(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】自転車用チェーン及び自転車用チェーンの連結ピン部材
(51)【国際特許分類】
B62M 9/00 20060101AFI20240509BHJP
F16G 13/06 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B62M9/00 C
F16G13/06 E
(21)【出願番号】P 2023545163
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2022029068
(87)【国際公開番号】W WO2023032533
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2021143639
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521390006
【氏名又は名称】株式会社バオ
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】長野 正士
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5376055(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0164816(US,A1)
【文献】特開2009-257587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 9/00,
F16G 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を隔てて対向して配置された一対の外側プレート部を有する外側リンク部と、
前記一対の外側プレート部の内側に設けられ、前記一対の外側プレート部に一部が重複するように配置された一対の内側プレート部を有する内側リンク部と、
前記外側プレート部と前記内側プレート部を連結するために前記外側プレート部と前記内側プレート部との重複部分に形成される貫通孔部を貫通する連結ピン部と、
前記一対の内側プレート部の内側に配置され、前記連結ピン部の軸回りに回転自在なローラ部と、
を備え、
前記連結ピン部は、
螺旋状の螺子山が形成される凹部を含む第1ピン部と、
前記第1ピン部の前記凹部に螺合する凸部を含む第2ピン部とを有
し、
液体又は固体の接着主剤又は硬化剤を内包し、前記第1ピン部と前記第2ピン部とが連結された状態で固定するためのマイクロカプセル部を備えることを特徴とする自転車用チェーン。
【請求項2】
請求項1に記載の自転車用チェーンにおいて、
前記第2ピン部は、前記凸部を前記凹部に螺合させるために前記凸部を回転させるための工具穴を有する頭部を備え、
前記頭部は、略円柱形状を有しており、
前記凹部は、前記
凸部の外形に沿った孔部を有することを特徴とする自転車用チェーン。
【請求項3】
請求項1に記載の自転車用チェーンにおいて、
前記第2ピン部は、前記凸部を前記凹部に螺合させるために前記凸部を回転させるための工具穴を有する頭部を備え、
前記頭部は、前記凸部側に向かって先細りとなる略円錐台形状を有しており、
前記凹部は、前記頭部の外形に沿った孔部を有することを特徴とする自転車用チェーン。
【請求項4】
請求項1に記載の自転車用チェーンにおいて、
前記第1ピン部及び前記第2ピン部は、前記外側リンク部と接触可能な少なくとも一部の部位にローレット加工が施されていることを特徴とする自転車用チェーン。
【請求項5】
所定の間隔を隔てて対向して配置された一対の外側プレート部を有する外側リンク部と、
前記一対の外側プレート部の内側に設けられ、前記一対の外側プレート部に一部が重複するように配置された一対の内側プレート部を有する内側リンク部と、
を備える自転車用チェーンの連結ピン部材であって、
前記外側プレート部と前記内側プレート部を連結するために前記外側プレート部と前記内側プレート部との重複部分に形成される貫通孔部を貫通する連結ピン部を備え、
前記連結ピン部は、
螺旋状の螺子山が形成される凹部を含む第1ピン部と、
前記第1ピン部の前記凹部に螺合する凸部を含む第2ピン部とを有
し、
液体又は固体の接着主剤又は硬化剤を内包し、前記第1ピン部と前記第2ピン部とが連結された状態で固定するためのマイクロカプセル部を備えることを特徴とする自転車用チェーンの連結ピン部材。
