(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】モールド形静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/26 20060101AFI20240509BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01F27/26 160
H01F27/06 101
(21)【出願番号】P 2018145938
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-07-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】井上 新
(72)【発明者】
【氏名】城条 雅之
(72)【発明者】
【氏名】中山 伸一
(72)【発明者】
【氏名】▲陦▼ 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中前 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】高井 洋輔
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】小池 秀介
【審判官】篠原 功一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-154132(JP,U)
【文献】実開昭51-38213(JP,U)
【文献】特開2010-93104(JP,A)
【文献】特開2001-60522(JP,A)
【文献】実開昭55-34606(JP,U)
【文献】実開昭56-134716(JP,U)
【文献】実開昭51-92624(JP,U)
【文献】実開昭53-153438(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/06
H01F 27/26
H01F 27/30
H01F 30/10-30/12
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線と前記巻線の中心部に通された鉄心とを有し前記巻線の表面が絶縁部材で覆われた
複数の機器中身と、
複数の前記機器中身を収容する容器と、
前記容器に対して前記鉄心の上下方向及び水平方向の相対的な移動を規制する複数の規制部材と、を備え、
各前記機器中身に対応した各前記鉄心の上端部は、上部ヨークによって相互に連結されており、
複数の前記規制部材は、
棒状部材で構成されており、それぞれが前記容器の内壁面と前記
上部ヨークの幅方向の端部又は
前記上部ヨークの長手方向の端部とに
直接的に接続されている、
モールド形静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、モールド形静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巻線の表面を樹脂等の絶縁部材でモールドすることで絶縁性能を確保したモールド形静止誘導機器が知られている。このようなモールド形静止誘導機器は、モールドされた巻線を容器内に格納し、その容器内にドライエア等を充填することで、更に高電圧に適用させることが可能となる。
【0003】
このようにモールドされた巻線を容器内に格納したモールド形静止誘導機器は、外線と容器内の巻線とを電気的に接続するため、各巻線に対応したブッシング及び接続導体を備えている。ブッシングは、容器の天井部分にその天井部分を貫いて設けられている。そして、外線は、容器の外部においてブッシングに電気的に接続されており、接続導体は、容器内において巻線とブッシングとを電気的に接続している。これにより、各相の巻線は、接続導体及びブッシングを介して、外線に電気的に接続されている。
【0004】
このような構成のモールド形静止誘導機器は、接続導体についても絶縁性能を確保する必要があるため、接続導体の外側表面は絶縁部材で覆われている。しかしながら、例えばモールド形静止誘導機器を当該誘導機器の製造工場から設置場所まで搬送し設置する際などにおいては、モールド形静止誘導機器に振動が加わることが避けられない。そして、搬送及び設置の際にモールド形静止誘導機器に振動が加わると、その振動によって機器中身が揺れてしまう。すると、機器中身の揺れに伴って接続導体が揺れて他の部品と接触したりし、その結果、接続導体の外部を覆う絶縁部材が破損するおそれがあった。そのため、搬送時等において機器中身の容器に対する相対的な揺れを抑制することは重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、搬送等によって振動が加わった場合あっても機器中身の揺れを抑制することができるモールド形静止誘導機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のモールド形静止誘導機器は、巻線と前記巻線の中心部に通された鉄心とを有し前記巻線の表面が絶縁部材で覆われた複数の機器中身と、複数の前記機器中身を収容する容器と、前記容器に対して前記鉄心の上下方向及び水平方向の相対的な移動を規制する複数の規制部材と、を備え、各前記機器中身に対応した各前記鉄心の上端部は、上部ヨークによって相互に連結されており、複数の前記規制部材は、棒状部材で構成されており、それぞれが前記容器の内壁面と前記上部ヨークの幅方向の端部又は前記上部ヨークの長手方向の端部とに直接的に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態によるモールド形静止誘導機器の概略構成を示すもので、容器を破断して示す平面図
