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特許7485445振幅周波数特性補償回路、無線機器および振幅周波数特性補償方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】振幅周波数特性補償回路、無線機器および振幅周波数特性補償方法
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/00 20060101AFI20240509BHJP
   H01P 1/04 20060101ALI20240509BHJP
   H01P 5/02 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01P1/00 A
H01P1/04
H01P5/02 603E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020053673
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021153279
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NECスペーステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】畠山 英樹
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-289749(JP,A)
【文献】特開平11-122066(JP,A)
【文献】実開昭59-039501(JP,U)
【文献】特開昭50-153550(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116345(WO,A1)
【文献】実開昭58-064101(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00
H01P 1/04
H01P 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝搬する無線信号の振幅周波数特性を補償する振幅周波数特性補償回路において、
無線信号伝搬用の主線路に並列接続したスタブを有し、
該スタブは、
前記主線路に直接接続する抵抗、複数のワイヤならびに前記抵抗と前記ワイヤのいずれか一つとの間および複数の前記ワイヤ間をボンディング接続するための複数のワイヤボンディング用パターンからなり、
かつ、
前記抵抗から前記スタブ内の先端に位置する前記ワイヤボンディング用パターンまでの全線長を、あらかじめ定めた所望の周波数において共振する長さとすることにより、直列共振回路を形成し、
かつ、
形成した前記直列共振回路のQ値が大きい値になるように、前記ワイヤおよび前記ワイヤボンディング用パターンを配置することにより、凹形の振幅周波数特性を急峻な特性に設定し、
複数の前記ワイヤボンディング用パターン間を接続する複数の前記ワイヤのうち、前記スタブの先端側以外のいずれか任意の箇所に配置している前記ワイヤボンディング用パターン間の接続を複数の前記ワイヤによる並列接続とし、かつ、前記スタブの先端側に配置した複数の前記ワイヤボンディング用パターンそれぞれの間の接続を前記並列接続の前記ワイヤより短い長さを有する1本ずつの前記ワイヤによる直列接続とし、
補償対象とする凸形の周波数特性の周波数シフトに応じて、前記並列接続の前記ワイヤの一部または前記直列接続の前記ワイヤのいずれかを切断することにより、凹形の振幅周波数特性が周波数シフトさせてある、
ことを特徴とする振幅周波数特性補償回路。
【請求項2】
伝搬する無線信号の振幅周波数特性を補償する振幅周波数特性補償回路において、
無線信号伝搬用の主線路に並列接続したスタブを有し、
該スタブは、
前記主線路に直接接続する抵抗、複数のワイヤならびに前記抵抗と前記ワイヤのいずれか一つとの間および複数の前記ワイヤ間をボンディング接続するための複数のワイヤボンディング用パターンからなり、
かつ、
前記抵抗から前記スタブ内の先端に位置する前記ワイヤボンディング用パターンまでの全線長を、あらかじめ定めた所望の周波数において共振する長さとすることにより、直列共振回路を形成し、
かつ、
形成した前記直列共振回路のQ値が大きい値になるように、前記ワイヤおよび前記ワイヤボンディング用パターンを配置することにより、凹形の振幅周波数特性を急峻な特性に設定し、
前記スタブを形成する前記抵抗を、直列に接続した複数の抵抗により構成したことを特徴とする振幅周波数特性補償回路。
【請求項3】
前記抵抗から前記スタブ内の先端に位置する前記ワイヤボンディング用パターンまでの全線長の少なくとも50%以上の長さが、複数の前記ワイヤの長さによって占められている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の振幅周波数特性補償回路。
【請求項4】
あらかじめ指定した所望の周波数帯において1/4波長の近傍の線路長になる線路を介して、請求項1ないしのいずれかに記載の振幅周波数特性補償回路を複数段接続した構成である、
