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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】無菌コネクター
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
C12M1/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023179553
(22)【出願日】2023-10-18
【審査請求日】2024-01-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591101490
【氏名又は名称】エイブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】富田 悟志
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-518749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1チューブに取り付けられ第1コネクターと、第2チューブに取り付けられ第2コネクターと、を備える無菌コネクターであって、
前記第1コネクターが、
第1接合面を有する第1本体部と、
前記第2コネクターと係合させるための第1係合部材と、
前記第1本体部の前記第1接合面の裏面側に設けられた、前記第1チューブを締め付ける先端部を有する、前記第1チューブと嵌合する第1嵌合部と、
前記第2コネクターと係合された後に除去される、前記第1接合面及び前記第1チューブの端面を覆う第1保護シートと、
を備え、
前記第2コネクターが、
第2接合面を有する第2本体部と、
前記第1コネクターと係合させるための第2係合部材と、
前記第2本体部の前記第2接合面の裏面側に設けられた、前記第2チューブを締め付ける先端部を有する、前記第2チューブと嵌合する第2嵌合部と、
前記第1コネクターと係合された後に除去される、前記第2接合面及び前記第2チューブの端面を覆う第2保護シートと、
を備えており、
前記第1コネクター及び前記第2コネクターは、同形をなしており、
前記第1チューブの端面が前記第1接合面よりも突出した位置となるように前記第1コネクターが前記第1チューブに取り付けられ、又は、前記第2チューブの端面が前記第2接合面よりも突出した位置となるように前記第2コネクターが前記第2チューブに取り付けられており、前記第1接合面と前記第2接合面が対向するように前記第1コネクターと前記第2コネクターが係合された際に、前記第1チューブの端面と前記第2チューブの端面が圧接されるように構成されている、無菌コネクター。
【請求項2】
前記第1嵌合部が、前記第1チューブを締め付けない第1空間部を備え、
前記第2嵌合部が、前記第2チューブを締め付けない第2空間部を備える、請求項1に記載の無菌コネクター。
【請求項3】
前記第1チューブが、前記第1空間部において前記第1本体部へ向かうに従って外径が大きくなる第1太径部を有し、
前記第2チューブが、前記第2空間部において前記第2本体部へ向かうに従って外径が大きくなる第2太径部を有する、請求項2に記載の無菌コネクター。
【請求項4】
前記第1チューブの端面が、前記第1チューブの長手方向に沿った断面において凸の曲線を有しており、又は、
前記第2チューブの端面が、前記第2チューブの長手方向に沿った断面において凸の曲線を有している、請求項1から3の何れかに記載の無菌コネクター。
【請求項5】
前記第1チューブの先端部及び前記第2チューブの先端部が、フランジ状に構成されている、請求項1から3の何れかに記載の無菌コネクター。
【請求項6】
前記第1チューブ及び前記第2チューブの内径が変化しないように構成されている、請求項1から3の何れかに記載の無菌コネクター。
【請求項7】
記第1本体部及び第2本体部は、ポリプロピレンによって構成されており、
前記第1保護シート及び前記第2保護シートは、ポリエチレンによって構成されており、
前記第1保護シート及び前記第2保護シートは、前記第1本体部及び第2本体部に熱溶着で固定されている、請求項1から3の何れかに記載の無菌コネクター。
【請求項8】
記第1本体部及び第2本体部は、ポリカーボネートによって構成されており、