【
図2】第1実施形態によるモールド形静止誘導機器の概略構成を示すもので、
図1のX2-X2線に沿って示す縦断側面図
【
図3】第1実施形態によるモールド形静止誘導機器の概略構成を示すもので、
図1のX3-X3線に沿って示す縦断正面図
【
図4】第2実施形態によるモールド形静止誘導機器の概略構成を示すもので、
図1に相当する図
【
図5】第2実施形態によるモールド形静止誘導機器の概略構成を示すもので、
図1のX5-X5線に沿って示す、
図2に相当する図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態で実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1~
図3に示すモールド変圧器10は、モールド形静止誘導機器の適用例の一例であり、例えば電力系統や受変電設備に用いられるものである。本実施形態の場合、モールド変圧器10は、U相、V相、W相の巻線を有する三相の変圧器である。なお、モールド変圧器10は、三相変圧器に限られない。
【0011】
モールド変圧器10は、機器中身20、容器30、及び熱交換器40を備えている。機器中身20は、モールド変圧器10の各相に対応して設けられている。例えば本実施形態において、モールド変圧器10は、U相、V相、及びW相を有する三相変圧器であるため、
図1に示すように、U相、V相、及びW相のそれぞれに対応した3つの機器中身20を備えている。
【0012】
機器中身20はそれぞれ、鉄心21、高圧側巻線22、低圧側巻線23、及びスペーサ24を有している。高圧側巻線22は、モールド変圧器10を例えば電力系統に適用した際に高圧電力が入力される1次側の巻線として機能する。また、低圧側巻線23は、モールド変圧器10を例えば電力系統に適用した際に低圧電力を出力する2次側の巻線として機能する。
【0013】
高圧側巻線22及び低圧側巻線23及びは、それぞれ表面が樹脂等の絶縁部材によって覆われている。つまり、高圧側巻線22及び低圧側巻線23の表面は、電気絶縁性を有する樹脂等の絶縁部材によってモールドされている。高圧側巻線22及び低圧側巻線23は、それぞれ中心部に鉄心21が通されてコイルを構成している。この場合、高圧側巻線22は、低圧側巻線23の外周側に設けられている。
【0014】
各相の鉄心21は、
図3に示すように共通の上部ヨーク211及び下部ヨーク212を有しており、各鉄心21の上端部及び下端部がそれぞれ上部ヨーク211及び下部ヨーク212によって相互に連結されている。そして、下部ヨーク212は、容器30の底部に支持固定されている。そのため、容器30に振動が加わった場合でも、少なくとも鉄心21の下端部は、容器30に対して相対的に移動し難い。つまり、少なくとも機器中身20の下端部は、容器30に対して相対的に移動し難くなっている。
【0015】
スペーサ24は、
図1に示すように、高圧側巻線22と低圧側巻線23との間に設けられている。つまり、スペーサ24は、高圧側巻線22の内周側でかつ低圧側巻線23の外周側に設けられている。スペーサ24は、高圧側巻線22及び低圧側巻線23の全周に亘って波型に形成されている。このスペーサ24により、高圧側巻線22と低圧側巻線23との間に空隙25が形成されて、冷却用の気体を流す空間を確保するとともに、高圧側巻線22と低圧側巻線23との間における必要な絶縁強度を確保している。なお、スペーサ24は、高圧側巻線22と低圧側巻線23と間の絶縁強度及び冷却用の空間を確保できる形状であれば波型に限られない。
【0016】
容器30は、モールド変圧器10の外郭を構成するものであり、例えば鋼板等の金属製の筐体を主体として構成されている。容器30は、気密性を有した箱状に構成されている。機器中身20は、容器30の内部に収納されている。本実施形態の場合、三相各相に対応した3つの機器中身20は、
図1に示すように、容器30内において等間隔で一列の直線状に配置されている。このため、容器30は、全体として一方向に長い形状、例えば平面視において長方形となる箱状に形成されている。
【0017】
