(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】局所脂肪減少用気体発泡型ミセル
(51)【国際特許分類】
A61K 9/107 20060101AFI20240509BHJP
A61K 33/00 20060101ALI20240509BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20240509BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240509BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240509BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240509BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A61K9/107
A61K33/00
A61K38/08
A61K47/60
A61K47/64
A61P3/06
C07K7/06 ZNA
(21)【出願番号】P 2022543134
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 KR2020019197
(87)【国際公開番号】W WO2021145586
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0005470
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522244078
【氏名又は名称】スーパーノヴァ バイオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUPERNOVA BIO CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、グニョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チュン グ
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-510758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0280548(US,A1)
【文献】国際公開第2010/013836(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0359751(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P 3/06
C07K 7/06
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式2又は3で表現される化合物を含み、
前記化合物の加水分解によって発生した二酸化炭素により脂肪細胞が破壊されることを特徴とする、脂肪減少用気体発泡型ミセル:
化学式2
【化1】
化学式3
【化2】
ここで、化学式2~3において、pは12~227の整数であり、qは2~14の整数である。
【請求項2】
ミセルは、直径が150~500nmであることを特徴とする、請求項1に記載の脂肪減少用気体発泡型ミセル。
【請求項3】
前記化合物は、下記化学式2で表現される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の脂肪減少用気体発泡型ミセル。
化学式2
【化3】
【請求項4】
前記化合物は、下記化学式3で表現される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の脂肪減少用気体発泡型ミセル。
化学式3
【化4】
【請求項5】
ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)及びアルキルクロロホルメート(alkyl chloroformate)を混合して化学式4で表現される化合物であるポリエチレングリコール誘導体を合成する段階;
前記ポリエチレングリコール誘導体に脂肪細胞標的配列ペプチド及びarginine 9 ペプチドからなるグループから選択された一つ以上のペプチドを結合させてペプチドが結合されたポリエチレングリコール誘導体を合成する段階;及び 前記ポリエチレングリコール誘導体及び前記ペプチドが結合されたポリエチレングリコール誘導体をアセトニトリル、メチレンクロリド、クロロホルム及びメタノールから選択される1種又は2種以上の混合溶媒に溶解させた後に溶媒を蒸発させてミセルを合成する段階;を含む下記化学式2~3で表現される化合物を含むことを特徴とする、脂肪減少用気体発泡型ミセルの製造方法。
化学式4
【化5】
化学式2
【化6】
化学式3
【化7】
前記化学式2、3又は4で、
R
1は、水素、C1~5のアルキル基、アミン基、C1~5のアルキルアミン基、カルボキシル基又はC1~5のアルキルカルボキシル基であり、
pは、12~227の整数であり、
qは、2~14の整数で
ある。
【請求項6】
混合溶媒は、メチレンクロリドとアセトニトリルの混合溶媒であり、混合割合は、3~1:1~3であることを特徴とする、請求項5に記載の気体発泡型ミセルの製造方法。
【請求項7】
ポリエチレングリコールの分子量(Mn)は、550~10000であることを特徴とする、請求項5に記載の気体発泡型ミセルの製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の脂肪減少用気体発泡型ミセルを含むことを特徴とする、脂肪減少用組成物。
【請求項9】
脂肪減少用組成物は、下記化学式2で表現される化合物及び下記化学式3で表現される化合物からなるグループから選択された一つ以上の化合物;及び下記化学式4で表現される化合物を含む気体発泡型ミセルを含むことを特徴とする、請求項8に記載の脂肪減少用組成物:
