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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20240509BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240509BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H02M7/12 H
H02M7/48 K
H02M7/48 M
B66B5/02 U
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023008884
(22)【出願日】2023-01-24
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】向 雲
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/122701(WO,A1)
【文献】特開2003-169496(JP,A)
【文献】特開平11-275872(JP,A)
【文献】国際公開第2020/250561(WO,A1)
【文献】特開2022-140897(JP,A)
【文献】特開2017-060396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 7/48
B66B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換し、3相交流電力に対応した第1乃至第3アームを有し、前記第1乃至第3アームの各々は、直列接続された第1及び第2スイッチング素子で構成される、コンバータと、
前記交流電源と前記コンバータとを接続し、前記第1乃至第3アームに対応して設けられた第1乃至第3電源線と、
前記第1乃至第3電源線と前記第1乃至第3アームとの接続を切り替える第3乃至第5スイッチング素子と、
前記第1乃至第3電源線に流れる3相交流電流を合計したアンバランス電流を測定する零相電流計と、
前記零相電流計の測定値に基づいて、前記コンバータの相間短絡を検出する短絡検出回路と、
前記相間短絡が検出された場合に、前記第3乃至第5スイッチング素子をオフする遮断回路と、
を具備するエレベータシステム。
【請求項2】
交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換し、3相交流電力に対応した第1乃至第3アームを有し、前記第1乃至第3アームの各々は、直列接続された第1及び第2スイッチング素子で構成される、コンバータと、
前記交流電源と前記コンバータとを接続し、前記第1乃至第3アームに対応して設けられた第1乃至第3電源線と、
前記第1乃至第3電源線と前記第1乃至第3アームとの接続を切り替える第3乃至第5スイッチング素子と、
前記第1乃至第3電源線にそれぞれ流れる交流電流を測定する第1乃至第3電流測定器と、
前記第1乃至第3電流測定器の測定値に基づいて、前記第1乃至第3電源線に流れる3相交流電流を合計したアンバランス電流を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路の検出結果に基づいて、前記コンバータの相間短絡を検出する短絡検出回路と、
前記相間短絡が検出された場合に、前記第3乃至第5スイッチング素子をオフする遮断回路と、
を具備するエレベータシステム。
【請求項3】
前記短絡検出回路は、前記アンバランス電流が閾値より大きい場合に、前記相間短絡が発生したと判定する
請求項1又は2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
交流電源から供給される第1交流電力を直流電力に変換し、3相交流電力に対応した第1乃至第3アームを有し、前記第1乃至第3アームの各々は、直列接続された第1及び第2スイッチング素子で構成される、コンバータと、
前記直流電力を第2交流電力に変換し、前記第2交流電力をモータに供給するインバータと、
前記コンバータと前記インバータとの間に接続された平滑コンデンサと、
前記交流電源と前記コンバータとを接続し、前記第1乃至第3アームに対応して設けられた第1乃至第3電源線と、
前記第1乃至第3電源線と前記第1乃至第3アームとの接続を切り替える第3乃至第5スイッチング素子と、
前記平滑コンデンサの放電電流を測定する電流測定器と、
前記電流測定器の測定値に基づいて、前記コンバータの相間短絡を検出する短絡検出回路と、
前記相間短絡が検出された場合に、前記第3乃至第5スイッチング素子をオフする遮断回路と、
を具備するエレベータシステム。
【請求項5】
前記短絡検出回路は、前記放電電流が閾値より大きい場合に、前記相間短絡が発生したと判定する
請求項4に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記第1及び第2スイッチング素子のエミッタ-コレクタ間電圧を測定する電圧測定器と、
前記電圧測定器の測定値に基づいて、前記第1乃至第3アームに短絡が発生したか否かを判定する判定回路と、
前記第1乃至第3アームに短絡が発生した場合に、前記第1及び第2スイッチング素子をオフする駆動回路と、
さらに具備する
請求項1、2、4のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記駆動回路は、前記相間短絡が発生した場合に、前記第1及び第2スイッチング素子をオフする
