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特許7485443装身具用留め具、装身具用留め具の組み立てセット及び装身具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】装身具用留め具、装身具用留め具の組み立てセット及び装身具
(51)【国際特許分類】
   A44C 25/00 20060101AFI20240509BHJP
   A44C 5/20 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A44C25/00 B
A44C5/20 F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024022904
(22)【出願日】2024-02-19
(62)【分割の表示】P 2020550216の分割
【原出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2024054366
(43)【公開日】2024-04-16
【審査請求日】2024-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2018188060
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019113302
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503175966
【氏名又は名称】株式会社クロスフォー
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】土橋 秀位
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】実公昭44-018616(JP,Y1)
【文献】特開2007-195606(JP,A)
【文献】米国特許第5168606(US,A)
【文献】特開平05-293005(JP,A)
【文献】実開昭52-115495(JP,U)
【文献】米国特許第5832571(US,A)
【文献】登録実用新案第3098584(JP,U)
【文献】実公昭53-048152(JP,Y1)
【文献】実開昭59-101707(JP,U)
【文献】実開昭49-122256(JP,U)
【文献】特開平07-027182(JP,A)
【文献】特開2000-166625(JP,A)
【文献】登録実用新案第3136049(JP,U)
【文献】特開2007-301174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 25/00
A44C 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対象部材と第2対象部材とを分離可能に連結する装身具用留め具であって、
第1部材及び第2部材と、
前記第1対象部材に取り付けられる取付部と、
前記第1部材と前記第2部材とを回転可能に連結する連結部とを有し、
前記取付部は、前記第1部材又は前記連結部に設けられており、
前記第1部材は、前記第2対象部材が持つ開口部に引っ掛けられる引掛け部を含み、
前記引掛け部は、前記取付部から離れる第1方向に凹んだ凹部を持ち、
前記第1部材と前記第2部材とは、前記連結部において回転することにより開状態又は閉状態となり、
前記開状態において、前記第1部材と前記第2部材との間に隙間が生じ、
前記開状態の前記隙間は、前記第2対象部材の前記開口部に面した縁部が前記引掛け部の前記凹部に出入り可能となるための通路を形成し、
前記閉状態において、前記隙間を通じた前記凹部への前記縁部の出入りが不能となり、
前記第2部材は、前記第1部材と前記第2部材とを回転させることにより、前記第1部材に対して円弧の軌道上を移動する先端部を含み、
前記円弧の軌道は、前記閉状態において仮想的な基準円を通過する軌道であり、
前記基準円は、前記第1方向における前記凹部の最奥部から前記第1方向へ離れた位置に中心を持ち、前記第1部材及び前記第2部材の回転軸と前記第1方向とに平行な平面上に位置し、前記引掛け部が内側から接した円であり、
前記閉状態において前記先端部の少なくとも一部が前記基準円を貫通し、
前記先端部は、前記閉状態にあるとき、前記基準円内において前記凹部に対して前記第1方向に離れた場所に位置し、
前記第1部材及び前記第2部材は、前記閉状態において、前記回転軸に平行な方向に貫通した内部空間を形成し、
前記内部空間は、前記回転軸に平行な方向から見て、前記第1部材と前記第2部材とにより囲まれた閉領域であり、
前記引掛け部の前記凹部と前記第2部材の一部の表面とが前記内部空間に面しており、
前記閉状態において前記内部空間に面した前記第2部材の前記表面は、第1部分と第2部分とを含み、
前記閉状態において前記回転軸に平行な方向から見た前記第1部分の各位置の法線ベクトルであって、前記第2部材を押す方向の法線ベクトルである第1法線ベクトルは、前記開状態となる方向へ向かう成分を含んでおり、
前記閉状態において前記回転軸に平行な方向から見た前記第2部分の各位置の法線ベクトルであって、前記第2部材を押す方向の法線ベクトルである第2法線ベクトルは、前記開状態となる方向に対して逆の方向へ向かう成分を含んでおり、
前記閉状態において前記回転軸に平行な方向から見て、前記第1部分の長さが前記第2部分の長さに比べて短い、
装身具用留め具。
【請求項2】
前記凹部は、前記回転軸に対して垂直な前記第1方向に凹んでおり、
前記回転軸は、前記凹部に対して前記第1方向の逆方向に離れた場所に位置する、
請求項1に記載の装身具用留め具。
【請求項3】
前記先端部は、前記開状態から前記閉状態へ変化するときに前記円弧の軌道の先頭に位置する先頭部分を持ち、
前記先端部の前記先頭部分において前記回転軸に最も近い部分が、前記閉状態において、前記第1方向側の前記引掛け部の外面から離れている、
請求項2に記載の装身具用留め具。
【請求項4】
前記閉状態において、前記第1部材の前記引掛け部が前記第2部材に接触することにより、前記第1部材に対する前記第2部材の回転が規制される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の装身具用留め具。
【請求項5】
前記引掛け部は、前記第2対象部材の前記開口部に挿通される端部を持ち、前記回転軸に平行な方向から見て、前記端部に向かうにつれて前記第2部材側に曲がっており、
前記先端部は、前記開状態から前記閉状態へ変化するときに前記円弧の軌道の先頭に位置する先頭部分を持ち、前記回転軸に平行な方向から見て、前記先端部の前記先頭部分に向かうにつれて前記第1部材側に曲がっている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の装身具用留め具。
【請求項6】
前記第2部材は、前記回転軸に平行な方向において対向した一対の側壁を含み、
前記閉状態において、前記第1部材の少なくとも一部が前記一対の側壁の間に位置し、前記回転軸に垂直な平面に沿う方向に延びている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の装身具用留め具。
【請求項7】
前記第1部材は、前記引掛け部につながる第1基部を含み、
前記凹部は、前記回転軸に平行な方向から見て、前記第1基部につながる一端と前記第1基部から離れた他端との間で前記第1方向に向かって円弧状に湾曲しており、
前記第1方向に垂直な方向における前記凹部の前記最奥部の位置が、前記回転軸に平行な方向から見て、前記一端と前記他端との中間より前記一端に近い、
請求項1~6のいずれか一項に記載の装身具用留め具。
【請求項8】
前記第2部材は、前記先端部につながる第2基部を含み、
前記先端部は、前記開状態から前記閉状態へ変化するときに前記円弧の軌道の先頭に位置する先頭部分を持ち、前記第2基部側から前記先頭部分側に向かうにつれて、前記回転軸に平行な方向における幅が狭くなっている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の装身具用留め具。
【請求項9】
前記第2部材は、前記回転軸から遠ざかる方向に突出した操作部を含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の装身具用留め具。
【請求項10】
前記開状態から前記閉状態に変化する方向へ前記第1部材と前記第2部材とを回転させる付勢力を発生する付勢部材を有する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の装身具用留め具。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の装身具用留め具における前記第1部材と、前記第2部材と、前記第1部材に設けられた前記取付部とを備える
装身具用留め具の組み立てセット。
【請求項12】
請求項10に記載の装身具用留め具における前記第1部材と、前記第2部材と、前記第1部材に設けられた前記取付部と、前記付勢部材とを備える
装身具用留め具の組み立てセット。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の装身具用留め具を備える装身具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装身具用留め具、装身具用留め具の組み立てセット及び装身具に関する。
【背景技術】
【0002】
ネックレスなどの装身具においてチェーンの連結に用いられる留め具(クラスプとも呼ばれる。)には、引き輪タイプ、差し込みタイプ、ねじタイプ、中折れタイプなどの様々なタイプが知られている。例えば特開2008-36244号公報(特許文献1)に記載されている引き輪タイプの留め具、特開平10-137016号公報(特許文献2)、特開2012-19946号公報(特許文献3)等に記載されている挿し込み式タイプ及びねじ式タイプの留め具等が知られている。また、その他のタイプの留め具として、例えば、図15に示した中折れタイプの留め具150、及び特開2000-166625号公報(特許文献4)に記載されているタイプの留め具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-36244号公報
【文献】特開平10-137016号公報
【文献】特開2012-19946号公報
【文献】特開2000-166625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの従来の留め具には、連結操作及び分離操作を行い難い。例えば引き環タイプの留め具は、バネなどで付勢されたレバーをスライドさせる際に本体を固定しておく必要があり、本体の固定とレバーのスライドとを片手で簡単に行えない。差し込みタイプの留め具及びねじタイプの留め具も、それぞれの操作(抜き差し操作、ねじ回し操作)をする際に本体を固定しておく必要があり、片手では操作し難い。
