(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20240509BHJP
B66B 1/06 20060101ALI20240509BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B66B5/02 P
B66B1/06 E
B66B3/00 L
(21)【出願番号】P 2023114967
(22)【出願日】2023-07-13
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 貴博
(72)【発明者】
【氏名】曽根 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】菅野 豊明
(72)【発明者】
【氏名】玉置 伸
(72)【発明者】
【氏名】西田 岳人
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-055960(JP,A)
【文献】国際公開第2021/124405(WO,A1)
【文献】特開2004-018174(JP,A)
【文献】特開2022-083144(JP,A)
【文献】特許第7173393(JP,B1)
【文献】特開2010-189162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28
B66B 1/00-1/52
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごに自律的に移動可能な自律移動体が乗車可能なエレベータを制御するエレベータ制御装置であって、
前記自律移動体を乗車した状態での前記乗りかごの運転である自律移動体運転を実行する自律移動体運転制御部と、
非常事態の発生が検知された場合に、前記非常事態の発生時における所定の動作の運転である管制運転を実行する管制運転制御部と、
前記自律移動体運転を実行中に、前記非常事態の発生が検知された場合には、前記自律移動体を前記乗りかごに乗車させた状態で、前記非常事態の発生に起因して前記エレベータが正常に運行可能か否か診断する自動診断運転を実行する自動診断運転制御部と、
前記自動診断運転制御部により、前記エレベータが正常に運行可能であると判断された場合に、前記エレベータを仮に復旧させた運転である仮復旧運転を実行する仮復旧運転制御部と、
を備えるエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記仮復旧運転制御部は、前記自動診断運転制御部により、前記エレベータが正常に運行可能であると判断された場合に、前記エレベータを仮に復旧させた運転である仮復旧運転を実行して、前記乗りかごを、前記自律移動体が前記自律移動体運転において定められた前記自律移動体の目的階まで移動する、
請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記乗りかご内
に利用者が存在するか否かを判断する利用者判断部、をさらに備え、
前記自律移動体運転制御部は、前記自律移動体運転として、前記自律移動体のみを前記乗りかごに乗車させて前記乗りかごを運転する自律移動体専用運転と、前記自律移動体の他、利用者を前記乗りかごに乗車させて前記乗りかごを運転する自律移動体非専用運転と、のいずれかを実行し、
前記自動診断運転制御部は、前記自律移動体運転制御部により前記自律移動体非専用運転が実行されていた場合において、前記利用者判断部により前記乗りかごに前記利用者が存在しないと判断された場合に、前記自動診断運転の実行を開始する、
請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記自動診断運転制御部は、前記自律移動体運転制御部により前記自律移動体非専用運転が実行されていた場合において、前記利用者判断部により前記乗りかごに前記利用者が存在すると判断された場合には、前記乗りかごの扉を開状態として、前記利用者の降車を促し、前記利用者判断部により前記乗りかごに前記利用者が存在しなくなったと判断された場合に、前記自動診断運転の実行を開始する、
請求項3に記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
前記利用者判断部は、前記乗りかごの重量を検知する重量検知部で検知された前記乗りかごの重量から、前記自律移動体の重量を差しいた重量が前記乗りかごの重量より大きい場合に、前記利用者が前記乗りかご内に存在すると判断する、
請求項3に記載のエレベータ制御装置。
【請求項6】
前記利用者判断部は、前記乗りかご内を撮像する第1の撮像装置から取得した撮像画像または前記自律移動体に設けられた第2の撮像装置から取得した撮像画像に基づいて、前記利用者が前記乗りかご内に存在するか否かを判断する、
請求項3に記載のエレベータ制御装置。
【請求項7】
前記自動診断運転制御部は、前記自律移動体運転制御部により前記自律移動体専用運転が実行されていた場合には、直ちに、前記自動診断運転の実行を開始する、
請求項3に記載のエレベータ制御装置。
【請求項8】
前記自動診断運転制御部は、前記自律移動体運転制御部により前記自律移動体専用運転が実行されていた場合においても、前記利用者判断部に前記乗りかご内に前記利用者が存在するか否かを判断させ、前記乗りかごに前記利用者が存在しないと判断された場合に、前記自動診断運転の実行を開始する、
請求項3に記載のエレベータ制御装置。
【請求項9】
前記自動診断運転制御部は、前記自動診断運転として、前記自律移動体が前記乗りかごに乗車している状態で実行される第1の診断と、前記自律移動体が前記乗りかごに乗車しているか否かを問わずに実行される第2の診断と、の双方を実行する、
請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項10】
前記非常事態は、地震であり、
前記管制運転制御部は、前記管制運転として、前記地震が発生した場合に、前記乗りかごを現在走行している階の最寄り階まで移動して前記乗りかごの扉を開状態にする、
請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項11】
前記管制運転制御部は、前記管制運転として、さらに、前記最寄り階が、前記自律移動体が前記自律移動体運転において定められた前記自律移動体の目的階である場合に、前記乗りかごが前記最寄り階に到着した場合に、前記自律移動体を最後に降車させる指示を行う、
請求項10に記載のエレベータ制御装置。
【請求項12】
前記管制運転制御部は、さらに、発生した前記地震の震度が所定の震度以上である場合には、前記乗りかごが前記最寄り階に到着した場合でも、前記自律移動体を降車させない指示を行う、
請求項11に記載のエレベータ制御装置。
