(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】肺癌を診断するためのキットおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20240509BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20240509BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240509BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
C12Q1/6851 Z
C12M1/34 Z
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2023135949
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2020538820の分割
【原出願日】2019-01-17
【審査請求日】2023-09-22
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517435261
【氏名又は名称】ニュークレイクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フルムキン,ダニー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッサストロム,アダム
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08399193(US,B2)
【文献】国際公開第2017/006317(WO,A1)
【文献】特表2021-511028(JP,A)
【文献】Clinical Epigenetics, 2017, 9:131
【文献】Biological Procedures Online, 2017, 19:2
【文献】EBioMedicine 2 (2015) 929-936
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺癌の疑いのあるヒト対象からの血漿試料中に存在するDNAのメチル化比率を測定する方法であって、
(a)前記対象から得られた血漿試料からのDNAを少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによる消化にかけ、それにより制限エンドヌクレアーゼ処理されたDNAを得ることと、
(b)前記制限エンドヌクレアーゼ処理されたDNAから、正常な非癌性DNAと比較して肺癌DNAのメチル化が増加し
た制限遺伝子座および対照遺伝子座を同時増幅し、前
記制限遺伝子座は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号
6に示されるすべての遺伝子座を含み、前記対照遺伝子座は、消化ステップで使用されるメチル化感受性制限酵素によって切断されない、制限エンドヌクレアーゼ処理されたDNAの遺伝子座であり、それによ
り各制限遺伝子座の増幅産物および対照遺伝子座の増幅産物を生成することと、
(c)生成された各制限遺伝子座の増幅産物のシグナル強度を決定し
、前記対照遺伝子座の増幅産物のシグナル強度を決定することと、
(d
)各制限遺伝子座および前記対照遺伝子
座の前記増幅産物の前記シグナル強度間の比率を計算し、それにより血漿試料中のDNAのメチル化比率を測定することと、を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(a)が、HinP1IおよびHhaIから選択される単一のメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼを使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)がリアルタイムPCRを使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前
記制限遺伝子座および前記対照遺伝子座の前記増幅産物の検出を支援するための蛍光プローブを追加することをさらに含み、前
記制限遺伝子座および前記対照遺伝子座のそれぞれの前記増幅産物の前記シグナル強度間の前記比率が、各遺伝子座の定量化サイクル(Cq)を決定することと、2
(Cq対照遺伝子座-Cq制限遺伝子座)を計算することとによって計算される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各々がヒト細胞株由来のDNAを含む第1および第2の対照DNAを提供することであって、前記第1の対照DNAは、前
記制限遺伝子座が少なくとも75%メチル化されているヒト細胞株からのDNAを含み、前記第2の対照DNAは、前
記制限遺伝子
座が少なくとも75%メチル化されていないヒト細胞株からのDNAを含む、提供することと、
前記第1および第2の対照DNAを前記メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼで消化して、第1の消化された対照DNAおよび第2の消化された対照DNAを提供することと、
前記第1の消化された対照DNAおよび第2の消化された対照DNAを増幅して、前記第1の対照DNAの増幅産物および第2の対照DNAの増幅産物を提供することと、
前
記制限遺伝子座の
それぞれの増幅産物、前記対照遺伝子座の増幅産物、前記第1の対照DNAの増幅産物および第2の対照DNAの増幅産
物から個別の蛍光シグナルを生成することであって、それぞれの個別の蛍光シグナルは、対応する増幅産物の量と相関し、適切な増幅は、それぞれの個別の蛍光シグナルについて100,000単位を超える蛍光レベルとして定義され、前記第1の対照DNAにおける前
記制限遺伝子座および前記対照遺伝子座の適切な増幅の検出は、DNA増幅の成功を示し、前記第2の対照DNAにおける前記対照遺伝子座の正常な増幅と同時に起こる前
記制限遺伝子座のうちの1つ以上の低増幅または増幅の欠如は、DNA消化の成功を示す、生成することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記対照遺伝子座が、配列番号7に示される遺伝子座である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ヒト対象の肺癌
を発症するリスクを評価する方法であって、
請求項1に記載の方法に従って前記ヒト対象からの血漿試料中のDNAのメチル化比率を測定することと、
前記メチル化比率に基づいて
、前記リスクを評価することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象における肺癌を、そこから由来する生物学的試料を分析することにより、同定するためのキットおよび方法に関する。より詳細には、本発明は、血漿試料からのDNAを分析することによる肺癌の同定に関する。この方法は、正常なDNAと肺癌DNAの間のDNAメチル化の差異に基づいている。
【背景技術】
【0002】
肺癌は、肺の細胞から発生する癌であり、最も一般的で深刻なタイプの癌の1つである。肺癌には主に2つのタイプ、すなわち、最も一般的なタイプである非小細胞肺癌(NSCLC)と小細胞肺癌がある。NSCLCには、扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌など、いくつかのサブタイプがある。
【0003】
肺癌は通常、肺を介して、時には体の他の部分にも広がるまで、顕著な症状を引き起こさないため、肺癌の一般的な予後は不良である。効率的な早期発見法は転帰の改善につながるが、特に症状が現れる前の早期診断に使用できる肺癌の優れたスクリーニング法はない。
【0004】
肺癌による死亡率を低減できるかどうかを判断するために、3つのスクリーニング検査が検討されている:胸部の低線量コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、胸部X線、および喀痰細胞診である。検査された方法の中で、高リスクの個人(ヘビースモーカー)のための低線量CTスクリーニングだけが、肺癌死亡率を減少させることが示された。ただし、CTスキャンでは、低線量であっても胸部が放射線に曝される。さらに、低線量CTスキャンでは、癌ではないことが判明した多くの異常が見出されるが、さらなるCTスキャンや追加の検査で確認する必要があり、その一部は侵襲的である。
【0005】
肺癌の確定診断は、生検後の疑わしい組織の組織学的検査に基づいている。手順には、疑わしい組織をサンプリングするための気管支鏡検査またはCTガイド下生検が含まれる。
【0006】
本発明の出願人に譲渡されたWO2011/001274およびWO2011/070441は、増幅後のゲノム遺伝子座間のシグナル比率に基づいて、天然源からのDNAを同定する方法、およびDNA試料を異なるタイプの組織にカテゴリー化する方法をそれぞれ開示する。
【0007】
本発明の出願人に譲渡されたWO2017/006317は、選択されたゲノム遺伝子座におけるDNAメチル化の変化に基づいて、対象における膀胱癌を同定するための方法およびキットを開示している。
【0008】
非侵襲性であり、十分に訓練された病理学者を必要とせず、高い特異度と高い感度を特徴とする、スクリーニングおよび診断を必要とする対象の肺癌をスクリーニングおよび診断するための方法およびキットに対する満たされていない必要性がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、いくつかの態様によれば、血漿試料からのDNAを分析することにより、肺癌の同定を必要とする対象における肺癌を同定するための方法およびキットを提供する。本発明の方法およびキットは、正常なDNAと肺癌DNAとの間の選択されたゲノム遺伝子座におけるメチル化の差異に基づいている。
【0010】
より具体的には、本発明の方法およびキットは、肺癌患者の血漿試料からのDNAでは予想外に高度にメチル化され、健常者の血漿試料からのDNAでは高度にメチル化されないことが判明した一連のゲノム遺伝子座を利用する。したがって、本明細書に開示される一連のゲノム遺伝子座は、所与の血漿試料が肺癌患者由来であるか健常者由来であるかを決定するために使用され得る。
【0011】
本発明の方法およびキットによれば、検査対象の血漿試料からのDNAは、メチル化されていない場合にのみその認識配列を切断する少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素で消化される。本明細書に開示される「制限遺伝子座」と示される一連のゲノム遺伝子座は、少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素の認識配列を含むため、メチル化レベルに応じて切断(消化)され、メチル化が高いほど、酵素による消化が少なくなる。意外にも、健常者のDNA試料は、本明細書に開示された一連のゲノム遺伝子座で、癌患者のDNA試料よりも広範囲に切断される。したがって、本発明の制限遺伝子座が高度にメチル化されているDNA試料とこれらの遺伝子座が低いメチル化レベルを有するDNA試料との間の消化効率の差異は、その後の増幅および定量化のステップにおいて異なる増幅パターンを確立する。驚いたことに、増幅パターンの差異により、肺癌患者のDNAと肺癌のない健常者のDNAを区別できる。
【0012】
本発明の方法およびキットによる増幅および定量化ステップは、消化されたDNAからの少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の同時増幅を含む。対照遺伝子座は、消化ステップで使用されるメチル化感受性制限酵素によって切断されない遺伝子座であり得る。次に、増幅された遺伝子座のシグナル強度が決定され、各制限遺伝子座および対照遺伝子座のシグナル強度の間の比率が計算される。肺癌患者のDNAと健常者のDNAで異なるシグナル比率が生成され、肺癌の同定が可能になることが初めて開示された。
【0013】
肺癌の同定は、検査対象からのDNAに対して計算されたシグナル比率を、既知の供給源、すなわち正常人および/または癌患者における同じ制限および対照遺伝子座について決定された1つ以上の基準比率と比較することによって実行される。この比較に基づいて、検査試料は癌患者または健常者に由来するものとして識別される。本発明のキットおよび方法は、個々の遺伝子座それ自体のメチル化レベルの決定を必要としない点に注意すべきである。
【0014】
本発明の方法およびキットは、血漿試料を検査することによって肺癌の同定を可能にし、したがって、疾患の非侵襲的な分子ベースのスクリーニングおよび診断を有利に提供する。請求される方法およびキットの別の利点は、血漿試料に含まれ得る腫瘍由来のDNAの量が少ないにもかかわらず、血漿試料で同定を実施することができることである。本明細書に開示される方法およびキットにより肺癌を診断することによって付与されるさらなる利点は、診断の高い感度および特異度である。さらに、本明細書に記載された方法論は、使用者に依存しない客観的な結果をもたらす。
【0015】
一態様によれば、本発明は、ヒト対象における肺癌を同定するための方法を提供し、この方法は、
(a)対照から得られた試料からのDNAを少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによる消化にかけ、それにより制限エンドヌクレアーゼ処理されたDNAを得ることと、
(b)前記制限エンドヌクレアーゼ処理されたDNAから少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座を同時増幅し、前記少なくとも1つの制限遺伝子座は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択され、それにより各遺伝子座の増幅産物を生成することと、
(c)生成された各増幅産物のシグナル強度を決定することと、
(d)前記少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の各々の増幅産物のシグナル強度間の比率を少なくとも1つの基準比率と比較して、肺癌がヒト対象に存在するかどうかを決定することと、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、試料は血漿試料である。
【0017】
いくつかの実施形態では、対照遺伝子座は、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼの認識配列を欠く遺伝子座である。
【0018】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの基準比率は、健常な基準比率を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの基準比率は、肺癌基準比率を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)は、単一のメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼを使用して実行される。いくつかの実施形態では、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、HinP1IおよびHhaIから選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)は、リアルタイムPCRを使用して実行される。いくつかの実施形態では、ステップ(b)がリアルタイムPCRを使用して実行される場合、方法は、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の増幅産物の検出を支援するための蛍光プローブを追加することをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座のそれぞれの増幅産物のシグナル強度間の比率は、各遺伝子座の定量化サイクル(Cq)を決定し、2(Cq対照遺伝子座-Cq制限遺伝子座)を計算することにより、計算される。