化学式2
【化8】
化学式3
【化9】
【化10】
前記化学式2~4で、
R
1は、水素、C1~3のアルキル基、アミン基、C1~3のアルキルアミン基、カルボキシル基又はC1~3のアルキルカルボキシル基であり、
pは、12~227の整数であり、
qは、2~14の整数である。
【請求項10】
脂肪減少用組成物が化学式2で表現される化合物及び化学式4で表現される化合物を含む気体発泡型ミセルを含む場合、化学式2で表現される化合物及び化学式4で表現される化合物のモル比は、99.5:0.5~95.0:5.0であり、
脂肪減少用組成物が化学式3で表現される化合物及び化学式4で表現される化合物を含む気体発泡型ミセルを含む場合、化学式3で表現される化合物及び化学式4で表現される化合物のモル比は、99.5:0.5~95.0:5.0であり、
脂肪減少用組成物が化学式2で表現される化合物、化学式3で表現される化合物及び化学式4で表現される化合物を含む気体発泡型ミセルを含む場合、化学式2で表現される化合物、化学式3で表現される化合物及び化学式4で表現される化合物のモル比は、99:0.5:0.5~90.0:5.0:5.0であることを特徴とする、請求項9に記載の脂肪減少用組成物。
【請求項11】
局所又は静脈注射用として用いられることを特徴とする、請求項8に記載の脂肪減少用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所脂肪減少用気体発泡型ミセルに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の表皮と陳皮の下に存在する皮下脂肪の減少は、美容処理において最も重要な分野のうち一つであり、このような美容処理の目的のために多様な施術方法が用いられている。
【0003】
皮下脂肪の減少のための施術としては、皮下脂肪にカニューレ(cannula)を挿入して脂肪を吸引する脂肪吸引術、冷却パッドを皮膚表面に付着して皮下脂肪を冷却壊死させる冷凍施術、高周波又は超音波を皮下脂肪組織に照射して加熱により皮下脂肪を除去する熱的加熱施術、二酸化炭素(CO2)を注射針で皮下脂肪にゆっくり注入して脂肪組織の血流循環及びリンパ循環を促進することによって脂肪を除去するカーボキシセラピー(Carboxytherapy)施術、皮下脂肪に肥満治療用薬物を注入するメソセラピー(Mesotherapy)施術などがある。
【0004】
施術のうち最も効果が高いことが知られている脂肪吸引術は、施術時に伴う苦痛及びその後の管理において短所を有する。代表的に、脂肪吸引時に出血があり、施術時に痛症を伴う。これは、施術以後にも痛症を誘発して個々人によって鎮痛剤を服用しなければならない場合も生ずることになる。これと共に、吸引手術以後に圧迫服を一週以上着用しなければならず、施術後一ヶ月程度の管理を必要とする。
【0005】
また、冷凍施術は、施術が簡便であるが、施術効果が低いという短所を有する。大韓民国公開特許第10-2011-0119640号では、冷媒を内部に循環させて冷却されるプローブを皮下脂肪に挿入する侵襲的施術を用いた。しかし、侵襲的冷却施術を用いる場合、施術時間が非侵襲的冷却施術より短縮されるが、冷却による皮下脂肪の壊死を防止するために相当に長い施術時間を要するという短所を有する。
【0006】
一方、カーボキシセラピーは、脂肪が過度に蓄積された部位を集中的に治療する施術であって、大韓民国登録特許第10-0772961では、メソセラピー施術とカーボキシセラピー施術を全て実行して脂肪除去効率を高めた。しかし、前記特許は、各施術に対して別途の注射器針を用いているため、内部構造が複雑であり且つそれぞれの針により別途の切開部分が生ずるという短所を有する。
【0007】
現在、食品医薬品安全処の許可が完了した局所脂肪分解補完剤は、用途が非常に限定的であり、現在市中では、オフラベル施術が頻繁に施行されているのが実情である。このようなオフラベル施術は、安全性及び有効性に対する根拠が不足しており、非給与領域であるので、安全使用管理の死角地帯に置かれており、制度的な管理が不足している。
【0008】
脂肪分解補完剤として許可を受けた薬物で局所脂肪細胞の細胞膜を破壊することによって脂肪細胞を死滅させるベルカイラがある。しかし、ベルカイラは、二重顎施術にのみ限定的に利用可能であるという短所を有する。また、このような薬物は、非特異的に細胞膜を破壊するので、脂肪細胞だけでなく周辺細胞に対する影響が大きいため、周辺組織に副作用を及ぼし得るので、現在、乳房癌又は大膓癌の危険性が増加すると報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するために、注射可能な製剤で製作が可能であり、局所脂肪を分解する局所脂肪分解補完剤又はダイエット美容製品を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記化学式1で表現される化合物を含み、
【0011】
前記化合物の加水分解によって発生した二酸化炭素により脂肪細胞が破壊される脂肪減少用気体発泡型ミセルを提供する。
【0012】
【0013】
前記化学式1で、
【0014】
pは、12~227の整数であり、
【0015】
qは、2~14の整数であり、
【0016】
nは、0~5の整数であり、
【0017】
Lは、脂肪細胞標的配列(ATS)ペプチド又はR9(arginine)ペプチドである。
【0018】
また、本発明は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)及びアルキルクロロホルメート(alkyl chloroformate)を混合して化学式4で表現される化合物であるポリエチレングリコール誘導体を合成する段階;
【0019】