【0005】
また、図15に示した中折れタイプの留め具150の場合、第1部材151と第2部材152とを連結するときに、第1部材151のリング部151aを可動側本体部152bの全体に通して支持部152aの近傍まで移動させる必要がある。しかし、可動側本体部152bの先端部が曲がっている。また、可動側本体部152bの回転操作を行い易くするために突片部152cが可動側本体部152bから突出して形成されている。このため、リング部151aと、第2部材152の長い可動側本体部152b又は突片部152cとの干渉により、リング部151aの支持部152aまでの移動が妨げられ易い。
【0006】
そこで、本開示の目的は、連結操作及び分離操作を容易に行うことが可能な装身具用留め具、装身具用留め具の組み立てセット、及び、装身具用留め具を備えた装身具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、第1対象部材と第2対象部材とを分離可能に連結する装身具用留め具であって、第1部材及び第2部材と、前記第1対象部材に取り付けられる取付部と、前記第1部材と前記第2部材とを回転可能に連結する連結部とを有し、前記取付部は、前記第1部材又は前記連結部に設けられており、前記第1部材は、前記第2対象部材が持つ開口部に引っ掛けられる引掛け部を含み、前記引掛け部は、前記取付部から離れる第1方向に凹んだ凹部を持ち、前記第1部材と前記第2部材とは、前記連結部において回転することにより開状態又は閉状態となり、前記開状態において、前記第1部材と前記第2部材との間に隙間が生じ、前記開状態の前記隙間は、前記第2対象部材の前記開口部に面した縁部が前記引掛け部の前記凹部に出入り可能となるための通路を形成し、前記閉状態において、前記隙間を通じた前記凹部への前記縁部の出入りが不能となり、前記第2部材は、前記第1部材と前記第2部材とを回転させることにより、前記第1部材に対して円弧の軌道上を移動する先端部を含み、前記円弧の軌道は、前記閉状態において仮想的な基準円を通過する軌道であり、前記基準円は、前記第1方向における前記凹部の最奥部から前記第1方向へ離れた位置に中心を持ち、前記第1部材及び前記第2部材の回転軸と前記第1方向とに平行な平面上に位置し、前記引掛け部に接した円であり、前記閉状態において前記先端部の少なくとも一部が前記基準円を貫通し、前記先端部は、前記閉状態にあるとき、前記基準円内において前記凹部に対して前記第1方向に離れた場所に位置し、前記第1部材及び前記第2部材は、前記閉状態において、前記回転軸に平行な方向に貫通した内部空間を形成し、前記内部空間は、前記回転軸に平行な方向から見て、前記第1部材と前記第2部材とにより囲まれた閉領域であり、前記引掛け部の前記凹部と前記第2部材の一部の表面とが前記内部空間に面しており、前記閉状態において前記内部空間に面した前記第2部材の前記表面は、第1部分と第2部分とを含み、前記閉状態において前記回転軸に平行な方向から見た前記第1部分の各位置の法線ベクトルであって、前記第2部材を押す方向の法線ベクトルである第1法線ベクトルは、前記開状態となる方向へ向かう成分を含んでおり、前記閉状態において前記回転軸に平行な方向から見た前記第2部分の各位置の法線ベクトルであって、前記第2部材を押す方向の法線ベクトルである第2法線ベクトルは、前記開状態となる方向に対して逆の方向へ向かう成分を含んでおり、前記閉状態において前記回転軸に平行な方向から見て、前記第1部分の長さが前記第2部分の長さに比べて短い、装身具用留め具である。
【0008】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様の装身具用留め具における前記第1部材と、前記第2部材と、前記第1部材に設けられた前記取付部とを備える、装身具用留め具の組み立てセットである。
【0009】
本開示の第3の態様は、上記第1の態様の装身具用留め具を備える装身具である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、連結操作及び分離操作を容易に行うことが可能な装身具用留め具、装身具用留め具の組み立てセット、及び、装身具用留め具を備えた装身具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1の実施形態に係る装身具用留め具の一例を示す図であり、装身具用留め具によって線状部材を連結した状態を示す図である。
図2図2Aは、第1の実施形態に係る装身具用留め具の閉状態の斜視図である。図2Bは、第1の実施形態に係る装身具用留め具の開状態の斜視図である。
図3図3Aは、第1の実施形態に係る装身具用留め具の閉状態の側面図である。図3Bは、第1の実施形態に係る装身具用留め具の開状態の側面図である。
図4図4Aは、第1の実施形態に係る装身具用留め具の正面図である。図4Bは、第1の実施形態に係る装身具用留め具の背面図である。
図5図5Aは、第1の実施形態に係る装身具用留め具の平面図である。図5Bは、第1の実施形態に係る装身具用留め具の底面図である。
図6図6Aは、第1の実施形態に係る装身具用留め具のA-A線断面図である。図6Bは、第1の実施形態に係る装身具用留め具のB-B線切断部端面図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る装身具用留め具を線状部材の一端に引っ掛けて吊り下げた状態を示す図である。
図8図8A及び図8Bは、基準円について説明するための図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る装身具用留め具の一変形例を説明するための図である。
図10図10は、第1の実施形態に係る装身具用留め具の一変形例を説明するための図である。
図11図11Aは、第2の実施形態に係る装身具用留め具の一例を示す図であり、閉状態の側面図である。図11Bは、図11Aに示す側面図の一部を抜き出して示した図である。図11Cは、第2の実施形態に係る装身具用留め具の平面図である。
図12図12は、第2の実施形態に係る装身具用留め具の開状態の側面図である。
図13図13は、第2の実施形態に係る装身具用留め具を線状部材の一端に引っ掛けて吊り下げた状態を示す図である。
図14図14A及び図14Bは、基準円について説明するための図である。
図15図15は、従来の留め具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る装身具用留め具1の一例を示す図である。本実施形態に係る装身具用留め具1は、ネックレスなどの装身具において部材同士を分離可能に連結するために使用される留め具である。図1の例は、線状部材50の一方の端部51と他方の端部52とを装身具用留め具1によって連結した状態を示す。図1に示す線状部材50は、複数のコマ部57と、隣り合う2つのコマ部57を連結する連結部材58とを有する。連結部材58は、コマ部57に対して揺動可能に取り付けられている。図1には図示されていないが、各コマ部57には、例えば宝石(ダイアモンドなど)が固定される。なお、装身具用留め具1は、図1に示すようなネックレス、ブレスレットなどの線状部材に限らず、様々な装身具における部材の連結に使用することができる。
【0013】
本実施形態に係る装身具用留め具1が連結する2つの部材のうち、一方の部材を「第1対象部材」と呼び、他方の部材を「第2対象部材」と呼ぶ。第1対象部材は、装身具用留め具1の操作では分離されることがないように装身具用留め具1に予め取り付けられる。第2対象部材は、装身具用留め具1の操作によって分離し得るように装身具用留め具1に連結される。この第1対象部材と第2対象部材は、独立した異なる部材でもよいし、同じ部材の異なる部分でもよい。図1の例においては、線状部材50の一方の端部51が第1対象部材、線状部材50の他方の端部52が第2対象部材であり、端部51及び端部52が同じ線状部材50の異なる部分である。
【0014】
本明細書では、図面に表された構造における各部分の相対的な位置関係を説明するため、直交する3つの方向軸(X軸、Y軸、Z軸)を規定する。X軸に平行な方向を「X方向」と呼び、X方向における2つの逆向きの方向をX1方向及びX2方向と呼ぶ。Y軸に平行な方向を「Y方向」と呼び、Y方向における2つの逆向きの方向をY1方向及びY2方向と呼ぶ。また、Z軸に平行な方向を「Z方向」と呼び、Z方向における2つの逆向きの方向をZ1方向及びZ2方向と呼ぶ。これらの方向は、説明の便宜上与えたものに過ぎず、図面に表された装身具用留め具を使用する際の方向を規定するものではない。
【0015】
また本明細書では、特に断らない場合、装身具用留め具の各部分の方向に関し、装身具用留め具が閉状態にあるものとして説明する。
【0016】
図2A図2B図3A図3B図4A図4B図5A図5Bは、図1に示す装身具用留め具1を各方向から見た図である。図2Aは、装身具用留め具1の閉状態の斜視図であり、図2Bは、装身具用留め具1の開状態の斜視図である。図3Aは、装身具用留め具1の閉状態の側面図であり、図3Bは装身具用留め具1の開状態の側面図である。図4Aは、装身具用留め具1の正面図であり、図4Bは、装身具用留め具1の背面図である。図5Aは、装身具用留め具1の平面図であり、図5Bは、装身具用留め具1の底面図である。図6Aは、図5Aの平面図のA-A線における装身具用留め具1の断面図である。図6Bは、図3Aの側面図のB-B線に沿って装身具用留め具1を切断した場合の切断部の端面図である。
【0017】
装身具用留め具1は、図3B図6Aなどに示すように、第1部材10及び第2部材20と、第1対象部材に取り付けられる取付部30と、連結部40とを有する。連結部40(図6A)は、第1部材10と第2部材20とを回転可能に連結する。装身具用留め具1は、第1部材10と第2部材20とが連結部40において回転することにより、図2A及び図2Bの斜視図に示すように、開状態又は閉状態となる。第1部材10と第2部材20との回転軸AXは、図5A及び図5Bに示すように、Y方向に平行である。
【0018】
取付部30は、図3B図6Aなどに示すように、第1部材10と一体に設けられている。取付部30は、図1の例において、線状部材50の一方の端部51を構成する連結部材58に固定される。取付部30は、図6Aに示すように、X方向へ延びた孔31を有する。この孔31に連結部材58(一方の端部51)を挿入した状態で、ろう付け、溶接、接着剤などの固定手段が施されることにより、取付部30が連結部材58(一方の端部51)に固定される。取付部30は、第1部材10に対して独立した部材であってもよい。
【0019】
なお、取付部30を第1対象部材に取り付ける手段は、上記のようなろう付けなどの固定手段に限らない。例えば、孔31を貫通した連結部材58の先端を孔31から抜け出ないように加工してもよい。又は、棒状の連結部材58をリング状の部材に置き換えて孔31に通してもよい。すなわち、取付部30と第1対象部材とは、通常の使用において容易に外れ難くするような種々の手段により取り付けることができる。
【0020】
