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特許7485494モータの状態を監視する方法、デバイス、及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】モータの状態を監視する方法、デバイス、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20240509BHJP
【FI】
G01M99/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023550750
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2021026713
(87)【国際公開番号】W WO2022180884
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】21305220.2
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】ボワイエ、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ロイコ、アンドレア
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-187494(JP,A)
【文献】特開2004-212225(JP,A)
【文献】特開2002-49400(JP,A)
【文献】特開平7-174616(JP,A)
【文献】特開昭54-2170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-13/045,99/00
G01R 31/327-31/34
H02P 6/00-6/34
G01H 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの状態を監視する方法であって、前記モータは、信号を前記モータに提供する電源によって駆動され、前記方法は、
モータ信号を検知するステップと、
前記モータの動作状態を検出するステップと、
前記モータが所定の動作状態で動作している場合には、
検知された前記モータ信号のゼロクロス時点を検出するステップと、
2つの前記ゼロクロス時点の間の時間を求めるステップと、
推定された包絡線のパターンを取得するために、求められた前記時間の複数の包絡線を推定するステップであって、前記複数の包絡線のそれぞれは、複数の求められた前記時間にわたって求められる、ステップと、
前記モータの動作状態及び前記包絡線のパターンから、前記モータが故障を有するか否か及び/又は前記故障のレベルを判断するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記モータが故障を有するか否か及び/又は前記故障のレベルを判断するステップは、同じ所定の動作状態を有する包絡線のパターンが記憶されている場合には、前記推定された包絡線のパターンを、前記同じ所定の動作状態を有する記憶された包絡線のパターンと比較することによって実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、同じ所定の動作状態を有する包絡線のパターンが記憶されていない場合には、前記推定された包絡線のパターンを記憶するステップを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モータが故障を有するか否か及び/又は前記故障のレベルを判断する前記ステップは、ニューラルネットワークを使用して実行され、前記ニューラルネットワークによって使用される荷重は、サーバによって受信されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、モータの状態を監視するデバイスによって実行されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記モータ信号を検知するステップと、前記モータの所定の動作状態を検出するステップと、検知された前記モータ信号のゼロクロス時点を検出するステップと、2つの前記ゼロクロス時点の間の時間を求めるステップと、包絡線のパターンを取得するために求められた前記時間の複数の包絡線を推定するステップとは、モータの状態を監視するデバイスによって実行されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記推定された包絡線と、前記モータの動作状態と、前記モータを識別する情報とを通信ネットワークを通じてサーバに転送するステップを更に含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記モータの動作状態及び前記包絡線のパターンから、前記モータが故障を有するか否か及び/又は前記故障のレベルを判断するステップは、前記サーバによって実行されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記モータの前記動作状態及び前記包絡線のパターンから、前記モータが故障を有するか否か及び/又は前記故障のレベルを判断するステップは、前記サーバに含まれるニューラルネットワークによって実行されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