【請求項6】
請求項
5に記載の自転車用チェーンの連結ピン部材において、
前記第2ピン部は、前記凸部を前記凹部に螺合させるために前記凸部を回転させるための工具穴を有する頭部を備え、
前記頭部は、略円柱形状を有しており、
前記凹部は、前記
凸部の外形に沿った孔部を有することを特徴とする自転車用チェーンの連結ピン部材。
【請求項7】
請求項
5に記載の自転車用チェーンの連結ピン部材において、
前記第2ピン部は、前記凸部を前記凹部に螺合させるために前記凸部を回転させるための工具穴を有する頭部を備え、
前記頭部は、前記凸部側に向かって先細りとなる略円錐台形状を有しており、
前記凹部は、前記頭部の外形に沿った孔部を有することを特徴とする自転車用チェーンの連結ピン部材。
【請求項8】
請求項
5に記載の自転車用チェーンの連結ピン部材において、
前記第1ピン部及び前記第2ピン部は、前記外側リンク部と接触可能な少なくとも一部の部位にローレット加工が施されていることを特徴とする自転車用チェーンの連結ピン部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用チェーン及び自転車用チェーンの連結ピン部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車用チェーンは、自転車のギアクランクに設けられたフロントスプロケットと後輪ハブに設けられたリアスプロケットに噛み合うものであり、ギアクランクを介してペダルの踏力を後輪ハブに伝達するものである。
【0003】
チェーンは、一対の外側プレート部を有する外側リンク部と、外側プレート部の内側に一部が重複するように互いに間隔を隔てて配置された一対の内側プレート部を有する内側リンク部と、両リンクを連結する連結ピン部と、連結ピン部の外周側に配置されたローラ部とを有している。連結ピン部は、中間部と中間部の両端側にカシメにより形成され外側プレート部の外側面に係合する膨出部とを有している。
【0004】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、多数の内側プレート及び外側プレートを端部が重なるよう交互に配列し、前記内側プレートの端部と外側プレートの端部をチェーンピンにより枢着し、該チェーンピンの外周に短管状のローラを遊嵌して成り、前記ローラの内周面の軸方向端部を、開口端面に向かって径大となるテーパー面としてあることを特徴とした自転車用チェーンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来の自転車用チェーンは、外側プレート部と内側プレート部と連結ピン部で連結しているが、上記のように、連結ピン部の両端部がカシメられる。このため、例えば、チェーンのメンテナンスで内側プレート部と外側プレート部との連結を取り外そうとすると専用工具などを用いる必要があり、また熟練度の高い作業者でないと作業できない。
【0007】
本発明の目的は、簡便にメンテナンスをすることを可能とする自転車用チェーン及び自転車用チェーンの連結部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る自転車用チェーンは、所定の間隔を隔てて対向して配置された一対の外側プレート部を有する外側リンク部と、前記一対の外側プレート部の内側に設けられ、前記一対の外側プレート部に一部が重複するように配置された一対の内側プレート部を有する内側リンク部と、前記外側プレート部と前記内側プレート部を連結するために前記外側プレート部と前記内側プレート部との重複部分に形成される貫通孔部を貫通する連結ピン部と、前記一対の内側プレート部の内側に配置され、前記連結ピン部の軸回りに回転自在なローラ部と、を備え、前記連結ピン部は、螺旋状の螺子山が形成される凹部を含む第1ピン部と、前記第1ピン部の前記凹部に螺合する凸部を含む第2ピン部とを有し、液体又は固体の接着主剤又は硬化剤を内包し、前記第1ピン部と前記第2ピン部とが連結された状態で固定するためのマイクロカプセル部を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る自転車用チェーンにおいて、前記第2ピン部は、前記凸部を前記凹部に螺合させるために前記凸部を回転させるための工具穴を有する頭部を備え、前記頭部は、略円柱形状を有しており、前記