第1部材10は、図3B図6Aなどに示すように、引掛け部12を有する。引掛け部12は、第2対象部材が持つ開口部に引っ掛けられる。図7は、第1の実施形態に係る装身具用留め具1を線状部材の一端に引っ掛けて吊り下げた状態を示す図である。この図7図1の例において、引掛け部12は、線状部材50の他方の端部52を構成するリング53の開口部55に引っ掛けられる。
【0021】
図3B図6Aなどに示すように、取付部30は引掛け部12から見てX1方向に位置する。引掛け部12は、取付部30から離れる方向(第1方向ともいう)に凹んだ凹部13を有する。取付部30から離れる方向はX2方向である。凹部13は、このX2方向に凹んでいる。凹部13が凹むX2方向は、回転軸AX(回転軸AXに平行なY方向)に対して垂直である。凹部13は、例えば図3B図6Aなどに示すように、Y方向から見て取付部30に向いた引掛け部12の縁部又は面である。
【0022】
凹部13が取付部30から離れる方向(X2方向)に凹んでいるため、引掛け部12をリング53(線状部材50の他方の端部52)の開口部55に引っ掛けて吊り下げた場合、図7に示すように、凹部13の凹み方向(X2方向)は鉛直方向の上方を向き易くなる。すなわち、取付部30に取り付けられた第1対象部材の重みが第1部材10に加わると、リング53の縁部56と凹部13との接触点から見て取付部30が鉛直方向の下方に位置し易くなり、この接触点から見て凹部13の凹み方向が鉛直方向の上方を向きやすくなる。これにより、接触点が凹部13の最も奥に向かってシフトし易くなり、引掛け部12がリング53に安定して引掛けられた状態となる。
【0023】
引掛け部12は、図3B図7などに示すように、第2対象部材が持つ開口部(図7の例では、線状部材50の他方の端部52を構成するリング53の開口部55)に挿通される端部121を持つ。引掛け部12は、図3B図6Aなどに示すように、回転軸AXに平行なY方向から見て、端部121に向かうにつれて第2部材20側に曲がっている。すなわち引掛け部12は、Y方向から見て、X方向に対して端部121に向かうにつれてZ1側に曲がっている。Y方向から見た引掛け部12の形状は、後述する第1基部11側からX2方向、Z1方向、X1方向の順番で延伸方向が連続的に変化するように湾曲している。
【0024】
図3A及び図6Aに示すように、閉状態では、第1部材10の引掛け部12が第2部材20に接触することによって、第1部材10に対する第2部材20の回転が規制される。
【0025】
第1部材10は、図3B図6Aなどに示すように、引掛け部12につながる第1基部11を有する。第1基部11は、全体的にX方向に沿う方向へ伸びており、第1基部11のX1側の端に取付部30が設けられ、第1基部11のX2側の端に引掛け部12が設けられている。第1基部11は、回転軸AXに平行なY方向から見て、X方向に延びた底面18を持つ。底面18は、第1基部11のZ2側の表面であり、Z方向に対して概ね垂直な平面をなす。
【0026】
第2部材20に面する第1基部11のZ1側の内面101は、図6Aに示すように、X2側の端において引掛け部12の凹部13と連続的につながっている。凹部13は、回転軸AXに平行なY方向から見て、第1基部11につながる一端と第1基部11から離れて第2部材20側(Z1側)に向かう他端との間で円弧状に湾曲している。第1基部11の内面101は、この湾曲した凹部13の一端からX1方向へ延びており、Z方向に対して概ね垂直な平面をなす。また第1基部11は、内面101に比べてX1側(取付部30側)に位置するとともに、内面101に比べてZ1側に位置した内面103を有する。内面103もZ方向に対して概ね垂直な平面をなす。第1基部11のZ方向の厚みは、内面101の部分に比べて内面103の部分の方が大きくなっている。X方向における内面101と内面103の間の内面102は、図6Aに示すように、X1側に向かうにつれてZ1方向に傾斜している。第1基部11のZ方向の厚みは、傾斜した内面102の部分において、X2側からX1側へ向かうにつれて連続的に大きくなっている。
【0027】
第1基部11は、図4B及び図6A及に示すように、内面103の更にX1側(取付部30側)において、Y方向に離れて向かい合った2つの側壁19を有する。第1基部11のZ方向の厚みは、2つの側壁19が形成された部分の間において、内面103よりも小さくなっている。側壁19のZ1側の面は、図6Aに示すように、Z1方向へ張り出して円弧状に湾曲している。2つの側壁19の形状は、回転軸AXに垂直な平面(Z-X平面)に対して概ね対称である。
【0028】
連結部40は、図6Aに示すように、2つの側壁19をそれぞれY方向に貫通した2つシャフト支持孔42と、この2つのシャフト支持孔42によって支持されたシャフト41を含む。シャフト41のY方向の両端は、第2部材20の後述する側壁25に固定される。シャフト41は、例えば側壁25に対してかしめ加工により固定される。なお、シャフト41を側壁25に固定する方法は、かしめ加工以外の方法でもよい。
【0029】
装身具用留め具1は、開状態から閉状態へ変化する方向へ第1部材10と第2部材20とを回転させる付勢力を発生する付勢部材として、ねじりコイルばね60を有する。ねじりコイルばね60は、図6Aに示すように、2つの側壁19によって挟まれた装身具用留め具1の内部の空間に収容される。ねじりコイルばね60は、螺旋状に巻かれたコイル部61を有しており、このコイル部61の中心の孔にシャフト41が挿通される。またねじりコイルばね60は、コイル部61の両端から延出した2つのアーム部62及び63を有する。一方のアーム部63が第2基部21のZ2側の溝28に突き当たり、他方のアーム部63が第1基部11のZ1側の内面(2つの側壁19の間に位置する内面)に突き当たる。図6Aに示すようにY2側から見て、一方のアーム部63は第2部材20を反時計回りの方向に付勢し、他方のアーム部62は第1基部11を時計回りの方向に付勢する。
【0030】
なお、第1部材10と第2部材20とを付勢する付勢部材は、上述したねじりコイルばね60に限定されない。例えば圧縮コイルバネ、板バネなど、種々の弾性部材を付勢部材として用いてもよい。
【0031】
第1部材10のY方向の幅は、図6Bの切断部端面図に示すように、X方向の全長に渡って概ね等しい。第1部材10のY1側の側面及びY2側の側面は、Y方向に対して概ね垂直な平面をなす。
【0032】
第2部材20は、図2B図3Bなどに示すように、先端部23を有する。先端部23は、第1部材10と第2部材20とを回転させることにより、図7に示すように、第1部材10に対して特定の円弧の軌道3上を移動する。図7では、見やすくするために円弧の軌道3を一本の細い線で描いているが、先端部23の各部分について円弧の軌道を描いた場合、先端部23の全体に対する円弧の軌道3は図7よりも太い線になる。この円弧の軌道3は、第1部材10と第2部材20とが閉状態にあるときに仮想的な基準円5を通過する軌道として定義される。閉状態において、先端部23の少なくとも一部がこの基準円5を貫通する。
【0033】
図8A及び図8Bは、基準円5について説明するための図である。図8Aは、閉状態の装身具用留め具1をY2側から見た側面図であり、図7と対応するように、X方向を紙面の縦方向に対して平行にしている。図8Bは、基準円5をZ方向から見た図である。基準円5は、凹部13の凹み方向(X2方向)における凹部13の最奥部14から更にX2方向へ離れた位置に中心6を持つ。また基準円5は、回転軸AXとX2方向とに平行な平面(すなわちX-Y平面)に位置する。更に基準円5は、図8Bに示すように、引掛け部12が内側から接した円である。図8Bの例において、引掛け部12は、凹部13の最奥部14において基準円5と接している。
【0034】
仮に、基準円5と同様な第2対象部材の開口部に引掛け部12を引っ掛けたとすると、第2対象部材のZ方向の厚みを考慮しない場合、図8Bの例においては、第2対象部材の縁部が凹部13の最奥部14に接触する。このとき、先端部23は基準円5により規定された円弧の軌道3上を移動するため、第2対象部材の縁部とぶつかることがない。従って、引掛け部12を第2対象部材の開口部に引っ掛けた状態で、先端部23を第2対象部材の開口部に円滑に出し入れすることができる。
【0035】
この先端部23は、閉状態にあるとき、基準円5内において凹部13に対してX2方向側に離れた場所に位置する。すなわち、閉状態のときの先端部23は、回転軸AXと平行なY方向から見て、図3Aなどに示すように、凹部13のX2側に位置する。閉状態において先端部23が凹部13のX2側に位置することにより、引掛け部12を第2対象部材の開口部に引っ掛けて吊り下げた場合、図8Bに示すように、先端部23は基準円5内において引掛け部12の凹部13よりも上側に位置する。
【0036】
ここで回転軸AXは、図6A図7などに示すように、凹部13に対してX2方向の逆方向、すなわちX1方向に離れた場所に位置する。そのため、引掛け部12を第2対象部材の開口部に引っ掛けて吊り下げた場合、回転軸AXは凹部13の下側に位置する。この場合、凹部13よりも上側(X2側)を通る先端部23は、図7の円弧の軌道3で示すように、基準円5の近傍において概ねZ方向に進む。引掛け部12を第2対象部材の開口部に引っ掛けて吊り下げた状態においてZ方向が水平方向に対して平行になると、先端部23は、第2対象部材の開口部に対して概ね水平方向に進入する。従って、第2対象部材の開口部に進入するときの先端部23が、開口部の周りの縁部にぶつかり難い姿勢となる。
【0037】
また、先端部23は、図3Aなどに示すように、回転軸AXに平行なY方向から見て、先頭部分24に向かうにつれて第1部材10側に曲がっている。すなわち先端部23は、Y方向から見て、X方向に対して先頭部分24に向かうにつれてZ2側に曲がっている。Y方向から見た先端部23の形状は、後述する第2基部21側からX2方向、Z2方向、X1方向の順番で延伸方向が連続的に変化するように湾曲している。先頭部分24は、図7に示すように、開状態から閉状態へ変化するときに円弧の軌道3の先頭に位置する部分である。従って先端部23は、第2対象部材の開口部に進入する際に、開口部の周りの縁部とぶつかり難くなる。
【0038】
更に、先端部23は、この先頭部分24において回転軸AXに最も近い部分が、閉状態において引掛け部12のX2側の外面17から離れている(図3A図3B)。これにより、装身具用留め具1が開状態と閉状態との間で変化するときに、先端部23の先頭部分24が引掛け部12の外面17に接触して摩耗することを抑制できる。
【0039】
第2部材20は、図3A図6Aなどに示すように、先端部23につながる第2基部21を有する。第2基部21は全体的にX方向へ伸びており、第2基部21のX2側の端に先端部23が設けられている。先端部23は、図4A図5Aなどに示すように、第2基部21側から先頭部分24側に向かうにつれて、回転軸AXに平行なY方向における幅が狭くなっている。これにより、引掛け部12を第2対象部材の開口部に引っ掛けた状態で開状態から閉状態へ変化するときに、先端部23が開口部の縁にぶつかり難くなる。
【0040】
