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特許7485492炭化水素混合物からアルシンを除去するためのプロセス
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  • 特許-炭化水素混合物からアルシンを除去するためのプロセス 図1
  • 特許-炭化水素混合物からアルシンを除去するためのプロセス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】炭化水素混合物からアルシンを除去するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 7/12 20060101AFI20240509BHJP
   C07C 9/08 20060101ALI20240509BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20240509BHJP
   B01D 53/04 20060101ALN20240509BHJP
   B01J 20/22 20060101ALN20240509BHJP
   C07C 63/26 20060101ALN20240509BHJP
   C07C 63/307 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
C07C7/12
C07C9/08
C07C11/06
B01D53/04
B01J20/22 A
C07C63/26
C07C63/307
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022555777
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 IB2021052066
(87)【国際公開番号】W WO2021186307
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】2001001557
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TH
(73)【特許権者】
【識別番号】513160707
【氏名又は名称】ピーティーティー グローバル ケミカル パブリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラオクロエクキアット、サリンシップ
(72)【発明者】
【氏名】ペンパニッチ、シッティフォン
(72)【発明者】
【氏名】タボンプラサート、ケオ-アルファ
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-521731(JP,A)
【文献】国際公開第2019/038645(WO,A1)
【文献】Ind. Eng. Chem. Res.,2015年,Vol. 54, No. 14,p. 3626-3633
【文献】Microchemical Journal,2017年,Vol. 133,p. 441-447
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 7/12
C07C 9/08
C07C 11/06
B01D 53/04
B01J 20/22
C07C 63/26
C07C 63/307
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数2~4の炭化水素混合物からアルシンを除去するためのプロセスであって、前記炭素原子数2~4の炭化水素混合物を吸着剤と接触させる段階を備え、前記吸着剤は、
a)1B族金属ら選択される少なくとも1つの遷移金属と、
b)1,4-ベンゼンジカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸および1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸から選択される有機配位子と
を含む金属有機フレームワーク(MOF)であり、
前記遷移金属と前記有機配位子とのモル比は1:1~3:1の範囲内にあり、
前記吸着剤は、アルコールによる処理を受ける、プロセス。
【請求項2】