【請求項13】
乗りかごに自律的に移動可能な自律移動体が乗車可能なエレベータを制御するエレベータ制御装置で実行されるエレベータ制御方法であって、
前記自律移動体を乗車した状態での前記乗りかごの運転である自律移動体運転を実行するステップと、
非常事態の発生が検知された場合に、前記非常事態の発生時における所定の動作の運転である管制運転を実行するステップと、
前記自律移動体運転を実行中に、前記非常事態の発生が検知された場合には、前記自律移動体を前記乗りかごに乗車させた状態で、前記非常事態の発生に起因して前記エレベータが正常に運行可能か否か診断する自動診断運転を実行するステップと、
前記エレベータが正常に運行可能であると判断された場合に、前記エレベータを仮に復旧させた運転である仮復旧運転を実行するステップと、
を含むエレベータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エレベータ制御システムにおいて、地震等の非常事態が発生した場合、エレベータは、最寄り階に着床する等の管制運転を実行し、その後、エレベータの診断を行う自動診断運転を行って、診断結果に問題なければ仮復旧運転を開始している。
【0003】
また、近年のエレベータ制御システムにおいては、ロボット等の自律移動体をエレベータの乗りかごに乗車させて各種作業を実行させて目的階に移動する等の自律移動体運転を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5787806号公報
【文献】特許第7097533号公報
【文献】特許第7099579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような自律移動体運転を行っている場合において、地震等の非常事態が発生し、エレベータが例えば最寄り階に着床する管制運転を開始すると、乗りかごが最寄り階に着床後に乗りかご内の利用者は乗りかごから降車する。しかしながら、乗りかご内の自律移動体は、自律移動体運転で定められた本来の目的階とは異なる階床で降車しなければならず、自律移動体をどのように動作させればよいか不明な状態となる。このため、自動診断運転の後、仮復旧運転が実行された場合、自律移動体の動作の管理が必要となり、管理者の負担が増大してしまう。
【0006】
本実施形態の課題の一つは、非常事態の発生後、エレベータが仮復旧した場合の自律移動体の管理を不要とし、管理者の負担を軽減することができるエレベータ制御装置およびエレベータ制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のエレベータ制御装置は、乗りかごに自律的に移動可能な自律移動体が乗車可能なエレベータを制御するエレベータ制御装置であって、前記自律移動体を乗車した状態での前記乗りかごの運転である自律移動体運転を実行する自律移動体運転制御部と、非常事態の発生が検知された場合に、前記非常事態の発生時における所定の動作の運転である管制運転を実行する管制運転制御部と、前記自律移動体運転を実行中に、前記非常事態の発生が検知された場合には、前記自律移動体を前記乗りかごに乗車させた状態で、前記非常事態の発生に起因して前記エレベータが正常に運行可能か否か診断する自動診断運転を実行する自動診断運転制御部と、前記自動診断運転制御部により、前記エレベータが正常に運行可能であると判断された場合に、前記エレベータを仮に復旧させた運転である仮復旧運転を実行する仮復旧運転制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるエレベータ制御システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる制御盤の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかるロボット管理DBのデータ構造の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる自動診断運転の診断項目の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかるコントローラの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかる昇降機クラウド内のサーバの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかるロボットクラウド内のサーバの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、実施形態にかかるロボットの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施形態にかかるエレベータ制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態にかかるエレベータ制御処理の手順(続き)の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
(実施形態)
図1は、本実施形態にかかるエレベータ制御システム1の全体構成の一例を示す図である。本実施形態のエレベータ制御システム1は、
図1に示すように、エレベータ2A,2Bごとに設けられる制御盤100A,100Bと、エレベータ2A,2Bごとに設けられるコントローラ150A、150Bと、管制室160と、昇降機クラウド200内のサーバ210と、ロボットクラウド300内のサーバ310と、監視センタ400と、を主に備えている。
【0010】
本実施形態では、オフィスビルやマンションビル等のビル3に、二つのエレベータ2A、2Bが設置されている。エレベータ2A,2Bのそれぞれは、各昇降路20A,20B内に乗りかご50A,50Bを備える。この他、各昇降路20A,20B内には、不図示の巻上機およびカウンターウェイトを備える。乗りかご50A,50Bとカウンターウェイトは、それぞれに昇降路20A,20B内に立設された不図示の一対のガイドレールに昇降自在に支持されており、ロープを介して昇降動作する。
【0011】
乗りかご50A,50Bには、利用者5Aの他、自律移動体としてのロボット500A、500Bも乗車可能となっている。
【0012】
乗りかご50A,50Bには、操作盤4A,4Bと、カメラ7A,7Bと、荷重センサ8A,8Bと、が設けられている。
操作盤4A,4Bは、利用者から各種操作を受け付けたり、乗りかご50に各種を報知を行うものである。操作盤4A,4Bには、行き先階の指定や乗りかご50A,50Bの扉を開閉するための押しボタンや非接触センサ、スピーカ、液晶表示部等(いずれも不図示)が設けられている。また、操作盤4A,4Bは、制御盤100A,100Bに有線または無線で接続されている。利用者5A,5Bからの行き先階押しボタンの押下や非接触センサによる検知により、行き先階呼びが制御盤100A,100Bに送出される。