請求項6に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記コンバータは、前記第1及び第2スイッチング素子にそれぞれ逆並列接続された第1及び第2ダイオードを含む
請求項1、2、4のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項9】
電力回生時にモータから供給される交流電力を直流電力に変換し、3相交流電力に対応した第1乃至第3アームを有し、前記第1乃至第3アームの各々は、直列接続された第1及び第2スイッチング素子で構成される、インバータと、
前記モータと前記インバータとを接続し、前記第1乃至第3アームに対応して設けられた第1乃至第3電源線と、
前記第1乃至第3電源線と前記第1乃至第3アームとの接続を切り替える第3乃至第5スイッチング素子と、
前記第1乃至第3電源線に流れる3相交流電流を合計したアンバランス電流を測定する零相電流計と、
前記零相電流計の測定値に基づいて、前記インバータの相間短絡を検出する短絡検出回路と、
前記相間短絡が検出された場合に、前記第3乃至第5スイッチング素子をオフする遮断回路と、
を具備するエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、コンバータ及びインバータを含む電力変換装置を備える。コンバータは、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換する。インバータは、コンバータから供給される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力をモータに供給する。
【0003】
コンバータは、IGBTなどで構成される複数のスイッチング素子を備える。スイッチング素子に短絡等の故障が発生すると、故障したスイッチング素子を経由した短絡電流が発生する可能性がある。この短絡電流が発生すると、コンバータを構成する素子、及びコンバータに接続される複数の回路が破壊される可能性がある。よって、スイッチング素子に短絡等の故障が発生した場合、直ちにエレベータを保護する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5976873号公報
【文献】特許第3577827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、短絡による故障から回路を保護することが可能なエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るエレベータシステムは、交流電源から供給される第1交流電力を直流電力に変換し、3相交流電力に対応した第1乃至第3アームを有し、前記第1乃至第3アームの各々は、直列接続された第1及び第2スイッチング素子で構成される、コンバータと、前記交流電源と前記コンバータとを接続し、前記第1乃至第3アームに対応して設けられた第1乃至第3電源線と、前記第1乃至第3電源線と前記第1乃至第3アームとの接続を切り替える第3乃至第5スイッチング素子と、前記第1乃至第3電源線に流れる3相交流電流を合計したアンバランス電流を測定する零相電流計と、前記零相電流計の測定値に基づいて、前記コンバータの相間短絡を検出する短絡検出回路と、前記相間短絡が検出された場合に、前記第3乃至第5スイッチング素子をオフする遮断回路とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係るエレベータシステムの全体構成を説明するブロック図である。
図2図2は、エレベータシステムの主要部を説明するブロック図である。
図3図3は、エレベータシステムの保護動作を説明するフローチャートである。
図4図4は、コンバータにおける相間短絡の一例を説明する模式図である。
図5図5は、第2実施形態に係るエレベータシステムの主要部を説明するブロック図である。
図6図6は、第3実施形態に係るエレベータシステムの主要部を説明するブロック図である。
図7図7は、エレベータシステムの保護動作を説明するフローチャートである。
図8図8は、第4実施形態に係るエレベータシステムの主要部を説明するブロック図である。
図9図9は、エレベータシステムの保護動作を説明するフローチャートである。
図10図10は、インバータにおける相間短絡の一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。各機能ブロックは、ハードウェア及びソフトウェアのいずれかまたは両者を組み合わせたものとして実現することができる。各機能ブロックが以下の例のように区別されていることは必須ではない。例えば、一部の機能が例示の機能ブロックとは別の機能ブロックによって実行されてもよい。さらに、例示の機能ブロックがさらに細かい機能サブブロックに分割されていてもよい。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
[1] 第1実施形態
[1-1] エレベータシステム1の構成
図1は、第1実施形態に係るエレベータシステム1の全体構成を説明するブロック図である。エレベータシステム1は、モータ3、トラクションシーブ4、乗りかご5、ロープ6、釣り合い錘7、電力変換装置10、及び制御装置14を備える。釣り合い錘7は、カウンタウエイトとも呼ばれる。