前記第1保護シート及び前記第2保護シートは、ポリエチレンによって構成されており、
前記第1保護シート及び前記第2保護シートは、前記第1本体部及び第2本体部に接着剤を介して固定されている、請求項1から3の何れかに記載の無菌コネクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ(流体を流通させるための管)を相互に接続するための無菌コネクターに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品は、例えば、細胞や微生物を培養するステップ、培養液を精製するステップ、細胞などを不活化するステップ、培養液を濃縮するステップ、製造された原薬を保存するステップなど、様々なステップを経て製造されるところ、それぞれのステップにはそのステップに最適化された容器が利用されるため、容器間で液体を移送する必要が生じる。ところで、バイオ医薬品の分野では製造プロセスを無菌的に実施することが要請され、容器間の液体の移送も、無菌的に実施する必要がある。このような要請に応えるために、一般環境で、二つの容器を無菌的に接続する技術が開発され、各種の無菌コネクターが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-37035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の無菌コネクターは、部品点数を減らして製造効率を向上させることを目的(段落0007、0008)としたものではあるが、接続するチューブ(流体を流通させるための管)の間に複数の部品(本体部3、弾性膜5、弾性部材21、流通孔部材20)が介在するものであり、より簡素化した無菌コネクターの開発が要請されている。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、チューブを接続するためのコネクターであって、より簡素化された構成で、かつ、高い無菌性を実現できる無菌コネクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
第1チューブに取り付けられる第1コネクターと、第2チューブに取り付けられる第2コネクターと、を備える無菌コネクターであって、前記第1コネクターが、第1接合面を有する第1本体部と、前記第2コネクターと係合させるための第1係合部材と、前記第1本体部の前記第1接合面の裏面側に設けられた、前記第1チューブを締め付ける先端部を有する、前記第1チューブと嵌合する第1嵌合部と、を備え、前記第2コネクターが、第2接合面を有する第2本体部と、前記第1コネクターと係合させるための第2係合部材と、前記第2本体部の前記第2接合面の裏面側に設けられた、前記第2チューブを締め付ける先端部を有する、前記第2チューブと嵌合する第2嵌合部と、を備えており、前記第1コネクター及び前記第2コネクターは、同形をなしており、前記第1チューブの端面が前記第1接合面よりも突出した位置となるように前記第1コネクターが前記第1チューブに取り付けられ、又は、前記第2チューブの端面が前記第2接合面よりも突出した位置となるように前記第2コネクターが前記第2チューブに取り付けられており、前記第1接合面と前記第2接合面が対向するように前記第1コネクターと前記第2コネクターが係合された際に、前記第1チューブの端面と前記第2チューブの端面が圧接されるように構成されている、無菌コネクター。
【0007】
(構成2)
前記第1嵌合部が、前記第1チューブを締め付けない第1空間部を備え、前記第2嵌合部が、前記第2チューブを締め付けない第2空間部を備える、構成1に記載の無菌コネクター。
【0008】
(構成3)
前記第1チューブが、前記第1空間部において前記第1本体部へ向かうに従って外径が大きくなる第1太径部を有し、前記第2チューブが、前記第2空間部において前記第2本体部へ向かうに従って外径が大きくなる第2太径部を有する、構成2に記載の無菌コネクター。
【0009】
(構成4)
前記第1チューブの端面が、前記第1チューブの長手方向に沿った断面において凸の曲線を有しており、又は、前記第2チューブの端面が、前記第2チューブの長手方向に沿った断面において凸の曲線を有している、構成1から3の何れかに記載の無菌コネクター。
【0010】
(構成5)
