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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】沈砂池および集砂方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/02 20060101AFI20240509BHJP
   B01D 21/18 20060101ALI20240509BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20240509BHJP
   B01D 21/30 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B01D21/02 N
B01D21/02 Q
B01D21/18 K
B01D21/24 G
B01D21/24 M
B01D21/30 H
B01D21/30 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023008159
(22)【出願日】2023-01-23
(62)【分割の表示】P 2018133175の分割
【原出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2023033625
(43)【公開日】2023-03-10
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】川上 直哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢二
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-065138(JP,A)
【文献】特開2016-165701(JP,A)
【文献】特開2001-009209(JP,A)
【文献】特開2005-342568(JP,A)
【文献】特開2011-245390(JP,A)
【文献】特開2016-172254(JP,A)
【文献】特開2018-051461(JP,A)
【文献】特開2015-000361(JP,A)
【文献】特開2016-140794(JP,A)
【文献】特開2014-024055(JP,A)
【文献】特開2018-030134(JP,A)
【文献】特開2014-062455(JP,A)
【文献】特開2018-108586(JP,A)
【文献】特開2017-039134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D21/00-34
E03F 1/00-11/00
C02F 1/52- 1/56
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け入れた水に含まれている砂が池底部に沈降する沈砂池において、
前記池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記溝に溜まった水中において、前記所定方向に流体を吐出する第1の吐出口と、
前記池底部に設けられ、この沈砂池の側壁から前記溝の間に形成されて該溝に接続した底面と、
前記底面に堆積した砂を前記側壁側から前記溝に向かって流すための流体を大気中に吐出する第2の吐出口と、
前記第1の吐出口から前記所定方向に向かって延びる仮想軸の周囲を覆い、下端部分に開口を有する覆い部材とを備え、
前記底面は、前記覆い部材の上端位置よりも上方に位置したものであり、
前記第2の吐出口は、前記覆い部材の上端位置よりも下方に水位が維持された状態で流体を吐出するものであることを特徴とする沈砂池。
【請求項2】
前記溝は、前記所定方向に向かって0度以上1度未満の角度で下方に傾斜したものであることを特徴とする請求項1記載の沈砂池。
【請求項3】
受け入れた水に含まれている砂を沈降させる沈砂池において、所定方向に延在した溝と、この沈砂池の側壁から該溝の間に形成されて該溝に接続した底面とを有する池底部に堆積した砂を集める集砂方法であって、
前記溝に溜まった水中において、第1の吐出口から流体を前記所定方向に吐出する水中吐出工程と、
前記底面に堆積した砂を前記側壁側から前記溝に向かって流すための流体を第2の吐出口から大気中に吐出する大気中吐出工程とを有し、
前記水中吐出工程は、下端部分に開口を有し前記第1の吐出口から前記所定方向に向かって延びる仮想軸の周囲を覆う覆い部材によって覆われた空間に流体を吐出する工程であり、
前記大気中吐出工程は、上端位置が前記底面よりも下方に位置した前記覆い部材の上端位置よりもさらに下方に水位が維持された状態で行われる工程であることを特徴とする集砂方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受け入れた水に含まれている砂が池底部に沈降する沈砂池および沈降した砂を集める集砂方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水処理施設には、下水および雨水などの汚水を受け入れ、その汚水に含まれている砂を池底部の底面や池底部に設けられた溝内に沈降させた後、底面や溝内に堆積した砂を集砂ピットに集めて汚水から取り除く沈砂池が設けられているものがある。この沈砂池として、沈砂池内の汚水を排出して底面に堆積した砂を大気中に露出させた後、沈砂池の側壁近傍に設けられた複数の吐出口から流体を吐出し、その流体により砂を溝に向かって流す集砂手段を備えたものが知られている。この溝は、断面がU字状または円弧状の長尺部材で構成されており、池幅方向と直交する直交方向に延在し、後端は集砂ピットに接続している。また、溝は、集砂ピットに向かうにしたがって下方に傾斜しており、集砂ピット側が最も深くなっている。溝内に堆積した砂は、溝の先端側から溝内に吐出された流体の流れによって集砂ピットまで搬送される。搬送の際、溝内に供給された流体の、集砂ピット側への流れが、溝の傾斜により補助される。これにより、溝内の砂を集砂ピット側に移動しやすくなっている。集砂ピットに搬送された砂は、集砂ピット内に配置された揚砂ポンプで沈砂池の外部に排出される。このような溝や側壁近傍に設けられた複数の吐出口やを備えた沈砂池として、例えば特許文献1および2に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-127871号公報
【文献】特開2018-39007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溝の先端側から溝内に吐出された流体が溝内に堆積した砂に衝突した際に、流体および砂が池幅方向に飛び散ってしまうことがある。砂が飛び散ってしまうと、せっかく流した底面に砂が戻ってしまい集砂効率が低下してしまう。そればかりか、吐出によって生じた流体の流れが流体と砂との衝突によって弱まってしまうので、この点でも集砂効率が低下する。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、砂を効率的に集砂できる沈砂池および集砂方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明の沈砂池は、受け入れた水に含まれている砂が池底部に沈降する沈砂池において、
前記池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記溝に溜まった水中において、前記所定方向に流体を吐出する第1の吐出口と、
前記池底部に設けられ、この沈砂池の側壁から前記溝の間に形成されて該溝に接続した底面と、
前記底面に堆積した砂を前記側壁側から前記溝に向かって流すための流体を大気中に吐出する第2の吐出口と、
前記第1の吐出口から前記所定方向に向かって延びる仮想軸の周囲を覆い、下端部分に開口を有する覆い部材とを備え、
前記底面は、前記覆い部材の上端位置よりも上方に位置したものであり、
前記第2の吐出口は、前記覆い部材の上端位置よりも下方に水位が維持された状態で流体を吐出するものであることを特徴とする。
また、前記溝は、前記所定方向に向かって0度以上1度未満の角度で下方に傾斜したものであってもよい
【0007】
また、上記目的を解決する本発明の集砂方法は、受け入れた水に含まれている砂を沈降させる沈砂池において、所定方向に延在した溝と、この沈砂池の側壁から該溝の間に形成されて該溝に接続した底面とを有する池底部堆積した砂を集める集砂方法であって、
前記溝に溜まった水中において、第1の吐出口から流体を前記所定方向に吐出する水中吐出工程と、
前記底面に堆積した砂を前記側壁側から前記溝に向かって流すための流体を第2の吐出口から大気中に吐出する大気中吐出工程とを有し、
前記水中吐出工程は、下端部分に開口を有し前記第1の吐出口から前記所定方向に向かって延びる仮想軸の周囲を覆う覆い部材によって覆われた空間に流体を吐出する工程であり、
前記大気中吐出工程は、上端位置が前記底面よりも下方に位置した前記覆い部材の上端位置よりもさらに下方に水位が維持された状態で行われる工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、砂を効率的に集砂できる沈砂池および集砂方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に相当する沈砂池を含む汚水処理施設の概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に相当する沈砂池を上方から見た平面図である。
図3図2に示す沈砂池のX-X断面図である。
図4】(a)は、図3のZ部を拡大して示す拡大図であり、図4(b)は、第1覆い部材および上流トラフ第1ノズルを示す概略斜視図である。
図5図2に示す沈砂池のA-A断面図である。
図6図5のB部を拡大して示す拡大図である。
図7】(a)は、ラップジョイントが設けられた一方の管が他方の管に結合された状態を説明するための断面図であり、(b)は、ボルトを緩めることでラップジョイントが設けられた一方の管が他方の管に対してその軸方向を中心として回転自在になった状態を説明するための断面図である。
図8】(a)は、図6のC-C断面図であり、(b)は、集砂ノズルによる吐出方向の変更を説明するための、(a)と同様の断面図である。
図9】汚水処理施設における給水系統図である。
図10】沈砂池の水位と水位センサを示す説明図である。
図11】汚水処理施設における砂の除去動作の流れを示すフローチャートである。
図12】沈砂池の上側部分に集砂手段を配置した場合と沈砂池の池底部近傍に集砂手段を配置した場合を示す図5と同様の沈砂池の断面図である。
図13】接続面の変形例を示す図3と同様の断面図である。
図14】(a)は、図8に示す供給管と集砂ノズルの第1変形例を示す図であり、(b)は、図8に示す供給管と集砂ノズルの第2変形例を示す図である。
図15】主トラフ、覆い部材、および底平面の変形例を示す図5と同様の断面図である。
図16図15に示す変形例における、沈砂池の上流側端部近傍の底平面と集砂ピット近傍の底平面とを示した図8(a)と同様の断面図である。
図17】主トラフの高さ高くした場合の水位の検出例を示す図10と同様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態である沈砂池は、汚水処理施設に配置され、下水および雨水などの汚水に含まれる砂を沈降させた後、沈降させた砂を集砂ピットに移動させて汚水から取り除くものである。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に相当する沈砂池を含む汚水処理施設の概略断面図である。
【0012】
図1に示すように、汚水処理施設1は、沈砂池2と、ポンプ井3と、ダム装置4とを有する。この汚水処理施設1には、下水および雨水などの汚水が流入してくる。汚水処理施設1は、図1における左側から汚水を受け入れる。受け入れた汚水は、沈砂池2において、その汚水に含まれている砂を沈降させつつ図の右側のポンプ井3に向かってゆっくりと流れていく(図1に示す直線の矢印参照)。以下、受け入れた汚水の流れにおける上流側を、単に上流側と称し、汚水の流れの下流側を、単に下流側と称する。
【0013】
汚水処理施設1の、沈砂池2よりも上流側には、ダム装置4が配置されている。このダム装置4は、開口壁41と、流入ゲート42と、ゲート駆動装置43とを有する。開口壁41下流側の壁面は、沈砂池2の上流端を画定している。開口壁41の下端部分には、流入口411が開口している。流入ゲート42は、開口壁41上流側の壁面に沿って上下動可能に設けられている。この流入ゲート42は、図1に実線で示した下方位置にあるときには流入口411を閉塞してダム装置4よりも上流側にある汚水の、沈砂池2への流入を堰き止めている。また、流入ゲート42が、図1において二点鎖線で示した上方位置に引き上げられているときには、汚水が沈砂池2に流入することを許容している。ゲート駆動装置43は、その内部に図示しない駆動機構を有しており、ダム装置4を制御する制御装置からの指令に応じて流入ゲート42を上下動させる。この上下動により、流入ゲート42は、上方位置と下方位置の何れかの位置に選択的に配置される。
【0014】
沈砂池2には、その上流側に配置された除塵機5と、中流付近に配置された集砂ピット6と、集砂ピット6内の砂を池外に搬出する揚砂ポンプ61とが設けられている。揚砂ポンプ61には揚砂管64が接続されている。揚砂ポンプ61によって吸引された砂は、この揚砂管64を通して沈砂池2の外部に設けられた不図示の沈砂分離機に送られる。除塵機5は、沈砂池2に流れ込んできた汚水に混入している混入物(し渣)を除去するためのものである。沈砂池2の構成については後に詳述する。