前記ポリエチレングリコール誘導体に脂肪細胞標的配列(ATS)ペプチド及びr9(arginine)ペプチドからなるグループから選択された一つ以上のペプチドを結合させてペプチドが結合されたポリエチレングリコール誘導体を合成する段階;及び
【0020】
前記ポリエチレングリコール誘導体及び前記ペプチドが結合されたポリエチレングリコール誘導体をアセトニトリル、メチレンクロリド、クロロホルム及びメタノールから選択される1種又は2種以上の混合溶媒に溶解させた後に溶媒を蒸発させてミセルを合成する段階;を含む
【0021】
下記化学式1で表現される化合物を含む脂肪減少用気体発泡型ミセルの製造方法を提供する。
【0022】
【0023】
【0024】
前記化学式1又は4で、
【0025】
R1は、水素、C1~5のアルキル基、アミン基、C1~5のアルキルアミン基、カルボキシル基又はC1~5のアルキルカルボキシル基であり、
【0026】
pは、12~227の整数であり、
【0027】
qは、2~14の整数であり、
【0028】
nは、0~3の整数であり、
【0029】
Lは、脂肪細胞標的配列(ATS)ペプチド又はR9(arginine)ペプチドである。
【0030】
また、本発明は、上述した脂肪減少用気体発泡型ミセルを含む脂肪減少用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明による脂肪減少用気体発泡型ミセルは、局所投与されて脂肪細胞部位に沈積されて二酸化炭素を発生させることによって脂肪細胞の死滅を通じて脂肪を分解させ得る。特に、本発明では、リガンド(ペプチド)を用いて脂肪細胞への標的が可能なので、周辺組織及び細胞に対する影響を最小化し得、これを通じて薬物に対する副作用を最小化し得、より安全な施術が可能な製品の開発が可能である。前記ミセルは、一般的に施術頻度が高い顎、太もも、腕、腹部などの部位に適用が可能である。
【0032】
また、本発明による脂肪減少用気体発泡型ミセルは、注射可能な製剤で製作可能であり、ダイエット美容分野及び肥満治療剤分野に適用されて局所脂肪の死滅を通じて局所脂肪を分解する局所脂肪分解補完剤、体形矯正剤又はダイエット美容製品などで用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の一例による気体発泡型ミセルの脂肪細胞への蓄積及び気体発泡を通じた脂肪減少を示す模式図である。
【0034】
【
図2】
図2は、ポリエチレングリコールアルキルカーボネートとペプチドの結合を示す模式図である。
【0035】
【
図3】
図3は、本発明の一例による気体発泡型ミセルの製造工程を示す模式図である。
【0036】
【
図4】
図4は、本発明の一例によって製造されたミセルから発生した気泡(気体)の写真である。
【0037】
【
図5】
図5は、FT-IRを用いて本発明の一例によって製造されたポリエチレングリコールアルキルカーボネートを分析したグラフである。
【0038】
【
図6】
図6は、FT-IRを用いて本発明の一例によって製造されたペプチドが導入されたポリエチレングリコールアルキルカーボネートを分析したグラフである。
【0039】
【
図7】
図7は、本発明の一例によって製造されたペプチドが導入されたポリエチレングリコールアルキルカーボネートの気体発生をNMRで確認した結果を示すグラフである。
【0040】
【
図8】
図8は、本発明の一例によって製造されたポリエチレングリコールアルキルカーボネートの気体発生速度を測定した結果を示す写真である。
【0041】
【
図9】
図9は、本発明の一例によって製造されたポリエチレングリコールアルキルカーボネートからの気体発生を測定した光学顕微鏡イメージである。
【0042】
【
図10】
図10は、本発明の一例によって製造されたポリエチレングリコールアルキルカーボネートの細胞毒性の評価結果を示すグラフである。
【0043】
【
図11】
図11は、ペプチドの導入量による本発明の一例によって製造された気体発泡型ミセルの脂肪細胞死滅効果の評価結果を示すグラフである。
【0044】
【
図12】
図12は、ミセル濃度及びペプチド組み合わせによる脂肪細胞死滅効果の評価結果を示すグラフである。
【0045】
【
図13】
図13は、本発明の一例によって製造された気体発泡型ミセルの脂肪細胞以外での細胞死滅効果の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明は、下記化学式1で表現される化合物を含み、前記化合物の加水分解によって発生した二酸化炭素により脂肪細胞が破壊される脂肪減少用気体発泡型ミセルに関する。
【0047】
【0048】
本発明では、生体親和性が高い材料を用いてミセルを形成し、また、ミセルの表面にペプチド、すなわち、細胞標的リガンドを導入することによって脂肪細胞以外の周辺細胞及び組織への伝達を最小化し、脂肪細胞内への伝達を最大化することができる。これを通じて、既存製品の副作用を最小化した脂肪分解補完剤として利用が可能である。また、人体に無害な気体(例:二酸化炭素)を用いて細胞打撃を誘導するので、他の化学薬品製剤に比べて安全性を改善させ得る。
【0049】
以下、本発明の脂肪減少用気体発泡型ミセルをより詳しく説明する。
【0050】
本発明の脂肪減少用気体発泡型ミセル(以下、気体発泡型ミセル又はミセルと表現)は、下記化学式1で表現される化合物(以下、化学式1の化合物と表現)を含む。
【0051】
【0052】
前記化学式1で、
【0053】
pは、12~227の整数であり、
【0054】
qは、2~14の整数であり、
【0055】
nは、0~5の整数であり、
【0056】
Lは、脂肪細胞標的配列(ATS)ペプチド又はr9(arginine)ペプチドである。
【0057】
一具体例で、qは、4~10の整数、4~8の整数、6~10の整数又は8~10の整数であってもよく、nは、1~3の整数であってもよい。
【0058】
