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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】防護柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
E01F7/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021168276
(22)【出願日】2021-10-13
(62)【分割の表示】P 2020213072の分割
【原出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022100225
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-12-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507183310
【氏名又は名称】アビエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】土居 学
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特許第6755449(JP,B1)
【文献】実開平6-071508(JP,U)
【文献】特開2003-034912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜面に設置される柵本体と、
地中に埋設されたアンカーと、
前記柵本体及び前記アンカーを支持する複数のベース機構とを備えており、
前記複数のベース機構のそれぞれが前記柵本体及び前記アンカーを支持する第1ベース部材と、斜面と接触しつつ、前記第1ベース部材を斜面上で支持する第2ベース部材とを含んでおり、
前記第1ベース部材に貫通孔が形成されており、
斜面とは反対側へと延び、前記貫通孔を貫通した螺子軸が前記第2ベース部材に固定されており、
前記螺子軸とかみ合った雌螺子部が形成された少なくとも1つの緊締部材を含む一対の緊締部材が、互いの間に前記第1ベース部材を挟み込むように緊締されていることで、前記第1ベース部材と前記第2ベース部材が固定されており、
前記一対の緊締部材が前記第1ベース部材を挟み込む位置が前記螺子軸に沿って調整可能であり、
前記第1ベース部材及び前記第2ベース部材のそれぞれにおいて、斜面の傾斜に沿って上方側の縁が下方側の縁に向かって窪んだ凹部を形成しており、
前記第1ベース部材及び前記第2ベース部材における前記凹部の両方を前記アンカーが通っており、
前記第2ベース部材の前記凹部が、前記第1ベース部材の前記凹部よりも前記螺子軸に近接した位置まで窪んでいることを特徴とする防護柵。
【請求項2】
前記貫通孔が、前記第1ベース部材の厚み方向に対する前記螺子軸の角度が調整可能であるように、前記厚み方向と直交する少なくともいずれかの方向に関して前記螺子軸の径より大きく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防護柵。
【請求項3】
前記貫通孔が、前記厚み方向と直交する方向に関して長尺であることを特徴とする請求項2に記載の防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜面に設置される防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、降雪地における自然斜面及び法面に、雪崩が発生するのを予防する防護柵が設置されることがある。このような防護柵として、例えば特許文献1のような柵本体を斜面上で支持する複数のベース部材を設けたものがある。各ベース部材は、柵本体を支持する平板状の部材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6755449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、斜面に起伏がある場合、特許文献1の防護柵をそのまま斜面に設置すると、各ベース部材を安定して斜面上に設置しにくいことがある。例えば、斜面に凸部や凹部が存在すると、あるベース部材は凸部に位置し、別のベース部材は凹部に位置する場合、これらのベース部材の設置箇所同士に段差が生じることになる。このため、防護柵を斜面上に安定に設置できないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、斜面上に凹凸等の起伏があっても比較的安定して設置することができる防護柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の防護柵は、斜面に設置される柵本体と、前記柵本体を支持する複数のベース機構とを備えており、前記複数のベース機構のそれぞれが前記柵本体を支持する第1ベース部材と、斜面と接触しつつ、前記第1ベース部材を斜面上で支持する第2ベース部材とを含んでおり、前記第1ベース部材に貫通孔が形成されており、斜面とは反対側へと延び、前記貫通孔を貫通した螺子軸が前記第2ベース部材に固定されており、前記螺子軸とかみ合った雌螺子部が形成された少なくとも1つの緊締部材を含む一対の緊締部材が、互いの間に前記第1ベース部材を挟み込むように緊締されていることで、前記第1ベース部材と前記第2ベース部材が固定されており、前記一対の緊締部材が前記第1ベース部材を挟み込む位置が前記螺子軸に沿って調整可能である。