図3A図4Aなどに示すように、第2基部21のZ1側の外面は、Y方向の中央付近において概ねX-Y平面に沿った平面となっており、Y方向の両端側ではZ2方向に湾曲した曲面となっている。
【0041】
第2基部21のX1側の端には、操作部26が設けられている。操作部26は、図6Aに示すように回転軸AXから遠ざかる方向に突出している。図6Aにおいて、操作部26は全体的に丸みを帯びている。操作部26を指などで操作することにより、装身具用留め具1を容易に開閉させることができる。
【0042】
第2部材20は、図2Bなどに示すように、回転軸AXに平行なY方向において対向した一対の側壁25を含む。側壁25は、第2基部21のY方向の両端からZ2方向に延びている。閉状態において、第1部材10の少なくとも一部が一対の側壁25の間に位置する。図3A及び図4Aに示す例では、第1部材10の第1基部11の大部分が閉状態において一対の側壁25の間に位置する。閉状態において一対の側壁25の間に位置する第1部材10の第1基部11は、回転軸AXに対して垂直なX-Z平面に沿う方向に延びている。これにより、一対の側壁25と第1部材10とのY方向における相対的な変位が抑制され易くなる。そのため、第2部材20の側壁25に固定されたシャフト41の軸方向と、第1部材10の2つの側壁19に設けられたシャフト支持孔42による軸方向との傾きが抑制され易くなる。従って、閉状態においてシャフト41の軸方向とシャフト支持孔42の軸方向との傾きを抑制し、シャフト41とシャフト支持孔42との間に加わる不要な力を軽減できる。
【0043】
図4A図5B図6Bの例では、閉状態における第1部材10の第1基部11と第2部材20の側壁25とのY方向における隙間が小さい。これにより、一対の側壁25と第1部材10とのY方向における相対的な変位が抑制され易くなるため、第1部材10における軸方向と第2部材20における軸方向とが傾くことによる連結部40への負担を効果的に低減できる。
【0044】
各側壁25のZ2側の端面は、Z方向に対して概ね垂直な平面をなす。図4Aに示すように、各側壁25のZ2側の端面と第1部材10の底面18とは、閉状態において、Z方向の位置が略揃っている。
【0045】
図4A図5A図5Bなどに示すように、一対の側壁25による装身具用留め具1のY方向の外面(外側面)は、概ねX-Z平面に沿った平面となっている。ただし、装身具用留め具1の外側面は、このような平面に限らず、他の形状にしてもよい。例えば、Y1側の側面をY1側に膨らむように湾曲させるとともに、Y2側の側面をY2側に膨らむように湾曲させてもよい。この場合、装身具用留め具1は、Z方向から見て卵などに似た形状となる。このような形状にすることで、外側面の面積が増えるため、様々な装飾(文字、図形、ロゴなど)を外側面に施し易くなる。
【0046】
図2B図3B図7などに示すように、開状態においては、第1部材10と第2部材20との間に隙間2が生じる。この開状態の隙間2は、第2対象部材の開口部に面した縁部(例えば、図7に示す線状部材50のリング53の開口部55に面した縁部56)が引掛け部12の凹部13に出入り可能となるための通路を形成する。閉状態になると、図2A図3Aなどに示すように、隙間2を通じた凹部13への縁部(図7に示すリング53の縁部56など)の出入りが不能な状態となる。
【0047】
なお、図2A図3Aなどの例では、閉状態において隙間2がほぼ完全に塞がれているが、隙間2を通じた凹部13への縁部の出入りが不能になる程度に微小であれば、閉状態において第1部材10と第2部材20との間に隙間が残っていてもよい。
【0048】
図3Aなどに示すように、第1部材10及び第2部材20は、閉状態において内部空間4を形成する。この内部空間4は、Y方向に貫通しており、第1部材10と第2部材20とにより囲まれた閉領域を形成する。すなわち、第1部材10及び第2部材20は、閉状態において、Y方向に貫通した貫通孔を形成する。
【0049】
閉状態において、内部空間4には、引掛け部12の凹部13と第2部材20の一部の表面とが面している。図3Aの例では、第2部材20の表面として、第2部材20の側壁25の縁部27が内部空間4に面している。この内部空間4に面した第2部材20の表面(側壁25の縁部27)は、回転軸AXに平行なY方向から見た法線ベクトルの方向に応じて分類される2種類の部分(第1部分S1、第2部分S2)を含む。
【0050】
図3Aにおける「N1」は、閉状態において回転軸AXに平行なY方向から見た第1部分S1の各位置における法線ベクトル(以下、「第1法線ベクトルN1」と記す。)の1つを示す。また、図3Aにおける「N2」は、閉状態において回転軸AXに平行なY方向から見た第2部分S2の各位置における法線ベクトル(以下、「第2法線ベクトルN2」と記す。)の1つを示す。第1法線ベクトルN1及び第2法線ベクトルN2は、いずれも、第2部材20を押す方向を向いた法線ベクトルである。図3Aに示すように、第1部分S1の各位置における第1法線ベクトルN1は、開状態となる方向(概ねZ1方向)へ向かう成分を含んでいる。一方、第2部分S2の各位置における第2法線ベクトルN2は、開状態となる方向に対して逆の方向(概ねZ2方向)へ向かう成分を含んでいる。
【0051】
第1部分S1は、図3Aに示すように、Y方向から見て、回転軸AXから離れるほど第1部材10の第1基部11から遠ざかる方向(Z1方向)に傾斜する。第2部分S2は、回転軸AXから離れるほど第1部材10の第1基部11へ近づく方向(Z2方向)に傾斜する。
【0052】
内部空間4に位置する物体からの外力によってX-Z平面に沿う方向に第1部分S1が押されると、物体からの外力に含まれる第1法線ベクトルN1と同じ方向の成分が第2部材20に作用する。第1部分S1の各位置における第1法線ベクトルN1は、開状態となる方向(概ねZ1方向)へ向かう成分を含んでいるため、第1法線ベクトルN1と同じ方向の外力の成分が第2部材20に作用すると、第2部材20は開状態となる方向に回転し易い。
一方、内部空間4に位置する物体からの外力によってX-Z平面に沿う方向に第2部分S2が押されると、物体からの外力に含まれる第2法線ベクトルN2と同じ方向の成分が第2部材20に作用する。第2部分S2の各位置における第2法線ベクトルN2は、開状態となる方向に対して逆の方向(概ねZ2方向)へ向かう成分を含んでいるため、第2法線ベクトルN2と同じ方向の外力の成分が第2部材20に作用すると、第2部材20は開状態となる方向に回転し難い。
【0053】
本実施形態に係る装身具用留め具1では、図3Aに示すように、第1部分S1の長さが第2部分S2の長さに比べて短い。そのため、第2対象部材の開口部の縁部(図7に示すリング53の縁部56など)が内部空間4に位置する場合、この縁部は、第2部材20の表面(側壁25の縁部27)おいて第1部分S1よりも第2部分S2に当たり易くなる。これにより、第2部材20は第1部材10に対して開状態となる方向に回転し難くなる。従って、装身具用留め具1を第2対象部材に連結した状態において、装身具用留め具1の閉状態を安定的に維持することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る装身具用留め具1では、閉状態において、図3Aに示すように、内部空間4に面した引掛け部12の端部121と第2部材20の側壁25の縁部27との間に隙間Gが形成される。回転軸AXに平行なY方向から見た隙間Gの大きさは、内部空間4に挿入可能な第2対象部材の開口部の周辺部分(図7に示すリング53など)が持つY方向に垂直な断面の太さに比べて小さい。これにより、内部空間4に位置した第2対象部材の開口部の縁部(図7に示すリング53の縁部56など)が隙間Gを通過して第1部分S1に到達し難くなるため、第2対象部材の縁部が第1部分S1に対して更に当たり難くなる。従って、装身具用留め具1の閉状態を更に安定的に維持することができる。
【0055】
次に、上述した装身具用留め具1による連結操作の一例について説明する。ここでは、線状部材50の端部52に設けられたリング53の開口部55を第2対象部材の開口部として、装身具用留め具1を第2対象部材に連結させる場合の操作を説明する。
【0056】
まず図7に示すように、第2対象部材としてのリング53をぶら下がった状態とする。例えば線状部材50がブレスレットの場合、線状部材50を手首に載せて、線状部材50の端部52(リング53)を垂らすだけでよい。次に、装身具用留め具1の取付部30付近を指でつまんで操作部26を押し下げ、第1部材10及び第2部材20を開状態にする。そして、この開状態を維持したまま、ぶら下げた状態にあるリング53の開口部55に引掛け部12を引っ掛ける。この引っ掛け動作は、引掛け部12の凹部13をリング53の縁部56に位置させるだけなので、非常に簡単に行うことができる。最後に、操作部26に加える力を緩めて押し下げを止めると、ねじりコイルばね60により付勢された第1部材10と第2部材20とが、開状態から閉状態となる方向へ自ら回転する。この時、第2部材20の先端部23がリング53の縁にぶつかることなくリング53の開口部55に挿入され、装身具用留め具1が閉状態となる。その結果、リング53の縁部56が内部空間4(図3A)に閉じ込められて抜け出せない状態となり、装身具用留め具1とリング53との連結が完了する。
【0057】
なお、上述した連結操作は一例であり、これ以外の方法でも装身具用留め具1の連結操作は可能である。例えば、第2対象部材としてのリング53を片手でつまみ、装身具用留め具1をもう片方の手でつまんで、両者を連結させてもよい。この場合も、鉤状のものをリング状のものに引っ掛ける場合と殆ど変わりがないため、連結操作を非常に簡単に行うことができる。
【0058】
次に、上述した装身具用留め具1による分離操作の一例について説明する。ここでも、線状部材50のリング53を第2対象部材として、装身具用留め具1をリング53から分離させる場合の操作を説明する。
【0059】
まず装身具用留め具1の取付部30付近を指でつまんで操作部26を押し下げ、第1部材10及び第2部材20を開状態にする。そして、この開状態を維持したまま、引掛け部12の凹部13からリング53の縁部56を脱出させる。この場合、リング53は、図7に示すようにぶら下がった状態でもよいし、衣服などの物の上に置かれた状態でもよい。リング53がぶら下がった状態のときは、連結操作と逆の動作により、引掛け部12の凹部13をリング53の縁部56から離す。また、リング53が物の上に置かれた状態のときは、開状態にした装身具用留め具1を図7に示すように引掛け部12が上側に位置するように軽く持ち上げることで、凹部13に留まっていた縁部56が下側に移動し、凹部13から離れる。縁部56が凹部13から離れた状態で操作部26の押し下げを止めると、装身具用留め具1が再び閉状態となり、装身具用留め具1とリング53との分離が完了する。
【0060】