一具体例で、前記化学式1の化合物の分子量は、550~10,000Da(g/mol)、1,000~10,000Da、2,000~6,000Da、1,500~3,000Da、2,000~2,500Da、4,500~6,000Da又は5,000~5,500Daであってもよい。
【0059】
一具体例で、前記ミセルの直径は、150~500nm又は200~400nmであってもよい。直径が小さければ目的とする脂肪細胞の死滅効果が得られず、過度に大きければ体内注入用として適用することが不適切であるので、直径を前記範囲に調節した方が良い。
【0060】
本発明で用語「ミセル(micelle)」は、一般的に両親性、例えば、親水性基と疎水性基を同時に有する低分子量の物質が成す球形構造の化合物を意味する。前記ミセルは、熱力学的に安定した特性を有する。前記ミセル構造を有する化合物に非水溶性(疎水性)薬物を溶かして投入する場合、前記薬物はミセル内部に存在するようになる。
【0061】
本発明のミセルは、アルキルクロロホルメートがポリエチレングリコールのヒドロキシ基とコンジュゲートされてカーボネート基が形成された化合物を含む。本発明では、以下前記化合物を「誘導体」と表現し得る。
【0062】
具体的に、前記ミセルは、疎水性コア(core)に存在するアルキルクロロホルメートと表面(又は、シェル、shell)に位置する親水性ポリエチレングリコールの間のカーボネート結合を有する。したがって、誘導体でアルキルクロロホルメート部分はミセルの内部に位置し、ポリエチレングリコール部分は表面に位置している形態を有する。
【0063】
また、本発明のミセルは、前記ミセルの表面にペプチドが結合された構造を有する。前記ペプチドは、標的指向リガンドであって、脂肪細胞標的配列(ATS)ペプチド及びr9(arginine)ペプチドのうちから選択された一つ以上のペプチドであってもよい。前記ペプチドは、ミセルの表面に存在するポリエチレングリコールの末端部位に結合して強い結合を形成し得るが、一具体例で、ペプチドのカルボキシル基とポリエチレングリコールの末端のアミン基が結合を形成し得る。ペプチドの特性によって、本発明のミセルは標的指向性を有することができる。本発明で用語「リガンド(ligand)」は、リガンド結合タンパク質に結合して構造的な変化を起こす分子を意味する。前記リガンドは、脂肪細胞標的配列(ATS)ペプチド及びr9(arginine)ペプチドのうちから選択された一つ以上であってもよい。前記脂肪細胞標的配列(ATS)ペプチドを通じて脂肪細胞、特に、白色脂肪に対する標的率を向上させ得、r9(arginine)ペプチドを通じて細胞透過率を向上させ得る。
【0064】
一具体例で、本発明のミセルに含まれる化学式1の化合物は、下記化学式2で表現される化合物(以下、化学式2の化合物と表現)であってもよい。また、化学式1の化合物は、下記化学式3で表現される化合物(以下、化学式3の化合物と表現)であってもよい。前記化学式2の化合物は、脂肪細胞標的配列(ATS)ペプチドが結合された化合物であり、化学式3の化合物は、r9(arginine)ペプチドが結合された化合物である。
【0065】
【0066】
【0067】
前記化学式2及び3で、p及びqは、化学式1のp及びqと同じであってもよい。
【0068】
一具体例で、ミセルは、化学式1で表現される化合物以外に化学式4で表現される化合物(以下、化学式4の化合物)を追加で含むことができる。
【0069】
【0070】
前記化学式4で、R1は、水素、C1~5のアルキル基、アミン基、C1~5のアルキルアミン基、カルボキシル基又はC1~5のアルキルカルボキシル基であってもよく、p及びqは、化学式1のp及びqと同じであってもよい。
【0071】
また、本発明は、上述した脂肪減少用気体発泡型ミセルの製造方法に関する。
【0072】
本発明による脂肪減少用気体発泡型ミセルは、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)及びアルキルクロロホルメート(alkyl chloroformate)を混合して化学式4で表現される化合物であるポリエチレングリコール誘導体を合成する段階;
【0073】
前記ポリエチレングリコール誘導体に脂肪細胞標的配列(ATS)ペプチド及びr9(arginine)ペプチドからなるグループから選択された一つ以上のペプチドを結合させてペプチドが結合されたポリエチレングリコール誘導体を合成する段階;及び
【0074】
前記ポリエチレングリコール誘導体及び前記ペプチドが結合されたポリエチレングリコール誘導体をアセトニトリル、メチレンクロリド、クロロホルム及びメタノールから選択される1種又は2種以上の混合溶媒に溶解させた後、溶媒を蒸発させてミセルを合成する段階を通じて製造され得る。
【0075】
【0076】
【0077】
前記化学式1又は4で、
【0078】
R1は、水素、C1~5のアルキル基、アミン基、C1~5のアルキルアミン基、カルボキシル基又はC1~5のアルキルカルボキシル基であり、
【0079】
pは、12~227の整数であり、
【0080】
qは、2~14の整数であり、
【0081】
nは、0~5の整数であり、
【0082】
Lは、脂肪細胞標的配列(ATS)ペプチド又はR9(arginine)ペプチドである。
【0083】
一具体例で、前記化合物のqは、4~10の整数、4~8の整数、6~10の整数又は8~10の整数であってもよく、nは、1~3の整数であってもよい。
【0084】
以下、本発明の気体発泡型ミセルの製造方法を詳しく説明する(
図2及び
図3)。
【0085】
1.ポリエチレングリコール誘導体の合成
【0086】
ミセルを製造する前に、ミセルを成すためのポリエチレングリコール誘導体を先に製造する。
【0087】
まず、ポリエチレングリコールとアルキルクロロホルメートそれぞれをアセトニトリルに溶解させてポリエチレングリコール溶液及びアルキルクロロホルメート溶液を準備する。準備されたポリエチレングリコール溶液にアルキルクロロホルメート溶液を添加した後に撹拌する。前記撹拌が完了した混合物にピリジンを添加した後に反応させてポリエチレングリコール-アルキルカーボネートを製造する。
