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特許7485440硬化型樹脂組成物用表面処理炭酸カルシウム填料、およびそれを用いた硬化型樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】硬化型樹脂組成物用表面処理炭酸カルシウム填料、およびそれを用いた硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240509BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240509BHJP
   C09C 1/02 20060101ALI20240509BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240509BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/26
C09C1/02
C09J11/04
C09J201/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024007017
(22)【出願日】2024-01-19
【審査請求日】2024-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008442
【氏名又は名称】丸尾カルシウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】西岡 孝明
(72)【発明者】
【氏名】牧野 うらら
(72)【発明者】
【氏名】長野 正悟
(72)【発明者】
【氏名】日吉 雄也
(72)【発明者】
【氏名】内海 良二
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/168600(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/152762(WO,A1)
【文献】特開2013-216863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C09C 1/00- 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
23℃にて30Pa・s以上の樹脂粘度を有する硬化型樹脂に用いるための表面処理炭酸カルシウム填料であって、
表面処理剤で表面処理されている表面処理炭酸カルシウム粒子を含み、かつ以下の式(1)~(5)を満足する、硬化型樹脂組成物用表面処理炭酸カルシウム填料。
(1)5≦Sw≦50 (m/g)
(2)50≦Mp≦100 (質量%)
(3)45≦UFa≦80 (質量%)
(4)20≦Nr≦50 (質量%)
(5)1.00≦Es≦4.50 (mg/m
該Swは、該表面処理炭酸カルシウム粒子のBET比表面積(m/g)であり、
該Mpは、該表面処理剤に含まれる脂肪酸類であって、46℃以下の融点を有する脂肪酸、およびその塩からなる群から選択される少なくとも1種である脂肪酸類の含有量(質量%)であり、
該UFaは、該表面処理剤を構成する1価の水溶性脂肪酸塩に含まれる不飽和脂肪酸部分の割合(質量%)であり、
該Nrは、該表面処理炭酸カルシウム粒子をエタノールで還流して得られる対イオンを構成する1価の脂肪酸塩の、該表面処理剤の総表面処理量に対する割合(質量%)であり、
該Esは、該表面処理炭酸カルシウム粒子の単位比表面積当たりの該表面処理剤の量(mg/m)である。
【請求項2】
前記表面処理剤に含まれる46℃以下の融点を有する前記脂肪酸類が、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載の硬化型樹脂組成物用表面処理炭酸カルシウム填料。
【請求項3】
前記硬化型樹脂が、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系単独重合体と、アルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と(メタ)アクリル系重合体との混合物とからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の硬化型樹脂組成物用表面処理炭酸カルシウム填料。
【請求項4】
請求項1に記載の硬化型樹脂組成物用表面処理炭酸カルシウム填料と、硬化型樹脂とを含有する、硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化型樹脂が、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系単独重合体と、アルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と(メタ)アクリル系重合体との混合物とからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
シーリング材または接着剤として使用される、請求項4に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
1成分形の樹脂組成物または2成分形の樹脂組成物である、請求項4に記載の硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
全体質量に対して5質量%以下のフタル酸系可塑剤を含有する、請求項4に記載の硬化型樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化型樹脂組成物用表面処理炭酸カルシウム填料、およびそれを用いた硬化型樹脂組成物に関し、より詳細には高粘度樹脂を含む硬化型樹脂組成物に使用され得る硬化型樹脂組成物用表面処理炭酸カルシウム填料、およびそれを用いた硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル、マンション等の一般建築物やプレハブ住宅には、近年長寿命化が要求されている。これに伴って、外壁目地に施工されるシーリング材の防水性能も長期に亘って保持することが求められている。また、シーリング材表面や目地周辺の汚れの発生や、シーリング表面上に配置される塗膜の汚れや剥がれを防止して、美観性および/または意匠性を高めることも求められている。
【0003】
上記性能の長寿命化には、シーリング材が低モジュラスかつ高伸び性能を有することが必要とされる。さらに、耐熱性および耐水性の向上とともに、物性低下を抑え、接着性を維持することにより、一層長期間に亘ってシーリング材の各種性能を維持することが所望されている。
【0004】
シーリング材はまた、施工時にはペースト状であり、目地充填仕上げ後は湿気や反応硬化によってゴム弾性を有するものである。ここで、シーリング材は、現場職人がカートリッジガンやコーキングガンを用いて手作業で目地に充填されるため、目地のヘラ仕上げに対して適度な柔らかさを保持していなければいけない。特に冬場の低温時の施工環境ではシーリング材ペーストに粘り気が生じて粘度が上昇し、作業性に支障をきたし易い。したがって低温でも作業しやすい樹脂組成物の設計が必要とされている。
【0005】
オルガノポリシロキサンをベースとするシリコーンシーリング材は、最も長寿命化の要求性能を満たすものとして知られている。シリコーンシーリング材は耐熱性が高く、長期にわたって低モジュラス高伸び性能を有し、低温での粘度上昇が少ない点で作業性に優れている。
【0006】
しかし、シリコーンシーリング材は目地周辺に配置された際に、汚染し易く目立つという欠点を有する。また、このシーリング材表面には塗装が困難である。そのため高層ビル等の建築物のみに限定的に使用され、一般的な住宅にはほとんど使用されていない。
【0007】
ここで、近年シーリング材として有用な低モジュラスで高伸び性能を有する種々の樹脂組成物が提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、所定量のアルカリ金属を含む表面処理炭酸カルシウムと変成シリコーン樹脂とを含む樹脂組成物が記載されている。この表面処理炭酸カルシウムは、脂肪酸等で炭酸カルシウムを表面処理し、アルカリ金属含有化合物を添加して得られたものである。しかし、使用され得る変成シリコーン樹脂はポリオキシアルキレンを主鎖とした樹脂粘度の低いものに過ぎない。特許文献1の樹脂組成物はまた、長期間に亘って耐熱性を保持することができず、比較的容易に分解する、耐水接着性が低い等の欠点を有している。
【0009】
特許文献2には、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル重合体と、アルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、重質炭酸カルシウムとを含む硬化性組成物が、耐候性に優れ、かつ低温環境下における粘度上昇を抑制することが記載されている。しかし、このような硬化性組成物は、作業性を欠く(糸引き性を有する)という点で欠点を有する。
【0010】
特許文献3には、硬化型樹脂組成物に優れた耐熱性、強度、および伸びを提供することができる表面処理炭酸カルシウム填料、およびそれを用いた硬化性樹脂組成物が記載されている。しかし、特許文献3に記載の硬化型樹脂組成物は、特に低温において粘度が高くなりすぎてチキソ性が低くなり、施工業者の作業性に支障をきたす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第5728616号公報
【文献】特開2021-155604号公報
【文献】国際公開第2016/152762号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、高粘度を有する硬化型樹脂が配合されたとしても、高いチキソ性を有し、低温雰囲気下における施工時の作業性を向上させ、低モジュラスかつ高伸びを有する硬化型樹脂組成物を得ることのできる、硬化型樹脂組成物用表面処理炭酸カルシウム填料、およびそれを用いた硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、23℃にて30Pa・s以上の樹脂粘度を有する硬化型樹脂に用いるための表面処理炭酸カルシウム填料であって、