1B族金属は銅および銀から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記遷移金属は銅である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記有機配位子は1,3,5-ベンゼントリカルボン酸である、請求項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記遷移金属と前記有機配位子の前記モル比は2:1である、請求項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールから選択される、請求項1からのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記アルコールはメタノールである、請求項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記処理は、前記吸着剤の重量の1グラム当り2~5モルのアルコールの量のアルコールと接触させる段階によって操作される、請求項1からのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記炭素原子数2~4の炭化水素は、エタン、プロパン、プロピレン、n-ブタンおよびイソブタンから選択される、請求項1からのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記炭素原子数2~4の炭化水素はプロパンおよびプロピレンである、請求項1からのいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記接触させる段階は、30~40度の範囲内の温度、100~500kPaの範囲内の圧力で操作される、請求項1から1のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学の分野に関し、特に多孔質吸着剤を用いた化合物を分離するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
生産プロセスでエチレンおよびプロピレンであるオレフィンからヒ素化合物の除去は、触媒に毒性を与えないために必要な工程である。生産プロセスにおける炭化水素流からのヒ素化合物の分離および除去は、起源の種類、除去すべきヒ素化合物の種類および除去に使用する条件から考慮して吸着法で実行される。上記の情報から、ヒ素化合物の分離および除去を、このようなヒ素化合物に対する適切な吸着剤を設計することに使用することができる。揮発性で安定性が高く、沸点がプロピレンに近いことから、ヒ素化合物としてはアルシンが多く発見されている。
【0003】
アルシン化合物を除去するための金属酸化物吸着剤について、基本的に説明された。特許文献US6960700B1において、炭化水素流中のアルシン化合物を吸着するために、7~10重量%の銅を含むアルミナ担体上の銅の金属酸化物の合成および使用が開示されている。担体上の酸化銅の吸着剤は広く用いられているが、アセチレン、メチルアセチレン-プロパジエン(MAPD)およびジエンなどの反応性化合物を含まない炭化水素流からのアルシン化合物を除去するためにしか使用できないため、用途が限定されている。これは、銅金属が熱条件下でアセチレン化合物と反応するとアセチリド塩を生成することがあり、さらに銅の金属酸化物を触媒として用いてアセチレン化合物同士が反応することができ、グリーンオイルまたはキュプレンなどの不要物を生成する重合を引き起こす。
【0004】
特許文献US4962272Aにおいて、炭化水素流中のアルシン化合物を吸着するために、担体上に18~24重量%の鉛の金属酸化物を含むアルミナ担体上の鉛の金属酸化物の合成および使用が開示されており、1~15%の含水量を有する無酸素加熱不活性ガスを通すことによる上記吸着剤の再利用工程を含んでいる。しかしながら、鉛の金属酸化物の使用は、ヒトの健康および環境に害を及ぼすことがある。従って、使用済み吸着剤の効率的な廃棄システムが必要である。さらに、鉛の金属酸化物は、同じ吸着量であれば、銅成分を含む吸着剤よりもアルシン化合物の吸着能力が低い。
【0005】
特許文献US4933159Aにおいて、アルシン化合物、特にアルキル基が1~6の炭素原子を有するトリアルキルアルシン化合物を除去するために、アルミナ、フッ化アルミナ、シリカ、フッ化シリカ、酸化チタンおよび/またはアルミン酸マグネシウムである担体上に銀金属、硝酸銀化合物および/または銀の金属酸化物の合成および使用が開示されている。上記吸着剤は、2~15重量%の銀金属を含む。しかしながら、炭化水素流は、銀成分を含む上記吸着剤床と接触する前に、銅および亜鉛の混合金属酸化物吸着剤を通して流れる。
【0006】
特許文献US20180236434AおよびWO2019090071Aにおいて、炭化水素流中のアルシン化合物を除去するために、アルミナ、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、ゼオライトおよび/または活性炭である担体上のビスマスの金属酸化物の合成および使用が開示されている。上記吸着剤は、2~50重量%のビスマスを含み、効率向上剤として5重量%の含有量の鉛を含む。
【0007】