【0007】
本発明によれば、各ベース機構において、第1ベース部材に対する第2ベース部材の位置を螺子軸に沿って調整できる。例えば、凹部に位置するベース機構においては第1ベース部材に対して第2ベース部材を離隔させ、凸部に位置するベース機構においては第1ベース部材に対して第2ベース部材を近接させる。これによって、斜面に凹凸等の起伏がある場合でも各ベース機構を斜面上に安定して設置できる。
【0008】
本発明において、前記貫通孔が、前記第1ベース部材の厚み方向に対する前記螺子軸の角度が調整可能であるように、前記厚み方向と直交する少なくともいずれかの方向に関して前記螺子軸の径より大きく形成されていることが好ましい。これによると、各ベース機構において、第1ベース部材に対する第2ベース部材の傾斜角度を斜面の勾配に合わせて調整することができる。
【0009】
本発明において、前記貫通孔が、前記厚み方向と直交する方向に関して長尺であってもよい。これによると、貫通孔の長尺方向に沿って螺子軸を傾けることで第1ベース部材に対して第2ベース部材を傾斜させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る防護柵を斜面に設置した状態を示す斜視図である。
図2(a)】柵本体の側面図である。
図2(b)】図2(a)のB-B線断面図である。
図2(c)】図2(a)のC-C線断面図である。
図3(a)】第1ベース部材の平面図である。
図3(b)】ベース機構の側面図である。
図3(c)】ベース機構において、第2ベース部材が第1ベース部材に対して一端が近接して他端が隔離した状態を示す側面図である。
図3(d)】第2ベース部材の平面図である。
図4】(a)支持材の平面図である。(b)支持材の側面図である。
図5】アンカーの側面図である。
図6】柵本体と支持材との接続状態及び柵本体と第1支持脚との接続状態を示す側面図である。
図7】支持材と第2支持脚とアンカーとの接続状態を示す側面図である。
図8】支柱が鉛直方向に沿うように柵本体を斜面に設置した状態を示す側面図である。
図9】第1ベース部材に対して第2ベース部材を傾けつつ支柱が鉛直方向に沿うように柵本体を設置した状態を示す側面図である。
図10】凸部や凹部を有する斜面上に防護柵を設置した場合の、斜面下方から斜面上方に向かって防護柵を見た図である。
図11】(a)第1ベース部材の変形例を示す図である。(b)第1ベース部材の別の変形例を示す図である。
図12】ナットに代えてカラーを使用した場合の、第2ベース部材が第1ベース部材に対して一端が近接して他端が隔離した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の防護柵10は、法面及び自然斜面などの斜面1に設置される。斜面1は鉛直方向(図中、上下方向)に対し、傾斜して形成されている。防護柵10は、柵本体11と、複数のベース機構100とを備えている。
【0013】
柵本体11は、等間隔に並設された支柱12と、支柱12と直交するように架設された梁材17とを有する。梁材17は、長さ方向である水平方向に延びる円形断面の鋼材からなる。図2(a)及び(b)に示すように、支柱12はH型鋼からなり、一方の面部(図中、内側の面部)13にはU字型の金具16によって複数の梁材17が固定されている。以下、図中の内側とは、斜面1に鉛直に設置された柵本体11が、その下端部を中心に斜面1に近づくように傾斜する方向の水平方向成分である。図中の外側とは、斜面1に鉛直に設置された柵本体11が、その下端部を中心に斜面1から離れるように傾斜する方向の水平方向成分である。なお、図3及び図4における内側及び外側は、図6に示すように、後述する第1ベース部材130、第2ベース部材160、及び支持材40がそれぞれ支柱12に対して垂直な方向に沿った状態における方向を示すものとする。
【0014】
また、支柱12には、後述する支持材40に接続される支柱面側接続部21と、後述する第1支持脚131に接続される支柱端側接続部25とが形成されている。支柱面側接続部21は、隣り合う一対の梁材17の間に設けられた突出片である。支柱面側接続部21の断面を図2(b)に示す。一対の支柱面側接続部21は、支柱12の一方の面部13から、この面部13と垂直に突出する平板形状である。支柱面側接続部21には、その厚さ方向に貫通する支柱面側接続孔22が設けられている。
【0015】
