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  • 特許-船舶の流体抵抗低減装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】船舶の流体抵抗低減装置
(51)【国際特許分類】
   B63B 1/32 20060101AFI20240509BHJP
   B63B 1/36 20060101ALI20240509BHJP
   B63B 1/40 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B63B1/32 A
B63B1/36
B63B1/40 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022540939
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 KR2020001244
(87)【国際公開番号】W WO2021153806
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】522263596
【氏名又は名称】パク,イン チョル
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】パク,イン チョル
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0043459(KR,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2010-0004331(KR,U)
【文献】特開昭63-279990(JP,A)
【文献】特開昭60-061389(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第03712534(DE,A1)
【文献】登録実用新案第3118172(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/32-1/40
B63H 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進プロペラ(11)を船尾(10b)に備えた船舶(100)の船体(10)の外底部に、船体(10)の形状に沿って囲んだ状態で、流体移送通路(53)が形成されるように一定の間隔を置いて設置した変形V字またはU字形の流体流れ誘導板(50)と、
前記船体(10)の船首(10a)側に船舶の進行方向に突出して形成された前記流体流れ誘導板(50)の流体流入口(51)と、
前記船体(10)の船尾(10b)側に形成された前記流体流れ誘導板(50)の流体排出口(52)と、
前記流体流入口(51)と前記流体排出口(52)とを連結する流体移送通路(53)とを、含む船舶の流体抵抗低減装置であって、前記流体移送通路(53)は、前記流体流れ誘導板(50)の両側部と、前記流体流れ誘導板(50)の両側部の間の船体(10)の底部に形成されており、
前記流体排出口(52)は、前記推進プロペラ(11)全体を取り囲み、前記流体流れ誘導板(50)の内側に対向して付けられた弧形湾曲板(52a)によって、内径が縮小してから後端にいくほど前記流体流入口(51)と同一の大きさに拡張する形状からなり、前記縮小した内径部に推進プロペラ(11)が設置されて、前記推進プロペラ(11)の回転力によって強制的に流入した海水が後端にいくほど流体流入口(51)と同一の大きさに拡張する流体排出口によって、迅速な排出がなされるようにすることを特徴とする船舶の流体抵抗低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の流体抵抗低減装置に関する。より詳しくは、船舶が航海するときの海水による摩擦抵抗と共に造波抵抗を大きく減らして、速度向上と共に安定した航海及び燃料節減を具現することができる船舶の流体抵抗低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、航海する船舶は海水による流体抵抗、すなわち摩擦抵抗と、水面に波を作るため造波抵抗を受ける。特に摩擦抵抗は、船体が水から受ける抵抗の大部分を占めて運航中に大きなエネルギー損失を引き起こす。これと共に造波抵抗もまた船体が水から受ける抵抗の一部分を占めて推進力の損失を招き燃料の消耗を増加させるエネルギー損失を引き起こす。したがって、船舶の船体分野の研究は、摩擦抵抗及び造波抵抗を減らすことができる船型を開発することに力点を置いてきた。
【0003】
例えば、摩擦抵抗を減少させるために船体に塗布する塗料によって摩擦係数を減らすとか、気泡をまいて摩擦抵抗を減らすとか、船体の表面をイルカのように滑らかにする等、様々な方法が講じられているが大きな効果を得ることができていない。
【0004】
また、造波抵抗を減少させる代表的なものとして、水面下の船首から前方に向かって球形に突出する形態のバルブ(bulb)という球状船首(bulbous bow)によって、船首が起こす波を相殺できる波を起こして船首側で生じる波高を低減させる方式で造波抵抗を低減させているが、このような球状船首は、船舶が満載状態を維持し設計速度で運航する条件で最適の効果を出せるように設計されているため、通常は満載吃水と設計速度を維持しない実際の運航条件下ではむしろ造波抵抗の増加を招くこととなり、また船体の長さが増加する問題がある。
【0005】