【0022】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの制限遺伝子座は、配列番号4に示される遺伝子座、および任意選択的に、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号6に示される遺伝子座の群から選択される少なくとも1つの追加の制限遺伝子座を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの制限遺伝子座は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号6に示されるすべての遺伝子座を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、
各々がヒト細胞株由来のDNAを含む第1および第2の対照DNAを提供することであって、第1の対照DNAは、本明細書に開示される少なくとも1つの制限遺伝子座が大部分メチル化されているヒト細胞株からのDNAを含み、第2の対照DNAは、本明細書に開示される少なくとも1つの制限遺伝子座のうちの1つ以上が大部分メチル化されていないヒト細胞株からのDNAを含む、提供することと、
第1および第2の対照DNAをメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼで消化することと、
第1および第2の対照DNAから、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座を増幅することと、を含み、
ここで、第1の対照DNAにおける少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の適切な増幅の検出は、DNA増幅の成功を示し、第2の対照DNAにおける対照遺伝子座の正常な増幅と同時に起こる少なくとも1つの制限遺伝子座うちの1つ以上の低増幅または増幅の欠如は、DNA消化が成功したことを示す。
【0025】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの制限遺伝子座が大部分メチル化されているヒト細胞株は、HCT-15である。
【0026】
いくつかの実施形態では、1つ以上の制限遺伝子座が大部分メチル化されていないヒト細胞株は、A673である。
【0027】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの制限遺伝子座が大部分メチル化されているヒト細胞株はHCT-15であり、1つ以上の制限遺伝子座が大部分メチル化されていないヒト細胞株はA673である。
【0028】
いくつかの実施形態では、対照遺伝子座は、配列番号7に示される遺伝子座である。
【0029】
別の態様によれば、本発明は、肺癌を有することが疑われるヒト対象からのDNAのメチル化比率を測定する方法を提供し、この方法は、(a)対象から得られた試料からのDNAを少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによる消化にかけ、それにより制限エンドヌクレアーゼ処理されたDNAを得ることと、(b)制限エンドヌクレアーゼ処理されたDNAから少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座を同時増幅し、少なくとも1つの制限遺伝子座は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および、配列番号6からなる群から選択され、それにより各遺伝子座の増幅産物を生成することと、(c)生成された各増幅産物のシグナル強度を決定することと、(d)前記少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の各々の増幅産物のシグナル強度間の比率を計算し、それによりヒト対象からのDNAのメチル化比率を測定することと、を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、試料は血漿試料である。
【0031】
さらに別の態様によれば、本明細書では、ヒト対象の肺癌をスクリーニングする方法を提供し、この方法は、
上記のようにヒト対象からのDNAのメチル化比率を測定ことと、このメチル化比率に基づいて肺癌が対象に存在することを判定することと、を含む。
【0032】
さらに別の態様によれば、本明細書では、ヒト対象の肺癌をスクリーニングする方法を提供し、この方法は、
その対象の試料からのDNAに対して肺癌を同定する本発明の方法を実施することにより、肺癌がヒト対象に存在するかどうかを同定することと、
対象が肺癌であると同定された場合、生検により肺癌の確定診断を実施することと、を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、試料は血漿試料である。
【0034】
さらなる態様によれば、本明細書では、ヒト対象の肺癌を同定するためのキットが提供され、このキットは、ヒト対象の試料からのDNAを消化するための少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素と、少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素による消化後の少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の同時増幅のための複数のプライマー対と、を含み、少なくとも1つの制限遺伝子座は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態では、試料は血漿試料である。
【0036】
いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の増幅産物を検出するための複数のポリヌクレオチドプローブをさらに含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、キットは、コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータソフトウェアを使用して肺癌の同定を実施するための命令をさらに含み、コンピュータソフトウェアは、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の、それらの増幅後のシグナル強度を決定するステップと、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の各々のシグナル強度間のシグナル比率を計算するステップと、計算されたシグナル比率を少なくとも1つの基準比率と比較するステップと、この比較に基づいて、DNA試料が肺癌DNAかまたは健康なDNAかを出力するステップと、を実行するようにコンピュータプロセッサに指示する。
【0038】
いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の、それらの増幅後のシグナル強度を決定するステップと、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の各々のシグナル強度間のシグナル比率を計算するステップと、計算されたシグナル比率を少なくとも1つの基準比率と比較するステップと、この比較に基づいて、DNA試料が肺癌DNAかまたは健康なDNAかを出力するステップと、を実行するようにコンピュータプロセッサに指示するコンピュータソフトウェアを格納するコンピュータ可読媒体を、さらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、キットは、単一のメチル化感受性エンドヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態では、メチル化感受性エンドヌクレアーゼは、HinP1IおよびHhaIから選択される。
【0040】
さらなる態様によれば、本明細書では、ヒト対象の肺癌を特定するためのシステムが提供され、このシステムは、
(i)ヒト対象の試料からのDNAを消化するための少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼと、
(ii)少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素による消化後の少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座の同時増幅のための複数のプライマー対であって、少なくとも1つの制限遺伝子座が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される、複数のプライマー対と、
(iii)コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータソフトウェアであって、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の、それらの増幅後のシグナル強度を決定するステップと、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の各々のシグナル強度間のシグナル比率を計算するステップと、計算されたシグナル比率を少なくとも1つの基準比率と比較するステップと、この比較に基づいて、DNA試料が肺癌DNAか健康なDNAかを出力するステップと、を実行するようにコンピュータプロセッサに指示する、コンピュータソフトウェアと、を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、試料は血漿試料である。
【0042】
本発明のこれらのおよびさらなる態様および特徴は、以下の詳細な説明、実施例および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1A】健常者の試料における対照遺伝子座と2つの制限遺伝子座の増幅プロットの例を示す。
【
図1B】肺癌患者の試料における対照遺伝子座と2つの制限遺伝子座の増幅プロットの例を示す。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、対象における肺癌を同定するための方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、規定された遺伝子座におけるDNAメチル化の変化の検出に基づく、血漿試料からのDNAを使用する肺癌の同定に関する。
【0045】
本発明は、少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素によるDNAの消化後に検査DNA試料から同時増幅された選択された遺伝子座間のシグナル強度比率を計算することと、これらの比率を、既知の供給源、健康または肺癌に由来する複数のDNA試料から得られた1つ以上の基準比率と比較することと、を含む。この比較に基づいて、検査試料は癌患者または健常者に由来するものとして識別される。
【0046】
本明細書で使用される「複数」という用語は、「少なくとも2つ」または「2つ以上」を指す。
【0047】
本発明の方法は、非侵襲的で使用者に依存しない肺癌をスクリーニングおよび/または診断するための非常に高感度で特異的な手段を提供するので、特に有益である。驚くべきことに、本明細書に開示される方法およびキットは、血漿試料が少量の腫瘍由来のDNAを含むという事実にもかかわらず、血漿中のDNAに基づいて肺癌の正確な診断を提供する。
【0048】
さらに、腫瘍由来DNAと正常DNAを区別するためのメチル化分析を利用して、特定のゲノム遺伝子座で実際のメチル化レベルを決定する必要がある従来の方法とは異なり、本明細書に記載される方法では絶対メチル化レベルを評価することを必要としない。したがって、本明細書に開示される方法は、メチル化レベルそれ自体の決定に関与する標準曲線および/または追加の面倒なステップの必要性を排除し、それにより、単純で費用効果の高い手順を提供する。メチル化を分析するための既知のアプローチに対する追加の利点は、本発明の方法によって得られるシグナル比率によって与えられ、それは同じ反応混合物中の同じDNA鋳型から(すなわち、同じ反応条件下で)増幅された遺伝子座間で計算される。これにより、鋳型DNA濃度の変化、PCR条件、阻害剤の存在など、様々な「ノイズ」要因の影響を受けなくなる。このようなノイズは、別個の増幅反応からのシグナルを比較することにより遺伝子座のメチル化レベルを定量化することに基づく既存の方法に内在する。
【0049】
ヒトゲノムのメチル化は、5-メチルシトシンの形で発生し、CpGジヌクレオチドとも呼ばれるCG配列の一部であるシトシン残基に限定される(他の配列の一部であるシトシン残基はメチル化されていない)。ヒトゲノムのCGジヌクレオチドにはメチル化されているものとそうでないものがある。さらに、メチル化は細胞と組織に特異的であるため、特定のCGジヌクレオチドは、特定の細胞でメチル化され、同時に別の細胞ではメチル化されないか、特定の組織でメチル化され、同時に別の組織でメチル化されないことがあり得る。DNAメチル化は、遺伝子転写の重要な調節因子である。
【0050】
癌DNAのメチル化パターンは、正常なDNAのメチル化パターンとは異なり、一部の遺伝子座は高メチル化されているが、他の遺伝子座は低メチル化されている。この異常なメチル化パターンは、血漿などの体液中の腫瘍由来DNAで検出でき、早期検出、コンパニオン診断、治療に対する反応のモニタリング、再発の検出、および予後のための、非侵襲的な「液体生検」タイプのアッセイの開発を促進する。ただし、体液には正常細胞のDNAも大量に含まれているため、液体生検アッセイを効果的に行うには、非常に多数の正常のDNA分子のバックグラウンド対する腫瘍由来のDNAを検出できる必要がある。本発明は、有利なことに、肺癌に関連する高メチル化ゲノム遺伝子座を検出するための方法を提供する。この方法は、メチル化感受性酵素によるDNAの酵素消化、それに続く高メチル化標的遺伝子座と内部参照遺伝子座のリアルタイムPCR、および2つの遺伝子座から得られたシグナル間の比率の正確な定量に基づいている。本明細書に開示される方法は、肺癌を有する対象からの血漿試料を同定することにおいて、非常に感度が高いが特異的である。
【0051】
いくつかの実施形態では、ヒト被験体における肺癌を同定する方法が提供され、この方法は、(a)対象から得られた血漿試料からのDNAを少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼにより消化させることと、(b)制限エンドヌクレアーゼ処理されたDNAから、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座を同時増幅し、この少なくとも1つの制限遺伝子座は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択され、それにより各遺伝子座の増幅産物を生成することと、(c)生成された各増幅産物のシグナル強度を決定することと(d)そのDNA試料中の制限遺伝子座および対照遺伝子座の増幅産物のシグナル強度間の比率を計算することと、(e)肺癌比率に関する前記比率について、所定の閾値を超える高い確率スコアを検出し、それによりヒト対象の肺癌を同定することと、を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、ヒト対象における肺癌を同定するための方法が提供され、この方法は、(a)対象から得られた血漿試料からのDNAを少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼにより消化させることと、(b)消化されたDNA試料中の少なくとも配列番号4に示される制限遺伝子座および対照遺伝子座を増幅し、この対照遺伝子座は、肺癌DNAおよび正常DNAにおいて同じ消化および増幅プロファイルを示す遺伝子座であり、それにより、そのDNA試料中の各遺伝子座の増幅産物を生成することと、(c)生成された各増幅産物のシグナル強度を決定することと、(d)そのDNA試料中の制限遺伝子座および対照遺伝子座の増幅産物のシグナル強度間の比率を計算することと、(e)肺癌比率に関する前記比率について、所定の閾値を超える高い確率スコアを検出し、それによりヒト対象の肺癌を同定することと、を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、肺癌比率に関するその比率の高確率スコアを検出することは、所定の閾値を超える確率スコアを検出することを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、検査DNA試料のシグナル比率を計算することと、計算されたシグナル比率を対応する健康な基準比率、肺癌基準比率または両方と比較することと、比較に基づいて検査DNA試料を肺癌DNA試料として同定することと、を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、肺癌比率に関して高確率スコアを検出することは、検査DNA試料について計算された比率を対応する健康基準比率と比較することと、計算された比率が、比較に基づいて肺癌比率である(すなわち、肺癌を表す)確率を反映する確率スコアを割り当てることと、を含み、ここで、所定の閾値を超える高い確率スコアは、肺癌を示す。
