度10mg/mlのアミノフルオレセインで標識されたリガンド/抗体を添加し、サンプルは、37℃、5%COのインキュベーター内に、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(体積分率10%の牛胎児血清、100U/mlのペニシリン、100U/mlのストレプトマイシンを含む)で培養した。30分間後、フローサイトメトリー(CytoFLEX、Beckman Coulter、USA)で平均蛍光強度(MFI)を測定し、両方の細胞の表面でのFL-リガンド/抗体の結合力の積分(正常な動脈血管壁の内皮細胞のCD44のリガンド/抗体に対する結合力は1とする)を算出した。結果を図11に示す。
【0195】
図11に示されるように、HAに対する動脈不安定プラークの内皮細胞の表面のCD44の結合力の積分は、正常な動脈血管壁の内皮細胞約24倍である。これは、正常な動脈血管壁の内皮細胞の表面のほとんどのCD44がリガンドHAに結合できない静止状態となるが、動脈不安定プラークの内皮細胞の表面のCD44が内部環境における炎症因子などの因子の影響で活性化され、HAに対する親和性は著しく増加することを示す。
【0196】
CD44の他のリガンドは、HAと似ている。GAGに対する不安定プラークの内皮細胞の表面のCD44の結合力の積分は、正常細胞の22倍であり;コラーゲンに対する不安定プラークの内皮細胞のCD44の結合力の積分は、正常細胞の21倍であり;ラミニンに対する不安定プラークの内皮細胞のCD44の結合力の積分は、正常細胞の16倍であり;フィブロネクチンに対する不安定プラークの内皮細胞のCD44の結合力の積分は、正常細胞の18倍であり;セレクチンに対する不安定プラークの内皮細胞のCD44の結合力の積分は、正常細胞の19倍であり;オステオポンチンに対する不安定プラークの内皮細胞のCD44の結合力の積分は、正常細胞の17倍である。
【0197】
CD44のモノクローナル抗体についても同様の結果が観察された。HI44aに対する不安定プラークの内皮細胞の表面のCD44の結合力の積分は、正常細胞の15倍であり;HI313に対する不安定プラークの内皮細胞のCD44の結合力の積分は、正常細胞の21倍であり;A3D8に対する不安定プラークの内皮細胞のCD44の結合力の積分は、正常細胞の17倍であり;H90に対する不安定プラークの内皮細胞のCD44の結合力の積分は、正常細胞の9倍であり;IM7に対する不安定プラークの内皮細胞のCD44の結合力の積分は、正常細胞の8倍である。
【0198】
3a)HAに対するプラーク外のマクロファージおよび動脈の不安定プラーク内のマクロファージの表面のCD44の親和性の比較
【0199】
モデルマウスの腹腔内のマクロファージおよび動脈不安定プラーク内のマクロファージを採取し、濃度10mg/mlのアミノフルオレセインで標識されたヒアルロン酸(「FL-HA」で表される)を加え、サンプルは、37℃、5%COのインキュベーター内に、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(体積分率10%の牛胎児血清、100U/mlのペニシリン、100U/mlのストレプトマイシンを含む)で培養した。30分間後、フローサイトメトリー(CytoFLEX、Beckman Coulter、USA)で平均蛍光強度(MFI)を測定し、両方の細胞の表面でのFL-HAの結合力の積分(HAに対するプラーク外のマクロファージの表面のCD44の結合力は1とする)を算出した。結果を図12に示す。
【0200】
図12に示すように、動脈不安定プラーク内のマクロファージの表面のFL-HAの結合力は、プラーク外のマクロファージの表面のFL-HAの結合力の約40倍である。これは、動脈不安定プラーク内のマクロファージの表面のCD44も、内部環境における炎症因子などの因子の影響で活性化され、HAに対する親和性は著しく増加することを示す。
【0201】
上記実験の結果に基づいて、以下の結論が得られる。正常細胞(例えば、正常な動脈血管壁の内皮細胞、プラーク外のマクロファージなど)と比較して、不安定プラーク内の細胞(内皮細胞、マクロファージなどを含み、動脈不安定プラークの発達に重要な影響を与える)の表面のCD44の密度が明らかに増加し、HAに対する親和性が顕著に強化されるため、HAリガンドに対する動脈不安定プラーク内のCD44の特異的親和性は、正常細胞よりはるかに高く、本発明の不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムの優れた標的として非常に有利である。
【0202】
3b)リガンド/抗体に対するプラーク外のマクロファージおよび動脈の不安定プラーク内のマクロファージの表面のCD44の親和性の比較
【0203】
モデルマウスの腹腔内のマクロファージおよび動脈不安定プラーク内のマクロファージを採取し、濃度10mg/mlのアミノフルオレセインで標識されたリガンド/抗体を加え、サンプルは、37℃、5%COのインキュベーター内に、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(体積分率10%の牛胎児血清、100U/mlのペニシリン、100U/mlのストレプトマイシンを含む)で培養した。30分間後、フローサイトメトリー(CytoFLEX、Beckman Coulter、USA)で平均蛍光強度(MFI)を測定し、両方の細胞の表面でのFL-HAの結合力の積分(リガンド/抗体に対するプラーク外のマクロファージの表面のCD44の結合力は1とする)を算出した。結果を図13に示す。
【0204】
図13に示すように、動脈不安定プラーク内のマクロファージの表面のCD44-HAの結合力は、プラーク外のマクロファージの表面のCD44-HAの結合力の約40倍である。これは、動脈不安定プラーク内のマクロファージの表面のCD44も、内部環境における炎症因子などの因子の影響で活性化され、HAに対する親和性は著しく増加することを示す。
【0205】
CD44の他のリガンドは、HAと似ている。GAGに対する不安定プラークのマクロファージの表面のCD44の結合力の積分は、正常細胞の33倍であり;コラーゲンに対する不安定プラークのマクロファージのCD44の結合力の積分は、正常細胞の38倍であり;ラミニンに対する不安定プラークのマクロファージのCD44の結合力の積分は、正常細胞の37倍であり;フィブロネクチンに対する不安定プラークのマクロファージのCD44の結合力の積分は、正常細胞の35倍であり;セレクチンに対する不安定プラークのマクロファージのCD44の結合力の積分は、正常細胞の33倍であり;オステオポンチンに対する不安定プラークのマクロファージのCD44の結合力の積分は、正常細胞の33倍である。
【0206】