この場合、隣接する機器中身20同士、及び機器中身20と容器30の内壁面とは、それぞれ離間している。これにより、隣接する機器中身20の間、及び機器中身20と容器30の内壁面との間には、それぞれ隙間301、302が確保されている。この隙間301、302によって、冷却用の気体を流す空間を確保するとともに、各機器中身20間、及び機器中身20と容器30の内壁との間における必要な絶縁強度を確保している。
【0018】
また、容器30は、
図3にも示すように、上部接続ダクト31及び下部接続ダクト32を有している。上部接続ダクト31及び下部接続ダクト32は、容器30内と熱交換器40とを接続している。すなわち、容器30内と熱交換器40とは、接続ダクト31、32を通して相互に連通している。この場合、上部接続ダクト31は、容器30の上部、具体的には巻線22、23の上端よりも上側に設けられている。また、下部接続ダクト32は、上部接続ダクト31の下方でかつ容器30の下部、具体的には巻線22、23の下端よりも下側に設けられている。
【0019】
容器30内は、気密性が維持された密閉空間となっている。この場合、容器30内には大気圧よりも高い圧力のドライエア等が充填される。空気の絶縁耐力はその絶対圧力にほぼ比例する。このため、容器30内に大気圧よりも高い圧力のドライエアを充填することで、モールド変圧器10は、機器中身20を大気圧中に設置した場合に比べてより高い絶縁耐圧を得ることができる。
【0020】
熱交換器40は、容器30の長手方向の両外側にそれぞれ設けられており、上部接続ダクト31及び下部接続ダクト32を介して容器30内に連通している。熱交換器40は、機器中身20の動作によって発生した熱を大気中に放熱する機能を有する。容器30内の気体は、機器中身20で発生した熱によって熱せられると、
図3の白抜き矢印で示したように、機器中身20の外部に形成された隙間301、302、及び機器中身20の内部に形成された空隙25を通って容器30内を上昇する。
【0021】
そして、容器30内を上昇した気体は、上部接続ダクト31を通って熱交換器40内に流入し、気体の熱が熱交換器40の作用によって大気中に放熱される。その後、放熱して温度が下がった気体は、下部接続ダクト32から容器30内に流入し、隙間301、302及び空隙25を通って再び上昇する。このようにして容器30内を自然循環する気体の流れが発生し、その気体の流れによって各機器中身20が自然冷却される。なお、例えば接続ダクト31、32内等に送風機を設けて、容器30内の気体を強制循環させる構成としても良い。これによれば、モールド変圧器10内の冷却効率を更に向上させることができる。
【0022】
また、モールド変圧器10は、
図1及び
図2に示すように、各機器中身20に対応してそれぞれ高圧側ブッシング51、低圧側ブッシング52、高圧側接続導体53、及び低圧側接続導体54、を備えている。ブッシング51、52は、巻線22、23と電力系統や受変電設備等の外線91、92とを、容器30に対して絶縁を確保した状態で電気的に接続する機能を有する。各相のブッシング51、52は、それぞれ各相の機器中身20に対応しており、容器30の天井部35を貫いて設けられている。各ブッシング51、52は、一方の端部が容器30の外部に露出しており、他方の端部が容器30内に挿入されている。この場合、高圧側ブッシング51は、各機器中身20の高圧側巻線22に対応している。また、低圧側ブッシング52は、各機器中身20の低圧側巻線23に対応している。
【0023】
各高圧側ブッシング51及び各低圧側ブッシング52は、
図1に示すように、それぞれ容器30の長手方向に沿って、等間隔で一列の直線状に配置されている。換言すれば、各高圧側ブッシング51及び各低圧側ブッシング52は、それぞれ各相の機器中身20の配置に沿って等間隔で一列に配置されている。この場合、各高圧側ブッシング51の配置の間隔は、例えば各機器中身20の配置間隔よりも小さい。つまり、各高圧側ブッシング51は、1箇所に集められて配置されている。また、各低圧側ブッシング52の配置間隔も、例えば各高圧側ブッシング51の配置間隔に等しい。
【0024】
また、この場合、各高圧側ブッシング51は、容器30の天井部35において、容器30の幅方向の中心でかつ各機器中身20の中心に対して幅方向の一方側寄りに設けられている。また、各低圧側ブッシング52は、容器30の天井部35において、容器30の幅方向の中心でかつ各機器中身20の中心に対して他方側寄りつまり高圧側ブッシング51とは反対側寄りに設けられている。
【0025】
各ブッシング51、52のうち少なくとも高圧側ブッシング51は、
図1に示すように、平面視において、それぞれ対応する機器中身20及び他の機器中身20のいずれとも重ならない位置に設けられている。本実施形態の場合、各高圧側ブッシング51は、対応する各機器中身20に対して容器30の幅方向の一方側にずらして配置されている。また、低圧側ブッシング52は、平面視において、それぞれ対応する機器中身20と重なる位置、つまり自己が接続される低圧側巻線23を有する機器中身20の上方に設けられている。
【0026】
各高圧側ブッシング51は、
図1及び