一方、これ以外にも海水による流体抵抗を減らすための技術が多数提案されている。例えば特開2016-112950号公報(2016年6月23日公開)は、船舶の左右舷に導水トンネルを形成して海水を通過させながら流体抵抗を減らし水力発電ができるようにした技術を開示している。しかし、前記技術は導水トンネルを通過する流体を利用して水力発電をするためものであり、船舶の運航時の流体抵抗を低減させることはできなかった。
【0006】
また、韓国公開実用新案第20-2010-0004331号公報は、船首側で流圧として作用する海水を、取水口を介して流入させ船尾側に高圧排出させることにより、航海船舶の船首側の流圧を減らし、船尾側では推進力を増加させる技術を開示しているが、これは推進力を増加させる効果はあるとしても、船舶の航海時に船舶の進行方向に発生する摩擦抵抗と造波抵抗を低減させるには不足であった。
【0007】
また、韓国公開特許第10-2015-0047812号公報は、船舶に海水通路を形成して、船舶の停止時あるいは初期運航時に海水通路内の回転機がモータリング動作によって海水の流れが早まるよう助けることにより、船舶が平衡を維持するようにする船舶の無バラストシステムであって、海水通路は船舶が平衡を維持するようにする作用効果を提供するだけで、摩擦抵抗と造波抵抗を低減させる効果は得ることができない技術といえる。
【0008】
したがって、比較的簡単な構造で摩擦抵抗と造波抵抗の低減効率が増大し得る技術の開発が切実に要求されている実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-112950号公報
【文献】韓国公開実用新案第20-2010-0004331号公報
【文献】韓国公開特許第10-2015-0047812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前記した問題点を解決するために案出されたものであり、船舶が航海するときに船舶の進行方向に海水の流れを誘導して、船舶にぶつかる摩擦抵抗と共に波による造波抵抗を大きく減らし、速度向上と共に安定した航海及び燃料節減を具現することができる船舶の流体抵抗低減装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した目的を達成するために本発明は、推進プロペラを船尾に備えた船舶の船体外底部に、船体の形状に沿って囲んだ状態で、流体移送通路が形成されるように一定の間隔を置いて設置した変形V字またはU字形の流体流れ誘導板と、
船体の船首側に船舶の進行方向に突出して形成された前記流体流れ誘導板の流体流入口と、
船体の船尾側に形成された前記流体流れ誘導板の流体排出口と、
流体流入口と流体排出口を連結する流体移送通路とを、含む船舶の流体抵抗低減装置であって、
前記流体排出口は、流体流れ誘導板の内側に対向して付けられた弧形湾曲板によって、内径が縮小してから先端にいくほど流体流入口と同一の大きさに拡張される形状からなり、前記縮小した内径部に推進プロペラが設置されて、推進プロペラの回転力によって強制的に流入した海水が、先端にいくほど流体流入口と同一の大きさに拡張する流体排出口によって迅速な排出がなされるようにすることを特徴とする船舶の流体抵抗低減装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明によれば、船体の吃水線の下で流体抵抗低減装置が備えられて、船体に備えられる推進プロペラの回転作動により船首部分から海水を流入して船尾後方へ排出させながら進行できるようにすることにより、海水の摩擦抵抗及び造波抵抗を大きく低減させることができ、運航能力の向上はもちろんのこと速度向上及び燃料節減効果を具現することができるようにした効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例による船舶の流体抵抗低減装置及びこれを備えた船舶を示した例示斜視図である。
図2】本発明の一実施例による船舶の流体抵抗低減装置及びこれを備えた船舶を示した側面図である。
図3図2の「A-A」線断面図である。
図4】本発明の一実施例による船舶の流体抵抗低減装置及びこれを備えた船舶の概略的平面図である。
図5】本発明の一実施例による船舶の流体抵抗低減装置を備えた船舶の作動関係を示した概略的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付された図面を参照して本発明の船舶の流体抵抗低減装置をより詳しく説明することにする。
【0015】
これに先立ち、この明細書及び請求範囲に使用された用語や単語は、通常的や辞書的な意味で限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にのっとって、本発明の技術的思想に適する意味と概念として解釈されなければならない。
【0016】
したがって、この明細書に記載された一実施例と図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないため、本出願時点においてこれらは代替できる多様な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0017】
図1は本発明の一実施例による船舶の流体抵抗低減装置及びこれを備えた船舶を示した例示斜視図、図2は本発明の一実施例による船舶の流体抵抗低減装置及びこれを備えた船舶を示した側面図、図3図2の「A-A」線断面図、図4は本発明の一実施例による船舶の流体抵抗低減装置及びこれを備えた船舶の概略的平面図、図5は本発明の一実施例による船舶の流体抵抗低減装置を備えた船舶の作動関係を示した概略的側面図である。
