(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
B61F 5/38 20060101AFI20240509BHJP
B61F 9/00 20060101ALI20240509BHJP
B61B 13/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B61F5/38 B
B61F9/00
B61B13/00 A
(21)【出願番号】P 2023503606
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2022000806
(87)【国際公開番号】W WO2022185722
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2021032187
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591236932
【氏名又は名称】株式会社ロッソ
(74)【代理人】
【識別番号】100124017
【氏名又は名称】大野 晃秀
(72)【発明者】
【氏名】早川 泰弘
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-095095(JP,A)
【文献】特開2001-088701(JP,A)
【文献】特開平04-078656(JP,A)
【文献】実開平05-037631(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107856695(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B61F 5/38
B61F 5/44
B61F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内レールと外レールとが等間隔を維持しながら並行に配置された軌道を移動する移動体であって、
前記軌道は円弧または円の曲がり部を有し、
前記移動体に対して相対的に回転または回動可能に設けられ、かつ、前記内レールに沿って転動自在に設けられた第1の内車輪および第2の内車輪と、
前記移動体に対して相対的に回転または回動可能に設けられ、かつ、前記外レールに沿って転動自在に設けられた第
1の外車輪および第2の外車輪と、を含み、
前記第1の外車輪と前記第2の外車輪との間隔は、前記第1の内車輪と前記第2の内車輪との間隔より大きく、
前記第1の内車輪、前記第1の外車輪、前記第2の内車輪および前記第2の外車輪は、前記移動体が前記曲がり部を移動する場合に、前記第1の外車輪と前記第1の内車輪とを結んだ線の第1の延長線と、前記第2の外車輪と前記第2の内車輪とを結んだ線の第2の延長線との交点の軌跡が式1を満たす半径r
crの円または円弧となるような配置関係を有する移動体。
(式1)
(r
in+r
out)/2-{(r
in+r
out)/2}×3/10≦r
cr≦(r
in+r
out)/2+{(r
in+r
out)/2}×3/10
R
in:前記曲がり部における前記内レールの半径
R
out:前記曲がり部における前記外レールの半径
【請求項2】
請求項1において、
前記軌道は、前記曲がり部に連続する直線部を含み、
前記第1の外車輪と前記第2の外車輪が前記直線部にあり、前記第1の外車輪または前記第2の外車輪のいずれかが前記直線部と前記曲がり部の境界にあるときに、前記直線部の伸びる方向での交点P1と前記曲がり部の弧の中心から交点との間の距離D1が、第1の外車輪と第2の外車輪との間の距離I
outの半分または実質的に半分とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールを転動する車輪を有する移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
レールを走る移動体において、方形の各頂点に歯車を設ける態様が一般的である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、軌道の曲がり部においてスムーズに走行することができる移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の移動体は、
内レールと外レールとが等間隔を維持しながら並行に配置された軌道を移動する移動体であって、
前記軌道は円弧または円の曲がり部を有し、
前記移動体に対して相対的に回転または回動可能に設けられ、かつ、前記内レールに沿って転動自在に設けられた第1の内車輪および第2の内車輪と、
前記移動体に対して相対的に回転または回動可能に設けられ、かつ、前記外レールに沿って転動自在に設けられた第2の外車輪および第2の外車輪と、を含み、
前記第1の外車輪と前記第2の外車輪との間隔は、前記第1の内車輪と前記第2の内車輪との間隔より大きく、
前記第1の内車輪、前記第1の外車輪、前記第2の内車輪および前記第2の外車輪は、前記移動体が前記曲がり部を移動する場合に、前記第1の外車輪と前記第1の内車輪とを結んだ線の第1の延長線と、前記第2の外車輪と前記第2の内車輪とを結んだ線の第2の延長線との交点の軌跡が式1を満たす半径rcrの円または円弧となるような配置関係を有する。