図2に示すように、容器30の外部において電力系統や受変電設備の高圧側の外線91に接続されており、容器30の内部において高圧側接続導体53に接続されている。また、各低圧側ブッシング52も、高圧側ブッシング51と同様に、容器30の外部において電力系統や受変電設備の低圧側の外線92に接続されており、容器30の内部において低圧側接続導体54に接続されている。これにより、容器30内の各機器中身20は、容器30から絶縁を確保した状態で外線91、92に電気的に接続される。
【0027】
高圧側接続導体53は、高圧側巻線22と高圧側ブッシング51とを電気的に接続するものである。高圧側接続導体53は、
図2に示すように、導電性を有する部材で構成された導体部531と、この導体部531の外側表面を覆う樹脂等の絶縁部材532と、を有して構成されている。つまり、高圧側接続導体53は、導体部531の外側表面が樹脂等の絶縁部材でモールドされている。導体部531は、例えば複数の導線を撚ったもので構成されている。また、詳細は図示しないが、低圧側接続導体54も、高圧側接続導体53と同様に、導電性を有する導体部と、この導体の外側表面を覆う樹脂等の絶縁部材と、を有して構成されている。つまり、低圧側接続導体54も、導体部の外側表面が樹脂等の絶縁部材でモールドされている。
【0028】
この場合、高圧側接続導体53には、低圧側接続導体54よりも大電流が流れる。そのため、高圧側接続導体53の導体部531の直径は、低圧側接続導体54の導体部の直径よりも太く、また、高圧側接続導体53の絶縁部材532は、低圧側接続導体54の絶縁部材よりも厚い。このため、高圧側接続導体53は、低圧側接続導体54よりも剛性が高い。本実施形態の場合、高圧側接続導体53は、柔軟性に乏しく、折り曲げが困難となっている。つまり、本実施形態の場合、高圧側接続導体53は、作業者の力では容易には折り曲げることが出来ず、仮に強引に折り曲げた場合には絶縁部材532が破損してしまう程度の剛性を有している。
【0029】
一方、低圧側接続導体54は、高圧側接続導体53ほど大きな電流は流れない。そのため、低圧側接続導体54の導体部の直径は、高圧側接続導体53の導体部531の直径よりも細くすることができ、また、低圧側接続導体54の絶縁部材は、高圧側接続導体53の絶縁部材よりも薄くすることができる。そのため、低圧側接続導体54は、高圧側接続導体53よりも比較的柔軟性を有したものとすることができる。
【0030】
また、モールド変圧器10は、複数の規制部材61、62、63を備えている。規制部材61、62、63は、容器39の内壁面と鉄心21とに接続されており、容器30に対して鉄心21の相対的な移動を規制する。この場合、各規制部材61、62、63は、いずれも巻線22、23の上側において、鉄心21に接続されている。また、本実施形態の場合、規制部材61、62、63は、剛性を有して弾性変形不可に構成されており、例えば金属製の棒で構成されている。なお、規制部材61、62、63の外側表面は、絶縁部材で覆われていても良い。
【0031】
規制部材61、62、63のうち水平方向でかつ容器30の長手方向に伸びるようにして設けられたものを、長手方向規制部材61と称する。長手方向規制部材61の一方の端部は、
図1に示すように、上部ヨーク211の長手方向の端部に接続されている。また、長手方向規制部材61の他方の端部は、容器30の内壁面に接続されている。この場合、長手方向規制部材61の他方の端部は、容器30の内壁面において長手方向規制部材61と上部ヨーク211との接続箇所から最短距離となる位置に接続されている。この長手方向規制部材61は、鉄心21つまり各機器中身20に対して、水平方向でかつ容器30の長手方向の移動つまり揺れを規制する。
【0032】
規制部材61、62、63のうち水平方向でかつ容器30の幅方向に伸びるようにして設けられたものを、幅方向規制部材62と称する。幅方向規制部材62の一方の端部は、上部ヨーク211の幅手方向の縁部に接続されている。この場合、幅方向規制部材62の一方の端部は、上部ヨーク211の幅手方向の縁部分でかつ上部ヨーク211の両端付近に接続されている。また、幅方向規制部材62の他方の端部は、容器30の内壁面に接続されている。この場合、幅方向規制部材62の他方の端部は、容器30の内壁面において幅方向規制部材62と上部ヨーク211との接続箇所から最短距離となる位置に接続されている。この幅方向規制部材62は、鉄心21つまり各機器中身20に対して、水平方向でかつ容器30の幅方向の移動つまり揺れを規制する。
【0033】
そして、規制部材61、62、63のうち上下方向に伸びるようにして設けられたものを、上下方向規制部材63と称する。上下方向規制部材63の一方の端部は、上部ヨーク211の上下方向の上面部分に接続されている。この場合、上下方向規制部材63の一方の端部は、上部ヨーク211の上下方向の上面部分でかつ上部ヨーク211の長手方向の両端付近に接続されている。また、上下方向規制部材63の他方の端部は、容器30の内壁面に接続されている。この場合、上下方向規制部材63の他方の端部は、容器30の内壁面において上下方向規制部材63と上部ヨーク211との接続箇所から最短距離となる位置に接続されている。この上下方向規制部材63は、鉄心21つまり各機器中身20に対して、水平方向でかつ容器30の幅方向の移動つまり揺れを規制する。