なお、上述した分離操作は一例であり、これ以外の方法でも装身具用留め具1の分離操作は可能である。例えば、第2対象部材としてのリング53を片手でつまみ、装身具用留め具1をもう片方の手でつまんで、両者を分離させてもよい。この場合も、リング状のものから鉤状のもの分離する場合と殆ど変わりがないため、分離操作を非常に簡単に行うことができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る装身具用留め具1では、凹部13が取付部30から離れる方向(X2方向)に凹んでいる。これにより、引掛け部12を第2対象部材の開口部に引っ掛けて吊り下げた場合(図7)、開口部の縁部と凹部13との接触点が凹部13の最奥部14に向かってシフトし易くなり、引掛け部12を第2対象部材の開口部に対して安定的に引っ掛けることができる。また、第2部材20の先端部23は、第1部材10と第2部材とを回転させることにより、第1部材10に対して円弧の軌道3上を移動する。この円弧の軌道3は、閉状態において仮想的な基準円5(図8A図8B)を通過する軌道であり、先端部23の少なくとも一部が、閉状態において基準円5を通過する。基準円5は、X2方向における凹部13の最奥部14からX2方向へ離れた位置に中心6を持ち、回転軸AXとX2方向とに平行な平面上に位置し、引掛け部12が内側から接する円である。この基準円5を第2対象部材の開口部に見立てた場合、引掛け部12を開口部(基準円5)に対して安定的に引っ掛けて吊り下げることができる。また、この場合、先端部23の少なくとも一部を開口部(基準円5)の縁に衝突させることなく円滑に開口部(基準円5)へ挿入し、装身具用留め具1を閉状態にすることができる。従って、基準円5に準じた開口部を持つ第2対象部材に対して、片手であっても容易に連結操作を行うことが可能であり、連結操作と反対の分離操作も容易に行うことができる。
【0062】
本実施形態に係る装身具用留め具1では、閉状態の先端部23が、基準円5において凹部13に対してX2方向に離れた場所に位置する。これにより、閉状態において第1対象部材と第2対象部材とが互いに離れる方向に引っ張られた場合、第2対象部材の縁部が凹部13の最奥部14付近で凹部13をX2方向に押す一方、凹部13のX2側において先端部23が引掛け部12に重ねられた状態となる。すなわち、凹部13に加わる外力の方向(X2方向)に対して、引掛け部12と先端部23とが多重に配置される。そのため、第1対象部材と第2対象部とが引っ張られた場合における装身具用留め具1の強度が高くなり、連結状態を安定に維持できる。
【0063】
また、本実施形態に係る装身具用留め具1では、閉状態の先端部23が基準円5において凹部13に対してX2方向に離れた場所に位置することから、引掛け部12を第2対象部材の開口部に引っ掛けて吊り下げた場合、先端部23が引掛け部12の凹部13よりも上側に位置する(図8A図8B)。これにより、先端部23は、第2対象部材において開口部の下側の縁に接する引掛け部12よりも、開口部の中央寄り位置し易くなる。そのため、先端部23が開口部の縁に接触し難くなる。
【0064】
本実施形態に係る装身具用留め具1では、引掛け部12の凹部13が回転軸AXに対して垂直なX2方向に凹んでおり、回転軸AXが凹部13に対してX2方向の逆方向(X1方向)に離れた場所に位置する。そのため、引掛け部12を第2対象部材の開口部に引っ掛けて吊り下げた場合、回転軸AXは凹部13の下側に位置するようになり、凹部13の上側(X2側)を通る先端部23は、第2対象部材の開口部に対して概ね水平方向(Z方向)に進入する(図7)。従って、第2対象部材の開口部に進入するときの先端部23が、開口部の周りの縁部にぶつかり難くなる。
また、回転軸AXが凹部13の下側に位置する場合、回転軸AXに近い場所で行われる開閉操作(操作部26の押し下げなど)が、凹部13の下側に近い場所で行われることになるため、引掛け部12の吊り下げ状態に影響を与えずに開閉操作を行い易くなる。
【0065】
本実施形態に係る装身具用留め具1では、閉状態において、第1部材10の引掛け部12が第2部材20に接触することにより、第1部材10に対する第2部材20の回転が規制される。これにより、第2部材20の先端部23などが第2対象部材に直接当たって第2部材20の回転が規制される場合に比べて、付勢部材(ねじりコイルばね60)による力が第1部材10と第2部材20との間に安定して加わるため、閉状態を安定に保つことができる。また、第2対象部材が貫通孔としての内部空間4を自由に動くことができるため、第2対象部材に対する装身具用留め具1の可動範囲が広くなるとともに、装身具用留め具1と第2対象部材とが擦れ合うことによる摩耗を抑えることができる。更に、引掛け部12と第2部材20とが接触することにより、開状態における第1部材10と第2部材20との隙間2(図2B図3B)を確実に塞ぐことができる。
【0066】
本実施形態に係る装身具用留め具1では、回転軸AXに平行なY方向から見て、引掛け部12が端部121に向かうにつれて第2部材20側に曲がっているとともに、先端部23が先頭部分24に向かうにつれて第1部材10側に曲がっている(図3B)。これにより、装身具用留め具1を第2対象部材の開口部に連結する場合、引掛け部12と先端部23のそれぞれを開口部に挿通させ易くなる。
【0067】
本実施形態に係る装身具用留め具1では、先端部23の先頭部分24において回転軸AXに最も近い部分が、閉状態において、X2側の引掛け部12の外面17から離れている(図3A)。これにより、装身具用留め具1の開閉時に先端部23の先頭部分24が引掛け部12の外面17に接触し難くなるため、引掛け部12及び先端部23の摩耗を抑制できる。
【0068】
本実施形態に係る装身具用留め具1では、閉状態において、第1部材10の少なくとも一部が一対の側壁25の間に位置し、回転軸AXに垂直な平面に沿う方向に延びている。これにより、一対の側壁25と第1部材10とのY方向における相対的な変位が抑制され易くなる。そのため、第1部材10における軸方向と第2部材20における軸方向とが傾くことによる連結部40への負担(例えば、シャフト41とシャフト支持孔42との間に加わる不要な力)を軽減できる。
【0069】
本実施形態に係る装身具用留め具1では、閉状態において内部空間4に面した第2部材20の表面が、第1部分S1及び第2部分S2を含んでいる。閉状態において回転軸AXに平行なY方向から見た第1部分S1の各位置の第1法線ベクトルN1(第2部材20を押す方向の法線ベクトル)は、開状態となる方向へ向かう成分を含んでおり、閉状態において回転軸AXに平行なY方向から見た第2部分S2の各位置の第2法線ベクトルN2(第2部材20を押す方向の法線ベクトル)は、開状態となる方向に対して逆の方向へ向かう成分を含んでいる。そして、閉状態において回転軸AXに平行なY方向から見て、第1部分S1の長さが第2部分S2の長さに比べて短い(図3A)。これにより、内部空間4に位置する第2対象部材の開口部の縁部が内部空間4に面した第2部材20の表面(側壁25の縁部27)に当たる場合、縁部は第1部分S1に比べて第2部分S2に当たり易くなり、第2部材20は第1部材10に対して開状態となる方向に回転し難くなる。従って、装身具用留め具1を第2対象部材に連結した状態において、装身具用留め具1の閉状態を安定的に維持できる。
【0070】
本実施形態に係る装身具用留め具1では、先端部23の第2基部21側から先頭部分24側に向かうにつれて、回転軸AXに平行なY方向における先端部23の幅が狭くなっている。これにより、引掛け部12を第2対象部材の開口部に引っ掛けた状態で開状態から閉状態へ変化するときに、先端部23を開口部の縁にぶつかり難くすることができる。
【0071】
本実施形態に係る装身具用留め具1では、回転軸AXから遠ざかる方向に突出した操作部26が第2部材20に設けられているため、第2部材20を第1部材10に対して容易に回転させることができる。
【0072】
本実施形態に係る装身具用留め具1では、開状態から閉状態に変化する方向へ回転するように、第1部材10と第2部材20とが付勢部材(ねじりコイルばね60)で付勢される。これにより、第1部材10と第2部材20とを開状態から閉状態へ手動で回転させる必要がないため、連結操作及び分離操作を更に容易に行うことができる。
【0073】
次に、本実施形態に係る装身具用留め具1の変形例について、図9及び図10を参照して説明する。
【0074】
図9は、本実施形態に係る装身具用留め具1の一変形例を示す図であり、第1部材10の引掛け部12付近を拡大した側面図である。図9に示す引掛け部12の凹部13は、回転軸AXに平行なY方向から見て、第1基部11につながる一端15と第1基部11から離れて第2部材20側(Z1側)に向かう他端16との間で円弧状に湾曲している。そして、X2方向に垂直なZ方向における凹部13の最奥部14の位置が、回転軸AXに平行なY方向から見て、一端15と他端16との中間より一端15に近い。すなわち、図9に示す距離D1が距離D2に比べて短い。
【0075】
このような構成によれば、第2対象部材の縁部が凹部13を押す場合、縁部は、第1基部11に比較的近い位置にある最奥部14付近で凹部13を押す。例えば、第2対象部材が引っ張られたとき、縁部は第1基部11に近い最奥部14付近で凹部13を押す。そのため、第1基部11の底面18が衣服などに接触している状態で、第2対象部材に引っ張り力が加わっても、装身具用留め具1のZ方向の姿勢を逆さまに反転させ難くすることができる。
【0076】
図10は、本実施形態に係る装身具用留め具1の他の一変形例を示す図であり、係止部70を備えた装身具用留め具1の側面図である。図10に示す変形例の装身具用留め具1は、第1部材10と第2部材20との閉状態を維持する手段として、係止部70を有する。係止部70は、閉状態において第1部材10と第2部材20とを係止し、閉状態が容易に解除されないようにする。図10の例において、係止部70は、先端部23に設けられた係止用凸部71と、引掛け部12に設けられた係止用凹部72とを有する。閉状態において係止用凸部71が係止用凹部72に嵌ることで、第1部材10と第2部材20との閉状態を維持できる。
【0077】
なお、図10の例では先端部23に係止用凸部71を設け、引掛け部12に係止用凹部72を設けているが、他の変形例では、先端部23に係止用凹部を設け、引掛け部12に係止用凸部を設けてもよい。また、係止用凸部と係止用凹部を設ける場所は、先端部23及び引掛け部12以外でもよい。閉状態において第1部材10と第2部材20とが回転しないようにして閉状態を維持する手段は、上述のような凸部と凹部との嵌り合いなどによって第1部材10と第2部材20とを係止するものに限定されない。例えば、第1部材10と第2部材20との摩擦を生じさせる手段によって回転を抑制することにより、閉状態を維持するようにしてもよい。
【0078】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る装身具用留め具1Aについて説明する。図11Aは、第2の実施形態に係る装身具用留め具1Aの一例を示す図であり、閉状態の側面図である。図11Bは、図11Aに示す側面図の一部を抜き出して示した図である。図11Cは、装身具用留め具1Aの平面図である。図12は、装身具用留め具1Aの開状態の側面図である。図13は、装身具用留め具1Aを線状部材の一端に引っ掛けて吊り下げた状態を示す図である。図14A及び図14Bは、基準円について説明するための図である。