凹部は、前記凸部の外形に沿った孔部を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る自転車用チェーンにおいて、前記第2ピン部は、前記凸部を前記凹部に螺合させるために前記凸部を回転させるための工具穴を有する頭部を備え、前記頭部は、前記凸部側に向かって先細りとなる略円錐台形状を有しており、前記凹部は、前記頭部の外形に沿った孔部を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る自転車用チェーンにおいて、前記第1ピン部及び前記第2ピン部は、前記外側リンク部と接触可能な少なくとも一部の部位にローレット加工が施されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る自転車用チェーンの連結ピン部材は、所定の間隔を隔てて対向して配置された一対の外側プレート部を有する外側リンク部と、前記一対の外側プレート部の内側に設けられ、前記一対の外側プレート部に一部が重複するように配置された一対の内側プレート部を有する内側リンク部と、を備える自転車用チェーンの連結ピン部材であって、 前記外側プレート部と前記内側プレート部を連結するために前記外側プレート部と前記内側プレート部との重複部分に形成される貫通孔部を貫通する連結ピン部を備え、前記連結ピン部は、螺旋状の螺子山が形成される凹部を含む第1ピン部と、前記第1ピン部の前記凹部に螺合する凸部を含む第2ピン部とを有し、液体又は固体の接着主剤又は硬化剤を内包し、前記第1ピン部と前記第2ピン部とが連結された状態で固定するためのマイクロカプセル部を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る自転車用チェーンの連結ピン部材において、前記第2ピン部は、前記凸部を前記凹部に螺合させるために前記凸部を回転させるための工具穴を有する頭部を備え、前記頭部は、略円柱形状を有しており、前記凹部は、前記凸部の外形に沿った孔部を有することが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る自転車用チェーンの連結ピン部材において、前記第2ピン部は、前記凸部を前記凹部に螺合させるために前記凸部を回転させるための工具穴を有する頭部を備え、前記頭部は、前記凸部側に向かって先細りとなる略円錐台形状を有しており、前記凹部は、前記頭部の外形に沿った孔部を有することが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る自転車用チェーンの連結ピン部材において、前記第1ピン部及び前記第2ピン部は、前記外側リンク部と接触可能な少なくとも一部の部位にローレット加工が施されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、連結ピン部の工具穴にドライバを装着して回転させることにより、連結ピン部を取り外すことができる。これにより、簡単にメンテナンスを行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る実施形態の自転車用チェーンを示す図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の自転車用チェーンの変形例である自転車用チェーンを示す図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の自転車用チェーンの変形例である自転車用チェーンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0021】
図1は、本発明に係る実施形態の自転車用チェーン10を示す図である。
【0022】
自転車は、自転車用フレームと、自転車用フレームに回転自在に装着された前後の車輪と、後輪を脚で駆動するための駆動部とを備えている。ここでは、駆動部は、多段ギアを有するものとして説明するが、もちろん、多段ギアを有していない自転車にも適用可能である。
【0023】
駆動部は、自転車用フレームの中間下部に回転自在に装着されたフロントスプロケットを有するギアクランク部と、後輪に装着されたリアスプロケットを有する多段ギアと、ギアクランク部のフロントスプロケットと多段ギアのリアスプロケットのいずれかに巻回された自転車用チェーン10と、自転車用チェーン10をいずれかのスプロケットに巻回するための前後のディレーラを有している。