【0013】
カメラ7A,7Bは、乗りかご50A,50B内部を撮影し、撮像画像を制御盤100A,100Bに送出する。
荷重センサ8A,8Bは、乗りかご50A,50Bの底面に設けられ、乗りかご50の重量を検知する。乗りかご50A,50B内に利用者5Aやロボット500A,500Bが乗車している場合には、荷重センサ8A,8Bは、乗りかご50自体の重量の他、乗車している利用者5Aの体重、ロボット500A,500Bの重量も加算されて検知する。荷重センサ8A,8Bは、検知した重量を検知信号として制御盤100a,100Bに送出する。荷重センサ8A,8Bは、重量検知部の一例である。
【0014】
昇降路20A,20Bのそれぞれの内部には、制御盤100A,100Bとコントローラ150A,150Bとが設けられる。制御盤100A、100Bは、乗りかご50A、50Bに設けられた操作盤4A,4Bと無線または有線で接続される。
【0015】
制御盤100A、100Bのそれぞれは、エレベータ2A,2B内の乗りかご50A,50Bの運行を制御する。制御盤100A,100Bのそれぞれは、コントローラ150A,150B,500Cのそれぞれに、有線または無線で接続されている。
【0016】
コントローラ150A,150Bのそれぞれは、ネットワークで昇降機クラウド200内のサーバ210に接続される。コントローラ150A,150Bは、制御盤100A,100Bとサーバ210との間の通信を制御し、制御盤100A,100Bとサーバ210との間でやり取りされる各種信号を仲介するためのインターフェース機能およびハブ機能を備えた仲介装置である。制御盤100A、100Bおよびコントローラ150A,150Bの詳細については後述する。
【0017】
管制室160には、ビル3の管理人が在席し、制御盤100A,100Bに対する各種指示を与える。
【0018】
昇降機クラウド200内のサーバ210は、エレベータ2A,2Bの乗りかご50A,50Bに対する各種制御をコントローラ150A,150Bを介して制御盤100A,100Bに指示したり、制御盤100A,100Bからの各種要求や各種データをコントローラ150A,150Bを介して受信する。昇降機クラウド200内のサーバ210は、ネットワークで監視センタ400(社内サーバ)とロボットクラウド300のサーバ310とに接続される。
【0019】
監視センタ400には、不図示の社内サーバが設置されている。社内サーバは、エレベータ11の関連会社内に設置されるサーバであり、エレベータ2の保守管理や遠隔監視に必要な情報を、エレベータ2A,2Bより収集している。これによれば、エレベータ2A,2Bに不具合が発生した場合に、保守員は、監視センタ400の社内サーバに収集された保守管理に必要な情報を参照して、当該発生した不具合に対応することが可能である。また、昇降機クラウド200を通じて機能やサービスが実行される際、必要に応じて監視センタ400の社内サーバにアクセスして建物やエレベータ情報を参照したり、保守員がエレベータの管理に必要な情報を取得したりすることが可能である。
【0020】
ロボットクラウド300のサーバ310は、昇降機クラウド200のサーバ210から各種要求や各種データを受信する。ロボットクラウド300のサーバ310は、ネットワークで、ビル3内の複数のロボット500A,500B、500Cと接続されており、複数のロボット500A,500B、500Cのそれぞれに対して各種指示を送信する。
昇降機クラウド200のサーバ210、ロボットクラウド300のサーバ310の詳細については後述する。
【0021】
なお、エレベータの数は二つに限定されるものではなく、ビル3内に一つ、あるいは三つ以上設けられていてもよい。このため、昇降路20A、20B、乗りかご50A,50B、制御盤100A、100B、コントローラ150A,150Bの数もエレベータ2A,2Bの数に応じて変わってくる。ここで、二つのエレベータ2A,2B、二つの昇降路20A、20B、二つの乗りかご50A,50B、二つの制御盤100A,100B、二つのコントローラ150A,150Bのそれぞれを区別しない場合には、エレベータ2、昇降路20、乗りかご50、制御盤100、コントローラ150と称する。
【0022】
次に制御盤100について説明ずる。
図2は、実施形態にかかる制御盤100の機能的構成の一例を示すブロック図である。制御盤100は、エレベータ制御装置の一例である。
制御盤100は、
図2に示すように、制御部120と、通信部102と、記憶部110と、を主に備えている。
【0023】
また、制御盤100は、
図2に示すように、火災センサ103と地震計104と荷重センサ8に有線または無線で接続されている。火災センサ103と地震計104は、例えば、乗りかご5内や昇降路20A,20B内に設けられている。荷重センサ8(8A,8B)は上述したとおり乗りかご50に設けられている。
【0024】
火災センサ103は、エレベータ2での火災の発生を検知し、検知信号を制御部120に送出する。地震計104は、地震の発生を検知し、検知信号を制御部120に送出する。ここで、火災発生の旨の検知信号は、火災管制信号とも称される。また、地震発生の旨の検知信号は、地震管制信号とも称される。
【0025】
通信部102は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、制御盤100とコントローラ150との間の通信処理を行う。
記憶部110は、例えばROMやRAMなどの記憶媒体(すなわち、メモリデバイス)である。記憶部110には、ロボット管理データベース111(これ以降、「ロボット管理DB111」と称する)と、運行制御プログラム112と、火災管制プログラム113と、地震管制プログラム114と、ロボット運転制御プログラム115と、自動診断運転プログラム116と、仮復旧運転プログラム117と、が記憶されている。
また、記憶部110には、乗りかご50自体の重量と、乗りかご500にロボット500が乗車した状態での乗りかご50の重量を記憶している。
【0026】
ロボット管理DB111は、エレベータ2を利用するロボット500を管理するためのデータベースである。ロボット管理DB111は、ロボットIDと、重量と、乗車状態と、を対応付けたデータベースである。ここで、ロボットIDは、ロボット500を識別するための情報である。重量は、ロボットIDのロボット500の重量である。乗車状態は、ロボットIDのロボット500が現在、乗りかご50に乗車中か否かを示す情報である。
【0027】
図3は、実施形態にかかるロボット管理DB111のデータ構造の一例を示す図である。