表面処理剤で表面処理されている表面処理炭酸カルシウム粒子を含み、かつ以下の式(1)~(5)を満足する、硬化型樹脂組成物用表面処理炭酸カルシウム填料:
(1)5≦Sw≦50 (m/g)
(2)50≦Mp≦100 (質量%)
(3)45≦UFa≦80 (質量%)
(4)20≦Nr≦50 (質量%)
(5)1.00≦Es≦4.50 (mg/m
該Swは、該表面処理炭酸カルシウム粒子のBET比表面積(m/g)であり、
該Mpは、該表面処理剤に含まれる脂肪酸類であって、46℃以下の融点を有する脂肪酸、およびその塩からなる群から選択される少なくとも1種である脂肪酸類の含有量(質量%)であり、
該Nrは、該表面処理炭酸カルシウム粒子をエタノールで還流して得られる対イオンを構成する1価の脂肪酸塩の、該表面処理剤の総表面処理量に対する割合(質量%)であり、
該Esは、該表面処理炭酸カルシウム粒子の単位比表面積当たりの該表面処理剤の量(mg/m)である。
【0014】
1つの実施形態では、上記表面処理剤に含まれる46℃以下の融点を有する上記肪酸類は、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0015】
1つの実施形態では、上記硬化型樹脂は、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系単独重合体と、アルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と(メタ)アクリル系重合体との混合物とからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0016】
本発明はまた、上記硬化型樹脂組成物用表面処理炭酸カルシウム填料と、硬化型樹脂とを含有する、硬化型樹脂組成物である。
【0017】
1つの実施形態では、本発明の硬化型樹脂組成物はシーリング材または接着剤として使用される。
【0018】
1つの実施形態では、本発明の硬化型樹脂組成物は1成分形の樹脂組成物または2成分形の樹脂組成物である。
【0019】
1つの実施形態では、本発明の硬化型樹脂組成物は全体質量に対して5質量%以下のフタル酸系可塑剤を含有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低温の施工環境下における作業性が保持され、低モジュラスおよび高伸びを実現可能であり、優れた耐熱性と高いチキソ性を有する硬化型樹脂組成物を提供することができる。本発明の表面処理炭酸カルシウム填料を用いて得られた硬化型樹脂組成物は、例えば低温雰囲気下でも施工時の作業性の低下を防止または抑制することができる。
【0021】
低温での粘度上昇については、(メタ)アクリル系重合体を含みアルコキシシリル基を有するポリマーなどの高粘度を有する樹脂は、一般的なポリオキシアルキレン系重合体を含んだアルコキシシリル基を有する樹脂に比べて、23℃条件下でも粘度差があり高く、5℃以下の気温(温度)で急激に粘度が上昇し易いという性質を有する。
【0022】
このような硬化型樹脂に対して、融点が46℃以下の脂肪酸類を含む表面処理剤で表面処理されている表面処理炭酸カルシウム粒子を填料として共存させることにより、硬化型樹脂との相溶性が向上することに加え、5℃以下の気温(温度)での急激な粘度上昇をおさえることができる。これにより得られる硬化型樹脂組成物の低温作業性が向上する。
【0023】
さらに融点が低く不飽和脂肪酸類を特定の割合で含有する表面処理剤で表面処理されている表面処理炭酸カルシウム粒子を填料として使用することにより、得られる硬化型樹脂組成物のチキソ性が向上し、低モジュラスかつ高伸び性能を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.表面処理炭酸カルシウム填料
まず、本発明の表面処理炭酸カルシウム填料について説明する。
【0025】
本発明の表面処理炭酸カルシウム填料は、表面処理剤で表面処理されている表面処理炭酸カルシウム粒子を含む。当該表面処理炭酸カルシウム粒子は合成炭酸カルシウムからなる粒子であり、以下の式(1)~(5)を満足するものである。
【0026】
(1)BET比表面積(Sw)
本発明における表面処理炭酸カルシウム粒子は、所定のBET比表面積(Sw;m/g)を有する。本発明において、表面処理炭酸カルシウム粒子のSwは5~50m/gであり、好ましくは10~40m/gであり、より好ましくは15~35m/gである。表面処理炭酸カルシウム粒子のSwが5m/gを下回ると、その一次粒子が大き過ぎることになり、得られる硬化型樹脂組成物に対して十分なチキソ性を付与することが困難になる場合がある。表面処理炭酸カルシウム粒子のSwが50m/gを上回ると、原料となる炭酸カルシウム粒子の表面を被覆するために必要な表面処理剤量が多くなり、得られる硬化型樹脂組成物の耐熱後の物性変化率が大きくなる場合がある。
なお、Swは表面処理炭酸カルシウム粒子を窒素吸着法(BET法)で測定した場合の値であり、下記試験方法により測定される。
【0027】
(Swの測定方法)
表面処理炭酸カルシウム粒子のSwは、例えば、株式会社マウンテック社製Macsorb HM model-1201を使用して以下のようにして測定され得る。
【0028】
具体的には、ガラスセルに試料として測定に供される表面処理炭酸カルシウム粒子200~300mgを入れ、測定装置にセットし、前処理として窒素とヘリウムとの混合ガス雰囲気化にて200℃で10分間の加熱処理を行った後、液体窒素の環境下で低温低湿物理吸着を行うことによりSwが測定される。
【0029】
Swは、本発明における表面処理炭酸カルシウム粒子を製造する際の種々の条件を変動させることにより制御することができる。Swを上記範囲に制御することができる条件としては、例えば、後述するような炭酸化反応で使用する石灰乳の濃度、炭酸化反応に採用される温度、使用する炭酸ガスの濃度、および炭酸化反応の際に使用する添加剤の種類、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。このような条件の設定が不十分であった場合は、上記Swの範囲を満たす表面処理炭酸カルシウム粒子を得ることが困難となることがある。
【0030】
(2)表面処理剤に含まれる脂肪酸類の含有量(Mp)
本発明における表面処理炭酸カルシウム粒子はまた、当該粒子に付与された表面処理剤内に所定量の脂肪酸類が含有されている。ここで、用語「脂肪酸類」は、脂肪酸、脂肪酸塩、およびそれらの組み合わせのいずれをも包含する。
【0031】
脂肪酸は、構成する鎖長に応じて様々な融点を有する。例えば、稲葉恵一ら編,新版 脂肪酸化学第2版2刷発行,幸書房,1997年によれば、代表的な脂肪酸は以下の融点を有する:ヘキサン酸(-4.0℃)、へブタン酸(-7.0℃)、オクタン酸(16.0℃)、ノナン酸(12.5℃)、デカン酸(31.6℃)、ウンデカン酸(28.7℃)、ラウリン酸(44.2℃)、オレイン酸(13.4℃)、リノール酸(-5.1℃)、リノレン酸(-11.2℃)。
【0032】
本発明において、このような脂肪酸類の例としては、46℃以下の融点を有する脂肪酸、その当該脂肪酸の塩、およびそれらの組み合わせが挙げられる。脂肪酸類のうち46℃以下の融点を有する脂肪酸の例としては、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。脂肪酸類のうち脂肪酸塩の例としては、上記脂肪酸のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩)、アンモニウム塩、およびアミン塩、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。本発明においては、低温での作業性が劣るという点でより高い効果が得られるとの理由から、46℃以下の融点を有する脂肪酸はラウリン酸、およびオレイン酸、ならびにそれらの組み合わせであることが好ましい。
【0033】
なお、上記46℃以下の融点を有する脂肪酸に対し、46℃を上回る脂肪酸で表面処理した炭酸カルシウム粒子を、高粘度を有する硬化型樹脂に配合すると、得られる硬化型樹脂組成物について低温時の急激な粘度上昇を軽減することが困難となる。
【0034】
本発明における表面処理剤に含まれる46℃以下の融点を有する脂肪酸類の含有量(Mp)の含有量は、50~100質量%であり、好ましくは50~80質量%であり、より好ましくは55~65質量%である。Mpが50質量%を下回ると、得られる硬化型樹脂組成物の低温時の可塑効果が弱くなり、低温時のチキソ低下が大きく、粘度上昇も大きくなるため施工時の作業性が改善につながらないことになる。
【0035】
(3)表面処理剤を構成する1価の水溶性脂肪酸塩に含まれる不飽和脂肪酸部分の割合(UFa)
本発明における表面処理炭酸カルシウム粒子はまた、当該粒子に付与された表面処理剤を構成する1価の水溶性脂肪酸塩に含まれる不飽和脂肪酸部分が所定範囲の割合(UFa;質量g)で含まれている。本発明において、表面処理炭酸カルシウム粒子に付与された表面処理剤を構成する1価の水溶性脂肪酸塩に含まれる不飽和脂肪酸部分の割合(UFa)は45~80質量%であり、好ましくは50~70質量%であり、より好ましくは55~65質量%である。表面処理炭酸カルシウム粒子に付与された表面処理剤におけるUFaが45質量%を下回ると、得られる硬化型樹脂組成物の粘度が低温時に高くなり、施工業者の作業性を低下させることになる。表面処理炭酸カルシウム粒子に付与された表面処理剤におけるUFaが80質量%を上回ると、得られる硬化型樹脂組成物の耐熱性が低下するとともに変色し易く、伸び率が低下する。
【0036】
(UFaの測定方法)
表面処理炭酸カルシウム粒子のUFaは、例えば、ガスクロマトグラフとして、熱分解装置(フロンティア・ラボ株式会社製PY-2020D)を併設したガスクロマトグラフ質量分析計(株式会社島津製作所製GCMS-QP2010A)を使用して以下のようにして測定され得る。
【0037】
具体的には、表面処理炭酸カルシウム粒子をテトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液に浸漬し、これを300℃で熱分解し、その成分をガスクロマトグラフに通すことにより測定される。