多孔質担体への活性成分の担持は、活性成分の分散性を高めることができることだけでなく、反応または吸着における接触表面積を増大させることも報告されている。これは、吸着能力の向上につながる。吸着剤としては、通常、アルミナ、シリカ、ゼオライトおよび活性炭は使用される。しかしながら、気孔率および担体の特性調整能力の観点から接触表面積に限界がある。
【0008】
金属有機フレームワーク(MOF)は、優れた吸脱着特性を持つことから、吸着プロセスへの利用が注目されている多孔質材料の1つである。その多くは、特異的吸着を引き起こし、結合力を高める官能基を持っている。さらに、その一部は、接触表面積および気孔率が高く、他の多孔質材料に比べて気孔率がより整然としているものも含む。このため、金属有機フレームワークは、産業上の応用に適するように設計および合成される能力になる重要な特異性を持っている。
【0009】
上記のすべてにより、本発明は、高い吸着能を持つ金属有機フレームワーク(MOF)を用いて、炭素原子数2~4の炭化水素混合物からのアルシンの分離プロセスの改善を図ることを目的とする。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、炭素原子数2~4の炭化水素混合物からアルシンを除去するためのプロセスに関する。
前記プロセスは、前記炭素原子数2~4の炭化水素混合物を吸着剤と接触させることを備え、前記吸着剤は、a)1B族金属、2B族金属および4B族金属から選択される少なくとも1つの遷移金属と、b)ジカルボン酸化合物またはトリカルボン酸化合物から選択される有機配位子とを含む金属有機フレームワーク(MOF)であり、前記吸着剤は、アルコールによる処理を受ける。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】異なる遷移金属イオンおよび有機配位子を用いて調製した金属有機フレームワークの遷移金属と有機配位子とのモル比が2:1である場合のアルシン分離性能を示す図である。
【0012】
図2】銅金属および1,3,5-ベンゼントリカルボン酸有機配位子を含む金属有機フレームワークを異なる条件でメタノール溶媒を用いて処理した場合のアルシン分離性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、炭素原子数2~4の炭化水素混合物からアルシンを除去するためのプロセスに関し、本発明の以下の態様において説明される。
本明細書に説明されるあらゆる態様は、別段の記載のない限り、本発明の他の態様への適用を含ことも意味する。
【0014】
本明細書で使用される専門用語または科学用語は、別段の記載のない限り、当業者によって理解されるような定義を有する。
【0015】
本明細書であげられるあらゆるツール、機器、方法、または、化学物質は、本発明だけの特定のツール、機器、方法、または、化学物質であるという別段の記載のない限り、当業者が一般に操作または使用するツール、機器、方法、または、化学物質を意味する。
【0016】
特許請求の範囲または明細書において、「含む(comprising)」と共に使用する単数名詞または単数代名詞は、「1」を意味し、かつ「1または複数」、「少なくとも1」および「1または1より多い」も含むことを意味する。
【0017】
特許請求の範囲に具合的に述べられていないが、本出願において開示および特許請求されるすべての組成物および/または方法は、本発明とは明らかに異なるいかなる実験を行うことなく、あらゆる操作、性能、変更、またはいずれのファクタの調整により、実施形態を網羅し、かつ、実用性のある目的物を得て、当業者による本実施形態と同じ結果をもたらすことを意図している。そのため、本実施形態に対して代替可能な、または、同様の目的は、当業者によって明らかに理解されるあらゆる軽微な変更または調整を含め、添付の請求項に現れる発明の精神、範囲および概念にとどまると解釈されるべきである。
【0018】
本出願全体にわたり「約」という用語は、本明細書に現れまたは表されるあらゆる数は、機器、方法、または、前述の機器または方法を使用する個人によるあらゆる誤差からの変動または偏差であり得ることを意味する。
【0019】
以下、発明の実施形態は、本発明のあらゆる範囲を限定するいかなる目的なく示される。
【0020】
本発明は、炭素原子数2~4の炭化水素混合物からアルシンを除去するためのプロセスに関する。
前記プロセスは、前記炭素原子数2~4の炭化水素混合物を吸着剤と接触させることを備え、前記吸着剤は、a)1B族金属、2B族金属および4B族金属から選択される少なくとも1つの遷移金属と、b)ジカルボン酸化合物またはトリカルボン酸化合物から選択される有機配位子とを含む金属有機フレームワーク(MOF)であり、前記吸着剤は、アルコールによる処理を受ける。
【0021】
本発明の1つの態様において、1B族金属は銅および銀から選択される。