モータの状態を監視するデバイスであって、前記モータは、信号を前記モータに提供する電源によって駆動され、前記デバイスは、
モータ信号を検知する手段と、
前記モータの所定の動作状態を検出する手段と、
前記モータが所定の動作状態で動作している場合には、
検知された前記モータ信号のゼロクロス時点を検出する手段と、
2つの前記ゼロクロス時点の間の時間を求める手段と、
包絡線のパターンを取得するために、求められた前記時間の複数の包絡線を推定する手段であって、前記複数の包絡線のそれぞれは、複数の求められた前記時間にわたって求められる、推定する手段と、
前記モータの動作状態及び前記包絡線のパターンから、前記モータが故障を有するか否か及び/又は前記故障のレベルを判断する手段と、
を備えることを特徴とする、デバイス。
【請求項11】
モータの状態を監視するシステムであって、前記モータは、信号を前記モータに提供する電源によって駆動され、前記システムは、
モータの状態を監視するデバイスに含まれる、モータ信号を検知する手段と、
前記モータの状態を監視するデバイスに含まれる、前記モータの所定の動作状態を検出する手段と、
前記モータが前記所定の動作状態で動作している場合には、
前記モータの状態を監視するデバイスに含まれる、検知された前記モータ信号のゼロクロス時点を検出する手段と、
前記モータの状態を監視するデバイスに含まれる、2つの前記ゼロクロス時点の間の時間を求める手段と、
前記モータの状態を監視するデバイスに含まれる、包絡線のパターンを取得するために求められた前記時間の複数の包絡線を推定する手段であって、前記複数の包絡線のそれぞれは、複数の求められた前記時間にわたって求められる、推定する手段と、
前記モータの状態を監視するデバイスに含まれる、推定された前記包絡線と、前記モータの動作状態と、前記モータを識別する情報とを通信ネットワークを通じてサーバに転送する手段と、
前記サーバに含まれる、前記モータの動作状態及び前記包絡線のパターンから、前記モータが故障を有するか否か及び/又は前記故障のレベルを判断する手段と、
を備えることを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、モータの状態を監視する方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
モータの状態監視は、産業界の重要な話題である。従来、モータの状態監視は、外部センサを使用して測定されるモータ電流又は振動のスペクトル解析によって行われている。
【0003】
文献における主な手法は、高速フーリエ変換(FFT)を使用するモータ電流のスペクトル解析である。モータ電流徴候解析(MCSA)法は、所定の周波数ロケーションにおいて周波数スパイクのレベルを検出し、比較によって各故障モードに関連付けられた故障レベルを確立する。スパイク周波数と基本周波数との間の関係は、モータの故障タイプ及びパラメータとともに変化する。スパイクレベルは、故障の深刻度に比例し、モータの動作点によっても変化する。
【0004】
いくつかのモータは、例えば、処理能力、周波数動作、メモリ及び記憶容量が限られているインバータのような電源によって駆動される。これらの電源については、電源の全体的な性能を高めることなく高速フーリエ変換処理を実施することは可能でない。
【0005】
電源は、どのような種類のモータにも接続することができる。そのため、詳細なモータ設計の知識がない場合には、スペクトル解析を求めることは困難である。したがって、スペクトル解析は、任意の可能性のあるモータタイプに調整しなければならない。
【0006】
スパイク高調波は、モータの動作点、モータの駆動に使用される電流波形によって変化する。そのため、任意のタイプのモータの状態監視を可能にする包括的な解析式を確立することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、例えば、高速フーリエ変換を使用するような複雑な周波数信号処理を使用することなく、任意のタイプのモータで動作可能である、モータの状態を監視する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明は、モータの状態を監視する方法であって、モータは、信号をモータに提供する電源によって駆動され、方法は、
モータ信号を検知するステップと、
モータの動作状態を検出するステップと、
モータが所定の状態で動作している場合には、
検知された信号のゼロクロスの時点を検出するステップと、
2つのゼロクロス時点の間の時間を求めるステップと、