【0056】
さらなる実施形態では、肺癌比率に関して高い確率スコアを検出することは、検査DNA試料について計算された比率を対応する肺癌基準比率と比較することと、計算された比率が比較に基づいて肺癌比率である確率を反映する確率スコアを割り当てることと、を含み、ここで、所定の閾値を超える高い確率スコアは、肺癌を示す。
【0057】
さらに追加の実施形態では、肺癌比率に関して高確率スコアを検出することは、検査DNA試料について計算された比率を対応する健康基準比率および対応する肺癌基準比率と比較することと、計算された比率は、比較に基づいて肺癌比率である確率を反映する確率スコアを割り当てることと、を含み、ここで、所定の閾値を超える高い確率スコアは、肺癌を示す。
【0058】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、健康基準比率および肺癌基準比率のうちの少なくとも1つを提供することを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、方法は、検査試料について計算された比率を、肺癌患者および/または健常者において決定された複数の比率を含む基準スケールと比較することを含み、その確率スコアは、基準スケール内のその相対位置に基づいて前記計算された比率に割り当てられるスコアである。いくつかの実施形態では、比率の値が高いほど、それに割り当てられるスコアが高くなる。
【0060】
いくつかの実施形態では、方法は、配列番号4に示される制限遺伝子座および少なくとも1つの追加の制限遺伝子座を増幅することと、それにより少なくとも1つの追加の制限遺伝子座の増幅産物を生成することと、追加の各制限遺伝子座ついてステップ(c)~(d)を繰り返すことと、を含む。いくつかの実施形態では、対応する肺癌基準比率に関する複数の比率について複数の確率スコアが得られ、各比率は、別個の制限遺伝子座および対照遺伝子座の間にある。いくつかの実施形態では、複合確率スコアが、複数の確率スコアに基づいて計算される。
【0061】
いくつかの実施形態では、複合スコアは、平均スコアであり得る。他の実施形態では、複合スコアは、複数の確率スコアの加重平均であってもよい。一部の実施形態では、複合スコアは、すべての確率スコアの合計であり得る。一般に、複合スコアは、すべての確率スコアを表す任意の数学的値または統計値を含むことができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、高い複合確率スコアを検出することにより、ヒト対象の肺癌を同定する。いくつかの実施形態では、高い複合確率スコアを検出することは、所定の閾値を超える複合確率スコアを検出することである。
【0063】
「からのDNA」、「由来のDNA」、「内のDNA」などの用語は互いに置換可能であり、試料、例えば血漿試料から得られたDNA、試料から単離されたDNA、または試料そのまま、すなわちDNAをそこで含む試料を指す。
【0064】
本発明によれば、DNAは、生検の必要なしに、入手可能な試料から得られる。いくつかの実施形態では、DNAは血漿または血清から得られる。他の実施形態では、DNAは気管支洗浄により得られる。
【0065】
「肺癌」という用語は、肺の細胞から生じる悪性腫瘍を指す。肺癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)(サブタイプの扁平上皮癌、腺癌および大細胞癌)および小細胞肺癌を含めて本明細書で使用される。タイプに加えて、肺癌はまた、典型的には、例えば、生検染色および/またはイメージングに基づいて病期によって特徴付けられ、I期、II期、III期およびIV期を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、肺癌は非小細胞肺癌である。一部の特定の実施形態では、非小細胞肺癌は、扁平上皮癌である。さらなる特定の実施形態では、非小細胞肺癌は腺癌である。さらに追加の特定の実施形態では、非小細胞肺癌は大細胞癌である。他の実施形態では、肺癌は小細胞肺癌である。
【0067】
本明細書で使用される「肺癌の同定」、「対象における肺癌の同定」および「対象が肺癌を有すると同定する」という用語は互いに置換可能であり、対象における、肺癌のスクリーニング、肺癌の存在の検出、肺癌の再発の検出、肺癌に対する感受性の検出、肺癌の治療に対する反応の検出、肺癌の治療効果の判定、肺癌の病期(重症度)の判定、肺癌の予後の判定および肺癌の早期診断のいずれか1つ以上を包含する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0068】
本明細書で使用される「対象」という用語は、「個体」と互いに置換可能であり、ヒト対象を指す。対象は肺癌を疑われている可能性がある。いくつかの実施形態では、対象は、例えば、疾患の以前の病歴、遺伝的素因、および/または家族歴に基づいて、任意の1つ以上の発癌物質、職業上の危険、環境上の危険に曝された対象、および/または癌の疑わしい臨床徴候を示す対象は、肺癌を発症するリスクがあり得る。いくつかの実施形態では、対象は、例えば、咳、喀血、喘鳴、または息切れなどの呼吸器症状、体重減少、脱力感および発熱などの全身症状、胸部の痛み、骨の痛み、嚥下困難などの隣接する構造に癌塊が押し付けられることによる症状を含む、肺癌の少なくとも1つの症状または特徴を示し得る。他の実施形態では、対象は無症候性であり得る。
【0069】
血漿試料の収集と処理
「血漿」という用語は、全血試料が血球を除去するための分離プロセスを受けた後に残る液体を指す。血漿試料は、例えば遠心分離および/または濾過によるものを含む、任意の分離方法を使用して全血から分離された試料であり得る。血漿試料は、従来の収集容器またはチューブを使用して収集することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、ゲノムDNAは、当技術分野で公知の方法に従って血漿試料から抽出されてもよい。例示的な手順は、例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Fourth Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2012に記載されている。
【0071】
DNA消化
本発明の方法によれば、血漿試料からのDNAは、少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼ、例えば、1つ、2つ、3つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによる消化を受ける。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0072】
いくつかの実施形態では、血漿試料から抽出されたDNA全体が消化ステップで使用される。いくつかの実施形態では、DNAは、消化を受ける前に定量されない。他の実施形態では、DNAは、その消化の前に定量化され得る。
【0073】
本明細書で「制限酵素」と互いに置換可能に使用される「制限エンドヌクレアーゼ」は、制限部位として知られる、特定の認識ヌクレオチド配列またはその近くでDNAを切断する酵素を指す。
【0074】
「メチル化感受性」の制限エンドヌクレアーゼは、メチル化されていない場合にのみ、その認識配列を切断する制限エンドヌクレアーゼである(メチル化された部位は無傷のままである)。したがって、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによるDNA試料の消化の程度は、メチル化レベルに依存し、メチル化レベルが高いほど、切断から保護され、したがって消化が少なくなる。
【0075】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、AatII、Acc65I、AccI、Acil、ACII、Afel、Agel、Apal、ApaLI、AscI、AsiSI、Aval、AvaII、BaeI、BanI、BbeI、BceAI、BcgI、BfuCI、BglI、BmgBI、BsaAI、BsaBI、BsaHI、BsaI、BseYI、BsiEI、BsiWI、BslI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BspDI、BsrBI、BsrFI、BssHII、BssKI、BstAPI、BstBI、BstUI、BstZl7I、Cac8I、ClaI、DpnI、DrdI、EaeI、EagI、Eagl-HF、EciI、EcoRI、EcoRI-HF、FauI、Fnu4HI、FseI、FspI、HaeII、HgaI、HhaI、HincII、HincII、Hinfl、HinPlI、HpaI、HpaII、Hpyl66ii、Hpyl88iii、Hpy99I、HpyCH4IV、KasI、MluI、MmeI、MspAlI、MwoI、NaeI、NacI、NgoNIV、Nhe-HFI、NheI、NlaIV、NotI、NotI-HF、NruI、Nt.BbvCI、Nt.BsmAI、Nt.CviPII、PaeR7I、PleI、PmeI、PmlI、PshAI、PspOMI、PvuI、RsaI、RsrII、SacII、Sall、SalI-HF、Sau3AI、Sau96I、ScrFI、SfiI、SfoI、SgrAI、SmaI、SnaBI、TfiI、TscI、TseI、TspMIおよびZraIからなる群から選択され得る。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0076】
いくつかの実施形態では、血漿試料からのDNAは、1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによる消化を受け得る。いくつかの特定の実施形態では、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、HinP1Iであり得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、DNA消化は、完全に消化するまで実施され得る。いくつかの実施形態では、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼはHinP1Iであり得、完全な消化は37℃での酵素との1~2時間のインキュベーション後に達成され得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、血漿試料は、1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによる消化を受け得る。いくつかの特定の実施形態では、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼは、HhaIであり得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、DNA消化は、完全に消化するまで実施され得る。いくつかの実施形態では、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼはHhaIであり得、完全な消化は37℃での酵素との1~2時間のインキュベーション後に達成され得る。
【0080】
ゲノム遺伝子座の増幅
本明細書で使用される「ゲノム遺伝子座」または「遺伝子座」という用語は互いに置換可能であり、染色体上の特定の位置にあるDNA配列を指す。特定の位置は、分子の位置によって、つまり染色体上の開始および終了塩基対の数によって同定できる。本明細書で使用される場合、これらの用語はまた、特定の位置のDNA配列を、5’および/または3’フランキング配列とともに包含し、前記DNA配列のすぐ上流および/または下流の約50塩基までである。
【0081】
一部の実施形態では、5’フランキング配列は、1~50塩基を含み得る。追加の実施形態では、5’フランキング配列は10~40塩基の間である。例えば、5’フランキング配列には、遺伝子座のすぐ上流に最大10塩基、最大15塩基、最大20塩基、最大25塩基、最大30塩基、最大35塩基、最大40塩基、最大45塩基、または最大50塩基を含むことができる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0082】
一部の実施形態では、3’フランキング配列は、1~50塩基を含み得る。追加の実施形態では、3’フランキング配列は10~40塩基の間である。例えば、3’フランキング配列には、遺伝子座のすぐ下流に最大10塩基、最大15塩基、最大20塩基、最大25塩基、最大30塩基、最大35塩基、最大40塩基、最大45塩基、または最大50塩基を含むことができる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0083】
所与のゲノム位置にあるDNA配列のバリアントは、対立遺伝子と呼ばれる。遺伝子座の対立遺伝子は、相同染色体の同一部位に位置する。遺伝子座には、遺伝子配列ならびに他の遺伝的要素(遺伝子間配列など)が含まれる。
【0084】
本明細書で使用される場合、「制限遺伝子座」は、方法で使用されるメチル化感受性制限酵素の認識配列を含む遺伝子座を説明するために使用される。
【0085】
「対照遺伝子座」および「内部参照遺伝子座」は交換可能であり、消化工程で適用される制限酵素による消化が癌の存在または不在とは無関係である遺伝子座を説明するために本明細書で使用される。いくつかの実施形態では、対照遺伝子座は、肺癌DNAおよび正常DNAにおいて同じ消化および増幅プロファイルを示す遺伝子座である。いくつかの実施形態では、対照遺伝子座は、消化ステップで適用される制限酵素の認識配列を欠く遺伝子座である。有利には、対照遺伝子座は、内部遺伝子座、すなわち、分析されたDNA試料内の遺伝子座であり、したがって、外部/追加の対照試料の必要性を排除する。
【0086】
いくつかの実施形態では、1つの制限遺伝子座または複数の制限遺伝子座は、以下のように、配列番号1~6に示される任意の1つ以上の遺伝子座を含む:
配列番号1は、第5番染色体上の43030476位の制限遺伝子座に対応する(遺伝子間領域)。
配列番号2は、第2番染色体上の176712760位の制限遺伝子座に対応する(遺伝子間領域)。
配列番号3は、第17番染色体上の44151837位の制限遺伝子座に対応する(遺伝子間領域)。
配列番号4は、第1番染色体上の168907269位の制限遺伝子座に対応する(PRRX1遺伝子)。
配列番号5は、第7番染色体上の158629293位の制限遺伝子座に対応する(VIPR2遺伝子)。
配列番号6は、第7番染色体上の154860262位の制限遺伝子座に対応する(遺伝子間領域)。