【0015】
汚水処理施設1の、沈砂池2よりも下流側には、ポンプ井3が形成されている。ポンプ井3には、沈砂池2によって砂が取り除かれた汚水が貯留される。ポンプ井3の底部は、汚水処理施設1における最深部となっている。ポンプ井3には、揚水ポンプ31と給水ポンプ33が配置が配置されている。揚水ポンプ31は、ポンプ井3に貯留された汚水を、汚水処理施設1の外部に移動するものである。揚水ポンプ31には揚水管32が接続されている。揚水ポンプ31によって吸引された汚水は、この揚水管32を通して次の段階の汚水処理を行う不図示の沈殿池等に送られる。給水ポンプ33は、上述の揚水ポンプ31よりも、ポンプ井の底部に近い位置に配置されている。給水ポンプ33には給水管34が接続されている。給水ポンプ33によって吸引された汚水は、この給水管34を通して後述する各ノズル等に送られる。給水ポンプ33によって吸引された汚水を、以下の説明では流体と称する。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態に相当する沈砂池を上方から見た平面図である。図2では除塵機を二点鎖線の矩形で示している。また、汚水の流れ方向を直線の矢印で示している。
【0017】
図2に示すように、沈砂池2は、左側壁Waと右側壁Wbの間に、除塵機5と、集砂ピット6と、底平面71と、小トラフ72と、接続面73と、主トラフ8と、集砂手段9とを備えた、平面視で概略長方形状の池である。この底平面71および小トラフ72は、底面の一例に相当する。また、主トラフ8は、溝の一例に相当する。以下、左側壁Waと右側壁Wbとを合わせて側壁Wと称することがある。沈砂池2上流側の池幅方向中央部分には、除塵機5を支持するための突出壁10が設けられている。集砂ピット6、底平面71、小トラフ72、接続面73、および主トラフ8は、それぞれ沈砂池2の池底部に設けられている。この底平面71は、池底部に打設されたコンクリートの表面で形成されている。主トラフ8は、沈砂池2の上流側端部近傍から長手方向に延在し、後端が集砂ピット6に接続した上流側第1主トラフ815および上流側第2主トラフ816と、沈砂池2の下流側端部近傍から長手方向に延在し、後端が集砂ピット6に接続した下流側主トラフ82とから構成されている。この上流側第1主トラフ815は、第1溝の一例に相当し、上流側第2主トラフ816は、第2溝の一例に相当する。この沈砂池2は、沈砂池2内の汚水を排水した状態で流体を底平面71および小トラフ72に吐出し、底平面71および小トラフ72に沈降した砂を集砂する、いわゆる低圧集砂方式の沈砂池である。以下、沈砂池2の長辺方向を長手方向と称し、短辺方向を池幅方向と称する。この長手方向は、池幅方向に直交する直交方向でもある。
【0018】
沈砂池2の上方(図2における紙面手前側)には、図示しない建屋や配管等が配置されている場合がある。そして、その建屋等を支持する目的で、沈砂池2に隣接して柱11が形成されていることがある。図2に示す沈砂池2では、左側壁Waの近傍に柱11が形成されている。その左側壁Waのうち、柱11の土台になる部分は、池幅方向中央に向かって突出した凸壁部Wa1が形成されている。逆に、その左側壁Waのうち、左側壁Waの上に柱11が存在しない部分では、池幅方向外側に向かって凹んだ凹み壁部Wa2が形成されているとも言える。また、凸壁部Wa1と凹み壁部Wa2とを繋ぐ部分は、長手方向および池幅方向に対して傾斜した傾斜壁部Wa3が形成されている。なお、右側壁Wbの近傍には柱11が存在しないので、右側壁Wbは、平面視でほぼ直線状に形成されている。
【0019】
集砂ピット6は、沈砂池2の長手方向の中央よりもやや下流側の位置に配置されている。この集砂ピット6は、沈砂池2の池幅方向中央部に形成された凹部によって構成されている。集砂ピット6の内部には、揚砂ポンプ61と、攪拌ノズル62が配置されている。この集砂ピット6は、沈砂池2において最も深い最深部になっている。この集砂ピット6は、平面視で矩形をしている。側壁Wから集砂ピット6の間は、池幅方向の中央部分にある集砂ピット6側に向かって徐々に深くなるように傾斜した集砂ピット傾斜面6bになっている。
【0020】
攪拌ノズル62は、集砂ピット6の各角部近傍に合計4つ配置されている。この攪拌ノズル62は、集砂ピット6に集められた砂を撹拌するためのものである。揚砂ポンプ61を駆動している時に攪拌ノズル62の吐出口62aから流体を吐出することで、集砂ピット6に集まった砂の、揚砂ポンプ61による吸引効率を高めることができる。集砂ピット傾斜面6bの池幅方向の両端部それぞれには2つづつピット用集砂ノズル63が配置されている。沈砂池2の水位を所定値よりも低くした状態で、ピット用集砂ノズル63の吐出口63aから流体を吐出することで、集砂ピット傾斜面6bに堆積している砂を集砂ピット6に集めることができる。
【0021】
底平面71は、左側壁Waと上流側第1主トラフ815の間に形成された第1底面711と、右側壁Wbと上流側第2主トラフ816の間に形成された第2底面712と、左側壁Waと下流側主トラフ82の間に形成された第3底面713と、右側壁Wbと下流側主トラフ82の間に形成された第4底面714とから構成されている。底平面71および小トラフ72は、沈砂池2の池幅方向中央側で主トラフ8に接続している。底平面71は、主トラフ8側端部が最も深くなるように、池幅方向外側端部にある側壁W側から主トラフ8に向かうにしたがって下方に約5度傾斜している。一方、底平面71は、長手方向には水平に形成されている。小トラフ72は、断面がU字状をした樋状のものであり、側壁Wの近傍から池幅方向に延在している。小トラフ72は、長手方向に等間隔に複数配置されている。本実施形態では、主トラフ8を挟んで池幅方向の一方側と他方側それぞれに28本、合計56本の小トラフ72が配置されている。この小トラフ72も、底平面71と同様に、主トラフ8と接続した部分が最も池底側に位置するように、側壁W側から主トラフ8側に向かって下方に約5度傾斜している。
【0022】
上流側第1主トラフ815、上流側第2主トラフ816、および下流側主トラフ82は、断面が2/3円の円弧状をした、ステンレス鋼板であるトラフ形成体によって形成された溝である。ただし、これらの上流側第1主トラフ815、上流側第2主トラフ816、および下流側主トラフ82は、底平面71と一体にコンクリートで形成したものであってもよい。上流側第1主トラフ815、上流側第2主トラフ816、および下流側主トラフ82は、沈砂池の端部近傍から集砂ピット6に接続した部分まで長手方向全長に渡って水平に配置されている。
【0023】
図2に示すように、上流側第1主トラフ815は、池幅方向中央に対して左側壁Wa側に設けられ、長手方向に延在している。また、上流側第2主トラフ816は、池幅方向中央に対して右側壁Wb側に設けられ、長手方向に延在している。上流側第1主トラフ815と上流側第2主トラフ816とは、ともに全長10mであり、形状も同一である。上流側第1主トラフ815および上流側第2主トラフ816の下流端は、集砂ピット6に接続している。上流側第1主トラフ815の上流端部分(上流側第1主トラフ815の先端部分)には、トラフ第1吐出口831aを有する上流トラフ第1ノズル831が設けられている。また、上流側第2主トラフ816の上流端部分(上流側第2主トラフ816の先端部分)には、トラフ第2吐出口832aを有する上流トラフ第2ノズル832が設けられている。これらのトラフ第1吐出口831aおよびトラフ第2吐出口832aは、第1の吐出口の一例に相当する。上流側第1主トラフ815の内部には、第1覆い部材13が配置されている。また、上流側第2主トラフ816の内部には、第2覆い部材14が配置されている。この第1覆い部材13および第2覆い部材14は、それぞれ上流側第1主トラフ815および上流側第2主トラフ816に沿って延在している。第1覆い部材13および第2覆い部材14の全長は、上流側第1主トラフ815および上流側第2主トラフ816の全長と略同じである。図2に示すように、第1覆い部材13は、トラフ第1吐出口831aよりも上流から、上流側第1主トラフ815の、集砂ピット6に接続した部分を超えてほんの少し下流まで延在している。上流側第1主トラフ815内に汚水が溜まった状態で、トラフ第1吐出口831aから流体を吐出することで、上流側第1主トラフ815に堆積した砂を集砂ピット6に移動させることができる。また、第2覆い部材14は、トラフ第2吐出口832aよりも上流から、上流側第2主トラフ816の、集砂ピット6に接続した部分を超えてほんの少し下流まで延在している。上流側第2主トラフ816内に汚水が溜まった状態で、トラフ第2吐出口832aから流体を吐出することで、上流側第2主トラフ816に堆積した砂を集砂ピット6に移動させることができる。上流側第1主トラフ815および上流側第2主トラフ816内の砂の移動、並びに第1覆い部材13および第2覆い部材14についての詳しい説明は後述する。
【0024】
下流側主トラフ82は、沈砂池2の幅方向中央で長手方向に直線状に延在している。下流側主トラフ82の全長は5mである。下流側主トラフ82の上流端は、集砂ピット6に接続している。下流側主トラフ82の下流端(下流側主トラフ82の先端部分)には、トラフ第3吐出口84aを有する下流トラフ用ノズル84が設けられている。このトラフ第3吐出口84aも、第1の吐出口の一例に相当する。下流側主トラフ82の内部には、第3覆い部材15が配置されている。この第3覆い部材15は、下流側主トラフ82に沿って延在している。第3覆い部材15の全長は、下流側主トラフ82の全長と略同じである。図2に示すように、第3覆い部材15は、トラフ第3吐出口84aよりも下流から、下流側主トラフ82の、集砂ピット6に接続した部分を超えてほんの少し上流まで延在している。下流側主トラフ82内に汚水が溜まった状態で、トラフ第3吐出口84aから流体を吐出することで下流側主トラフ82に堆積した砂を集砂ピット6に移動させることができる。下流側主トラフ82内の砂の移動、および第3覆い部材15についての詳しい説明は後述する。
【0025】
上流側第1主トラフ815および上流側第2主トラフ816の間であって、沈砂池2の上流側部分には、除塵機5を支持するための突出壁10が形成されている。この突出壁10は、沈砂池2の上端近傍まで立ち上がったコンクリート製の壁である。接続面73は、上流側第1主トラフ815および上流側第2主トラフ816の間であって、この突出壁10よりも下流側の池底部に配置されている。すなわち、接続面73は、上流側第1主トラフ815および上流側第2主トラフ816の間における、突出壁10が設けられた領域を除いた部分に形成されている。接続面73は、長手方向に沿って延在する稜線部731と、その稜線部731と上流側第1主トラフ815とを接続する第1接続面732と、稜線部731と上流側第2主トラフ816とを接続する第2接続面733とで構成されている。なお、稜線部731の延在方向は、長手方向と完全に同一でなくてもよく、例えば長手方向に対して池幅方向および上下方向に多少傾斜した方向であってもよい。また、稜線部731は池幅方向および上下方向に多少蛇行していてもよい。すなわち、「長手方向に沿って延在する」とは、多少の傾斜や蛇行を含む概念である。
【0026】
図3は、図2に示す沈砂池のX-X断面図である。この図3では除塵機は図示省略している。
【0027】
図3に示すように、第1接続面732は、上流側第1主トラフ815に向かうにしたがって下方に傾斜した傾斜面である。また、第2接続面733は、上流側第2主トラフ816に向かうにしたがって下方に傾斜した傾斜面である。第1接続面732および第2接続面733は、コンクリートの表面によって構成されている。第1接続面732および第2接続面733の傾斜角度は、水平面に対して約45度である。接続面が傾斜していることで、接続面73に沈降してくる砂を接続面73上に残留させることなく上流側第1主トラフ815または上流側第2主トラフ816内に集めることができる。第1接続面732および第2接続面733の傾斜角度が15度以上であれば、沈砂池2内の汚水の中を接続面73に沈降してくる砂は、その自重により大半が接続面73を滑り落ちる。また、第1接続面732および第2接続面733の傾斜角度を30度以上にすれば、接続面73に沈降してくる砂は、接続面73をより滑り落ちやすくなるので好ましい。ただし、傾斜角度を大きくしすぎると、接続面73を構成するコンクリートの池幅方向の厚みが稜線部731の近傍部分で薄くなりすぎ、稜線部731部分が欠損しやすくなってしまう。このため、第1接続面732および第2接続面733の成す稜線部731の角度が30度以上になるように、第1接続面732および第2接続面733の成す稜線部731の角度を設定することが好ましい。なお、第1接続面732および第2接続面733のうちの一方または両方は、単一平面で構成しなくてもよく、例えば傾斜角度が異なる複数の面で構成してもよい。この場合、複数の面全ての傾斜角度を15度以上にすればよい。また、第1接続面732および第2接続面733のうちの一方を垂直面とし、他方を傾斜面としてもよい。ただし、本実施形態のように第1接続面732および第2接続面733それぞれを傾斜面にすることで、上流側第1主トラフ815と上流側第2主トラフ816に砂を振り分けて滑り落とすことができるので、それぞれ傾斜面にすることが好ましい。また、本実施形態のように、上流側第1主トラフ815と上流側第2主トラフ816の間の中央部分に稜線部731を設けることで、上流側第1主トラフ815と上流側第2主トラフ816に滑り落ちる砂の量を均一化できる。こうすることで、上流側第1主トラフ815と上流側第2主トラフ816のうちの一方に多量の砂が堆積してしまうことが抑制されるので、上流側第1主トラフ815と上流側第2主トラフ816内の砂の搬送抵抗により集砂ピット6に砂を搬送できなくなってしまうことを防止できる。