【0024】
ギアクランク部には、ペダルが回転自在に装着され、ペダルをこぐことにより自転車が走行する。
【0025】
自転車用チェーン10は、外側リンク部12と、外側リンク部12と交互に配置された内側リンク部14と、外側リンク部12と内側リンク部14とを連結する連結ピン部18と、内側リンク部14の内側に配置され連結ピン部18の軸回りに回転自在なローラ部16とを備えている。
【0026】
外側リンク部12は、互いに間隔を隔てて対向して配置された一対の外側プレート部12aと、一対の外側プレート部12aに形成された第1貫通孔部12bとを有している。第1貫通孔部12bの内径は、連結ピン部18の直径より大きい。これにより、連結ピン部18は第1貫通孔部12b内を容易に貫通できる。
【0027】
外側プレート部12aは、所定の厚みを有する鋼板を打ち抜き加工により両端を円形のひょうたん形に形成した板状部材である。
【0028】
内側リンク部14は、一対の外側プレート部12aの内側に一部が重複するように互いに間隔を隔てて配置された一対の内側プレート部14aと、一対の内側プレート部14aの両端部に第1貫通孔部12bとほぼ同径の第2貫通孔部14bとを有している。
【0029】
内側プレート部14aは、外側プレート部12aと似た形状であり、鋼板を打ち抜き加工により両端を円形のひょうたん形に形成した板状部材である。第2貫通孔部14bの内径は、連結ピン部18の直径より大きい。これにより、連結ピン部18は第2貫通孔部14b内を容易に貫通できる。
【0030】
連結ピン部18は、外側プレート部12aと内側プレート部14aを連結するために外側プレート部12aと内側プレート部14aとの重複部分に形成され、第1貫通孔部12bと第2貫通孔部14bで構成される貫通孔部13を貫通する。
【0031】
連結ピン部18は、特殊鋼の表面に耐摩耗性を向上させるために硬化処理を行った棒状部材である。連結ピン部18は、第1貫通孔部12b及び第2貫通孔部14bの内径より直径が大きく、第1貫通孔部12b及び第2貫通孔部14bを貫通して外側リンク部12と内側リンク部14とを連結する。
【0032】
連結ピン部18は、螺旋状の螺子山が形成される凹部24を含む第1ピン部20と、第1ピン部20の凹部24に螺合する凸部28を含む第2ピン部22とを有する。
【0033】
第1ピン部20は、
図1(b)に示されるように、円柱部材の中央部分に、第2ピン部の凸部28が螺合する螺子山を有する凹部24が形成されている。また、第1ピン部20は、凹部24と凸部28とを螺合させるために凹部24を回転させるための工具穴21が形成されている。この円柱部材の端部には、外側プレート部12aに係合するための係合部25が形成されている。凹部24は、頭部26の外形に沿った円柱形状の孔部を有する。
【0034】
第2ピン部22は、凸部28を凹部24に螺合させるために凸部28を回転させるための工具穴23を有する頭部26を備え、頭部26は、第1ピン部20と同一の直径を有する略円柱形状を有しており、端部には、外側プレート部12aに係合するための係合部27が形成されている。なお、工具穴21,23は、六角アーレンキなどに接合可能な形状を有している。
【0035】
ローラ部16は、一対の内側プレート部14aの間で筒状部の外周側に配置され、連結ピン部18の軸回りに回転自在である。ローラ部16は、筒状部の外周面に回転自在に支持されている。
【0036】
続いて、上記構成の自転車用チェーン10の作用について説明する。従来、自転車用チェーンにおいて、外側プレート部と内側プレート部とが連結ピン部によって連結されている。ここで、従来の連結ピン部は、両端部がカシメられる。
【0037】
このことから従来の自転車用チェーンのメンテナンス等で、例えば、内側プレート部と外側プレート部との連結を取り外そうとすると専用工具などを使い、熟練度の高い作業者でないと作業できないという課題があった。これに対し、本発明に係る実施形態の自転車用チェーン10は、このような状況で顕著な効果を発揮する。
【0038】
最初に、
図1のように、外側プレート部12aと内側プレート部14aとの重複部分に形成され、第1貫通孔部12bと第2貫通孔部14bで構成される貫通孔部13に連結ピン部18が挿通された状態から連結ピン部18を取り外す場合について説明する。
【0039】