図3の例では、ロボットID「A001」のロボット500が乗りかご50に乗車中であり、ロボット500の重量が「xxkg」であることを示している。また、ロボットID「A002」のロボット500が乗りかご50に乗車していない(例えば、乗り場にいる等)であり、その重量が「yykg」でることを示している。
【0028】
なお、このロボット500の重量は、自動診断運転の際に、利用者判断部127の判断においてが必要となるため、ロボットクラウド300のサーバ310から昇降機クラウド200のサーバ210、コントローラ150を介して、あるいは直接、ロボット500から、ロボット500の重量を予めダウンロードしておき、ロボット管理DB111に登録しておく。また、ロボット500の重量の他、ロボット500に関する他の情報を同様にダウンロードし、ロボット管理DB111に登録するように制御盤100を構成してもよい。
【0029】
ロボット管理DB111には、一定時間ごと、あるいは乗車状態が変化したタイミングで、ロボット500が自己の状態をロボットIDとともにロボットクラウド300内のサーバ310に通知する。そして、通知を受けたロボットクラウド300内のサーバ310から、昇降機クラウド200のサーバ210、コントローラ150を介して制御盤100に、ロボットIDと現在の乗車状態とが通知され、制御部120がロボット管理DB111における対応するロボットIDのレコードに登録している。
【0030】
図2に戻り、運行制御プログラム112は、エレベータ2の運行制御に必要な主要機能を実現するプログラムである。ここで主要機能としては、例えば、巻上機を駆動制御する機能、乗りかご50の速度制御などを行う安全機能、乗りかご50の戸開閉を制御する機能、乗りかご50の照明を制御する機能、乗場呼びや行き先階呼び(かご呼びとも称される)を登録する機能、などが含まれる。
【0031】
ロボット運転制御プログラム115は、ロボット運転制御、すなわち、エレベータ2をロボット500が利用する場合のエレベータ2の運行制御を実現する機能である。ロボット運転とは、ロボット専用運転あるいはロボット非専用運転のいずれかの運転条件で、ロボット500を載せて運転している状況を示す。ロボット専用運転は、乗りかご50内にロボット500のみが乗車して行う運転である。ロボット非専用運転は、乗りかご50内にロボット500と利用者5とが同乗して行う運転である。ロボット運転制御プログラム115は、ロボット専用運転の制御とロボット非専用運転の制御と実現可能に構成されている。
【0032】
火災管制プログラム113は、非常事態として火災が発生した場合のエレベータ2の運行制御を実現するプログラムである。具体的には、火災管制プログラム113は、非常用のエレベータ2においてロボット運転中に、火災センサ103から火災発生の検知信号を受信した場合に、ロボット運転を中止し、所定の基準階(主として1階)に乗りかご50を引き戻す運転制御を実現する。このような運転制御を火災管制運転と称する。
【0033】
地震管制プログラム114は、非常事態として地震が発生した場合のエレベータ2の運行制御を実現するプログラムである。具体的には、地震管制プログラム114は、エレベータ2においてロボット運転中に、地震計104から地震発生の検知信号を受信した場合に、ロボット運転を中止し、現在走行中の階の最寄りの階に乗りかご50を移動して停止させる運転制御を実現する。このような運転制御を地震管制運転と称する。
【0034】
自動診断運転プログラム116は、火災管制運転または地震管制運転を実行した後に、非常事態の発生に起因してエレベータ2が正常に運行可能か否か診断する自動診断運転を実現するプログラムである。
仮復旧運転プログラム117は、自動診断運転の実行後に、仮復旧してエレベータ2を動作させる仮復旧運転を実現するプログラムである。
【0035】
制御部120は、ハードウェアプロセッサ(CPU)からなる。制御部120は、
図2に示すように、運行制御部121と、ロボット運転制御部122と、火災管制運転制御部123と、地震管制運転制御部124と、自動診断運転制御部125と、仮復旧運転制御部126と、利用者判断部127と、を主に備えている。
【0036】
制御部120は、記憶部110から、運行制御プログラム112、ロボット運転制御プログラム115、火災管制プログラム113、地震管制プログラム114、自動診断運転プログラム116、仮復旧運転プログラム117のそれぞれのプログラムを読み出して実行することにより、運行制御部121、ロボット運転制御部122、火災管制運転制御部123、地震管制運転制御部124、自動診断運転制御部125、仮復旧運転制御部126が主記憶上に生成される。
【0037】
運行制御部121は、エレベータ2の運行制御に必要な主要機能として、例えば、巻上機を駆動制御する機能、乗りかご50の速度制御などを行う安全機能、乗りかご50の戸開閉を制御する機能、乗りかご50の照明を制御する機能、乗場呼びや行き先階呼びを登録する機能を実行する。
【0038】
ロボット運転制御部122は、エレベータ2をロボット500が利用する場合のエレベータ2の運行制御を実現する機能を実行する。具体的には、ロボット運転制御部122は、乗りかご50内にロボット500のみが乗車して運転を行うロボット専用運転の制御と、乗りかご50内にロボット500と利用者5とが同乗して運転可能なロボット非専用運転の制御を実行する。ロボット運転制御部122は、ロボット専用運転を実行したか、ロボット非専用運転を実行したかを、記憶部110に保存しておく。
【0039】
なお、ビル3内にはロボット専用運転のエレベータ2とロボット非専用運転のエレベータ2とが混在して設けられていても良い。
【0040】
火災管制運転制御部123は、非常用のエレベータ2においてロボット運転中に、火災センサ103から火災発生の検知信号を受信した場合に、ロボット運転を中止し、所定の基準階(主として1階)に乗りかご50を引き戻す火災管制運転の制御を行う。
【0041】
地震管制運転制御部124は、エレベータ2においてロボット運転中に、地震計104から地震発生の検知信号を受信した場合に、ロボット運転を中止し、現在走行中の階の最寄りの階に乗りかご50を移動して停止させる地震管制運転の制御を行う。
【0042】
利用者判断部127は、乗りかご50内に利用者5が存在するか否かを判断する。具体的には、利用者判断部127は、荷重センサ8で検知された乗りかご50の重量から、ロボット500の重量を差しいた重量が、記憶部110に記憶されている乗りかご50の重量(乗りかご50自体の重量)より大きい場合に、利用者5が乗りかご50内に存在すると判断する。
【0043】
また、カメラ7から撮像画像を取得し、またはロボット500Aに設けられたカメラ506(
図8参照)から撮像画像を取得し、取得した撮像画像を解析して、利用者が乗りかご50内に存在するか否かを判断するように、利用者判断部127を構成してもよい。