(式1)
(rin+rout)/2-{(rin+rout)/2}×3/10≦rcr≦(rin+rout)/2+{(rin+rout)/2}×3/10
Rin:前記曲がり部における前記内レールの半径
Rout:前記曲がり部における前記外レールの半径
【0006】
本発明において、
前記軌道は、前記曲がり部に連続する直線部を含み、
前記第1の外車輪と前記第2の外車輪が前記直線部にあり、前記第1の外車輪または前記第2の外車輪のいずれかが前記直線部と前記曲がり部の境界にあるときに、前記直線部の伸びる方向での交点P1と前記曲がり部の弧の中心から交点との間の距離D1が、第1の外車輪と第2の外車輪との間の距離Ioutの半分または実質的に半分とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の移動体によれば、軌道の曲がり部においてスムーズに走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る移動体を模式的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係る移動体を模式的に示す図である。
【
図3】実施の形態に係る移動体を模式的に示す図である。
【
図4】実施の形態に係る移動体を模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態に係る移動体が曲がり部を移動する際の態様を説明するための図である。
【
図7】実施の形態に係る移動体の車輪を模式的に示す図である。
【
図8】実施の形態に係るレールおよび移動体の使用例を模式的に示す図である。
【
図9】実施の形態に係るレールおよび移動体の使用例を模式的に示す図である。
【
図10】実施の形態に係るレールおよび移動体の使用例を模式的に示す図である。
【
図11】実施の形態に係るレールおよび移動体の使用例を模式的に示す図である。
【
図12】実施の形態に係るレールおよび移動体の使用例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
1.移動体の構成
移動体10は、
図1~
図4に示すように、内レール32と外レール34とが等間隔を維持しながら並行に配置された軌道30を移動するものである。軌道30は点O1を中心とする円弧の曲がり部30aと、直線部30bとを有する。
【0011】
移動体10は、第1の内車輪12a、第2の内車輪12b、第1の外車輪14aおよび第2の外車輪14bを含む。第1の内車輪12aおよび第2の内車輪12bは、移動体10に対して相対的に回転または回動可能に設けられ、かつ、内レール32に沿って転動自在に設けられている。第1の外車輪14aおよび第2の外車輪14bは、移動体10に対して相対的に回転または回動可能に設けられ、かつ、外レール34に沿って転動自在に設けられている。
【0012】
図3に示すように、第1の外車輪14aと第2の外車輪14bとの間隔I
outは、第1の内車輪12aと第2の内車輪12bとの間隔I
inより大きい。第1の内車輪12a、第1の外車輪14a、第2の内車輪12bおよび第2の外車輪14bは、
図5に示すように、移動体10が曲がり部30aを通る場合に、第1の外車輪14aと第1の内車輪12aとを結んだ線の第1の延長線L1と、第2の外車輪14bと第2の内車輪12bとを結んだ線の第2の延長線L2との交点P1の軌跡T1が式1を満たす半径r
crの円または円弧となるような配置関係を有する。
(式1)
(r
in+r
out)/2-{(r
in+r
out)/2}×3/10≦r
cr≦(r
in+r
out)/2+{(r
in+r
out)/2}×3/10
R
in:前記曲がり部30aにおける前記内レール32の半径
R
out:前記曲がり部30aにおける前記外レール34の半径
【0013】
交点P1の軌跡T1は、式2を満たすことが好ましい。
(式2)
(rin+rout)/2-{(rin+rout)/2}×2/10≦rcr≦(rin+rout)/2+{(rin+rout)/2}×2/10
【0014】
交点P1の軌跡T1は、式3を満たすことが好ましい。
(式3)
(rin+rout)/2-{(rin+rout)/2}×1/10≦rcr≦(rin+rout)/2+{(rin+rout)/2}×1/10
【0015】
交点P1と、第1の外車輪14aおよび第2の外車輪14bを結んで得られた形状は、第1の外車輪14aおよび第2の外車輪14bとを結ぶ線を底辺とする二等辺三角形とすることができる。つまり、交点P1と、第1の外車輪14aおよび第2の外車輪14bを結んで得られた形状は、第1の外車輪14aと交点P1とを結んだ線の長さと、第2の外車輪14bと交点P1とを結んだ線の長さとが等しい二等辺三角形とすることができる。
【0016】
図3に示すように、第1の外車輪14aと第2の外車輪14bがレールの直線部30bにあり、その第1の外車輪14aまたは第2の外車輪14bのいずれかが直線部30bと曲がり部30aの境界にあるときに、直線部30bの伸びる方向A1での交点P1と弧の中心から交点P1との間の距離D1が、第1の外車輪14aと第2の外車輪14bとの間の間隔I
outの半分または実質的に半分とすることができる。