ことを特徴とする振幅周波数特性補償回路。
【請求項5】
伝搬する無線信号の振幅周波数特性を補償する振幅周波数特性補償回路を有する無線機器であって、
前記振幅周波数特性補償回路を、請求項1ないしのいずれかに記載の振幅周波数特性補償回路を用いて構成する、
ことを特徴とする無線機器。
【請求項6】
伝搬する無線信号の振幅周波数特性を補償する振幅周波数特性補償方法であって、
無線信号伝搬用の主線路に並列接続したスタブを有し、
該スタブは、
前記主線路に直接接続する抵抗、複数のワイヤならびに前記抵抗と前記ワイヤのいずれか一つとの間および複数の前記ワイヤ間をボンディング接続するための複数のワイヤボンディング用パターンからなり、
かつ、
前記抵抗から前記スタブ内の先端に位置する前記ワイヤボンディング用パターンまでの全線長を、あらかじめ定めた所望の周波数において共振する長さとすることにより、直列共振回路を形成し、
形成した前記直列共振回路のQ値が大きい値になるように、前記ワイヤおよび前記ワイヤボンディング用パターンを配置することにより、凹形の振幅周波数特性を急峻な特性に設定
複数の前記ワイヤボンディング用パターン間を接続する複数の前記ワイヤのうち、前記スタブの先端側以外のいずれか任意の箇所に配置している前記ワイヤボンディング用パターン間の接続を複数の前記ワイヤによる並列接続とし、かつ、前記スタブの先端側に配置した複数の前記ワイヤボンディング用パターンそれぞれの間の接続を前記並列接続の前記ワイヤより短い長さを有する1本ずつの前記ワイヤによる直列接続とし、
補償対象とする凸形の周波数特性の周波数シフトに応じて、前記並列接続の前記ワイヤの一部または前記直列接続の前記ワイヤのいずれかを切断することにより、凹形の振幅周波数特性を周波数シフトさせる、
ことを特徴とする振幅周波数特性補償方法。
【請求項7】
伝搬する無線信号の振幅周波数特性を補償する振幅周波数特性補償方法であって、
無線信号伝搬用の主線路に並列接続したスタブを有し、
該スタブは、
前記主線路に直接接続する抵抗、複数のワイヤならびに前記抵抗と前記ワイヤのいずれか一つとの間および複数の前記ワイヤ間をボンディング接続するための複数のワイヤボンディング用パターンからなり、
かつ、
前記抵抗から前記スタブ内の先端に位置する前記ワイヤボンディング用パターンまでの全線長を、あらかじめ定めた所望の周波数において共振する長さとすることにより、直列共振回路を形成し、
形成した前記直列共振回路のQ値が大きい値になるように、前記ワイヤおよび前記ワイヤボンディング用パターンを配置することにより、凹形の振幅周波数特性を急峻な特性に設定
前記スタブを形成する前記抵抗を、直列に接続した複数の抵抗により構成し、自振幅周波数特性補償回路における凹形の振幅周波数特性のピーク値を調整する際に、直列接続した複数の前記抵抗のいずれか1ないし複数をワイヤボンディングによりバイパスさせるようにストラップすることにより、抵抗値を所望する任意の抵抗値に変更する、
ことを特徴とする振幅周波数特性補償方法。
【請求項8】
前記抵抗から前記スタブ内の先端に位置する前記ワイヤボンディング用パターンまでの全線長の少なくとも50%以上の長さを、複数の前記ワイヤの長さによって占める、
ことを特徴とする請求項6または7に記載の振幅周波数特性補償方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振幅周波数特性補償回路、無線機器および振幅周波数特性補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線(RF:Radio Frequency)機器は、使用する周波数範囲内において無線信号の振幅が平坦であることを求められることが一般的である。しかし、無線機器に使用する半導体増幅器等の部品は、使用する周波数範囲内において凸形の振幅特性を有するものが多く、また、インピーダンス不整合等が原因で生じる振幅のリップルも凸形の振幅特性を有することがある。そのため、無線機器として使用する周波数の範囲内で平坦な振幅を実現するには、凹形の振幅周波数特性を有する補償回路を無線機器内に実装することが必要になる。
【0003】
このような振幅周波数特性を有する補償回路としては、例えば使用周波数範囲内の中心周波数近傍で、抵抗と例えば(λ/2)(すなわち(1/2)波長)の線路長を有する線路とを、先端を開放した形式のスタブ(Stub)として、無線信号を伝搬する主線路に並列に挿入するという一般的な構成方法がある。
【0004】
しかし、このような一般的なスタブの場合は、周波数変化時の振幅変化が緩やかになるため、半導体増幅器等の凸形の振幅特性を補償することは難しい。また、凹形の振幅特性を有する振幅周波数調整回路としては、例えば特許文献1の特許第3852603号公報「周波数イコライザ」に開示されているような回路もあるが、該特許文献1に記載の回路は、伝送線路を用いて構成するので、レイアウト時の制約から回路の小型化を図ることが難しいケースがある。
【0005】
