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  • 特許-IGBTデバイス 図1
  • 特許-IGBTデバイス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】IGBTデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240509BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 655A
H01L29/78 652C
H01L29/78 655B
H01L29/78 652J
H01L29/78 655D
H01L29/78 653A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023503499
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 CN2022101534
(87)【国際公開番号】W WO2023109080
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】202111561080.4
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519152663
【氏名又は名称】蘇州東微半導体股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】林敏之
(72)【発明者】
【氏名】袁▲願▼林
(72)【発明者】
【氏名】王睿
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0170286(US,A1)
【文献】特開2014-056930(JP,A)
【文献】特開2012-064641(JP,A)
【文献】特開2016-082167(JP,A)
【文献】特表2020-532109(JP,A)
【文献】国際公開第2020/075248(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/739
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型コレクタ領域と、
前記p型コレクタ領域の上に位置するn型半導体層と、
前記n型半導体層内に位置する複数のゲートトレンチと、
前記ゲートトレンチの下部内に位置するシールドゲートと、
前記ゲートトレンチの上部内に位置するゲートとを含み、
前記ゲート、前記シールドゲート、及び前記n型半導体層の間は互いに絶縁分離され、
前記複数のゲートトレンチ内に位置する一部のシールドゲートのそれぞれは、ゲート電圧に外部接続され、前記一部のシールドゲートはいずれも第1のシールドゲートとして定義され、前記複数のゲートトレンチ内に位置する前記一部のシールドゲートを除くシールドゲートのそれぞれは、エミッタ電圧に外部接続され、前記一部のシールドゲートを除くシールドゲートはいずれも第2のシールドゲートとして定義され、前記第1のシールドゲートと前記第2のシールドゲートは交互に間隔をおいて設けられ、
前記n型半導体層内に位置し、且つ隣接するゲートトレンチの間に介在するp型ボディ領域をさらに含み、前記p型ボディ領域は第1のp型ボディ領域と第2のp型ボディ領域との2部分を含み、前記第1のp型ボディ領域は隣接する第1のシールドゲートに近い側に位置し、前記第2のp型ボディ領域は隣接する第2のシールドゲートに近い側に位置し、前記第1のp型ボディ領域と前記第2のp型ボディ領域内に、いずれもn型エミッタ領域が設けられ、前記第1のp型ボディ領域のドーピング濃度は前記第2のp型ボディ領域のドーピング濃度よりも小さい、絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTデバイス。
【請求項2】
前記シールドゲートは前記ゲートトレンチの下部から前記ゲートトレンチの上部内まで上方に延びる、請求項1に記載のIGBTデバイス。
【請求項3】
前記ゲートトレンチの上部の幅は前記ゲートトレンチの下部の幅よりも大きい、請求項2に記載のIGBTデバイス。
【請求項4】
前記n型半導体層内に位置するn型電荷蓄積領域をさらに含み、前記n型電荷蓄積領域は前記ゲートの下方に位置している、請求項3に記載のIGBTデバイス。
【請求項5】
n型コレクタ領域をさらに含み、前記n型コレクタ領域は前記n型半導体層の下方に位置し、且つ前記p型コレクタ領域と交互に間隔をおいて設けられている、請求項1に記載のIGBTデバイス。
【請求項6】