CD44のモノクローナル抗体についても同様の結果が観察された。HI44aに対する不安定プラークのマクロファージの表面のCD44の結合力の積分は、正常細胞の17倍であり;HI313に対する不安定プラークのマクロファージのCD44の結合力の積分は、正常細胞の20倍であり;A3D8に対する不安定プラークのマクロファージのCD44の結合力の積分は、正常細胞の16倍であり;H90に対する不安定プラークのマクロファージのCD44の結合力の積分は、正常細胞の9倍であり;IM7に対する不安定プラークのマクロファージのCD44の結合力の積分は、正常細胞の10倍である。
【0207】
上記実験の結果に基づいて、以下の結論が得られる。正常細胞(例えば、正常な動脈血管壁の内皮細胞、プラーク外のマクロファージなど)と比較して、不安定プラーク内の細胞(内皮細胞、マクロファージなどを含み、動脈不安定プラークの発達に重要な影響を与える)の表面のCD44の密度が明らかに増加し、リガンドに対する親和性が顕著に強化されるため、リガンドに対する動脈不安定プラーク内のCD44の特異的親和性は、正常細胞よりはるかに高く、本発明の不安定プラークを標的とするセラソーム送達システムの優れた標的として非常に有利である。
【0208】
実施例6:動脈不安定プラークに対する本発明のセラソーム送達システムの影響に関する生体内での実験
本実施例の目的は、動脈不安定プラークに対する本発明の治療薬を担持したセラソーム送達システムの生体内での治療効果を検証することである。
【0209】
実験方法:
(1)遊離ロスバスタチンの生理食塩水溶液を調製した。治療薬を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R、治療薬と低分子ヒアルロン酸を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R+LMHA、治療薬とCD44活性化剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@R+S、治療薬を担持したリポソーム送達システムHA-PL@Rおよびヒアルロン酸ナノミセルシステムPDLLA/Chol-HA@R(比較例として)は、上記実施例2に記載の方法により調製された。
【0210】
ヒアルロン酸ナノミセルシステム(PDLLA/Chol-HA@R)の調製:1gのコレステロールを30mLのアセトンに溶解し、1gの無水コハク酸を加えた。反応溶液を70℃で3時間撹拌した。溶媒を減圧蒸留により除去し、粗生成物を溶解し、水/無水エタノール(1:10)から再結晶して、コハク酸コレステリルを得た。500mgのコハク酸コレステリルを秤量し、20mLの無水クロロホルムに溶解し、1mLの塩化チオニルを含むクロロホルム6mLを滴下した。滴下完了後、系の温度を60℃に昇温し、反応を5時間続けた。未反応の塩化チオニルおよびトリクロロメタンを減圧蒸留により除去して、淡緑色の油を得た。500mgのヒアルロン酸(10kD)を60mLのジメチルスルホキシドに溶解し、1mLのトリエチルアミンを添加し、コレステロールコハク酸アシル塩化物のジメチルスルホキシド溶液5mLを秤量し、窒素保護下でコレステロールコハク酸アシル塩化物をゆっくり添加し、系を80℃の恒温で7時間反応させた。反応が完了した後、加熱を停止した。反応生成物を水に対して72時間透析した後、凍結乾燥してコレステロール変性ヒアルロン酸(Chol-HA)を得た。
【0211】
50mgのChol-HAおよび50mgのポリ乳酸(PDLLA)を秤量し、10mLのDMFに一緒に溶解し、マグネティックスターラーで完全に混合されるまで24時間攪拌した。得られたポリマー溶液をカットオフ分子量3000の透析バッグに注ぎ、500mLの脱イオン水に対して4時間透析した後、水相を2wt%のロスバスタチン溶液に置き換え、さらに透析を48時間続けた。次に、透析バッグをすぐに20mLのロスバスタチン溶液(1mg・mL-1)に入れて24時間インキュベートした後、1Lの脱イオン水に対して4時間透析した。その間に脱イオン水を1時間に1回交換して未封入の薬物を除去した。得られたナノベシクル(nanovesicle)溶液を透析バッグから取り出し、凍結乾燥して、ロスバスタチンを担持したナノキャリアPDLLA/Chol-HA@Rを得た。
【0212】
(2)動脈不安定プラークのApoE-/-マウスモデルの確立
ApoE-/-SPFマウス(30匹、5~6週齢、体重20±1g)を実験動物とした。マウスに適応型の高脂肪食(脂肪10%(w/w)、コレステロール2%(w/w)、コール酸ナトリウム0.5%(w/w)、残りはマウスの通常飼料)を供した4週間後、40mg/kgの用量で1%のペントバルビタールナトリウム(1mgのペントバルビタールナトリウムを100mlの生理食塩水に加えて調製)の腹腔内注射により麻酔した。次に、マウスを仰臥位で手術プレートに固定し、75%(v/v)のアルコールで首を中心として消毒し、首の皮膚を縦に切断し、前頸部を鈍く分離し、鼓動した左総頸動脈が気管の左側に観察された。総頸動脈を慎重に分岐部まで分離し、長さ2.5mm、内径0.3mmのシリコンカニューレを左総頸動脈の外周に配置し、カニューレの近位および遠位部分をフィラメントで狭めて固定した。局所的な締め付けは、近位端の急速な血流を引き起こし、せん断力が増加し、血管の内膜を損傷した。頸動脈を復位させ、首の皮膚を断続的に縫合した。すべての操作は、10倍の実体顕微鏡で行われた。手術から目覚めた後、マウスをケージに戻し、周囲温度を20~25℃に維持し、12時間明-12時間暗でサイクルした。手術後4週目に、リポ多糖(LPS)(0.2mlのリン酸緩衝生理食塩水、1mg/kg、Sigma社、米国)を10週間にわたって週2回腹腔内注射して、慢性炎症を誘発した。手術後8週目に、マウスを50mlのシリンジ(十分な通気孔を確保)に入れて、1日6時間、週5日、合計6週間で、拘束性精神的ストレスを引き起こした。マウスにおけるアテローム性動脈硬化不安定プラークのモデルは、手術後14週目に完成した。
【0213】
(3)実験動物の群分けおよび治療:
実験動物をランダムに以下の群に分け、群当たり6匹である。
不安定プラークモデルの対照群:この群の動物は治療的処置を受けない。
ロスバスタチンを胃内投与した群:体重1kg当たりロスバスタチン5mgの用量で胃内投与を行った。
ロスバスタチンを静脈内投与した群:体重1kg当たりロスバスタチン5mgの用量で静脈内投与を行った。
HA-PL@R群:体重1kgあたりロスバスタチン5mgの用量で静脈内投与を行った。
PDLLA/Chol-HA@R群:体重1kgあたりロスバスタチン5mgの用量で静脈内投与を行った。
HA-CL1@R群:体重1kg当たりロスバスタチン5mgの用量で静脈内投与を行った。
HA-CL1R+LMHA群:体重1kg当たりロスバスタチン5mgおよび分子量3411Daの低分子ヒアルロン酸1.25mgの用量で静脈内投与を行った。
HA-CL1@R+S群:体重1kg当たりロスバスタチン5mgおよびCD44抗体mAb 1.75mgの用量で静脈内投与を行った。