また、半導体増幅器等の持つ凸形振幅特性のばらつきに応じた補償を実施するために、振幅周波数補償回路として、その周波数特性を可変に調整することが可能であることが求められ、その方法として、容量を可変に設定することが可能な可変容量素子等を用いて回路を構成し、印加電圧を変化させることによって周波数特性を変化させるという方法がある。しかし、このような方法の場合、部品点数が増えてしまい、また、印加電圧を変化させるための制御信号を追加することが必要になることから、回路サイズの増大やコスト増加の要因になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3852603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、前記特許文献1等の本発明に関連する現状の技術においては、半導体増幅器等の部品が持つ凸形の周波数特性、あるいは、インピーダンス不整合等が原因で生じる振幅のリップルを平坦な周波数特性に補償するのに十分急峻な凹型の振幅周波数特性を有すること、かつ、回路の小型化が可能であること、の2つの要件を同時に満たすことができないという解決するべき課題があった。
【0008】
さらに、部品等の回路素子が有する特性のばらつきに対応するために、振幅周波数補償回路の周波数特性を、容易に、かつ、低コストで調整する機能を実現することができないという課題もあった。
【0009】
(本発明の目的)
本発明の目的は、かかる課題を解決するために、周波数変化時の振幅変化が急峻な振幅特性を有し、かつ、小型化が可能で、かつ、容易に周波数特性を変化させることが可能な振幅周波数特性補償回路、無線機器および振幅周波数特性補償方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため、本発明による振幅周波数特性補償回路、無線機器および振幅周波数特性補償方法は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0011】
(1)本発明による振幅周波数特性補償回路は、
伝搬する無線信号の振幅周波数特性を補償する振幅周波数特性補償回路において、
無線信号伝搬用の主線路に並列接続したスタブを有し、
該スタブは、
前記主線路に直接接続する抵抗、複数のワイヤならびに前記抵抗と前記ワイヤのいずれか一つとの間および複数の前記ワイヤ間をボンディング接続するための複数のワイヤボンディング用パターンからなり、
かつ、
前記抵抗から前記スタブ内の先端に位置する前記ワイヤボンディング用パターンまでの全線長を、あらかじめ定めた所望の周波数において共振する長さとすることにより、直列共振回路を形成し、
かつ、
形成した前記直列共振回路のQ値が大きい値になるように、前記ワイヤおよび前記ワイヤボンディング用パターンを配置することにより、凹形の振幅周波数特性を急峻な特性に設定する、
ことを特徴とする。
【0012】
(2)本発明による無線機器は、
伝搬する無線信号の振幅周波数特性を補償する振幅周波数特性補償回路を有する無線機器であって、
前記振幅周波数特性補償回路を、前記(1)に記載の振幅周波数特性補償回路を用いて構成する、
ことを特徴とする。
【0013】
(3)本発明による振幅周波数特性補償方法は、
伝搬する無線信号の振幅周波数特性を補償する振幅周波数特性補償方法であって、
無線信号伝搬用の主線路に並列接続したスタブを有し、
該スタブは、
前記主線路に直接接続する抵抗、複数のワイヤならびに前記抵抗と前記ワイヤのいずれか一つとの間および複数の前記ワイヤ間をボンディング接続するための複数のワイヤボンディング用パターンからなり、
かつ、
前記抵抗から前記スタブ内の先端に位置する前記ワイヤボンディング用パターンまでの全線長を、あらかじめ定めた所望の周波数において共振する長さとすることにより、直列共振回路を形成し、
形成した前記直列共振回路のQ値が大きい値になるように、前記ワイヤおよび前記ワイヤボンディング用パターンを配置することにより、凹形の振幅周波数特性を急峻な特性に設定する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の振幅周波数特性補償回路、無線機器および振幅周波数特性補償方法によれば、主に、以下のような効果を奏することができる。
【0015】
本発明によれば、半導体増幅器等の凸形の振幅周波数特性、または、インピーダンス不整合等が原因で生じる振幅のリップルを補償するために十分な急峻な凹形の振幅周波数特性が実現でき、かつ、レイアウトの自由度が高いことによる回路の小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一般的な半導体増幅器等の部品が有する凸形の振幅周波数特性の一例を示す特性図である。
図2】凹形の振幅周波数特性を有する補償回路を用いて、図1に示した一般的な半導体増幅器等の部品が有する凸形の振幅周波数特性を補償した振幅補償後の振幅周波数特性の一例を示す特性図である。
図3】十分に急峻な凹形の振幅周波数特性を有する補償回路を用いて、図1に示した一般的な半導体増幅器等の部品が有する凸形の振幅周波数特性を補償した振幅補償後の振幅周波数特性の一例を示す特性図である。
図4図3に示した凹形の振幅周波数特性曲線を有する補償回路が補償する対象とする凸形の振幅周波数特性に部品等の回路素子が有する特性のばらつきにより周波数シフトが生じた場合の振幅補償後の振幅周波数特性の一例を示す特性図である。