【0088】
一具体例で、ポリエチレングリコールは、これに制限されるものではないが、分子量が550~10,000Da(g/mol)、1,000~10,000Da、2,000~6,000Da、1,500~3,000Da、2,000~2,500Da、4,500~6,000Da又は5,000~5,500Daであってもよい。
【0089】
一具体例で、アルキルクロロホルメートは、脂肪族化合物であってもよく、炭素数4~10、炭素数4~8、炭素数6~10又は炭素数8~10のアルキル基を有するクロロホルメートであってもよい。例えば、アルキルクロロホルメートとしてブチルクロロホルメート、オクチルクロロホルメート又はドデシルクロロホルメートが用いられ得るが、これに制限されるものではない。
【0090】
一具体例で、ポリエチレングリコール溶液は、ポリエチレングリコール0.2~0.8mmolをアセトニトリル2~6mlに溶解させて準備され得、アルキルクロロホルメート溶液は、アルキルクロロホルメート1~3mmolをアセトニトリル3~7mlに溶解させて準備され得る。
【0091】
一具体例で、ポリエチレングリコール溶液にアルキルクロロホルメート溶液を添加した後、2~10分、3~8分、4~6分又は5分間撹拌を行うことができる。
【0092】
一具体例で、前記撹拌時に窒素ガスを流すことができる。反応物は、大気中の水分に脆弱なので、本発明では反応性が低い窒素ガスを流すことで反応が安定的に行われるように誘導することができる。
【0093】
一具体例で、前記撹拌が完了した混合物にピリジン1.5~3.5mmolを添加した後、0~5℃で20~40分間反応させた後、常温で24時間反応させてポリエチレングリコール誘導体を製造することができる。
【0094】
このようなポリエチレングリコール誘導体は、ポリエチレングリコール-アルキルカーボネートである。
【0095】
ポリエチレングリコール誘導体の合成は、FT-IR分光法及びNMR分析を通じて確認することができる。
【0096】
2.ペプチドが導入されたポリエチレングリコール誘導体の合成
【0097】
前記1で製造されたポリエチレングリコール誘導体にペプチドを導入して脂肪細胞への標的指向性を向上させ得る。
【0098】
アミノ基を有する化合物とペプチドをEDC/NHS反応させてペプチドが結合されたポリエチレングリコールを製造する。
【0099】
一具体例で、アミノ基を有する化合物は、アミノエチレングリコール(aminoethylene glycol)であってもよく、ペプチドは、脂肪細胞標的配列(ATS)ペプチド及びr9(arginine)ペプチドからなるグループから選択された一つ以上であってもよい。
【0100】
一具体例で、アミノ基を有する化合物とペプチドのモル比は、1:0.1~1:10、又は1:0.5~1:3であってもよく、EDC/NHS反応を通じてペプチドが結合されたポリエチレングリコール誘導体を製造することができる。
【0101】
一具体例で、ペプチドが結合されたポリエチレングリコールを製造した後に透析し、フィルターを通じて不純物及び未反応物質を除去することができる。
【0102】
ペプチドが結合されたポリエチレングリコール誘導体の合成は、FT-IR分光法及びNMR分析を通じて確認することができる。
【0103】
3.溶媒蒸発法を用いたミセル粒子の製造
【0104】
前記1で製造されたポリエチレングリコール誘導体及び前記2で製造されたペプチドが導入されたポリエチレングリコール誘導体は、溶媒蒸発法を通じてミセルに製造し得る。
【0105】
具体的に、ポリエチレングリコール誘導体及びペプチドが導入されたポリエチレングリコール誘導体を有機溶媒に溶かし、溶媒を揮発させる溶媒蒸発法を行った後、親水性溶液に再分散させてミセルを製造することができる。
【0106】
一具体例で、前記段階では、化学式2の化合物である脂肪細胞標的配列(ATS)ペプチドが導入されたポリエチレングリコール誘導体及び化学式3の化合物であるr9(arginine)ペプチドが導入されたポリエチレングリコール誘導体からなるグループから選択された一つ以上の誘導体と化学式4の化合物であるポリエチレングリコール誘導体を用いてミセルを形成することができる。
【0107】
一具体例で、化学式2の化合物及び化学式4の化合物を用いてミセルを製造する場合、化学式2の化合物及び化学式4の化合物のモル比は、99.5:0.5~95.0:5.0、99.5:0.5~96.0:4.0、99.0:1.0~97.0:3.0又は99.0:1.0~98.0:2.0であってもよい。
【0108】
一具体例で、化学式3の化合物及び化学式4の化合物を用いてミセルを製造する場合、化学式3の化合物及び化学式4の化合物のモル比は、99.5:0.5~95.0:5.0、99.5:0.5~96.0:4.0、99.0:1.0~97.0:3.0又は99.0:1.0~98.0:2.0であってもよい。
【0109】
また、一具体例で、化学式2の化合物、化学式3の化合物及び化学式4の化合物を用いてミセルを製造する場合、化学式2の化合物、化学式3の化合物及び化学式4の化合物のモル比は、99:0.5:0.5~90.0:5.0:5.0、99:0.5:0.5~97.0:1.5:1.5又は99.0:0.5:0.5~98.0:1.0:1.0であってもよい。
【0110】
一具体例で、ポリエチレングリコール誘導体及びペプチドが導入されたポリエチレングリコール誘導体5~15mgを有機溶媒に溶かすことができる。前記有機溶媒は、通常的に用いられる有機溶媒であってもよく、例えば、アセトニトリル、メチレンクロリド、クロロホルム及びメタノールであってもよい。
【0111】
また、有機溶媒は、メチレンクロリド及びアセトニトリルの混合溶媒、メチレンクロリド及びクロロホルムの混合溶媒、メチレンクロリド及びメタノールの混合溶媒であってもよい。