【0044】
自動診断運転制御部125は、火災管制運転または地震管制運転を実行した後に、非常事態の発生に起因してエレベータ2が正常に運行可能か否か診断する自動診断運転の制御を行う。本実施形態では、自動診断運転制御部125は、ロボット500を乗りかご50から降ろさずに乗りかご50内に乗車させた状態で自動診断運転を行う。
【0045】
すなわち、自動診断運転制御部125は、ロボット運転制御部122によりロボット非専用運転が実行されていた場合において、利用者判断部127により乗りかご50に利用者が存在しないと判断された場合に、自動診断運転の実行を開始する。自動診断運転制御部125は、ロボット運転制御部122によりによりロボット非専用運転が実行されていた場合において、利用者判断部127により乗りかご50に利用者が存在すると判断された場合には、乗りかご50の扉を開状態として、操作盤4のスピーカや液晶表示部(いずれも不図示)から利用者の降車を促すメッセージを出力する。そして、自動診断運転制御部125は、利用者判断部127により乗りかご50に利用者が存在しなくなったと判断された場合に、自動診断運転の実行を開始する。
【0046】
自動診断運転制御部125は、ロボット運転制御部122によりロボット専用運転が実行されていた場合には、直ちに、自動診断運転の実行を開始する。自動診断運転制御部125は、自動診断運転として、ロボット500が乗りかご50に乗車している状態で実行されるロボット乗車時の診断と、ロボット500が乗りかご50に乗車しているか否かを問わずに実行される通常診断と、の双方を実行する。
【0047】
ロボット乗車時の診断とは、ロボット500が乗りかご50内に乗車した状態での特有の診断である。ここで、ロボット乗車時の診断は第1の診断の一例であり、通常診断は第2の診断の一例である。
【0048】
図4は、実施形態にかかる自動診断運転の診断項目の一例を示す図である。自動運転診断の診断項目としては、
図4に示すように、巻上機ブレーキ、各階の扉の開閉、定格速度、床と乗り場のレベル差、中間階での速度検知、速度パターン通りの速度か加速度が生じているか、乗りかご50内のインターホンの動作、証明、荷重センサ等がある。ここで、通常診断では、すべての項目が対象となる。
【0049】
一方、ロボット乗車時の診断項目としては、
図4に示すように、各階の扉の開閉、床と乗り場のレベル差、荷重センサ等が対象となる。自動診断運転制御部125は、通常診断の診断項目のすべてを診断の対象とするが、そのうち、
図4に示すロボット乗車時の診断項目について、乗車するロボット500の重量を加味して診断する。
【0050】
図2に戻り、仮復旧運転制御部126は、自動診断運転制御部125により、エレベータ2が正常に運行可能であると判断された場合に、エレベータ2を仮に復旧させた運転である仮復旧運転を実行する。すなわち、仮復旧運転制御部126は、自動診断運転制御部125により、エレベータ2が正常に運行可能であると判断された場合に、仮復旧運転を実行して、乗りかご50を、ロボット500がロボット運転において定められたロボットの目的階まで移動する。
【0051】
次に、コントローラ150について説明する。
図5は、実施形態にかかるコントローラ150の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【0052】
コントローラ150は、
図5に示すように、一般的なコンピュータの構成として、制御部151と、通信部152と、記憶部155と、を主に備えている。制御部151は、ハードウェアプロセッサ(CPU)からなり、通信部152の動作を制御する。記憶部155は、例えばROMやRAMなどの記憶媒体(すなわち、メモリデバイス)からなり、記憶部155には、制御盤100に記憶される運行制御プログラム112、ロボット運転制御プログラム115、火災管制プログラム113、地震管制プログラム114、自動診断運転プログラム116、仮復旧運転プログラム117およびこれらを更新するための更新プログラムなどが一時的に記憶される。
【0053】
通信部152は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、制御盤100とコントローラ40との間の通信処理や、コントローラ150と昇降機クラウド200内のサーバ210との間の通信処理を行う。例えば、通信部152は、制御盤100より送信された運転信号を受信すると、当該運転信号を昇降機クラウド200内のサーバ210に送信する。
【0054】
図6は、実施形態にかかる昇降機クラウド200内のサーバ210の機能的構成の一例を示すブロック図である。
サーバ210は、一般的なコンピュータの構成として、制御部211と、通信部212と、記憶部220と、を主に備える。
【0055】
記憶部220は、例えばROMやRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)である。記憶部220には、運行制御プログラム222、ロボット運転制御プログラム225、火災管制プログラム223、地震管制プログラム224、自動診断運転プログラム226、仮復旧運転プログラム227が記憶される。
【0056】
運行制御プログラム222、ロボット運転制御プログラム225、火災管制プログラム223、地震管制プログラム224、自動診断運転プログラム226および仮復旧運転プログラム227は、制御盤100の記憶部110に保存されている各プログラムの更新プログラムである。なお、運行制御プログラム222、ロボット運転制御プログラム225、火災管制プログラム223、地震管制プログラム224、自動診断運転プログラム226および仮復旧運転プログラム227のそれぞれは、ビル3、エレベータ2の号機ごとに異なるプログラムを準備しておいてもよい。
【0057】
通信部212は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、サーバ210とコントローラ150との間の通信処理や、サーバ210とロボットクラウド300内のサーバ310との間の通信処理を行う。
【0058】
制御部211は、ハードウェアプロセッサ(CPU)からなる。制御部211は、運行制御プログラム222、ロボット運転制御プログラム225、火災管制プログラム223、地震管制プログラム224、自動診断運転プログラム226および仮復旧運転プログラム227が更新された場合に、制御盤100にコントローラ150を介して送信する。制御部211は、ロボット運転制御プログラム225が更新された場合に、ロボットクラウド300内のサーバ310から更新されたロボット運転制御プログラム225を受信して記憶部220に保存する。
【0059】
次に、ロボットクラウド300内のサーバ310について説明する。