【0038】
得られるガスクロマトグラフから、主要5種類の脂肪酸組成(すなわち、飽和脂肪酸であるラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)およびステアリン酸(C18)、ならびに不飽和脂肪酸であるオレイン酸(C18F1))のピークが分析され、それらのピークの合計が100%となるように調整される。
【0039】
このようにして得られた当該不飽和脂肪酸部分の割合(質量%)がUFaとして採用される。
【0040】
(4)表面処理炭酸カルシウム粒子をエタノールで還流して得られる対イオンを構成する1価の脂肪酸塩の、表面処理剤の総表面処理量に対する割合(Nr)
本発明における表面処理炭酸カルシウム粒子はまた、当該粒子をエタノールで還流して得られる対イオンを構成する1価の脂肪酸塩の、表面処理剤の総表面処理量に対する割合(Nr)が所定の範囲内を満たす。本発明において、表面処理炭酸カルシウム粒子のNrは20~50質量%であり、好ましくは25~45質量%であり、より好ましくは30~40質量%である。表面処理炭酸カルシウム粒子のNrが20質量%を下回ると、得られる硬化型樹脂組成物の伸び率が低下して高寿命化された樹脂組成物を得ることが困難となる。表面処理炭酸カルシウム粒子のNrが50質量%を上回ると、得られる硬化型樹脂組成物は、低モジュラスかつ高伸びではあるが耐水性が低下する上、接着性も低下して長期間の防水性能に支障をきたしてしまうものとなる。
【0041】
(Nrの測定方法)
表面処理炭酸カルシウム粒子のNrは以下のようにして測定され得る。
【0042】
(a)まず、サンプルとして表面処理炭酸カルシウム粒子が300mLの三角フラスコに5g採取され、これに95%エタノール80gが添加される。
(b)次いで、アルミニウム箔で軽くフラスコの口を覆い、90℃以上のウォーターバス上で沸騰させ、当該沸騰の開始後さらに1時間加熱した後、ウォーターバスから取り出して室温で1日放冷する。
(c)30℃に温度調節し、フラスコ内の内容物をPTFE製のメンブレンフィルター(孔径0.5μm)を用いて吸引濾過し、濾液がビーカーに集められる。
(d)得られた濾液を秤量済みの200mLのビーカーに取り、80℃以上の湯浴に浸けて95%エタノールを蒸発させる。放冷後ビーカーの質量が測定される(なお、上記濾過前には空ビーカーの質量も測定される)。
(e)その後、表面処理炭酸カルシウム粒子1g当たりの遊離物の量F(mg/g)が以下のようにして算出される。
F(mg/g)=[濾過・放冷後のビーカー質量(mg)-空ビーカー質量(mg)]/炭酸カルシウムサンプル質量(g)
(f)次いで、上記(e)で得られた遊離物が、フェノールフタレイン溶液を数滴加えた2-プロパノール25mL中で溶解させられる。
(g)上記(f)で得られた2-プロパノール溶液が0.1mol/L水酸化カリウム水溶液で中和滴定される。
(h)上記(g)の水酸化カリウム滴定量から表面処理炭酸カルシウム粒子1g当たりの遊離物量中の遊離脂肪酸量(a(mg/g))が以下の式に基づいて算出され得る:
遊離脂肪酸量a(mg/g)=0.1mol/Lの水酸化カリウム滴定量(mL)×10-4×表面処理炭酸カルシウム粒子上に付与された表面処理剤の分子量×10(mg)/表面処理炭酸カルシウム粒子のサンプル質量(g)
ここで、200~500℃の表面処理炭酸カルシウム粒子1g当たりの熱減量(総表面処理剤量)をTg(mg/g)とすると、表面処理炭酸カルシウム粒子をエタノール抽出して求められる遊離脂肪酸量の総表面処理剤量に対する割合Zfは以下のようにして算出され得る:
Zf=(a/Tg)×100 (質量%)
同様に、上記(g)の水酸化カリウム滴定量から表面処理炭酸カルシウム粒子1g当たりの遊離物中の対イオンを構成する1価の脂肪酸塩の量s(mg/g)は、以下のようにして算出され得る:
1価の脂肪酸塩量s=遊離物量F-遊離脂肪酸量a (mg/g)
表面処理炭酸カルシウムをエタノール還流して得られる遊離物中の対イオンを構成する1価の脂肪酸塩の、表面処理剤の総表面処理剤量に対する割合Nrは、以下のようにして算出され得る:
Nr=(s/Tg)×100 (質量%)
【0043】
(5)表面処理炭酸カルシウム粒子の単位比表面積当たりの表面処理剤の量(Es)
本発明における表面処理炭酸カルシウム粒子はまた、表面処理炭酸カルシウム粒子の単位比表面積当たりの該表面処理剤の量(Es)が所定の範囲内を満たす。本発明において、表面処理炭酸カルシウム粒子のEsは1.00~4.50mg/mであり、好ましくは1.50~4.00mg/mであり、より好ましくは2.00~3.00mg/mである。表面処理炭酸カルシウム粒子のEsが1.00mg/mを下回ると、表面処理炭酸カルシウム粒子における表面処理の効果が不十分となる傾向があり、また、処理不足により未処理面が露出して水分を吸着し易くなる。表面処理炭酸カルシウム粒子のEsが4.50mg/mを上回ると、余剰の表面処理剤が滑剤として働くことになり、得られる硬化型樹脂組成物の耐熱性に悪影響を及ぼす恐れがあることに加え、経済的に不利である。なお、上記表面処理炭酸カルシウム粒子の比表面積(粒度)のBET比表面積Swに応じて表面処理量を変量するのが好ましい。
【0044】
(Esの算出方法)
表面処理炭酸カルシウム粒子のEsは以下のように表面処理炭酸カルシウム1g当たりの熱減量(mg/g)(Tg;総表面処理剤量ともいう)を、上記BET比表面積(m/g)(Sw)で除することにより算出することができる:
Es(mg/m)=Tg(mg/g)/Sw(m/g)
【0045】
(Tgの測定方法)
ここで、Tgは熱分析装置(株式会社リガク製ThermoPlusEV02)を用い、直径10mmの試料パン(白金製)に表面処理炭酸カルシウム100mgを採取し、昇温速度15℃/分で常温から510℃まで昇温させたときの200℃~500℃の熱減量を測定することにより、表面処理炭酸カルシウム1g当たりの熱減量(mg/g)として得ることができる。
【0046】
Esは、本発明における表面処理炭酸カルシウム粒子を製造する際の種々の条件を変動させることにより制御することができる。Esを上記範囲に制御することができる条件としては、例えば、表面処理剤量、およびBET比表面積、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。このような条件の設定が不十分であった場合は、上記Esの範囲を満たす表面処理炭酸カルシウム粒子を得ることが困難となることがある。
【0047】
(表面処理剤で表面処理されている表面処理炭酸カルシウム填料)
上記のように本発明の表面処理炭酸カルシウム填料は、その構成成分である表面処理炭酸カルシウム粒子が式(1)~(5)のすべてを満たすものである。このような表面処理炭酸カルシウム粒子は、表面処理剤で表面処理されている表面処理炭酸カルシウム粒子である。
【0048】
ここで、本明細書で用いられる用語「表面処理されている」とは、表面処理炭酸カルシウム填料および/または表面処理炭酸カルシウム粒子の表面の「状態」を表す意味で用いられる。
【0049】
本発明における表面処理炭酸カルシウム粒子は、未改質(表面処理前)の炭酸カルシウム粒子が表面処理剤で表面処理されたものである。
【0050】
(未改質の炭酸カルシウム粒子)
ここで、未改質の炭酸カルシウム粒子は、樹脂との混練時の脱気性の観点から、微粉粒子を多く含有している天然の白色糖晶質石灰石(重質炭酸カルシウム)よりもむしろ、天然の灰色緻密質石灰石を焼成した合成法により調製された合成炭酸カルシウム(例えば、軽質・コロイド炭酸カルシウム)の粒子である。
【0051】
このような未改質の炭酸カルシウム粒子は、公知の炭酸ガス法として、例えば、灰色緻密質石灰石を焼成して得た生石灰に水を加え、水酸化カルシウムとさせ、焼成時に出る炭酸ガスとを反応させることにより製造することができる。また、この炭酸ガス法で反応させた炭酸カルシウムスラリーを、オストワルド熟成により所望のBET比表面積を有するまで調整して、所望の炭酸カルシウム粒子を得ることができる。
【0052】
(表面処理剤)
表面処理剤は、粒子の流動性改善、炭酸カルシウムの耐アルカリ性や耐活性、その他、炭酸カルシウム填料の特性を向上させる目的で、上記未改質の炭酸カルシウム粒子に対して使用されるものである。表面処理剤の例としては、上記脂肪酸類が挙げられる。
【0053】
本発明において、表面処理剤は、上記脂肪酸類に加えて、他の飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、および樹脂酸、ならびにそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、およびアミン塩の1種またはそれ以上を含有していてもよい。
【0054】
このような他の飽和脂肪酸としては、好ましくは炭素数6~31の、より好ましくは炭素数8~26の、さらに好ましくは炭素数9~21の飽和脂肪酸が挙げられる。他の脂肪酸の具体的な例としては、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アライン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、およびメリシン酸、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0055】
他の不飽和脂肪酸は、分子中に1つまたはそれ以上の二重結合を有する脂肪酸であり、例えば、飽和脂肪酸の脱水反応によって生体内で合成されるものが挙げられる。他の不飽和脂肪酸としては、例えば炭素数6~31の不飽和脂肪酸が挙げられる。他の不飽和脂肪酸の具体例としては、オブッシル酸、カルロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、モリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレビン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、ソルビン酸、リノール酸、およびリノレン酸、ならびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0056】