【0112】
本発明で用いられる混合溶媒は、メチレンクロリドと他溶媒の割合が3~1:1~3であってもよい。
【0113】
一具体例で、ポリエチレングリコール誘導体及びペプチドが導入されたポリエチレングリコール誘導体を有機溶媒に溶かした後、濃縮機を用いて真空中で100~300rpm、150~200rpm又は180rpm、25~45℃、30~40℃又は37℃で約5~10分の間ガラス壁面にコーティングを進行することができる。本発明では、濃縮機を用いてコーティングを進行することによって、ガラス壁面にコーティングが均一に行われるように誘導することができる。窒素を用いた溶媒蒸発法の場合、手作業を通じて溶媒を蒸発させるので、回転速度及び回転角度を一定に調節するための追加の努力が必要であるが、本発明では濃縮機を用いてコーティングを行うことによって継続的で且つ均一なコーティングが可能であるという長所を有する。
【0114】
また、一具体例で、親水性溶液は、PBS及び蒸溜水を含むことができる。
【0115】
また、本発明は、上述した脂肪減少用気体発泡型ミセルを含む脂肪減少用組成物に関する。
【0116】
本発明による脂肪減少用気体発泡型ミセルは、その構造内にカーボネート基を含み、水溶性条件で前記ミセルのカーボネート基は、加水分解により切断されながら二酸化炭素気体を生成する反応を起こすことになる。したがって、本発明の脂肪減少用気体発泡型ミセルは、ナノ粒子の形態で局所投与されて脂肪細胞に沈積されて気体が発生する。前記発生された二酸化炭素による細胞打撃を通じて脂肪細胞の壊死が起こり、これを通じて脂肪を減少させ得る(
図1)。
【0117】
前記細胞打撃は、気体発泡型ミセルの構造を調節して生成される二酸化炭素の発生量と発生時間を調節して、前記ミセルが細胞内へ移入された後に発生させ得る。
【0118】
本発明による脂肪減少用組成物は、上述した化学式1の化合物を含むことができる。
【0119】
また、本発明による脂肪減少用組成物は、下記化学式2の化合物及び下記化学式3の化合物からなるグループから選択された一つ以上の化合物、及び下記化学式4の化合物を含む気体発泡型ミセルを含むことができる。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
前記化学式2~4で、
【0124】
R1は、水素、C1~3のアルキル基、アミン基、C1~3のアルキルアミン基、カルボキシル基又はC1~3のアルキルカルボキシル基であり、
【0125】
P及びqは、化学式1の化合物でのp及びqと同じであってもよい。
【0126】
一具体例で、脂肪減少用組成物が化学式2の化合物及び化学式4の化合物を含む気体発泡型ミセルを含む場合、化学式2の化合物及び化学式4の化合物のモル比は、99.5:0.5~95.0:5.0、99.5:0.5~96.0:4.0、99.0:1.0~97.0:3.0又は99.0:1.0~98.0:2.0であってもよい。
【0127】
一具体例で、脂肪減少用組成物が化学式3の化合物及び化学式4の化合物を含む気体発泡型ミセルを含む場合、化学式3の化合物及び化学式4の化合物のモル比は、99.5:0.5~95.0:5.0、99.5:0.5~96.0:4.0、99.0:1.0~97.0:3.0又は99.0:1.0~98.0:2.0であってもよい。
【0128】
また、一具体例で、脂肪減少用組成物が化学式2の化合物、化学式3の化合物及び化学式4の化合物を含む気体発泡型ミセルを含む場合、化学式2の化合物、化学式3の化合物及び化学式4の化合物のモル比は、99:0.5:0.5~90.0:5.0:5.0、99:0.5:0.5~97.0:1.5:1.5又は99.0:0.5:0.5~98.0:1.0:1.0であってもよい。
【0129】
一具体例で、脂肪減少用組成物で気体発泡型ミセルの含量は、適用部位などによって変わることができ、例えば、組成物の全体重量に対して0.01~1.0重量部又は0.1~0.5重量部であってもよい。
【0130】
一具体例で、本発明による脂肪減少用組成物は、局所又は静脈注射用で用いられ得、一般的に施術頻度が高い顎、太もも、腕、腹部などの部位に適用が可能である。
【0131】
一具体例で、本発明による脂肪減少用組成物は、局所脂肪分解補完剤、体形矯正剤又はダイエット美容製品などで用いられ得る。
【0132】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれら実施例によって制限されないということは、当業界で通常の知識を有した者においては自明である。
【0133】
<発明の実施のための形態>
【0134】
実施例
【0135】
<参考>実験材料
【0136】
ポリエチレングリコールは、Sigma Aldrichから購入して用いた。使用可能なポリエチレングリコールの数平均分子量(Mn)は、550~20,000であり、このうち、数平均分子量が5,000であるポリエチレングリコールが気体発泡型ミセルの製造に好ましいため、これを本実験に用いた。
【0137】
アルキルクロロホルメートとして鎖状脂肪族化合物であるオクチルクロロホルメート(Sigma Aldrich)を用いた。
【0138】
実施例1.気体発泡型ミセルの製造
【0139】
(1)ポリエチレングリコール誘導体の合成
【0140】
ポリエチレングリコールとアルキルクロロホルメートをアセトニトリルにそれぞれ溶解させた。具体的に、ポリエチレングリコール0.5mmolをアセトニトリル4mlに溶解させてポリエチレングリコール溶液を準備し、アルキルクロロホルメート2mmolをアセトニトリル5mlに添加してアルキルクロロホルメート溶液を準備した。
【0141】
準備されたポリエチレングリコール溶液にアルキルクロロホルメート溶液を添加した後、5分間撹拌した。前記撹拌時に反応性が低い窒素ガスを流した。前記撹拌が完了した混合物にピリジン2.5mmolを添加した後、0℃で30分間反応させた。反応が完了した後、常温で24時間撹拌して合成を完了した。