【0079】
第2の実施形態に係る装身具用留め具1Aも、第1の実施形態に係る装身具用留め具1と同様に、第1対象部材と第2対象部材とを分離可能に連結する。第2の実施形態に係る装身具用留め具1Aは、第1の実施形態に係る装身具用留め具1と比較して、取付部を連結部に設けている点、第1部材が有する一対の壁部に第2部材が挟まれている点、及び、閉状態を維持する手段として磁石を用いる点が主に相違している。
【0080】
装身具用留め具1と装身具用留め具1Aとの対応する構成要素には、符号の先頭に同一の数字を付与し、装身具用留め具1Aの構成要素についてのみ、符号の末尾に「A」を付与している。
【0081】
装身具用留め具1Aは、第1部材10A及び第2部材20Aと、第1対象部材に取り付けられる取付部30Aと、連結部40Aとを有する。連結部40A(図11C)は、第1部材10Aと第2部材20Aとを回転可能に連結する。装身具用留め具1Aは、第1部材10Aと第2部材20Aとが連結部40Aにおいて回転することにより、開状態又は閉状態となる(図11A図12)。第1部材10Aと第2部材20Aとの回転軸AXは、図11Cに示すように、Y方向に平行である。
【0082】
取付部30Aは、図11A図11Cなどに示すように、連結部40A(シャフト41A)に設けられている。取付部30Aは、例えば図13に示すように、線状部材50Aの一方の端部51Aを構成するリング54A(第1対象部材)が取り付けられる。取付部30Aは、図11A図11Cなどに示すように、Y方向に離間して配置された2つの腕部32Aと、2つの腕部32AにおけるX1側の一端を接続した中間部33Aとを有する。2つの腕部32AにおけるX2側の他端は、Y方向に延びたシャフト41Aの両端に固定される。中間部33Aは、Z方向に貫通した孔31Aを有しており、この孔31Aにリング54Aが挿通される(図13)。線状部材50Aは、図1に示す線状部材50と同様に、複数のコマ部57Aと、隣り合う2つのコマ部57Aを連結する連結部材58Aとを有する。リング54Aは、線状部材50Aの末端のコマ部57Aに固定される。
【0083】
第1部材10Aは、図11A図12などに示すように、引掛け部12Aを有する。引掛け部12Aは、第2対象部材が持つ開口部に引っ掛けられる。図13の例において、引掛け部12Aは、線状部材50Aの他方の端部52Aを構成するリング53Aの開口部55Aに引っ掛けられる。
【0084】
図11Cなどに示すように、取付部30A(シャフト41A)は引掛け部12Aから見てX1方向に位置する。引掛け部12Aは、取付部30A(シャフト41A)から離れる方向(第1方向ともいう)に凹んだ凹部13Aを有する。図11A図12などに示すように、凹部13Aは、X2方向に凹んでいる。凹部13Aが凹むX2方向は、回転軸AX(回転軸AXに平行なY方向)に対して垂直である。凹部13Aは、例えば図12などに示すように、Y方向から見て取付部30A(シャフト41A)に向いた引掛け部12Aの縁部又は面である。
【0085】
引掛け部12Aは、図12図13などに示すように、第2対象部材が持つ開口部(図13の例では、線状部材50Aの他方の端部52Aを構成するリング53Aの開口部55A)に挿通される端部121Aを持つ。引掛け部12Aは、図12などに示すように、回転軸AXに平行なY方向から見て、端部121Aに向かうにつれて第2部材20A側に曲がっている。すなわち引掛け部12Aは、Y方向から見て、X方向に対して端部121Aに向かうにつれてZ1側に曲がっている。Y方向から見た引掛け部12Aの形状は、後述する第1基部11A側からX2方向、Z1方向、X1方向の順番で延伸方向が連続的に変化するように湾曲している。
【0086】
図11に示すように、閉状態では、第1部材10Aの引掛け部12Aが第2部材20Aに接触することによって、第1部材10Aに対する第2部材20Aの回転が規制される。
【0087】
第1部材10Aは、図11A図12などに示すように、引掛け部12Aにつながる第1基部11Aを有する。第1基部11Aは、全体的にX方向に沿う方向へ伸びており、第1基部11AのX1側の端に連結部30Aのシャフト41Aが取り付けられ、第1基部11AのX2側の端に引掛け部12Aが設けられている。第1基部11Aは、回転軸AXに平行なY方向から見て、X方向に延びた底面18Aを持つ。底面18Aは、第1基部11AのZ2側の表面であり、Z方向に対して概ね垂直な平面をなす。
【0088】
第2部材20Aに面する第1基部11AのZ1側の内面101Aは、図12に示すように、X2側の端において引掛け部12Aの凹部13Aと連続的につながっている。凹部13Aは、回転軸AXに平行なY方向から見て、第1基部11Aにつながる一端と第1基部11Aから離れて第2部材20A側(Z1側)に向かう他端との間で円弧状に湾曲している。第1基部11Aの内面101Aは、この湾曲した凹部13Aの一端からX1方向へ延びており、Z方向に対して概ね垂直な平面をなす。
【0089】
第1部材10は、図11A図11C及び図12に示すように、回転軸AXに平行なY方向において対向した一対の側壁19Aを有する。側壁19Aは、それぞれ内面101AからZ1方向に立ち上がっている。第2部材20AのX1側に近い部分(第2基部21A)が、2つの側壁19Aに挟まれている。2つの側壁19Aの形状は、回転軸AXに垂直な平面(Z-X平面)に対して概ね対称である。
【0090】
連結部40Aは、図11A及び図11Cに示すように、第2部材20Aを貫通したシャフト支持孔42Aと、2つの側壁19AをそれぞれY方向に貫通した2つシャフト支持孔43Aと、1つのシャフト支持孔42A及び2つのシャフト支持孔43Aによって支持されたシャフト41Aを含む。シャフト41AのY方向の両端は、取付部30Aの2つの腕部32Aに固定されている。シャフト41Aは、例えば腕部32Aと一体に形成されてもよいし、溶接などの方法で腕部32Aに固定されてもよい。
【0091】
一対の側壁19Aの間に位置する第2部材20Aの第2基部21Aは、回転軸AXに対して垂直なX-Z平面に沿って広がっている。これにより、一対の側壁19Aと第2部材20AとのY方向における相対的な変位が抑制され易くなる。そのため、第2部材20Aのシャフト支持孔42Aにより案内される軸方向と、一対の側壁19Aのシャフト支持孔43Aにより案内される軸方向との傾きが抑制され易くなる。従って、これらの軸方向が傾くことによって各シャフト支持孔(42A、43A)とシャフト41Aとの間に加わる不要な力を軽減できる。
【0092】
第2部材20Aは、図11A及び図12に示すように、先端部23Aを有する。先端部23Aは、第1部材10Aと第2部材20Aとを回転させることにより、図13に示すように、第1部材10Aに対して特定の円弧の軌道3A上を移動する。先端部23Aの各部分について円弧の軌道を描いた場合、先端部23Aの全体に対する円弧の軌道3Aは図13よりも太い線になる。この円弧の軌道3Aは、第1部材10Aと第2部材20Aとが閉状態にあるときに仮想的な基準円5Aを通過する軌道として定義される。閉状態において、先端部23Aの少なくとも一部がこの基準円5Aを貫通する。
【0093】
図14A及び図14Bは、基準円5Aについて説明するための図である。図14Aは、閉状態の装身具用留め具1AをY2側から見た側面図であり、図13と対応するように、X方向を紙面の縦方向に対して平行にしている。図14Bは、基準円5AをZ方向から見た図である。基準円5Aは、X2方向(凹部13Aの凹み方向)における凹部13Aの最奥部14Aから更にX2方向へ離れた位置に中心6Aを持つ。また基準円5Aは、回転軸AXとX2方向とに平行な平面(すなわちX-Y平面)に位置する。更に基準円5Aは、図14Bに示すように、引掛け部12Aが内側から接した円である。図14Bの例において、引掛け部12Aは、凹部13Aの最奥部14A付近において基準円5Aと接している。
【0094】
仮に、基準円5Aと同様な第2対象部材の開口部に引掛け部12Aを引っ掛けたとすると、第2対象部材のZ方向の厚みを考慮しない場合、図14Bの例においては、第2対象部材の縁部が凹部13Aに当接する。このとき、先端部23Aは基準円5Aにより規定された円弧の軌道3A上を移動するため、第2対象部材の縁部とぶつかることがない。従って、引掛け部12Aを第2対象部材の開口部に引っ掛けた状態で、先端部23Aを第2対象部材の開口部に円滑に出し入れすることができる。
【0095】
この先端部23Aは、閉状態にあるとき、基準円5A内において凹部13Aに対してX2方向側に離れた場所に位置する。すなわち、閉状態のときの先端部23Aは、回転軸AXと平行なY方向から見て、凹部13AのX2側に位置する(図11A)。閉状態において先端部23Aが凹部13AのX2側に位置することにより、引掛け部12Aを第2対象部材の開口部に引っ掛けて吊り下げた場合、図14Bに示すように、先端部23Aは引掛け部12Aの凹部13Aよりも上側に位置する。
【0096】
ここで回転軸AXは、図11Aなどに示すように、凹部13Aに対してX2方向の逆方向、すなわちX1方向に離れた場所に位置する。そのため、引掛け部12Aを第2対象部材の開口部に引っ掛けて吊り下げた場合、回転軸AXは凹部13Aの下側に位置する。この場合、凹部13Aよりも上側(X2側)を通る先端部23Aは、図13の円弧の軌道3Aで示すように、基準円5Aの近傍において概ねZ方向に進む。引掛け部12Aを第2対象部材の開口部に引っ掛けて吊り下げた状態においてZ方向が水平方向に対して平行になると、先端部23Aは、第2対象部材の開口部に対して概ね水平方向に進入する。従って、第2対象部材の開口部に進入するときの先端部23Aが、開口部の周りの縁部にぶつかり難い姿勢となる。
【0097】
また、先端部23Aは、図11Aなどに示すように、回転軸AXに平行なY方向から見て、先頭部分24Aに向かうにつれて第1部材10A側に曲がっている。すなわち先端部23Aは、Y方向から見て、X方向に対して先頭部分24Aに向かうにつれてZ2側に曲がっている。Y方向から見た先端部23Aの形状は、後述する第2基部21A側からX2方向、Z2方向、X1方向の順番で延伸方向が連続的に変化するように湾曲している。先頭部分24Aは、図13に示すように、開状態から閉状態へ変化するときに円弧の軌道3Aの先頭に位置する部分である。従って先端部23Aは、第2対象部材の開口部に進入する際に、開口部の周りの縁部とぶつかり難くなる。
【0098】
更に、先端部23Aは、この先頭部分24Aにおいて回転軸AXに最も近い部分が、閉状態において引掛け部12AのX2側の外面17Aから離れている(図11A)。これにより、装身具用留め具1Aが開状態と閉状態との間で変化するときに、先端部23Aの先頭部分24Aが引掛け部12Aの外面17Aに接触して摩耗することを抑制できる。
【0099】