なお、本発明においては、上記他の不飽和脂肪酸を含有する牛脂や豚脂などの動物原料由来の脂肪酸、パームやヤシなどの植物原料由来の脂肪酸なども表面処理剤の構成成分の1つとして使用されてもよい。
【0057】
また、本発明の効果を阻害しない範囲において、表面処理剤には、脂環族カルボン酸(例えばナフテン酸)、樹脂酸(例えば、アビエチン酸、ピマル酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸)、および変性ロジン(例えば、これらの不均化ロジン、水添ロジン、2量体ロジン、3量体ロジン)、スルホン酸類(例えば、アルキルベンゼンスルホン酸)、ならびにそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、およびアミン塩が単独でまたは2種類以上組み合わせて使用され得る。
【0058】
(未改質の炭酸カルシウム粒子の表面処理)
上記表面処理剤を用いて、未改質の炭酸カルシウム粒子の表面処理は例えば以下のようにして行われる。
【0059】
未改質の炭酸カルシウム粒子の表面処理には一般的な乾式処理または湿式処理のいずれが採用されてもよい。好ましくは、未改質の炭酸カルシウム粒子を含む水スラリーに、上記表面処理剤を添加する方法が採用され得る。このような方法は、一般に湿式処理と呼ばれるものであり、炭酸カルシウム粒子に対して表面処理の程度と製造効率とを適度に両立し得る点で好ましい。
【0060】
表面処理剤の使用量は得られる表面処理炭酸カルシウム粒子が上記式(1)~(5)を満たすものである限り特に限定されず当業者によって適宜選択され得る。また、表面処理のために採用される温度は特に限定されず、当業者によって適切な温度が選択される。
【0061】
上記表面処理の後、得られた粒子は、例えば常法に従って、脱水、乾燥、粉砕等の任意操作を経て粉末化されてもよい。
【0062】
なお、脱水は、表面処理炭酸カルシウム粒子を含むスラリーをフィルタープレスや遠心脱水機を用いて行うことができる。乾燥には、表面処理炭酸カルシウム粒子に高温の熱風を直接接触させることにより効率的に乾燥可能な、ミクロンドライヤー等の熱風式乾燥機が使用されてもよく、あるいは表面処理炭酸カルシウム粒子と加熱板とを接触させ、当該加熱板を通じて間接的に乾燥させる、CDドライヤー等の伝熱式乾燥機が使用されてもよい。
【0063】
このようにして、表面処理剤で表面処理されている表面処理炭酸カルシウム粒子を得ることができる。この表面処理炭酸カルシウム粒子は、上記式(1)~(5)のすべてを満たす表面処理炭酸カルシウム填料としてそのまま使用され得る。
【0064】
本発明の表面処理炭酸カルシウム填料は、硬化型樹脂、例えば、後述する23℃にて30Pa・s以上の樹脂粘度を有する硬化型樹脂と併用して使用される。
【0065】
2.硬化型樹脂組成物
次に、本発明の硬化型樹脂組成物について説明する。
【0066】
本発明の硬化型樹脂組成物は、上記表面処理炭酸カルシウム填料と硬化型樹脂とを含有する。
【0067】
(硬化型樹脂)
硬化型樹脂は、例えば23℃にて好ましくは30Pa・s以上、より好ましくは50~100Pa・sの樹脂粘度を有するものである。例えば30Pa・s未満の樹脂は、低温作業性に問題がないため、上記表面処理炭酸カルシウム填料との併用を敢えて必要としない。
【0068】
ここで、硬化型樹脂の上記樹脂粘度は例えば以下のようにして測定され得る。
【0069】
(硬化型樹脂の樹脂粘度の測定方法)
具体的には、23℃の環境下で樹脂を300mLのカップに300g入れ、10rpmにて1分間撹拌した後、粘度計(例えば、東機産業株式会社製VISCOMETER TV-100を用いて(レンジU、ローターNo.H6)測定され得る。
【0070】
上記硬化型樹脂は、例えば、構成分子の末端にシラノール基または反応性シリル基等の架橋性珪素基を有するものであり、加水分解および縮合反応によってシロキサン結合を形成するシリコーン樹脂や変成シリコーン樹脂が挙げられる。硬化型樹脂の具体的な例としては、(メタ)アクリル系重合体を含むアクリルシリコーン樹脂が挙げられ、例えば、XMAPやS-943の商品名で株式会社カネカより市販されている。
【0071】
なお、上記樹脂粘度を有する範囲であれば、他の樹脂として、ポリオキシアルキレンを有する変成シリコーン樹脂(例えば、株式会社カネカ製MSポリマーS-203,303,S-810等)、エポキシ基を有する変成シリコーン樹脂(株式会社カネカ製サイリル)、イソシアネート基を有するシリル化ウレタン樹脂が含まれていてもよい。ただし、こうした他の樹脂を、(メタ)アクリル系重合体を含むアクリルシリコーン樹脂と併用する場合は、上記本発明の表面処理炭酸カルシウム填料が奏する効果を損なわない範囲で併用割合が当業者によって設定され得る。
【0072】
本発明の硬化型樹脂組成物において、硬化型樹脂への上記表面処理炭酸カルシウム填料の配合量は、使用する硬化型樹脂の種類や用途によって異なるため、特に限定されないが、硬化型樹脂100質量部に対して、好ましくは5~200質量部、より好ましくは20~150質量部である。表面処理炭酸カルシウム填料の配合量が5質量部を下回ると、得られる硬化型樹脂組成物について十分なチキソ性を付与することはできない場合がある。表面処理炭酸カルシウム填料の配合量が200質量部を上回ると、得られる硬化型樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、作業性が悪くなることがある。
【0073】
(可塑剤)
本発明の硬化型樹脂組成物は可塑剤を含有していてもよい。使用され得る可塑剤の例としては、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アジピン酸ジ-n-アルキル、ジブチルジグリコールアジペート(BXA)、アゼライン酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、マレイン酸ジブチル(DBM)、マレイン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOM)、フマル酸ジブチル(DBF)、リン酸トリクレシル(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリブチルホスフェート(TB20P)、トリス・(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)、トリ(クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリスジクロロプロピルホスフェート(CRP)、トリブトキシエチルホスフェート(TBXP)、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、オクチルジフェニルホスフェート(CDP)、クエン酸アセチルトリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、トリメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン、ステアリン酸系可塑剤、シリコーンオイル(例えばジメチルポリシロキサン)、石油系高沸点溶剤(例えば、ポリオキシプロピレングリコール系、パラフィン系、ナフテン系、イソパラフィン系等の石油系高沸点溶剤)などが挙げられる。可塑剤の具体的な例としては、アクリル系ポリマー(東亞合成株式会社製アルフォンUP-1000,1110,1120等)が挙げられる。
上記可塑剤は、特に限定されないが、硬化型樹脂100質量部に対して、例えば80~150質量部が用いられる。
【0074】
なお、本発明においては、フタル酸系可塑剤の使用を可能な限り抑えるか、回避することが好ましい。フタル酸系可塑剤は、当該技術分野において周知の可塑剤であるが、得られる樹脂組成物をシーリング材として使用する場合、当該シーリング材の表面に塗装された塗膜がブリード汚染を起こすことがある。また、耐熱養生した後の伸び率低下が著しく悪化することもある、このため、美観性および意匠性を損なって長寿命化の性能に向かないことがある。このため、本発明の硬化型樹脂組成物では、全体質量に対してフタル酸系可塑剤の含有量を5質量%以下に設定することが好ましい。
【0075】
このようなフタル酸系可塑剤の例としては、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソノデシル(DIDP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、およびテトラヒドロフタル酸エステルが挙げられる。
【0076】
(他の充填剤)
本発明の硬化型樹脂組成物は、上記表面処理炭酸カルシウム填料以外に他の充填剤を含有していてもよい。使用され得る他の充填剤の例としては、無機系充填剤および有機系充填剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
無機系充填剤の例としては、重質炭酸カルシウム、カルシウム・マグネシウム炭酸塩(例えば、天然品および合成品)、塩基性炭酸マグネシウム、石英粉、珪石粉、微粉珪酸(例えば、乾式品、湿式品およびゲル法品)、微粉末珪酸カルシウム、微粉珪酸アルミニウム、カオリンクレー、パイオフィライトクレー、タルク、セリサイト、雲母、ベントナイト、ネフェリンサイナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック(例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、およびアセチレンブラック)、グラファイト、セピオライト、ワラストナイト、ゾノトライト、チタン酸カリウム、カーボン繊維、ミネラル繊維、ガラス繊維、シラスバルーン、フライアッシュバールン、ガラスバルーン、シリカビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズなどが挙げられる。
【0078】
有機系充填剤の例としては、アクリロニトリル系樹脂バルーン、塩化ビニリデン系樹脂バルーン、木粉、クルミ粉、コルク粉、小麦粉、澱粉、エボナイト粉末、ゴム粉末、リグニン、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、セルロース粉末、パルプ粉末、合成繊維粉末などが挙げられる。