【0028】
図4(a)は、図3のZ部を拡大して示す拡大図であり、図4(b)は、第1覆い部材および上流トラフ第1ノズルを示す概略斜視図である。この図4(a)では図の左右方向が池幅方向になり、紙面に直交する方向が長手方向になる。また、図4(a)では、上流側第1主トラフおよび第1覆い部材の、断面を表すハッチングは省略している。
【0029】
図4(a)には、上流側第1主トラフ815、上流トラフ第1ノズル831、および第1覆い部材13が示されている。上流側第2主トラフ816、上流トラフ第2ノズル832、および第2覆い部材14、並びに下流側主トラフ82、下流トラフ用ノズル84、および第3覆い部材15は、接続している底平面71または接続面73を除いて同様の形状をしているので説明は省略する。上述したように、本実施形態の上流側第1主トラフ815は、2/3円の断面形状をしている。すなわち、径方向の中心であるトラフ円弧中心815cを中心点とした円弧状をしている。ただし、上流側第1主トラフ815の断面形状は円弧状に限られず、U字状やV字状等であってもよい。上流側第1主トラフ815は、内径300mmの円筒体の上方を切り欠いた形状のものであり、その全長に渡って上方に向かって開口している。以下、この開口している部分を第1トラフ開口815bと称することがある。この第1トラフ開口815bには、小トラフ72が接続されており、第1トラフ開口815bの高さ方向の位置は、小トラフ72下端の高さ方向の位置と同一である。上流側第1主トラフ815の、トラフ円弧中心815cよりも上の上側部分815aは、上端の第1トラフ開口815bに向かうにつれて池幅方向の幅が狭くなっている。これにより、上流側第1主トラフ815内で砂が舞い上がったとしても、上側部分815aがかえしとして作用し、舞い上がった砂を上流側第1主トラフ815内に戻すことができる。
【0030】
第1覆い部材13は、下端部分に開口13aを有する5/6円の断面形状をしている。すなわち、径方向の中心である覆い円弧中心13cを中心点とした円弧状をしている。この第1覆い部材13は、板厚3mmのステンレス製の板材を、内径150mmの断面円弧状に成形したものである。開口13aは、第1覆い部材13の全長に渡って設けられている。第1覆い部材13は、上流側第1主トラフ815の内部空間を仕切っている。第1覆い部材13の内側の空間は、第1覆い部材13によって覆われた空間である搬送空間FSになる。第1覆い部材13は、上側部分が閉塞した円弧状をしているので、沈砂池2内を第1覆い部材13の上側部分に向かって沈降してきた砂は、第1覆い部材13の上側部分の外表面を滑り落ちやすい。滑り落ちた砂は、上流側第1主トラフ815の下方に堆積する。また、第1覆い部材13の、覆い円弧中心13cよりも下側の搬送空間FSは、下方の開口13aに向かうにつれて池幅方向が狭くなっている。第1覆い部材13は、沈砂池2の池底に打設されたコンクリートにケミカルアンカー(登録商標)で固定された支持金具131(図5参照)によって支持されている。第1覆い部材13の上端の高さ位置は、第1トラフ開口815bとほぼ同じ高さに位置している。第1覆い部材13の上端の高さ位置は、第1トラフ開口815bとほぼ同じ高さ、または第1トラフ開口815bよりも低い位置にすることが望ましい。この位置にすることで、上流側第1主トラフ815内に水を満たしておけば、第1覆い部材13の内部を水で満たすことができる。トラフ第1吐出口831aから流体を水中に吐出した時に、第1覆い部材13の内部を水で満たしておくことで、第1覆い部材13の内部に流体の強い流れを作りだすことができる。また、第1覆い部材13の開口13aは、上流側第1主トラフ815の高さ方向の中央815hよりも下方に配置されている。この配置にすることで、第1覆い部材13の開口13aと上流側第1主トラフ815の下方に堆積する砂とを近づけることができるので、第1覆い部材13内の流体の流れによって上流側第1主トラフ815内に堆積した砂を第1覆い部材13の内部に吸い上げやすくなる。なお、第1覆い部材13の延在方向の両端は開放されているので、沈砂池2の水位が第1覆い部材13の上端位置よりも高ければ、搬送空間FS内に大気が残存することはなく、搬送空間FSは汚水で満たされる。また、本実施形態の第1覆い部材13は、断面形状が円弧状のものを例示したが、断面が多角形をしたものであってもよく、円弧と直線状部分とが連続した形状のものであってもよい。ただし、第1覆い部材13の上側部分の断面形状は、溝の幅方向に向かって下方に傾斜した傾斜面にすることが望ましい。第1覆い部材13の上側部分を傾斜面にすることで、第1覆い部材13の上側部分に沈降してきた砂は、その上側部分を滑り落ちやすくなるため、上流側第1主トラフ815内の下方に堆積しやすくなる。
【0031】
トラフ第1吐出口831aは、第1覆い部材13内の搬送空間FS内に配置されている。このトラフ第1吐出口831aは、内径80mmのパイプの先端を上下から扁平につぶした長孔形状のものである。トラフ第1吐出口831aの池幅方向の最大開口長は117mmであり、上下方向の最大高さは18mmである。トラフ第1吐出口831aは、真円など他の形状であっても構わない。ただし、トラフ第1吐出口831aを扁平な形状にすることで、つぶす前の真円のものよりも、広い範囲に流体を吐出できる。トラフ第1吐出口831aから吐出される流体の吐出流速は、8m/sec以上とすることが好ましい。8m/sec未満では、流速不足になってしまい砂を所定距離移動させられない場合も生じる。また、トラフ第1吐出口831aから吐出される流体の吐出圧は、0.05MPa以上0.3MPa以下とすることが望ましい。トラフ第1吐出口831aの中心は、覆い円弧中心13cと一致している。トラフ第1吐出口831aは、第1覆い部材13の延在方向である長手方向に向かって流体を吐出する。図4(b)に示すように、第1覆い部材13は、トラフ第1吐出口831aを覆い、且つトラフ第1吐出口831aから吐出される流体を覆うように流体の吐出方向に延在している。このトラフ第1吐出口831aの中心(覆い円弧中心13c)を始点として、トラフ第1吐出口831aから吐出される流体の流れ方向に延在する軸が仮想軸VLになる。つまり、第1覆い部材13は、トラフ第1吐出口831aの中心から長手方向に延在する仮想軸VLを覆うように延在している。第1覆い部材13の延在方向およびトラフ第1吐出口831aから吐出される流体の吐出方向それぞれは、長手方向と完全に一致させる必要はないが、一致させることでより効率的に砂を搬送できる。なお、トラフ第1吐出口831aから吐出される流体の吐出方向と第1覆い部材13の延在方向とが多少異なっていた場合でも、吐出された流体は、第1覆い部材によって案内されるため、流体の流れ方向は第1覆い部材の延在方向と一致する。従って、この場合の仮想軸VLは、第1覆い部材の延在方向になる。ただし、この場合は流体が第1覆い部材と衝突して流れが弱まることがあるので、トラフ第1吐出口831aから吐出される流体の吐出方向と第1覆い部材13の延在方向は一致させることが望ましい。また、トラフ第1吐出口831aの中心は、覆い円弧中心13cとは異なる位置であってもよく、例えば覆い円弧中心13cよりも下方であって、開口13aよりも上方に配置してもよい。ただし、トラフ第1吐出口831aの中心を、覆い円弧中心13cと一致させることで、トラフ第1吐出口831aから吐出される流体の流れの損失を最小限にすることができる。一方、トラフ第1吐出口831aの中心を、覆い円弧中心13cよりも下方に配置することで、開口13aから搬送空間FS内に砂を吸い込む吸込み力を高めることができる。従って、トラフ第1吐出口831aの中心は、覆い円弧中心13cと第1覆い部材13の開口13aの間に配置することが望ましい。
【0032】
トラフ第1吐出口831aから搬送空間FS内に流体が吐出されることで、第1覆い部材13の内側の搬送空間FSに流体の流れが発生する。そして搬送空間FSと第1覆い部材13の外側との間で流体の流れによる圧力差が生じる。すなわち、流体の流れが発生している搬送空間FSには負圧が生じる。上流側第1主トラフ815内に堆積した砂は、図4(a)に示す曲線の矢印のように、負圧によって開口13aから搬送空間FS内に吸い込まれる。また、トラフ第1吐出口831aから吐出した流体は、第1覆い部材13によって長手方向と直交する放射方向への拡散が防止されるため、長距離にわたって搬送空間FS内で流れが維持される。吸い込まれた砂は、搬送空間FS内に生じている流体の流れによって集砂ピット6側に向かって搬送される。この実施形態では、第1覆い部材13によって搬送空間FSを形成することで、トラフ第1吐出口831aから吐出された流体の流れを損なうことなく砂の搬送に活用できる。その結果、上流側第1主トラフ815内に堆積した砂を集砂ピット6に向けて効率的に搬送できる。上述したように、搬送空間FSにおける覆い円弧中心13cよりも下側は、下方の開口13aに向かうにつれて池幅方向が狭くなっている。開口13aの池幅方向の幅を狭く形成することで、搬送空間FS内を搬送されている砂がその搬送空間FS内から外に漏れ出にくくなる。また、搬送空間FS内における流体が搬送空間FSから外に流出しにくくなるので流体の流れを長い距離維持可能になり、砂をより遠くまで移動させることができる。そして、トラフ第1吐出口831aから離れた位置でも搬送空間FS内の負圧を維持しやすくなる。
【0033】
図2に示すように、除塵機5は、沈砂池2の上流側部分に、突出壁10を挟んで池幅方向に2つ並んで設けられている。換言すれば、除塵機5は、左側壁Waと突出壁10の間および右側壁Wbと突出壁10の間それぞれに1つづつ配置されている。これら2つの除塵機5、5は同一の構成を有する。除塵機5は、沈砂池2に流れ込んできた汚水に混入している混入物(し渣)を除去するためのものである。図2の上側に示されている一方の除塵機5は、左側壁Waと突出壁10によって支持されており、図2の下側に示されている他方の除塵機5は、右側壁Wbと突出壁10によって支持されている。池幅方向に並んで2つの除塵機5、5を配置することで、各除塵機5の池幅方向の幅を短くすることができる。除塵機5の池幅方向の幅を短くすることで、除塵機5の強度が高まり、大雨などで沈砂池2に流入する汚水の量及び流速が増大しても、除塵機5が破損してしまうことを抑制できる。
【0034】
図5は、図2に示す沈砂池のA-A断面図である。図5では柱および揚砂ポンプを図示省略し、突出壁の形状を二点鎖線で示している。また、汚水の流れ方向を直線の矢印で示している。なお、沈砂池の水面WLは、流入する雨や下水の量等によって変動するが、雨や下水が想定されている量である通常時には、図5に示すように、沈砂池2の高さ方向の中程度の高さに位置している。
【0035】
図5に示すように、除塵機5は、無端チェーン51と、その無端チェーン51に間隔をあけて取り付けられた複数のレーキ52と、濾過スクリーン53とを有する。無端チェーン51は、沈砂池2の幅方向両側それぞれに斜めに起立した状態で設けられたものであり、地上側スプロケット511と、池底側スプロケット512に巻きかけられている。無端チェーン51の上側部分および地上側スプロケット511は、沈砂池2の地上部分に配置されている。水面WLが通常状態にある時に、地上側スプロケット511を図示しないモータによって円弧状の矢印Rで示した回転方向に駆動すると、無端チェーン51が循環し、レーキ52は水中を出入りする。図5には通常状態の水面WLが示されている。突出壁10は、この水面WLよりも上方に突出している。ただし、特に除塵機5を支持する以外の目的で突出壁10を形成する場合は、突出壁10は水面WLよりも低くても構わない。濾過スクリーン53は、無端チェーン51の下流側に配置されている。この濾過スクリーン53は、上下方向に延びるバーが池幅方向に所定間隔(例えば、25mm~75mm)で並べられたものであり、所定間隔以上の大きさの混入物の通過を遮る。濾過スクリーン53で遮られた混入物は、レーキ52によって掻き揚げられ、掻き揚げられた混入物は、地上側で不図示のベルトコンベア等の運搬手段に載せられる。なお、池底側スプロケット512および濾過スクリーン53の下端は、底平面71および主トラフ8よりも上流側に配置されている。一方、地上側スプロケット511および濾過スクリーン53の上端は、底平面71および主トラフ8の上流側部分の上方に位置している。すなわち、無端チェーン51および濾過スクリーン53の上側部分は、底平面71および主トラフ8と長手方向において重複している。なお、図5には、第3覆い部材15を支持する支持金具151も示されている。
【0036】
集砂手段9は、沈砂池2の左側壁Wa側に配置された第1ノズルヘッダ9a、第2ノズルヘッダ9b、第3ノズルヘッダ9cと、右側壁Wb側に配置された第4ノズルヘッダ9d、第5ノズルヘッダ9e、第6ノズルヘッダ9fとを有する(図2参照)。図5では左側壁Wa側の集砂手段9が示されている。右側壁Wb側の集砂手段9も同様の構成をしているため、右側壁Wb側の集砂手段9は説明を省略する。第1ノズルヘッダ9a、第2ノズルヘッダ9b、第3ノズルヘッダ9cそれぞれは、10個の集砂ノズル91と、供給管92と、母管93とを有する。供給管92は、左側壁Waに対向して配置され、長手方向に延在している。母管93は、沈砂池2の上方に伸びた単管931と、単管931の池底側端部に接続された分岐管932とを有する。この単管931および分岐管932は、図示しない固定金具によって左側壁Waに固定されている。
【0037】
図6は、図5のB部を拡大して示す拡大図である。この図6では、汚水の流れ方向を直線の矢印で示している。図6には側壁も示されている。また、図6は、6つのノズルヘッダのうちの一つを示しているが、他の5つのノズルヘッダも図6で示したノズルヘッダと同様の構成をしている。
【0038】