図2(a)に戻ると、支柱端側接続部25は支柱12の端部(図中、下端部)に形成されている。この端部における支柱12の断面を図2(c)に示す。端部において支柱12の断面の外形は四角形状であり、一方の面部13と、一方の面部13と対向する他方の面部(図中、外側の面部)14と、両者の先端同士を繋ぐように一体成形された2つの側面部25とから構成されている。側面部25は、支柱12の下端部に形成されており、この側面部25が支柱端側接続部25を構成している。支柱端側接続部25の側面視中央付近には、支柱端側接続孔26が形成されている。
【0016】
ベース機構100は、図3及び図8に示すように、第1ベース部材130、第2ベース部材160、支持材40、及びアンカー50を有する。第1ベース部材130は柵本体11を支持する。図3(a)に示すように、第1ベース部材130は、一対の第1支持脚131、一対の第2支持脚133、支持プレート135を有している。以下、外内方向及び上下方向の両方向に直交する方向を左右方向とする。なお、図3(b)及び(c)において、上下方向は支持プレート135の厚み方向と平行である。矩形板状の支持プレート135に、一対の第1支持脚131及び一対の第2支持脚133が形成されている。支持プレート135の2つの第2支持脚133の間に形成された平面視で半円形状の縁が、一対の第2支持脚133の間における支持プレート135の縁136を構成している。支持プレート135における、左右方向に関して一対の第1支持脚131の間には、それぞれの第1支持脚の内側の端部付近から、外内方向に長尺な角丸長方形型の貫通孔141及び142が形成されている。支持プレート135における、左右方向に関して一対の第2支持脚133の間には、それぞれの第2支持脚の外側の端部付近に、外内方向に長尺な角丸長方形型の貫通孔143及び144が形成されている。
【0017】
図3(b)に示すように、第1支持脚131は、支持プレート135の一方の端部(図中、外側の端部)に形成されている。第1支持脚131は、支持プレート135の上面から上方に立ち上がる平板形状であり、その厚さ方向に貫通する第1支持孔132が設けられている。
【0018】
第2支持脚133は、支持プレート135の第1支持脚131と反対側の端部(図中、内側の端部)に形成されている。第2支持脚133は、支持プレート135の上面から上方に立ち上がる平板形状であり、その厚さ方向に貫通する第2支持孔134が設けられている。
【0019】
図6に示すように、ボルト61を介して第1支持脚131と支柱端側接続部25とが接続されている。これにより、第1ベース部材130は柵本体11を支持しつつ、第1ベース部材130と柵本体11とが互いに対して中心C1の周りに回転可能となっている。
【0020】
図3(b)に示すように、第2ベース部材160は第1ベース部材130の下方に位置している。図8に示すように、第2ベース部材160は、斜面1と接触しつつ、第1ベース部材130を斜面1上で支持している。第2ベース部材160は、第2支持プレート165上に螺子軸161及び162、並びに螺子軸163及び164が固定されている。第2支持プレート165は、矩形板状であり支持プレート135とほぼ同じ大きさである。螺子軸161及び162の径は、左右方向に関する貫通孔141及び142の幅とほほ同じ幅である。螺子軸161及び162は斜面とは反対側に延びており(図8参照)、それぞれ貫通孔141及び142を貫通するように位置している。螺子軸163及び164の径は、左右方向に関する貫通孔143及び144の幅とほほ同じ幅である。螺子軸163及び164は斜面とは反対側に延びており、それぞれ貫通孔143及び144を貫通するように位置している。図3(d)に示すように、支持プレート165において、螺子軸163及び164より内側に形成された平面視で半円形状の縁が、支持プレート165の縁167を構成している。縁167において、左右方向の幅は縁136とほぼ同じ幅であり、外内方向の幅は縁136より大きい。
【0021】
第1ベース部材130と第2ベース部材160との固定には、一対のナット(本発明でいう緊締部材)151及び152が用いられている。ナット151及び152の内側には、螺子軸161~164とかみ合った雌螺子部が形成されている。螺子軸161~164のそれぞれが、下方から順に、ナット151、支持プレート135、及びナット152を貫通し、且つ、ナット151及び152が互いの間に支持プレート135を挟み込んだ状態で緊締されていることで、第1ベース部材130と第2ベース部材160とが互いに離隔しつつ固定されている。ナット151及び152が第1ベース部材130を挟み込む位置は、螺子軸161~164に沿って調整可能である。これにより、螺子軸161~164に沿った方向に関して第1ベース部材130に対する第2ベース部材160の位置を調整できる。なお、ナット151及び152の代わりにその他の螺子螺合部材が用いられてもよい。また、ナット151及び152の少なくとも一方に、ナットを二重に用いるダブルナットが採用されてもよい。
【0022】