図7は、実施形態にかかるロボットクラウド300内のサーバ310の機能的構成の一例を示すブロック図である。
サーバ310は、一般的なコンピュータの構成として、制御部311と、通信部312と、記憶部320と、を主に備える。
【0060】
記憶部320は、例えばROMやRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)である。記憶部320には、ロボット基本プログラム321と、ロボット運転制御プログラム325と、が記憶されている。
【0061】
ロボット基本プログラム321は、ロボット500で、エレベータ2での動作を定めたプログラムである。例えば、ロボット基本プログラム321は、エレベータ2の清掃や点検等の処理が定められている。また、ロボット基本プログラム321においては、ロボット500が降車するための目的階がロボット500ごとに定められている。
【0062】
ロボット運転制御プログラム325は、昇降機クラウド200内のサーバ210に応じて、昇降機クラウド200内のサーバ210に送信するプログラムであり、上述した制御盤100の記憶部110、昇降機クラウド200内のサーバ210の記憶部220に記憶されたロボット運転制御プログラム115、225として保存されるものである。
【0063】
通信部312は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、サーバ310と昇降機クラウド200内のサーバ210との間の通信処理や、サーバ310とロボット500との間の通信処理を行う。
【0064】
制御部311は、ハードウェアプロセッサ(CPU)からなる。制御部311は、ロボット500に関するエレベータに関する各種処理の制御を行う。本実施形態では、制御部311は、昇降機クラウド200内のサーバ210からの要求により、記憶部320に保存されたロボット運転制御プログラム325を昇降機クラウド200内のサーバ210に送信する。また、制御部311は、ロボット運転制御プログラム325が更新された場合、ロボット運転制御プログラム325の更新プログラムを昇降機クラウド200内のサーバ210に送信する。
【0065】
制御部311は、ロボット500からの要求により、記憶部320に保存されたロボット基本プログラム321をロボット500に送信する。また、制御部311は、ロボット基本プログラム321が更新された場合、ロボット基本プログラム321の更新プログラムをロボット500に送信する。
【0066】
次に、ロボット500について説明する。
図8は、実施形態にかかるロボット500の機能的構成の一例を示すブロック図である。ロボット500は、
図8に示すように、カメラ506と、各種センサ505と、制御部501と、通信部502と、駆動部503と、記憶部510と、を主に備えている。
【0067】
カメラ506は、ロボット500の周囲を撮像し、撮像画像をロボットクラウド300のサーバ310に送信する。さらに撮像画像を制御盤100に送信するようにロボット500を構成してもよい。
【0068】
各種センサ505は、例えば、人感センサ、加速度センサ、荷重センサ等が該当するが、これらに限定されるものではない。
【0069】
記憶部510は、例えばROMやRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)である。記憶部510には、ロボット基本プログラム511が記憶される、ロボット基本プログラム511は、ロボットクラウド300内のサーバ310から受信して記憶部510に保存されたプログラムである。ロボット基本プログラム511には、サーバ310内のロボット基本プログラム321と同様に、エレベータ2での動作が定められている。ロボット基本プログラム511には、ロボット500が降車するための目的階が定められている。
【0070】
通信部502は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、ロボット500とロボットクラウド300内のサーバ310との間の通信処理を行う。
【0071】
駆動部503は、ロボット500の駆動を行って走行させる。
制御部501は、ハードウェアプロセッサ(CPU)からなる。制御部501は、エレベータ2の通常運行時には、記憶部510のロボット基本プログラム511を読み出して実行することより、エレベータ2での各種動作を実行する。
【0072】
なお、ロボット500の上記構成は一例であり、この他、スピーカ等の音声出力部やタッチパネル等の入力部をさらに備えていてもよい。
【0073】
次に、以上のように構成された本実施形態のエレベータ制御システム1の制御盤100によるエレベータ制御処理について説明する。
図9,10は、実施形態にかかるエレベータ制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0074】
制御盤100のロボット運転制御部122は、ロボット運転を実行しているものとする(S101)。このとき、エレベータ2は稼働中の状態にある。そして、制御部120が地震の発生を検知していない場合、すなわち、地震計104から地震管制信号を受信していない場合(S102:No)、処理はS101へ戻る。
【0075】
制御部120が地震の発生を検知した場合、すなわち、地震計104から地震管制信号を受信した場合(S102:Yes)、地震管制運転へ移行し、地震管制運転制御部124が地震管制運転を実行する(S103)。地震管制運転制御部124は、地震管制運転として、乗りかご50を最寄り階に移動する。そして、地震管制運転制御部124は、乗りかご50が最寄り階に着床したか否かを判断する(S104)。乗りかご50が最寄り階に着床していない場合には(S104:No)、地震管制運転制御部124は、乗りかご50の最寄り階への移動を続行する。
【0076】
乗りかご50が最寄り階に着床した場合には(S104:Yes)、制御部120は、乗りかご50の扉を開け(S105)、一定時間経過後に、扉を閉める(S106)。この間に、乗りかご50内に利用者がいる場合には利用者は降車することができる。ここで、乗りかご50内のロボット500は、目的階で降車することが予め定められているため、最寄り階が目的階でない限り、ロボット500は乗りかご50から降車することはない。
【0077】
次に、制御部120は、地震管制運転の前のロボット運転が、ロボット専用運転であったか否かを記憶部110を参照して判断する(S107)。そして、ロボット専用運転でなかった場合(S107:No)、すなわち、ロボット非専用運転であった場合には、乗りかご50に利用者がいる可能性があるため、利用者判断部127は、乗りかご50の重量やカメラ7からの撮像画像の解析等により、乗りかご50内の利用者の存在を確認する(S108)。
【0078】