【0034】
なお、各規制部材61、62、63と上部ヨーク211との接続箇所、及び各規制部材61、62、63と容器30との接続箇所は、揺動不可となるように完全に固定しても良いし、揺動可能な構成にしても良い。また、各規制部材61、62、63の接続箇所は、上述したものに限られない。各規制部材61、62、63は、例えば上部ヨーク211の長手方向の中央部分に接続する構成としても良い。
【0035】
以上説明した実施形態によれば、モールド変圧器10は、機器中身20と、容器30と、規制部材61、62、63と、を備えている。機器中身20は、高圧側巻線22及び低圧側巻線23と、巻線22、23の中心部に通された鉄心21と、を有し、巻線22、23の表面が絶縁部材で覆われている。容器30は、各機器中身20を収容する。そして、規制部材61、62、63は、容器30と鉄心21とに接続されて、容器30に対して鉄心21の相対的な移動つまり機器中身20の揺れを規制する。
【0036】
これによれば、例えば搬送時や設置作業の際にモールド変圧器10に振動が加わった場合であっても、規制部材61、62、63によって鉄心21の移動が規制されるため、容器30に対する鉄心21の相対的な移動つまり機器中身20の揺れが抑制される。その結果、高圧側接続導体53が揺れて機器中身20に接触したり隣接する高圧側接続導体53同士が接触したりして、高圧側接続導体53の絶縁部材532が破損することを抑制することができる。
【0037】
ここで、下部ヨーク212は、容器30の底部に支持固定されていることから、容器30に振動が加わった場合には、機器中身20は、下部ヨーク212を支点に揺れる可能性がある。この場合、支点から離れるほどつまり鉄心21の上部に行くほど揺れの幅は大きくなる。これに対し、本実施形態において、各規制部材61、62、63は、いずれも巻線22、23よりも上側部分で鉄心21に接続されている。これによれば、揺れ易い鉄心21の上側部分における揺れを効果的に抑制することができる。
【0038】
また、モールド変圧器10は、複数の機器中身20を備えるとともに、上部ヨーク211を備えている。上部ヨーク211は、各機器中身20に対応した鉄心21の上端部を相互に連結している。そして、規制部材61、62、63は、上部ヨーク211に接続されている。これによれば、規制部材61、62、63は、各機器中身20に対して個別に対応させる必要がない。つまり、各機器中身20で、規制部材61、62、63を共用できるため、規制部材61、62、63の数を低減することができる。その結果、少ない数の規制部材61、62、63で、複数の機器中身20の揺れを効果的に抑制することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図4及び
図5を参照して説明する。
第2実施形態において、規制部材61、62、63は、それぞれ弾性変形部611、612、613を更に備えている。弾性変形部611、612、613は、例えばダンパであって、鉄心21に加わる揺れを吸収する。
これによっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0040】
なお、上記各実施形態において、モールド変圧器10は、水平及び上下の三方向に対する機器中身20の移動を規制する規制部材61、62、63を全て備えている必要はない。モールド変圧器10は、水平及び上下の三方向に対する機器中身20の移動を規制する規制部材61、62、63のうち、少なくとも一方向を規制する規制部材を備えていれば良い。
【0041】
また、上記各実施形態において、各規制部材61、62、63は、いずれも上部ヨーク211に直接接続されているが、これに限られず、例えば各規制部材61、62、63と上部ヨーク211との間に他の構成部品を設けても良い。つまり、各規制部材61、62、63は、他の部品を介して間接的に鉄心21に接続されていても良い。
また、上記各実施形態では、モールド形静止誘導機器の一例としてモールド変圧器について説明したが、これに限られず、モールド形リアクトルでも良い。
【0042】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれる内容と同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
図面中、10はモールド変圧器(モールド形静止誘導機器)、20は機器中身、21は鉄心、211は上部ヨーク、22は高圧側巻線(巻線)、23は低圧側巻線(巻線)、30は容器、61は長手方向規制部材(規制部材)、62は幅方向規制部材(規制部材)、63は上下方向規制部材(規制部材)、を示す。