【0079】
本発明の硬化型樹脂組成物における上記他の充填剤の含有量は一緒に含まれる表面処理炭酸カルシウム粒子が上記式(1)~(5)を満たすものである限り特に限定されず、適切な量が当業者によって適宜選択され得る。
【0080】
(他の添加剤)
本発明の硬化型樹脂組成物は他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤の例としては、硬化触媒、老化防止剤、着色剤、シランカップリング剤、ワックス、発泡剤、希釈剤、溶剤などが挙げられる。
【0081】
硬化触媒の例としては、有機錫化合物(例えば、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫アセテート、ジオクチル錫ステアレート、ジオクチル錫ラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ビスイソノニル・3-メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスアセチルアセトネート、ジブチル錫ビス(o-フェニルフェノキサイド)、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグリコレート、ジブチル錫オキサイド、およびジオクチル錫オキサイド);無機錫化合物(例えば、ビス(2-エチルヘキサン)錫およびビスネオデカン酸錫);チタニウムキレート触媒(例えば、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムアクリルオキシド、チタニウムn-プロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムエチルアセトアセテート、およびチタニウムアセチルアセトネート);有機アルミニウム化合物(例えば、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート);ビスマス触媒(例えばビスマスートリス(ネオデカノエート));ジルコニウム金属触媒(例えばジルコニウムテトラアセチルアセトナート);等が挙げられる。
【0082】
老化防止剤の例としては、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール系化合物)、酸化防止剤(例えば、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤)、ならびに光安定剤が挙げられる。
【0083】
着色剤の例としては、無機顔料(例えば、二酸化チタン、カーボンブラック等)、および有機顔料(例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料等)が挙げられる。
【0084】
シランカップリング剤はアミノ基含有シラン化合物が好ましく、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’-ビス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス-[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミン、N,N-ビス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N-ビス-[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N-ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N-ビス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミン、N,N-ビス-[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミン、N,N-ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサメチレンジアミン、N,N-ビス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N-ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、およびN,N-ビス-[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]アミン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。その他必要に応じてビニルシランやエポキシシラン等のシランカップリング剤と併用してもよい。
【0085】
ワックスの例としては、アマイドワックスおよびカストル油ワックスが挙げられる。
【0086】
発泡剤としては、加熱によりガスを発生するタイプの発泡剤を使用することができ、例えばアゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド等のアゾ系発泡剤が使用できる。
【0087】
希釈剤の例としては、キシレン、ミネラルターペン等が挙げられる。
【0088】
溶剤の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ブタン等の脂肪族炭化水素;ガソリン他の石油系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;セロソルブアセテート等のエーテルエステル;シリコーンオイル、脂肪酸エステル変成シリコーンオイル等のシリコーンオイル;ならびにそれらの組み合わせ;が挙げられる。しかし、溶剤は得られる硬化型樹脂組成物の耐熱性および/または耐久性を損なう恐れがあり、使用しないことが望ましい。
【0089】
本発明の硬化型樹脂組成物における上記他の添加剤の含有量は一緒に含まれる表面処理炭酸カルシウム粒子が上記式(1)~(5)を満たすものである限り特に限定されず、適切な量が当業者によって適宜選択され得る。
【0090】
本発明の硬化型樹脂組成物は、例えば建築外壁目地に充填されるシーラント材または接着剤として使用され得る。このような用途において本発明の硬化型樹脂組成物は、低温での粘度上昇が少なく、作業性に優れている。また、長期にわたって低モジュラスで高伸び性能を有し、耐熱性にも優れている。
【実施例
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、特に断りのない限り、%は質量%、部は質量部を意味する。
【0092】
各実施例および比較例に記載の材料、表面処理炭酸カルシウム填料の評価を以下のようにして行った。
【0093】
(A)脂肪酸組成、
(B)表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積(Sw)、
(C)表面処理剤を構成する1価の水溶性脂肪酸塩類に含まれる不飽和脂肪酸部分の割合(UFa)、
(D)表面処理炭酸カルシウム粒子をエタノールで乾留して得られる対イオンを構成する1価の脂肪酸塩の表面処理剤の総表面処理量に対する割合(Nr)、
(E)表面処理炭酸カルシウム粒子の単位比表面積当たりの表面処理剤の量(Es)
(A)~(E)に関してはそれぞれ前述の測定方法で測定した。
【0094】
シーラントの粘度
各実施例および比較例で得られたシーラントを23℃で1日間静置した後、カートリッジガンを用いて100mLのポリプロピレン(PP)カップへ詰め、TV型粘度計(東機産業株式会社製VISCOMETER TV-100)を用いて(レンジU、ローターNo.H7で)測定した。
【0095】
1rpmでは測定開始3分後の値を、2rpmでは測定開始2分後の値を、10rpmでは測定開始1分後の値をそれぞれ粘度値として測定した。また、TI値については2rpmでの粘度値を10rpmでの粘度値で除算することにより算出した。
【0096】
シーラントの低温作業性
各実施例および比較例で得られたシーラントを充填したカートリッジを低温環境下(5℃)で1日保管した後、当該シーラントを、カートリッジガンを用いて100mLのPPカップへ詰め、TV型粘度計(東機産業株式会社製VISCOMETER TV-100)を用いて(レンジU、ローターNo.H7で)測定した。粘度について2rpmでは測定開始2分後の値を、10rpmでは測定開始1分後の値を測定し、それぞれ粘度値とした。また、TI値については2rpmでの粘度値を10rpmでの粘度値で除算することにより算出し、得られた値を以下の基準にしたがって判定した。
【0097】
ただし、このような低温環境下での10rpmでの粘度値が600Pa・s以上であったものについては、算出したTI値が◎~△のいずれに該当する場合であってもすべて×と評価した。
◎:TIが2.8以上であった。
○:TIが2.3以上2.8未満であった。
△:TIが1.8以上2.3未満であった。
×:TIが1.8未満であるか、または10rpmでの粘度値が600Pa・s以上であった。
【0098】
シーラントの引張接着性
アルミニウム板(50mm×50mm×3mm)表面に、プライマー(横浜ゴム株式会社製No.40)を塗布し、60分間乾燥させた後、各実施例および比較例で得られたシーラントを充填(形状12mm×12mm×50mm)し、JIS A 1439:2016(建築用シーリング材 5.12.2、引張試験体の作製)に準拠して、H型試験体を作成した。
【0099】
この試験体を23℃にて14日間および30℃にて14日間加熱し、さらに23℃にて1日間保持した後に、引張試験機(株式会社島津製作所製オートグラフAG-1)を用いて測定した最大強度および最大伸び率を、それぞれ初期強度および初期伸び率と呼ぶことにした。さらに100℃にて42日間加熱し、その後23℃にて1日間保持した後に測定した最大強度および最大伸び率を、それぞれ加熱後強度および加熱後伸び率を呼ぶことにした。
【0100】
なお、上記最大強度(Tmax)は、試験体からシーラントを1分間に50mmの速度で引張り、最も大きい荷重をシーラントの断面積(600mm)で除算することにより得られた値である。
【0101】
上記最大伸び率(Emax)は、上記最大強度を測定した際の変位量を、アルミニウム板にシーラントを充填した際の当該シーラントの形状を構成する一辺(12mm)で除算し、かつ100倍して得られた値である。