図5】振幅周波数特性の調整機能を有する補償回路を用いて、図4に示した部品等の回路素子が有する特性のばらつきにより周波数シフトした凸形の振幅周波数特性を補償した振幅補償後の振幅周波数特性の一例を示す特性図である。
図6】本発明の実施形態に係る振幅周波数特性補償回路の内部構成の一例を示すブロック構成図である。
図7】本発明の実施形態の一例として図6に示した振幅周波数特性補償回路の等価回路を示す回路図である。
図8図6に示した振幅周波数特性補償回路の凹形の振幅周波数特性を低周波数側の適切な周波数まで周波数シフトさせるように調整する調整手段の一例を説明する説明図である。
図9図6に示した振幅周波数特性補償回路の凹形の振幅周波数特性を高周波数側の適切な周波数まで周波数シフトさせるように調整する調整手段の一例を説明する説明図である。
図10】本発明に係る振幅周波数特性補償回路の内部構成の図6とは異なる他の例を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による振幅周波数特性補償回路、無線機器および振幅周波数特性補償方法の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明による振幅周波数特性補償回路および振幅周波数特性補償方法について説明するが、無線信号の振幅周波数特性の補償を行う回路を搭載している無線機器にかかる振幅周波数特性補償回路を適用するようにしても良いことは言うまでもない。また、以下の各図面に付した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではないことも言うまでもない。
【0018】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、前述したように、半導体増幅器等の部品が有する凸形の振幅周波数特性、あるいは、インピーダンス不整合等が原因で生じる振幅のリップルを、平坦な周波数特性に補償するのに十分に急峻な凹形の振幅周波数特性を有し、かつ、小型で周波数特性の調整が容易に可能な振幅周波数特性補償回路を実現することを目的としている。
【0019】
かかる目的を実現するために、本発明は、無線信号を伝搬する主線路に並列に接続されたスタブとして、抵抗、複数のワイヤ、複数のワイヤそれぞれをボンディングすることが可能な複数のワイヤボンディング用パターンによって形成され、かつ、抵抗からスタブの先端に位置するワイヤボンディング用パターンまでの線路長を、あらかじめ定めた所望の周波数において共振を生じる長さに設定する。そして、高いQ値で共振するように、複数のワイヤおよびワイヤボンディング用パターンを配置することによって、さらには、スタブの全線長の50%以上をワイヤによって占めることによって、急峻な凹形の振幅周波数特性を実現する。また、ワイヤの向き、ワイヤボンディング用パターンの形状等に関して、特別な制限を行う必要がない構成を採用することにより、レイアウトの自由度が高く、回路の小型化が可能になる。
【0020】
また、本発明においては、複数のワイヤの一部に関して、スタブの先端側を除く任意の場所のワイヤボンディング用パターンにおいて並列に複数のワイヤを接続した構成とし、かつ、複数のワイヤの他の一部に関しては、スタブの先端側に位置する複数のワイヤボンディング用パターン間に複数の短いワイヤを直列に接続した構成とする。そして、並列接続した複数のワイヤのいずれか1ないし複数のワイヤ、あるいは、直列接続したスタブ先端側の複数の短いワイヤのうちのいずれかのワイヤを切断することにより、振幅周波数特性補償回路の振幅周波数特性の調整を行うことを可能にし、調整の容易性、低コスト化の双方を同時に実現することができる。
【0021】
(本発明の実施形態)
次に、本発明の実施形態についてその一例を説明する。まず、本発明の実施形態の構成例の説明に先立って、一般的な半導体増幅器等の部品が有する凸形の振幅周波数特性やインピーダンス不整合等が原因で生じる振幅のリップルを補償し、かつ、部品等の回路素子が有する特性のばらつきにより発生する凸形の振幅周波数特性の周波数シフトに応じて補償回路の補償特性を調整することを可能にする振幅周波数特性補償方法について図面を参照しながら説明する。ここで説明する振幅周波数特性補償方法は、使用する周波数範囲内において、平坦な振幅特性を実現するために、本発明において採用している振幅周波数特性補償方法の一例を説明するものである。
【0022】
(本発明に係る振幅周波数特性補償方法)
図1は、一般的な半導体増幅器等の部品が有する凸形の振幅周波数特性の一例を示す特性図であり、横軸が周波数であり、縦軸が振幅である。図1の振幅周波数特性曲線11に示すように、使用する周波数範囲である下限周波数ω1から上限周波数ω2の範囲内において、振幅は凸形の特性を有している。無線機器は、一般的に、使用周波数範囲においては、平坦な振幅特性を有していることが要求される。したがって、図1に示したような凸形の振幅周波数特性を補償するためには、例えば、図2に示すような凹形の振幅周波数特性を有する補償回路が必要となる。
【0023】