【0010】
電力変換装置10は、交流電源2から3相交流電力を受ける。電力変換装置10は、コンバータ11、平滑コンデンサ12、及びインバータ13を備える。コンバータ11は、交流電源2から供給される3相交流電力を、PWM(Pulse Width Modulation)制御により直流電力に変換する。
【0011】
平滑コンデンサ12は、コンバータ11から出力された直流電圧を平滑する。
【0012】
インバータ13は、コンバータ11から平滑コンデンサ12を介して供給された直流電力を、PWM制御により任意の周波数及び任意の電圧値の3相交流電力に変換する。インバータ13により生成された3相交流電力は、モータ3に供給される。
【0013】
モータ3は、3相交流電力を用いて回転駆動する。モータ3の回転軸には、トラクションシーブ4が取り付けられる。
【0014】
乗りかご5、及び釣り合い錘7は、昇降路内に設けられる。乗りかご5は、かご用ガイドレール(図示せず)にガイドされ、釣り合い錘7は、ウエイト用ガイドレール(図示せず)にガイドされ、それぞれが昇降可能となっている。乗りかご5と釣り合い錘7とは、ロープ6によって連結される。ロープ6は、トラクションシーブ4に架設される。
【0015】
モータ3が回転駆動することで、トラクションシーブ4が回転する。これにより、トラクションシーブ4に巻回されたロープ6が移動し、乗りかご5及び釣り合い錘7がつるべ式に昇降する。乗りかご5は、昇降路内を昇降し、複数の乗り場の間を移動する。
【0016】
エレベータシステム1の全体の制御は、制御装置14によって実行される。制御装置14は、制御盤とも呼ばれる。制御装置14は、昇降路の壁面、又は昇降路の最上部に設けられた機械室に設置される。
【0017】
制御装置14は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、所定の制御プログラム等を格納するROM(Read Only Memory)、CPUの演算結果を一時的に格納するRAM(Random Access Memory)、及びセンサなどの外部装置の信号を処理する入出力インターフェースなどを備える。
【0018】
制御装置14は、種々のセンサ、種々の検出器、及びエレベータシステム1の各部と配線を介して電気的に接続され、エレベータシステム1の動作を統括的に制御する。制御装置14は、モータ3の駆動制御、及び乗りかご5の運行制御などを行う。
【0019】
図2は、エレベータシステム1の主要部を説明するブロック図である。
【0020】
コンバータ11は、正極線PL及び負極線NLを介して平滑コンデンサ12に接続される。
【0021】
コンバータ11は、6個のスイッチング素子20-1~20-6、及び6個のダイオード21を備える。本明細書において、枝番付の参照符号に共通する説明は、枝番を省略して表記し、この枝番が省略された参照符号に関する説明は、枝番付の参照符号の全てに共通する。
【0022】
スイッチング素子20は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成される。スイッチング素子20は、オン/オフを切り替えることが可能である素子であれば、特定のものに限定されない。スイッチング素子20は、バイポーラトランジスタ、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、又はGTO(Gate Turn Off thyristor)などを用いてもよい。
【0023】
スイッチング素子20-1、20-2は、正極線PLと負極線NLとの間に直列接続される。具体的には、スイッチング素子20-1のコレクタは正極線PLに接続され、スイッチング素子20-1のエミッタはスイッチング素子20-2のコレクタに接続され、スイッチング素子20-2のエミッタは負極線NLに接続される。同様に、スイッチング素子20-3、20-4は、正極線PLと負極線NLとの間に直列接続され、スイッチング素子20-5、20-6は、正極線PLと負極線NLとの間に直列接続される。スイッチング素子20-1~20-6のゲートは、後述するゲート駆動回路30に接続される。
【0024】
直列接続された2個のスイッチング素子20-1、20-2は、アームと呼ばれる。スイッチング素子20-3~20-6についても同様である。すなわち、コンバータ11は、3個のアームを備える。3個のアームはそれぞれ、3相交流電圧に対応して設けられる。
【0025】
6個のダイオード21はそれぞれ、スイッチング素子20-1~20-6に逆並列接続される。ダイオード21は、還流ダイオードであり、スイッチング素子20に逆流電流が供給された場合に、スイッチング素子20を保護する機能を有する。
【0026】
エレベータシステム1は、6個の電圧測定器22、3個のスイッチング素子23-1~23-3、3相接触器24、及び零相電流計25を備える。
【0027】
6個の電圧測定器22はそれぞれ、スイッチング素子20-1~20-6のコレクタ- エミッタ間電圧Vceを測定する。各電圧測定器22は、対応するスイッチング素子20のコレクタ-エミッタ間に接続される。6個の電圧測定器22により測定されたコレクタ- エミッタ間電圧Vceは、制御装置14に送られる。
【0028】
スイッチング素子23は、例えばバイポーラトランジスタ(PNPバイポーラトランジスタ)で構成される。スイッチング素子23は、MOSFET、IGBT、無接点リレー(SSR:Solid State Relay)、又は接触器などを用いてもよい。スイッチング素子23は、高速なオン/オフ動作が可能な半導体素子であることが望ましい。