予期せぬことに、配列番号1~6に示される制限遺伝子座は、本発明の発明者らによって、肺癌患者の血漿由来のDNAと健常者の血漿由来のDNAとの間で特異的にメチル化されることが同定された。より具体的には、これらの遺伝子座は、正常な非癌性DNAと比較して、肺癌DNA(肺腫瘍に由来するDNA)のメチル化を増加させている。
【0087】
これらの遺伝子座の各々には、正常な非癌性DNAと比較して肺癌DNAでよりメチル化されているCGジヌクレオチドを含有する。有利には、特異的にメチル化されたCGジヌクレオチドは、メチル化感受性制限酵素の認識部位内に位置する。
【0088】
いくつかの実施形態では、これらの遺伝子座の各々は、メチル化感受性制限酵素の少なくとも1つの制限部位を含み得、CGジヌクレオチドは、健常者の血漿からのDNAよりも肺癌患者の血漿からのDNAにおいてよりメチル化されており、肺癌患者の血漿では、健常者の血漿と比較して、この位置でより多くのDNA分子がメチル化されていることを意味する。いくつかの実施形態では、これらの遺伝子座の各々は、少なくとも1つのHinP1I制限部位(GCGC)を含有し得る。このようなメチル化感受性制限酵素は、メチル化されていない場合にのみ、その認識配列を切断する。したがって、制限部位のCGジヌクレオチドがメチル化されているDNA分子の割合が高いDNA試料は、CGジヌクレオチドがメチル化されていないDNA分子の割合が高いDNA試料と比較して、消化の程度がより低くなる。本明細書に開示される方法に基づいて、メチル化感受性制限酵素によるDNA消化は、正常(健常)者からのDNAと比較して、肺癌患者の血漿試料からのDNAについてはそれほど広範囲ではない。驚くべきことに、消化効率の違いにより、その後の増幅および定量ステップで異なる増幅パターンが確立され、肺癌患者のDNAと健常者のDNAを区別できることが判明した。
【0089】
いくつかの実施形態では、配列番号1~6に示される遺伝子座の各々は、追加のCGジヌクレオチドを含有することができ、そのメチル化状態はアッセイに関連性または影響を及ぼさず-制限酵素(例えばHinP1I)の認識配列におけるメチル化のみが関連する。
【0090】
いくつかの実施形態では、対照遺伝子座は配列番号7に示されるものであり、第7染色体上の121380854~121380913位に対応する(遺伝子間領域)。
【0091】
いくつかの実施形態では、内部参照遺伝子座とも呼ばれる対照遺伝子座は、制限酵素の認識配列を含有しない。いくつかの実施形態では、DNA試料がメチル化感受性制限酵素で消化される場合、対照遺伝子座の配列は、そのメチル化状態に関係なく無傷のままである。
【0092】
いくつかの実施形態では、対照遺伝子座の配列は、肺癌DNAおよび正常DNAにおいて同じ消化および増幅プロファイルを示す。
【0093】
いくつかの実施形態では、対照遺伝子座は、配列番号7に示される遺伝子座を含む。メチル化感受性制限酵素による消化後の対照遺伝子座の増幅パターンは、メチル化の影響を受けない。
【0094】
肺癌患者の血漿試料と健常者の血漿試料とを区別するために配列番号1~6に示される制限遺伝子座を使用することの利点は、メチル化感受性制限酵素HinP1Iを使用して以下に例示する。HinP1Iでの消化後の配列番号1~6の各々を含む制限遺伝子座および配列番号7を含む対照遺伝子座の増幅を、癌患者および健常者からの血漿DNA中で実施した。各制限遺伝子座および対照遺伝子座の増幅産物間のシグナル比率の計算は、対照群と比較して、癌群でかなり高いシグナル比率(少なくとも一桁高い)を示した。
【0095】
いくつかの実施形態では、方法は、DNA試料の消化後に少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座を増幅することを含む。
【0096】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの(制限/対照)遺伝子座」は、単一の遺伝子座または複数の別個の遺伝子座を包含し得、その結果、「配列番号1で示される遺伝子座および配列番号2に示される遺伝子座を含む少なくとも1つの制限遺伝子座」などの句は、少なくともこれら2つの別個のゲノム遺伝子座が増幅されることを示す。
【0097】
いくつかの実施形態では、方法は、配列番号1に示される配列を含む制限遺伝子座および対照遺伝子座、ならびに任意選択で少なくとも1つの追加の制限遺伝子座を増幅することを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、方法は、配列番号2に示される配列を含む制限遺伝子座および対照遺伝子座、ならびに任意選択で少なくとも1つの追加の制限遺伝子座を増幅することを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、方法は、配列番号3に示される配列を含む制限遺伝子座および対照遺伝子座、ならびに任意選択で少なくとも1つの追加の制限遺伝子座を増幅することを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、方法は、配列番号4に示される配列を含む制限遺伝子座および対照遺伝子座、ならびに任意選択で少なくとも1つの追加の制限遺伝子座を増幅することを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、方法は、配列番号5に示される配列を含む制限遺伝子座および対照遺伝子座、ならびに任意選択で少なくとも1つの追加の制限遺伝子座を増幅することを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、方法は、配列番号6に示される配列を含む制限遺伝子座および対照遺伝子座、ならびに任意選択で少なくとも1つの追加の制限遺伝子座を増幅することを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、方法は、配列番号4に示される配列を含む制限遺伝子座および配列番号7に示される配列を含む対照遺伝子座を増幅することを含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、方法は、複数の制限遺伝子座(すなわち、少なくとも2つの制限遺伝子座)および対照遺伝子座を増幅することを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、複数の制限遺伝子座は、配列番号1に示される配列を含む制限遺伝子座と、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される配列を含む少なくとも1つの追加の制限遺伝子座とを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0106】
いくつかの実施形態では、複数の制限遺伝子座は、配列番号2に示される配列を含む制限遺伝子座と、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される配列を含む少なくとも1つの追加の制限遺伝子座とを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0107】
いくつかの実施形態では、複数の制限遺伝子座は、配列番号3に示される配列を含む制限遺伝子座と、配列番号1、配列番号2、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される配列を含む少なくとも1つの追加の制限遺伝子座とを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0108】
いくつかの実施形態では、複数の制限遺伝子座は、配列番号4に示される配列を含む制限遺伝子座と、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される配列を含む少なくとも1つの追加の制限遺伝子座とを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0109】
いくつかの実施形態では、複数の制限遺伝子座は、配列番号5に示される配列を含む制限遺伝子座と、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号6からなる群から選択される配列を含む少なくとも1つの追加の制限遺伝子座とを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0110】
いくつかの実施形態では、複数の制限遺伝子座は、配列番号6に示される配列を含む制限遺伝子座と、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群から選択される配列を含む少なくとも1つの追加の制限遺伝子座とを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0111】
いくつかの実施形態では、複数の制限遺伝子座は、配列番号4として示される配列を含む遺伝子座を含み、配列番号1、2、3、5および6からなる群から選択される配列を含む1つ、2つ、3つ、4つ、5つの、追加の制限遺伝子座をさらに含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0112】
いくつかの実施形態では、複数の制限遺伝子座は、配列番号1~6として示されるような配列を含む遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、複数の制限遺伝子座は、配列番号1~6に示される制限遺伝子座からなる。いくつかの実施形態では、方法は、配列番号1~6に示されるような複数の制限遺伝子座を増幅することを含む。
【0113】
本明細書中で使用される場合、「増幅」とは、関心のある1つ以上の特定の核酸標的のコピー数の増加を指す。当技術分野で周知のように、増幅は通常、DNA鋳型、ポリメラーゼ(通常はTaqポリメラーゼ)、dNTP、プライマー、およびプローブ(必要に応じて)を補充した適切な緩衝液を含み得るPCR反応混合物の存在下で、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって実行される。
【0114】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、任意の長さのヌクレオチドの多量体型、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらの類似体が含まれる。本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」という用語はまた、典型的には最大100塩基までの長さのヌクレオチドの多量体型が含まれる。
【0115】
「増幅産物」は、増幅反応において生成および蓄積される特定の標的配列の核酸分子を集合的に指す。この用語は一般に、所与の一連の増幅プライマーを使用してPCRによって生成された核酸分子を指す。
【0116】
本明細書で使用される場合、「プライマー」は、標的配列へのアニーリング(標的配列とのハイブリダイズ)することができ、それにより適切な条件下でDNA合成の開始点となり得る二本鎖領域を作製するオリゴヌクレオチドを定義する。「プライマー対」という用語は、本明細書では、いくつかのタイプの増幅プロセスのうちの1つ、好ましくはPCRによって、選択した核酸配列を増幅する際に一緒に使用されるように選択される、一対のオリゴヌクレオチドを指す。当技術分野で一般に知られているように、プライマーは、選択された条件下で相補的配列に結合するように設計することができる。
【0117】
プライマーは、特定のアッセイ形式および特定のニーズに応じて、任意の適切な長さであり得る。一部の実施形態では、プライマーは、少なくとも15ヌクレオチド長、好ましくは19~25ヌクレオチド長を含み得る。プライマーは、選択された核酸増幅システムに特に適するように適合させることができる。当技術分野で一般に知られているように、オリゴヌクレオチドプライマーは、それらの標的配列とのハイブリダイゼーションの融点を考慮して設計することができる(Sambrook et al、前掲文献)。
【0118】
いくつかの実施形態では、制限および対照遺伝子座は、各遺伝子座を特異的に増幅するために当技術分野で知られているように設計されたリバースおよびフォワードプライマーの対を使用して同じDNA試料(消化された試料)から増幅させることができる。いくつかの実施形態では、プライマーは、その5’および3’フランキング配列とともに遺伝子座を増幅するように設計され得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、5’フランキング配列は、1~60塩基を含み得る。追加の実施形態では、5’フランキング配列は10~50塩基の間である。例えば、5’フランキング配列には、遺伝子座のすぐ上流に10塩基、15塩基、20塩基、25塩基、30塩基、35塩基、40塩基、45塩基、または50塩基を含むことができる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0120】
いくつかの実施形態では、3’フランキング配列は、1~60塩基を含み得る。追加の実施形態では、3’フランキング配列は10~50塩基の間である。例えば、3’フランキング配列は、遺伝子座のすぐ下流に10塩基、15塩基、20塩基、25塩基、30塩基、35塩基、40塩基、45塩基、または50塩基を含むことができる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0121】
いくつかの実施形態では、プライマーは、長さが60~150bpの増幅産物を生成するように設計されてもよい。いくつかの特定の実施形態では、プライマーは、長さが70~140bpの増幅産物を生成するように設計されてもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、方法は、同じ反応混合物で2つ以上の標的配列(少なくとも1つの制限遺伝子座および1つの対照遺伝子座)の同時増幅である、多重増幅または共増幅として知られるプロセスを含む。このプロセスでは、複数のプライマー対の同時使用を必要とする。当技術分野で周知のように、プライマーは、増幅中に同じアニーリング温度で機能できるように設計することができる。いくつかの実施形態では、類似の融解温度(Tm)を有するプライマーが、本明細書で開示される方法で使用される。約3℃~5℃の間のTm変動は、プールで使用されるプライマーの許容範囲と見なされる。
【0123】
いくつかの実施形態では、すべての制限遺伝子座および対照遺伝子座は、単一の反応混合物中で増幅され得る。他の実施形態では、例えば特定の機械の技術的制限のため、消化されたDNA試料はいくつかのアリコートに分割することができ、各々は、1つ以上の制限遺伝子座および対照遺伝子座の増幅のためのプライマー対が補充される。したがって、DNA試料がいくつかのアリコートに分割されている場合でも、対照遺伝子座は各アリコートで増幅され、シグナル比率の計算は、一緒に、すなわち同じアリコートから増幅された対照遺伝子座および制限遺伝子座について実行される。
【0124】
いくつかの実施形態において、方法は、消化および増幅ステップ(複数可)において、ヒト細胞株に由来する1つ以上の対照DNAを使用し得る。
【0125】
対照DNAは、消化および増幅プロセスの評価、例えば、消化および増幅ステップの有効性および品質のモニタリングに使用できる。いくつかの実施形態では、対照DNAおよび検査DNA試料は、少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素によって消化される。いくつかの実施形態では、対照DNAおよび検査DNA試料は、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座のPCR増幅にかけられる。
【0126】
いくつかの実施形態では、第1の対照DNAは、少なくとも1つの制限遺伝子座が大部分メチル化されているヒト細胞株からのDNAを含む。いくつかの特定の実施形態では、第1の対照DNAは、HCT-15細胞株からのDNAを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、第2の対照DNAは、本明細書に開示される制限遺伝子座が大部分メチル化されていないヒト細胞株からのDNAを含む。いくつかの特定の実施形態では、第2の対照DNAは、A673細胞株からのDNAを含む。