図6に示すように、分岐管932は、単管931にフランジ継手933によって接続されている。分岐管932は、単管931に接続された部分の下方側で2又に分岐しており、分岐した先の分岐部分は、沈砂池2の長手方向にそれぞれ延在している。分岐部分の先端部分には、それぞれラップジョイント934が固定された供給管92が接続されている。本実施形態では、1本の母管93に対し、分岐管932よりも上流側に配置された上流側供給管921と、分岐管932よりも下流側に配置された下流側供給管923と、上流側供給管921と下流側供給管923の間に配置された中間供給管922の、3本の供給管92が設けられている。上流側供給管921および下流側供給管923の、分岐管932と接続された一方の端部とは反対側の他方の端部は、蓋97によって閉塞されている。中間供給管922は、その両端が分岐管932と接続されている。
【0039】
上流側供給管921および下流側供給管923には、それぞれ3つの集砂ノズル91が等間隔に固定されている。また、中間供給管922には、4つの集砂ノズル91が等間隔に固定されている。これらの合計10個の集砂ノズル91が配置されている間隔は、全て等間隔に配置されている。また、第1ノズルヘッダ9a(図2参照)の最も下流側の集砂ノズル91と、第2ノズルヘッダ9bの最も上流側の集砂ノズル91の間隔も、上述の10個の集砂ノズルの間隔と同一の間隔である。すなわち、集砂ノズル91は、沈砂池2の長手方向において全て等間隔に配置されている。なお、各供給管92に配置される集砂ノズル91の数は、供給管92の長さ等の要素に応じて適宜決定すればよい。各集砂ノズル91の先端には吐出口911が形成されている。この吐出口911は、第2の吐出口の一例に相当する。各吐出口911のうち、第1ノズルヘッダ9a(図2参照)および第2ノズルヘッダ9bに設けられた吐出口911は、一方側吐出口の一例に相当し、第4ノズルヘッダ9dおよび第5ノズルヘッダ9e(図2参照)に設けられた吐出口911は、他方側吐出口の一例に相当する。沈砂池2の水位を所定値よりも低下させて底平面71および小トラフ72に堆積している砂および吐出口911を大気中に露出させた状態で、吐出口911から大気中に流体を吐出することで、図2および図5に示した底平面71および小トラフ72に堆積している砂を主トラフ8に流すことができる。1つの吐出口911から噴射される流体の吐出圧は、例えば0.005MPaであり、好ましくは0.0002MPa以上0.005MPa以下である。すなわち、吐出口911から吐出される流体の吐出圧は、トラフ第1吐出口831aから吐出される流体の吐出圧(0.05MPa以上0.3MPa以下)より低い。こうすることで、底平面71および小トラフ72に堆積している砂を主トラフ8に流すことができる流量を確保しつつ、流体を供給するための給水ポンプ33に安価で小型のものが利用できる。
【0040】
供給管92のうち、凸壁部Wa1に対向した部分と凹み壁部Wa2に対向した部分では、供給管92から左側壁Waまでの間隔が異なっている。すなわち、供給管92には、左側壁Waから池幅方向に第1間隔をあけて延在する第1領域92aと、左側壁Waから池幅方向に第2間隔をあけて延在する第2領域92bとが存在する。また、本実施形態の沈砂池2には、凸壁部Wa1と凹み壁部Wa2とを繋ぐ部分に傾斜壁部Wa3が形成されていることから、供給管92には、前記第1領域と前記第2領域をつなぐ領域である第3領域92cが存在する。各集砂ノズル91およびその吐出口911は、左側壁Waに対向して配置され、長手方向に並んで供給管92に固定されている。図6に示した第2ノズルヘッダ9bでは、上流側供給管921は、凸壁部Wa1に対向して配置されている。すなわち、上流側供給管921がある領域は、第1領域92aに相当する。一方、中間供給管922のうち、最も上流側供給管921に近い部分にある吐出口911が配置された領域は、傾斜壁部Wa3に対向して配置されている。すなわち、その領域は第3領域92cに相当する。また、中間供給管922のうち、下流側供給管923側から3個の吐出口911が配置された領域と、下流側供給管923のうち、中間供給管922側から2個の吐出口911が配置された領域は、凹み壁部Wa2に対向して配置されている。すなわち、それらの領域は第2領域92bに相当する。また、下流側供給管923のうち、最も下流側にある吐出口911が配置された領域は、傾斜壁部Wa3に対向して配置されている。すなわち、その領域は第3領域92cに相当する。これらの各領域の間には、ラップジョイント934を用いた方向変更手段が設けられている。
【0041】
図7(a)は、ラップジョイントが設けられた一方の管が他方の管に結合された状態を説明するための断面図であり、図7(b)は、ボルトを緩めることでラップジョイントが設けられた一方の管が他方の管に対してその軸方向を中心として回転自在になった状態を説明するための断面図である。この図7では、一方の管として供給管を示し、他方の管として分岐管を示しているが、供給管どうしをラップジョイントを設けて接続する場合も同様の構成である。
【0042】
図7(a)および図7(b)に示すように、供給管92の端部にはラップジョイント934が溶接されている。このラップジョイント934は、供給管92に溶接された小径部934aと分岐管932側に配置された大径部934bとから構成されている。小径部934aの外径は、供給管92の外径と同一径に形成されている。ラップジョイント934の外周には、フリーフランジ935が配置されている。このフリーフランジ935は、内径がラップジョイント934の外径よりもほんの少しだけ大きいリング状をしている。フリーフランジ935には、ボルト95が挿入されるフリーフランジ貫通孔935aが周方向に均等に8つ形成されている。フリーフランジ935は、ラップジョイント934に対し回動自在かつ軸方向に移動自在にラップジョイント934と結合している。分岐管932先端の外径部分には、固定フランジ9322が溶接されている。この固定フランジ9322には、フリーフランジ935と同様にボルト95が挿入される固定フランジ貫通孔9322aが8つ形成されている。ラップジョイント934と固定フランジ9322の間にはリング状のパッキン94が配置されている。このパッキン94は、供給管92と分岐管932とが接合された状態において、供給管92と分岐管932内部を通過する流体が漏洩することを防止するためのものである。
【0043】
ボルト95は、固定フランジ9322の固定フランジ貫通孔9322aとフリーフランジ935のフリーフランジ貫通孔935aに挿入されている。ボルト95とナット96とを締め付けた状態では、図7(a)に示された供給管92のように、ラップジョイント934がパッキン94とともに固定フランジ9322とフリーフランジ935によって挟まれることで、分岐管932に対し供給管92が固定される。一方、ボルト95を緩めると、図7(b)に示された供給管92のように、分岐管932に対し供給管92がその軸線方向を中心として回動可能になる。すなわち、本実施形態では、母管93(図5参照)と供給管92とをラップジョイント934とフリーフランジ935を利用して接続しているので、供給管92は、その軸線方向を中心として、母管93に対して無段階に回動可能に構成されている。なお、ラップジョイント934の代わりにルーズフランジ等の他の遊合形フランジを用いても、母管93に対して供給管92を無段階に回動可能に接続することができる。
【0044】
また、図6に示すように、第1領域92aに配置された吐出口911と第3領域92cに配置された吐出口911の間、および第2領域92bに配置された吐出口911と第3領域92cに配置された吐出口911の間にはそれぞれラップジョイント934が配置されている。従って、第1領域92aと第2領域92bと第3領域92cそれぞれに配置された吐出口911は互いに独立して供給管92の軸線方向を中心として無段階に回転可能に構成されている。この構成により、供給管92から左側壁Waまでの間隔に応じて、各領域の吐出口911における流体の吐出方向をそれぞれ設定することができる。この第1領域92aに配置された吐出口911と第3領域92cに配置された吐出口911の間に配置されたラップジョイント934は、第1方向変更手段の一例に相当する。また、第2領域92bに配置された吐出口911と第3領域92cに配置された吐出口911の間に配置されたラップジョイント934は、第2方向変更手段の一例に相当する。また、図6に示した供給管92のうち、第1領域92aでは、第1領域92a内に並んだ3個の吐出口911における流体の吐出方向ををまとめて変更できるので、第1領域92aにおける吐出方向が容易に調整できる。図6に示した供給管92のうち、第2領域92bでは、中間供給管922に配置された3個の吐出口911をまとめて変更でき、下流側供給管923に配置された2個の吐出口911をまとめて変更できるので、第2領域92bにおける吐出方向が容易に調整できる。すなわち、複数個の吐出口911の吐出方向をまとめて変更できるように構成した場合のラップジョイント934は、一括方向変更手段の一例に相当する。なお、第3領域92cの長手方向が短く第3領域92c内に吐出口911が存在しない場合や、第3領域92cが存在しない場合には、第1領域92aと第2領域92bの間にラップジョイント934を配置すればよい。
【0045】
図8(a)は、図6のC-C断面図である。この図8(a)では側壁および底平面も示されている。
【0046】
上述した様に、左側壁Waは、凸壁部Wa1と、凹み壁部Wa2とを有している。図8(a)では、凸壁部Wa1は実線で示されており、凹み壁部Wa2は二点鎖線で示されている。図8(a)に実線で示した吐出口911では、流体の吐出方向を供給管92の中心から真下に向かう方向(垂直方向)よりも池幅方向中央側に向かう方向に向けている。この吐出口911では、底平面71に対して流体を吐出する角度θを約50度としている。角度θを約50度にすることで、底平面71に到達した流体を主トラフ8に向かう方向と凸壁部Wa1に向かう方向とに分流させることができる。この角度θは、吐出した流体が主トラフ8に向かう方向と凸壁部Wa1に向かう方向とに分流する角度であればよく、具体的には底平面71に対して30度以上60度以下であればよい。この角度に設定することで、凸壁部Wa1のように供給管92と左側壁Waとが近い場合、すなわち第1領域92a(図6参照)では、供給管92と左側壁Waの間の底平面71の上に堆積した砂にも分流した流体が到達し、その砂を流すことができる。また、供給管92の垂直方向よりも池幅方向中央の主トラフ8側に流体の吐出方向が向いているので、左側壁Wa側に流れる流体の勢いよりも主トラフ8側に流れる流体の勢いが強くなる。この流体の勢いにより、供給管92と主トラフ8の間の底平面71の上に堆積した砂を効率的に主トラフ8に向けて流すことができる。
【0047】
一方、図8(a)に二点鎖線で示した凹み壁部Wa2部分では、供給管92と左側壁Waとが離間している。このため、実線で示した吐出口911の吐出方向では、吐出した流体が分流しても凹み壁部Wa2近傍まで到達しないか、到達したとしても極僅かな量の流体しか到達しない。凹み壁部Wa2近傍に到達する流体の量が少ないと、供給管92と凹み壁部Wa2の間に堆積した砂のうち、凹み壁部Wa2近傍にある砂を十分に流すことができない。
【0048】
本実施形態では、供給管92をその軸線方向を中心として回動可能に構成しているので、集砂ノズル91からの流体の吐出方向を自在に変更できる。図8(a)には、凹み壁部Wa2の位置に対応して吐出口911から吐出される流体の吐出方向を調整した集砂ノズル91が二点鎖線で示されている。この二点鎖線で示された集砂ノズル91では、吐出口911から吐出される流体の吐出方向を、供給管92の中心から真下に向かう方向(垂直方向)よりも池幅方向外側に向けている。供給管92から左側壁Waまでの距離に応じて、吐出口911から吐出される流体の吐出方向を調整することで、第2領域92b(図6参照)のように供給管92と左側壁Waとが離間していても、左側壁Wa近傍に堆積している砂を十分に流すことができる。なお、本実施形態では、母管93と供給管92または供給管92どうしをラップジョイント934とフリーフランジ935を利用して接続しているので、接続された供給管92をその軸線を中心として無段階に回転させることができる。無段階に回転できるので、凸壁部Wa1と凹み壁部Wa2の間にある傾斜壁部Wa3(図2参照)に対向した位置にある供給管92(第3領域92c)では、図8(a)に実線で示した集砂ノズル91の吐出方向と二点鎖線で示した集砂ノズル91の吐出方向の中間方向に流体の吐出方向を設定することもできる。
【0049】
また、本実施形態では、母管93に分岐管932を備えているので、1本の母管93に対して、上流側供給管921と中間供給管922と下流側供給管923の合計3本の供給管92が沈砂池2の長手方向に並んで接続されている。これに対し、分岐管932が無く、単管931に供給管92を接続する場合は、1本の母管93に対して沈砂池2の長手方向には多くても2本の供給管92しか接続できない。すなわち、母管93の先端から沈砂池2の上流側に伸びた供給管92と下流側にお伸びた供給管92の2本になる。吐出口911から吐出される流体の吐出方向は、各供給管92毎に設定できる。従って、分岐管932がない場合と比較して、分岐管932を設けた場合は、吐出口911から吐出される流体の吐出方向を、沈砂池2の長手方向において多くの箇所で調整できるので、側壁Wの形状により柔軟に対応することが可能になる。
【0050】
図8(b)は、集砂ノズルによる吐出方向の変更を説明するための、図8(a)と同様の断面図である。この図8(b)では側壁および底平面も示されている。
【0051】