【0022】
本発明の1つの態様において、2B族金属は亜鉛から選択される。
【0023】
本発明の1つの態様において、4B族金属はチタンおよびジルコニウムから選択される。
【0024】
好ましくは、前記金属有機フレームワークは、銅、亜鉛およびジルコニウムである遷移金属を含み、最も好ましくは銅である。
【0025】
本発明の1つの態様において、前記有機配位子は、1,4-ベンゼンジカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸および1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸から選択され、好ましくは1,3,5-ベンゼントリカルボン酸である。
【0026】
本発明の1つの態様において、前記遷移金属と前記有機配位子とのモル比は、約1:1~3:1の範囲内にあり、より好ましくは約2:1である。
【0027】
本発明の1つの態様において、アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールから選択され、好ましくはメタノールである。
【0028】
本発明の1つの態様において、アルコールによる吸着剤処理は、前記吸着剤の重量の1グラム当り2~5モルのアルコールの量のアルコールと接触させることによって実行される。
【0029】
本発明の1つの態様において、前記炭素原子数2~4の炭化水素は、エタン、プロパン、プロピレン、n-ブタンおよびイソブタンから選択され、好ましくはプロパンおよびプロピレンである。
【0030】
本発明の1つの態様において、本発明に係る炭素原子数2~4の炭化水素混合物を前記吸着剤に前記接触させることは、25~40度の範囲内の温度、圧力約3,000kPaまでの大気圧の範囲で、好ましくは30~40度の範囲内の温度、約100~500kPaの範囲内の圧力で、最も好ましくは大気圧で操作される。
【0031】
吸着における炭化水素のフィードラインの気体の1時間当りの空間速度(GHSV:gas hourly space velocity)は、約3,400~37,000mL h-1吸着剤重量-1の範囲内にあり、好ましくは15,000~30,000mL h-1吸着剤重量-1の範囲内にある。
【0032】
一般的に、当業者は、炭化水素混合物、吸着剤およびカラムシステムの種類および組成に適したものとなるように吸着条件を調整することができる。
【0033】
1つの態様において、本発明に係る炭素原子数2~4の炭化水素混合物を吸着剤に接触させることを含むアルシンを除去するためのプロセスは、連続固定床吸着コラムまたはバッチ式吸着システムで操作されてよい。
【0034】
本発明の別の態様において、本発明に係る金属有機フレームワークは、次の段階によって調製されてよい:
a)1B族金属、2B族金属および4B族金属から選択される少なくとも1つの遷移金属と、ジカルボン酸化合物またはトリカルボン酸化合物から選択される有機配位子とを含有する混合物を含む溶液を調製する段階、
b)金属有機フレームワークを生成するために、段階a)から得られた混合物を、決定された温度および時間でソルボサーマルプロセスに付す段階および
c)段階b)から得られた材料を、決定された温度および時間でアルコールによる処理に付す段階。
【0035】
本発明の1つの態様において、段階b)および段階c)は、オーブンを使用する従来の乾燥方法、真空乾燥、撹拌蒸発およびロータリーエバポレータによる乾燥によって実行されてよい乾燥することをさらに含んでよい。
【0036】
以下の例は、本発明の1つの態様を呈するものに過ぎず、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0037】
吸着剤の調製
銅-ベンゼントリカルボン酸吸着剤
ジメチルホルムアミド溶媒中、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸溶液および硝酸銅三水和物(Cu(NO・3HO)溶液を決定されたモル比で調製した。次に、上記硝酸銅三水和物溶液を1,3,5-ベンゼントリカルボン酸溶液に添加して、混合物を撹拌した。その後、約100℃の温度で約24時間のソルボサーマルプロセスを実行するために、上記混合物をオートクレーブ内に移した。ソルボサーマルプロセスが完了したとき、溶液を室温に冷却した。次に、上記混合物をろ過して、ジメチルホルムアミドによって洗浄した。得られた固体をオーブン中で約160℃の温度、減圧下で24時間乾燥させた。金属有機フレームワークを得た。
【0038】
銅-ベンゼンジカルボン酸吸着剤
1,3,5-ベンゼントリカルボン酸の代わりに、1,4-ベンゼンジカルボン酸を使用して、銅-ベンゼントリカルボン酸吸着剤について説明した方法によってサンプルを調製した。
【0039】