図2は、凹形の振幅周波数特性を有する補償回路を用いて、図1に示した一般的な半導体増幅器等の部品が有する凸形の振幅周波数特性を補償した振幅補償後の振幅周波数特性の一例を示す特性図である。ここで、該補償回路としては、抵抗と(λ/4)(すなわち(1/4)波長)の線路長を有する線路とからなるオープンスタブ(λ/4オープンスタブ)を、無線信号を伝搬する主線路に対して並列に挿入した場合の一例を示している。図2において、図1に示した凸形の振幅周波数特性を実腺の振幅周波数特性曲線11で示し、該補償回路が有する凹形の振幅周波数特性を一点鎖線の振幅周波数特性曲線12で示し、該補償回路を用いた振幅補償後の振幅周波数特性を破線の振幅周波数特性曲線13で示している。
【0024】
図2の振幅周波数特性曲線12に示すように、一般的なλ/4オープンスタブ補償回路の凹形の振幅周波数特性は、振幅周波数特性曲線11に示すような半導体増幅器等の凸形の振幅周波数特性に比して周波数変化時の振幅変化が緩いため、振幅周波数特性曲線13に示したように、振幅補償後の振幅周波数特性として、使用する周波数範囲内において、凸形の特性が残った状態になり、十分な補償を得ることは困難である。
【0025】
これに対して、本発明の実施形態の一例として後述する振幅周波数特性補償回路においては、図3に示すように、補償の対象とする凸形の振幅周波数特性に対して十分に急峻な凹形の振幅周波数特性を有している。図3は、十分に急峻な凹形の振幅周波数特性を有する補償回路を用いて、図1に示した一般的な半導体増幅器等の部品が有する凸形の振幅周波数特性を補償した振幅補償後の振幅周波数特性の一例を示す特性図である。ここで、該補償回路としては、本発明の実施形態の一例として後述する振幅周波数特性補償回路を用いている場合の一例を示している。図3において、図1に示した凸形の振幅周波数特性を実腺の振幅周波数特性曲線11で示し、本発明の一例の補償回路が有する十分に急峻な凹形の振幅周波数特性の一例を一点鎖線の振幅周波数特性曲線14で示し、該補償回路を用いた振幅補償後の振幅周波数特性を破線の振幅周波数特性曲線15で示している。
【0026】
図3の振幅周波数特性曲線14に示すように、本発明の実施形態の一例として後述する振幅周波数特性補償回路の凹形の振幅周波数特性は、振幅周波数特性曲線11に示すような半導体増幅器等の凸形の振幅周波数特性に対して周波数変化時の振幅変化が十分に急峻になっているので、振幅周波数特性曲線15に示したように、振幅補償後の振幅周波数特性として、使用する周波数範囲内において、ほぼ平坦な特性を実現することができ、十分な補償を得ることができる。
【0027】
なお、図3の振幅周波数特性曲線14は、部品等の回路素子が有する特性のばらつきに関する特性の調整をしていない場合を示しており、実際に適用する際には、補償の対象とする凸形の振幅周波数特性が部品等の回路素子が有する特性のばらつきのために、振幅周波数特性曲線15に示したような平坦な特性を実現することができない場合も存在する。図4は、図3に示した凹形の振幅周波数特性曲線14を有する補償回路が補償する対象とする凸形の振幅周波数特性に部品等の回路素子が有する特性のばらつきにより周波数シフトが生じた場合の振幅補償後の振幅周波数特性の一例を示す特性図であり、補償対象とする無線信号の凸形の振幅周波数特性が部品等の回路素子が有する特性のばらつきにより例えば高周波数側に周波数シフトした場合について示している。
【0028】
ここで、図4の特性図においては、補償回路は、図3の振幅周波数特性曲線14に示した急峻な凹形の振幅周波数特性を有しているものの、前述したように、部品等の回路素子が有する特性のばらつきに関する周波数特性の調整を実施していない場合について示している。一方、補償の対象となる無線信号の凸形の振幅周波数特性は、前述したように、図3に示した振幅周波数特性曲線11と同じものではなく、部品等の回路素子が有する特性のばらつきにより、例えば高周波数側に周波数シフトした振幅周波数特性曲線16となっている場合を示している。
【0029】
つまり、図4の振幅周波数特性曲線14に示すように、補償回路の振幅周波数特性は、半導体増幅器等の凸形の振幅周波数特性に対して周波数変化時の振幅変化が十分に急峻になっているが、振幅周波数特性曲線16に示すように、補償対象としている凸形の振幅周波数特性が高周波数側に周波数シフトした状態になっている。このため、振幅補償後の振幅周波数特性は、振幅周波数特性曲線17に示したように、使用する周波数範囲内において、右肩上がりの状態になり、平坦な特性を実現することができない。
【0030】
これに対して、本発明の実施形態の一例として後述する振幅周波数特性補償回路においては、図5に示すように、補償対象の凸形の振幅周波数特性の周波数シフトに応じて、図4の振幅周波数特性曲線14に示した振幅周波数特性を調整して補償することを可能にしている。図5は、振幅周波数特性の調整機能を有する補償回路を用いて、図4の振幅周波数特性曲線16に示した部品等の回路素子が有する特性のばらつきにより周波数シフトした凸形の振幅周波数特性を補償した振幅補償後の振幅周波数特性の一例を示す特性図である。ここで、該補償回路としては、本発明の実施形態の一例として後述する振幅周波数特性補償回路を用いている場合の一例を示している。
【0031】