【0029】
スイッチング素子23-1のエミッタは、R相電圧用の電源線RLに接続され、スイッチング素子23-1のコレクタは、スイッチング素子20-1とスイッチング素子20-2との接続ノードに接続される。スイッチング素子23-2のエミッタは、S相電圧用の電源線SLに接続され、スイッチング素子23-2のコレクタは、スイッチング素子20-3とスイッチング素子20-4との接続ノードに接続される。スイッチング素子23-3のエミッタは、T相電圧用の電源線TLに接続され、スイッチング素子23-3のコレクタは、スイッチング素子20-5とスイッチング素子20-6との接続ノードに接続される。スイッチング素子23-1~23-3は、アームに短絡が発生した場合に、交流電源2とコンバータ11とを高速に遮断する機能を有する。
【0030】
交流電源2は、R相電圧、S相電圧、及びT相電圧を含む。3相接触器24は、a接点の接触器であり、3相分の接点を有する。3相接触器24のコンバータ11側の3個の端子は、電源線RL、SL、TLに接続される。3相接触器24は、交流電源2とコンバータ11との3相経路を導通又は遮断する。3相接触器24の動作は、制御装置14によって制御される。
【0031】
零相電流計25は、3相接触器24とコンバータ11との間に設けられ、電源線RL、SL、TLの経路に設けられる。零相電流計25は、電源線RL、SL、TLに流れる3相交流電流の合計値を測定する。零相電流計25は、例えば零相変流器を用いて構成される。零相電流計25は、3相交流電流の零相電流を測定するとともに、3相交流電流が不平衡である場合に電源線RL、SL、TLに流れる3相交流電流を合計したアンバランス電流を測定する。3相交流電流が平衡である場合、零相電流計25により電流は検出されない。
【0032】
制御装置14は、ゲート駆動回路30、コンバータ制御部31、ゲート駆動回路32、インバータ制御部33、アーム短絡判定回路34、遮断回路35、相間短絡検出回路36、短絡原因判定部37、及び記憶部38を備える。
【0033】
ゲート駆動回路30は、コンバータ11のスイッチング素子20-1~20-6のゲートに接続される。ゲート駆動回路30は、スイッチング素子20-1~20-6を駆動し、スイッチング素子20-1~20-6のオン/オフを制御する。
【0034】
コンバータ制御部31は、PWM制御を実行し、ゲート駆動回路30の動作を制御する。そして、コンバータ制御部31は、コンバータ11が所望の直流電力を生成するように制御する。
【0035】
ゲート駆動回路32は、インバータ13の複数のスイッチング素子のゲートに接続される。ゲート駆動回路32は、スイッチング素子を駆動し、スイッチング素子のオン/オフを制御する。
【0036】
インバータ制御部33は、PWM制御を実行し、ゲート駆動回路32の動作を制御する。そして、インバータ制御部33は、インバータ13が所望の3相交流電力を生成するように制御する。
【0037】
アーム短絡判定回路34は、コンバータ11に含まれるスイッチング素子20-1~20-6に接続された6個の電圧測定器22の測定値を受ける。アーム短絡判定回路34は、電圧測定器22の測定値に基づいて、スイッチング素子20-1~20-6に短絡が発生したか否かを判定するとともに、コンバータ11のアーム短絡が発生したか否かを判定する。アーム短絡(上下アーム短絡ともいう)とは、アームを構成する直列接続された2個のスイッチング素子の少なくとも1つに故障(短絡)が発生して、アームに短絡電流が流れることをいう。
【0038】
遮断回路35は、スイッチング素子23-1~23-3のゲートに接続される。遮断回路35は、スイッチング素子23-1~23-3のオン/オフを制御する。
【0039】
相間短絡検出回路36は、零相電流計25から測定値を受ける。相間短絡検出回路36は、零相電流計25の測定値に基づいて、相間短絡を検出する。相間短絡とは、R相、S相、T相の3相交流電力が供給される配線の少なくとも2相用の配線が短絡することをいう。
【0040】
短絡原因判定部37は、アーム短絡判定回路34の判定結果、及び相間短絡検出回路36の検出結果を受ける。短絡原因判定部37は、アーム短絡判定回路34の判定結果、及び相間短絡検出回路36の検出結果に基づいて、短絡原因を判定する。
【0041】
記憶部38は、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、及びSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置と、RAM(Random Access Memory)、及びレジスタ等の揮発性記憶装置とを含む。記憶部38は、短絡原因判定部37から送られる短絡原因に関する情報を格納する。また、記憶部38は、制御装置14が実行するプログラム、及び制御装置14の制御に必要な各種データなども格納する。
【0042】
[1-2] 動作
上記のように構成されたエレベータシステム1の動作について説明する。
【0043】
まず、エレベータシステム1の基本的な動作について説明する。制御装置14は、3相接触器24を導通させる。遮断回路35は、スイッチング素子23-1~23-3をオンする。これにより、交流電源2からコンバータ11に3相交流電力が供給される。制御装置14は、コンバータ11及びインバータ13をPWM制御し、モータ3を回転させる。これにより、乗りかご5が昇降する。