不安定プラークモデルの対照群の他、治療群の治療は、1日おきに1回、合計5回行われた。各群の動物について、治療の前後に頸動脈MRIスキャンを実施してプラークおよび管腔面積を検出し、プラーク進行の割合を算出した。
プラーク進行の割合=(治療後のプラーク面積-治療前のプラーク面積)/管腔面積。
【0214】
実験の結果:
図14は、動脈不安定プラークに対する本発明の治療薬を担持したセラソーム送達システムの体内での治療効果を示す。図に示すように、マウスの動脈不安定プラークについては、胃内投与でも静脈内投与でも、遊離ロスバスタチンは一定の治療効果を示しますが、不安定プラークの継続的な成長を止めることができなかった。遊離ロスバスタチンと比較して、リポソーム送達システムまたはヒアルロン酸ナノミセル送達システムでロスプラスタチンを投与した場合、不安定プラークに対するロスプラスタチンの治療効果はある程度改善されたが、不安定プラークの継続的な成長を止めることはできなかった。一方、本発明のセラソーム送達システムでロスプラスタチンを投与した場合、不安定プラークに対するロスバスタチンの治療効果は著しく改善され、プラーク成長を逆転(即ち、プラークを減少させる)させる治療効果が示された。特に、本発明者らは、ロスバスタチンが低分子ヒアルロン酸またはCD44活性化剤-CD44抗体mAbと組み合わせてセラソーム送達システムで併用して投与された場合、ロスバスタチンが、マウスの体内の動脈不安定プラークに対して非常に顕著な治療効果があることを意外に発見した。つまり、本発明のセラソーム送達システムを使用した治療剤の投与は、遊離薬物の投与およびリポソーム送達システムを使用した場合と比較して、動脈不安定プラークの成長を著しく逆転させ、より良い治療効果をもたらす。
【0215】
さらに、同様の研究により、動脈不安定プラークに対する本発明のセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rの治療効果が類似していることがわかった。本発明の3つのセラソーム送達システムHA-CL1@R、HA-CL2@RおよびHA-CL3@Rが類似の薬物放出メカニズムおよび特性を有することを示した。
【0216】
実施例7:動脈不安定プラークに対する本発明のセラソーム送達システムの生体内での追跡実験
本実施例の目的は、動脈不安定プラークに対する本発明のトレーサーを担持したセラソーム送達システムの生体内での追跡効果を検証することである。
【0217】
実験方法:
(1)市販の金ナノ粒子溶液を用い、上記実施例2に記載の方法により、CT用トレーサー金ナノ粒子を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@AuNPs、トレーサーおよびCD44活性化剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@AuNPs+S、およびトレーサーを担持した非標的指向性セラソーム送達システムCL1@AuNPs(比較例として)を調製した。
【0218】
(2)上記実施例4に記載の方法に従って、アテローム硬化性プラークのマウスモデルが構築された。
【0219】
(3)モデルマウスに高脂肪食(実施例4と同じ)を16週間与えた。24匹のモデルマウスを、遊離ナノ金粒子群(6匹、市販のナノ金粒子溶液を与え、ナノ金粒子の投与量は0.1mg/kg体重)、CL1@AuNP群(6匹、CL1@AuNPを与え、ナノ金粒子の投与量は0.1mg/kg体重)、HA-CL1@AuNPs群(6匹、HA-CL1@AuNPsを与え、ナノ金粒子の投与量は0.1mg/kg体重)、およびHA-CL1@AuNPs+S群(6匹、HA-CL1@AuNPs+Sを与え、ナノ金粒子の投与量は0.1mg/kg体重であり、CD44活性化剤-CD44抗体mAbの投与量は約0.07mg/kg体重)にランダムに分けた。各実験群の動物に、対応するトレーサーを尾静脈から注射し、投与前および投与4時間後にCTイメージングを行い、各群のアテローム硬化性プラークの識別を観察した。
【0220】
実験の結果:
図15は、動脈不安定プラークに対する本発明のトレーサーを担持したセラソーム送達システムの生体内での追跡効果を示す。
【0221】
図に示すように、遊離ナノ金粒子は、マウスの動脈不安定プラークに対して一定の追跡効果を示す。ナノ金粒子を非標的指向性セラソーム送達システムに担持した場合、遊離の金ナノ粒子と比較して、不安定プラークに対する金ナノ粒子の追跡効果はある程度改善された。金ナノ粒子を、本発明に係る表面がターゲティングリガンドであるヒアルロン酸で修飾されたセラソーム送達システムに担持した場合、不安定プラークに対する金ナノ粒子の追跡効果が著しく改善された。特に、本発明者らは、金ナノ粒子がCD44活性化剤-CD44抗体mAbと組み合わせてセラソーム送達システムで併用して投与された場合、金ナノ粒子が、マウスの体内の動脈不安定プラークに対して非常に顕著な追跡効果があることを意外に発見した。つまり、本発明の表面がターゲティングリガンドであるヒアルロン酸で修飾されたセラソーム送達システムを使用して投与することは、金ナノ粒子の投与および非標的指向性セラソームを使用した場合と比較して、不安定プラークに対する金ナノ粒子の認識効果を著しく改善し、より良い追跡効果をもたらす。
【0222】
さらに、同様の研究により、動脈不安定プラークに対する本発明のトレーサーを担持したセラソーム送達システムHA-CL1@AuNPs、HA-CL2@AuNPsおよびHA-CL3@AuNPsの追跡効果が類似していることがわかった。本発明の3つのセラソーム送達システムHA-CL1@AuNPs、HA-CL2@AuNPsおよびHA-CL3@AuNPsが類似の薬物放出メカニズムおよび特性を有することを示した。
【0223】
実施例8:動脈不安定プラークに対する本発明のセラソーム-HA-イオジキサノール送達システムの生体内での追跡(CT追跡)実験
本実施例の目的は、動脈不安定プラークに対する本発明のCT用トレーサーを担持したセラソーム送達システムの生体内での追跡効果を検証することである。
【0224】
実験方法:
(1)市販のイオジキサノール原薬を使用し、上記実施例に記載の方法により、CT用トレーサーを担持したセラソーム送達システムHA-CL1@I、トレーサーおよびCD44活性化剤を担持したセラソーム送達システムHA-CL1@I+S、およびトレーサーを担持した非標的指向性セラソーム送達システムCL1@I(比較例として)を調製した。
【0225】
(2)上記実施例6に記載の方法に従って、アテローム硬化性不安定プラークのマウスモデルが構築された。
【0226】