図8(b)に示すように、集砂ノズル91は、中間部分で屈曲しており実線で示した状態では、長手方向に見て逆くの字状に形成されている。逆くの字状に形成されているので、実線で示した集砂ノズル91を、供給管92との取付部分の軸線Lを中心にして180度回転させると、二点鎖線で示した様に、流体の吐出方向を池幅方向中央側から池幅方向外側に変更することができる。集砂ノズル91を逆くの字状に形成し、集砂ノズル91と供給管92との接続部分を回転可能に構成することで、吐出口911毎に流体の吐出方向を変更することが可能になる。すなわち、本実施形態における集砂ノズル91の形状および集砂ノズル91が供給管92に対して回転可能な構成が、個別方向変更手段の一例に相当する。
【0052】
図9は汚水処理施設における給水系統図である。
【0053】
図9に示すように、給水ポンプ33は、ポンプ井3の水を、攪拌ノズル62、ピット用集砂ノズル63、上流トラフ第1ノズル831、上流トラフ第2ノズル832、下流トラフ用ノズル84、および集砂手段9に選択的に供給する。給水ポンプ33に接続された給水管34には、上述の各ノズルおよび集砂手段9側に流体を供給するか否かを切り替えるための供給切替弁Vaと、給水ポンプで吸い上げた流体をポンプ井3に戻すか否かを切り替えるためのリリーフ切替弁Vbとが設けられている。供給切替弁Vaと攪拌ノズル62の間の管路には、攪拌ノズル62に流体を供給するか否かを切り替える攪拌切替弁Vcが設けられている。供給切替弁Vaとピット用集砂ノズル63の間の管路には、ピット用集砂ノズル63に流体を供給するか否かを切り替えるピット集砂切替弁Vdが設けられている。供給切替弁Vaと上流トラフ第1ノズル831の間の管路には、上流トラフ第1ノズル831に流体を供給するか否かを切り替える上流トラフ第1切替弁Ve1が設けられている。供給切替弁Vaと上流トラフ第2ノズル832の間の管路には、上流トラフ第2ノズル832に流体を供給するか否かを切り替える上流トラフ第2切替弁Ve2が設けられている。供給切替弁Vaと下流トラフ用ノズル84の間の管路には、下流トラフ用ノズル84に流体を供給するか否かを切り替える下流トラフ切替弁Vfが設けられている。また、供給切替弁Vaと集砂手段9の各ノズルヘッダ9a、9b、9c、9d、9e、9fの間の各管路には、各ノズルヘッダ9a、9b、9c、9d、9e、9fに流体を供給するか否かを切り替える集砂切替弁Vg1、Vg2、Vg3、Vg4、Vg5、Vg6がそれぞれ設けられている。これらの切替弁は、電磁弁で構成されており、図示しない制御装置によって弁の開閉が制御される。
【0054】
図10は、沈砂池の水位と水位センサを示す説明図である。
【0055】
図10に示すように、沈砂池2の集砂ピット6には水位センサ99が配置されている。この水位センサ99は、沈砂池2の水位が底平面71よりも上にある第1高水位HHWLと、第1高水位HHWLよりも下で各覆い部材13,14,15の上端位置13b(主トラフ8の上端8bすなわち主トラフ8の開口とほぼ同じ位置であり、小トラフ72の下端72bともほぼ同じ位置である。)よりも上にある第2高水位THWLと、各覆い部材13,14,15の上端位置13b付近にある第1低水位TLWLと、第2高水位THWLと第1低水位TLWLとの間の第1中間水位TMWLと、主トラフ8の上端8bよりも下側で主トラフ8の下端8aよりも上にある第3高水位HWLと、集砂ピット6内の下方にある第2低水位LWLと、第3高水位HWLと第2低水位LWLとの間の第2中間水位MWLと、第2低水位LWLよりさらに低いインターロック水位LLWLになったことをそれぞれ検知して出力するものである。
【0056】
図11は、汚水処理施設における砂の除去動作の流れを示すフローチャートである。
【0057】
上述の構成を有する汚水処理施設1の動作について図1図2および図11等を参照して説明する。沈砂池2の池底部にある程度砂が堆積した所定の時期に、汚水処理施設1は堆積した砂の除去動作を行う。この時期は、例えば月に一回など定期的でもよく、沈砂池2に流入または沈砂池2から排出された汚水の合計流量が一定量になったときでもよい。砂の除去動作では、先ず図1に示したダム装置4の流入ゲート42を駆動して流入口411を閉塞し、汚水の沈砂池2への流入を堰き止める(ステップS1)。次に、揚水ポンプ31を駆動して沈砂池2の水位を低下させる。ポンプ井3の水位が所定値まで下がったら揚水ポンプ31を停止する(ステップS2)。そして、数分程度給水ポンプ33を駆動し、図2に示す攪拌ノズル62から流体を吐出させる。給水ポンプの停止後、揚砂ポンプ61を駆動する。沈砂池2の水位が第2高水位THWL(図10参照)まで低下したら、再度給水ポンプ33を駆動し、図2に示す攪拌ノズル62から流体を吐出させる。そして、揚砂ポンプ61の駆動を、以下に説明する動作モードAに設定する(ステップS3)。揚砂ポンプ61は、動作モードAまたは動作モードBのうちの何れか一方のモードで動作する。動作モードAでは、水位センサ99からの第1低水位TLWL(図10参照)を示す出力に応じて駆動を停止し、第2高水位THWL(図10参照)を示す出力に応じて駆動を再開する制御が自動で実行される。この動作モードAは、水位が各覆い部材13,14,15の上端位置13bよりも上になるように維持されるモードである。したがって、動作モードAでは、各覆い部材13,14,15、トラフ第1吐出口831a、トラフ第2吐出口832a、およびトラフ第3吐出口84aは水中に没した状態になる。動作モードBでは、水位センサ99からの第2低水位LWL(図10参照)を示す出力に応じて揚砂ポンプ61の駆動を停止し、第3高水位HWL(図10参照)を示す出力に応じて駆動を再開する制御が自動で実行される。この動作モードBは、水位が小トラフ72の下端72bよりも下になるように維持されるモードである。したがって、底平面71、小トラフ72、およびそれらの上に堆積した砂、並びに集砂手段9は大気中に露出した状態になる。一方、図1に示す給水ポンプ33は、砂の除去動作が終わるまで駆動が継続される。集砂ピット6に搬送された砂は揚砂ポンプ61が駆動しているときに、揚砂ポンプ61によって沈砂池2外の不図示の沈砂分離機に運ばれる。なお、水位センサ99が第1高水位HHWLまたはインターロック水位LLWL(図10参照)になったことを検知した場合、何らかの異常が発生したと考えられるため、アラートを表示して汚水処理施設1は砂の除去動作を停止する。
【0058】
その後、図2に示す攪拌ノズル62と上流トラフ第1ノズル831および上流トラフ第2ノズル832から一定時間流体を吐出させて上流側第1主トラフ815および上流側第2主トラフ816に堆積した砂を集砂ピット6に流す(ステップS4)。なお、このステップS4では、上流トラフ第1ノズル831と上流トラフ第2ノズル832のうちの一方から一定時間流体を吐出した後、他方から一定時間流体を吐出させてもよい。攪拌ノズル62と上流トラフ第1ノズル831および上流トラフ第2ノズル832からの流体の吐出が停止したら、揚砂ポンプ61を動作モードBに切り替える(ステップS5)。そして、水位が第3高水位HWL以下であることを検出したら、第5ノズルヘッダ9eに設けられた吐出口911(図6参照)から流体を吐出させる。この吐出により、第5ノズルヘッダ9eが配置されている付近の右側壁Wbから上流側第2主トラフ816の間の底平面71および小トラフ72の上に堆積した砂を上流側第2主トラフ816に流すことができる。その砂を十分に流せる所定時間が経過したら、第5ノズルヘッダ9eに設けられた吐出口911の流体吐出を継続しながら、揚砂ポンプ61を動作モードAに切り替える。その後、水位が第1中間水位TMWL以上であることを検出したら、第5ノズルヘッダ9eに設けられた吐出口911からの流体の吐出を停止する(ステップS6)。そして、攪拌ノズル62と上流トラフ第2ノズル832から一定時間流体を吐出させて上流側第2主トラフ816に流された砂を集砂ピット6に送る(ステップS7)。攪拌ノズル62と上流トラフ第2ノズル832からの流体の吐出が停止したら、揚砂ポンプ61を動作モードBに切り替える(ステップS8)。そして、水位が第3高水位HWL以下であることを検出したら、第2ノズルヘッダ9bに設けられた吐出口911から流体を吐出させる。第2ノズルヘッダ9bが配置されている付近の左側壁Waから上流側第1主トラフ815の間の底平面71および小トラフ72の上に堆積した砂を十分に流せる所定時間が経過したら、第2ノズルヘッダ9bに設けられた吐出口911の流体吐出を継続しながら、揚砂ポンプ61を動作モードAに切り替える。その後、水位が第1中間水位TMWL以上であることを検出したら、第2ノズルヘッダ9bに設けられた吐出口911からの流体の吐出を停止する(ステップS9)本実施形態では、左側壁Waのうち、凹み壁部Wa2および傾斜壁部Wa3の近傍にある吐出口911は、供給管92から左側壁Waまでの距離に応じて左側壁Waにある程度の流体が到達するように流体の吐出方向が調整されている。従って、第2ノズルヘッダ9bが配置されている付近の左側壁Waから上流側第1主トラフ815の間の底平面71および小トラフ72の上に堆積した全ての砂を上流側第1主トラフ815まで流すことができる。第2ノズルヘッダ9bに設けられた吐出口911からの流体の吐出を停止した後、攪拌ノズル62と上流トラフ第1ノズル831から一定時間流体を吐出させて上流側第1主トラフ815に流された砂を集砂ピット6に送る(ステップS10)。攪拌ノズル62と上流トラフ第2ノズル832からの流体の吐出が停止したら、揚砂ポンプ61を動作モードBに切り替える(ステップS11)。その後、上述のステップS6~S10の動作と同様に、第4ノズルヘッダ9dに設けられた吐出口911からの流体の吐出と所定時間経過後の動作モードAへの切り替え(ステップS12)、攪拌ノズル62と上流トラフ第2ノズル832からの流体の吐出(ステップS13)、動作モードBへの切替(ステップS14)、第1ノズルヘッダ9aに設けられた吐出口911からの流体の吐出と所定時間経過後の動作モードAへの切り替え(ステップS15)、攪拌ノズル62と上流トラフ第1ノズル831からの流体の吐出(ステップS16)の順に動作させることで、集砂ピット6より上流側の池底部に堆積した砂は全て沈砂池2の外部に搬出される。なお、各ノズルヘッダ9a、9b、9d、9eから流体を吐出する順番は任意の順で構わない。しかし、集砂ピット6から遠い側に堆積した砂を先に流すと、流そうとする砂とともに集砂ピット6に近い側に堆積している砂が主トラフ8に崩れ落ちて主トラフ内に砂が溜まってしまい、主トラフ8内の砂を集砂ピット6に送ることが困難になってしまうことがある。このため、集砂ピット6に近い側の第2ノズルヘッダ9bおよび第5ノズルヘッダ9eから流体を吐出した後に、集砂ピット6から遠い側の第1ノズルヘッダ9aおよび第4ノズルヘッダ9dから流体を吐出することが望ましい。
【0059】
上述の動作により上流側に堆積した砂を取り除いた後、攪拌ノズル62と下流トラフ用ノズル84から一定時間流体を吐出させて下流側主トラフ82に堆積した砂を集砂ピット6に流す(ステップS17)。攪拌ノズル62と下流トラフ用ノズル84からの流体の吐出を停止が停止したら、揚砂ポンプ61を動作モードBに切り替える(ステップS18)。そして、水位が第3高水位HWL以下であることを検出したら、第6ノズルヘッダ9fに設けられた吐出口911から流体を吐出させる。第6ノズルヘッダ9fが配置されている付近の右側壁Wbから下流側主トラフ82の間の底平面71および小トラフ72の上に堆積した砂を十分に流せる所定時間が経過したら、第6ノズルヘッダ9fに設けられた吐出口911の流体吐出を継続しながら、揚砂ポンプ61を動作モードAに切り替える。その後、水位が第1中間水位TMWL以上であることを検出したら、第6ノズルヘッダ9fに設けられた吐出口911からの流体の吐出を停止する(ステップS19)。そして、攪拌ノズル62と下流側主トラフ82から一定時間流体を吐出させて下流側主トラフ82に流された砂を集砂ピット6に送る(ステップS20)。攪拌ノズル62と下流側主トラフ82からの流体の吐出が停止したら、揚砂ポンプ61を動作モードBに切り替える(ステップS21)。そして、上述のステップS19とS20の動作と同様に、第3ノズルヘッダ9c設けられた吐出口911からの流体の吐出と所定時間経過後の動作モードAへの切り替え(ステップS22)、攪拌ノズル62と下流トラフ用ノズル84からの流体の吐出(ステップS23)の順に動作させることで、集砂ピット6より下流側の池底部に堆積した砂は全て沈砂池2の外部に搬出される。最後に、ピット用集砂ノズル63から流体を吐出することで、集砂ピット傾斜面6bの上に堆積した砂を集砂ピット6に流す(ステップS24)。これらの動作が全て完了したら、給水ポンプ33を停止させ、所定時間経過後に揚砂ポンプ61も停止させる。
【0060】
この砂の除去動作では、揚砂ポンプ61を動作モードAから動作モードBに切り替えた時に、水位が第3高水位HWL以下であることを検出するまでは、沈砂池2への流体の供給を停止している。これにより、水位の低下速度を速めることができる。その際、沈砂池2への流体の供給を停止するために、図9に示す供給切替弁Vaを閉じてリリーフ切替弁Vbを開放し、給水ポンプ33がくみ上げた流体をポンプ井3に戻している。こうすることで、給水ポンプ33の駆動を継続したまま、沈砂池2への流体の供給を停止できる。ここまでに説明した砂の除去動作における、ステップS4、S7、S10、S13、S16、S17、S20、およびS23それぞれが水中吐出工程の一例に相当する。また、ステップS6、S9、S12、S15、S19、およびS22それぞれが大気中吐出工程の一例に相当する。すなわち、本実施形態では、大気中吐出工程の実行後に水中吐出工程を実行する処理を一組の集砂処理(ステップS6とS7、S9とS10、S12とS13、S15とS16、S19とS20、S22とS23の各組合せ)として、その集砂処理を複数回実行している。また、最初の集砂処理(ステップS6とS7)を行う前に水中吐出工程(ステップS4)を実行している。大気中吐出工程の際に主トラフ8内に砂が残留していると、大気中吐出工程によって主トラフ8に流された砂が残留した砂に上乗せされてしまい、主トラフ8内に大量の砂が堆積しまう虞がある。また、大気中吐出工程の際に、主トラフ8内が砂で満たされて、あふれた砂が底平面71に残留してしまう虞もある。本実施形態では、底平面71から主トラフ8に流された砂は、一組の集砂処理のなかで集砂ピット8まで搬送されるので、主トラフ8内に砂が残留してしまうことがない。また、最初の集砂処理(ステップS6とS7、およびS19とS20の各組合せ)を行う前に水中吐出工程(ステップS4およびS17)を実行しているので、最初の集砂処理の際にも主トラフ8内に砂が残留していることがない。