【0128】
本明細書で使用される場合、「大部分」は、制限遺伝子座が少なくとも75%、好ましくは少なくとも95%がメチル化された/メチル化されていないことを示す。
【0129】
第1の対照DNAでは、本明細書に開示される制限遺伝子座は、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼで消化しても大部分無傷のままである。その後の増幅ステップでは、本明細書に開示される制限遺伝子座は十分に増幅される。本明細書に開示される対照遺伝子座はまた、第1の対照DNAにおいて十分に増幅される。
【0130】
したがって、第1の対照DNAにおける制限遺伝子座および対照遺伝子座の適切な増幅を検出することは、本発明の方法における増幅ステップが成功していることを示す。
【0131】
本明細書で使用される場合、「適切な増幅」とは、100,000単位を超える蛍光レベルを指す。
【0132】
第2の対照DNAでは、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼで消化すると、大部分メチル化されていない制限遺伝子座は広範囲に切断される。その後の増幅ステップでは、これらの制限遺伝子座は低増幅または増幅の欠如を示す。本明細書に開示される対照遺伝子座は、第2の対照DNAにおいて十分に増幅される。
【0133】
したがって、第2の対照DNAにおける対照遺伝子座の適切な増幅(上記で定義される)と同時に起こる1つ以上の制限遺伝子座の低増幅または増幅の欠如の検出は、本発明の方法における消化ステップが成功することを示す。
【0134】
本明細書で使用される場合、「低増幅または増幅の欠如」は、制限遺伝子座のCqと対照遺伝子座のCqとの間の少なくとも9サイクルのΔCqを指す。
【0135】
いくつかの実施形態では、ゲノム遺伝子座の増幅は、定量的PCR(qPCR)としても知られるリアルタイムPCR(RT-PCR)を使用して実施され得、増幅産物の同時増幅および検出が実行される。
【0136】
いくつかの実施形態では、RT-PCRにおける増幅産物の検出は、ポリヌクレオチドプローブ、一般的には蛍光標識されたポリヌクレオチドプローブを使用して達成され得る。
【0137】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチドプローブ」または「オリゴヌクレオチドプローブ」は互いに置換可能であり、関心のある遺伝子座の核酸配列内、例えば制限遺伝子座または対照遺伝子座の配列内の特異的な部分配列に相補的な標識化ポリヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態では、検出は、レポーター分子とクエンチャー分子の組み合わせ(Roche Molecular Systems Inc.)に基づくTaqManアッセイを使用することによって達成される。そのようなアッセイにおいて、ポリヌクレオチドプローブは、それらの5’末端に結合された蛍光部分(フルオロフォア)と、その3’末端に結合されたクエンチャーを有する。PCR増幅中、ポリヌクレオチドプローブは鋳型上の標的配列に選択的にハイブリダイズし、ポリメラーゼが鋳型を複製するときに、ポリメラーゼの5’-ヌクレアーゼの活性によりポリヌクレオチドプローブも切断する。ポリヌクレオチドプローブが無傷である場合、クエンチャーと蛍光部分の間のごく近い接近は通常、低レベルのバックグラウンド蛍光をもたらす。ポリヌクレオチドプローブが切断されると、クエンチャーは蛍光部分から切り離され、蛍光強度が増加する。蛍光シグナルは増幅産物の量と相関し、すなわち増幅産物が蓄積するにつれてシグナルは増加する。
【0138】
本明細書で使用される場合、「選択的にハイブリダイズする」(ならびに「選択的ハイブリダイゼーション」、「特異的にハイブリダイズする」、および「特異的ハイブリダイゼーション」)は、ストリンジェントな条件下で核酸分子(プライマーまたはプローブなど)が、特定の相補的ヌクレオチド配列に優先的に結合する、二重化する(duplexing)、またはハイブリダイズすることを指す。「ストリンジェントな条件」という用語は、核酸分子がその標的配列に優先的にハイブリダイズし、他の非標的配列には、それよりも少ない程度でのみまたは全くハイブリダイズしない条件を指す。当該分野で周知であるように、核酸ハイブリダイゼーションに関連する「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」は、配列依存的であり、異なる条件下では異なる。
【0139】
ポリヌクレオチドプローブは長さが変化してよい。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、15~30塩基を含み得る。追加の実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、25~30塩基を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、20~30塩基、例えば、20塩基、21塩基、22塩基、23塩基、24塩基、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基、29塩基、30塩基を含み得る。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0140】
ポリヌクレオチドプローブは、鋳型のいずれかの鎖に結合するように設計できる。追加の考慮事項には、ポリヌクレオチドプローブのTmが含まれ、これは好ましくはプライマーのTmと適合性があるべきである。プライマーおよびプローブを設計するためにコンピュータソフトウェアを使用することができる。
【0141】
上記のように、本明細書で開示される方法は、同じ反応混合物中で2つ以上の標的配列(少なくとも1つの制限遺伝子座および1つの対照遺伝子座)の同時増幅を含み得る。並行して増幅される複数の標的配列を区別するために、異なる蛍光色で標識されたポリヌクレオチドプローブを使用することができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドプローブは、当技術分野で周知のフルオロフォア/クエンチャー対を形成し、例えば、FAM-TAMRA、FAM-BHQ1、Yakima Yellow-BHQ1、ATTO550-BHQ2およびROX-BHQ2が含まれる。
【0143】
いくつかの実施形態では、色素の組み合わせは、選択したRT-PCRサーモサイクラーに適合し得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、蛍光は各PCRサイクルの間にモニターされてもよく、サイクル数の関数としてプローブからの蛍光シグナルの変化を示す増幅プロットを提供する。
【0145】
リアルタイムPCRに関しては、次の用語が使用される。
「定量化サイクル」(「Cq」)は、ソフトウェアによって自動的に、または使用者が手動で設定した、蛍光が閾値を超えて増加するサイクル数を指す。いくつかの実施形態では、閾値は、すべての遺伝子座について一定であってもよく、増幅および検出を実施する前に、事前に設定されてもよい。他の実施形態では、閾値は、増幅サイクル中にこの遺伝子座について検出された最大蛍光レベルに基づいて、実行後の各遺伝子座について別々に定義されてもよい。
【0146】
「閾値」とは、Cq測定に使用される蛍光の値を指す。いくつかの実施形態では、閾値は、ベースライン蛍光を超える値、および/またはバックグラウンドノイズを超える値であり得、増幅プロットの指数増殖期内にある値であり得る。
【0147】
「ベースライン」とは、蛍光の変化がほとんどないかまったくないPCRの初期サイクルを指す。
【0148】
コンピュータソフトウェアを使用して、増幅プロットを分析し、ベースライン、閾値、Cqを決定できる。
【0149】
少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素による消化後、酵素の認識部位のCGジヌクレオチドがメチル化されている遺伝子座は、DNA分子が消化から保護されているため、高効率で増幅される。検出可能な増幅産物は、比較的少ない(低い)増幅サイクル数の後に示されるため、結果は比較的低いCq値である。反対に、酵素の認識部位にあるCGジヌクレオチドがメチル化されていない遺伝子座は、消化ステップ中に広範囲に切断されるため、増幅および定量ステップでCq値が高くなる(すなわち、比較的多数の増幅サイクルの後に検出可能な増幅産物が示される)。
【0150】
他の実施形態では、増幅産物の増幅および検出は、蛍光標識プライマーを使用する従来のPCRと、それに続く増幅産物のキャピラリー電気泳動によって実施することができる。一部の実施形態では、増幅後、増幅産物はキャピラリー電気泳動によって分離され、蛍光シグナルが定量化される。いくつかの実施形態では、サイズ(bp)または注入からの時間の関数として蛍光シグナルの変化をプロットする電気泳動図を生成することができ、電気泳動図の各ピークは単一の遺伝子座の増幅産物に対応する。ピークの高さ(例えば、「相対蛍光単位」、rFUを使用して提供される)は、増幅された遺伝子座からのシグナルの強度を表すことができる。コンピュータソフトウェアを使用して、ピークを検出し、その増幅産物がキャピラリー電気泳動装置で実行された一連の遺伝子座の蛍光強度(ピーク高さ)を計算し、その後、シグナル強度間の比率を計算することができる。
【0151】
メチル化感受性制限酵素、例えばHinP1Iなど、で消化されたDNA試料に対し、酵素の認識部位のCGジヌクレオチドがメチル化されている遺伝子座は、電気泳動図で比較的強いシグナル(高いピーク)を生成する。反対に、酵素の認識部位のCGジヌクレオチドがメチル化されていない遺伝子座では、電気泳動図で比較的弱いシグナル(低いピーク)が生成される。
【0152】
いくつかの実施形態では、プライマーの蛍光標識は、フルオレセイン、FAM、リサミン、フィコエリトリン、ローダミン、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、FluorX、JOE、HEX、NED、VICおよびROXのうちの任意の1つを含む。
【0153】
シグナル比率
本明細書で使用される場合、「比率」または「シグナル比率」という用語は、(同じ反応混合物中の)単一のDNA試料における一対のゲノム遺伝子座の同時増幅、特に制限遺伝子座および対照遺伝子座の同時増幅から得られるシグナルの強度間の比率を指す。
【0154】
本明細書で使用される場合、「配列番号Xの比率」は、本明細書に詳述されるように制限酵素で消化されたDNA試料中この遺伝子座対の同時増幅後、配列番号Xに示される遺伝子座のシグナル強度と対照遺伝子座のシグナル強度との間の比率を指す。
【0155】
本明細書で使用される「シグナル強度」という用語は、遺伝子座の無傷なコピーの初期量に対応する遺伝子座特異的増幅産物の量を反映する尺度を指す。ただし、シグナル強度は、増幅産物/無傷な遺伝子座の実際の量を示さなくてもよく、増幅産物/無傷な遺伝子座の絶対量の計算を含まなくてもよい。したがって、増幅産物シグナルの比率を計算する場合、実際のDNA濃度またはDNAメチル化レベル自体を計算する必要がないため、標準曲線や基準DNAを必要としなくてもよい。
【0156】
いくつかの例示的な実施形態では、増幅産物の増幅および検出はRT-PCRによって実施され、特定の遺伝子座のシグナル強度がこの遺伝子座について計算されたCqによって表され得る。この場合のシグナル比率は、次の計算で表すことができる:2(対照遺伝子座のCq-制限遺伝子座のCq)。
【0157】
追加の例示的な実施形態では、増幅産物の検出は、特定の遺伝子座のシグナル強度がその対応するピークの相対蛍光単位(rfus)の数であるキャピラリー電気泳動によって実施される。シグナル比率は、各制限遺伝子座のピークの高さを対照遺伝子座のピークの高さで割ることによって計算することができる。
【0158】
いくつかの実施形態では、DNA試料中の制限遺伝子座と対照遺伝子座の増幅産物のシグナル強度間の比率を計算することは、(i)制限遺伝子座の増幅産物のシグナル強度を決定することと、(ii)対照遺伝子座の増幅産物のシグナル強度を決定することと、(iii)2つのシグナル強度の間の比率を計算することと、を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、DNA試料中の制限遺伝子座および対照遺伝子座の増幅産物のシグナル強度間の比率を計算することは、各遺伝子座のCqを決定することと、対照遺伝子座のCqと制限遺伝子座のCqとの差を計算することを含む。いくつかの実施形態では、計算することは、以下の式を適用することをさらに含む:2^(対照遺伝子座のCq-制限遺伝子座のCq)。
【0160】
いくつかの実施形態では、シグナル比率を計算することは、各制限遺伝子座および対照遺伝子座との間の複数のシグナル比率を計算することであり得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、シグナル比率を計算することは、配列番号1に示される制限遺伝子座および対照遺伝子座との間のシグナル比率を計算することであり得る。いくつかの実施形態では、シグナル比率を計算することは、配列番号2に示される制限遺伝子座および対照遺伝子座との間のシグナル比率を計算することであり得る。いくつかの実施形態では、シグナル比率を計算することは、配列番号3に示される制限遺伝子座および対照遺伝子座との間のシグナル比率を計算することであり得る。いくつかの実施形態では、シグナル比率を計算することは、配列番号4に示される制限遺伝子座および対照遺伝子座との間のシグナル比率を計算することであり得る。いくつかの実施形態では、シグナル比率を計算することは、配列番号5に示される制限遺伝子座および対照遺伝子座との間のシグナル比率を計算することであり得る。いくつかの実施形態では、シグナル比率を計算することは、配列番号6に示される制限遺伝子座および対照遺伝子座との間のシグナル比率を計算することであり得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、配列番号1~6に示される遺伝子座の中の複数の遺伝子座が増幅され、この方法は、配列番号1~6に示される遺伝子座の各々と対照遺伝子座との間の、例えば、配列番号1に示される遺伝子座および対照遺伝子座との間の、配列番号2に示される遺伝子座および対照遺伝子座との間などの、比率を計算することを含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、増幅産物のシグナル強度間の比率を計算するためにコンピュータソフトウェアが使用され得る。
【0164】
基準比率
「基準比率」または「基準シグナル比率」という用語は互いに置換可能に使用され、既知の供給源からのDNAで決定されたシグナル強度比率を指す。制限遺伝子座および対照遺伝子座の所与の対の基準比率は、いくつかの方法で表すことができる。いくつかの実施形態では、所与の遺伝子座対の基準比率は、単一の比率であってよい。いくつかの実施形態では、所与の遺伝子座対の基準比率は、統計値、例えば、既知の供給源からの大量の一連のDNA試料から得られた大量の一連の基準比率の平均値、例えば癌患者の大規模な群において決定された平均値、または健常者の大規模な群において決定された平均値、であってもよい。
【0165】