【0044】
次に、エレベータシステム1の保護動作について説明する。図3は、エレベータシステム1の保護動作を説明するフローチャートである。
【0045】
遮断回路35は、相間短絡保護用のスイッチング素子23-1~23-3をオンする(ステップS100)。その後、制御装置14は、モータ3を駆動するとともに、乗りかご5の運行制御を行う。
【0046】
アーム短絡判定回路34は、6個の電圧測定器22の測定値を監視している。アーム短絡判定回路34は、電圧測定器22の測定値に基づいて、スイッチング素子20-1~20-6に短絡が発生したか否かを監視し、また、コンバータ11にアーム短絡が発生したか否かを監視している(ステップS101)。
【0047】
相間短絡検出回路36は、零相電流計25の測定値を監視している。相間短絡検出回路36は、零相電流計25の測定値に基づいて、電源線RL、SL、TLにアンバランス電流が発生したか否かを監視している(ステップS102)。相間短絡検出回路36は、零相電流計25の測定値がおおよそゼロである場合、アンバランス電流が発生していないと判定する。相間短絡検出回路36は、零相電流計25の測定値が閾値よりより大きい場合、アンバランス電流が発生したと判定する。相間短絡検出回路36の閾値は、ゼロに近い値に設定され、零相電流計25の誤差などを考慮して設定される。
【0048】
アーム短絡が発生した場合(ステップS102=Yes)、相間短絡検出回路36は、相間短絡保護用のスイッチング素子23-1~23-3をオフする(ステップS103)。続いて、ゲート駆動回路30は、コンバータ11を構成するスイッチング素子20-1~20-6をオフする(ステップS104)。これにより、アーム短絡による素子の2次破壊を防ぐことができる。
【0049】
アンバランス電流が発生した場合(ステップS102=Yes)、相間短絡検出回路36は、コンバータ11に相間短絡が発生したと判定する。相間短絡検出回路36は、相間短絡保護用のスイッチング素子23-1~23-3をオフする(ステップS103)。これにより、相間短絡による素子の2次破壊を防ぐことができる。
【0050】
図4は、コンバータ11における相間短絡の一例を説明する模式図である。例えばスイッチング素子20-5が故障し、スイッチング素子20-5に短絡が発生したものとする。
【0051】
スイッチング素子20-5が短絡すると、スイッチング素子20-5に大きなコレクタ電流が短絡電流として流れる。このとき、コレクタ電流の上昇に伴い、正常時に比べてコレクタ-エミッタ間電圧Vceが大きくなる。アーム短絡判定回路34は、スイッチング素子20-5のコレクタ-エミッタ間電圧Vceに基づいて、スイッチング素子20-5に短絡が発生したと判定するとともに、スイッチング素子20-5、20-6からなるアームに短絡が発生したと判定する。アーム短絡判定回路34は、スイッチング素子20-1~20-6をオフするように動作する。これにより、アーム短絡からエレベータシステム1を保護することができる。
【0052】
スイッチング素子20-1~20-6をオフした場合でも、図4の破線で示す経路(S相からT相を経由する経路)で、短絡電流Isが流れる。すなわち、アーム短絡のみを保護しても、相間短絡を保護できない場合がある。短絡電流Isが流れると、零相電流計25は、アンバランス電流を検出する。相間短絡検出回路36は、零相電流計25の測定値に基づいて、スイッチング素子23-1~23-3をオフする。これにより、相間短絡からエレベータシステム1を保護することができる。
【0053】
続いて、短絡原因判定部37は、アーム短絡判定回路34の判定結果、及び相間短絡検出回路36の検出結果に基づいて、短絡原因を判定する(ステップS105)。短絡原因判定部37により判定される短絡原因は、どのスイッチング素子が故障したか、アーム短絡が発生したか否か、どのアームが短絡したか、及び相間短絡が発生したか否かの情報を含む。
【0054】
続いて、短絡原因判定部37は、短絡原因に関する情報を記憶部38に格納する(ステップS106)。
【0055】
[1-3] 第1実施形態の効果
第1実施形態によれば、アーム短絡保護では検出できない相間短絡を検出することができる。そして、相間短絡からエレベータシステム1を保護することができる。ひいては、コンバータ11の故障を検出できるとともに、コンバータ11の故障からエレベータシステム1を保護することができる。また、短絡による故障から回路を保護することが可能なエレベータシステム1を実現できる。
【0056】
また、相間短絡が発生した場合に、高速に交流電源2とコンバータ11とを遮断することができる。また、3相接触器24の遮断よりも速く交流電源2とコンバータ11とを遮断することができる。これにより、短絡電流がコンバータ11及び他の回路に流れるのを防ぐことができるため、2次破壊を防ぐことができる。
【0057】
また、短絡原因を記憶部38に記憶しておくことができる。これにより、記憶部38に格納された情報に基づいて、短絡の検証を行うことができる。
【0058】
[2] 第2実施形態
第2実施形態は、3相交流電流のアンバランス電流を検出する他の実施例である。
【0059】
図5は、第2実施形態に係るエレベータシステム1の主要部を説明するブロック図である。エレベータシステム1は、3個の電流測定器26-1~26-3、及びアンバランス電流検出回路39を備える。