(3)モデルマウスに高脂肪食(実施例6と同じ)を16週間与えた。30匹のモデルマウスを、ブランク群(6匹)、イオジキサノール群(6匹、市販のイオジキサノール原薬を投与し、イオジキサノールの投与量は0.66mg/kg体重)、CL1@I群(6匹、CL1@Iを与え、イオジキサノールの投与量は0.66mg/kg体重)、HA-CL1@I群(6匹、HA-CL1@Iを与え、イオジキサノールの投与量は0.66mg/kg体重)、およびHA-CL1@I+S群(6匹、HA-CL1@I+Sを与え、イオジキサノールの投与量は0.66mg/kg体重であり、CD44活性化剤-LPSの投与量は約0.023mg/kg体重)にランダムに分けた。各実験群の動物に、対応するトレーサーを尾静脈から注射し、投与前および投与72時間後にCTイメージングを行い、各群の動物のアテローム硬化性不安定プラークの識別を観察した。
【0227】
実験の結果:
図16は、動脈不安定プラークに対する本発明のトレーサーを担持したセラソーム送達システムの生体内での追跡効果を示す。図に示すように、イオジキサノールの静脈内投与では、マウスの体内の動脈不安定プラークに対する追跡効果は示されなかった。イオジキサノールの静脈内投与と比較して、非標的指向性セラソーム送達システムに担持する場合、不安定プラークに対するイオジキサノールの追跡効果がある程度改善された。イオジキサノールを、本発明の表面がターゲティングリガンドであるヒアルロン酸で修飾されたセラソーム送達システムに担持した場合、不安定プラークに対するイオジキサノールの追跡効果が著しく改善された。特に、本発明者らは、イオジキサノールがCD44活性化剤-LPSと組み合わせてセラソーム送達システムで併用して投与された場合、マウスの体内の動脈不安定プラークに対して非常に顕著な追跡効果があることを意外に発見した。つまり、本発明の表面がターゲティングリガンドであるヒアルロン酸で修飾されたセラソーム送達システムを使用して投与する場合は、イオジキサノールの投与および非標的指向性セラソームを使用した場合と比較して、動脈不安定プラークに対するイオジキサノールの認識効果を著しく改善し、より良い追跡効果をもたらす。
【0228】
実施例9:動脈不安定プラークに対する本発明のセラソーム-HA-ガドテル酸メグルミン送達システムの生体内での追跡(MRI追跡)実験
本実施例の目的は、動脈不安定プラークに対する本発明のMRI用トレーサーを担持したセラソーム送達システムの生体内での追跡効果を検証することである。
【0229】
実験方法:
(1)市販のガドテル酸メグルミン原薬を使用し、上記実施例に記載の方法により、MRI用トレーサーを担持したセラソーム送達システムおよびブランクセラソーム送達システム(比較例として)を調製した。
【0230】
(2)上記実施例6に記載の方法に従って、アテローム硬化性不安定プラークのマウスモデルが構築された。
【0231】
(3)モデルマウスに高脂肪食(実施例6と同じ)を16週間与えた。18匹のモデルマウスを、ブランクセラソーム群(6匹)、低濃度ガドテル酸メグルミンセラソーム群(6匹、市販のガドテル酸メグルミン原薬を投与し、ガドテル酸メグルミンの投与濃度は0.5mg/ml、投与量は10ml/kg体重)、高濃度ガドテル酸メグルミンセラソーム群(6匹、市販のガドテル酸メグルミン原薬を投与し、ガドテル酸メグルミンの投与濃度は0.5mg/ml、投与量は10ml/kg体重)にランダムに分けた。各実験群の動物に、対応するトレーサーを尾静脈から注射し、投与前および投与後の複数の時点にMRIを実施し、各群の動物のアテローム硬化性不安定プラークの識別を観察した。
【0232】
実験の結果:
図17は、動脈不安定プラークに対する本発明のトレーサーを担持したセラソーム送達システムの生体内での追跡効果を示す。図に示すように、ブランクセラソームは、マウスの動脈不安定プラークに対する追跡効果を示さなかった。ブランクセラソーム群と比較して、ガドテル酸メグルミンを標的指向性セラソーム送達システムに担持する場合、不安定プラークに対する追跡効果が著しく改善され、且つ用量に依存して向上した。つまり、本発明のセラソーム-HA-ガドテル酸メグルミン送達システムを使用して投与する場合は、ブランクセラソーム送達システムを使用した場合と比較して、動脈不安定プラークに対する認識効果を表し、より良いMRI追跡効果をもたらす。
【0233】
実施例10:動脈不安定プラークに対する本発明の多種CD44モノクローナル抗体-セラソーム-ガドテル酸メグルミン送達システムの生体内での追跡(MRI追跡)実験
本実施例の目的は、動脈不安定プラークに対する本発明のMRI用トレーサーを担持したセラソームの表面に多種のCD44モノクローナル抗体が組み込まれたナノ送達システムの生体内での追跡効果を検証することである。
【0234】
実験方法:
(1)市販のガドテル酸メグルミン原薬を使用し、上記実施例に記載の方法により、異なるCD44モノクローナル抗体を標的プローブとするMRI用トレーサーを担持したセラソームナノ送達システムを調製した。
【0235】
(2)上記実施例6に記載の方法に従って、アテローム硬化性不安定プラークのマウスモデルが構築された。
【0236】
(3)モデルマウスに高脂肪食(実施例と同じ)を16週間与えた。24匹のモデルマウスを、ブランクセラソーム群(6匹)、ガドテル酸メグルミン-セラソーム-H144a群(6匹、市販のガドテル酸メグルミン原薬を投与し、ガドテル酸メグルミンの投与濃度は0.5mg/ml、投与量は10ml/kg体重)、ガドテル酸メグルミン-セラソーム-A3D8群(6匹、市販のガドテル酸メグルミン原薬を投与し、ガドテル酸メグルミンの投与濃度は0.5mg/ml、投与量は10ml/kg体重)、ガドテル酸メグルミン-セラソーム-H90群(6匹、市販のガドテル酸メグルミン原薬を投与し、ガドテル酸メグルミンの投与濃度は0.5mg/ml、投与量は10ml/kg体重)にランダムに分けた。各実験群の動物に、対応するトレーサーを尾静脈から注射し、投与前および投与後の複数の時点にMRIを実施し、各群の動物のアテローム硬化性不安定プラークの識別を観察した。
【0237】
実験の結果:
図18は、動脈不安定プラークに対する本発明の多種CD44モノクローナル抗体をプローブとするナノ送達システムの生体内での追跡効果を示す。図に示すように、ブランクセラソーム群と比較して、本発明の多種CD44モノクローナル抗体を標的プローブとするセラソームナノシステム(ガドテル酸メグルミン-セラソーム-HI44aナノシステム、ガドテル酸メグルミン-セラソーム-A3D8ナノシステム、ガドテル酸メグルミン-セラソーム-H90ナノシステムを含む)は、いずれも動脈不安定プラークに対する認識効果を示し、より良いMRI追跡効果をもたらす。
【0238】
実施例11:動脈不安定プラークに対する本発明の多種CD44リガンド-セラソーム-ガドジアミド送達システムの生体内での追跡(MRI追跡)実験
本実施例の目的は、動脈不安定プラークに対する本発明のMRI用トレーサーを担持したセラソームの表面に多種のCD44リガンドが組み込まれたナノ送達システムの生体内での追跡効果を検証することである。
【0239】
実験方法:
(1)市販のガドジアミド原薬を使用し、上記実施例に記載の方法により、異なるCD44リガンドを標的プローブとするMRI用トレーサーを担持したセラソームナノ送達システムを調製した。
【0240】
(2)上記実施例6に記載の方法に従って、アテローム硬化性不安定プラークのマウスモデルが構築された。
【0241】
(3)モデルマウスに高脂肪食(実施例と同じ)を16週間与えた。42匹のモデルマウスを、ブランクセラソーム群(6匹)、HA-セラソーム群(6匹)、コラーゲン-ガドジアミド-セラソーム群(6匹、市販のガドジアミド原薬を投与し、ガドジアミドの投与濃度は0.5mg/ml、投与量は10ml/kg体重)、ラミニン-ガドジアミド-セラソーム群(6匹、市販のガドジアミド原薬を投与し、ガドジアミドの投与濃度は0.5mg/ml、投与量は10ml/kg体重)、フィブロネクチン-ガドジアミド-セラソーム群(6匹、市販のガドジアミド原薬を投与し、ガドジアミドの投与濃度は0.5mg/ml、投与量は10ml/kg体重)、セレクチン-ガドジアミド-セラソーム群(6匹、市販のガドジアミド原薬を投与し、ガドジアミドの投与濃度は0.5mg/ml、投与量は10ml/kg体重)、オステオポンチン-ガドジアミド-セラソーム群(6匹、市販のガドジアミド原薬を投与し、ガドジアミドの投与濃度は0.5mg/ml、投与量は10ml/kg体重)にランダムに分けた。各実験群の動物に、対応するトレーサーを尾静脈から注射し、投与前および投与後の複数の時点にMRIを実施し、各群の動物のアテローム硬化性不安定プラークの識別を観察した。
【0242】
実験の結果:
図19は、動脈不安定プラークに対する本発明の多種CD44リガンドをプローブとするナノ送達システムの生体内での追跡効果を示す。図に示すように、ブランクセラソーム群と比較して、本発明の多種CD44リガンド(HA、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、セレクチン、オステオポンチンを含む)を標的プローブとするセラソームナノシステムは、いずれも動脈不安定プラークに対する認識効果を示し、より良いMRI追跡効果をもたらす。
【0243】
実施例12:本発明のHA-多種の粒子径のセラソーム-イオジキサノール送達システムの組織分布
本実施例の目的は、本発明のCT用トレーサーを担持した(異なる粒子径の)セラソームナノ送達システムの組織分布を検証することである。
【0244】
実験方法:
(1)市販のイオジキサノール原薬を使用し、以下の方法により、異なる粒子径のセラソームナノ送達システムを調製(HAの分子量は10万Da)した。
【0245】
(2)上記実施例6に記載の方法に従って、アテローム硬化性不安定プラークのマウスモデルが構築された。
【0246】
(3)モデルマウスに高脂肪食(実施例と同じ)を16週間与えた。36匹のモデルマウスを、粒子径280nmのセラソーム群(12匹)、粒子径200nmのセラソーム群(12匹)、粒子径160nmのセラソーム群(12匹)にランダムに分けた。担体に市販のイオジキサノール原薬を担持し、イオジキサノールの投与濃度は0.5mg/mlで、投与量は10ml/kgであった。各実験群の動物に、対応するトレーサーを尾静脈から注射し、投与前および投与後の4つの時点に組織を採取(各時点で3匹)し、各群の動物のイオジキサノールの組織分布を観察した。
【0247】
実験の結果:
表3は、本発明のCT用トレーサーを担持した異なる粒子径のセラソームナノ送達システムの組織分布を示す。表に示すように、本発明の上記200nmのセラソームは、他の粒子径のセラソーム群と比較して、動脈不安定プラークでより濃縮される。
【0248】
【表3】
【0249】
実施例13:本発明の多種の分子量のHA-セラソーム-イオジキサノール送達システムの組織分布
本実施例の目的は、本発明のCT用トレーサーを担持した、異なる分子量のHAを認識リガンドとするセラソームナノ送達システムの組織分布を検証することである。
【0250】
実験方法:
(1)市販の原料イオジキサノールを使用し、以下の方法によりセラソームナノ送達システム(セラソーム粒子径200nm)を調製した。1gのヒアルロン酸ナトリウムHA1、HA2、HA3(それぞれの分子量は、20万Da、10万Da、3万Da)をそれぞれ超純水に完全に溶解し、0.1gの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)および0.12gのN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(sulfo-NHS)をカップリング剤として添加し、カルボキシル基を活性化した。溶液を室温で1時間撹拌した後、アセトンを加えて活性化HAを沈殿させた。沈殿物を濾過し、エタノールで洗浄し、真空で乾燥させて、活性化HAを得た。この活性化HAを0.1mg・mL-1の水溶液に調製し、0.2mLの溶液を上記工程で得られたリポソーム小胞懸濁液に移して溶解させ、活性化HAにおける活性化カルボキシル基と、リポソーム小胞の脂質二重層に組み込まれたDSPE分子のアミノ基とを、アミド結合を介してカップリングした。治療剤を担持したリポソーム送達システムHA1-CL1@R、HA2-CL1@RおよびHA3-CL1@Rを得た。
【0251】
(2)上記実施例6に記載の方法に従って、アテローム硬化性不安定プラークのマウスモデルが構築された。
【0252】
(3)モデルマウスに高脂肪食(実施例と同じ)を16週間与えた。36匹のモデルマウスを、HA1-CL1@R群(12匹)、HA2-CL1@R群(12匹)、HA3-CL1@R群(12匹)にランダムに分けた。担体に市販のイオジキサノール原薬を担持し、イオジキサノールの投与濃度は0.5mg/mlで、投与量は10ml/kgであった。各実験群の動物に、対応するトレーサーを尾静脈から注射し、投与前および投与後の4つの時点に組織を採取(各時点で3匹)し、各群の動物のイオジキサノールの組織分布を観察した。
【0253】
実験の結果:
表4は、本発明のCT用トレーサーを担持した異なる分子量のHA-セラソームナノ送達システムの組織分布を示す。表に示すように、本発明の上記10万DaのHAは、他の分子量のHAと比較して、動脈不安定プラークでより濃縮される。
【0254】
【表4】
【0255】
本発明の様々な態様は、上述の実施例によって例示された。上記実施例は、単に説明を明確にするための例示であり、実施形態を限定するものではない。当業者にとっては、上記説明に基づいて、他の形態の変更または変形を行うこともできる。ここですべての実施形態を例示する必要も方法もない。それから生じる明らかな変更または変形は、依然として本発明の範囲内である。
[請求項1]
セラソームの表面は、ターゲティングリガンドによって部分的に修飾され、前記ターゲティングリガンドは、活性化CD44分子に特異的に結合できるリガンドである、ことを特徴とする、活性化CD44分子を標的とするセラソーム送達システム。
[請求項2]