前記第1チューブの先端部及び前記第2チューブの先端部が、フランジ状に構成されている、構成1から4の何れかに記載の無菌コネクター。
【0011】
(構成6)
前記第1チューブ及び前記第2チューブの内径が変化しないように構成されている、構成1から5の何れかに記載の無菌コネクター。
【0012】
(構成7)
前記第1コネクターが、前記第1接合面及び前記第1チューブの端面を覆う第1保護シートを備え、前記第2コネクターが、前記第2接合面及び前記第2チューブの端面を覆う第2保護シートを備え、前記第1本体部及び第2本体部は、ポリプロピレンによって構成されており、前記第1保護シート及び前記第2保護シートは、ポリエチレンによって構成されており、前記第1保護シート及び前記第2保護シートは、前記第1本体部及び第2本体部に熱溶着で固定されており、かつ、前記第1コネクターと前記第2コネクターが係合された後に除去される、構成1から6の何れかに記載の無菌コネクター。
【0013】
(構成8)
前記第1コネクターが、前記第1接合面及び前記第1チューブの端面を覆う第1保護シートを備え、前記第2コネクターが、前記第2接合面及び前記第2チューブの端面を覆う第2保護シートを備え、前記第1本体部及び第2本体部は、ポリカーボネートによって構成されており、前記第1保護シート及び前記第2保護シートは、ポリエチレンによって構成されており、前記第1保護シート及び前記第2保護シートは、前記第1本体部及び第2本体部に接着剤を介して固定されており、かつ、前記第1コネクターと前記第2コネクターが係合された後に除去される、構成1から6の何れかに記載の無菌コネクター。
【発明の効果】
【0014】
本発明の無菌コネクターによれば、より簡素化された構成で、かつ、高い無菌性を実現できる無菌コネクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施形態の無菌コネクター(同形状の一対のコネクターの一方)を示す斜視図
図2】実施形態の無菌コネクターを示す別の斜視図
図3】実施形態の無菌コネクターを示す正面図
図4】実施形態の無菌コネクターの断面図
図5】実施形態の無菌コネクターの接続状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0017】
図1は、本発明に係る実施形態の無菌コネクター(同形状の一対のコネクターの一方である第1コネクター)を示す、接合面側から見た斜視図であり、図2は裏面側から見た斜視図である。また、図3は、本実施形態の無菌コネクター(同形状の一対のコネクターの一方)の正面図であり、図4は断面図(それぞれ、図4(a):図3のA-A線に沿った断面図、図4(b):図3のB-B線に沿った断面図)である。
本実施形態の無菌コネクターは、流体を流通させるための管である2本のチューブを相互に接続するためのものであり、接合部からの雑菌等の侵入を防止するように構成された、無菌コネクターである。
すなわち、一方のチューブ(第1チューブ)の端部に取り付けられた第1コネクターと、他方のチューブ(第2チューブ)の端部に取り付けられた第2コネクターとを係合することで、第1チューブと第2チューブが無菌的に接合されるものである。
本実施形態の無菌コネクターの第1コネクター(第1保護シートを含む)と第2コネクター(第2保護シートを含む)、及び、第1チューブと第2チューブは同形をなしている(雌雄同形)。以下、一方のコネクター(第1コネクター1)と一方のチューブ(第1チューブ2)の構成について説明をする。
【0018】
第1コネクター1は、図1、2に示されるように、
第1接合面111を有する第1本体部11と、
第2コネクター(第1コネクター1と同様の構成)と係合させるための第1係合部材である係合突起12と、
第2コネクターの第2係合部材(係合突起12と同型)と係合する係合穴13と、
第1本体部11の第1接合面111の裏面側に設けられた、第1チューブ2を締め付ける先端部141を有する、第1チューブ2と嵌合する第1嵌合部14と、
位置合わせのためのボス15と、
第2コネクターのボスを受け入れるボス穴16と、
を備えている。
また、図3-5に示されるように、第1コネクターは第1チューブ2の端面21を覆う第1保護シート3を備えている。なお、第1保護シート3は、第1コネクターと第2コネクターとが相互に係合された後に除去される。なお、図4、5では見易さの観点からやや誇張した(第1保護シート3の厚さが厚い等の)、概略図としている。
