(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】銀コロイドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20240509BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20240509BHJP
B22F 1/0545 20220101ALI20240509BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20240509BHJP
A01N 59/16 20060101ALN20240509BHJP
A01P 1/00 20060101ALN20240509BHJP
A01P 3/00 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
B22F1/00 K
B01J13/00
B22F1/0545
B22F9/00 B
A01N59/16 A
A01P1/00 ZNM
A01P3/00
(21)【出願番号】P 2022538094
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2022091857
(87)【国際公開番号】W WO2023087634
(87)【国際公開日】2023-05-25
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】202111373512.9
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516112646
【氏名又は名称】▲蘇▼州大学
【氏名又は名称原語表記】SOOCHOW UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】NO.1 SHIZI STREET, INDUSTRIAL PARK, SUZHOU, JIANGSU 215006, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】呉 雪梅
(72)【発明者】
【氏名】張 瀟漫
(72)【発明者】
【氏名】黄 天源
(72)【発明者】
【氏名】諸葛 蘭剣
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-242874(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101279231(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1781587(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0013825(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102935513(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤
として、ドデシル硫酸ナトリウムを水に加えて溶解し、溶液1を得、銀粉と水を均一に分散させて混合液2を得るステップS1と、
前記混合液2を前記溶液1に滴下し、混合液3を得るステップS2と、
前記混合液3を密閉状態で均一に分散して混合液4を得るステップS3と、
前記混合液4を遠心分離し、得られた上清が銀コロイドとなるステップS4と、を含むことを特徴とする、
銀コロイドの製造方法。
【請求項2】
前記ステップS1において、前記銀粉と水が超音波によって均一に分散され、超音波処理時間が15~20minであることを特徴とする、
請求項1に記載の銀コロイドの製造方法。
【請求項3】
前記混合液2中の銀粉の濃度が0.05~0.75g/Lであり、銀粉中の銀粒子の粒径が80±20nmであることを特徴とする、
請求項1に記載の銀コロイドの製造方法。
【請求項4】
前記ステップS2において、前記混合液2が3~5mL/minの速度で溶液1に1滴ずつ滴下されることを特徴とする、
請求項1に記載の銀コロイドの製造方法。
【請求項5】
前記混合液3中において、前記分散剤と前記銀粉の質量比が10:1~20:1であり、前記銀粉の質量濃度が0.01~0.15g/Lであることを特徴とする、
請求項1に記載の銀コロイドの製造方法。
【請求項6】
混合液3を密閉状態で均一に分散して混合液4を得るステップは、
混合液3を密閉状態で超音波分散するステップS31と、
超音波分散後の混合液3を密閉状態で撹拌するステップS32と、
撹拌後の混合液3を密閉状態で超音波分散して混合液4を得るステップS33と、を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の銀コロイドの製造方法。
【請求項7】