第2部材20Aは、図11A図11C図12などに示すように、先端部23Aにつながる第2基部21Aを有する。第2基部21Aは、X-Z平面に平行な板状の形状を持ち、全体的にX方向に沿う方向へ伸びている。第2基部21AのX2側の端に先端部23Aが設けられ(図11A)、第2基部21AのX1側にはシャフト支持孔42Aが設けられている(図11C)。第2基部21AのZ2側には、閉状態において第1基部11AのZ1側の内面101Aに接する底面201Aと、閉状態において後述する内部空間4Aに面する縁部27Aと、閉状態において引掛け部12Aに接する側縁202Aとを持つ。閉状態において、底面201Aは概ねX方向に平行であり、縁部27Aは内面101A側から概ねZ1方向に延びている。第2基部21Aは、底面201Aに対応する部分においてZ方向の幅が大きく、側縁202Aに対応する部分においてZ方向の幅が小さい。
【0100】
第2基部21AのX1側の端には、操作部26Aが設けられている。操作部26Aは、図11Aに示すように回転軸AXから遠ざかる方向に突出している。操作部26Aを指などで操作することにより、装身具用留め具1Aを容易に開閉させることができる。
【0101】
装身具用留め具1Aは、閉状態を維持する手段として、第1部材10Aに設けられた磁石81Aと、第2部材20Aに設けられた磁石82Aとを有する。図11Aに示すように、磁石81Aは第1基部11Aの内面101A付近に埋め込まれ、磁石82Aは第2基部21Aの底面201A付近に埋め込まれる。閉状態において、第1基部11Aの内面101Aと第2基部21Aの底面201Aとが接すると、第1基部11Aに設けられた磁石81Aと第2基部21に設けられた磁石82Aとが図11Aに示すように近接する。これにより、磁石81Aと磁石82Aとが磁力によって引き合い、第1基部11Aの内面101Aと第2基部21Aの底面201Aとが接した状態である閉状態が維持される。磁石81A及び磁石82Aの一方は軟磁性体でもよい。
【0102】
図12に示すように、開状態においては、第1部材10Aと第2部材20Aとの間に隙間2Aが生じる。この開状態の隙間2Aは、第2対象部材の開口部に面した縁部(線状部材50Aのリング53Aの開口部55Aに面した縁部56A)が引掛け部12Aの凹部13Aに出入り可能となるための通路を形成する。閉状態になると、図11Aに示すように、隙間2Aを通じた凹部13Aへの縁部(リング53Aの縁部56A)の出入りが不能な状態となる。
【0103】
図11Aに示すように、第1部材10A及び第2部材20Aは、閉状態において内部空間4Aを形成する。この内部空間4Aは、Y方向に貫通しており、第1部材10Aと第2部材20Aとにより囲まれた閉領域を形成する。すなわち、第1部材10A及び第2部材20Aは、閉状態において、Y方向に貫通した貫通孔を形成する。
【0104】
閉状態において、内部空間4Aには、引掛け部12Aの凹部13Aと第2部材20Aの表面とが面している。図11Aの例では、第2部材20Aの表面として、第2部材20Aの第2基部21Aの縁部27Aが内部空間4Aに面している。この内部空間4Aに面した第2部材20Aの表面(第2基部21Aの縁部27A)は、回転軸AXに平行なY方向から見た法線ベクトルの方向に応じて分類される2種類の部分(第1部分S3及びS4、第2部分S5)を含む。
【0105】
図11Bにおける「N3」及び「N4」は、閉状態において回転軸AXに平行なY方向から見た第1部分S3及びS4の各位置における法線ベクトル(以下、それぞれ「第1法線ベクトルN3」、「第1法線ベクトルN4」と記す。)の1つをそれぞれ示す。また、図11Bにおける「N5」は、閉状態において回転軸AXに平行なY方向から見た第2部分S5の各位置における法線ベクトル(以下、「第2法線ベクトルN5」と記す。)の1つを示す。第1法線ベクトルN3、第1法線ベクトルN4及び第2法線ベクトルN5は、いずれも、第2部材20Aを押す方向を向いた法線ベクトルである。図11Bに示すように、第1部分S3の各位置における第1法線ベクトルN3及び第1部分S4の各位置における第1法線ベクトルN4は、開状態となる方向(概ねZ1方向)へ向かう成分をそれぞれ含んでいる。一方、第2部分S5の各位置における第2法線ベクトルN5は、開状態となる方向に対して逆の方向(概ねZ2方向)へ向かう成分を含んでいる。
【0106】
第1部分S3及びS4は、図11Aに示すように、Y方向から見て、回転軸AXから離れるほど第1部材10Aの第1基部11Aから遠ざかる方向(Z1方向)に傾斜する。第2部分S5は、図11に示すように、回転軸AXから離れるほど第1部材10Aの第1基部11Aへ近づく方向(Z2方向)に傾斜する。
【0107】
本実施形態に係る装身具用留め具1Aでは、図11Aに示すように、第1部分S3及びS4を加えた長さが、第2部分S5の長さに比べて短い。そのため、第2対象部材の開口部の縁部(リング53Aの縁部56A)が内部空間4Aに位置する場合、この縁部は、第2部材20Aの表面(第2基部21Aの縁部27A)において第1部分S3及びS4よりも第2部分S5に当たり易くなる。これにより、第2部材20Aは第1部材10Aに対して開状態となる方向に回転し難くなる。
【0108】
また、本実施形態に係る装身具用留め具1Aでは、閉状態において、図11Aに示すように、内部空間4Aに面した引掛け部12Aの端部121Aと第2部材20Aの第1基部11Aの縁部27Aとの間に隙間GAが形成される。回転軸AXに平行なY方向から見た隙間GAの大きさは、内部空間4Aに挿入可能な第2対象部材の開口部の周辺部分(図13に示すリング53Aなど)が持つY方向に垂直な断面の太さに比べて小さい。これにより、内部空間4Aに位置した第2対象部材の開口部の縁部(図13に示すリング53Aの縁部56Aなど)が隙間GAを通過して第1部分S4に到達し難くなるため、第2対象部材の縁部が第1部分S4に対して更に当たり難くなる。
【0109】
次に、上述した装身具用留め具1Aによる連結操作の一例について説明する。ここでは、線状部材50Aの端部52Aに設けられたリング53Aの開口部55Aを第2対象部材の開口部として、装身具用留め具1Aを第2対象部材に連結させる場合の操作を説明する。
【0110】
まず図13に示すように、第2対象部材としてのリング53Aをぶら下げた状態とする。例えば、線状部材50Aを手首に載せて、端部52Aのリング53Aを下に垂らす。次に、装身具用留め具1Aの操作部26Aを磁石81A及び82Aの磁力に抗して押し下げ、第1部材10A及び第2部材20Aを開状態にする。装身具用留め具1Aは付勢部材によって第1部材10A及び第2部材20Aを付勢していないため、操作部26Aを押し続けなくても開状態が維持される。このとき、X2方向を上方に向けることで、図13に示すような状態となり、開状態が維持され易い。
【0111】
装身具用留め具1Aを開状態にしたあと、ぶら下げた状態にあるリング53Aの開口部55Aに引掛け部12Aを引っ掛ける。この引っ掛け動作は、引掛け部12Aの凹部13Aをリング53Aの縁部56Aに位置させるだけなので、非常に簡単に行うことができる。引掛け部12Aをリング53Aの縁部56Aに引っ掛けたあと、装身具用留め具1Aから一旦手をはなし、図13に示すように装身具用留め具1Aを吊り下げた状態で、第2部材20Aを第1部材10Aに向かって回転させる。これにより、装身具用留め具1Aとリング53Aとの連結操作が完了する。なお、図13に示す状態の装身具用留め具1Aは、非常に安定してリング53Aにぶら下がっているため、装身具用留め具1Aから一旦手を離しても、引掛け部12Aがリング53Aから外れて脱落することはない。
【0112】
なお、上述した連結操作は一例であり、これ以外の方法でも装身具用留め具1Aの連結操作は可能である。例えば、第2対象部材としてのリング53Aを片手でつまみ、装身具用留め具1Aをもう片方の手でつまんで、両者を連結させてもよい。この場合も、連結操作を非常に簡単に行うことができる。
【0113】
次に、上述した装身具用留め具1Aによる分離操作の一例について説明する。ここでも、線状部材50Aのリング53Aを第2対象部材として、装身具用留め具1Aをリング53Aから分離させる場合の操作を説明する。
【0114】
まず装身具用留め具1Aの取付部30A付近を指でつまんで操作部26Aを押し下げ、第1部材10A及び第2部材20Aを開状態にする。そして、この開状態のまま、引掛け部12Aの凹部13Aからリング53Aの縁部56Aを脱出させる。この場合、リング53Aは、図13に示すようにぶら下がった状態でもよいし、衣服などの物の上に置かれた状態でもよい。リング53Aがぶら下がった状態のときは、連結操作と逆の動作により、引掛け部12Aの凹部13Aをリング53Aの縁部56Aから離す。また、リング53Aが物の上に置かれた状態のときは、開状態にした装身具用留め具1Aを図13に示すように引掛け部12Aが上側に位置するように軽く持ち上げることで、凹部13Aに留まっていた縁部56Aが下側に移動し、凹部13Aから離れる。これにより、装身具用留め具1Aとリング53Aとの分離が完了する。
【0115】
なお、上述した分離操作は一例であり、これ以外の方法でも装身具用留め具1Aの分離操作は可能である。例えば、第2対象部材としてのリング53Aを片手でつまみ、装身具用留め具1Aをもう片方の手でつまんで、両者を分離させてもよい。
【0116】
以上説明したように、第2の実施形態に係る装身具用留め具1Aにおいても、既に説明した第1の実施形態に係る装身具用留め具1と同様の構成を有することにより、同様の効果を得ることが可能である。
【0117】
第2の実施形態に係る装身具用留め具1Aでは、閉状態を維持する手段として磁石(81A、82A)を用いているため、第1の実施形態に係る装身具用留め具1における付勢部材(ねじりコイルばね60)を省略することが可能であり、構成を簡易化できる。
【0118】
なお、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態では、引掛け部(10、10A)が鉤状に曲がっている例を挙げたが、本開示の引掛け部の形状はこれらの例に限定されない。すなわち引掛け部の形状は、少なくとも凹部を持つ形状であり、第2対象部材の開口部に対応した基準円に先端部と共に挿入可能な形状であれば、他の形状でもよい。
【0119】
また、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態では、先端部(23、23A)が引掛け部(10、10A)の外面に沿うように鉤状に曲がっている例を挙げたが、本開示の先端部23の形状はこれらの例に限定されない。すなわち先端部の形状は、第2対象部材の開口部に対応した基準円(5、5A)に引掛け部と共に挿入可能な形状であれば、他の形状でもよい。また、先端部は、閉状態において引掛け部と接触してもよいし、接触していなくてもよい。
【0120】
本開示の装身具用留め具は、上記の実施形態において例示したような線状部材を含む装身具(ブレスレット、ネックレス、ペンダント、アンクレットなど)に適用可能であり、線状部材を含まない種々の装身具(ブローチ、イヤリング、ピアス、かんざし、ネクタイピンなど)にも適用可能である。また、本開示の装身具用留め具は、上記の実施形態において例示したように、装身具に含まれる部材同士(上記の例では線状部材の端部同士)を連結してもよいし、装身具と他の物(衣服、身の回り品など)を連結してもよいし、複数の装身具を互いに連結してもよい。