【0018】
図1ないし図5に示されたように、本発明の船舶の流体抵抗低減装置は、船体10の外底部に一定の間隔を置いて船体10の形状に沿って囲んだ状態で設置した変形V字またはU字形の流体流れ誘導板50と、船体10の船首10a側に形成された前記流体流れ誘導板50の流体流入口51と、船体10の船尾10b側に形成された前記流体流れ誘導板50の流体排出口52と、流体流入口51と流体排出口52を連結する流体移送通路53、を含んでなる。
【0019】
前記流体流れ誘導板50は、船体10の長さに対応した長さからなり、流体流入口51と流体排出口52は、船舶100の運航時に海水を流入して排出するために形成されたもので、海水の抵抗を最小化しつつ流入量と排出量を高めるために、船首10a側の流体流入口51は船体10の幅に対応する幅で船舶の進行方向に突出して形成され、船尾10b側に形成され前記流体流入口51を介して流入した海水を後方へ排出するために形成される流体排出口52は、流体流れ誘導板50の内側に対向して付けられた弧形湾曲板52aによって内径が縮小してから先端にいくほど流体流入口51と同一の大きさに拡張する形状からなる。
【0020】
一方、前記船体10を推進するために船尾10b側に備えられる推進プロペラ11が前記流体排出口52の内部に位置されるが、特に前記流体排出口52の弧形湾曲板52aの間の狭小な内径部に位置されて、推進プロペラの回転力によって海水を強制的に流入し排出するようになり、強制的に流入した海水は先端にいくほど流体流入口と同一の大きさに拡がる流体排出口によって迅速な排出がなされるようになる。
【0021】
したがって、前記推進プロペラは、狭小な内径部に近接する状態で設置されることが好ましい。
【0022】
また、前記流体移送通路53は、前記流体流入口51から流入した海水を前記流体排出口52へ案内して排出されるようにするために内部に形成される移送管路であって、水中に浸っている船体10の底部全体にわたって形成される。
【0023】
このように、流体流れ誘導板50によって形成された流体流入口51、流体排出口52及び流体移送通路53は、船舶100の運航時に流体が流入し流出する一種の流体移送管路であって、一の字形に形成されることが好ましく、ノズルあるいはダクトと命名され得ることは自明であり、その表現がどうであれ、あるいは形態がどうであれ、抵抗を起こす流体を船首10a側から流入し船尾10b側後方へ排出するように構成されるものである。
【0024】
一方、前記流体流入口51、流体排出口52及び流体移送通路53からなった流体流れ誘導板50は、水中に浸る限界線である吃水線12の下に、図2に示すように、船側10c面と船底10dを囲む変形V字またはU字形で形成される。
【0025】
以下、本発明の船舶100の流体抵抗低減装置が備えられた船舶100の運航による作動関係について説明すれば、次のとおりである。
【0026】
図5は本発明の好ましい一実施例による船舶100の流体抵抗低減装置を備えた船舶100の作動関係を示す概略的側面図であり、図面を参照すると、船体10の吃水線12の下は水中に浸っており、本発明の流体流れ誘導板50からなった流体抵抗低減装置もまた水中に浸っている。この状態で船体10を前進させるために推進プロペラ11を回転作動させると、本発明の流体流れ誘導板50を介して、船体10の船首10a側で海水が、進行方向に突出した流体流入口51から流入して船尾10b側の流体排出口52へ排出される過程で、船首10aにぶつかって抵抗を起こす流体が船尾10b側へ排出されることにより流体の抵抗が低減されるのである。
【0027】
つまり、流体抵抗低減装置の流体排出口52の内部に備えられた推進プロペラ11が回転作動して運航をするようになると、船首10a側前方の海水が流体流れ誘導板50の進行方向に突出した流体流入口51を介して流入した後、流体移送通路53を経て流体排出口52を介して船尾10b後方へ強制排出される効果を具現することができ、船体10の進行方向に伴う流体の抵抗を大きく低減させるようになる。
【0028】
特に、流体流れ誘導板50の船首10a側に形成された流体流入口51は、船体10の幅に対応する幅に、広くかつ船舶の進行方向に突出して形成され、船舶100の進行時に船首10aにぶつかる流体が船体に抵抗として作用する前に、全て収容されて流体移送通路53を介して流体排出口52へ排出されるため、摩擦抵抗と造波抵抗を減殺させることができるのである。
【0029】
また、前記流体流れ誘導板50が船体10の吃水線12の下で船側10c面と船底10dを囲む形態を取ることにより、流体流れ誘導板50の流体移送通路53の内部に保存される海水は、船体10のバラスト水の役割を果たすことができ、運航においてさらに安定感を持たせることができる効果も得ることができる。
【0030】
結論として、船体10の吃水線12の下に流体流れ誘導板50で構成された流体抵抗低減装置が備えられ、船体10に備えられる推進プロペラ11の回転作動を用いて、船首10a部分から海水を流入して船尾10b後方へ排出させながら進行できるようにすることにより、船体の進行に伴う流体の押寄せが最小化され、加速によって推進速度が流体排出量に近接するときは、船体の進行方向に位置した流体は、それ以上抵抗として作用するよりはスクリューが押し出す足場として作用し、流体の密度が船舶推進に有利に作用することによって、海水の摩擦抵抗及び造波抵抗を大きく低減させることができ、運航能力の向上はもちろんのこと速度向上及び燃料節減効果を具現することができる有用な発明である。
図1
図2
図3
図4
図5