そして、利用者判断部127は、利用者の存在を判断する(S109)。乗りかご50内に利用者が存在すると判断された場合には(S109:Yes)、制御部120は、ロボット500の移動を停止させ、ロボット500の各種センサ505をオフにする(S110)。
【0079】
具体的には、制御部120は、コントローラ150、昇降機クラウド200のサーバ210を経由して、ロボットクラウド300内のサーバ310に、移動停止の対象となるロボットIDとともに、移動停止指令と各種センサオフ指令を送信する。ロボットクラウド300内のサーバ310は、これらの指令を受信して、ロボットIDのロボット500、すなわち、乗りかご50内のロボット500に、移動停止指令、各種センサオフ指令を送信し、当該ロボット500は、移動停止と各種センサ505をオフとする。
【0080】
次に、制御部120は、乗りかご50の扉を開け(S111)、操作盤4のスピーカや液晶表示部に、降車してください等のアナウンスを出力する(S112)。そして、処理は、S108へ戻り、S109で乗りかご50内の利用者5がいなくなるまで処理が繰り返される。
【0081】
S109で、乗りかご50内に利用者5の存在がなくなった場合には(S109:No)、自動診断運転制御部125は、自動診断運転を開始する(S113)。また、S107でロボット専用運転であった場合(S107:Yes)、乗りかご50内に利用者5は存在しないため、自動診断運転制御部125は、直ちに自動診断運転を開始する(S113)。
【0082】
自動診断運転制御部125は、診断が終了したら、診断結果を確認する(S114)。そして、自動診断運転制御部125は、診断結果に基づいて、仮復旧運転を開始可能か否かを判断する(S115)。自動診断運転制御部125は、例えば、地震後のエレベータ2の動作において、診断項目が所定数以上である場合等には,地震発生後もエレベータ2は正常に運転されていると判断する。
【0083】
仮復旧運転が可能であると判断された場合には(S115:Yes)、仮復旧運転制御部126は、仮復旧運転を開始する(S116)。この仮復旧運転により、乗りかご50は、ロボット500の目的階までの移動が可能となる(S117)。言い換えれば、ロボット500は、地震発生後も特に新たな指示を受けることなく、ロボット基本運転プログラムに従った動作を実行し、乗りかご50がロボット500の目的階に着床したときに降車する。
【0084】
S115で、仮復旧運転が可能でないと判断された場合には(S115:No)、制御部120は、エレベータ2の運転を停止する(S118)。
【0085】
なお、ビル3内に複数台のエレベータ2が存在する場合には、各エレベータ2で上述した運転制御、エレベータ制御が行われる。
【0086】
このように本実施形態では、制御盤100は、ロボット500を乗車した状態での乗りかご50の運転であるロボット運転を実行するロボット運転制御部122と、地震の発生が検知された場合に、地震の発生時における所定の動作の運転である地震管制運転を実行する地震管制運転制御部124と、ロボット500を乗りかご50に乗車させた状態で、地震の発生に起因してエレベータ2が正常に運行可能か否か診断する自動診断運転を実行する自動診断運転制御部125と、自動診断運転制御部125により、エレベータ2が正常に運行可能であると判断された場合に、エレベータ2を仮に復旧させた運転である仮復旧運転を実行する仮復旧運転制御部126と、を備える。このため、本実施形態において、地震等の発生が生じて、通常と異なる運転を行う場合でも、ロボット500は乗りかご50に乗車したまま自動診断運転を実行し、仮復旧運転開始後に、予め定められたロボット500の目的階までの移動が可能となり、地震等の非常事態が発生した場合でも、ロボット500の新たな管理は不要となり、管理者の負担を軽減することができる。
【0087】
また、本実施形態では、制御盤100の仮復旧運転制御部126は、自動診断運転制御部125により、エレベータ2が正常に運行可能であると判断された場合に、エレベータ2を仮に復旧させた運転である仮復旧運転を実行して、乗りかご50を、ロボット500がロボット運転において定められたロボット500の目的階まで移動する。このため、本実施形態によれば、地震等の非常事態が発生した場合でも、ロボット500の新たな管理は不要となり、管理者の負担を軽減することができる。
【0088】
また、本実施形態では、制御盤100は、乗りかご50内に利用者が存在するか否かを判断する利用者判断部127を備え、ロボット運転制御部122は、ロボット運転として、ロボット専用運転とロボット非専用運転と、のいずれかを実行し、自動診断運転制御部125は、ロボット非専用運転が実行されていた場合において、利用者判断部127により乗りかご50に利用者が存在しないと判断された場合に、自動診断運転の実行を開始する。このため、本実施形態によれば、乗りかご50に利用者がいない状態で自動診断を実行できるので、診断を効率的に行うことができる。
【0089】
本実施形態では、制御盤100の自動診断運転制御部125は、ロボット非専用運転が実行されていた場合において、利用者判断部127により乗りかご50に利用者が存在すると判断された場合には、乗りかご50の扉を開状態として、利用者の降車を促し、利用者判断部127により乗りかご50に利用者が存在しなくなったと判断された場合に、自動診断運転の実行を開始する。このため、本実施形態によれば、より確実に乗りかご50に利用者がいない状態にした上で、自動診断を実行できるので、診断を効率的に行うことができる。
【0090】
また、本実施形態では、制御盤100の利用者判断部127は、乗りかご50の重量を検知する荷重センサ8で検知された乗りかご50の重量から、ロボット500の重量を差しいた重量が乗りかご500の重量より大きい場合に、利用者が乗りかご50内に存在すると判断する。このため、本実施形態では、荷重センサ8を用いても乗りかご50内の利用者の有無を判断することができる。
【0091】
利用者判断部127は、乗りかご50内を撮像するカメラ7から取得した撮像画像またはロボット500に設けられたカメラ506から取得した撮像画像に基づいて、利用者が乗りかご50内に存在するか否かを判断する。このため、本実施形態によれば、乗りかご50内の利用者の有無をより正確に判断することができる。
【0092】
自動診断運転制御部125は、ロボット専用運転が実行されていた場合には、直ちに、自動診断運転の実行を開始する。このため、本実施形態によれば、自動診断運転の開始を早期に実行することができる。
【0093】
自動診断運転制御部125は、自動診断運転として、ロボット500が乗りかご50に乗車している状態で実行されるロボット乗車時診断と、ロボット500が乗りかご50に乗車しているか否かを問わずに実行される通常診断と、の双方を実行する。このため、本実施形態によれば、ロボット500の乗車の有無を問わずに正確な自動診断を実現することができる。