前記ステップS31において、超音波分散時間が3.5~4.5hであり、
前記ステップS32において、撹拌時間が24~48hであり、
前記ステップS33において、超音波分散時間が3.5~4.5hであることを特徴とする、
請求項6に記載の銀コロイドの製造方法。
【請求項8】
前記ステップS31において、超音波分散時間が4hであり、
前記ステップS32において、撹拌時間が36hであり、
前記ステップS33において、超音波分散時間が4hであることを特徴とする、
請求項7に記載の銀コロイドの製造方法。
【請求項9】
前記ステップS4において、遠心分離回転速度が4000~7000r/minであり、遠心分離時間が10~15minであることを特徴とする、
請求項1に記載の銀コロイドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイド化学の技術分野に関し、特に、銀コロイド及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ材料研究の分野において、ナノ銀は近年、多く研究されている金属ナノ材料の1つである。ナノ銀は、自体に有する小サイズ効果、量子サイズ効果、表面効果及び巨視的量子トンネル効果によって、多くの独特の特性を示している。銀の粒径がナノオーダーになると、表面効果及び量子効果が示されるため、その抗菌性能は数千倍まで向上する。25ナノメートル以下のナノ銀は粒径が細菌、ウイルスのサイズよりも小さいため、細胞壁を貫通してそれらの呼吸のためのベース酵素と結合することで、遺伝子を変える可能性を残さずに細菌、ウイルスを窒息死させることができる。したがって、ナノ銀は、効率的で広域スペクトルの殺菌効果があり、浸透性が強く、薬剤耐性がなく、修復・再生の効果があり、抗菌効果が持続的で、安全無毒である等の特徴を有し、プラスチック玩具、家庭用品、果物鮮度保持、空気浄化、医療用材料等の分野において広い応用見通しを持っている。
【0003】
多くの場合、銀コロイドは目的物として、より広い産業的及び商業的応用性を有する。ナノ銀は粒径が小さく、表面エネルギーが高いため、非常に強い凝集傾向を示している。従来の銀コロイドの製造プロセスは主として、銀の塩溶液から出発し、還元剤と銀塩によって銀粒子を生成するものであり、また、溶液中の銀粒子の安定性のためには、溶液に大量の添加剤を加えることが必要不可欠となっている。例えば、特許CN201210258492.5には銀コロイド及びその製造方法が提供され、製造されたコロイドには、銀塩及び還元剤のほかに、分散剤、保護剤、pH調整剤等も含有されている。大量の添加剤が存在することによって、銀コロイドのコストが高くなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術の不足を解決するために、原料がシンプルで、プロセスが簡単で、コストが低く、製造された銀コロイドにはナノ銀粒子及び分散剤のみが含まれる銀コロイドの製造方法を提供することである。
【0005】
本発明の別の目的は、ナノ銀粒子及び分散剤のみを含む銀コロイドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来技術の不足を解決するために、本発明で提供される技術的解決手段は以下のとおりである。
【0007】
銀コロイドの製造方法であって、前記銀コロイドの製造方法は、
分散剤を水に加えて溶解し、溶液1を得、銀粉と水を均一に分散させて混合液2を得るステップS1と、
前記混合液2を前記溶液1に滴下し、混合液3を得るステップS2と、
前記混合液3を密閉状態で均一に分散して混合液4を得るステップS3と、
前記混合液4を遠心分離し、得られた上清が銀コロイドとなるステップS4と、を含む。
【0008】
好ましくは、前記ステップS1において、前記銀粉と水が超音波によって均一に分散され、超音波処理時間が15~20minである。
【0009】
好ましくは、前記混合液2中の銀粉の濃度が0.05~0.75g/Lであり、銀粉中の銀粒子の粒径が80±20nmである。
【0010】
好ましくは、前記ステップS2において、前記混合液2が3~5mL/minの速度で溶液1に1滴ずつ滴下される。
【0011】
好ましくは、前記混合液3中に、前記分散剤と前記銀粉の質量比が10:1~20:1であり、前記銀粉の質量濃度が0.01~0.15g/Lである。
【0012】
好ましくは、前記混合液3を密閉状態で均一に分散して混合液4を得るステップは、
混合液3を密閉状態で超音波分散するステップS31と、
超音波分散後の混合液3を密閉状態で撹拌するステップS32と、
撹拌後の混合液3を密閉状態で超音波分散して混合液4を得るステップS33と、を含む。
【0013】
好ましくは、前記ステップS31において、超音波分散時間が3.5~4.5hであり、
前記ステップS32において、撹拌時間が24~48hであり、
前記ステップS33において、超音波分散時間が3.5~4.5hである。