【0102】
さらに上記で得られた初期強度(最大強度)および初期伸び率(最大伸び率)、および
加熱後強度(最大強度)および加熱後伸び率(最大伸び率)の各値について、以下の基準により判定を行った。
【0103】
(初期引張試験の判定基準)
初期強度(最大強度/Tmax):
◎:0.40N/mm以上であった。
○:0.30N/mm以上0.40N/mm未満であった。
△:0.20N/mm以上0.30N/mm未満であった。
×:0.20N/mm未満であった。
【0104】
初期伸び率(最大伸び率/Emax):
◎:600%以上であった。
○:450%以上600%未満であった。
△:300%以上450%未満であった。
×:300%未満であった。
【0105】
(加熱後引張試験の判定基準)
加熱後強度(最大強度/Tmax):
◎:0.30N/mm以上であった。
○:0.20N/mm以上0.30N/mm未満であった。
△:0.10N/mm以上0.20N/mm未満であった。
×:0.1N/mm未満であった。
【0106】
加熱後伸び率(最大伸び率/Emax):
◎:350%以上であった。
○:250%以上350%未満であった。
△:150%以上250%未満であった。
×:150%未満であった。
【0107】
(接着性)
なお、得られたシーラントについてシーラントの破断が接着表面で生じるのではなく、シーラントの内部(中心)で生じることが好ましい。
【0108】
CF値は凝集破壊の割合(%)を示し、AF値は界面剥離の割合(%)を示す。ここで、CF値100%は凝集破壊100%を示しており、望ましい接着性を有することを示す、一方、AF値100%は界面剥離を生じたことを表し、望ましくない接着性を有していたことを示す。
【0109】
このようにして得られたCF値を用いて、初期および加熱後のそれぞれにおけるシーラントの接着性を以下の判定基準により判定を行った。
【0110】
初期接着性の判定基準
○:CF100%であった。
△:CF50%~CF99%であった。
×:CF50%未満(AF50%以上)であった。
【0111】
加熱後接着性の判定基準
○:CF100%であった
△:CF50%~CF99%であった。
×:CF50%未満(AF50%以上)であった。
【0112】
実施例1:表面処理炭酸カルシウム粒子(E1)の作製
固形分濃度10.0重量%、温度50℃に調整した、BET比表面積27m/gの合成炭酸カルシウムの水スラリー10Lに対して、80℃の温水1L中で組成を調整した混合脂肪酸(ラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=6:6:22:16:50(質量比))65gを苛性ソーダで中和し、混合脂肪酸ナトリウム塩として、加えて炭酸カルシウムスラリーと共に強く撹拌した。この炭酸カルシウムスラリーを固形分60%まで脱水し、110℃の箱型乾燥機で12時間乾燥後、粉砕してBET比表面積23m/gの表面処理炭酸カルシウム粒子(E1)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E1)の特徴を表1に示す。
【0113】
実施例2:表面処理炭酸カルシウム粒子(E2)の作製
表面処理剤として混合脂肪酸の組成を、ラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=10:4:28:4:54(質量比)(表面処理剤の添加量は65gを苛性ソーダで中和)に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E2)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E2)の特徴を表1に示す。
【0114】
実施例3:表面処理炭酸カルシウム粒子(E3)の作製
実施例1と同様の混合脂肪酸の組成を用い、表面処理剤の添加量を53gを苛性ソーダで中和して使用に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E3)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E3)の特徴を表1に示す。
【0115】
実施例4:表面処理炭酸カルシウム粒子(E4)の作製
実施例1と同様の混合脂肪酸の組成を用い、表面処理剤の添加量を77gを苛性ソーダで中和して使用に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E4)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E4)の特徴を表1に示す。
【0116】
実施例5:表面処理炭酸カルシウム粒子(E5)の作製
実施例1で表面処理剤として、混合脂肪酸の組成(ラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=0:1:25:22:52(質量比))を苛性ソーダで中和して使用に変更し、表面処理剤の添加量を63gに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E5)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E5)の特徴を表1に示す。
【0117】
実施例6:表面処理炭酸カルシウム粒子(E6)の作製
実施例1で使用する合成炭酸カルシウムのBET比表面積を17m/gに変更し、処理剤組成を実施例1と同様にし、表面処理剤の添加量を42gに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E6)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E6)の特徴を表1に示す。
【0118】
実施例7:表面処理炭酸カルシウム粒子(E7)の作製
実施例1で使用する合成炭酸カルシウムのBET比表面積を55m/gに変更し、処理剤組成を実施例1と同様にし、表面処理剤の添加量を109gに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E7)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E7)の特徴を表1に示す。
【0119】
実施例8:表面処理炭酸カルシウム粒子(E8)の作製
実施例1で表面処理剤として、混合脂肪酸の組成(ラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=2:5:30:20:43(質量比)、表面処理剤の添加量は65gを苛性ソーダで中和して使用)に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E8)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E8)の特徴を表1に示す。
【0120】
実施例9:表面処理炭酸カルシウム粒子(E9)の作製
実施例1で表面処理剤として、混合脂肪酸の組成(ラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=60:0:0:0:40(質量比)、表面処理剤の添加量は65gを苛性ソーダで中和して使用)に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E9)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E9)の特徴を表1に示す。
【0121】
実施例10:表面処理炭酸カルシウム粒子(E10)の作製
実施例1で表面処理剤として、混合脂肪酸の組成(ラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=6:6:26:24:38(質量比)、表面処理剤の添加量は65gを苛性ソーダで中和して使用)に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E10)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E10)の特徴を表1に示す。
【0122】
実施例11:表面処理炭酸カルシウム粒子(E11)の作製
実施例1で表面処理剤として、混合脂肪酸の組成(ラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=4:2:12:10:72(質量比)、表面処理剤の添加量は65gを苛性ソーダで中和して使用)に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E11)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E11)の特徴を表1に示す。
【0123】
実施例12:表面処理炭酸カルシウム粒子(E12)の作製
実施例1と同様の組成で脂肪酸を苛性ソーダで中和したものに、同組成の脂肪酸を添加し表面処理を実施した(脂肪酸Na塩:脂肪酸=8:2(質量比)、表面処理剤の添加量は脂肪酸Na塩が52g、脂肪酸が13g)こと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E12)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E12)の特徴を表1に示す。
【0124】
実施例13:表面処理炭酸カルシウム粒子(E13)の作製
表面処理前の炭酸カルシウムスラリーに苛性ソーダを0.5%添加し、pHを11以上にしたこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E13)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E13)の特徴を表1に示す。
【0125】
実施例14:表面処理炭酸カルシウム粒子(E14)の作製
実施例1と同様の混合脂肪酸の組成にて苛性ソーダで中和し、表面処理剤の添加量を32gに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E14)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E14)の特徴を表1に示す。