【0019】
第1本体部11は、概ね円盤状の板状部材であり、第1接合面111は、係合のための部材(係合突起12やボス15など)を除き、平坦に形成されている。
第1本体部11の中心部には、第1チューブ2を挿通させる穴が形成されており、この穴の第1接合面111側には、第1チューブ2のフランジ部22を受け入れるザグリ(凹部)が形成されている。
本実施形態の第1本体部11は、ポリプロピレンによって構成されている。
なお、ここでは外径形状が概ね円盤状の第1本体部を例としているが、第1本体部の外径形状は任意の形状とするものであってよい。
【0020】
第1本体部11の裏面側(第1接合面111の反対側)には、第1嵌合部14が接合されている。
第1嵌合部14は、第1チューブ2と嵌合してこれを保持する保持部としての機能を有し、本実施形態では、図2,4等に示されるように、直径が異なる2つの円筒状部材を接合した構成を有している。
先端部141は、その内径が第1チューブ2の外径よりもわずかに小さく形成されており、第1チューブ2に取り付けられた状態で、第1チューブ2を締め付けるように(少なくとも第1チューブ2の外周と接触するように)構成されている。なお、先端部141の“先端”は、第1チューブ2の端部(第1コネクター1が取り付けられる端部)の側を先端側としてみた場合には、“基端”である。
一方、拡径部142は、その内径が第1チューブ2(第1太径部23)の外径よりも大きく(第1太径部23の最大径の箇所では同等に)形成されており、その内部に第1空間部Sを形成するように構成されている。なお、変形例として、拡径部を、その内径が第1太径部23の外形と同径又は第1太径部よりも小さく(拡径部の内面と第1太径部23とが接触するように)形成することも可能である。
【0021】
第1チューブ2は、例えばフッ素系樹脂チューブやシリコンチューブ等の、可撓性、弾性、柔軟性を有するチューブであり、対象物にあわせて選定することができる。
図4に示されるように、第1チューブ2は、拡径部142内の第1空間部Sにおいて第1本体部11へ向かうに従って外径が大きくなる第1太径部23を有している。
また、第1チューブ2は、図4に示されるように、第1チューブ2の先端部が肉厚に(フランジ状に)構成されたフランジ部22を有し、第1チューブ2の端面21が凸(図3において“下に凸”)の曲線を有している。
【0022】
第1コネクター1と第1チューブ2は、第1チューブ2に第1コネクター1が取り付けられた際に、図4に示されるように、第1チューブの端面21が第1接合面111よりも突出した位置となるように構成されている。これにより、第1接合面111と第2接合面(第1コネクター1と同様の構造を有する第2コネクターの接合面)が対向するように第1コネクター1と第2コネクターが係合された際に、第1チューブ2の端面21と第2チューブの端面(第1チューブ2と同様の構造を有する第2チューブの端面)が圧接されるように構成されている。
また、図4に示されるように、第1チューブ2に第1コネクター1が取り付けられた際においても、第1チューブ2の内径が実質的に変化しないように構成されている。
【0023】
第1保護シート3は、第1チューブ2の端面21を覆うように、第1本体部11の第1接合面111に固定される。第1保護シート3によって、第1チューブ2の内部及び先端部(端面21)が無菌的に封止され、一般環境下においても、無菌コネクター1内部を無菌的に維持することができる。
本実施形態の第1保護シート3は、ポリエチレンによって構成されている。第1保護シート3は、具体的には、タイベック(登録商標)を利用することができる。
第1保護シート3は、コネクターの係合後に除去することが可能なように、第1本体部11よりも外側まで至るように構成され(図3参照)、第1本体部11に熱溶着で固定されている。コネクターの接合後に、外側に飛び出している部分を引っ張ることで、第1保護シート3を除去することが可能なように構成されている。
詳しくは、第1保護シート3は、第1チューブを無菌的に封止する封止部3-1と、コネクター接合後にユーザーが引っ張って除去するための引張部3-3と、封止部3-1と引張部3-3との間で折り返される折返し部3-4とを有する。かかる構成により、無菌コネクターどうしが接合され、チューブの端面どうしで保護シートが強く挟まれた状態でも、引張部3-3を矢印3-5方向に引っ張ることで、保護シートを除去することが可能になり(図5参照)、無菌コネクターどうしを無菌的かつ液密に接続することが可能になる。