【0121】
また、上述した各実施形態において、装身具用留め具は組み立て済の完成品であるが、本開示はこれらの実施形態に限定されない。すなわち、本開示の実施形態には、装身具用留め具を組み立てるための組み立てセットも含まれる。
例えば、第1の実施形態に係る装身具用留め具1の組み立てセットは、第1部材10及び第2部材20と、第1対象部材に取り付けられる取付部30と、付勢部材としてのねじりコイルばね60とを有する(図3B図6A)。第1部材10と第2部材20との閉状態を維持するための手段(図10の係止部70など)を装身具用留め具1が備えている場合、装身具用留め具1の組み立てセットは付勢部材(ねじりコイルばね60)を含まなくてもよい。
【0122】
以下、本開示の態様に関連する付記1~付記15を記す。
【0123】
[付記1]
第1対象部材と第2対象部材とを分離可能に連結する装身具用留め具(1,1A)であって、
第1部材(10,10A)及び第2部材(20、20A)と、
前記第1対象部材に取り付けられる取付部(30,30A)と、
前記第1部材(10,10A)と前記第2部材(20、20A)とを回転可能に連結する連結部(40、40A)とを有し、
前記取付部(30,30A)は、前記第1部材(10,10A)又は前記連結部(40、40A)に設けられており、
前記第1部材(10,10A)は、前記第2対象部材が持つ開口部に引っ掛けられる引掛け部(12、12A)を含み、
前記引掛け部(12、12A)は、前記取付部(30,30A)から離れる第1方向(X2)に凹んだ凹部(13、13A)を持ち、
前記第1部材(10,10A)と前記第2部材(20、20A)とは、前記連結部(40、40A)において回転することにより開状態又は閉状態となり、
前記開状態において、前記第1部材(10,10A)と前記第2部材(20、20A)との間に隙間(2,2A)が生じ、
前記開状態の前記隙間(2,2A)は、前記第2対象部材の前記開口部に面した縁部が前記引掛け部(12、12A)の前記凹部(13、13A)に出入り可能となるための通路を形成し、
前記閉状態において、前記隙間(2,2A)を通じた前記凹部(13、13A)への前記縁部の出入りが不能となり、
前記第2部材(20、20A)は、前記第1部材(10,10A)と前記第2部材(20、20A)とを回転させることにより、前記第1部材(10,10A)に対して円弧の軌道(3、3A)上を移動する先端部(23、23A)を含み、
前記円弧の軌道(3、3A)は、前記閉状態において仮想的な基準円(5、5A)を通過する軌道(3、3A)であり、
前記基準円(5、5A)は、前記第1方向(X2)における前記凹部(13、13A)の最奥部(14、14A)から前記第1方向(X2)へ離れた位置に中心を持ち、前記第1部材(10,10A)及び前記第2部材(20、20A)の回転軸(AX)と前記第1方向(X2)とに平行な平面上に位置し、前記引掛け部(12、12A)が内側から接した円であり、
前記閉状態において前記先端部(23、23A)の少なくとも一部が前記基準円(5、5A)を貫通する、
装身具用留め具(1,1A)。
【0124】
[付記2]
前記先端部(23、23A)は、前記閉状態にあるとき、前記基準円(5、5A)内において前記凹部(13、13A)に対して前記第1方向(X2)に離れた場所に位置する、
付記1に記載の装身具用留め具(1,1A)。
【0125】
[付記3]
前記凹部(13、13A)は、前記回転軸(AX)に対して垂直な前記第1方向(X2)に凹んでおり、
前記回転軸(AX)は、前記凹部(13、13A)に対して前記第1方向(X2)の逆方向(X1)に離れた場所に位置する、
付記2に記載の装身具用留め具(1,1A)。
【0126】
[付記4]
前記先端部(23、23A)は、前記開状態から前記閉状態へ変化するときに前記円弧状の軌道(3、3A)の先頭に位置する先頭部分(24、24A)を持ち、
前記先端部(23、23A)の前記先頭部分(24、24A)において前記回転軸(AX)に最も近い部分が、前記閉状態において、前記第1方向(X2)側の前記引掛け部(12、12A)の外面から離れている、
付記3に記載の装身具用留め具(1,1A)。
【0127】
[付記5]
前記閉状態において、前記第1部材(10,10A)の前記引掛け部(12、12A)が前記第2部材(20、20A)に接触することにより、前記第1部材(10,10A)に対する前記第2部材(20、20A)の回転が規制される、
付記2~4のいずれか1つに記載の装身具用留め具(1,1A)。
【0128】
[付記6]
前記引掛け部(12、12A)は、前記第2対象部材の前記開口部に挿通される端部(121、121A)を持ち、前記回転軸(AX)に平行な方向から見て、前記端部(121、121A)に向かうにつれて前記第2部材(20、20A)側に曲がっており、
前記先端部(23、23A)は、前記開状態から前記閉状態へ変化するときに前記円弧状の軌道(3、3A)の先頭に位置する先頭部分(24、24A)を持ち、前記回転軸(AX)に平行な方向から見て、前記先端部(23、23A)の先頭部分(24、24A)に向かうにつれて前記第1部材(10,10A)側に曲がっている、
付記2~5のいずれか1つに記載の装身具用留め具(1,1A)。
【0129】
[付記7]
前記第2部材(20、20A)は、前記回転軸(AX)に平行な方向において対向した一対の側壁(25)を含み、
前記閉状態において、前記第1部材(10,10A)の少なくとも一部が前記一対の側壁(25)の間に位置し、前記回転軸(AX)に垂直な平面に沿う方向に延びている、
付記2~6のいずれか1つに記載の装身具用留め具(1,1A)。
【0130】
[付記8]
前記第1部材(10,10A)及び前記第2部材(20、20A)は、前記閉状態において、回転軸(AX)に平行な方向に貫通した内部空間(4、4A)を形成し、
前記内部空間(4、4A)は、前記回転軸(AX)に平行な方向から見て、前記第1部材(10,10A)と前記第2部材(20、20A)とにより囲まれた閉領域であり、
前記引掛け部(12、12A)の前記凹部(13、13A)と前記第2部材(20、20A)の一部の表面とが前記内部空間(4、4A)に面しており、
前記閉状態において前記内部空間(4、4A)に面した前記第2部材(20、20A)の前記表面は、第1部分(S1、S3、S4)と第2部分(S2、S5)とを含み、
前記閉状態において前記回転軸(AX)に平行な方向から見た前記第1部分(S1、S3、S4)の各位置の法線ベクトルであって、前記第2部材(20、20A)を押す方向の法線ベクトルである第1法線ベクトル(N1、N3、N4)は、前記開状態となる方向へ向かう成分を含んでおり、
前記閉状態において前記回転軸(AX)に平行な方向から見た前記第2部分(S2、S5)の各位置の法線ベクトルであって、前記第2部材(20、20A)を押す方向の法線ベクトルである第2法線ベクトル(N2、N5)は、前記開状態となる方向に対して逆の方向へ向かう成分を含んでおり、
前記閉状態において前記回転軸(AX)に平行な方向から見て、前記第1部分(S1、S3、S4)の長さが前記第2部分(S2、S5)の長さに比べて短い、
付記2~7のいずれか1つに記載の装身具用留め具(1,1A)。
【0131】
[付記9]
前記第1部材(10,10A)は、前記引掛け部(12、12A)につながる第1基部(11、11A)を含み、
前記凹部(13、13A)は、前記回転軸(AX)に平行な方向から見て、前記第1基部(11、11A)につながる一端(15)と前記第1基部(11、11A)から離れた他端(16)との間で前記第1方向(X2)に向かって円弧状に湾曲しており、
前記第1方向(X2)に垂直な方向における前記凹部(13、13A)の前記最奥部(14、14A)の位置が、前記回転軸(AX)に平行な方向から見て、前記一端(15)と前記他端(16)との中間より前記一端(15)に近い、
付記2~8のいずれか1つに記載の装身具用留め具(1,1A)。
【0132】
[付記10]
前記第2部材(20、20A)は、前記先端部(23、23A)につながる第2基部(21、21A)を含み、
前記先端部(23、23A)は、前記開状態から前記閉状態へ変化するときに前記円弧状の軌道(3、3A)の先頭に位置する先頭部分(24、24A)を持ち、前記第2基部(21、21A)側から前記先頭部分(24、24A)側に向かうにつれて、前記回転軸(AX)に平行な方向における幅が狭くなっている、
付記2~9のいずれか1つに記載の装身具用留め具(1,1A)。
【0133】
[付記11]
前記第2部材(20、20A)は、前記回転軸(AX)から遠ざかる方向に突出した操作部(26、26A)を含む、
付記2~10のいずれか1つに記載の装身具用留め具(1,1A)。
【0134】
[付記12]
前記開状態から前記閉状態に変化する方向へ前記第1部材(10)と前記第2部材(20)とを回転させる付勢力を発生する付勢部材(60)を有する、
付記2~11のいずれか1つに記載の装身具用留め具(1)。
【0135】
[付記13]
付記1~11のいずれか1つに記載の装身具用留め具(1,1A)における前記第1部材(10,10A)と、前記第2部材(20,20A)と、前記第1部材(10,10A)に設けられた前記取付部(30,30A)とを備える
装身具用留め具の組み立てセット。
【0136】
[付記14]
付記12に記載の装身具用留め具(1)における前記付勢部材(60)を更に備える
付記13に記載の装身具用留め具の組み立てセット。
【0137】
[付記15]
付記1~12のいずれか1つに記載の装身具用留め具(1,1A)を備える装身具。
【符号の説明】
【0138】
1,1A…装身具用留め具、 2,2A…隙間、3,3A…軌道、 4,4A…内部空間、 5,5A…基準円、 6,6A…中心、 10,10A…第1部材、 11,11A…第1基部、 12,12A…引掛け部、 13,13A…凹部、 14,14A…最奥部、 15…一端、 16…他端、 17,17A…外面、 18,18A…底面、 19,19A…側壁、 101,101A,102,103…内面、 20,20A…第2部材、 21,21A…第2基部、 23,23A…先端部、 24,24A…先頭部分、 25…側壁、 26,26A…操作部、 27,27A…縁部、 28…溝、201A…底面、 202A…側縁、 30,30A…取付部、 31,31A…孔、 32A…腕部、 33A…中間部、 40,40A…連結部、 41,41A…シャフト、 42,42A,43A…シャフト支持孔、 50,50A…線状部材、 51,51A,52,52A…端部、 53,53A,54A…リング、 55,55A…開口部、 56,56A…縁部、 57,57A…コマ部、 58,58A…連結部材、 60…ねじりコイルばね、 61…コイル部、 62,63…アーム部、 70…係止部、 71…係止用凸部、 72…係止用凹部、 81A,82A…磁石、 AX…回転軸、 S1,S3,S4…第1部分、 S2,S5…第2部分、 N1,N3,N4…第1法線ベクトル、 N2,S5…第2法線ベクトル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15