【0126】
実施例15:表面処理炭酸カルシウム粒子(E15)の作製
実施例1と同様の混合脂肪酸の組成にて苛性ソーダで中和し、表面処理剤の添加量を111gに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E15)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E15)の特徴を表1に示す。
【0127】
実施例16:表面処理炭酸カルシウム粒子(E16)の作製
実施例1で使用する合成炭酸カルシウムのBET比表面積を65m/gに変更し、処理剤組成は実施例1と同様にし、表面処理剤の添加量を139gに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E16)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E16)の特徴を表1に示す。
【0128】
実施例17:表面処理炭酸カルシウム粒子(E17)の作製
実施例1で使用する合成炭酸カルシウムのBET比表面積を12m/gに変更し、処理剤組成は実施例1と同様にし、表面処理剤の添加量を28gに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E17)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E17)の特徴を表1に示す。
【0129】
実施例18:表面処理炭酸カルシウム粒子(E18)の作製
実施例1で使用する合成炭酸カルシウムのBET比表面積を8m/gに変更し、処理剤組成は実施例1と同様にし、表面処理剤の添加量を17gに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(E18)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E18)の特徴を表1に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
比較例1:表面処理炭酸カルシウム粒子(C1)の作製
表面処理剤として、混合脂肪酸の組成(ラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=0:0:28:52:20(質量比)、表面処理剤の添加量は65gを苛性ソーダで中和)に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(C1)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(C1)の特徴を表2に示す。
【0132】
比較例2:表面処理炭酸カルシウム粒子(C2)の作製
表面処理剤として、混合脂肪酸の組成(ラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=100:0:0:0:0(質量比)、表面処理剤の添加量は65gを苛性ソーダで中和)に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(C2)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(C2)の特徴を表2に示す。
【0133】
比較例3:表面処理炭酸カルシウム粒子(C3)の作製
表面処理剤として、混合脂肪酸の組成(ラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=0:0:0:0:100(質量比)、表面処理剤の添加量は65gを苛性ソーダで中和)に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(C3)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(C3)の特徴を表2に示す。
【0134】
比較例4:表面処理炭酸カルシウム粒子(C4)の作製
実施例1と同様の組成で脂肪酸を苛性ソーダで中和したものに、同組成の脂肪酸を添加して表面処理を行った(脂肪酸Na塩:脂肪酸=1:1(質量比)、表面処理剤の添加量は脂肪酸Na塩が38g、脂肪酸が38g)こと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(C4)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(C4)の特徴を表2に示す。
【0135】
比較例5:表面処理炭酸カルシウム粒子(C5)の作製
表面処理前の炭酸カルシウムスラリーに苛性ソーダを1.0%添加してpH12以上に調整し、実施例1と同様の処理剤組成を用い、表面処理剤の添加量を76gに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(C5)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(C5)の特徴を表2に示す。
【0136】
比較例6:表面処理炭酸カルシウム粒子(C6)の作製
実施例1と同様の混合脂肪酸ナトリウム塩の組成を用い、表面処理剤の添加量を27gに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(C6)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(C6)の特徴を表2に示す。
【0137】
比較例7:表面処理炭酸カルシウム粒子(C7)の作製
実施例1と同様の混合脂肪酸ナトリウム塩の組成を用い、表面処理剤の添加量を120gに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(C7)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(C7)の特徴を表2に示す。
【0138】
比較例8:表面処理炭酸カルシウム粒子(C8)の作製
実施例1で使用した合成炭酸カルシウムのBET比表面積を19m/gに変更し、混合脂肪酸の組成(ラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=5:4:25:24:42(質量比)、表面処理剤の添加量は50gを苛性ソーダで中和)に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(C8)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(C8)の特徴を表2に示す。
【0139】
比較例9:表面処理炭酸カルシウム粒子(C9)の作製
実施例1で使用した合成炭酸カルシウムのBET比表面積を18m/gに変更し、混合脂肪酸の組成(ラウリン酸:ミリスチン酸:パルミチン酸:ステアリン酸:オレイン酸=6:3:40:22:29(質量比)、表面処理剤の添加量は35gを苛性ソーダで中和)に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(C9)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(C9)の特徴を表2に示す。
【0140】
比較例10:表面処理炭酸カルシウム粒子(C10)の作製
実施例1で使用した合成炭酸カルシウムのBET比表面積を60m/gに変更し、実施例1と同様の処理剤組成を用い、表面処理剤の添加量を170gに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(C10)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(C10)の特徴を表2に示す。
【0141】
比較例11:表面処理炭酸カルシウム粒子(C11)の作製
実施例1で使用した合成炭酸カルシウムのBET比表面積を6m/gに変更し、実施例1と同様の処理剤組成を用い、表面処理剤の添加量を11gに変更したこと以外は実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子(C11)を得た。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(C11)の特徴を表2に示す。
【0142】
【表2】
【0143】
実施例19~34:シーラント(SE19)~(SE34)の作製
実施例1~18で得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E1)~(E18)をそのまま填料として用い、以下に示す各成分と混練することにより、1成分形変成シリコーン系シーラント(SE19)~(SE34)を作製した。
メタアクリル系重合体を含む変成シリコーン樹脂
(株式会社カネカ製XMAP SB-802) 100質量部
酸化防止剤
(株式会社ADEKA製アデカスタブAO-60) 1質量部
可塑剤(アクリル系可塑剤)
(東亜合成株式会社製アルフォンUP-1000) 80質量部
重質炭酸カルシウム
(丸尾カルシウム株式会社製スーパーS) 80質量部
実施例1~16で得られた表面処理炭酸カルシウム粒子 120質量部
脱水剤
(信越化学工業株式会社製KBM-1003) 5質量部
スズ触媒
(日東化成株式会社製ネオスタンU-220H) 2質量部
アミノシラン
(信越化学工業株式会社製KBM-603) 2質量部
合計 390質量部
【0144】
この混練については以下のようにして行った。
【0145】
5Lの万能混合撹拌機(株式会社ダルトン製)に変成シリコーン樹脂を投入し、あらかじめ105℃で2時間以上乾燥させた表面処理炭酸カルシウム粒子および重質炭酸カルシウムを一緒に投入し、低速にて15分間予備撹拌を行った。その後、混合撹拌機内に付着した表面処理炭酸カルシウム粒子を掻き落とした後、ただちに真空雰囲気下で高速にて30分間混練を行った。その後に脱水剤、スズ触媒、およびアミノシランを投入し、真空雰囲気下で低速にて15分間混合した。これをアルミ箔ラミネートコーティングされたカートリッジ内に充填し、金属プランジャーで密栓し、各実施例の1成分形変成シリコーンシーラント(シーラント(SE19)~(SE34))を得た。