【0017】
第1の内車輪12a、第2の内車輪12b、第1の外車輪14aおよび第2の外車輪14bは、
図7に示すように、車軸20の周りを回転可能に設けられた車輪22により構成されることができる。車軸20は、両端が支持部材18に固定されていることができる。支持部材18は、
図7に示すように、載置台16に回転または回動可能に取り付けられている。車軸20は、支持部材18に対して所定の間隔を確保するために間隙部26を設けることができる。交点P1の軌跡T1(
図6参照)の半径r
crは(r
in+r
out)/2が最も好ましいところ、間隙部26の大きさにより、(r
in+r
out)/2のずれの許容の程度が決まることになる。つまり、間隙部26の大きさにより、第1の内車輪12a、第2の内車輪12b、第1の外車輪14aおよび第2の外車輪14bの配置関係が決まることになる。
【0018】
車軸20は、車輪20の転動面22aの少なくとも一端または両端に、レールの両側への方向(レールを平面的にみて垂直方向)の動きを規制するためのフランジ24を設けることができる。
【0019】
転動面22aは、車軸20の軸方向からみたときの径rrotが、端から中央に向かうにしたがって小さくなるような態様で設けること、または、端から中央にかけて同じ径となる態様で設けることができる。
【0020】
移動体10は、たとえば、何らかの物体を載置するための載置台16を含むことができる。移動体10には、物の移動のみならず、人が乗車し、人の移動に用いてもよい。
【0021】
2.作用効果
本発明者は、第1の外車輪14aと第2の外車輪14bとの間隔Ioutは、第1の内車輪12aと第2の内車輪12bとの間隔Iinより大きく、かつ、第1の内車輪12a、第1の外車輪14a、第2の内車輪12bおよび第2の外車輪14bは、移動体10が曲がり部30aを移動する場合に、第1の外車輪14aと第1の内車輪12aとを結んだ線の第1の延長線L1と、第2の外車輪14bと第2の内車輪12bとを結んだ線の第2の延長線L2との交点P1の軌跡T1が式1を満たす半径rcrの円弧となるような配置関係を有することで、曲がり部30aにおいて確実に移動体10を走行させることができることを見出した。
(式1)
(rin+rout)/2-{(rin+rout)/2}×3/10≦rcr≦(rin+rout)/2+{(rin+rout)/2}×3/10
Rin:前記曲がり部30aにおける前記内レール32の半径
Rout:前記曲がり部30aにおける前記外レール34の半径
【0022】
4つの車輪をそれぞれ方形の頂点の位置になるように移動体10に設置した場合に、2つのレールの曲がり部30aにおいて曲がらないという課題を認識した。その課題認識に基づき、本願発明者は、車輪を上記の条件を満たすように移動体10に設けることで、曲がり部30aにおいて脱線がし難くなり、スムーズに移動体10を走行させることができることを見出した。
【0023】
移動体10の使用例としては、たとえば、搬送物を運搬するときに使用することができる。移動体10の移動路のサイドに薬剤散布装置94を設けることができる。また、移動体およびレールの設け方は種々の態様があり、たとえば、次の態様がある。
【0024】
1)第1の態様として、レール32,34を直接に地面または床に置くものである(
図8参照)。第1の態様の場合には、移動体10の上に搬送物を載せることができる。
【0025】
2)第2の態様として、地面又は床から立てた支柱40を基礎として、複数の支柱40の上にレール32,34を架けるものである(
図9および
図10参照)。第2の態様の場合には、移動体の上に搬送物を載せてもよいし、移動体10の土台に搬送物を吊り下げるものであってもよい。
【0026】
3)第3の態様として、天井44に複数のレール支持体42を設け、レール支持体42間にレール32,34を架けるものである(
図11および
図12参照)。第3の態様の場合には、レール支持体42の下の中央部分を開放することで、移動体10に吊り下げられた搬送物を搬送させることできる。
【0027】
搬送物としては特に限定されないが、たとえば植物の栽培装置装置を挙げることができる。移動体10の移動路のサイドに薬剤散布装置94を設けることができる。
【0028】
上記の実施の形態では、曲がり部30aが円弧の例を示したが、円であってもよい。
【0029】
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 移動体
12a 第1の内車輪
12b 第2の内車輪
14a 第1の外車輪
14b 第2の外車輪
16 載置台
18 支持部材
20 車軸
22 車輪
22a 転動面
24 フランジ
26 間隙部
30 軌道
30a 曲がり部
30b 直線部
32 内レール
34 外レール
40 支柱
42 レール支持体
44 天井
rcr 交点の半径
rin 内レールの半径
rout 外レールの半径
rrot 車軸を中心とする径
O1 曲がり部の円弧の中心
A1 直線部の伸びる方向
D1 直線部の伸びる方向での円弧の中心と交点との間の距離
B1 直線部と曲がり部との境界
Iin 第1の内車輪と第1の内車輪との間隔
Iout 第1の外車輪と第1の外車輪との間隔
L1 第1の延長線
L2 第2の延長線
P1 交点
T1 交点の軌跡