【0060】
電流測定器26-1は、3相接触器24とコンバータ11との間に設けられ、電源線RLの経路に設けられる。電流測定器26-2は、3相接触器24とコンバータ11との間に設けられ、電源線SLの経路に設けられる。電流測定器26-3は、3相接触器24とコンバータ11との間に設けられ、電源線TLの経路に設けられる。電流測定器26-1~26-3はそれぞれ、電源線RL、SL、TLに流れる交流電流の瞬時値を測定する。
【0061】
アンバランス電流検出回路39は、電流測定器26-1~26-3から測定値を受ける。アンバランス電流検出回路39は、電源線RL、SL、TLに流れる3相交流電流を合計したアンバランス電流を測定し、電源線RL、SL、TLにアンバランス電流が流れたか否かを検出する。
【0062】
相間短絡検出回路36は、アンバランス電流検出回路39によりアンバランス電流が検出された場合、相間短絡が発生したと判定し、相間短絡保護用のスイッチング素子23-1~23-3をオフする。また、相間短絡検出回路36は、アンバランス電流検出回路39によりアンバランス電流が検出されない場合、相間短絡が発生していないと判定する。
【0063】
その他の構成及び動作は、第1実施形態と同じである。
【0064】
第2実施形態によれば、3相交流電流のアンバランス電流をより精度よく検出することができる。これにより、相間短絡をより正確に検出することができる。
【0065】
[3] 第3実施形態
第3実施形態は、平滑コンデンサ12からの放電電流を測定し、この測定結果に応じてコンバータ11に相間短絡が発生したか否かを判定するようにしている。
【0066】
図6は、第3実施形態に係るエレベータシステム1の主要部を説明するブロック図である。エレベータシステム1は、電流測定器27を備える。
【0067】
電流測定器27は、正極線PLと平滑コンデンサ12とを接続する配線に設けられる。電流測定器27は、平滑コンデンサ12の放電電流を測定する。
【0068】
相間短絡検出回路36は、電流測定器27から測定値を受ける。相間短絡検出回路36は、電流測定器27からの測定値に基づいて、コンバータ11に相間短絡が発生したか否かを判定する。
【0069】
図7は、エレベータシステム1の保護動作を説明するフローチャートである。ステップS100~S101の動作は、第1実施形態と同じである。
【0070】
相間短絡検出回路36は、電流測定器27の測定値を監視している。相間短絡検出回路36は、電流測定器27の測定値が閾値を超えたか否かを判定する(ステップS200)。
【0071】
コンバータ11に相間短絡が発生した場合、平滑コンデンサ12に蓄積された電荷が正極線PL側に放電され、相間短絡の経路を辿ってコンバータ11に放電電流が流れる。放電電流は、コンバータ11の正常動作時に電流測定器27によって測定される電流値より大きい。相間短絡検出回路36は、電流測定器27からの測定値と閾値とを比較する。この閾値は、コンバータ11の正常動作時にコンバータ11から流れる電流より大きく設定される。
【0072】
電流測定器27からの測定値が閾値を超えた場合(ステップS200=Yes)、相間短絡検出回路36は、コンバータ11に相間短絡が発生したと判定する。相間短絡検出回路36は、相間短絡保護用のスイッチング素子23-1~23-3をオフする(ステップS103)。その後の動作は、第1実施形態と同じである。
【0073】
第3実施形態によれば、電流測定を担う装置の構成を簡略化できる。また、相間短絡を検出することができる。
【0074】
[4] 第4実施形態
第4実施形態は、モータ3による電力回生時に、インバータ13で発生する相間短絡を保護するようにしている。
【0075】
[4-1] エレベータシステム1の構成
図8は、第4実施形態に係るエレベータシステム1の主要部を説明するブロック図である。
【0076】
インバータ13は、正極線PL及び負極線NLを介して平滑コンデンサ12に接続される。
【0077】
インバータ13は、6個のスイッチング素子40-1~40-6、及び6個のダイオード41を備える。
【0078】
スイッチング素子40は、例えばIGBTで構成される。スイッチング素子40は、バイポーラトランジスタ、MOSFET、又はGTOなどを用いてもよい。
【0079】
スイッチング素子40-1、40-2は、正極線PLと負極線NLとの間に直列接続される。具体的には、スイッチング素子40-1のコレクタは正極線PLに接続され、スイッチング素子40-1のエミッタはスイッチング素子40-2のコレクタに接続され、スイッチング素子40-2のエミッタは負極線NLに接続される。同様に、スイッチング素子40-3、40-4は、正極線PLと負極線NLとの間に直列接続され、スイッチング素子40-5、40-6は、正極線PLと負極線NLとの間に直列接続される。スイッチング素子40-1~40-6のゲートは、ゲート駆動回路32に接続される。
【0080】
6個のダイオード41はそれぞれ、スイッチング素子40-1~40-6に逆並列接続される。ダイオード41は、還流ダイオードであり、スイッチング素子40に逆流電流が供給された場合に、スイッチング素子40を保護する機能を有する。
【0081】
エレベータシステム1は、6個の電圧測定器42、3個のスイッチング素子43-1~43-3、3相接触器28、及び零相電流計29を備える。
【0082】