ところで、本実施の形態では、封止部3-1は、第1チューブ2の端面を覆うように第1本体部11の第1接合面111に固定されるが、その固定方法は、用途や材質によって最適な方法を選択することができる。例えば第1コネクター1がポリプロピレンで構成されている場合には、熱溶着によって、両者を固定することができる。あるいは、第1コネクター1がポリカーボネートで構成されている場合には、接着剤を介して、両者を固定することができる。なお、いずれの場合においても、第1保護シート3は、第1接合面111に固定される固定領域3-2が、第1チューブ2の端面21を囲むように、第1接合面111に固定される。このように、端面21よりも外側の領域で、第1保護シート3と第1接合面111とを固定することにより、コネクター内部を無菌的に維持することが可能になる。
【0024】
第1チューブ2への、第1コネクター1の取り付けの概要は、以下のステップを有する。
第1本体部11を、第1チューブ2に嵌合させるステップ
第1嵌合部14に、第1チューブ2を挿通するステップ
第1本体部11に、第1嵌合部14を接合(接着や熱溶着など)させるステップ
第1保護シート3を、第1本体部11の第1接合面111に固定するステップ
上記各ステップにより、図1~4(図1,2については、第1保護シート3は不図示)で示されるような第1コネクター1の取り付け状態とする。上記からも理解されるように、比較的簡易で簡素な作業によって、第1コネクター1の取り付け状態とすることができる。
【0025】
なお、上記のように製造された無菌コネクターは、第1チューブ2の先端(端面21とは反対側の先端)が、種々の容器に接続された状態で利用される。無菌コネクターが接続される容器としては、例えば、培養用の容器や、培地運送(供給)用の容器、精製・濃縮用の容器、保存用の容器等が例示されるがこれに限られるものではない。これらの容器に接続された状態で、容器及び無菌コネクターを滅菌(例えばγ線滅菌や電子線滅菌など)することで、容器及び無菌コネクターを、その使用用途(例えばバイオ医薬品などの製造用途など)に要求されるレベルに滅菌することが可能になる。特に、無菌コネクターは、第1チューブ2の端面21が第1保護シート3で塞がれていることから、滅菌処理後に一般環境に配置しても、内部の滅菌状態が維持される。そして、無菌コネクターどうしは、一般環境下で無菌的に接続することが可能に構成されていることから、一つの容器から他の容器へ、流体を無菌的に移送することが可能になる。具体例としては、培養用の容器に接続された無菌コネクターと、培地供給用の容器に接続された無菌コネクターとを係合(無菌接続)することによって、一般環境下において、培養用の容器に培地を供給するような用途が想定できる。
【0026】
接続する他方のチューブである第2チューブにも、第2コネクターが取り付けられる。前述のように、第2チューブ及び第2コネクターは、第1チューブ2及び第1コネクター1と同様の構成である(以下、各構成に「第2」と付すこと(符号は同一)により、第1チューブ及び第1コネクターと、第2チューブ及び第2コネクターを区別する)。なお、第1チューブと第2チューブは、それぞれ別の容器(容器間で流体の移送が予定された容器)に接続されている。以下、対になる無菌コネクターを接続する手順について説明する。
各チューブに取り付けられた第1コネクター1と第2コネクター1を、それぞれの第1接合面111と第2接合面111が対向するように突き合わせて(図5(a)参照)、第1係合突起12と第2係合穴13及び第2係合突起12と第1係合穴13をそれぞれ係合させる。これにより、第1コネクター1と第2コネクター1(無菌コネクターどうしが)固定される。
その後、第1保護シート3及び第2保護シート3の飛び出ている部分(引張部3-3)を合わせて引っ張ることで、第1保護シート3及び第2保護シート3を同時に除去する。
これにより、図5(b)(コネクターの接続状態を示す断面概略図)に示したような接続状態となる。