前記セラソームの表面は、ターゲティングリガンドによって部分的に修飾され、前記ターゲティングリガンドは、不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるリガンドであることを特徴とする、不安定プラークを標的とするセラソーム送達システム。
[請求項3]
表面がターゲティングリガンドによって部分的に修飾されるセラソーム小胞を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のセラソーム送達システム。
[請求項4]
前記セラソーム小胞は、内部に親水性空洞を有する脂質二重層からなる閉鎖小胞であり、この小胞の表面は、無機ポリシロキサン網状構造およびカップリングされたターゲティングリガンドを有することを特徴とする、請求項3に記載のセラソーム送達システム。
[請求項5]
前記脂質二重層は、セラソーム単量体分子と、共有結合でターゲティングリガンドにカップリングしたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)分子と、必要に応じて他の脂質分子とを含む成分により形成されることを特徴とする、請求項4に記載のセラソーム送達システム。
[請求項6]
前記セラソーム単量体分子と、共有結合でターゲティングリガンドにカップリングしたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)分子と、必要に応じて他の脂質分子との重量比は、1~10:0.2~1:1~9、または3~7:0.5~1:1.5-2.5、または4~6:0.5:2であることを特徴とする、請求項5に記載のセラソーム送達システム。
[請求項7]
前記セラソーム単量体分子は、セラソームを形成できる無機-有機複合脂質分子であり、前記無機-有機複合脂質分子は、シロキサン構造を有する頭部と疎水性尾部で構成され、この疎水性尾部は疎水性有機二分子鎖であることを特徴とする、請求項5または6に記載のセラソーム送達システム。
[請求項8]
前記セラソーム単量体分子は、以下の一般式を有する単量体分子であり、
(R O) Si-L-C(O)-N(R )(R
ただし、
はC 1-6 アルキルを表し、
Lは、4~12個の炭素原子(好ましくは4~10個の炭素原子)および1~2個の窒素原子からなるリンカーであり、ここで、以下の条件下で、前記リンカーにける0~1個の炭素原子はオキソ基で置換され、つまりカルボニル基が形成され、条件(1):前記リンカーにカルボニル基が存在する場合、このカルボニル基が窒素原子に隣接し;条件(2):前記リンカーにおける1個の窒素原子が四級化され、且つこの四級化された窒素原子が適合な対イオンと塩を形成し、
およびR は、それぞれ独立してC 10-24 アルキル又はC 10-24 アルケニルを表す、
ことを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
[請求項9]
前記セラソーム単量体分子は、
[化1]

[化2]
、および
[化3]
から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項5~8のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
[請求項10]
前記脂質二重層の成分は他の脂質分子を含むことを特徴とする、請求項5~9のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
[請求項11]
前記他の脂質分子は、中性リン脂質、負に帯電したリン脂質、および正に帯電した脂質から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項10に記載のセラソーム送達システム。
[請求項12]
前記他の脂質分子は正に帯電した脂質であることを特徴とする、請求項10に記載のセラソーム送達システム。
[請求項13]
前記正に帯電した脂質は、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-chol)、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリエチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)および1,2-ジオレオイルオキシプロピル-N、N、N-トリメチルアンモニウムブロミド(DOTAP)から選択される1つ以上であり、好ましくは1,2-ジオレオイルオキシプロピル-N、N、N-トリメチルアンモニウムブロミド(DOTAP)であることを特徴とする、請求項12に記載のセラソーム送達システム。
[請求項14]
前記脂質は、ホスファチジルコリン、グリセロリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン、セリンホスファチド、およびホスファチジン酸から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項10に記載のセラソーム送達システム。
[請求項15]
前記他の脂質分子はホスファチジルコリンであることを特徴とする、請求項10に記載のセラソーム送達システム。
[請求項16]
前記セラソーム小胞の粒子径の範囲は、50nm~400nmであり、好ましくは50nm~300nmであり、好ましくは150nm~250nmであり、180nm~220nmであることを特徴とする、請求項3~15のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
[請求項17]
前記ターゲティングリガンドは、GAG、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、セレクチン、オステオポンチン(OPN)、およびモノクローナル抗体HI44a、HI313、A3D8、H90、IM7、或いは、ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体から選択されることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
[請求項18]
前記ターゲティングリガンドは、分子量が5万~40万Daであり、好ましくは8万~15万Daであり、好ましくは約10万Daであることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
[請求項19]
前記セラソームは、CD44分子の活性化に関連する疾患の診断、予防および/または治療のための物質を担持することを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
[請求項20]