図5においては、高周波数側に周波数シフトした凸形の振幅周波数特性を実腺の振幅周波数特性曲線16で示し、本発明の一例の補償回路が有する振幅周波数特性の調整機能により図4の振幅周波数特性曲線14を高周波数側に周波数シフトさせるように調整した凹形の振幅周波数特性の一例を一点鎖線の振幅周波数特性曲線18で示し、該補償回路を用いた振幅補償後の振幅周波数特性を破線の振幅周波数特性曲線19で示している。
【0032】
図5の振幅周波数特性曲線18に示すように、本発明の実施形態の一例として後述する振幅周波数特性補償回路の凹形の振幅周波数特性は、振幅周波数特性曲線16に示すような部品等の回路素子が有する特性のばらつきにより高周波数側に周波数シフトした凸形の振幅周波数特性に合わせて、図4の振幅周波数特性曲線14を周波数シフトにするように調整しているので、振幅周波数特性曲線19に示したように、部品等の回路素子が有する特性のばらつきにより、補償対象の無線信号の振幅周波数特性に周波数シフトが発生した場合であっても、振幅補償後の振幅周波数特性として、使用する周波数範囲内において、ほぼ平坦な特性を実現することができ、十分な補償を得ることができる。
【0033】
(本発明の実施形態の構成例)
次に、本発明の実施形態における振幅周波数特性補償回路の構成について、その一例を、図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施形態に係る振幅周波数特性補償回路の内部構成の一例を示すブロック構成図であり、アルミナ基板等の誘電体基板上に形成した無線信号伝搬用の主線路に対して並列に接続した抵抗、複数のワイヤおよび複数のワイヤボンディング用パターンからなるスタブの詳細な構成例について示している。
【0034】
つまり、図6に示す振幅周波数特性補償回路10は、破線で囲んで示すように、誘電体基板1上に形成した無線信号伝搬用の主線路2に対して並列接続したスタブ3を有して構成される。スタブ3は、抵抗4と複数のワイヤボンディング用パターン5と各ワイヤボンディング用パターン5間を接続する複数のワイヤ6(6a、6b、6c、6d、6e、6f)とによって形成され、最先端部を開放状態にしている。スタブ3内に複数のワイヤボンディング用パターン5を配置することにより、使用する複数のワイヤ6を所望する任意の位置に配置してワイヤボンディングにより接続することが可能である。
【0035】
無線信号伝搬用の主線路2に直接接続する抵抗4は、例えば膜抵抗を用いて形成される。また、各ワイヤボンディング用パターン5は、各ワイヤ6をワイヤボンディングすることが可能な材料を用いて誘電体基板1上に適切なパターンを形成するように配置され、急峻な振幅周波数特性を実現するスタブ3を形成する。そして、ワイヤボンディング用パターン5間を接続する各ワイヤ6は、インダクタンス値が大きい材料を用いて形成し、各ワイヤ6の一部は、同一の2つのワイヤボンディング用パターン5間を並列に複数本接続した構成とし、他のワイヤ6は、隣り合うワイヤボンディング用パターン5間を1本ずつ用いて接続する構成とする。
【0036】
ここで、スタブ3内の先端側に配置する複数のワイヤボンディング用パターン5には、それぞれ、1本ずつの短い長さのワイヤ6を用いて接続することにより、スタブ3内の先端側は、短い長さの複数のワイヤ6を直列接続した状態に形成される。なお、複数のワイヤ6を並列接続するワイヤボンディング用パターン5は、スタブ3内の先端側を除く適当な任意の位置に配置する。なお、補償対象とする無線信号の使用周波数帯域に応じて形成したスタブ3の全線長に関しては、抵抗4から該スタブ3の最先端のワイヤボンディング用パターン5に至るまでのスタブ3の全線長が、あらかじめ定めた所望の周波数において共振が生じる長さに設定され、さらに、共振回路として高いQ値を実現して、より急峻な振幅周波数特性を実現するために、該スタブ3の全線長のうち、少なくとも50%以上をワイヤ6が占めるように形成する。
【0037】
図6においては、スタブ3を形成する複数のワイヤ6およびワイヤボンディング用パターン5として、抵抗4に直接接続する第1段目のワイヤボンディング用パターン5にボンディングした第1段目のワイヤ6からスタブ3の先端方向に向かって6段階に順番にワイヤボンディング用パターン5間を接続した構成例を示しており、複数の各ワイヤ6に関しては、順番に、第1ワイヤ6a、第2ワイヤ6b、第3ワイヤ6c、第4ワイヤ6d、第5ワイヤ6e、第6ワイヤ6fと表示している。そして、第1ワイヤ6a、第2ワイヤ6b、第3ワイヤ6c、第4ワイヤ6d、第5ワイヤ6e、第6ワイヤ6fの各長さを合計した総線長としては、前述したように、スタブ3の全腺長の少なくとも50%以上の長さになっている。
【0038】
なお、複数のワイヤ6を並列接続するワイヤボンディング用パターン5の配置位置として、図6に示した構成例においては、第2段目と第3段目とのワイヤボンディング用パターン5間に配置する例を示し、第2段目と第3段目とのワイヤボンディング用パターン5間を並列接続する第2段目の第2ワイヤ6bのワイヤ本数を3本にした場合を示している。そして、第4段目のワイヤボンディング用パターン5以降最先端の第7段目のワイヤボンディング用パターン5に達するまでの各ワイヤボンディング用パターン5間を接続する第4ワイヤ6d、第5ワイヤ6e、第6ワイヤ6fそれぞれに関しては、1本ずつの短い長さのワイヤ6を用い、短い各ワイヤ6を直列接続した状態に設定した場合を示している。