6個の電圧測定器42はそれぞれ、スイッチング素子40-1~40-6のコレクタ- エミッタ間電圧Vceを測定する。各電圧測定器42は、対応するスイッチング素子40のコレクタ-エミッタ間に接続される。6個の電圧測定器42により測定されたコレクタ- エミッタ間電圧Vceは、制御装置14に送られる。
【0083】
スイッチング素子43は、例えばバイポーラトランジスタ(PNPバイポーラトランジスタ)で構成される。スイッチング素子43は、MOSFET、IGBT、無接点リレー(SSR)、又は接触器などを用いてもよい。スイッチング素子43は、高速動作が可能な半導体素子であることが望ましい。
【0084】
スイッチング素子43-1のエミッタは、スイッチング素子40-1とスイッチング素子40-2との接続ノードに接続され、スイッチング素子43-1のコレクタは、U相電圧用の電源線ULに接続される。スイッチング素子43-2のエミッタは、スイッチング素子40-3とスイッチング素子40-4との接続ノードに接続され、スイッチング素子43-2のコレクタは、V相電圧用の電源線VLに接続される。スイッチング素子43-3のエミッタは、スイッチング素子40-5とスイッチング素子40-6との接続ノードに接続され、スイッチング素子43-3のコレクタは、W相電圧用の電源線WLに接続される。スイッチング素子43-1~43-3は、アームに短絡が発生した場合に、モータ3とインバータ13とを高速に遮断する機能を有する。
【0085】
モータ3は、U相電圧、V相電圧、及びW相電圧の3相交流電圧で駆動する。3相接触器28は、a接点の接触器であり、3相分の接点を有する。3相接触器28のインバータ13側の3個の端子は、電源線UL、VL、WLに接続される。3相接触器28は、モータ3とインバータ13との3相経路を導通又は遮断する。3相接触器28の動作は、制御装置14によって制御される。
【0086】
零相電流計29は、3相接触器28とインバータ13との間に設けられ、電源線UL、VL、WLの経路に設けられる。零相電流計29は、電源線UL、VL、WLに流れる3相交流電流の合計値を測定する。零相電流計29は、3相交流電流の零相電流を測定するとともに、3相交流電流が不平衡である場合に電源線UL、VL、WLに流れる3相交流電流を合計したアンバランス電流を測定する。
【0087】
コンバータ11の構成は、第1実施形態と同じである。第1実施形態と同様に、コンバータ11には、アーム短絡保護用の回路、及び相間短絡保護用の回路が付加される。
【0088】
制御装置14は、ゲート駆動回路30、コンバータ制御部31、ゲート駆動回路32、インバータ制御部33、アーム短絡判定回路34、遮断回路35、相間短絡検出回路36、短絡原因判定部37、及び記憶部38を備える。アーム短絡判定回路34、遮断回路35、相間短絡検出回路36、短絡原因判定部37、及び記憶部38は、コンバータ11及びインバータ13の動作を制御する。なお、アーム短絡判定回路34、遮断回路35、相間短絡検出回路36、及び短絡原因判定部37は、コンバータ11及びインバータ13のそれぞれに用意してもよい。
【0089】
ゲート駆動回路32は、インバータ13のスイッチング素子40-1~40-6のゲートに接続される。ゲート駆動回路32は、スイッチング素子40-1~40-6を駆動し、スイッチング素子40-1~40-6のオン/オフを制御する。
【0090】
遮断回路35は、スイッチング素子43-1~43-3のゲートに接続される。遮断回路35は、スイッチング素子43-1~43-3のオン/オフを制御する。
【0091】
[4-2] 動作
上記のように構成されたエレベータシステム1の保護動作について説明する。
【0092】
図9は、エレベータシステム1の保護動作を説明するフローチャートである。以下では、インバータ13の保護動作を中心に説明する。コンバータ11の保護動作は、以下の動作に並行して行われる。コンバータ11の保護動作は、第1実施形態と同じである。
【0093】
遮断回路35は、相間短絡保護用のスイッチング素子43-1~43-3をオンする(ステップS300)。その後、制御装置14は、モータ3を駆動するとともに、乗りかご5の運行制御を行う。
【0094】
制御装置14は、モータ3による電力回生を行うか否かを判定する(ステップS301)。エレベータシステム1の電力回生は、モータ3で発生した回生電力(交流電力)を交流電源2に供給する動作である。エレベータシステム1の電力回生では、モータ3が発電機として機能し、インバータ13がコンバータとして機能し、コンバータ11がインバータとして機能する。電力回生時、インバータ制御部33は、インバータ13が所望の直流電力を生成するように制御し、コンバータ制御部31は、コンバータ11が所望の3相交流電力を生成するように制御する。
【0095】
電力回生を行わない場合(ステップS301=No)、制御装置14は、乗りかご5の運行制御を行う。
【0096】
電力回生を行う場合(ステップS301=Yes)、アーム短絡判定回路34は、電圧測定器42の測定値に基づいて、スイッチング素子40-1~40-6に短絡が発生したか否かを監視し、また、インバータ13にアーム短絡が発生したか否かを監視している(ステップS302)。
【0097】
相間短絡検出回路36は、零相電流計29の測定値を監視している。相間短絡検出回路36は、零相電流計29の測定値に基づいて、電源線UL、VL、WLにアンバランス電流が発生したか否かを監視している(ステップS303)。アンバランス電流の判定方法は、第1実施形態と同じである。
【0098】