2つの六角アーレンキを第1ピン部20の工具穴21と第2ピン部22の工具穴23に接続する。そして、凹部24と凸部28の螺合状態を解除するように六角アーレンキを回転させる。
【0040】
これにより、
図1(b)に示されるように、第1ピン部20と第2ピン部22との連結が解除されるため、外側プレート部12aと内側プレート部14aとの連結を取り外すことが出来る。
【0041】
また、上記とは反対に連結ピン部18を連結する場合は、外側プレート部12aと内側プレート部14aとの重複部分に形成される貫通孔部13において、第1ピン部20と第2ピン部22とを挿入する。
【0042】
そして、2つの六角アーレンキを第1ピン部20の工具穴21と第2ピン部22の工具穴23に接続し、凹部24と凸部28とが螺合するように六角アーレンキを回転させる。これにより、外側プレート部12aと内側プレート部14aとの連結することができる。
【0043】
以上のように、自転車用チェーン10によれば、2つの六角アーレンキを用いて第1ピン部20及び第2ピン部22を回転させることで連結させたり、連結を解消したりすることができるため、熟練度の高い作業者でなくても簡便に自転車用チェーン10のメンテナンスを行うことができるという利点がある。
【0044】
一般的に、自転車用のチェーンは、複数の規格が存在し、例えば、外リンクと内リンクとを連結するピンの長さも異なることがある。これに対し、自転車用チェーン10によれば、第1ピン部20と第2ピン部22との螺合状態を変えることでサイズフリーとなり、連結ピンの長さを自在変えることができるため、様々な規格のチェーンに対応することが出来るという顕著な効果を奏する。なお、例えば、第1ピン部20と第2ピン部22の先端部分のみが螺合した状態と、根元まで螺合した状態とで、連結ピンの長さが変わる。
【0045】
次に、本発明に係る実施形態の自転車用チェーン10の変形例である自転車用チェーン11について説明する。
図2は、本発明に係る実施形態の自転車用チェーン11を示す図である。
【0046】
自転車用チェーン10と自転車用チェーン11との相違点は、連結ピン部30のみであり、その他は同一の構成であるため、連結ピン部30の構成を中心に説明する。
【0047】
連結ピン部30は、外側プレート部12aと内側プレート部14aを連結するために外側プレート部12aと内側プレート部14aとの重複部分に形成され、第1貫通孔部12bと第2貫通孔部14bで構成される貫通孔部13を貫通する。
【0048】
連結ピン部30は、特殊鋼の表面に耐摩耗性を向上させるために硬化処理を行った棒状部材である。連結ピン部30は、第1貫通孔部12b及び第2貫通孔部14bの内径より直径が大きく、第1貫通孔部12b及び第2貫通孔部14bを貫通して外側リンク部12と内側リンク部14とを連結する。
【0049】
連結ピン部30は、螺旋状の螺子山が形成される凹部36を含む第1ピン部32と、第1ピン部32の凹部36に螺合する凸部38を含む第2ピン部34とを有する。
【0050】
第1ピン部32は、
図2(b)に示されるように、円柱部材の中央部分に、第2ピン部34の凸部38が螺合する螺子山を有する凹部36を有している。また、第1ピン部32は、凹部36と凸部38とを螺合させるために凹部36を回転させるための工具穴33が形成されている。この円柱部材の端部には、外側プレート部12aに係合するための係合部31が形成されている。凹部36は、頭部40の外形に沿った略円錐台形状の孔部を有する。
【0051】
第2ピン部34は、凸部38を凹部36に螺合させるために凸部38を回転させるための工具穴35を有する頭部40を備え、頭部40は、凸部38側に向かって先細りとなる略円錐台形状を有しており、端部には、外側プレート部12aに係合するための係合部37が形成されている。なお、工具穴33,35は、六角アーレンキなどに接合可能な形状を有している。
【0052】
続いて、上記構成の自転車用チェーン11の作用について説明する。最初に、
図2のように、外側プレート部12aと内側プレート部14aとの重複部分に形成され、第1貫通孔部12bと第2貫通孔部14bで構成される貫通孔部13に連結ピン部30が挿通された状態から連結ピン部30を外す場合について説明する。
【0053】
2つの六角アーレンキを第1ピン部32の工具穴33と第2ピン部34の工具穴35に接続する。そして、凹部36と凸部38の螺合状態を解除するように六角アーレンキを回転させる。
【0054】
これにより、