第1(第2)チューブ2の端面21は、第1(第2)接合面111よりも突出した構成であり、第1コネクター1と第2コネクター1が係合された際には、第1チューブの端面21と前記第2チューブの端面21が、第1保護シート3及び第2保護シート3を介して圧接される。その後、第1保護シート3及び第2保護シート3を同時に除去することで、第1チューブ2と第2チューブ2とが無菌的に、かつ液密に接合されることになる。なお、第1(第2)チューブ2は、シリコンチューブ等の、可撓性、弾性、柔軟性を有する部材であり、第1(第2)フランジ部22が圧接されることで、図5(b)のような接続状態となる。
本実施形態では、第1チューブの端面21と第2チューブの端面21が、その断面(第1チューブ2の長手方向に沿った断面)形状(図3)において凸の曲線を有しており、第1チューブの端面21と第2チューブの端面21が線接触として接触することになり、両者の密封度を向上することができるため、両者の無菌性、液密性を高めることができる。ただし本発明はこれに限られるものではなく、第1チューブの端面21と第2チューブの端面21の突出量、チューブの硬度や材質などにあわせて、第1チューブの端面21と第2チューブの端面21の断面形状を、より密封度の高い形状とすることが好ましい。
【0027】
以上のごとく、本実施形態の無菌コネクターによれば、直接チューブの端面同士を圧接させるコネクターであることにより、接続するチューブの間に介在する部材を削減することができる。従って、密封性(無菌性)等に不具合を生じさせる要因を可及的に削減することができる。また、部品点数の削減により、低コスト化や組み立て作業の簡易化も図られる。そして、第1コネクター1と第2コネクター1に液体が接触しない(チューブ以外に液体が接触しない)ことから、コネクター部分の材質の選択の幅が大きく広がることになる。例えば、第1コネクターをポリプロピレンで構成することで、ポリエチレン製の第1保護シート3を熱溶着(超音波熱溶着)で固定することが可能になる。これによると、両者の固定に接着剤を利用する必要がないので、マイナス80℃といった環境であっても両者が剥離することが防止され、原薬などの凍結保管用の容器にも利用することが可能になる。ただしこれとは別に、第1コネクターはポリカーボネートで構成することも可能で、この場合には、第1保護シート3を、接着剤を利用して固定することが可能になる。これによると、適切な接着剤を利用することで、両者をより強固に固定することが可能になる。あるいは、第1コネクターを、ポリカーボネートとポリプロピレンの二色成型によって構成することも可能である。すなわち、無菌コネクターどうしを嵌合させる部分(係合突起12及び係合穴13が構成される領域)をポリカーボネートで構成することで強度を高め、保護シート3が固定される領域(固定領域3-2)をポリプロピレンで構成することで熱溶着によって(接着剤を利用せずに)保護シート3を固定することが可能になる。
加えて、本実施形態の無菌コネクターによれば、図4からも理解されるように、第1(第2)チューブ2の内径が実質的に変化しないように構成されているため、液送時のコネクター部分におけるロス(圧損)が可及的に低減される。特に、図5(b)に示すように、第1及び第2コネクターを係合した状態においても、第1チューブと第2チューブの内径を同等に維持することができるため、チューブ間に液体がとどまる現象を最小化することができる。
【0028】
また、本実施形態の無菌コネクターによれば、第1チューブ2に第1フランジ部22と第1太径部23が形成され、これらによって第1本体部11を挟み込む構成とされているため、図5(b)に示す接合状態において、第1(第2)チューブ2に外力がかかった(引っ張られたような)場合にも、第1チューブ2の端面21の変形が防止され、無菌性の維持に寄与するものである。
さらに、嵌合部14の先端部141で第1チューブ2を締め付けるように構成されることから、第1チューブ2を引っ張った際などに、その力が端面21に及ぶことが防止され、チューブどうしの無菌性の維持にさらに寄与するものである。
なお、本実施の形態では、第1(第2)空間部Sが「第1(第2)チューブ2を締め付けない」ものである。第1チューブ2は、フッ素系樹脂チューブやシリコンチューブ等で形成された可撓性、弾性、柔軟性を有するチューブであり、このような可撓性、弾性、柔軟性を有するチューブの第1太径部23は、チューブに外力が作用した際(引っ張られた際)などにおいて、第1空間部S内で変形を生じる。第1空間部Sが「第1チューブ2を締め付けない」ものであることにより、この変形が阻害されず、第1太径部23は、空間部S内で撓みを生じる。第1太径部23が撓むことで、第1チューブ2に加わった外力が、第1チューブ2の端面21に至って変形させるといった不具合の発生をより低減させることが期待される。ただし、第1チューブ2の材質等に応じて、嵌合部14を、空間部Sを持たないように(拡径部142が太径部23と接触するように、あるいは、拡径部142が太径部23を締め付けるように)構成することも可能である。