他の実施形態では、所与の遺伝子座対の基準比率は、既知の供給源からの大量の一連のDNA試料におけるこの対の遺伝子座について決定された比率の分布のような、複数の比率であってよい。いくつかの実施形態では、基準比率は基準スケールであり得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、所与の遺伝子座対の基準スケールは、同じ基準供給源からの複数のDNA試料におけるこの対の遺伝子座について測定されたシグナル比率を含み得る。例えば、基準肺癌患者の基準スケールまたは基準健常者の基準スケール。他の実施形態では、所与の遺伝子座対の基準スケールは、健常者と病人の両方からのシグナル比率、すなわち、両方の供給源からの基準比率を組み合わせた単一のスケールを含み得る。一般に、単一のスケールが使用される場合、健常者からの値がスケールの一方の端に、例えばカットオフ値より下になるように、癌患者からの値はスケールのもう一方の端に、例えばカットオフ値より上になるように、値は分布される。いくつかの実施形態では、未知の供給源の検査DNA試料について計算されたシグナル比率は、健康および/または癌の基準比率の基準スケールと比較することができ、確率スコアは、スケール内の相対位置に基づいて計算されたシグナル比率に割り当てられたスコアであってよい。いくつかの実施形態では、計算されたシグナル比率が高いほど、それに割り当てられるスコアが高くなり、したがって、肺癌に関する確率が高くなる。
【0167】
「肺癌基準比率」または「肺癌DNAにおける基準比率」という用語は、互いに置換可能で、肺癌患者の血漿試料からのDNAにおける所与の制限遺伝子座と所与の対照遺伝子座との間で測定されるシグナル強度比率を指す。肺癌基準比率は、肺癌DNA、すなわち肺癌患者の血漿試料からのDNAにおけるシグナル強度比率を表す。肺癌基準比率は、上で詳述したように、単一の比率、統計値または複数の比率(例えば、分布)であり得る。
【0168】
用語「健康基準比率」、「正常基準比率」または健康なDNAの基準比率」は、互いに置換可能で、正常人からの血漿試料中の所与の制限遺伝子座および所与の対照遺伝子座の間で測定されるシグナル強度比率を指す。「健常者」または「正常人」は、本明細書では、従来の診断方法によって決定される、検出可能な肺疾患または症状、および/または肺癌を含む肺関連疾患のない個人として定義される。健康基準比率は、正常なDNA、すなわち健常者の血漿試料からのDNAにおけるシグナル強度比率を表する。健康基準比率は、上で詳述したように、単一の比率、統計値、または複数の比率(例えば、分布)であり得る。
【0169】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、肺癌DNAからの基準比率の事前決定を含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、正常なDNAからの基準比率の事前決定を含む。
【0170】
上記のように、シグナル比率は、例えば、キャピラリー電気泳動後にピークを測定すること、またはRT-PCR後にCqを計算することを含む、様々な方法によって決定することができる。肺癌を決定するために、基準比率および未知の供給源の検査試料について測定された比率は、本明細書に開示される方法を使用して得られることを理解するべきである。
【0171】
肺癌の決定
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、肺癌を同定するために、基準比率と比較した未知の供給源の血漿試料からのDNAについて計算されたシグナル比率を評価することに基づく。
【0172】
いくつかの実施形態では、計算されたシグナル比率は、DNAが肺癌DNAであることを示す。
【0173】
当業者は、検査試料について計算されたシグナル比率と対応する基準シグナル比率との比較が、様々な統計的手段を使用して、いくつかの方法で実行され得ることを理解するであろう。
【0174】
いくつかの実施形態では、所与の遺伝子座対について計算された検査シグナル比率を基準シグナル比率と比較することは、検査シグナル比率を単一の基準値と比較することを含む。単一の基準値は、癌患者または健常者の大集団からの基準シグナル比率について得られた平均値に対応し得る。他の実施形態では、所与の遺伝子座対について計算された検査シグナル比率を基準シグナル比率と比較することは、検査シグナル比率を、複数の基準シグナル比率の分布またはスケールと比較することを含む。
【0175】
既知の統計的手段は、所与の制限遺伝子座および対照遺伝子座との間で計算されたシグナル比率が肺癌基準比率または正常基準比率に対応するかどうかを決定するために、使用することができる。いくつかの実施形態では、計算された比率と肺癌基準比率とのごく近い近似値を検出することにより、対象が肺癌を有する対象として同定される。反対に、いくつかの実施形態では、計算された比率と正常基準比率とのごく近似値を検出することにより、対象が肺癌を患っていない対象として同定される。
【0176】
本発明の方法は、検査DNA試料のシグナル比率が肺癌比率であるかどうか、すなわち、肺癌を示すかどうかの分析に基づく。いくつかの実施形態では、この方法は、計算されたシグナル比率をその対応する健康基準比率(すなわち、健常者の同じ遺伝子座対について決定されたシグナル比率)と比較して、計算されたシグナル比率が肺癌比率である可能性を反映するスコア(確率スコア)を取得することを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、計算されたシグナル比率をその対応する肺癌基準比率(すなわち、肺癌の同じ遺伝子座対について決定されたシグナル比率)と比較して、計算されたシグナル比率が肺癌比率である可能性を反映するスコアを取得することを含む。計算されたシグナル比率と肺癌基準比率の近似が良いほど、スコア(確率スコア)が高くなり、計算されたシグナル比率が肺癌比率である可能性が高くなる。いくつかの実施形態では、確率スコアは、肺癌基準比率の分布内での計算されたシグナル比率の相対的位置に基づく。
【0177】
いくつかの実施形態では、本方法は、対照遺伝子座に関して複数の制限遺伝子座について計算された複数のシグナル比率を、それらの対応する健康および/または肺癌基準比率と比較することを含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、シグナル比率のパターンは、統計的手段およびコンピュータ化されたアルゴリズムを使用して分析され、それが肺癌のパターンまたは正常で健康なパターンを表すかどうかを決定し得る。例示的なアルゴリズムは、例えば、本発明の出願人に譲渡されたWO2011/070441に開示されている。アルゴリズムには、機械学習およびパターン認識アルゴリズムが含まれるが、これらに限定されない。
【0179】
いくつかの例示的な実施形態において、計算された各比率(制限および対照遺伝子座の各対に対する)は、癌患者、癌に罹患していない個人、またはその両方からの大量の一連の血漿試料のからこの対について生成された基準比率のスケールと比較され得る。このスケールは、癌患者および/または正常人からの多数の試料における、制限遺伝子座および対照遺伝子座の対の間で計算されたシグナル比率を表すことができる。スケールは、閾値を示してもよく、以下「カットオフ」または「事前に定義された閾値」とも呼ばれ、それを超えると肺癌に対応する基準比率であり、それ以下は健常者に対応する基準比率であり、またはその逆順である。
【0180】
いくつかの実施形態では、スケールの下部および/またはカットオフより下のより低い比率は、正常人(健康、すなわち、肺癌に罹患していない)の試料からのものであり得、スケールの上部および/または所定のカットオフを超えるより高い比率は、癌患者からのものであり得る。(各制限遺伝子座および対照遺伝子座の間の)各比率に対して、スケール内のその相対位置に基づいてスコアを与えることができ、(各遺伝子座の)個々のスコアを組み合わせて単一のスコアを与える。いくつかの実施形態では、個々のスコアを合計して単一のスコアを与えることができる。他の実施形態では、個々のスコアを平均して単一のスコアを与えることができる。いくつかの実施形態では、単一のスコアは、対象が癌を有しているかどうかを決定するために使用することができ、所定の閾値を超えるスコアは、肺癌を示す。
【0181】
いくつかの実施形態では、スコアは、計算されたシグナル比率が肺癌比率である確率を反映する0~100の間の数であり、0は最も低い確率であり、100は最も高い確率である。いくつかの実施形態では、閾値スコアが決定され、それに等しいまたそれを超えるスコアは肺癌を示す。閾値は、例えば、60、70または80であり得る。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0182】
追加の例示的な実施形態では、計算された各比率(各制限遺伝子座および対照遺伝子座の間の)について、それが肺癌DNAを表す確率は、対応する肺癌基準比率および/または正常基準比率との比較に基づいて決定されてもよく、スコア(確率スコア)を割り当てられてもよい。その結果、各比率(各遺伝子座の)に対して計算された個々の確率スコアが組み合わされて(合計または平均化されて)、複合スコアを与える。複合スコアは、対象が癌を有しているかどうかを決定するために使用することができ、所定の閾値を超える複合スコアは、肺癌を示す。
【0183】
したがって、いくつかの実施形態では、閾値またはカットオフスコアが決定され、それを上回る(または下回る)対象は、肺癌を有すると同定される。閾値スコアは、健常者の母集団と非健常者の母集団を区別する。
【0184】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、閾値スコアを提供することを含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、閾値スコアを決定することは、健康であるかまたは肺癌を有している対象の大集団におけるシグナル比率を測定することを含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、閾値は統計的に有意な値である。多くの場合、統計的有意性は、2つ以上の母集団を比較し、信頼区間(CI)および/またはp値を決定することによって決定される。いくつかの実施形態では、統計的に有意な値は、約90%、95%、97.5%、98%、99%、99.5%、99.9%および99.99%の信頼区間(CI)を指し、好ましいp値は約0.1、0.05、0.025、0.02、0.01、0.005、0.001未満または0.0001未満である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、閾値スコアのp値は最大で0.05である。
【0187】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、測定可能な値を指す場合、規定値から+/-10%、より好ましくは+/-5%、さらにより好ましくは+/-1%、よりさらに好ましくは+/-0.1%の変動を包含することを意味する。
【0188】
いくつかの実施形態では、方法は、所与の制限遺伝子座および対照遺伝子座との間で計算されたシグナル比率をその対応する正常/健康基準比率と比較して確率スコアを取得することをさらに含み、対応する健康基準比率に関して前記比率の低確率スコアを検出するは、対象が肺癌を有していることを示す。
【0189】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法の感度は、少なくとも約75%であり得る。いくつかの実施形態では、方法の感度は、少なくとも約80%であり得る。いくつかの実施形態では、方法の感度は、少なくとも約85%であり得る。いくつかの実施形態では、方法の感度は、少なくとも約90%であり得る。
【0190】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される診断アッセイの「感度」は、陽性であると診断された病人のパーセンテージ(「真の陽性」のパーセント)を指す。したがって、アッセイによって検出されない病人は「偽陰性」である。罹患しておらず、かつアッセイで陰性と判定された対象は、「真の陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異度」は、1から偽陽性率を差し引いたものであり、「偽陽性」率は、陽性と診断された疾患のないものの割合として定義される。特定の診断方法は状態の確定診断を提供できないが、この方法が診断に役立つ陽性の指標を提供する場合はそれで十分である。
【0191】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法の特異度は、少なくとも約65%であり得る。いくつかの実施形態では、方法の特異度は少なくとも約70%であり得る。いくつかの実施形態では、方法の特異度は少なくとも約75%であり得る。いくつかの実施形態では、方法の特異度は少なくとも約80%であり得る。
【0192】
肺癌の確定診断
いくつかの実施形態では、本発明の方法によるヒト対象における肺癌の同定後、対象は、肺癌の確定診断を受けることができる。肺癌の確定診断は、生検後の疑わしい肺組織の組織学的検査に基づいている。この手順では通常、気管支鏡検査またはCTガイド下生検を使用して、疑わしい肺組織をサンプリングする。
【0193】
肺癌の治療
いくつかの実施形態において、本発明の方法に従って肺癌を同定することと、前記対象に抗肺癌療法を施すことと、を含む、肺癌を治療するための方法が提供される。
【0194】
肺癌を治療する方法は、当技術分野で周知の、腫瘍を除去する手術、高周波アブレーション(RFA)、放射線療法、化学療法、標的療法および免疫療法のうちの1つ以上を含むことができる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0195】
キットとシステム
いくつかの実施形態では、ヒト対象における肺癌を同定するためのキットが提供される。いくつかの実施形態では、ヒト対象における肺癌を同定するためのシステムが提供される。
【0196】
いくつかの実施形態では、キットおよびシステムは、本発明の方法による肺癌の同定のためのものである。
【0197】
いくつかの実施形態では、キットは、ヒト対象の血漿試料からのDNAを消化するための少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素と、少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素による消化後の少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座の同時増幅のための複数のプライマー対と、を含み、少なくとも1つの制限遺伝子座が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される。
【0198】
いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座の増幅産物を検出するための複数のポリヌクレオチドプローブをさらに含む。
【0199】
いくつかの実施形態では、キットは、コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータソフトウェアを使用して肺癌の同定を実施するための命令をさらに含み、コンピュータソフトウェアは、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の、それらの増幅後のシグナル強度を決定するステップと、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の各々のシグナル強度間のシグナル比率を計算するステップと、計算されたシグナル比率を少なくとも1つの基準比率と比較するステップと、この比較に基づいて、DNA試料が肺癌DNAかまたは健康なDNAかを出力するステップと、を実行するようにコンピュータプロセッサに指示する
【0200】
いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の、それらの増幅後のシグナル強度を決定するステップと、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の各々のシグナル強度間のシグナル比率を計算するステップと、計算されたシグナル比率を少なくとも1つの基準比率と比較するステップと、この比較に基づいて、DNA試料が肺癌DNAかまたは健康なDNAかを出力するステップと、を実行するようにコンピュータプロセッサに指示するコンピュータソフトウェアを格納するコンピュータ可読媒体を、さらに含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、システムは、ヒト対象の血漿試料からのDNAを消化するための少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素と、少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素による消化後の少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座の同時増幅のための複数のプライマー対であって、この少なくとも1つの制限遺伝子座が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される、複数のプライマー対と、コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータソフトウェアと、を含み、このコンピュータソフトウェアは、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の、それらの増幅後のシグナル強度を決定するステップと、少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の各々のシグナル強度間のシグナル比率を計算するステップと、計算されたシグナル比率を少なくとも1つの基準比率と比較するステップと、この比較に基づいて、DNA試料が肺癌DNAかまたは健康なDNAかを出力するステップと、を実行するようにコンピュータプロセッサに指示する。
【0202】
いくつかの実施形態では、本発明によるコンピュータソフトウェアは、リアルタイムPCR実行の入力パラメータまたは生データを受け取る。いくつかの実施形態では、コンピュータソフトウェアは、リアルタイムPCRの実行を分析してシグナル強度およびシグナル比率を決定するようにコンピュータプロセッサに指示する。
【0203】
コンピュータソフトウェアは、非一時的なコンピュータ可読媒体に格納されるプロセッサ実行可能命令を含む。コンピュータソフトウェアはまた、格納データを含み得る。コンピュータ可読媒体は、コンパクトディスク(CD)、磁気記憶装置、光学記憶装置、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、または任意の他の有形的表現媒体などの有形的コンピュータ可読媒体である。
【0204】
いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素と、少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座の増幅のためのプライマー対と、少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座の増幅産物を検出するための手段と、肺癌の同定を実施するための取扱説明書と、を含む。いくつかの実施形態では、取扱説明書は、電子取扱説明書であってもよい。
【0205】
いくつかの実施形態では、取扱説明書は、肺癌基準比率および/または健康基準比率を提供し得る。
【0206】
いくつかの実施形態では、取扱説明書は、上記の方法ステップを実行するための指示を含み得る。
【0207】
いくつかの実施形態では、取扱説明書は、シグナル比率(複数可)と肺癌基準比率(複数可)および/または健康基準比率(複数可)との間の相関を導く指示を含み得る。
【0208】
いくつかの実施形態では、取扱説明書は、所与の制限遺伝子座の確率スコアを計算するための指示を提供することができる。いくつかの実施形態では、取扱説明書は、複数の確率スコアの合計スコアを計算するための指示を提供することができる。いくつかの実施形態では、取扱説明書は、肺癌を決定するための閾値スコアを提供してもよく、それを超えると、対象は肺癌を有すると同定される。他の実施形態では、取扱説明書は、肺癌を決定するための閾値スコアを提供してもよく、それを下回ると、対象は肺癌を有すると同定される。
【0209】
一部の実施形態では、キットは、単一のメチル化感受性エンドヌクレアーゼを含む。いくつかの実施形態では、メチル化感受性エンドヌクレアーゼはHinP1Iである。追加の実施形態では、メチル化感受性エンドヌクレアーゼはHhaIである。
【0210】
いくつかの実施形態では、キットは、コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータソフトウェアをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、コンピュータソフトウェアは、本明細書に開示される方法に従ってシグナル強度、シグナル比率および確率スコアのうちの少なくとも1つを計算し、所与のDNA試料が肺癌DNA試料かまたは健康なDNA試料かを出力するようにコンピュータプロセッサに指示するコンピュータソフトウェアであり得る。
【0211】
いくつかの実施形態では、キットは、HinP1IまたはHhaIと、本明細書に記載の少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座に相補的なプライマー対と、少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座に相補的な蛍光ポリヌクレオチドプローブと、を含む。
【0212】
配列番号1~6に示される制限遺伝子座を増幅するための例示的なプライマーは、以下のように、配列番号8~79に示される:
遺伝子座1(配列番号1)
プライマーフォワード:
TGCATTCTCTCAGGAGCTGG(配列番号8)
GAGCCAAGCTCGGTCTCCG(配列番号9)
CAGCAACGCTTTTGCCAGTAG(配列番号10)
TCTAATGCGGAGCTGGCGGT(配列番号11)
CCCACTGAGCGGTTTTTCAGT(配列番号12)
CGTTTCCCGTACGCGGAGTC(配列番号13)
プライマーリバース:
GTTTTAATGTGTTGTGACAG(配列番号14)
GTGCTGCTAGAAAGAAACTG(配列番号15)
GGGTTTAGGAAGAGTTCCTAGGA(配列番号16)
TACTAGTTGGCACAGAGGCT(配列番号17)
CGGTGCCAGAACCGAGAAAG(配列番号18)
ACCGTTCTGCACCGTAAAAC(配列番号19)
遺伝子座2(配列番号2)
プライマーフォワード:
CGGAATAGGGTTTGCAAATC(配列番号20)
AGGAGATGCTGCTTGTTCGG(配列番号21)
GTTGAAGCTTTTAATACATG(配列番号22)
ACAGCTCACGGTCCCGCAG(配列番号23)
GCCCGCCACACACCCGC(配列番号24)
CTTGAGATGAGGTTCCCAAGC(配列番号25)
プライマーリバース:
AGATGAGTAGCGAGCCTTGTC(配列番号26)
CGTGCTTTGCCGATCGAATTC(配列番号27)
TTCCTGCTCGAGTCCACTCG(配列番号28)
CGGGTGTATCTTCCTGCTCGA(配列番号29)
CGAGCCTTGACGGAGGGAGA(配列番号30)
CGGAGGGAGAATGGAAAGAT(配列番号31)
遺伝子座3(配列番号3)
プライマーフォワード:
TTTCCTCCGCCACCGAGTAG(配列番号32)
GAAGTTTAAGTTTCCAGGTCC(配列番号33)
ATTTGCGAAGTTTAAGTTTCC(配列番号34)
AGCAGCCAGGGATCGGATAG(配列番号35)
TCGGCAGCCGCCCTGGTAGC(配列番号36)
CCCCATTTGCGAAGTTTAAG(配列番号37)
プライマーリバース:
GGCAGTCTAATCCTTAATTT(配列番号38)
ATTTTAATAATCAGGATAAA(配列番号39)
ATGTTCGAGTCGGTCGTAACG(配列番号40)
GTACACAAACGAATACTAGCTAA(配列番号41)
CTAGGCAGTCTAATCCTTAAT(配列番号42)
ATACTAGCTAAGGCCGATGAT(配列番号43)
遺伝子座4(配列番号4)
プライマーフォワード:
CTCTCTGCTGTAGCGACGCCA(配列番号44)
GCTTTCCGCCGGGTAAATTAG(配列番号45)
TTTGGTTATAGTGGTGTGGTCT(配列番号46)
CCACCCCATCTTCGCAGTTCT(配列番号47)
TCCTCCTTGCCTTCTTTCGC(配列番号48)
ATAGTGGTGTGGTCTCTGCCTC(配列番号49)
プライマーリバース:
GTTTTGTTACTGTCTGTCCT(配列番号50)
TCCTGCCAGGTGTCTACATGT(配列番号51)
ACTGTCTGTCCTGCAGGAACCC(配列番号52)
TGAAGGCAGGATAGGTACCAG(配列番号53)
TCAAACTATTATTTCCCACGTT(配列番号54)
ACATGTTTCCATTAAGATGC(配列番号55)
遺伝子座5(配列番号5)
プライマーフォワード:
CCTGACGTTCCTGGAATATGC(配列番号56)
GCAATGACTTCTTTTAGGACA(配列番号57)
TGAAAGCAGCATTAACCGTG(配列番号58)
AGGACCCGCTCCGCAAAGC(配列番号59)
ACCCTCGAGGGAGGAAAGCC(配列番号60)
AACCCGTTACTTTCCAAGGAC(配列番号61)
プライマーリバース:
GCCACACTCCCTGGCCTTG(配列番号62)
GCGGGGCTCGAGCCACACT(配列番号63)
CCTCCGCACTGGGAGGCTG(配列番号64)
TCGCAGCCGAGGCAGGTCT(配列番号:65)
CCCGACAGTGTCATTGATTAAC(配列番号66)
CCTCCGCAGCTGGGAGGCTG(配列番号67)
遺伝子座6(配列番号6)
プライマーフォワード:
CTCGGGGACTGCTACTTTGC(配列番号68)
GGTCAAGTGTCACGTCCTCC(配列番号69)
ATATTCCTGTAATGTATTTAAAT(配列番号70)
TACGCGGGGCCGTGTGAAT(配列番号71)
GGTCAAGTGTCACGTCCTCC(配列番号72)
AAGTGTCACGTCCTCCGCAA(配列番号73)
プライマーリバース:
GCGAGGACGCAAACACCATT(配列番号74)
CCTAAAGGACCCTACCAAGC(配列番号75)
GTGCCTGAACTCTTCCTCCTT(配列番号76)
TTCCGTGGGTCCGCGGTCT(配列番号77)
ATCAGAAAGACCATTAGGATC(配列番号78)
CCGAAGGGAAAGAAAAATCAG(配列番号79)
【0213】
配列番号7に示される対照遺伝子座を増幅するための例示的なプライマーは、以下のように配列番号80~91に示される:
対照遺伝子座(配列番号7)
プライマーフォワード:
AGCAAGGTGAAGACTAACTTTTC(配列番号80)
CTTGTACAGAATCATCAGGCTAA(配列番号81)
GTCCTTGGAGACATCTGAGAGATTC(配列番号82)
GACATCTGAGAGATTCCGGG(配列番号83)
CAAAGAAAGCAAGGTGAAGACT(配列番号84)
CAGTCCTTGGAGACATCTGAGAGA(配列番号85)
プライマーリバース:
TGAAGTGAACTATTCCTTAGGTG(配列番号86)
GTCTCCAAGGACTGAAATAATGC(配列番号87)
GAGTAGCAAAAAATAGCTGAAGTGAACT(配列番号88)
TGACAACCAATGAGTAGCAAAAA(配列番号89)
GTTGTCAGTGTGGCCAGAGA(配列番号90)
TGTTGTCAGTGTGGCCAGAGA(配列番号91)
【0214】
いくつかの実施形態では、キットは、各々が上記のヒト細胞株DNAを含む、第1の対照構築物および第2の対照構築物のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、キットは、上記の第1および第2の対照DNAの両方を含む。
【0215】
いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも1つのヌクレオチドプライマー対で満たされた1つ以上の容器を含む。いくつかの実施形態では、本発明のキットに含まれる各ヌクレオチドプライマー対は、配列番号1~6に示される制限遺伝子座から選択される制限遺伝子座を含むゲノムの断片を選択的に増幅するように設計されたプライマーを含むことができる。
【0216】
いくつかの実施形態では、キットは、上記の遺伝子座の組み合わせを選択的に増幅するためのプライマー対を含み得る。
【0217】
いくつかの実施形態では、キットは、キット中のプライマーを使用して増幅された遺伝子座の増幅産物を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブをさらに含み得る。各オリゴヌクレオチドプローブは、遺伝子座内の部分配列に相補的であり得、それにハイブリダイズでき得る。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブは、蛍光標識されていてもよい。
【0218】
いくつかの実施形態では、キットは、DNA抽出、DNA消化、遺伝子座増幅、および増幅産物の検出に必要な少なくとも1つの追加の成分、例えばDNAポリメラーゼおよびヌクレオチドミックス、をさらに含み得る。
【0219】
いくつかの実施形態では、キットは、消化および増幅のための適切な反応緩衝液、ならびに肺癌の同定を実行するための書面によるプロトコルをさらに含み得る。書面によるプロトコルは、本明細書に開示されたステップのいずれかを実行するための指示を含み得、例えば、DNA消化パラメータ、PCRサイクリングパラメータ、シグナル比率分析、および基準比率との比較を含むがこれらに限定されない。
【0220】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態をより完全に例示するために提示される。しかしながら、それらは決して本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された原理の多くの変形および修正を容易に考案することができる。
【実施例】
【0221】
例1-肺癌の検出のためのゲノム遺伝子座
6つのヒトゲノム遺伝子座は、肺癌または他の肺疾患を持たない個体の血漿からのDNAと比較して、肺癌患者の血漿からのDNAのメチル化が増加していると特定された(以下の表1、配列番号1~6)。これらの遺伝子座は、肺癌患者の血漿からのDNAと正常な個人(肺癌や他の肺疾患に罹患していない)のDNAを区別できることがわかった。
【表1】
【0222】
例2-ゲノム遺伝子座のパネルの試験
血漿試料は、133人の肺癌患者と、現在または過去の喫煙者である、50歳以上の肺癌に罹患していない121人の健常者から取得された。肺癌患者集団のうち、49人は扁平上皮癌、50人は腺癌、2名は混合型の非小細胞肺癌、4人は他のタイプの非小細胞肺癌であった。11人の患者に小細胞肺癌があり、さらに17人の患者に組織型が不明な肺癌があった。非小細胞肺癌集団では、18人の患者がステージIの疾患、17人の患者がステージIIの疾患、49人の患者がステージIIIの疾患、32人の患者がステージIVの疾患であり、6人の患者の病期は不明であった。小細胞肺癌集団では、4人の患者に限局性疾患があり、7人に広範な疾患があった。
【0223】
QIAamp(登録商標)Circulating Nucleic Acid Kit(QIAGEN、ヒルデン、ドイツ)を使用して血漿試料からDNAを抽出した。各試料から抽出されたDNAは、
図2に示すように処理された。手短に言えば、抽出されたDNAをメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼHinP1Iによる消化にかけた。消化反応(総量100マイクロリットル)には、80マイクロリットルの抽出DNA(定量されていない)と消化緩衝液中のHinP1Iが含まれていた。消化は37℃で2時間実施した。