貫通孔141~144が、それぞれ螺子軸161~164の径より外内方向に関して大きく、且つ外内方向に関して長尺に形成されていることにより、貫通孔141~144の長尺方向に沿って螺子軸161~164を傾けて上下方向に対する螺子軸161~164の角度を調整しつつ、第1ベース部材130に対して第2ベース部材160を傾斜させることができる。例えば、図3(c)に示すように、螺子軸161~164を、上下方向に対して時計回りに傾斜させつつ第1ベース部材130に貫通させることができる。このように、螺子軸161~164を第1ベース部材130の厚み方向に対して傾斜させた状態で第2ベース部材160を第1ベース部材130に固定することで、第1ベース部材130に対して第2ベース部材160を傾斜させつつ固定できる。例えば、図3(c)に示すように、外側に向かうほど上下方向に関する第1ベース部材130と第2ベース部材160の間隔が小さく(内側に向かうほど上下方向に関する第1ベース部材130と第2ベース部材160の間隔が大きく)なるように第1ベース部材130と第2ベース部材160を固定することが出来る。上下方向に対する螺子軸161~164の傾斜角度を調整することで、第1ベース部材130に対する第2ベース部材160の傾斜する角度を調整することも可能である。
【0023】
図4(a)及び(b)に示す支持材40はターンバックル47から構成されることで、長さ方向に伸縮する。支持材40は、柵本体11に接続される柵本体接続部41と、第2支持脚133に接続される第2支持脚接続部44と、柵本体接続部41と第2支持脚接続部44とを連結するターンバックル47とを有する。
【0024】
柵本体接続部41は、ターンバックル47の一端(図中、外側端部)に連結され、板状に形成されている。柵本体接続部41の先端部には、その厚さ方向に貫通する柵本体接続孔42が設けられている。
【0025】
第2支持脚接続部44は、ターンバックル47の他端(図中、内側端部)に連結され、平面視でコの字型に形成されている。第2支持脚接続部44の先端部には、その厚さ方向に貫通する第2支持脚接続孔45が設けられている。
【0026】
ターンバックル47は、雌螺子が内表面に形成された胴体48と、雄螺子が外表面に形成され、胴体48の両側にねじ込まれた螺子棒49a、49bとを有する。一方の螺子棒49aに右螺子が切られ、他方の螺子棒49bに左螺子が切られている。したがって、胴体48を一方に回転させると螺子棒49a及び49bがいずれも胴体48内に向かって進み、胴体48を他方に回転させると螺子棒49a及び49bがいずれも胴体48外に向かって進む。これにより、胴体48を軸周りに回転させることでターンバックル47の長さを調整できる。
【0027】
図5に示すように、アンカー50は円筒形状である。アンカー50の頂部(図中、上端部)には、長さ方向と直交する方向にアンカー50を貫通するアンカー孔51が設けられている。
【0028】
図6に示すように、ボルト62を介して柵本体接続部41と支柱面側接続部21とが接続されている。これにより、支持材40と柵本体11とが、互いに対して中心C2の周りに回転可能となる。つまり支持材40は、回転可能に柵本体11に支持されている。また、図7に示すように、アンカー50は、第1ベース部材130の縁136、及び第2ベース部材160の縁167に嵌合される。そして、ボルト63を介して第2支持脚133と第2支持脚接続部44とアンカー50とが接続されている。これにより、第1ベース部材130と支持材40とアンカー50とが、互いに対して中心C3の周りに回転可能となる。
【0029】
次に、本実施形態の防護柵10を斜面1に設置する手順の一例について図8図10に基づいて説明する。
【0030】
まず、防護柵10を設置しようとする斜面1において、防護柵10を設置する位置出しを行う。これによって決定した設置位置に応じて、アンカー50を鉛直方向に、その頂部を除いて地中に埋設する(図8参照)。アンカー50の埋設後に、ベース機構100の設置位置を決定する。このとき、第2ベース部材160の長さ方向が斜面1の傾斜方向に沿っている。第1ベース部材130と第2ベース部材160は、ナット151を嵌めた螺子軸161~164を貫通孔141~144にそれぞれ貫通させて、さらにナット152を螺子軸161~164の上方から嵌め、ナット151及び152の間に支持プレート135を挟み込むようにして仮止めする。
【0031】
そして、アンカー50の頂部と第2支持脚133の間に、第2支持脚接続部44の先端部が挟まれるように支持材40を保持する。この状態で、第2支持孔134の中心と第2支持脚接続孔45の中心とアンカー孔51の中心とを一致させ、これらの孔134、45、51にボルト63を挿通してナット(不図示)で仮止めする。これにより、ボルト63を介して第2支持脚133と第2支持脚接続部44とアンカー50とが接続され、地中に埋設されたアンカー50と斜面1に位置決めされた第1ベース部材130に対して支持材40が中心C3の周りに回転可能となる。言い換えれば、第2支持脚133は支持材40を回転可能に斜面1上で支持する。なお、支持材40と第2支持脚133の接続位置とは中心C3を指す。