前記セラソームは、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断、予防および/または治療のための物質を担持することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
[請求項21]
前記物質は、不安定プラークまたは不安定プラークに関連する疾患の診断、予防および/または治療のための薬物、ペプチド、核酸、およびサイトカインから選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項20に記載のセラソーム送達システム。
[請求項22]
前記物質は、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患を診断するための物質であることを特徴とする、請求項20に記載のセラソーム送達システム。
[請求項23]
前記不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患を診断するための物質はトレーサーであることを特徴とする、請求項22に記載のセラソーム送達システム。
[請求項24]
前記トレーサーは、CT用トレーサーおよびMRI用トレーサーから選択されることを特徴とする、請求項23に記載のセラソーム送達システム。
[請求項25]
前記CT用トレーサーは、ヨード系ナノスケール造影剤、金系ナノスケール造影剤、酸化タンタル系ナノスケール造影剤、ビスマス系ナノスケール造影剤、ランタニド系ナノスケール造影剤、または類似の構造を有する他のトレーサーから選択され、
好ましくは、ヨード系ナノスケール造影剤、または金系ナノスケール造影剤、または類似の構造を有する他のトレーサーから選択され、
好ましくは、イオヘキソール、イオカルミン酸、イオベルソール、イオジキサノール、イオプロミド、イオビトリドール、イオメプロル、イオパミドール、イオキシラン、アセトリゾ酸、イオジパミド、イオベンザミン酸、イオグリカミン酸、ジアトリゾ酸、イオタラム酸ナトリウム、パントパック、イオパン酸、ヨードアルフィオン酸、アセトリゾ酸ナトリウム、ナトリウムヨードメサメート(sodium iodomethamate)、プロピリオドン、ジオドン、イオトロラン、イオピドール、エンドグラフィン(endografin)、イオタラム酸、メグルミンジアトリゾエート、メトリゾ酸、メトリザミド、ヨウ素化油またはエチヨード化油、或いは類似の構造を有する他のトレーサーから選択される、ことを特徴とする、請求項24に記載のセラソーム送達システム。
[請求項26]
前記MRI用トレーサーは、縦緩和造影剤および横緩和造影剤から選択されることを特徴とする、請求項24に記載のセラソーム送達システム。
[請求項27]
前記MRI用トレーサーは、常磁性造影剤、強磁性造影剤および超常磁性造影剤から選択されることを特徴とする、請求項24に記載のセラソーム送達システム。
[請求項28]
前記MRI用トレーサーは、Gd-DTPAおよびその線状や環状のポリアミンポリカルボキシレートキレート、およびそのマンガンポルフィリンキレート、高分子ガドリニウムキレート、生体高分子修飾ガドリニウムキレート、葉酸修飾ガドリニウムキレート、デンドリマー造影剤、リポソーム修飾造影剤およびガドリニウム含有フラーレン、または類似の構造を有する他のトレーサーから選択され
好ましくは、ガドペンテト酸メグルミン、ガドテル酸メグルミン、ガドベン酸ジメグルミン、ガドジアミド、クエン酸鉄アンモニウム発泡顆粒、常磁性酸化鉄、または類似の構造を有する他のトレーサーから選択されることを特徴とする、請求項24に記載のセラソーム送達システム。
[請求項29]
前記物質は、CD44活性化剤であり、
好ましくは、CD44抗体mAb、またはIL5、IL12、IL18、TNF-α、LPSであることを特徴とする、請求項19~22のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
[請求項30]
前記物質は、分子量が2000~5000Daの範囲である、低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体であり、
好ましくは、前記低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体は、分子量が2500~4500Daの範囲であり、好ましくは3000~4000Daの範囲であり、好ましくは3411Daであることを特徴とする、請求項19~22のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
[請求項31]
前記セラソームは、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断、予防および/または治療のための物質、およびCD44活性化剤を同時に担持することを特徴とする、請求項19~22のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
[請求項32]
前記セラソームは、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質、および分子量が2000~5000Daの範囲である低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体を同時に担持することを特徴とする、請求項19~22のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
[請求項33]
前記セラソームは、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断のための物質、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質、必要に応じてCD44活性化剤、および必要に応じて分子量が2000~5000Daの範囲である低分子ヒアルロン酸または不安定プラークにおける細胞表面のCD44分子に特異的に結合できるヒアルロン酸誘導体を同時に担持することを特徴とする、請求項19~22のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
[請求項34]
前記物質は、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質であり、
好ましくは、前記不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質が、スタチン系薬物、フィブラート系薬物、抗血小板薬、PCSK9阻害剤、抗凝固薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)、カルシウムイオン拮抗薬、MMPs阻害剤、β受容体遮断薬、および上記薬物の活性構造フラグメントを含むそれらの薬学的に許容される塩から選択される1つ以上であり、