【0061】
なお、本実施形態では、上述の砂の除去動作を実行している時は、給水ポンプ33がくみ上げる流体の量よりも揚砂ポンプ61がくみ上げる流体の量の方が少し多くなるように設定されている。このため、除去動作を実行している間に揚砂ポンプ61は停止と再開を複数回繰り返すことになる。しかし、揚砂ポンプ61は駆動と停止を繰り返すと、駆動開始時の突入電流によりポンプ寿命が低下してしまう。この対策として、給水ポンプ33におけるくみ上げ能力と揚砂ポンプ61における流体のくみ上げ能力を近づけることで砂の除去動作における水位の変化を最小限にしてもよい。また、水位センサ99が、動作モードAでは第1中間水位TMWL、動作モードBでは第2中間水位MWLまで低下したことを検知したら、その時点で流体を吐出しているノズルに加え、他のノズルから追加で流体を吐出させてもよい。流体を吐出するノズルを増やすことで、流体の流れに対する負荷(絞り抵抗)が減るので、給水ポンプ33が吸い上げる流体が増加し、結果として多くの流体を沈砂池2に供給することができる。これにより第1低水位TLWLまたは第2低水位LWLになりにくくなるので、揚砂ポンプ61が停止と再開を実行する回数を減らすことができる。ここで、他のノズルは、その次に吐出する予定のノズルヘッダに設けられた集砂ノズル91であることが望ましい。次に吐出する予定のノズルヘッダから流体を吐出させることで、次に流す底平面71および小トラフ72にある砂を予備的に流しておくことができるので、砂の残留をより抑制することができる。また、追加で吐出させる流体は、他の設備に蓄えられた流体であってもよい。さらに、第1低水位TLWLまたは第2低水位LWLになっても揚砂ポンプ61を停止しないで、その停止の代わりに給水ポンプ33がくみ上げた流体に加えて他の設備に蓄えられた流体を沈砂池2に供給するように構成してもよい。この様に構成した場合、他の設備に蓄えられた流体は、第2高水位THWLまたは第3高水位HWLになったら沈砂池2への供給を停止すればよい。揚砂ポンプ61が停止と駆動を繰り返す回数を減らすことで、揚砂ポンプ61の劣化を抑制して寿命を延ばすことができる。
【0062】
ところで、本実施形態では、吐出口911を沈砂池2の池底部近傍に配置している。これに対し、例えば特開2011-245391には、吐出口911を備える集砂手段9を沈砂池2の上側部分に配置し、側壁Wに向かって流体を吐出し、その側壁Wの壁面を流体が流下するようにした沈砂池2が提案されている。
【0063】
図12は、沈砂池の上側部分に集砂手段を配置した場合と沈砂池の池底部近傍に集砂手段を配置した場合を示す図5と同様の沈砂池の断面図である。この図12では、沈砂池の上側部分に配置された集砂手段は二点鎖線で示されている。また、配管および側壁を示す線のうち、沈砂池の上側部分に配置された集砂手段と交差する線は、その交差した部分を省略して示している。
【0064】
図12には、沈砂池2の上側部分に、仮想の上側ノズルヘッダ90が示されている。この上側ノズルヘッダ90は、第1ノズルヘッダ9aの代わりに用いられるものである。沈砂池2の上流端には、斜めに起立した除塵機5が配置されている。集砂手段9は、除塵機5に干渉しないように配置する必要がある。従って、沈砂池2の上側部分に配置される上側ノズルヘッダ90は、図12に示すように沈砂池2の池底部近傍に配置する場合と比較して下流側に位置することになる。つまり、上側ノズルヘッダ90は、第1ノズルヘッダ9aよりも、距離Sだけ下流側に配置せざるを得ない。上述したように、除塵機5を構成する無端チェーン51および濾過スクリーン53の上側部分は、底平面71および主トラフ8と長手方向において重複している。このため、上側ノズルヘッダ90から流体を吐出しても、底平面71のうち、最上流側の部分には吐出した流体が到達しない部分が発生してしまう。除塵機5および上側ノズルヘッダ90を、図5図12に示した位置よりも距離S分だけ上流側に配置すれば、底平面71の最上流側の部分まで流体を到達させることができる。しかし、その配置では沈砂池2の長手方向の長さが長くなってしまう。その結果、沈砂池2が大型化して沈砂池2の設置に大きな土地が必要になる上に、沈砂池2が高価になってしまう。本実施形態の沈砂池2は、第1ノズルヘッダ9aを沈砂池2の池底部近傍に配置しているので、沈砂池2の上側部分に配置した上側ノズルヘッダ90を用いる場合と比較して、沈砂池2の大型化を抑制し、沈砂池2を安価に提供できるといった効果がある。
【0065】
次に、接続面73の変形例について説明する。以下に説明する変形例においては、図1図11に示した実施形態との相違点を中心に説明し、図1図11に示した実施形態における構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略する。
【0066】
図13は、接続面の変形例を示す図3と同様の断面図である。
【0067】
この変形例では、接続面73を曲面にで形成している点が、図3に示された例と異なる。接続面73は、長手方向に沿って延在する稜線部731と、第1接続面732と、第2接続面733とで構成されている。図13に示すように、第1接続面732および第2接続面733は、1/4円の断面形状をしている。つまり、接続面73は、全体として上側に突出した半円柱形状の表面で構成されている。稜線部731は、その半円柱形状の上端の線で構成されている。この変形例においても、図3に示された例と同様に、沈砂池2内の汚水の中を接続面73に沈降してくる砂が、その自重により接続面73から滑り落ちやすい。ただし、稜線部731付近では、接続面73の接平面における傾斜角度が緩くなってしまうので、その付近では砂が残留してしまう虞がある。一方、接続面73を構成するコンクリートの池幅方向の厚みが稜線部731の近傍部分でも厚いので、稜線部731部分が欠損しにくいという効果がある。なお、第1接続面732と第2接続面733のうちの一方を図3に示された例のように平面状に形成し、他方を図13に示された変形例のように曲面状に形成してもよい。さらに、第1接続面732と第2接続面733の一方または両方を、曲面と平面が複合した面に形成してもよい。
【0068】
次いで集砂手段9の変形例について説明する。
【0069】
図14(a)は、図8に示す供給管と集砂ノズルの第1変形例を示す図であり、図14(b)は、図8に示す供給管と集砂ノズルの第2変形例を示す図である。
【0070】
この第1変形例は、供給管92にラップジョイント934が配置されておらず、供給管92と分岐管932とがフランジ結合されている点と、集砂ノズル91に球継手912を設けている点が図8(a)に示した例と異なる。図14(a)では、凸壁部Wa1に対応した集砂ノズル91が実線で示されており、凹み壁部Wa2に対応した集砂ノズル91が二点鎖線で示されている。この変形例では、供給管92と各吐出口911の間に球継手912が設けられている。この球継手912により、供給管92の軸線を中心とした回転方向だけでなく、それ以外の様々な方向にも流体の吐出方向を無段階に変更できる。従って、吐出口911毎に吐出方向のきめ細かい調整が可能になる。なお、供給管92にラップジョイント934を配置し、さらに集砂ノズル91に球継手912を設けてもよい。この場合、ラップジョイント934は、一括変更手段の一例に相当し、球継手912は、個別方向変更手段の一例に相当する。
【0071】
第2変形例では、供給管92にラップジョイント934が配置されておらず、供給管92と分岐管932とがフランジ結合されている点と、供給管92の周方向に集砂ノズル91の装着部924が複数形成されている点が図8(a)に示した例と異なる。図14(b)では、凸壁部Wa1に対応した集砂ノズル91が実線で示されており、凹み壁部Wa2に対応した集砂ノズル91が二点鎖線で示されている。この変形例では、集砂ノズル91の装着部924が供給管92の周方向に6か所形成されている。これにより、供給管92を分岐管932に固定した後に、6か所の装着部924のうちから任意の装着部924に集砂ノズル91を装着できる。なお、集砂ノズル91装着前は、全ての装着部924に栓部材が取り付けられている。集砂ノズル91を装着する場合は、その栓部材を取り除いてから集砂ノズル91を装着する。なお、供給管92にラップジョイント934を配置し、さらに供給管92に装着部924を形成してもよい。この場合、ラップジョイント934は、一括変更手段の一例に相当し、装着部924は、個別方向変更手段の一例に相当する。なお、この変形例では、装着部924を周方向に6か所形成しているが、この装着部924は、2か所以上5か所以下でもよく、7か所以上でもよい。
【0072】
次に、主トラフ8、各覆い部材13,14,15、および底平面71の変形例について説明する。
【0073】
図15は、主トラフ、覆い部材、および底平面の変形例を示す図5と同様の断面図である。
【0074】
この変形例では主トラフ8、各覆い部材13,14,15、および底平面71を集砂ピット6に向けて下方に傾斜させて配置している点が、図5に示された例と異なる。なお、図15では、傾斜を分かりやすく示すため、主トラフ8、各覆い部材13,14,15、および底平面71の傾斜を誇張して示している。図15に示すように、底平面71は、集砂ピット6に向かって集砂ピット6側端部が最も深くなるように長手方向に向かって下方に約0.5度傾斜している。また、上流側第1主トラフ815および下流側主トラフ82も、底平面71と同様に集砂ピット6に向かうにしたがって下方に約0.5度傾斜しており、集砂ピット6に接続した部分が最も深くなっている。さらに、第1覆い部材13および第3覆い部材15も、集砂ピット6に向かうにしたがって下方に約0.5度傾斜しており、集砂ピット6に接続した部分が最も深くなっている。なお、図15に図示されていない上流側第1主トラフ815および第2覆い部材14も、同様に集砂ピット6に向かうにしたがって下方に約0.5度傾斜している。この変形例では、各覆い部材13,14,15を設けることで、主トラフ8内の砂の搬送力を高めるだけでなく、主トラフ8および各覆い部材13,14,15を傾斜させることで各覆い部材13,14,15内に吐出された流体の流れが補助される。これにより、主トラフ8に堆積した砂をより長い距離搬送することができる。なお、主トラフ8の長さに合わせて、傾斜角度は適宜設定すればよい。
【0075】
図16は、図15に示す変形例における、沈砂池の上流側端部近傍の底平面と集砂ピット近傍の底平面とを示した図8(a)と同様の断面図である。この図16では側壁および底平面も示されている。
【0076】
図16は、図15に示すように集砂ピット6側端部が最も深くなるように集砂ピット6側に向かって底平面71を下方に傾斜させた場合の、底平面71の高さ方向の位置の相違を示している。図16では、沈砂池2の上流側端部近傍の底平面71は実線で示されており、集砂ピット6近傍の底平面71は二点鎖線で示されている。図16に示すように、この場合は沈砂池2の上流側端部近傍の底平面71よりも、集砂ピット6近傍の方が低い位置に底平面71が存在している。同図に示されているように、同一の位置にある吐出口911から流体を吐出したとしても、沈砂池2の上流側端部と集砂ピット6近傍では、底平面71の高さ方向の位置が異なるので、吐出した流体の底平面71への到達点に距離Yの違いが発生してしまう。特に長手方向の長さが長い沈砂池2では、距離Yが長くなってしまい、沈砂池2の上流側端部と集砂ピット6近傍の一方に最適な吐出方向でも他方には非効率的な吐出方向になってしまうことがある。本実施形態では、吐出口911からの流体の吐出方向を変更することができるので、底平面71の高さ(供給管92から底平面71までの距離)に対応させて最適な吐出方向に流体を吐出することができる。
【0077】
次に、主トラフ8の高さを高くした場合の変形例について説明する。
【0078】
図17は、主トラフの高さ高くした場合の水位の検出例を示す図10と同様の説明図である。
【0079】
図10に示した例では、各覆い部材13,14,15は、主トラフ8の高さの半分を超える高さに形成されていた。そして、各覆い部材13,14,15の上端位置13bは、小トラフ72の下端72b(主トラフ8の上端8b)とほぼ同じ位置であった。上述したように、揚砂ポンプ61の動作モードAは、各覆い部材13,14,15が水中に没した状態を維持する制御モードであるため、各覆い部材13,14,15の上端位置13bよりも上に第1低水位TLWLを設定する必要がある。また、揚砂ポンプ61の動作モードBは、水位が小トラフ72の下端72bよりも下になるように維持された状態にする制御モードであるため、小トラフ72の下端72bよりも下に第3高水位HWLを設定する必要がある。図10に示した例では、上端位置13bの上に第1低水位TLWLを設定し、下端72bよりも下に第3高水位HWLを設定するという条件を満たすために、第1低水位TLWLよりも下に第3高水位HWLを設定せざるを得ない。これにより、動作モードAと動作モードBでの水位の維持範囲に重複がなくなり、一方のモードから他方のモードに切り替えた際に、水位が他方モードの範囲内に入るまで、待機時間が発生していた。図17に示すように、主トラフ8の高さを高くし、主トラフ8の下側部分に各覆い部材13,14,15を配置した場合は、各覆い部材13,14,15の上端位置13bは、小トラフ72の下端72bよりも下方に位置する。従って、上記条件を満たしたとしても、第1低水位TLWLよりも上に第3高水位HWLを設定することができる。すなわち、動作モードAでの水位の範囲D1の一部と動作モードBでの水位の範囲D2の一部を重複させることができので、モード切替後の待機時間を削除または削減できる。