【0014】
好ましくは、前記ステップS31において、超音波分散時間が4hであり、
前記ステップS32において、撹拌時間が36hであり、
前記ステップS33において、超音波分散時間が4hである。
【0015】
好ましくは、前記ステップS4において、遠心分離回転速度が4000~7000r/minであり、遠心分離時間が10~15minである。
【0016】
銀コロイドであって、前記銀コロイドは前記銀コロイドの製造方法で製造される。
【発明の効果】
【0017】
1)本発明で提供される銀コロイドの製造方法は、原料がシンプルで、プロセスが簡単で、コストが低く、製造された銀コロイドにはナノ銀粒子及び分散剤のみが含まれ、且つ製造された銀コロイドは安定性が高く、変質することなく長期保管できる。
【0018】
2)本発明で提供される銀コロイドを用いて製造されるナノ抗菌綿は優れた殺菌効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1で製造された銀コロイドのTEM写真である。
【
図2】実施例1で製造された銀コロイドのTEM写真の拡大図である。
【
図3】実施例1、実施例2、実施例3で製造された銀コロイドの紫外吸収スペクトル図である。
【
図4】実施例4で製造されたナノ抗菌綿表面の大腸菌の7k倍率のSEM写真である。
【
図5】実施例4で製造されたナノ抗菌綿表面の大腸菌の10k倍率のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下において、実施形態によって本発明をさらに説明する。以下の実施形態は、本発明の技術的解決手段をより明確に説明するためのものに過ぎず、これによって本発明の保護範囲が制限されるものではない。
【0021】
本発明の実施例で提供される銀コロイドの製造方法は、
分散剤を水に加えて溶解し、溶液1を得、銀粉を水に加え、均一に分散して混合液2を得るステップS1と、
混合液2を溶液1に滴下し、混合液3を得るステップS2と、
混合液3を密閉状態で均一に分散して混合液4を得るステップS3と、
混合液4を遠心分離機に入れて遠心分離し、得られた上清が銀コロイドとなるステップS4と、を含む。
【0022】
本発明の代替的な実施例において、分散剤はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であり、溶液1中の分散剤の濃度は2.5g/Lである。SDSはナノ銀分散剤として、ナノ銀粒子の凝集を効果的に防ぐことができる。
【0023】
本発明の代替的な実施例において、混合液2中の銀粉の濃度は0.05~0.75g/Lであり、銀粉中の銀粒子の粒径は80±20nmであり、比表面積≧3.0m3/gである。
【0024】
本発明の代替的な実施例では、ステップS1において、銀粉と水が超音波又は撹拌によって均一に分散されて混合液2を得る。好ましくは超音波によって均一に分散され、超音波処理時間が15~20minである。
【0025】
本発明の代替的な実施例では、ステップS2において、混合液2が3~5mL/minの速度で溶液1に1滴ずつ滴下され、好ましくは滴下速度が4mL/minである。
【0026】
本発明の代替的な実施例において、混合液3中に、分散剤と銀粉の質量比が10:1~20:1であり、好ましくは20:1である。
【0027】
本発明の代替的な実施例において、混合液3中に、銀粉の質量濃度が0.01~0.15g/Lであり、好ましくは0.1g/Lである。
【0028】
本発明の代替的な実施例において、超音波-撹拌-超音波の複合した分散モードによって混合液3を密閉状態で均一に分散して混合液4を得て、具体的には、
混合液3を密閉状態で超音波分散するステップS31であって、超音波処理時間が3.5~4.5hであり、好ましくは4hであるステップS31と、
超音波分散後の混合液3を密閉状態で撹拌するステップS32であって、撹拌時間が24~48hであり、好ましくは36hであるステップS32と、
撹拌後の混合液3を密閉状態で超音波分散して混合液4を得るステップS33であって、超音波処理時間が3.5~4.5hであり、好ましくは4hであるステップS33と、を含む。
【0029】
ナノ粒子が凝集しやすいため、超音波-撹拌-超音波の複合した分散モードでなければ、銀粒子を均一に分散することができない。
【0030】
本発明の代替的な実施例では、ステップS4において、遠心分離機の回転速度が4000~7000r/minであり、好ましくは6000r/minであり、遠心分離時間が10~15minであり、好ましくは15minである。
【0031】
本発明で提供される銀コロイドの製造方法は、金コロイド、亜鉛コロイド等のコロイドの製造に応用できる。
【0032】
本発明の実施例は銀コロイドをさらに提供し、該銀コロイドは前述した銀コロイドの製造方法で製造される。
【0033】