n型フィールドストップ領域をさらに含み、前記n型フィールドストップ領域は前記p型コレクタ領域と前記n型半導体層との間に介在している、請求項1に記載のIGBTデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年12月15日に中国専利局に出願された出願番号が第202111561080.4号の中国専利出願の優先権を主張し、当該出願の全部内容を参照によって本願に援用される。
【0002】
本願は半導体パワーデバイスの技術分野に関し、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor,IGBT)デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
IGBTデバイスは金属酸化物半導体(Metal Oxide Semiconductor,MOS)トランジスタとバイポーラトランジスタにより複合したデバイスであり、IGBTデバイスの入力極はMOSトランジスタであり、出力極はPNP型トランジスタであり、これら2種類のトランジスタデバイスの利点を融合しており、MOSトランジスタの駆動電力が小さくてスイッチング速度が速い利点を有するとともに、バイポーラトランジスタの飽和電圧降下が低くて容量が大きい利点も有する。IGBTデバイスは、p型ボディ領域とn型ドリフト領域の境界における正孔注入効率が低く、キャリア濃度分布が低いため、飽和電圧降下が上昇し、IGBTデバイスをオフにするときに、n型ドリフト領域内に大量の少数キャリアが蓄積され、IGBTデバイスのターンオフ時のテール電流現象が深刻になり、ターンオフ損失が大きくなる。
【発明の概要】
【0004】
本願はIGBTデバイスのターンオフ損失を低減するためにIGBTデバイスを提供する。
【0005】
本願はIGBTデバイスを提供し、該IGBTデバイスは、
p型コレクタ領域と、
前記p型コレクタ領域の上に位置するn型半導体層と、
前記n型半導体層内に位置する複数のゲートトレンチと、前記ゲートトレンチの下部内に位置するシールドゲートと、前記ゲートトレンチの上部内に位置するゲートとを含み、前記ゲート、前記シールドゲート、及び前記n型半導体層の間は互いに絶縁分離され、
前記複数のゲートトレンチ内に位置する一部のシールドゲートのそれぞれは、ゲート電圧に外部接続され、前記一部のシールドゲートはいずれも第1のシールドゲートとして定義され、前記複数のゲートトレンチ内に位置する前記一部のシールドゲートを除くシールドゲートのそれぞれは、エミッタ電圧に外部接続され、前記一部のシールドゲートを除くシールドゲートはいずれも第2のシールドゲートとして定義され、前記第1のシールドゲートと前記第2のシールドゲートは交互に間隔をおいて設けられ、
前記n型半導体層内に位置し、且つ隣接するゲートトレンチの間に介在するp型ボディ領域をさらに含み、前記p型ボディ領域は第1のp型ボディ領域と第2のp型ボディ領域との2部分を含み、前記第1のp型ボディ領域は隣接する第1のシールドゲートに近い側に位置し、前記第2のp型ボディ領域は隣接する第2のシールドゲートに近い側に位置し、前記第1のp型ボディ領域と前記第2のp型ボディ領域内に、いずれもn型エミッタ領域が設けられ、前記第1のp型ボディ領域のドーピング濃度は前記第2のp型ボディ領域のドーピング濃度よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本願の実施例に係るIGBTデバイスの断面構造模式図である。
図2】本願の実施例に係る他のIGBTデバイスの断面構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本願の実施例における図面を参照しながら、具体的な形態によって本願の技術案を説明する。説明される実施例は本願の一部の実施例である。本願の具体的な実施形態を説明するために、図面に挙げられる模式図は、本願に記載される層及び領域の厚みを拡大し、且つ挙げられる図形のサイズは実際の寸法を表していない。
【0008】
図1は本願の実施例に係るIGBTデバイスの断面構造模式図であり、図1に示すように、本願のIGBTデバイスはp型コレクタ領域20と、p型コレクタ領域20の上に位置するn型半導体層21とを含む。
【0009】
n型半導体層21内に位置する複数のゲートトレンチと、ゲートトレンチの上部内に位置するゲート25と、ゲートトレンチの下部内に位置するシールドゲート27とを含み、シールドゲート27はゲートトレンチの下部内のみに位置してもよく、これにより、ゲート25とシールドゲート27は上下構造であり、好ましくは、シールドゲート27はゲートトレンチの下部内に位置してゲートトレンチの上部内まで上方に延びていてもよく、図1はシールドゲート27がゲートトレンチの下部内に位置してゲートトレンチの上部内まで上方に延びていることを例として示している。同時に、ゲートトレンチの上部の幅はゲートトレンチの下部の幅よりも大きくてもよく、等しくてもよく、又は小さくてもよく、図1において、ゲートトレンチの上部の幅がゲートトレンチの下部の幅よりも大きいことを示している。