アーム短絡が発生した場合(ステップS302=Yes)、相間短絡検出回路36は、相間短絡保護用のスイッチング素子43-1~43-3をオフする(ステップS304)。続いて、ゲート駆動回路32は、インバータ13を構成するスイッチング素子40-1~40-6をオフする(ステップS305)。これにより、アーム短絡による素子の2次破壊を防ぐことができる。
【0099】
アンバランス電流が発生した場合(ステップS303=Yes)、相間短絡検出回路36は、インバータ13に相間短絡が発生したと判定する。相間短絡検出回路36は、相間短絡保護用のスイッチング素子43-1~43-3をオフする(ステップS304)。これにより、相間短絡による素子の2次破壊を防ぐことができる。
【0100】
図10は、インバータ13における相間短絡の一例を説明する模式図である。例えばスイッチング素子40-5が故障し、スイッチング素子40-5に短絡が発生したものとする。
【0101】
アーム短絡判定回路34は、スイッチング素子40-5のコレクタ-エミッタ間電圧Vceに基づいて、スイッチング素子40-5に短絡が発生したと判定するとともに、スイッチング素子40-5、40-6からなるアームに短絡が発生したと判定する。アーム短絡判定回路34は、スイッチング素子40-1~40-6をオフするように動作する。これにより、アーム短絡からエレベータシステム1を保護することができる。
【0102】
スイッチング素子40-1~40-6をオフした場合でも、図10の破線で示す経路(V相からW相を経由する経路)で、短絡電流Isが流れる。すなわち、アーム短絡のみを保護しても、相間短絡を保護できない場合がある。短絡電流Isが流れると、零相電流計29は、アンバランス電流を検出する。相間短絡検出回路36は、零相電流計29の測定値に基づいて、スイッチング素子43-1~43-3をオフする。これにより、相間短絡からエレベータシステム1を保護することができる。
【0103】
続いて、短絡原因判定部37は、アーム短絡判定回路34の判定結果、及び相間短絡検出回路36の検出結果に基づいて、短絡原因を判定する(ステップS306)。続いて、短絡原因判定部37は、短絡原因を記憶部38に格納する(ステップS307)。
【0104】
[4-3] 第4実施形態の効果
第4実施形態によれば、モータ3による電力回生時に、インバータ13における相間短絡からエレベータシステム1を保護することができる。ひいては、インバータ13の故障を検出できるとともに、インバータ13の故障からエレベータシステム1を保護することができる。
【0105】
なお、第2実施形態及び第3実施形態をインバータ13の相間短絡保護に適用してもよい。
【0106】
[5] 変形例
3相接触器24を省略し、3相接触器24の機能を、相間短絡保護用のスイッチング素子23-1~23-3がさらに担うように構成してもよい。この場合、スイッチング素子23-1~23-3は、交流電源2とコンバータ11との3相経路を導通又は遮断する。
【0107】
また、3相接触器28を省略し、3相接触器28の機能を、相間短絡保護用のスイッチング素子43-1~43-3がさらに担うように構成してもよい。この場合、スイッチング素子43-1~43-3は、モータ3とインバータ13との3相経路を導通又は遮断する。
【0108】
また、相間短絡保護用のスイッチング素子23-1~23-3に替えて、電流制限用の抵抗を挿入してもよい。同様に、相間短絡保護用のスイッチング素子43-1~43-3に替えて、電流制限用の抵抗を挿入してもよい。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0110】
1…エレベータシステム、2…交流電源、3…モータ、4…トラクションシーブ、5…乗りかご、6…ロープ、7…釣り合い錘、10…電力変換装置、11…コンバータ、12…平滑コンデンサ、13…インバータ、14…制御装置、20-1~20-6…スイッチング素子、21…ダイオード、22…電圧測定器、23-1~23-3…スイッチング素子、24…3相接触器、25…零相電流計、26-1~26-3…電流測定器、27…電流測定器、28…3相接触器、29…零相電流計、30…ゲート駆動回路、31…コンバータ制御部、32…ゲート駆動回路、33…インバータ制御部、34…アーム短絡判定回路、35…遮断回路、36…相間短絡検出回路、37…短絡原因判定部、38…記憶部、39…アンバランス電流検出回路、40-1~40-6…スイッチング素子、41…ダイオード、42…電圧測定器、43-1~43-3…スイッチング素子。
【要約】
【課題】 短絡による故障から回路を保護することが可能なエレベータシステムを提供する。
【解決手段】 実施形態のエレベータシステムは、3相交流電力に対応した第1乃至第3アームを有し、第1乃至第3アームの各々は、直列接続された第1及び第2スイッチング素子で構成される、コンバータと、交流電源とコンバータとを接続し、第1乃至第3アームに対応して設けられた第1乃至第3電源線と、第1乃至第3電源線と第1乃至第3アームとの接続を切り替える第3乃至第5スイッチング素子と、第1乃至第3電源線に流れる3相交流電流を合計したアンバランス電流を測定する零相電流計と、零相電流計の測定値に基づいて、コンバータの相間短絡を検出する短絡検出回路と、相間短絡が検出された場合に、第3乃至第5スイッチング素子をオフする遮断回路とを含む。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10