【0224】
次に、消化されたDNA試料に対してリアルタイムPCRを実施し、各DNA試料で、上記の表1に詳述されている6つの制限遺伝子座と、配列番号7に示されている対照遺伝子座を増幅した(表1を参照)。対照遺伝子座は、HinP1Iの認識配列を含まない遺伝子座であり、メチル化の状態に関係なく、DNA試料が制限酵素で消化された場合、無傷なままである。この対照遺伝子座は、内部参照遺伝子座とも呼ばれ、HinP1Iによる消化後のメチル化の影響を受けない増幅パターンを持っている。
【0225】
特に、各消化されたDNA試料は、12マイクロリットルの消化されたDNAを含む3つ(3)のアリコートに分けられた。各アリコートには、6つのうち2つの制限遺伝子座および対照遺伝子座を増幅するためのプライマー対が補充された(対照遺伝子座はすべてのアリコートで増幅される)。77~139塩基のアンプリコンが増幅された。
【0226】
各増幅反応(総量30マイクロリットル)には、dNTPと反応バッファーがさらに含まれていた。増幅中の増幅産物の検出を可能にするために、蛍光標識されたポリヌクレオチドプローブ(各遺伝子座に1つ)を反応に加えた。以下の蛍光標識を使用した:FAM、JOE、ROX。リアルタイムPCR反応は、ABI 7500 FastDx機器で次のPCRプログラムを使用して実施された:95℃、10分->45X(95℃、15秒)->60℃、1分。
【0227】
増幅に続いて、サイクル数の関数としてのプローブからの蛍光シグナルのレベルに関するデータを分析して、各遺伝子座の定量化サイクル(Cq)と各制限遺伝子座のΔCq(制限遺伝子座のCqと対照遺伝子座のCqの差)を計算した。
【0228】
図1Aと1Bは、癌患者の試料(
図1A)および健常者の試料(
図1B)における、対照遺伝子座と2つの制限遺伝子座の例示的な定量PCRプロットを示している。制限遺伝子座のメチル化レベルが高く、HinP1Iで消化したときにほとんど影響を受けていない癌患者の試料では、2つの制限遺伝子座が高効率で増幅されつまり、それらのCqと対照遺伝子座のCqの差(ΔCq)は約3サイクルであった。制限遺伝子座が低いメチル化レベルで特徴付けられているため、HinP1Iで消化したときに大幅にカットされた健康な試料では、増幅の効率は、対照遺伝子座に対する高いΔCqによって反映される、対照遺伝子座の増幅効率よりもはるかに低かった。図からわかるように、対照遺伝子座に対する制限遺伝子座のΔCq値は、癌患者と健常者の間で異なる。
【0229】
各試料について、下記のように、制限遺伝子座1~6(配列番号1~6)の各々のシグナル強度と対照遺伝子座(配列番号7)のシグナル強度の間の比率を計算した:Cqを各制限遺伝子座および対照遺伝子座について決定した。Cq値を、次の式で使用した。
2(対照遺伝子座のCq-制限遺伝子座のCq)
【0230】
計算は同じアリコートで同時増幅された制限遺伝子座および対照遺伝子座に対して実行されたことが理解されるべきである。
【0231】
対照遺伝子座に関し各制限遺伝子座について得られた数値は、この制限遺伝子座および対照遺伝子座との間のシグナル比率(メチル化比率を反映する)を表す。
【0232】
全体として、6つのシグナル比率が各試料について計算された。表2は、健常者からの10個の血漿試料と肺癌患者からの10個の試料について計算されたシグナル比率の例を示している。表からわかるように、癌試料に対して計算されたシグナル比率は、健常試料に対して計算されたシグナル比率よりも大幅に高くなっている(最大で数桁高い)。
【0233】
次に、各試料の各遺伝子座のスコア(確率スコア)を計算し、このスコアは、最高のシグナル比率が「100」、最低のシグナル比率が「0」となるように、基準比率に対して正規化されたシグナル比率である。
【0234】
次に、各試料で得られた6つのスコアを、0~100の数であり、6つの制限遺伝子座のパネルでの試料の全体的な相対メチル化レベルを反映する「EpiScore」と呼ばれる1つのスコアに結合した。
【0235】
表2は、シグナル比率とEpiScoreの例を示し、より高いEpiScoreが肺癌と相関していることを示し(一連の試料全体について、Kolmogorov-Smirnov適合度仮説検定によるとP=2.44・10-25)、肺癌患者の血漿試料と正常/健常者の血漿試料とを区別することにおいて本発明の方法を使用する利点を強調している。
【0236】
EpiScoreが70(以前の一連の試料からの情報に基づいて決定された閾値)以上の場合、試料は「肺癌」として分類され、EpiScoreが70未満の場合、「健康」として分類した。
【表2】
【0237】
肺癌の同定に関する感度、特異度およびROC曲線下面積(AUC)は、配列番号4に示される遺伝子座および遺伝子座1~6の組み合わせについて計算された。データを表3に要約する。
【表3】
【0238】
特定の実施形態の前述の説明は、本発明の一般的な性質を完全に明らかにするので、他の人は、現在の知識を適用することにより、過度の実験なしに、および一般的な概念から逸脱することなく、このような特定の実施形態の様々な用途に容易に修正および/または適合でき、したがって、そのような適合および変更は、開示された実施形態の均等物の意味および範囲内で理解されるべきであり、そのように意図されている。本明細書で使用される表現または用語は、説明を目的としたものであり、限定を目的としたものではないことを理解されたい。開示された様々な化学構造および機能を実施するための手段、材料、およびステップは、本発明から逸脱することなく、様々な代替形態をとることができる。
【0239】
本出願は、以下の発明を含み得る。
(1)
ヒト対象の肺癌を同定する方法であって、
(a)前記対象から得られた試料からのDNAを少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによる消化にかけ、それにより制限エンドヌクレアーゼ処理されたDNAを得ることと、
(b)前記制限エンドヌクレアーゼ処理されたDNAから少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座を同時増幅し、前記少なくとも1つの制限遺伝子座は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択され、それにより各遺伝子座の増幅産物を生成することと、
(c)生成された各増幅産物のシグナル強度を決定することと、
(d)前記少なくとも1つの制限遺伝子座および前記対照遺伝子座の各々の前記増幅産物の前記シグナル強度間の比率を少なくとも1つの基準比率と比較して、肺癌が前記ヒト対象に存在するかどうかを決定することと、を含む、方法。
(2)
前記試料が血漿試料である、(1)に記載の方法。
(3)
前記対照遺伝子座が、メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼの認識配列を欠く遺伝子座である、(1)に記載の方法。
(4)
前記少なくとも1つの基準比率が健常な基準比率を含む、(1)に記載の方法。
(5)
前記少なくとも1つの基準比率が肺癌基準比率を含む、(1)に記載の方法。
(6)
ステップ(a)が、単一のメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼを使用して実行される、(1)に記載の方法。
(7)
前記メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼがHinP1IおよびHhaIから選択される、(6)に記載の方法。
(8)
ステップ(b)がリアルタイムPCRを使用して実行される、(1)に記載の方法。
(9)
前記方法が、前記少なくとも1つの制限遺伝子座および前記対照遺伝子座の前記増幅産物の検出を支援するための蛍光プローブを追加することをさらに含む、(8)に記載の方法。
(10)
前記少なくとも1つの制限遺伝子座および前記対照遺伝子座のそれぞれの前記増幅産物の前記シグナル強度間の前記比率が、各遺伝子座の定量化サイクル(Cq)を決定することと、2(Cq対照遺伝子座-Cq制限遺伝子座)を計算することとによって計算される、(9)に記載の方法。
(11)
前記少なくとも1つの制限遺伝子座が、配列番号4に示される遺伝子座、および任意選択的に、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、および配列番号6に示される遺伝子座の群から選択される少なくとも1つの追加の制限遺伝子座を含む、(1)に記載の方法。
(12)
前記少なくとも1つの制限遺伝子座が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5および配列番号6に示されるすべての遺伝子座を含む、(1)に記載の方法。
(13)
各々がヒト細胞株由来のDNAを含む第1および第2の対照DNAを提供することであって、前記第1の対照DNAは、前記少なくとも1つの制限遺伝子座が大部分メチル化されているヒト細胞株からのDNAを含み、前記第2の対照DNAは、前記少なくとも1つの制限遺伝子座のうちの1つ以上が大部分メチル化されていないヒト細胞株からのDNAを含む、提供することと、
前記第1および第2の対照DNAを前記メチル化感受性制限エンドヌクレアーゼで消化することと、
前記第1および第2の対照DNAから前記少なくとも1つの制限遺伝子座および前記対照遺伝子座を増幅することと、をさらに含み
前記第1の対照DNAにおける前記少なくとも1つの制限遺伝子座および前記対照遺伝子座の適切な増幅の検出は、DNA増幅の成功を示し、前記第2の対照DNAにおける前記対照遺伝子座の正常な増幅と同時に起こる前記少なくとも1つの制限遺伝子座うちの1つ以上の低増幅または増幅の欠如は、DNA消化の成功を示す、(1)に記載の方法。
(14)
前記少なくとも1つの制限遺伝子座が大部分メチル化されている前記ヒト細胞株がHCT-15である、(13)に記載の方法。
(15)
1つ以上の制限遺伝子座が大部分メチル化されていない前記ヒト細胞株がA673である、(13)に記載の方法。
(16)
前記対照遺伝子座が、配列番号7に示される遺伝子座である、(1)に記載の方法。
(17)
肺癌の疑いのあるヒト対象からのDNAのメチル化比率を測定する方法であって、
(a)前記対象から得られた試料からのDNAを少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼによる消化にかけ、それにより制限エンドヌクレアーゼ処理されたDNAを得ることと、
(b)前記制限エンドヌクレアーゼ処理されたDNAから少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座を同時増幅し、前記少なくとも1つの制限遺伝子座は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択され、それにより各遺伝子座の増幅産物を生成することと、
(c)生成された各増幅産物のシグナル強度を決定することと
(d)前記少なくとも1つの制限遺伝子座および前記対照遺伝子座の各々の前記増幅産物の前記シグナル強度間の比率を計算し、それにより前記ヒト対象からのDNAのメチル化比率を測定することと、を含む、方法。
(18)
前記試料が血漿試料である、(17)に記載の方法。
(19)
ヒト対象の肺癌をスクリーニングする方法であって、
請求項17に記載の方法に従って前記ヒト対象からのDNAのメチル化比率を測定することと、
前記メチル化比率に基づいて、肺癌が前記ヒト対象に存在することを判定することと、を含む、方法。
(20)
ヒト対象の肺癌をスクリーニングする方法であって、
前記対象の試料からのDNAに対して請求項1に記載の方法を実施することにより、肺癌が前記ヒト対象に存在するかどうかを同定することと、
前記対象が肺癌であると同定された場合に、生検による確定診断を実施することと、を含む方法。
(21)
ヒト対象の肺癌を同定するためのキットであって、
ヒト対象の試料からのDNAを消化するための少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素と、
前記少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素による消化後の少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の同時増幅のための複数のプライマー対と、を含み、前記少なくとも1つの制限遺伝子座は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される、キット。
(22)
前記試料が血漿試料である、(21)に記載のキット。
(23)
前記少なくとも1つの制限遺伝子座および前記対照遺伝子座の増幅産物を検出するための複数のポリヌクレオチドプローブをさらに含む、(21)に記載のキット。
(24)
コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータソフトウェアを使用して肺癌の同定を実施するための命令をさらに含み、前記コンピュータソフトウェアは、前記少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の、それらの増幅後のシグナル強度を決定するステップと、前記少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の各々のシグナル強度間のシグナル比率を計算するステップと、前記計算されたシグナル比率を少なくとも1つの基準比率と比較するステップと、前記比較に基づいて、前記DNA試料が肺癌DNAか健常DNAかを出力するステップと、を実行するようにコンピュータプロセッサに指示する、(21)に記載のキット。
(25)
前記少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座の、それらの増幅後のシグナル強度を決定するステップと、前記少なくとも1つの制限遺伝子座および対照遺伝子座のそれぞれのシグナル強度間のシグナル比率を計算するステップと、前記計算されたシグナル比率を少なくとも1つの基準比率と比較するステップと、前記比較に基づいて、DNA試料が肺癌DNAか健常なDNAかを出力するステップと、を実行するようにコンピュータプロセッサに指示するコンピュータソフトウェアを格納するコンピュータ可読媒体をさらに含む、(21)に記載のキット。
(26)
前記キットが単一のメチル化感受性エンドヌクレアーゼを含む、(21)に記載のキット。
(27)
前記メチル化感受性エンドヌクレアーゼがHinP1IおよびHhaIから選択される、(26)記載のキット。
(28)
ヒト対象の肺癌を同定するためのシステムであって、
(i)前記ヒト対象の試料からのDNAを消化するための少なくとも1つのメチル化感受性制限エンドヌクレアーゼと、
(ii)前記少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素による消化後の少なくとも1つの制限遺伝子座および少なくとも1つの対照遺伝子座の同時増幅のための複数のプライマー対であって、前記少なくとも1つの制限遺伝子座は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6からなる群から選択される、複数のプライマー対と、
(iii)コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータソフトウェアであって、前記少なくとも1つの制限遺伝子座と前記対照遺伝子座の、それらの増幅後のシグナル強度を決定するステップと、前記少なくとも1つの制限遺伝子座と前記対照遺伝子座の各々のシグナル強度間のシグナル比率を計算するステップと、前記計算されたシグナル比率を少なくとも1つの基準比率と比較するステップと、前記比較に基づいて、DNA試料が肺癌DNAか健常なDNAかを出力するステップと、を実行するようにコンピュータプロセッサに指示する、コンピュータソフトウェアと、を含むシステム。
(29)
前記試料が血漿試料である、(28)に記載のシステム。
【配列表】