亜鉛-ベンゼントリカルボン酸吸着剤
1,3,5-ベンゼントリカルボン酸のジメチルホルムアミド溶媒中溶液および硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO・6HO)のジメチルホルムアミド溶媒中溶液を調製した。次に、上記硝酸亜鉛六水和物溶液を1,3,5-ベンゼントリカルボン酸溶液に添加して、混合物を撹拌した。その後、約100℃の温度で約24時間のソルボサーマルプロセスを実行するために、上記混合物をオートクレーブに移した。ソルボサーマルプロセスが完了したとき、溶液を室温に冷却した。次に、上記混合物をろ過して、ジメチルホルムアミドによって洗浄した。得られた固体をオーブン中で約160℃の温度、減圧下で24時間乾燥させた。金属有機フレームワークを得た。
【0040】
亜鉛-ベンゼンジカルボン酸吸着剤
1,3,5-ベンゼントリカルボン酸の代わりに、1,4-ベンゼンジカルボン酸を使用して、亜鉛-ベンゼントリカルボン酸吸着剤について説明した方法によってサンプルを調製した。
【0041】
ジルコニウム-ベンゼントリカルボン酸吸着剤
1,3,5-ベンゼントリカルボン酸のジメチルホルムアミド溶媒中溶液および塩化ジルコニウム八水和物(ZrOCl・8HO)のジメチルホルムアミド溶媒中溶液およびギ酸を調製した。次に、上記塩化ジルコニウム八水和物溶液を1,3,5-ベンゼントリカルボン酸溶液に添加して、混合物を撹拌した。その後、約120℃の温度で約48時間のソルボサーマルプロセスを実行するために、上記混合物をオートクレーブに移した。ソルボサーマルプロセスが完了したとき、溶液を室温に冷却した。次に、上記混合物をろ過して、ジメチルホルムアミドによって洗浄した。得られた固体をオーブン中で約160℃の温度、減圧下で24時間乾燥させた。金属有機フレームワークを得た。
【0042】
ジルコニウム-ベンゼンジカルボン酸吸着剤
1,3,5-ベンゼントリカルボン酸の代わりに、1,4-ベンゼンジカルボン酸を使用して、ジルコニウム-ベンゼントリカルボン酸吸着剤について説明した方法によってサンプルを調製した。
【0043】
アルコールで処理した銅-ベンゼントリカルボン酸吸着剤上記の方法から得られた銅-ベンゼントリカルボン酸吸着剤をメタノールで処理した。金属有機フレームワークをメタノールに約18時間浸漬させた。次に、上記混合物をろ過して、メタノールを用いて洗浄した。得られた固体を、減圧下、約120℃の温度で12時間乾燥させた。アルコールで処理した吸着剤を得た。上記処理を、吸着剤の重量の1グラム当り2.5モルおよび5モルであるアルコールの異なる量のアルコールを用いて実行した。
【0044】
アルコールで処理したジルコニウム-ベンゼンジカルボン酸吸着剤銅-ベンゼントリカルボン酸吸着剤の代わりに、ジルコニウム-ベンゼンジカルボン酸吸着剤を使用して、上記方法によってサンプルを調製した。上記処理を、吸着剤の重量の1グラム当り2.5モルであるアルコールの異なる量のアルコールを用いて実行した。
【0045】
アルシン吸着性能のテスト
アルシン吸着性能のテストを、以下の条件を用いて実行してよい。
【0046】
炭化水素混合物からのアルシンの吸着は、吸着剤約0.2グラムを使用して気体状条件下で連続吸着コラム内に操作された。吸着プロセスは、30℃の温度、大気圧、約30,000mL h-1吸着剤重量-1の気体の1時間当りの空間速度(GHSV)で操作された。炭化水素混合物は、プロパン、プロピレン、エチルメルカプタンおよびアルシン化合物を含んだ。次に、吸着は、残存するアルシン化合物を測定することで監視された。気体サンプルは希望する時間にランダムに採取し、ジエチルチオカルバミン酸銀化合物を指示薬として使用する紫外分光光度計の技術で分析した。
【0047】
金属有機フレームワーク内の遷移金属の種類および有機配位子の種類の、プロパンおよびプロピレンを主成分とする炭化水素混合物におけるアルシン吸着性能に対する効果を研究するために、遷移金属と有機配位子とのモル比を2:1として使用して、異なる遷移金属イオンおよび有機配位子によって調製された吸着剤について研究した。結果は図1に示された。
【0048】
遷移金属と有機配位子との比率の効果およびアルコールによる吸着剤処理の効果を研究するために、異なる種類および量の遷移金属および有機配位子を含む吸着剤について、吸着性能のテストを実施した。結果は表1および図2に示された。
【0049】
表1:異なる吸着剤1モルに対する、アルシン濃度が2ppmである炭化水素混合物からのアルシン分離性能
【表1】
上記の結果から、本発明に係る吸着剤は、本発明の目的に記載されているように、アルシンの高い吸着性能および分離性能を有するといえる。
本発明の最良の形態または好ましい実施形態
本発明の最良の形態または好ましい実施形態は、本発明を実施するための形態で提供される通りである。
図1
図2