図2(b)に示されるように、第1ピン部32と第2ピン部34との連結が解除されるため、外側プレート部12aと内側プレート部14aとの連結を取り外すことが出来る。
【0055】
また、上記とは反対に連結ピン部30を連結する場合は、外側プレート部12aと内側プレート部14aとの重複部分に形成される貫通孔部13において、第1ピン部32と第2ピン部34とを挿入する。
【0056】
そして、2つの六角アーレンキを第1ピン部32の工具穴33と第2ピン部34の工具穴35に接続し、凹部36と凸部38とが螺合するように六角アーレンキを回転させる。これにより、外側プレート部12aと内側プレート部14aとの連結することができる。
【0057】
以上のように、自転車用チェーン11によれば、2つの六角アーレンキを用いて第1ピン部32及び第2ピン部34を回転させることで連結させたり、連結を解消したりすることができるため、簡便に自転車用チェーン11のメンテナンスを行うことができるという利点がある。また、連結ピン部30は、頭部40がテーパーである略円錐台形状を有しており、凹部36との摩擦力が大きいため、脱落しにくいという利点がある。
【0058】
なお、上記自転車用チェーン10,11によれば、連結ピン部18,30を用いることで、簡便に外側プレート部12aと内側プレート部14aとを連結したり、取り外したりすることができる。したがって、従来型の自転車用チェーンにも連結ピン部18,30を連結部材として利用することで同様の効果を奏する。
【0059】
次に、本発明に係る実施形態の自転車用チェーン10の別の変形例である自転車用チェーン50について説明する。
図3は、本発明に係る実施形態の自転車用チェーン50を示す図である。
【0060】
自転車用チェーン10と自転車用チェーン50との相違点は、外側リンク部15及び連結ピン部54のみであり、その他は、ほぼ同一の構成であるため、外側リンク部15及び連結ピン部54の構成を中心に説明する。
【0061】
外側リンク部15は、互いに間隔を隔てて対向して配置された一対の外側プレート部15aと、一対の外側プレート部15aに形成された第1貫通孔部15bとを有している。第1貫通孔部15bの内径は、連結ピン部54の直径より大きい。これにより、連結ピン部54は、第1貫通孔部15b内を容易に貫通できる。
【0062】
外側プレート部15aは、所定の厚みを有する鋼板を打ち抜き加工により両端を円形のひょうたん形に形成した板状部材である。なお、外側プレート部15aは、外側プレート部12aとは異なり、連結ピン部54の係合部67を係合させるための凹部が形成されており、
図3(a)に示される図では階段状になっている。
【0063】
連結ピン部54は、外側プレート部15aと内側プレート部14aを連結するために外側プレート部15aと内側プレート部14aとの重複部分に形成され、第1貫通孔部15bと第2貫通孔部14bで構成される貫通孔部17を貫通する。
【0064】
連結ピン部54は、特殊鋼の表面に耐摩耗性を向上させるために硬化処理を行った棒状部材である。連結ピン部54は、第1貫通孔部15b及び第2貫通孔部14bの内径より直径が大きく、第1貫通孔部15b及び第2貫通孔部14bを貫通して外側リンク部15と内側リンク部14とを連結する。
【0065】
連結ピン部54は、螺旋状の螺子山が形成される凹部56を含む第1ピン部58と、第1ピン部58の凹部56に螺合する凸部60を含む第2ピン部62とを有する。なお、凸部60は、
図3に示されるように、工具穴66側に近い部位が先端側に比べて若干径が大きく、段差になっている。
【0066】
第1ピン部58は、
図3(b)に示されるように、円柱部材の中央部分に、第2ピン部62の凸部60が螺合する螺子山を有する凹部56を有している。また、第1ピン部58は、凹部56と凸部60とを螺合させるために凹部56を回転させるための工具穴64が形成されている。この円柱部材の端部には、外側プレート部15aに係合するための係合部65が形成されている。なお、凹部56は、凸部60の形状に沿うように、工具穴64と反対側に位置する先端側が根元側(工具穴64側)に比べて径が大きくなっている。このような段差を設けることで、締め付けた際の強度が増すという利点がある。
【0067】
第2ピン部62は、凸部60を凹部56に螺合させるために凸部60を回転させるための工具穴66が形成されている。この端部には、外側プレート部15aに係合するための係合部67が形成されている。なお、工具穴64,66は、六角アーレンキなどに接合可能な形状を有している。