【0010】
ゲート25、シールドゲート27とn型半導体層21の間は互いに絶縁分離され、図1において、ゲート25はゲート誘電体層24によってn型半導体層21に絶縁分離され、シールドゲート27はフィールド酸化層26によってゲート25とn型半導体層21に分離され、通常、フィールド酸化層26の厚みはゲート誘電体層24の厚みよりも大きい。
【0011】
本願のIGBTデバイスにおいて、複数のゲートトレンチ内に位置する一部のシールドゲート27のそれぞれは、ゲート電圧Gに外部接続され、該一部のシールドゲート27はいずれも第1のシールドゲート27aとして定義され、複数のゲートトレンチ内に位置する該一部のシールドゲート27を除くシールドゲート27のそれぞれは、エミッタ電圧(図1に示しない)に外部接続され、該一部のシールドゲート27を除くシールドゲート27はいずれも第2のシールドゲート27bとして定義され、第1のシールドゲート27aと第2のシールドゲート27bは交互に間隔をおいて設けられる。
【0012】
本願のIGBTデバイスは、n型半導体層21内に位置し、且つ隣接するゲートトレンチの間に介在するp型ボディ領域22をさらに含み、p型ボディ領域22は第1のp型ボディ領域22aと第2のp型ボディ領域22bとの2部分を含み、第1のp型ボディ領域22aは隣接する第1のシールドゲート27aに近い側に位置し、第2のp型ボディ領域22bは隣接する第2のシールドゲート27bに近い側に位置する。第1のp型ボディ領域22aと第2のp型ボディ領域22b内に、いずれもn型エミッタ領域23が設けられる。第1のp型ボディ領域22aのドーピング濃度は第2のp型ボディ領域22bのドーピング濃度よりも小さい。
【0013】
例示的に、図1に4つのp型ボディ領域22のみ示し、且つ中間の2つのp型ボディ領域22のみは第1のp型ボディ領域22aと第2のp型ボディ領域22bとの2部分を完全に示しているが、両辺の2つのp型ボディ領域22は第2のp型ボディ領域22bの部分のみ示している。
【0014】
本願のIGBTデバイスにおいて、第1のp型ボディ領域22a内の電流チャネルの閾値電圧Vth1は第2のp型ボディ領域22b内の電流チャネルの閾値電圧Vth2よりも小さい。シールドゲート27がゲート電圧Gに外部接続されると、該ゲートトレンチ内のゲート25はより大きなゲート電荷Qg1を有し、シールドゲート27がエミッタ電圧に外部接続されると、該ゲートトレンチ内のゲート25は小さなゲート電荷Qg2を有する。第1のp型ボディ領域22aと第1のシールドゲート27aを隣接して設け、第2のp型ボディ領域22bと第2のシールドゲート27bを隣接して設けることで、低Vth1と大Qg1を組み合わせて、高Vth2と小Qg2を組み合わせることがき、これにより、IGBTデバイスがオンからオフにする過程に、高Vth2と小Qg2を組み合わせた領域内の電流チャネルは速やかにオフにし、低Vth1と大Qg1を組み合わせた領域内の電流チャネルは遅れてオフにし、これにより、高Vth2と小Qg2を組み合わせた領域内の電流チャネルがオフになる直後に、低Vth1と大Qg1を組み合わせた領域内の電流チャネルは依然としてオン状態であり、ゲート電圧Vgの低下に伴い、低Vth1と大Qg1を組み合わせた領域の電流チャネルはオフになる。これにより、IGBTデバイスは、低Vth1と大Qg1を組み合わせた領域のターンオフ損失として外部に表現し、高Vth2と小Qg2を組み合わせた領域のターンオフ損失を低減し、全体としてIGBTデバイスのターンオフ損失を低減する。
【0015】
図2は本願の実施例に係る他のIGBTデバイスの断面構造模式図であり、図2に示すように、図1に示すIGBTデバイス構造を基に、本願のIGBTデバイスはn型半導体層21内に位置するn型電荷蓄積領域32をさらに含んでもよく、n型電荷蓄積領域32はゲート25の下方に位置する。一実施例において、本願のIGBTデバイスはn型コレクタ領域30をさらに含んでもよく、n型コレクタ領域30はn型半導体層21の下方に位置し、且つp型コレクタ領域20と交互に間隔をおいて設けられる。好ましくは、本願のIGBTデバイスはn型フィールドストップ領域31をさらに含んでもよく、n型フィールドストップ領域31はp型コレクタ領域20とn型半導体層21の間に介在する。n型電荷蓄積領域32、n型フィールドストップ領域31及びn型コレクタ領域30はいずれも公知の技術であり、本願の実施例では説明しない。
図1
図2