【0080】
本発明は上述の実施形態や変形例に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。たとえば、本実施形態では、下水および雨水が流入してくる汚水処理施設1の沈砂池2に本発明を用いているが、雨水のみが流入してくる雨水処理設備の沈砂池にも適用できる。また、本実施形態では、集砂ピット6よりも上流側の底平面71および小トラフ72に堆積した砂を流した後に、集砂ピット6よりも下流側の底平面71および小トラフ72に堆積した砂を流しているが、先に下流側の底平面71および小トラフ72に堆積した砂を流してもよい。また、本実施形態では、除塵機5および突出壁10を沈砂池2の上流側端部に配置した例を示したが、除塵機5および突出壁10を沈砂池2の下流側端部に配置してもよい。除塵機5および突出壁10を沈砂池2の下流側端部に配置した場合、下流側主トラフ82を2つ設け、その突出壁10対して左側壁Wa側と右側壁Wb側にそれぞれに配置すればよい。そして、それら2つの下流側主トラフ82の間であって、その突出壁10が設けられた領域を除いた部分に、稜線部と第1接続面と第2接続面とを形成すればよい。また、本実施形態では、主トラフ8の、集砂ピット6とは反対側の端部(先端部分)に、搬送空間FSに流体を吐出する吐出口を1つづつ設けたが、各覆い部材13,14,15延在方向の中間位置等に吐出口を有するノズルを追加で設けてもよい。特に、各覆い部材13,14,15の延在方向の長さが長い場合または流体の吐出圧が低い場合には、中間位置等にノズルを追加することが望ましい。また、本実施形態では、各覆い部材13,14,15が水中に完全に没した状態で、搬送空間FSに流体を吐出したが、各覆い部材13,14,15内の一部が水中に没していれば、搬送空間FS内に大気が残存している状態で流体を吐出してもよい。また、本実施形態では、トラフ第1吐出口831a、トラフ第2吐出口832a、またはトラフ第3吐出口84aが完全に水中に没した状態で流体を吐出したが、それらの吐出口831a,832a,84aの一部が水中に没し、残りの部分が大気中に露出した状態で流体を吐出させてもよい。ただし、これらの場合、特に大気と水との界面部分で吐出した流体の流れに損失が発生する。従って、各覆い部材13,14,15とトラフ第1吐出口831a、トラフ第2吐出口832a、トラフ第3吐出口84aが完全に水中に没した状態で、それらの吐出口831a,832a,84aから流体を吐出することが望ましい。
【0081】
本実施形態またはその変形例によれば、砂を効率的に集砂できる。また、底平面71、小トラフ72、および接続面73に堆積した砂を残留させることなく流体で流すことができる。また、左側壁Waまたは右側壁Wbが直線状に形成されていない沈砂池でも、直線状の供給管92を用いることができるので、沈砂池2を安価に提供できる。加えて、沈砂池2の設計時や供給管92の作成時に側壁Wの形状が不明でも、沈砂池2を施工する際に吐出方向を調整することができるので、様々な形状の沈砂池2に柔軟に対応できる。さらに、接続面73に沈降した砂は、第1接続面732又は第2接続面733を滑り落ちて上流側第1主トラフ815又は上流側第2主トラフ816に堆積するので、上流側第1主トラフ815および上流側第2主トラフ816の間に砂が残留してしまうことがない。また、本実施形態では、第1底面711および第2底面712の傾斜角度は、堆積した砂を吐出口911から吐出される流体で流すことができる程度の緩い傾斜角度(約5度)にしている。これにより、地面を深く掘り下げなくても沈砂池2を作成できる。一方、第1底面711および第2底面712よりも接続面73を急角度にすることで、吐出口911から吐出される流体が接続面73に到達しない構成であるにも関わらず、接続面73に沈降してきた砂を上流側第1主トラフ815または上流側第2主トラフ816に堆積させることができる。
【0082】
また、沈砂池2は、長手方向の長さが20メートル以上に達するものも多い。従来の沈砂池2では、主トラフ8は、集砂ピット6側に向かって下方に例えば1度傾斜させていた。このため、主トラフ8の池端側端部(先端部分)が配置される深さ位置に対し、集砂ピット6側端部(後端部分)は沈砂池2の長さに比例した、より深い位置に配置される。また、底平面71は主トラフ8と同一の傾斜角度で形成されるので、底平面71も同様に、集砂ピット6側が深い位置に配置される。沈砂池2の長手方向の長さが長い場合、主トラフ8および底平面71における集砂ピット6側部分は、沈砂池2の長手方向の長さが短い場合と比較してよりいっそう深い位置に配置されることになる。沈砂池2を施工する場合、沈砂池2の最も深い位置よりも下まで地面を掘り下げ、その後にコンクリートで沈砂池2を形作っていく。主トラフ8および底平面71が傾斜していると、傾斜していない場合と比較して集砂ピット6を深い位置に配置することになるため、地面を深く掘り下げる必要があり、掘り下げ工事に手間がかかる。また、掘り下げた位置からコンクリートで底平面71を形作る際に、底平面71に傾斜をつけるために集砂ピット6側から沈砂池の端部に向かって徐々にコンクリートを厚くしていく必要があり、コンクリートを大量に使用していた。これらにより、沈砂池2が高価になってしまうという問題があった。本実施形態では、覆い部材13,14,15を設けて集砂効率を高めているので、主トラフ8および底平面71の傾斜角度を緩くしても、主トラフ8内の砂を集砂ピット6に搬送できる。この傾斜角度は、0度以上1度未満が好ましく、0度以上0.5度以下がより好ましい。傾斜角度を緩くすることので、地面を深く掘り下げる必要がなく、コンクリートの使用量も少なくてすむので、沈砂池2を安価に作成できる。
【0083】
本実施形態の沈砂池からは、以下の発明概念も抽出できる。
【0084】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
側壁よりも下方になる池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記池底部に設けられ、前記溝に接続した底面と、
前記底面に沈降した砂を前記側壁側から前記溝に向かって流すための流体を吐出する複数の吐出口と、
前記吐出口が設けられた供給管とを有し、
前記複数の吐出口には、該吐出口が設けられた前記供給管の軸線よりも池幅方向中央側に向かって流体を吐出するものと、該供給管の軸線よりも池幅方向外側に向かって流体を吐出するものとがあることを特徴とする沈砂池。
【0085】
また、本実施形態の沈砂池からは、以下の発明概念も抽出できる。
【0086】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
側壁よりも下方になる池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記池底部に設けられ、前記溝に接続した底面と、
前記底面に沈降した砂を前記側壁側から前記溝に向かって流すための流体を吐出する吐出口とを有し、
前記吐出口から吐出される流体の吐出方向を変更可能にしたことを特徴とする沈砂池。
【0087】
この沈砂池において、
前記吐出口が設けられた供給管と、
前記供給管に流体を供給する母管とを有し、
前記供給管は、該供給管の軸線方向を中心として前記母管に対して回動可能なものであってもよい。
【0088】
また、上記沈砂池において、
前記供給管は、複数の吐出口を備えたものであってもよい。
【0089】
さらに、上記沈砂池において、
前記吐出口が設けられた供給管を有し、
前記吐出口は、前記供給管と該吐出口の間に配置された球継手によって流体の吐出方向を変更可能なものであってもよい。
【0090】
加えて、上記沈砂池において、
前記吐出口が着脱可能に設けられた供給管を有し、
前記供給管は、前記吐出口が装着される装着部を該供給管の周方向に複数有するものであってもよい。
【0091】
また、本実施形態の沈砂池からは、以下の発明概念も抽出できる。
【0092】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
側壁よりも下方になる池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記池底部に設けられ、前記溝に接続した底面と、
前記底面に沈降した砂を前記側壁側から前記溝に向かって流すための流体を吐出する吐出口と
前記側壁よりも池幅方向中央側に配置され、複数の前記吐出口が前記所定方向に並んだ供給管とを有し、
前記供給管は、前記側壁から池幅方向に第1間隔をあけて延在する第1領域と、該側壁から池幅方向に第2間隔をあけて延在する第2領域を有するものであり、
前記第1領域に配置された吐出口と前記第2領域に配置された吐出口とは、互いに独立して流体の吐出方向を変更可能であることを特徴とする沈砂池。
【0093】
前記第1領域に設けられた吐出口は複数であってもよいし1個であってもよい。前記第1領域に設けられた吐出口が複数である場合には、それらの吐出口からの流体の吐出方向をまとめて変更可能であることが好ましい。また、前記第2領域に設けられた吐出口も複数であってもよいし1個であってもよい。前記第2領域に設けられた吐出口が複数である場合にも、それらの吐出口からの流体の吐出方向をまとめて変更可能であることが好ましい。ここにいう「まとめて変更可能」とは、例えば、前記供給管のうちの、前記第1領域の部分と前記第2領域の部分とが、該供給管の軸線方向を中心として別個に回動することで実現される。加えて、前記供給管のうちの、前記第1領域の両端部分に回動可能部が設けられていてもよく、前記第2領域の両端部分に回動可能部が設けられていてもよい。なお、前記供給管は、直線状の管であってもよいし、多少曲がった部分が設けられた管であってもよい。
【0094】
前記供給管は、前記第1領域と前記第2領域をつなぐ第3領域が設けられたものであり、
前記第3領域に設けられた吐出口は、前記第1領域に設けられた吐出口および前記第2領域に設けられた吐出口とは別に、流体の吐出方向を変更可能であるものであってもよい。
【0095】
前記第3領域は、前記側壁との間隔が延在方向に、漸次変化する傾斜した領域であってもよいし、段階的に変化する領域であってもよい。
【0096】
また、前記第3領域に設けられた吐出口も複数であってもよいし1個であってもよい。前記第3領域に設けられた吐出口が複数である場合には、それらの吐出口からの流体の吐出方向もまとめて変更可能であることが好ましい。ここにいう「まとめて変更可能」とは、例えば、前記供給管のうちの、前記第3領域の部分が、前記第1領域の部分および前記第2領域の部分とは別に、該供給管の軸線方向を中心として回動することで実現される。
【0097】
また、本実施形態の沈砂池からは、以下の発明概念も抽出できる。
【0098】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
側壁よりも下方になる池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記池底部に設けられ、前記溝に接続した底面と、
前記側壁に対向して配置され、前記底面に沈降した砂を該側壁側から前記溝に向かって流すための流体を吐出する複数の吐出口とを有し、
前記側壁は、池幅方向中央側に突出し前記所定方向に延在した凸壁部と該池幅方向外側に向かって凹み前記所定方向に延在した凹み壁部とを有するものであり、
前記吐出口は、前記凸壁部と前記凹み壁部それぞれに対向して配置されたものであり、
前記凸壁部に対向して配置された吐出口から吐出される流体の吐出方向に対して、前記凹み壁部に対向して配置された吐出口から吐出される流体の吐出方向を異なる方向に変更可能な方向変更手段を備えたことを特徴とする沈砂池。
【0099】
さらに、本実施形態の沈砂池からは、以下の発明概念も抽出できる。
【0100】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
側壁よりも下方になる池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記池底部に設けられ、前記溝に接続した底面と、
前記側壁に対向して配置され、前記所定方向に延在した供給管と、
前記供給管に配置され、前記底面に沈降した砂を該側壁側から前記溝に向かって流すための流体を吐出する複数の吐出口とを有し、
前記側壁は、池幅方向中央側に突出し前記所定方向に延在した凸壁部と該池幅方向外側に向かって凹み前記所定方向に延在した凹み壁部とを有するものであり、
前記吐出口は、前記凸壁部に対向した位置と前記凹み壁部に対向した位置それぞれに配置されたものであり、
前記供給管は、前記凸壁部に対向した位置に配置された吐出口と、前記凹み壁部に対向した位置に配置された吐出口との間に、吐出口から吐出される流体の吐出方向を変更可能な方向変更手段を備えたものであることを特徴とする沈砂池。
【0101】
また、この沈砂池において、
前記側壁は、前記凸壁部と前記凹み壁部の間に形成され、前記所定方向および前記池幅方向に対して傾斜した方向に延在した傾斜壁部を有し、