【0146】
得られたシーラント(SE19)~(SE34)の評価結果を表5に示す。
【0147】
実施例35:シーラント(SE35)の作製
重質炭酸カルシウムの含有量を50質量部に変更し、かつ表面処理炭酸カルシウム粒子を実施例17で得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E17)150質量部に変更したこと以外は実施例19と同様にしてシーラント(SE35)を得た。得られたシーラント(SE35)の各成分を表3に示し、当該シーラント(SE35)の評価結果を表5に示す。
【0148】
実施例36:シーラント(SE36)の作製
重質炭酸カルシウムの含有量を50質量部に変更し、かつ表面処理炭酸カルシウム粒子を実施例18で得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E18)50質量部に変更したこと以外は実施例19と同様にしてシーラント(SE36)を得た。得られたシーラント(SE36)の各成分を表3に示し、当該シーラント(SE36)の評価結果を表5に示す。
【0149】
実施例37:シーラント(SE37)の作製
使用した変成シリコーン樹脂を、メタアクリル系重合体を含む変成シリコーン樹脂(株式会社カネカ製XMAP SB-802)70質量部およびポリオキシアルキレン系重合体を含む変成シリコーン樹脂(株式会社カネカ製S-203)30質量部に変更したこと以外は実施例19と同様にしてシーラント(SE37)を得た。得られたシーラント(SE37)の各成分を表3に示し、当該シーラント(SE37)の評価結果を表5に示す。
【0150】
実施例38:シーラント(SE38)の作製
使用した変成シリコーン樹脂を、メタアクリル系重合体を含む変成シリコーン樹脂(株式会社カネカ製XMAP SB-802)51質量部およびポリオキシアルキレン系重合体を含む変成シリコーン樹脂(株式会社カネカ製S-203)49質量部に変更したこと以外は実施例19と同様にしてシーラント(SE38)を得た。得られたシーラント(SE38)の各成分を表3に示し、当該シーラント(SE38)の評価結果を表5に示す。
【0151】
実施例39:シーラント(SE39)の作製
使用した可塑剤を、アクリル系可塑剤(東亜合成株式会社製アルフォンUP-1000)61質量部およびフタル酸系可塑剤(株式会社ジェイプラス製DINP)19質量部に変更したこと以外は実施例19と同様にしてシーラント(SE39)を得た。得られたシーラント(SE39)の各成分を表3に示し、当該シーラント(SE39)の評価結果を表5に示す。
【0152】
実施例40:シーラント(SE40)の作製
使用した変成シリコーン樹脂を、メタアクリル系重合体を含む変成シリコーン樹脂(株式会社カネカ製XMAP SB-802)70質量部およびポリオキシアルキレン系重合体を含む変成シリコーン樹脂(株式会社カネカ製S-203)30質量部に変更し、かつ使用した可塑剤を、アクリル系可塑剤(東亜合成株式会社製アルフォンUP-1000)61質量部およびフタル酸系可塑剤(株式会社ジェイプラス製DINP)19質量部に変更したこと以外は実施例19と同様にしてシーラント(SE40)を得た。得られたシーラント(SE40)の各成分を表3に示し、当該シーラント(SE40)の評価結果を表5に示す。
【0153】
実施例41:シーラント(SE41)の作製
使用した変成シリコーン樹脂を、メタアクリル系重合体を含む変成シリコーン樹脂(株式会社カネカ製XMAP SB-802)51質量部およびポリオキシアルキレン系重合体を含む変成シリコーン樹脂(株式会社カネカ製S-203)49質量部に変更し、かつ使用した可塑剤を、アクリル系可塑剤(東亜合成株式会社製アルフォンUP-1000)61質量部およびフタル酸系可塑剤(株式会社ジェイプラス製DINP)19質量部に変更したこと以外は実施例19と同様にしてシーラント(SE41)を得た。得られたシーラント(SE41)の各成分を表3に示し、当該シーラント(SE41)の評価結果を表5に示す。
【0154】
【表3】
【0155】
比較例12~21:シーラント(SC12)~(SC21)の作製
比較例1~11で得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(C1)~(C11)をそのまま填料として用い、以下に示す各成分と混合することにより、1成分形変成シリコーン系シーラント(SC12)~(SC21)を作製した。
メタアクリル系重合体を含む変成シリコーン樹脂
(株式会社カネカ製XMAP SB-802) 100質量部
酸化防止剤
(株式会社ADEKA製アデカスタブAO-60) 1質量部
可塑剤(アクリル系可塑剤)
(東亜合成株式会社製アルフォンUP-1000) 80質量部
重質炭酸カルシウム
(丸尾カルシウム株式会社製スーパーS) 80質量部
比較例1~12で得られた表面処理炭酸カルシウム粒子 120質量部
脱水剤
(信越化学工業株式会社製KBM-1003) 5質量部
スズ触媒
(日東化成株式会社製ネオスタンU-220H) 2質量部
アミノシラン
(信越化学工業株式会社製KBM-603) 2質量部
合計 390質量部
【0156】
この混練については以下のようにして行った。
【0157】
5Lの万能混合撹拌機(株式会社ダルトン製)に変成シリコーン樹脂を投入し、あらかじめ105℃で2時間以上乾燥させた表面処理炭酸カルシウム粒子および重質炭酸カルシウムを一緒に投入し、低速にて15分間予備撹拌を行った。その後、混合撹拌機内に付着した表面処理炭酸カルシウム粒子を掻き落とした後、ただちに真空雰囲気下で高速にて30分間混練を行った。その後に脱水剤、スズ触媒、およびアミノシランを投入し、真空雰囲気下で低速にて15分間混合した。これをアルミ箔ラミネートコーティングされたカートリッジ内に充填し、金属プランジャーで密栓し、各比較例の1成分形変成シリコーンシーラント(シーラント(SC12)~(SC21))を得た。
【0158】
得られたシーラント(SC1)~(SC21)の評価結果を表6に示す。
【0159】
比較例22:シーラント(SC22)の作製
重質炭酸カルシウムの含有量を50質量部に変更し、かつ表面処理炭酸カルシウム粒子を比較例11で得られた表面処理炭酸カルシウム粒子150質量部に変更したこと以外は比較例12と同様にしてシーラント(SC22)を得た。得られたシーラント(SC22)の各成分を表4に示し、当該シーラント(SC22)の評価結果を表6に示す。
【0160】
比較例23:シーラント(SC23)の作製
使用した変成シリコーン樹脂を、メタアクリル系重合体を含む変成シリコーン樹脂(株式会社カネカ製XMAP SB-802)50質量部およびポリオキシアルキレン系重合体を含む変成シリコーン樹脂(株式会社カネカ製S-203)50質量部に変更したこと以外は比較例12と同様にしてシーラント(SC23)を得た。得られたシーラント(SC23)の各成分を表4に示し、当該シーラント(SC23)の評価結果を表6に示す。
【0161】
比較例24:シーラント(SC24)の作製
使用した変成シリコーン樹脂を、メタアクリル系重合体を含む変成シリコーン樹脂(株式会社カネカXMAP SB-802)30質量部およびポリオキシアルキレン系重合体を含む変成シリコーン樹脂(株式会社カネカ製S-203)70質量部に変更したこと以外は比較例12と同様にしてシーラント(SC24)を得た。得られたシーラント(SC24)の各成分を表4に示し、当該シーラント(SC24)の評価結果を表6に示す。
【0162】
比較例25:シーラント(SC25)の作製
使用した変成シリコーン樹脂を、メタアクリル系重合体を含む変成シリコーン樹脂(株式会社カネカ製XMAP SB-802)0質量部およびポリオキシアルキレン系重合体を含む変成シリコーン樹脂(株式会社カネカ製S-203)100質量部に変更したこと以外は比較例12と同様にしてシーラント(SC25)を得た。得られたシーラント(SC25)の各成分を表4に示し、当該シーラント(SC25)の評価結果を表6に示す。
【0163】
【表4】
【0164】
【表5】
【0165】
【表6】
【0166】
表5および6に示すように、実施例1~18で得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E1)~(E18)のいずれかを用いて作製したシーラント(SE19)~(SE41)は、いずれも低温作業性が良好であり、初期および加熱後のいずれにおける接着性も良好であった。これに対し、比較例1~11で得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(C1)~(C11)のいずれかを用いて作製したシーラント(SC12)~(SC27)には、低温作業性が劣るものが存在し(例えば、比較例12、13、18、20~22)、仮に当該低温作業性が良好であったとしても初期および加熱後のいずれにおける接着性に劣るものであった。
【0167】
このことから、実施例1~18で得られた表面処理炭酸カルシウム粒子(E1)~(E18)のいずれかを用いて作製したシーラント(SE19)~(SE41)は、低温作業性と初期および加熱後のいずれにおける接着性との両方を向上させたことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明によれば、例えば、樹脂成形分野、建築・住宅分野、塗料分野、ならびにこれらに関連する広範な技術分野において有用である。
【要約】
【課題】 高粘度を有する硬化型樹脂が配合されたとしても、高いチキソ性を有し、低温雰囲気下における施工時の作業性を向上させ、低モジュラスかつ高伸びを有する硬化型樹脂組成物を得ることのできる、硬化型樹脂組成物用表面処理炭酸カルシウム填料、およびそれを用いた硬化型樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明の表面処理炭酸カルシウム填料は、23℃にて30Pa・s以上の樹脂粘度を有する硬化型樹脂に用いられ、表面処理剤で表面処理されている表面処理炭酸カルシウム粒子を含み、Swが5~50(m/g)であり、Mpが50~100(質量%)であり、UFaが45~80(質量%)であり、Nrが20~50(質量%)であり、Esが1.00~4.50(mg/m)であるという条件を満たす。
【選択図】 なし