下記実施例に用いられる試薬はいずれも市販されているものであり、銀粉は中国冶金研究総院から購入し、銀粉は粒径が80±20nmであり、比表面積≧3.0m3/gであり、純度が99.9%である。
【0034】
<実施例1>
ナノ銀コロイドを製造する。
1)200mgのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を80mlの脱イオン水に入れて溶解し、溶液1を得る。
2)10mgのナノ銀粉を20mlの脱イオン水に入れ、その後超音波によって15min分散して混合液2を得る。
3)混合液2を溶液1に1滴ずつ滴下して混合液3を得、速度を4mL/minに制御する。
4)水分揮発を防ぐように混合液3を密閉し、4hの超音波分散-24hの磁気撹拌-4hの超音波分散を経て混合液4を得る。
5)混合液4を遠心分離機に入れ、6000r/minで10min遠心分離し、上清を取り出し、この上清が銀コロイドとなる。銀コロイドは明黄色の透明な状態であり、明黄色はナノオーダーの銀粒子から屈折した光によるものである。
【0035】
SDSは極めて水に溶けやすくて沈殿することがないため、遠心分離後に底部に沈殿したものはほぼナノ銀粉である。底部の銀粉を収集乾燥して秤量し、重量は4mgである。したがって、製造された銀コロイド中の銀の濃度は60ppmである。
【0036】
図1は銀コロイドのTEM写真であり、図から銀粒子のサイズ及び銀粒子の位置分布が均一であることが分かる。
図2は単一銀粒子のTEM写真であり、図から単一銀粒子のサイズが約80nm前後であることが分かり、銀コロイドの成功した製造を示している。
【0037】
図3から、本実施例で製造された銀コロイドは425nm付近にピークを持つことが分かり、これは、銀粒子の直径が大きく、銀粒子の粒度分布が広範囲であるためである。
【0038】
本実施例で製造された銀コロイドは安定性が高く、2ヶ月間放置しても銀コロイドは変わらず、2ヶ月以上になると、銀コロイドには沈殿物が少しあるが、手で振盪すれば均一な銀コロイドを得ることができる。
【0039】
<実施例2>
ナノ銀コロイドを製造する。
1)200mgのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を80mlの脱イオン水に入れて溶解し、溶液1を得る。
2)13mgのナノ銀粉を20mlの脱イオン水に入れ、その後超音波によって15min分散して混合液2を得る。
3)混合液2を溶液1に1滴ずつ滴下して混合液3を得、速度を4mL/minに制御する。
4)水分揮発を防ぐように混合液3を密閉し、4hの超音波分散-24hの磁気撹拌-4hの超音波分散を経て混合液4を得る。
5)混合液4を遠心分離機に入れ、6000r/minで10min遠心分離し、上清を取り出し、この上清が銀コロイドとなる。銀コロイドは明黄色の透明な状態であり、製造された銀コロイド中の銀の濃度は90ppmである。
【0040】
図3から、本実施例で製造された銀コロイドは425nm付近にピークを持つことが分かり、これは、銀粒子の直径が大きく、銀粒子の粒度分布が広範囲であるためである。また、本実施例で製造された銀コロイドの特徴的吸収ピークの強度は、実施例1で製造された銀コロイドの特徴的吸収ピークの強度よりも高い。
【0041】
本実施例で製造された銀コロイドは安定性が高く、2ヶ月間放置しても銀コロイドは変わらず、2ヶ月以上になると、銀コロイドには沈殿物が少しあるが、手で振盪すれば均一な銀コロイドを得ることができる。
【0042】
<実施例3>
ナノ銀コロイドを製造する。
1)200mgのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を80mlの脱イオン水に入れて溶解し、溶液1を得る。
2)15mgのナノ銀粉を20mlの脱イオン水に入れ、その後超音波によって15min分散して混合液2を得る。
3)混合液2を溶液1に1滴ずつ滴下して混合液3を得、速度を4mL/minに制御する。
4)水分揮発を防ぐように混合液3を密閉し、4hの超音波分散-24hの磁気撹拌-4hの超音波分散を経て混合液4を得る。
5)混合液4を遠心分離機に入れ、6000r/minで10min遠心分離し、上清を取り出し、この上清が銀コロイドとなる。銀コロイドは明黄色の透明な状態であり、製造された銀コロイド中の銀の濃度は130ppmである。
【0043】
図3から、本実施例で製造された銀コロイドは425nm付近にピークを持つことが分かり、これは、銀粒子の直径が大きく、銀粒子の粒度分布が広範囲であるためである。また、本実施例で製造された銀コロイドの特徴的吸収ピークの強度は、実施例2で製造された銀コロイドの特徴的吸収ピークの強度よりも高い。
【0044】
本実施例で製造された銀コロイドは安定性が高く、2ヶ月間放置しても銀コロイドは変わらず、2ヶ月以上になると、銀コロイドには沈殿物が少しあるが、手で振盪すれば均一な銀コロイドを得ることができる。