前記吐出口は、前記傾斜壁部に対向した位置にも配置されたものであり、
前記供給管は、前記凸壁部に対向して配置された吐出口と、前記傾斜壁部に対向して配置された吐出口との間に、該吐出口から吐出される流体の吐出方向を変更可能な第1方向変更手段を備え、
前記凹み壁部に対向して配置された複数の吐出口と、前記傾斜壁部に対向して配置された吐出口との間に、前記吐出口から吐出される流体の吐出方向を変更可能な第2方向変更手段を備えたものであってもよい。
【0102】
加えて、本実施形態の沈砂池からは、以下の発明概念も抽出できる。
【0103】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
側壁よりも下方になる池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記池底部に設けられ、前記溝に接続した底面と、
前記底面に沈降した砂を前記側壁側から前記溝に向かって流すための流体を吐出する複数の吐出口と、
前記複数の吐出口のうちの少なくとも2つの吐出口から吐出される流体の吐出方向をまとめて変更可能な一括方向変更手段と、
前記吐出口から出される流体の吐出方向を該吐出口毎に変更可能な個別方向変更手段とを備えたことを特徴とする沈砂池。
【0104】
また、本実施形態の沈砂池からは、以下の発明概念も抽出できる。
【0105】
池幅方向の端面を構成する一方の側壁と他方の側壁の間で、受け入れた水を該池幅方向と直交する直交方向に流下させ該水に含まれている砂を沈降させる沈砂池において、
池底部に設けられ、前記池幅方向に間隔をあけて、前記直交方向にそれぞれ延在した第1溝および第2溝と、
前記第1溝と前記第2溝の間に形成され、前記池底部から上方に突出した突出壁とを有し、
前記池底部のうち前記第1溝と前記第2溝の間であって前記突出壁が設けられた領域を除いた部分に、前記直交方向に沿って延在する稜線部と、該稜線部と前記第1溝とを接続する第1接続面と、該稜線部と前記第2溝とを接続する第2接続面とが形成されていることを特徴とする沈砂池。
【0106】
前記第1接続面は、前記稜線部から前記第1溝に向かうにしたがって下方に傾斜した傾斜面であり、
前記第2接続面は、前記稜線部から前記第2溝に向かうにしたがって下方に傾斜した傾斜面であってもよい。
【0107】
前記第1溝は、前記一方の側壁側に設けられたものであり、
前記第2溝は、前記他方の側壁側に設けられたものであり、
前記一方の側壁と前記第1溝の間に形成され、該第1溝に向かうにしたがって下方に傾斜した第1底面と、
前記他方の側壁と前記第2溝の間に形成され、該第2溝に向かうにしたがって下方に傾斜した第2底面とを備え、
前記第1接続面および前記第2接続面それぞれの傾斜角度は、前記第1底面および前記第2底面の傾斜角度よりも急角度であってもよい。
【0108】
前記第1底面に沈降した砂を前記一方の側壁側から前記第1溝に向かって流すための流体を吐出する一方側吐出口と、
前記第2底面に沈降した砂を前記他方の側壁側から前記第2溝に向かって流すための流体を吐出する他方側吐出口とを有していてもよい。
【0109】
前記一方の側壁と前記突出壁の間および前記他方の側壁と該突出壁の間それぞれに配置され、受け入れた水に含まれている混入物を除去する2つの除塵機を備えていてもよい。
【0110】
また、本実施形態の沈砂池からは、以下の発明概念も抽出できる。
【0111】
池幅方向の端面を構成する一方の側壁と他方の側壁の間で、受け入れた水を該池幅方向と直交する直交方向に流下させ該水に含まれている砂を沈降させる沈砂池において、
池底部に設けられ、前記池幅方向に間隔をあけて、前記直交方向にそれぞれ延在した第1溝および第2溝と、
前記池底部に設けられ、前記第1溝が接続されるとともに前記第2溝が接続された集砂ピットと、
前記第1溝と前記第2溝の間に形成され、前記池底部から上方に突出した突出壁とを有し、
前記池底部のうち前記第1溝と前記第2溝の間であって前記集砂ピットと前記突出壁の間の部分に、前記直交方向に沿って延在する稜線部と、該稜線部と前記第1溝とを接続する第1接続面と、該稜線部と前記第2溝とを接続する第2接続面とが形成されていることを特徴とする沈砂池。
【0112】
以上説明した沈砂池は、受け入れた水に含まれている砂が池底部に沈降する沈砂池において、
前記池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記溝に溜まった水中において、前記所定方向に流体を吐出する第1の吐出口と、
前記池底部に設けられ、前記溝に接続した底面と、
前記底面に堆積した砂をこの沈砂池の側壁側から前記溝に向かって流すための流体を大気中に吐出する第2の吐出口と、
前記第1の吐出口の中心から前記所定方向に向かって延びる仮想軸の周囲を覆い、下端部分に開口を有する覆い部材とを備えたことを特徴としてもよい。
【0113】
この沈砂池において、前記覆い部材の開口は、前記溝の高さ方向の中央よりも下方に配置された態様であってもよい。
【0114】
この態様によれば、覆い部材の開口と溝の下方に堆積する砂とが近づくので、溝内に堆積した砂を覆い部材の内部に吸い上げやすくなる。
【0115】
また、以上説明した集砂方法は、受け入れた水に含まれている砂を、所定方向に延在した溝と該溝に接続した底面とを有する池底部に沈降させる沈砂池において、該池底部に堆積した砂を集める集砂方法であって、
前記溝に溜まった水中において、第1の吐出口から流体を前記所定方向に吐出する水中吐出工程と、
前記底面に堆積した砂を側壁側から前記溝に向かって流すための流体を第2の吐出口から大気中に吐出する大気中吐出工程とを有し、
前記水中吐出工程は、下端部分に開口を有し前記第1の吐出口の中心から前記所定方向に向かって延びる仮想軸の周囲を覆う覆い部材によって覆われた空間に流体を吐出する工程であることを特徴としてもよい。
【0116】
また、この集砂方法において、前記水中吐出工程は、前記覆い部材以上に水位が維持された状態で行われる工程であり、
前記大気中吐出工程は、前記底面以下に水位が維持された状態で行われる工程であってもよい。
【0117】
水中吐出工程では、覆い部材内が流体で満たされた状態で第1の吐出口から流体を水中に吐出するので、吐出圧の損失が少なく、覆い部材内に強い流体の流れを作ることができる。また、大気中吐出工程では、底面に堆積した砂が大気中に露出しているので、第2の吐出口から吐出される流体の吐出圧が弱くても、底面に堆積した砂を流すことができる。
【0118】
また、この集砂方法において、前記大気中吐出工程の実行後に前記水中吐出工程を実行する処理を一組の集砂処理として、該集砂処理を複数回行ってもよい。
【0119】
大気中吐出工程によって溝に流された砂が溝内に残留してしまうと、次の大気中吐出工程によって溝に流された砂が残留した砂に上乗せされてしまい、溝内に大量の砂が堆積してしまうことがある。大量の砂が堆積していると、その砂が妨げとなって水中吐出工程における溝内の砂の搬送が困難になってしまう虞がある。また、次の大気中吐出工程によって溝に砂を流そうとしても、溝内が砂で満たされてしまい、あふれた砂が底面に残留してしまう虞もある。この集砂方法では、大気中吐出工程によって溝に流す処理と、水中吐出工程によって溝内を搬送する処理を一組の集砂処理としているので、次の集砂処理の際には前の集砂処理で溝内に流した砂が溝内に残留したままになってしまうことがない。これにより、次の集砂処理における大気中吐出工程では、砂が除去された溝に向けて砂を流せるので、砂が溝からあふれてしまうことを防止できる。また、次の集砂処理における水中吐出工程では、溝内に堆積した大量の砂によって、溝内の砂の搬送が困難になってしまうことを防止できる。
【0120】
さらに、この集砂方法において、前記集砂処理を複数回行う前に、前記水中吐出工程を実行しておいてもよい。
【0121】
最初の集砂処理前に、溝内に沈降した砂を水中吐出工程によって搬送しておくことで、最初の集砂処理における大気中吐出工程では、砂が除去された溝に向けて砂を流せるので、砂が溝からあふれてしまうことを防止できる。また、最初の集砂処理における水中吐出工程では、溝内に堆積した大量の砂によって、溝内の砂の搬送が困難になってしまうことを防止できる。
【0122】
以上説明した沈砂池は、受け入れた水に含まれている砂が池底部に沈降する沈砂池において、
前記池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記溝に溜まった水中において、前記所定方向に流体を吐出する第1の吐出口と、
前記池底部に設けられ、前記溝に接続した底面と、
前記底面に堆積した砂をこの沈砂池の側壁側から前記溝に向かって流すための流体を大気中に吐出する第2の吐出口と、
前記第1の吐出口の中心から前記所定方向に向かって延びる仮想軸の周囲を覆い、下端部分に開口を有する覆い部材とを備え、
前記底面は、前記側壁から前記溝の間に形成された底平面を有するものであり、
前記溝および前記底平面は、前記所定方向に向かって水平なものまたは該所定方向に向かって下方に1度未満の角度で傾斜したものであることを特徴とする。
【0123】
ここで覆い部材は、その上側部分に溝の幅方向に向かって下方に傾斜した傾斜面を有するものであってもよい。この傾斜面は、平面で構成されていてもよく、曲面で形成されていてもよい。傾斜面が曲面で形成されている場合、その曲面は上方を凸にした湾曲形状であることが好ましい。また、覆い部材は、下端に開口を有する円筒形状であってもよい。
【0124】
この沈砂池によれば、第1の吐出口から所定方向に吐出された流体は、覆い部材により所定方向と直交する放射方向への拡散が防止され、覆い部材内に流体の強い流れを作り出す。この流れによって覆い部材の内外で圧力差が生じ、溝内に堆積している砂は、覆い部材の下端部分にある開口から覆い部材の内部に吸い込まれる。そして、吸い込まれた砂は、覆い部材内の流体の流れによって搬送される。すなわち、第1の吐出口から吐出された流体の流れを搬送に有効に利用できるので、溝内に堆積している砂を効率的に搬送することができる。
【0125】
この沈砂池において、前記底平面は、前記覆い部材の上端位置よりも上方に位置したものであり、
前記第2の吐出口は、前記覆い部材の上端位置よりも下方に水位が維持された状態で流体を吐出するものであってもよい。
【0126】
また、以上説明した集砂方法は、所定方向に延在し該所定方向に向かって水平または該所定方向に向かって下方に1度未満の角度で傾斜した溝と、該所定方向に向かって水平または該所定方向に向かって下方に1度未満の角度で傾斜した底平面を備え該溝に接続した底面とを有する池底部に、受け入れた水に含まれている砂を沈降させる沈砂池において、該池底部に堆積した砂を集める集砂方法であって、
前記溝に溜まった水中において、第1の吐出口から流体を前記所定方向に吐出する水中吐出工程と、
前記底面に堆積した砂を側壁側から前記溝に向かって流すための流体を第2の吐出口から大気中に吐出する大気中吐出工程とを有し、
前記水中吐出工程は、下端部分に開口を有し前記第1の吐出口の中心から前記所定方向に向かって延びる仮想軸の周囲を覆う覆い部材によって覆われた空間に流体を吐出する工程であることを特徴とする。
【0127】
ここで水中吐出工程は、覆い部材内が流体で満たされた状態で行われる工程であってもよく、覆い部材内に大気が残存している状態で行われる工程であってもよい。また、水中吐出工程は、第1の吐出口が完全に水中に没した工程で行われる工程であってもよく、第1の吐出口の一部が水中に没し、残りの部分が大気中に露出した状態で行われる工程であってもよい。
【0128】
この集砂方法によれば、水中吐出工程において第1の吐出口から所定方向に吐出された流体は、覆い部材内に流体の強い流れを作り出し、溝内に堆積している砂を覆い部材の内部に吸い込んで所定方向に搬送するので、砂を効率的に搬送して集めることができる。また、大気中吐出工程において第2の吐出口から大気中に吐出された流体は、水の抵抗を受けないので底面に堆積した砂を効率的に流すことができる。
【0129】
また、この集砂方法において、前記大気中吐出工程は、上端位置が前記底平面よりも下方に位置した前記覆い部材の上端位置よりもさらに下方に水位が維持された状態で行われる工程であってもよい。
また、以上説明した集砂方法は、所定方向に延在した溝と、この沈砂池の側壁から該溝の間に形成されて該溝に接続した底面とを有する池底部に、受け入れた水に含まれている砂を沈降させる沈砂池において、該池底部に堆積した砂を集める集砂方法であって、
前記溝に溜まった水中において、第1の吐出口から流体を前記所定方向に吐出する水中吐出工程と、
前記底面に堆積した砂を前記側壁側から前記溝に向かって流すための流体を第2の吐出口から大気中に吐出する大気中吐出工程とを有し、
前記水中吐出工程は、下端部分に開口を有し前記第1の吐出口から前記所定方向に向かって延びる仮想軸の周囲を覆う覆い部材によって覆われた空間に流体を吐出する工程であり、
前記大気中吐出工程は、上端位置が前記底面よりも下方に位置した前記覆い部材の上端位置よりもさらに下方に水位が維持された状態で行われる工程であることを特徴としてもよい。
【0130】
なお、以上説明した実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、実施形態や他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0131】
2 沈砂池
8 主トラフ
13 第1覆い部材
13a 開口
14 第2覆い部材
15 第3覆い部材
84a トラフ第3吐出口
71 底平面
831a トラフ第1吐出口
832a トラフ第2吐出口
911 吐出口
側壁 W
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