【0094】
(変形例)
上記実施形態には、種々の変形例がある。
ロボット運転制御部122によりロボット専用運転が実行されていた場合においても、利用者判断部127により乗りかご50に利用者5が存在の有無を判断させ、存在しないと判断された場合に、自動診断運転の実行を開始するように自動診断運転制御部125および利用者判断部127を構成してもよい。これにより、乗りかご50に利用者がいないことが前提であるロボット専用運転であった場合でも、利用者が存在しないことをより確実に判断して自動診断を実行することができる。
【0095】
地震管制運転として、さらに、最寄り階が、ロボット500がロボット運転において定められたロボット500の目的階である場合に、乗りかご50が最寄り階に到着した場合に、ロボット500を最後に降車させる指示を行うように、地震管制運転制御部124を構成してもよい。これにより、管理者の負担がより軽減される。
【0096】
この場合において、発生した地震の震度が所定の震度以上(例えば、深度6以上等)である場合には、乗りかご50が最寄り階に到着した場合でも、ロボット500体を降車させない指示を行うように、地震管制運転制御部124を構成してもよい。これにより地震が大きい場合により安全性を向上させることができる。
【0097】
また、ロボット専用運転であっても、ロボット500のカメラ506等を用いてかご内の利用者を確認するように利用者判断部127を構成してもよい。これにより、利用者が存在しないことをより確実に判断して自動診断を実行することができる。
【0098】
非ロボット専用運転であった場合、乗りかごの荷重センサ8、乗りかご50内のカメラ7、ロボット500のカメラ506のうち、少なくとも2つのセンサの結果により、自動診断運転を開始するように自動診断運転制御部125を構成してもよい。
【0099】
監視センタ400は、制御盤100に直接接続された構成としてもよい。この場合には、自動診断運転や仮復旧運転は、監視センタ400からの指示により行われ、診断結果も監視センタ400に送信するように制御盤100を構成してもよい。
【0100】
ロボット500が複数台、乗りかご50に乗車している場合にも、上述と同様の運転を行うことができる。この場合には、乗りかご50内の利用者の有無の判断を、荷重センサ8を用いて行う場合には、乗車している台数分のロボット500の重量を、荷重センサ8で検知された重量から差し引いて、利用者の有無を判断するように利用者判断部127を構成すればよい。
【0101】
地震後にロボット500とロボットクラウド300内のサーバ310との通信ができない場合、あるいは通信遅延が発生している場合には、ロボット500のカメラ506を用いて、乗りかご50内の状況を判断して、移動可否を判断するようにロボット500を構成してもよい。
【0102】
ロボット500とロボットクラウド300のサーバ310の通信が不通の場合、通信再開のリトライはせず、仮復旧運転が開始された後に、ロボット500とロボットクラウド300のサーバ310の間で通信確立のリトライを行うように構成することができる。
【0103】
仮復旧運転が開始されるまで、ビル3内に複数台のロボット500が存在していれば、ロボット500間で互いのロボット500の位置や各号機の運転状態、例えば、乗りかご50の位置、自動診断の有無、仮復旧運転実行の有無等の情報共有を図るように構成してもよい。
【0104】
仮復旧運転開始後にロボット500が目的階に移動完了して乗場に降車したら、そのまま地震発生前の指示事項の通りに動作するか、変更があるかをロボットクラウド300のサーバ310に確認するようにロボット500を構成してもよい。
【0105】
自動診断運転の機能を有していないエレベータ2は、ロボット500をエレベータ2に乗車させた状態のまま、停止させるように制御盤100を構成してもよい。
【0106】
乗りかご50内にいる利用者5に降車を促すアナウンスやテキスト文の表示は、ロボット500自体のスピーカやモニタを使っても良い。その際、「ロボットは停止して動きません」と利用者の移動が安全なことをアナウンスするようにロボット500を構成することができる。
【0107】
本実施形態では、非常事態として地震を例にあげているが、これに限定されるものではない。例えば、非常事態として、火災や他の災害にも本実施形態を適用可能である。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
1…エレベータ制御システム、2,2A,2B…エレベータ、3…ビル、4,4A,4B…操作盤、5A…利用者、7,7A,7B…カメラ、8,8A,8B…荷重センサ、20,20A,20B…昇降路、50,50A,50B…乗りかご、100,100A,100B…制御盤(エレベータ制御装置)、120,151,211,311,501…制御部、120,152,212,312,502…通信部、103…火災センサ、104…地震計、110,155,220,320,510…記憶部、111…ロボット管理DB、112,222…運行制御プログラム、113,223…火災管制プログラム、114,224…地震管制プログラム、115,225、325…ロボット運転制御プログラム、116,226…自動診断運転プログラム、117,227…仮復旧運転プログラム、121…運行制御部、122…ロボット運転制御部、123…火災管制運転制御部、124…地震管制運転制御部、125…自動診断運転制御部、126…仮復旧運転制御部、127…利用者判断部、150,150A,150B…コントローラ、160…管制室、200…昇降機クラウド、210…サーバ、300…ロボットクラウド、310…サーバ、321,511…ロボット基本プログラム、500,500A,500B,500C…ロボット、503…駆動部。
【要約】
【課題】非常事態の発生後、エレベータが仮復旧した場合の自律移動体の管理を不要とし、管理者の負担を軽減すること。
【解決手段】実施形態のエレベータ制御装置は、乗りかごに自律的に移動可能な自律移動体が乗車可能なエレベータを制御するエレベータ制御装置であって、前記自律移動体を乗車した状態での前記乗りかごの運転である自律移動体運転を実行する自律移動体運転制御部と、非常事態の発生が検知された場合に、前記非常事態の発生時における所定の動作の運転である管制運転を実行する管制運転制御部と、前記自律移動体を前記乗りかごに乗車させた状態で、前記非常事態の発生に起因して前記エレベータが正常に運行可能か否か診断する自動診断運転を実行する自動診断運転制御部と、前記自動診断運転制御部により、前記エレベータが正常に運行可能であると判断された場合に、前記エレベータを仮に復旧させた運転である仮復旧運転を実行する仮復旧運転制御部と、を備える。
【選択図】
図2