【0045】
<実施例4>
ナノ抗菌綿を製造し、特許CN202122332358.2で提供されるエアロゾル支援の大気圧プラズマ蒸着装置を用いて、ナノ抗菌綿を製造する。
1)上質な長繊維綿を選択し、平らにした後昇降テーブルの上に置く。
2)アルゴンガスを導入した後にプラズマを発生させ、綿の表面をプラズマで処理し、電源周波数は20kHz、電圧は14kV、時間は30s、電流は8.5mA、プラズマの電力密度は16.48W/cm3である。プラズマ処理された後、綿繊維の表面構造が破壊され、化学結合が切れ、ナノ粒子の蒸着に一層有利になる。
3)実施例1で製造された銀コロイドを超音波噴霧器に入れ、噴霧器の液体消費速度は3mL/minであり、発生した霧の粒経は1-5μmである。噴霧ガスをプラズマに導入し、プラズマによりナノ銀粒子を蒸着すればナノ抗菌綿を得ることができ、電源周波数は20kHz、電圧は14kV、電流は8.5mA、プラズマの電力密度は16.48W/cm3、時間は10minである。
【0046】
ナノ抗菌綿の抗菌性能試験を以下のように行う。
ナノ抗菌綿を大腸菌培養液(細菌濃度2×10
5/cm
3)に浸し、37℃で24時間恒温培養し、その後、少量の菌液を取り、分光光度計(620nm)によって菌液の吸光度を測定し、その結果、24時間培養した後、大腸菌の数は90%以上低減したことが示された。培養液からナノ抗菌綿を取り出し、グルタルアルデヒド固定溶液によって表面の大腸菌を固定し、その後、走査型電子顕微鏡によってナノ抗菌綿表面の大腸菌の生存状態を観察する。
図4と
図5から、大腸菌はほぼ全てねじれ又は破壊された状態であり、傍には破壊された細胞膜もあることが分かり、綿繊維表面にはまろやかで健康的な個体の存在が観察されなかった。製造されたナノ抗菌綿は大腸菌に対して強い抗菌能力を持ち、表面にある大腸菌を効果的に殺滅できるとともに、周辺細菌の増殖を抑制できることが証明されている。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、指摘すべきことは、当業者であれば、本発明の技術的原理を逸脱せずに様々な改良や変形を行うことができ、これらの改良や変形も本発明の保護範囲に属するとみなすべきである点である。
【0048】
(付記)
(付記1)
分散剤を水に加えて溶解し、溶液1を得、銀粉と水を均一に分散させて混合液2を得るステップS1と、
前記混合液2を前記溶液1に滴下し、混合液3を得るステップS2と、
前記混合液3を密閉状態で均一に分散して混合液4を得るステップS3と、
前記混合液4を遠心分離し、得られた上清が銀コロイドとなるステップS4と、を含むことを特徴とする、
銀コロイドの製造方法。
【0049】
(付記2)
前記ステップS1において、前記銀粉と水が超音波によって均一に分散され、超音波処理時間が15~20minであることを特徴とする、
付記1に記載の銀コロイドの製造方法。
【0050】
(付記3)
前記混合液2中の銀粉の濃度が0.05~0.75g/Lであり、銀粉中の銀粒子の粒径が80±20nmであることを特徴とする、
付記1に記載の銀コロイドの製造方法。
【0051】
(付記4)
前記ステップS2において、前記混合液2が3~5mL/minの速度で溶液1に1滴ずつ滴下されることを特徴とする、
付記1に記載の銀コロイドの製造方法。
【0052】
(付記5)
前記混合液3中において、前記分散剤と前記銀粉の質量比が10:1~20:1であり、前記銀粉の質量濃度が0.01~0.15g/Lであることを特徴とする、
付記1に記載の銀コロイドの製造方法。
【0053】
(付記6)
混合液3を密閉状態で均一に分散して混合液4を得るステップは、
混合液3を密閉状態で超音波分散するステップS31と、
超音波分散後の混合液3を密閉状態で撹拌するステップS32と、
撹拌後の混合液3を密閉状態で超音波分散して混合液4を得るステップS33と、を含むことを特徴とする、
付記1に記載の銀コロイドの製造方法。
【0054】
(付記7)
前記ステップS31において、超音波分散時間が3.5~4.5hであり、
前記ステップS32において、撹拌時間が24~48hであり、
前記ステップS33において、超音波分散時間が3.5~4.5hであることを特徴とする、
付記6に記載の銀コロイドの製造方法。
【0055】
(付記8)
前記ステップS31において、超音波分散時間が4hであり、
前記ステップS32において、撹拌時間が36hであり、
前記ステップS33において、超音波分散時間が4hであることを特徴とする、
付記7に記載の銀コロイドの製造方法。
【0056】
(付記9)
前記ステップS4において、遠心分離回転速度が4000~7000r/minであり、遠心分離時間が10~15minであることを特徴とする、
付記1に記載の銀コロイドの製造方法。
【0057】
(付記10)
付記1から9のいずれか1つに記載の銀コロイドの製造方法で製造されることを特徴とする、
銀コロイド。