【0039】
また、図6に示した振幅周波数特性補償回路10のスタブ3のワイヤボンディング用パターン5やワイヤ6の配置例は、一例を示したものであり、共振回路としてできるだけ高いQ値を得ることが可能な状態であれば、かかる配置に限るものではない。すなわち、ワイヤ6の向きやワイヤボンディング用パターン5の形状等に関しては、特別な制約条件はなく、自由度は高く、任意の状態で配置するようにしても構わない。したがって、スタブ3が占める専有面積を小さくするように、ワイヤボンディング用パターン5やワイヤ6を配置することによって、振幅周波数特性補償回路10の小型化を図ることが可能である。
【0040】
(本発明の実施形態の動作例の説明)
次に、本発明の実施形態の一例として図6に示した振幅周波数特性補償回路10の動作について、その一例を詳細に説明する。図7は、本発明の実施形態の一例として図6に示した振幅周波数特性補償回路10の等価回路を示す回路図である。
【0041】
図7の等価回路に示すように、図6に示した振幅周波数特性補償回路10のスタブ3を形成する抵抗4、複数のワイヤボンディング用パターン5、複数のワイヤ6は、等価的に、無線信号伝搬用の主線路2に並列接続された抵抗4に対して、インダクタンス7、キャパシタンス8の各素子が直列接続された回路であり、抵抗4、インダクタンス7、キャパシタンス8により直列共振回路(LC直列共振回路)を形成していると見做すことができる。該直列共振回路の共振周波数(ω0)およびQ値(Q0)は、それぞれ、次の式(1)、式(2)により表すことができる。
【0042】
【数1】
【0043】
振幅周波数特性補償回路10の振幅周波数特性として、半導体増幅器等の部品が有する凸形の振幅周波数特性や、あるいは、インピーダンス不整合等が原因で生じる振幅のリップルを補償する目的から、周波数変化時の振幅特性変化を急峻なものにするためには、Q値(Q0)を大きくすることが必要である。つまり、式(2)に示したように、共振周波数(ω0)が一定の場合には、インダクタンス成分値(L)が大きく、キャパシタンス成分値(C)が小さい値になることが必要である。図1に示した振幅周波数特性補償回路10においては、ワイヤボンディング用パターン5、ワイヤ6を、直列共振回路としてのQ値(Q0)をできるだけ大きくすることが可能な適切な位置に配置するとともに、さらに、スタブ3の全長の少なくとも50%以上の長さを占めるワイヤ6を、インダクタンス値が大きいワイヤを用いて構成すれば良い。その結果、直列共振回路のQ値(Q)を大きくすることが可能であり、振幅周波数特性補償回路10の振幅周波数特性として、急峻な振幅特性変化を実現することができ、半導体増幅器等の部品が有する凸形の振幅周波数特性を補償することができる。
【0044】
次に、部品等の回路素子が有する特性のばらつきにより発生する凸形の振幅周波数特性の周波数シフトを補償するために、図6に示した振幅周波数特性補償回路10の凹形の振幅周波数特性を適切な周波数まで周波数シフトするための調整手段について説明する。まず、振幅周波数特性補償回路10の凹形の振幅周波数特性を低周波数側に周波数シフトさせる場合について説明する。図8は、図6に示した振幅周波数特性補償回路10の凹形の振幅周波数特性を低周波数側の適切な周波数まで周波数シフトさせるように調整する調整手段の一例を説明する説明図である。
【0045】
図8に示すように、同一のワイヤボンディング用パターン5間を並列に接続した複数のワイヤ6(例えば第2段目と第3段目とのワイヤボンディング用パターン5間を並列接続している第2段目の3本の第2ワイヤ6b)の一部のワイヤ(1ないし複数のワイヤ)を切断することにより、低周波数側に凹形の振幅周波数特性のピーク値を周波数シフトすることができる。
【0046】
つまり、並列接続した複数のワイヤ6の合成インダクタンス値は、複数のワイヤ6の一部のワイヤを切断することによって、より大きい値になる方向に変化するので、式(1)に示したように、スタブ3を形成する直列共振回路の共振周波数(ω0)が低い方向に変化する。したがって、並列接続した複数のワイヤ6の切断本数を調整することにより、振幅周波数特性補償回路10の凹形の振幅周波数特性を低周波数側の適切な周波数まで周波数シフトさせることができる。
【0047】
次に、振幅周波数特性補償回路10の凹形の振幅周波数特性を高周波数側に周波数シフトさせる場合について説明する。図9は、図6に示した振幅周波数特性補償回路10の凹形の振幅周波数特性を高周波数側の適切な周波数まで周波数シフトさせるように調整する調整手段の一例を説明する説明図である。
【0048】
スタブ3内の先端側に配置する複数のワイヤボンディング用パターン5間それぞれを直列に接続している1本ずつの短い長さのワイヤ6のいずれか適当な箇所のワイヤ(例えば図9に示すようにスタブ3の最先端に位置する第6ワイヤ6f)を切断することにより、高周波数側に凹形の振幅周波数特性のピーク値を周波数シフトすることができる。
【0049】