【0032】
次に、一対の第1支持脚131の間に柵本体11の支柱端側接続部25をはめ込み、第1支持孔132の中心と支柱端側接続孔26の中心を一致させる。これらの孔32、26にボルト61を挿通してナットで仮止めする。これにより第1支持脚131と柵本体11とが接続され、第1支持脚131は、中心C1の周りに柵本体11を回転可能に斜面1上で支持する。この状態で柵本体11を回転させ、支柱12が鉛直方向に起立するように柵本体11を保持し、ナットを増し締めしてボルト61に締結する。
【0033】
第2支持脚接続部44がアンカー50及び第2支持脚133に回転可能に支持された支持材40において、ターンバックル47の胴体48を軸周りに回転させて支持材40の長さを調整する。このとき、アンカー50に接続された支持材40が適度な力で柵本体11を支持するように、支持材40の長さを決定する。この後、一対の支柱面側接続部21の間に柵本体接続部41を挟み込み、支柱面側接続孔22の中心と柵本体接続孔42の中心とを一致させ、これらの孔22、42にボルト62を挿通してナットで締結する。これにより、柵本体11と支持材40とが接続され、支持材40は柵本体11から斜面1に向かって延びることとなる。なお、柵本体11と支持材40の接続位置とは、中心C2を指す。
【0034】
最後に、仮止めした箇所を締結する。第2支持脚133と第2支持脚接続部44とアンカー50との接続箇所で仮止めされたナットを増し締めしてボルト63に締結する。
【0035】
以上のような防護柵10の設置に当たって、ベース機構100を斜面1上に設置する際、以下の通り、第1ベース部材130に対する第2ベース部材160の位置や傾斜角度を設置箇所の状況に応じて調整することが好ましい。例えば、図9に示すベース機構100を設置する場所が、他のベース機構100を設置している場所(例えば、図8に示す場所)と比較して斜面1の勾配が小さい場合、図9に示すように第1ベース部材130に対する第2ベース部材160の位置及び傾斜角度を調整するとよい。つまり、螺子軸161又は162に沿って第1ベース部材130から第2ベース部材160まで至る距離が、螺子軸163又は164に沿って第1ベース部材130から第2ベース部材160まで至る距離より小さくなるように、ナット151及び152が支持プレート135を挟み込む位置を螺子軸161~164に沿って調整すると共に、第1ベース部材130の上下方向に対する螺子軸161~164の傾斜角度を調整する。これによって、他のベース機構100に沿った面と比べて勾配が小さい斜面1の設置場所に安定に接触するように第2ベース部材160を配置することが可能である。
【0036】
また、図10に示すように、斜面1の凹部1Aに位置するベース機構100においては、支持プレート135を挟み込む位置を螺子軸161~164に沿って調整し、凹部1Aに安定に接触するように、第1ベース部材130に対して第2ベース部材160を離隔させる。一方、斜面1の凸部1Bに位置するベース機構100においては、支持プレート135を挟み込む位置を螺子軸161~164に沿って調整し、凹部1Aに位置するベース機構100と比較して、第1ベース部材130に対して第2ベース部材160を近接させる。これによって、凸部1Bに安定に接触するように第2ベース部材160を配置する。
【0037】
以上より、支持材40、アンカー50、第1ベース部材130、第2ベース部材160、及び柵本体11との位置関係が固定され、防護柵10の設置が完了する。各ベース機構100において、第1ベース部材130に対する第2ベース部材160の位置を螺子軸161~164に沿って調整できる。これによって、斜面に凹凸等があるためにベース機構100の設置場所同士で段差が生じる場合でも、各ベース機構100を斜面1上に安定に設置できる。
【0038】
また、貫通孔141~144が、上下方向に対する螺子軸161~164の角度が調整可能であるように、外内方向に関して螺子軸161~164の径より大きく形成されている。よって、例えば、図9に示すベース機構100を設置する場所が、他のベース機構100を設置している場所(例えば、図8に示す場所)と比較して斜面の勾配が小さい場合、勾配に沿って第1ベース部材130の上下方向に対する螺子軸161~164の傾斜角度を調整して第1ベース部材130に対する第2ベース部材160の傾斜角度を調整することで、勾配の小さい斜面1の設置場所に安定に接触するように第2ベース部材160を配置することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。以下、上述の実施形態に係る変形例について説明する。また、上述の実施形態と共通の部分については上述と同じ符号を用いると共に、説明を適宜省略する。
【0040】
前記実施形態では、鉛直方向に柵本体11を設置しているが、鉛直方向に対してその他の所望の角度に柵本体を設置してもよい。