好ましくは、前記不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための物質が、ロバスタチン;アトルバスタチン;ロスバスタチン;シンバスタチン;フルバスタチン;ピタバスタチン;プラバスタチン;ベザフィブラート;シプロフィブラート;クロフィブラート;ゲムフィブロジル;フェノフィブラート;プロブコール;エボロクマブ、アリロクマブ、ボコシズマブ、RG7652、LY3015014およびLGT-209などの抗PCSK9抗体;ALN-PCSscなどのアンチセンスRNAiオリゴヌクレオチド;microRNA-33a、microRNA-27a/b、microRNA-106b、microRNA-302、microRNA-758、microRNA-10b、microRNA-19b、microRNA-26、microRNA-93、microRNA-128-2、microRNA-144、microRNA-145アンチセンス鎖およびロックド核酸のようなそれらの核酸類似体などの核酸;またはBMS-962476などのアドネクチン;アセメタシン;トロキセルチン;ジピリダモール;シロスタゾール;チクロピジン塩酸塩;オザグレルナトリウム;クロピドグレル;プラスグレル;シロスタゾール;チロフィバン;ベラプロストナトリウム;チカグレロル;カングレロル;チロフィバン;エプチフィバチド;アブシキシマブ;IIb/IIIa受容体拮抗薬;未分画ヘパリン;クレキサン;フラキシパリン;フォンダパリヌクスナトリウム;ワルファリン;ダビガトラン;リバロキサバン;アピキサバン;エドキサバン;ビバリルジン;エノキサパリン;テデルパリン;アルデパリン;ビスヒドロキシクマリン;硝酸クマリン;クエン酸ナトリウム;ヒルジン;アルガトロバン;ベナゼプリル;カプトプリル;エナラプリル;ペリンドプリル;フォシノプリル;リシノプリル;モエキシプリル;シラザプリル;ペリンドプリル;キナプリル;ラミプリル;トランドラプリル;カンデサルタン;エプロサルタン;イルベサルタン;ロサルタン;テルミサルタン;バルサルタン;オルメサルタンまたはタソサルタン;ニフェジピン;ニカルジピン;ニトレンジピン;アムロジピン;ニモジピン;ニソルジピン;ニルバジピン;イスラジピン;フェロジピン;ラシジピン;ジルチアゼム;ベラパミル;クロルヘキシジン;ミノサイクリン;MMI-166;メトプロロール;アテノロール;ビソプロロール;プロプラノロール;カルベジロール;バチマスタット;マリマスタット;プリノマスタット;BMS-279251;BAY 12-9566;TAA211;AAJ996A;ナセトラピブ;エバセトラピブ;トルセトラピブおよびダルセトラピブ;ならびに、それらの有効なフラグメントまたは薬学的に許容される塩、および上記薬物の活性構造フラグメントを含む薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項19~22または31~33のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム。
[請求項35]
請求項1~34のいずれか一項に記載のセラソーム送達システムおよび薬学的に許容される担体を含む薬物。
[請求項36]
請求項1~34のいずれか一項に記載のセラソーム送達システム含む診断用製剤。
[請求項37]
CD44分子の活性化に関連する疾患の予防および/または治療のための薬物の調製への、請求項1~34のいずれか一項に記載のセラソーム送達システムの使用。
[請求項38]
不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の予防および/または治療のための薬物の調製への、請求項1~34のいずれか一項に記載のセラソーム送達システムの使用
[請求項39]
不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患の診断のための診断用製剤の調製への、請求項1~34のいずれか一項に記載のセラソーム送達システムの使用
[請求項40]
前記不安定プラークは、破綻したプラーク、びらんを起こしたプラーク、および部分的に石灰化した結節性病変から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項38または39に記載の使用。
[請求項41]
前記不安定プラーク関連疾患は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈硬化性心疾患(急性冠症候群、無症候性心筋虚血-潜在性冠状動脈性心疾患、狭心症、心筋梗塞、虚血性心疾患、突然死、ステント内再狭窄を含む)、脳動脈硬化症(脳卒中を含む)、末梢血管アテローム性動脈硬化症(頸動脈アテローム性動脈硬化症、腎動脈アテローム性動脈硬化症、下肢アテローム性動脈硬化症、上肢アテローム性動脈硬化症を含む)、大動脈解離、血管腫、血栓塞栓症、心不全、心原性ショックから選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項38または39に記載の使用。
[請求項42]
請求項1~34のいずれか一項に記載のセラソーム送達システムを投与することを含む、CD44分子の活性化に関連する疾患を予防および/または治療する方法。
[請求項43]
請求項1~34のいずれか一項に記載のセラソーム送達システムを投与することを含む、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患を予防および/または治療する方法。
[請求項44]
請求項1~34のいずれか一項に記載のセラソーム送達システムを投与することを含む、CD44分子の活性化に関連する疾患を診断する方法。
[請求項45]
請求項1~34のいずれか一項に記載のセラソーム送達システムを投与することを含む、不安定プラークまたは不安定プラーク関連疾患を診断する方法。
[請求項46]
前記不安定プラークは、破綻したプラーク、びらんを起こしたプラーク、および部分的に石灰化した結節性病変から選択される1つ以上である、請求項43または45に記載の方法
[請求項47]
前記不安定プラーク関連疾患は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈硬化性心疾患(急性冠症候群、無症候性心筋虚血-潜在性冠状動脈性心疾患、狭心症、心筋梗塞、虚血性心疾患、突然死、ステント内再狭窄を含む)、脳動脈硬化症(脳卒中を含む)、末梢血管アテローム性動脈硬化症(頸動脈アテローム性動脈硬化症、腎動脈アテローム性動脈硬化症、下肢アテローム性動脈硬化症、上肢アテローム性動脈硬化症を含む)、大動脈解離、血管腫、血栓塞栓症、心不全、心原性ショックから選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項43または45に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19