【0029】
実施形態では、第1(第2)本体部がポリプロピレンによって構成され、これに対して、ポリエチレンの第1(第2)保護シートが熱溶着されるもの例としているが、本発明をこれに限るものではない。
例えば、第1(第2)本体部をポリカーボネート、第1(第2)保護シートをポリエチレンによってそれぞれ構成し、第1(第2)保護シートを、第1(第2)本体部に接着剤を介して固定するものとしてもよい。
【0030】
実施形態では、第2チューブ及び第2コネクターが、第1チューブ2及び第1コネクター1と同様の構成であるものを例としたが、本発明をこれに限るものではなく、上記説明から理解される本発明の概念を備える範囲で、第2チューブ、第2コネクターが、第1チューブ2、第1コネクター1と異なる構成を有するものであってもよい。例えば、第1コネクター1と第2コネクターを係合させるための係合部が、非対称である形状であることにより、第1コネクター1と第2コネクターが同一部材ではないもの等であってもよい。
【0031】
実施形態では、第1チューブの端面21と第2チューブの端面21の双方が、第1(第2)接合面111よりも突出しているものを例としたが、本発明をこれに限るものではい。例えば、第1チューブの端面と第2チューブの端面21の何れか一方が、第1(第2)接合面から突出し、他方は第1(第2)接合面と面一となるようなものであってもよい(第1コネクターと第2コネクターが係合された際に、第1チューブの端面と第2チューブの端面が圧接される構成であればよい)。
また、実施形態では、第1チューブの端面21と第2チューブの端面21の双方が、その断面形状において凸の曲線を有しているものを例としているが、本発明をこれに限るものではない。例えば、第1チューブの端面と第2チューブの端面の何れか一方が断面形状において凸の曲線を有しており、他方は平面状のものであってもよい。「係合時において、第1チューブの端面と第2チューブの端面21が接触し始める際に、線接触として接触する構成」であれば、面同士の面接触よりも接触個所の接触圧力を高めることができ、密封度を向上することができるものである。なお、前述の「第1(第2)チューブの端面を第1(第2)接合面よりも突出させる構造」による、第1(第2)チューブの端面同士の圧接により、面接触においても十分な密封度が得られる場合には、第1チューブの端面と第2チューブの端面が、その接触し初めにおいて面接触するような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1...第1(第2)コネクター
11...第1(第2)本体部
111...第1(第2)接合面
12...第1係合部材
13...係合穴
14...第1(第2)嵌合部
141...先端部
2...第1(第2)チューブ
21...端面
22...フランジ部
23...第1(第2)太径部
3...第1(第2)保護シート
S...第1(第2)空間部
【要約】
【課題】チューブを接続するためのコネクターであって、より簡素化された構成で、かつ、高い無菌性を実現できる無菌コネクターの提供。
【解決手段】第1(第2)接合面111を有する第1(第2)本体部11と、第1係合部材12と、第1(第2)本体部11の第1(第2)接合面111の裏面側に設けられた、第1(第2)チューブを締め付ける先端部を有する、第1(第2)チューブと嵌合する第1(第2)嵌合部と、を備える、同形の第1、第2コネクター1を備え、第1(第2)チューブの端面21が、第1(第2)接合面111よりも突出した位置となるように構成され、第1接合面111と第2接合面111が対向するように第1コネクター1と第2コネクター1が係合された際に、第1チューブ2の端面と第2チューブ2の端面が圧接されるように構成されている、無菌コネクター。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5