つまり、直列接続した複数の短いワイヤ6の合成インダクタンス値は、複数の短いワイヤ6のいずれかの箇所のワイヤを切断することによって、より小さい値になる方向に変化するので、式(1)に示したように、スタブ3を形成する直列共振回路の共振周波数(ω0)が高い方向に変化する。したがって、直列接続した複数の短いワイヤ6の切断箇所を調整することにより、振幅周波数特性補償回路10の凹形の振幅周波数特性を高周波数側の適切な周波数まで周波数シフトさせることができる。
【0050】
以上に説明したように、ワイヤボンディング用パターン5間を接続しているワイヤ6を切断する操作を行うだけで、スタブ3を形成する直列共振回路の共振周波数(ω0)を、低周波数側、高周波数側のいずれの方向であっても、所望する適当な周波数まで周波数シフトさせる調整を行うことが可能であるので、振幅周波数特性補償回路10の凹形の振幅周波数特性の調整を容易に行うことができる。また、振幅周波数特性補償回路10の凹形の振幅周波数特性の調整を行うに当たって、インダクタンス成分値を変化させるために特別な回路素子を挿入することも必要がないことから、振幅周波数特性の調整手段を実現するためのコストが増加することもない。
【0051】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態においては、以下のような効果を奏することができる。
【0052】
第1に、振幅周波数特性補償回路10では、半導体増幅器等の凸形の振幅周波数特性、あるいは、インピーダンス不整合等が原因で生じる振幅のリップルを補償するために十分な急峻な凹形の振幅周波数特性を有し、かつ、スタブ3を形成するワイヤ6の向き、ワイヤボンディング用パターン5の形状等に関して特別な制限を行う必要がなく、レイアウトの自由度が高いため、回路の小型化を図ることが可能である。
【0053】
第2に、振幅周波数特性補償回路10では、部品等の回路素子が有する特性のばらつきに対応するために、スタブ3を構成する一部のワイヤを切断する操作を行うだけで、振幅周波数特性を、容易に調整することが可能であり、かつ、新たな回路素子を追加挿入することも不要であるので、低コストで調整することが可能である。
【0054】
(本発明の他の実施形態)
前述の実施形態において振幅周波数特性補償回路10として図6に示したスタブ3を構成する抵抗4を可変抵抗値化することによって、可変抵抗値化した抵抗4を利用することにより、凹形の振幅周波数特性のピーク値を調整可能にしても良い。その結果として、半導体増幅器等の凸形の振幅周波数特性、あるいは、インピーダンス不整合等が原因で生じる振幅のリップルを、より精度高く補償することが可能になる。図10は、本発明に係る振幅周波数特性補償回路の内部構成の図6とは異なる他の例を示すブロック構成図であり、一例として、図6に示したスタブ3内の単一の抵抗4の代わりに、複数の抵抗を直列接続する形式に変更して、複数のワイヤボンディング用パターン5を介して直列に接続している場合を示している。
【0055】
図10に示す振幅周波数特性補償回路10aにおいては、複数の各ワイヤボンディング用パターン5を介して直列に接続する複数の抵抗として、第1抵抗41、第2抵抗42の2つの抵抗を直列接続している例を示している。そして、凹形の振幅周波数特性のピーク値を調整するために、所望する任意の抵抗値に可変に設定しようとする場合は、直列接続した複数の抵抗(第1抵抗41、第2抵抗42)のいずれか1ないし複数の抵抗をワイヤボンディングによりバイパスさせるようにストラップする等の手段を用いて実現することを可能にしている。
【0056】
また、図6に示した振幅周波数特性補償回路10または図10に示した振幅周波数特性補償回路10aを、反射特性を改善するために、あらかじめ指定した所望の周波数帯において(λ/4)(すなわち1/4波長)の近傍の線路長になる線路を介して複数段接続するように構成することも可能である。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0058】
1 誘電体基板
2 無線信号伝搬用の主線路
3 スタブ
4 抵抗
5 ワイヤボンディング用パターン
6 ワイヤ
6a 第1ワイヤ
6b 第2ワイヤ
6c 第3ワイヤ
6d 第4ワイヤ
6e 第5ワイヤ
6f 第6ワイヤ
10 振幅周波数特性補償回路
10a 振幅周波数特性補償回路
11 半導体増幅器等の部品が有する凸形の振幅周波数特性曲線
12 λ/4オープンスタブ補償回路が有する凹形の振幅周波数特性曲線
13 λ/4オープンスタブ補償回路を用いた振幅補償後の振幅周波数特性曲線
14 本発明の一例の補償回路が有する十分に急峻な凹形の振幅周波数特性曲線
15 本発明の一例の補償回路を用いた振幅補償後の振幅周波数特性曲線
16 部品等の特性ばらつきにより周波数シフトした凸形の振幅周波数特性曲線
17 本発明の一例の補償回路を用いた振幅補償後の振幅周波数特性曲線
18 本発明の一例の補償回路が有する調整実施後の凹形の振幅周波数特性曲線
19 本発明の一例の補償回路を用いた振幅補償後の振幅周波数特性曲線
41 第1抵抗
42 第2抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10