【0068】
第1ピン部58及び第2ピン部62は、
図3に示されるように、外側リンク部15の外側プレート部15aと接触可能な部位にローレット加工が施されている。ローレット加工とは、金属や樹脂に細かい凹凸や切り込みを入れる加工である。
【0069】
ローレット加工は、おもに綾目模様と平目模様の2種に大別される。ピッチ・溝深さ・線の角度などでさまざまな形状のものがあり、四角目や斜目などある。ここでは、凹凸部分のうち、先端部は尖るように加工されているため、ローレット加工部が外側プレート部15aに接触した際に刺さるような形状となっている。
【0070】
自転車を漕いだ際に、連結ピン部54が外側リンク部15と接触し、連結ピン部54が外側リンク部15を押圧した際に、上記のようにローレット加工が刺さるように、外側リンク部15の外側プレート部15aの硬度に比べて、連結ピン部54の硬度を高くすることが好ましい。上記の押圧の力が大きくなるほど、連結ピン部54のローレット加工部が外側リンク部15に食い込む量が大きくなる。
【0071】
また、自転車用チェーン50は、マイクロカプセル部52を備えている。マイクロカプセル部52は、液体又は固体の接着主剤又は硬化剤を内包し、第1ピン部58と第2ピン部62とが連結された状態で固定するための接着剤である。
【0072】
マイクロカプセル部52は、ポリマーや製膜性の物質を壁膜とし、液体や固体の芯物質を被覆した文字通り微小な容器で、大きさに定義はないが、一般には5μmから 300μmのものが使われている。
【0073】
マイクロカプセル部52は、圧力、熱、光、酸、薬品などのうち、希望する手段で壁膜を破壊し、芯物質をとりだすことができるように予め調整されている。また壁膜を破壊しなくても、壁膜にある微細な孔から芯物質を徐々に放出することもできる。ここでは、第1ピン部58と第2ピン部62とを螺合する際に生じる圧力により芯物質が取り出されるように調整されている。
【0074】
続いて、上記構成の自転車用チェーン50の作用について説明する。連結ピン部54を連結する場合は、外側プレート部15aと内側プレート部14aとの重複部分に形成される貫通孔部17において、第1ピン部58と第2ピン部62とを挿入する。この際、マイクロカプセル部52を第1ピン部58と第2ピン部62の間に挿入する。
【0075】
そして、2つの六角アーレンキを第1ピン部58の工具穴64と第2ピン部62の工具穴66に接続し、凹部56と凸部60とが螺合するように六角アーレンキを回転させる。これにより、外側プレート部15aと内側プレート部14aとの連結することができる。
【0076】
以上のように、自転車用チェーン50によれば、2つの六角アーレンキを用いて第1ピン部58及び第2ピン部62を回転させることで連結させたり、連結を解消したりすることができるため、簡便に自転車用チェーン50のメンテナンスを行うことができるという利点がある。
【0077】
また、第1ピン部58と第2ピン部62とが連結される際に加わる力により、マイクロカプセル部52の芯物質が取り出されて、第1ピン部58と第2ピン部62に付着し、これが硬化することにより、第1ピン部58と第2ピン部62とが連結された状態で固定される。
【0078】
そして、自転車用チェーン50によれば、ユーザが自転車を漕いで移動する際に、連結ピン部54のローレット加工が外側プレート部15aに接触した際に刺さるような形状となっている。これにより、連結ピン部52が回転してしまうことを抑制することが出来る。連結ピン部52が回転すると摩耗しやすいため、回転を抑制することで、自転車用チェーン50の寿命を延ばすことが出来るという利点がある。
【符号の説明】
【0079】
10,11,50 自転車用チェーン、12,15 外側リンク部、12a,15a 外側プレート部、12b,15b 第1貫通孔部、13,17 貫通孔部、14 内側リンク部、14a 内側プレート部、14b 第2貫通孔部、16 ローラ部、18,54 連結ピン部、20,58 第1ピン部、21,23 工具穴、22,62 第2ピン部、24,56 凹部、25 係合部、26 頭部、27,67 係合部、28,60 凸部、30 連結ピン部、31,65 係合部、32 第1ピン部、34 第2ピン部、33,35,64,65 工具穴、36 凹部、37 係合部、38 凸部、40 頭部、52 マイクロカプセル部。