【0142】
前記合成が完了した溶液をジエチルエーテルに沈澱させた後、フィルターを通じて濾過した後、真空乾燥器で3~7日間乾燥させて合成高分子であるポリエチレングリコール誘導体、すなわち、ポリエチレングリコール-アルキルカーボネートを収得した。
【0143】
ポリエチレングリコールの数平均分子量及びアルキルクロロホルメートのアルキルの種類によって異なる種類のポリエチレングリコール誘導体、すなわち、ポリエチレングリコール-アルキルカーボネートが製造され得る。例えば、ポリエチレングリコールの数平均分子量が5000であり、オクチルクロロホルメートを用いる場合、ポリエチレングリコール5000-オクチルカーボネートが製造され、これは、PEG 5000-octylcarbonateであると表現できる。
【0144】
図4は、PEG
5000-octylcarbonateから気体発泡を顕微鏡で確認した結果を示す。前記
図4に示したように、誘導体粉末をDWに入れると、気泡が観察されることが確認できる。
【0145】
(2)ポリエチレングリコール誘導体にペプチド(リガンド)導入
【0146】
ポリエチレングリコール誘導体にペプチドの導入は、下記のように行った。
【0147】
まず、アミノ基を有するアミノポリエチレングリコール誘導体とペプチドをモル比1:1の割合でEDC/NHS反応させてペプチドが結合されたポリエチレングリコール誘導体を製造した。その後、4日間透析し、フィルターを通じて不純物及び未反応物質を除去した後、凍結乾燥を行った。
【0148】
本発明では、ペプチドの種類によって、ペプチドとして脂肪細胞標的配列(ATS)ペプチドを用いる場合、ATS-PEG 5000-octylcarbonateと表現できる。前記誘導体は、ポリエチレングリコールの数平均分子量が5000であり、オクチルクロロホルメートを用いる。
【0149】
(3)溶媒蒸発法を用いたミセル粒子の製造
【0150】
ミセルは、メチレンクロリド及びアセトニトリルを2:1の割合で含む混合溶媒を用いた溶媒蒸発法で製造した。
【0151】
上述した(1)で製造されたポリエチレングリコール誘導体及び/又は(2)で製造されたペプチドが導入されたポリエチレングリコール誘導体を混合溶媒に溶かした後、濃縮機(N-1300)を用いて真空中で180rpm、37℃で約5~10分間ガラス壁面にコーティングを進行し、ガラス表面に誘導体粒子がコーティングされた(溶媒蒸発)。
【0152】
溶媒の蒸発後、親水性溶液(PBS及び蒸溜水含み)を入れることで自己組織化が行われ、ミセルを製造した。
【0153】
本発明では、用いられた誘導体の構成によって4種類のミセル粒子を製造した。
【0154】
-ミセルA(Non):(1)で製造されたポリエチレングリコール誘導体で製造されたミセル
【0155】
-ミセルB(r9):r9ペプチドが導入されたポリエチレングリコール誘導体2重量%及びポリエチレングリコール誘導体98重量%で製造されたミセル
【0156】
-ミセルC(ATS):ATSペプチドが導入されたポリエチレングリコール誘導体2重量%及びポリエチレングリコール誘導体98重量%で製造されたミセル
【0157】
-ミセルD(ATS/r9):r9ペプチドが導入されたポリエチレングリコール誘導体1重量%、ATSペプチドが導入されたポリエチレングリコール誘導体1重量%及びポリエチレングリコール誘導体98重量%で製造されたミセル
【0158】
実験例1.ポリエチレングリコール誘導体合成の確認
【0159】
実施例1の(1)で製造されたポリエチレングリコール誘導体が合成されたか否かを確認した。これは、FT-IR分光器(Nicholet iS50、Thermo)を用いて確認した。
【0160】
ポリエチレングリコール-アルキルカーボネートのカーボネート結合の導入有無に対してFT-IR分光法を用いて分析した結果、波数(wave number)1742cm
-1と1653cm
-1でカーボネート連結グループ(C=0)を確認することで、ポリエチレングリコール-アルキルカーボネートにカーボネート結合が導入されたことを確認した(
図5)。
【0161】
実験例2.ポリエチレングリコール誘導体にペプチッド導入の確認
【0162】
実施例1の(2)で製造されたペプチドが結合されたポリエチレングリコール誘導体のペプチド導入有無を確認した。これは、FT-IR分光器(Nicholet iS50、Thermo)を用いて確認した。
【0163】
前記ペプチド導入有無に対してFT-IR分光法を用いて分析した結果、ペプチドが導入される場合、1次アミン(NH
2)ピックが1650~1580cm
-1で観察され、2次アミド(C=0)ピックが1680cm
-1及び1760cm
-1で観察されることが確認できる(
図6)。
【0164】
実験例3.ポリエチレングリコール誘導体を用いたミセルの性質分析
【0165】
実施例1の(3)で製造されたミセルA~Dの性質を分析した。
【0166】
その結果を下記表1に示した。
【0167】
【0168】
前記表1に示したように、ペプチドが導入された場合、導入されないミセル(ミセルA.Non)に比べてナノ粒子のサイズが大きくなることが確認できる。また、ペプチド導入によって表面電荷の上がることが確認できる。
【0169】
実験例4.ポリエチレングリコール誘導体の気体発生の確認
【0170】
実施例1の(1)で製造されたポリエチレングリコール誘導体での気体発生を確認した。これは、NMR分析を通じて確認した。具体的に、mPEG5000及びポリエチレングリコール誘導体のNMRを測定し、前記誘導体を水溶性溶液に保管した後、24時間後にNMRを再測定した。
【0171】
前記気体発生に対してNMRを用いて分析した結果、mPEG