【0041】
前記実施形態では、左右方向に貫通孔が2つ並んでいるが、1つでもよいし、3つ以上でもよい。また、外内方向に貫通孔が2つ並んでいるが、1つでもよいし、3つ以上でもよい。また、左右方向や外内方向に貫通孔が並んでいなくてもよい。複数の貫通孔がこれらの方向に関係なくばらばらに形成されていてもよい。また、螺子軸も貫通孔に合わせた数及び位置で設けられればよい。また、螺子軸は、1つの貫通孔に複数貫通するように形成されていてもよい。
【0042】
前記実施形態では、支持プレート135において、貫通孔141~144が、それぞれ螺子軸161~164の径より外内方向に関して大きく、又、外内方向に長尺に形成されている。しかし、支持プレート135の代わりに図11(a)に示す支持プレート235が採用されてもよい。支持プレート235には、貫通孔141~144の代わりに貫通孔251及び255が形成されている。貫通孔251は、図中、螺子軸161及び162が通る領域を左右方向に跨ぐように延びた、左右方向に長尺な角丸長方形型の形状を有している。貫通孔251の外内方向の幅は螺子軸161や162とほぼ同じである。貫通孔255は、螺子軸163及び164を左右方向に跨ぐように延びた、左右方向に長尺な角丸長方形型の形状を有している。貫通孔255の外内方向の幅は螺子軸163や164とほぼ同じである。螺子軸161及び162が貫通孔251を貫通しつつ、上述の実施形態と同様に、螺子軸161及び162のそれぞれにおいて一対のナット151及び152が支持プレート235を挟み込んで緊締される。また、螺子軸163及び164が貫通孔255を貫通しつつ、上述の実施形態と同様に、螺子軸163及び164のそれぞれにおいて一対のナット151及び152が支持プレート235を挟み込んで緊締される。これにより、第1ベース部材230と第2ベース部材160が固定される。本変形例では、貫通孔251及び255が左右方向に長尺であるため、螺子軸161~164を外内方向に沿った軸周りに回転するように傾斜させることが可能である。これにより、第1ベース部材230に対して第2ベース部材160を外内方向に沿った軸周りに回転するように傾斜させることが可能となる。
【0043】
前記実施形態では、貫通孔141~144が、それぞれ螺子軸161~164の径より外内方向に関して大きく、又、外内方向に長尺に形成されている。しかし、支持プレート135の代わりに図11(b)に示す支持プレート335が採用されてもよい。また、第2ベース部材160の螺子軸161~164の代わりに、2本の螺子軸366及び368が設けられればよい。支持プレート335には、螺子軸366を貫通させる貫通孔351、及び螺子軸368を貫通させる貫通孔355が形成されている。貫通孔351は、図中、螺子軸366より一回り大きい円形状を有している。貫通孔355は、図中、螺子軸368より一回り大きい円形状を有している。これにより、上下方向に対して複数の方向に螺子軸366及び368を傾けることが可能となる。したがって、第1ベース部材330に対して第2ベース部材160を様々な方向に傾斜させることが可能となる。
【0044】
前記実施形態では、支柱12が図8の中心C1に関して回転可能であり、支持材40が図8の中心C2及びC3のそれぞれに関して回転可能であり、ターンバックル47によって支持材40の長さが調整可能である。これにより、第1ベース部材130に対する支柱12の角度θ1を変更可能である構成が採用されている。しかし、このように支柱12、支持材40、及び第1ベース部材130が互いに対して回転可能となっておらず、これらの間の角度が固定された構成が採用されていてもよい。
【0045】
前記実施形態では、第1ベース部材130と第2ベース部材160との固定には、一対のナット151及び152が用いられている。しかし、図12に示すように、ナット151の代わりに円筒状のカラー451及び551が用いられてもよい。これらのカラーは、螺子軸161~164に沿った方向に関して第1ベース部材130と第2ベース部材160の間隔とほぼ同じ長さのものを使用する。図12においては、内側に向かうほど上下方向に関する第1ベース部材130と第2ベース部材160の間隔が大きくなっている。このため、カラー551はカラー451より長い。ナット152をカラー451又は551に対して緊締することにより、ナット152とカラー451又は551の間に支持プレート135が挟み込まれて固定される。なお、カラーは円筒でなくとも筒状であればよい。
【符号の説明】
【0046】
1 斜面
10 防護柵
100 ベース機構
130、230、330 第1ベース部材
141、142、143、144、251、255、351、355 貫通孔
160 第2ベース部材
151、152 ナット
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図3(d)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12