5000のヒドロキシ基の信号(-OH score)が誘導体の合成後に消えることが確認でき、(4.56ppm)水溶性溶液に保管した後に再測定したとき、4.56ppm付近でヒドロキシ基の信号が再び回復されることが確認できる。これを通じて、誘導体での気体発生を確認することができる(
図7)。
【0172】
実施例5.ポリエチレングリコール誘導体の気体発生速度の確認
【0173】
実施例1の(1)で製造されたポリエチレングリコール誘導体での気体発生速度を確認した。これは、超音波器機(SONON 300L)を通じて確認した。具体的に、mPEG 2000-Butylcarbonate、mPEG 2000-Octylcarbonate、mPEG 5000-Butylcarbonate及びmPEG 5000-Octylcarbonateの4種類のポリエチレングリコール誘導体のN気体発生速度を確認した。
【0174】
前記気体発生速度に対して超音波器機を用いて分析した結果、ミセルを構成する誘導体の種類によって気体発生速度が異なり、mPEG
5000-Octylcarbonateで構成されたミセルが最も高い安定性を示すことが確認できる(
図8)。
【0175】
また、高い安定性を示すmPEG 5000-Octylcarbonateで構成されたミセルの気体発生を蛍光顕微鏡を用いて確認した。
【0176】
蛍光顕微鏡を用いて確認した結果、ミセルから気体が安定的に放出されることが確認できる(
図9)。
【0177】
実験例6.ポリエチレングリコール誘導体の細胞毒性の分析
【0178】
ポリエチレングリコール誘導体の細胞毒性を分析した。これは、MTS assay方式によって行った。
【0179】
3T3-l1細胞を96-wellプレートに2×103 cell/plateで培養あるいは分化させ、ミセルの濃度を0.5mg/ml~5mg/mlで処理した。その後、37℃、5%CO2下で24時間の間培養した。培養された細胞をPBSを用いて1回洗浄し、MTS溶液を1時間処理した後、UV/VIS分光器を通じて490nmで吸光度分析を進行して細胞毒性を確認した。
【0180】
【0181】
前記
図10に示したように、本発明の実施例1の(1)で製造されたポリエチレングリコール-アルキルカーボネート(mPEG
5000-Octylcarbonate)を脂肪細胞の分化前と分化後の細胞に処理した結果、毒性がほとんどないことが確認できる。
【0182】
実験例7.ペプチドが導入されたミセルの脂肪細胞死滅能の分析
【0183】
ペプチド(r9ペプチド又はATSペプチド)が導入されたポリエチレングリコール誘導体を用いて製造されたミセルに対してペプチドの濃度による脂肪細胞死滅能を分析した。このとき、ペプチドの導入量は、全体誘導体重量(重さ)に対して0%~4%とした。
【0184】
前記死滅能は、MTS assay方式によって行った。
【0185】
3T3-l1細胞を96-wellプレートに2×103 cell/plateで分注した後、2~3週間分化を進行した。その後、誘導体の濃度は0.2wt%として処理し、24時間後にPBSを用いて1回洗浄した。MTS溶液で処理した後、1時間後に吸光度を分析した(実験例6と同じ方式で分析)。
【0186】
【0187】
図11に示したように、ペプチドの導入量によって傾向性がある細胞死滅効果が現われることが確認できる。ただし、r9ペプチドの場合、導入量が4%である場合に細胞死滅効果が阻害された。
【0188】
これを通じて、脂肪細胞死滅のためのミセルの製造において適正ペプチド導入誘導体の濃度は、基本誘導体の重量に対して1%~3%であることが確認できる。
【0189】
実験例8.ペプチド組織化及びミセル濃度による脂肪細胞死滅能
【0190】
実施例1の(3)で製造されたミセルA~Dに対して、前記ミセルを0.1~0.3wt%濃度で処理して細胞死滅能を評価した。
【0191】
このとき、ATSは、脂肪細胞のターゲットのためであり、r9細胞内への浸透のためのペプチドとして用いた。
【0192】
その結果を
図12に示した。前記
図12でPEG
5000-octylcarbonate micellsは、ミセルAを示し、r9-PEG
5000-octylcarbonate micellsは、ミセルBを示し、ATS-PEG
5000-octylcarbonate micellsは、ミセルCを示し、ATS-r9-PEG
5000-octylcarbonate micellsは、ミセルDを示す。
【0193】
図12に示したように、ペプチドが導入されないミセルAの場合、90%以上の細胞生存率を示した。
【0194】
一方、ペプチドが導入されたミセルは、濃度が高くなることによって細胞死滅効果が増加することが確認できる。特に、ミセルDの場合、0.3wt%で最も高い死滅効果を示すことが確認できる。
【0195】
実験例9.ペプチド効能の確認
【0196】
実施例1の(3)で製造されたミセルA~Dに対して多様な細胞(fibroblast、myoblast、adipocyte)で前記ミセルの標的指向効能を評価した。
【0197】
その結果を
図13に示した。前記
図13で、ControlはミセルAを示し、r9はミセルBを示し、ATSはミセルCを示し、ATS/r9はミセルDを示す。
【0198】
図13に示したように、r9ペプチドは、細胞の種類に関係なく細胞死滅率は類似した傾向を示し、ATSペプチドの場合、脂肪細胞で他の細胞に比べて高い死滅率を有することが確認できる。ATS/r9の場合、脂肪細胞で他の細胞に比べて高い死滅率を有し、脂肪細胞でATS及びr9を単独で用いる場合、より優れた細胞死滅率を有することが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明による脂肪減少用気体発泡型ミセルは、注射可能な製剤として製作が可能であり、ダイエット美容分野及び肥満治療剤分野に適用されて局所脂肪の死滅を通じて局所脂肪を分解する局所脂肪分解補完剤、体形矯正剤又はダイエット美容製品などで用いられ得る。