推定された包絡線のパターンを取得するために、求められた時間の複数の包絡線を推定するステップであって、各包絡線は、複数の求められた時間にわたって求められる、ステップと、
モータの動作状態及び包絡線のパターンから、モータが故障を有するか否か及び/又は故障のレベルを判断するステップと、
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0009】
本発明はまた、モータの状態を監視するデバイスであって、モータは、信号をモータに提供する電源によって駆動され、デバイスは、
モータ信号を検知する手段と、
モータの動作状態を検出する手段と、
モータが所定の状態で動作している場合には、
検知された信号のゼロクロスの時点を検出する手段と、
2つのゼロクロス時点の間の時間を求める手段と、
包絡線のパターンを取得するために、求められた時間の複数の包絡線を推定する手段であって、各包絡線は、複数の求められた時間にわたって求められる、推定する手段と、
モータの動作状態及び包絡線のパターンから、モータが故障を有するか否か及び/又は故障のレベルを判断する手段と、
を備えることを特徴とする、デバイスに関する。
【0010】
本発明はまた、モータの状態を監視するシステムであって、モータは、信号をモータに提供する電力源によって駆動され、システムは、
モータの状態を監視するデバイスに含まれる、モータ信号を検知する手段と、
モータの状態を監視するデバイスに含まれる、モータの動作状態を検出する手段と、
モータが所定の状態で動作している場合には、
モータの状態を監視するデバイスに含まれる、検知された信号のゼロクロスの時点を検出する手段と、
モータの状態を監視するデバイスに含まれる、2つのゼロクロス時点の間の時間間隔を求める手段と、
モータの状態を監視するデバイスに含まれる、包絡線のパターンを取得するために求められた時間間隔の複数の包絡線を推定する手段であって、各包絡線は、複数の求められた時間間隔にわたって求められる、推定する手段と、
モータの状態を監視するデバイスに含まれる、推定された包絡線と、モータの動作状態と、モータを識別する情報とを通信ネットワークを通じてサーバに転送する手段と、
サーバに含まれる、モータが故障を有するか否か及び/又は故障のレベルを判断する手段と、
を備えることを特徴とする、システムに関する。
【0011】
したがって、パターンは、所定の状態下で求められるので、モータが故障を有するか否か及び/又は故障のレベルは、モータの所定の動作状態及び包絡線のパターンから判断することができる。
【0012】
パターンは少数の包絡線点からなり、従来の方法において必要とされるデータ記憶リソースと比較して、必要とされる記憶リソースは非常に少なく、パターンをサーバに送信するには、非常に限られた通信帯域幅しか必要としない。
【0013】
包絡線点の数が少ないにもかかわらず、各包絡線点が多数の時間から構築されているので、パターンは、比較的大きな継続時間のウィンドーをカバーする。各時間は、検知された信号値から求められるので、1つの包絡線点は、通常、2つの連続する信号値の間の時間よりもはるかに長い信号の継続時間をカバーする。包絡線点の検出によって、データの量は効果的に削減され、その結果、ストレージ要件及び通信要件は削減される。
【0014】
本発明による情報の大幅な削減にもかかわらず、包絡線点のパターンには、引き続き、電源のパルス幅変調動作に起因する基本周波数及び高周波数の電流信号に重畳される少なくとも1つの周波数スパイクの存在に起因する情報が含まれる。
【0015】
パターンは、アンダーサンプリングに起因するそのような信号の間のクロストークによる影響を受ける。クロストークが存在することによって、包絡線の低周波数振動が生成され、高サンプリングを必要とすることなく包絡線を検出することができる。
【0016】
ゼロ電流タイミング間隔は、検知された信号の様々な周波数成分の重畳による影響を受ける。
【0017】
特定の特徴によれば、モータが故障を有するか否か及び/又は故障のレベルを判断するステップは、同じ所定の動作状態を有する包絡線のパターンが記憶されている場合には、推定された包絡線のパターンを、同じ所定の動作状態を有する記憶された包絡線のパターンと比較することによって実行される。
【0018】
したがって、測定されたパターン及び基準パターンは、同じ動作状態下で収集されるので比較可能である。パターン間の相違は、故障の存在を反映するとともに、故障のレベルも反映する。
【0019】
特定の特徴によれば、本方法は、同じ所定の動作状態を有する包絡線のパターンが記憶されていない場合には、推定された包絡線のパターンを記憶するステップを更に含む。
【0020】
したがって、新たなモータのセットアップ時に、本方法は、様々な所定の状態において或る基準パターンを確立することができる。後に、故障が存在する場合には、この基準パターンと測定された新たなパターンとを比較することができ、この比較から、故障及び/又は故障レベルを判断することができる。本発明は、既知の故障状態におけるパターンを取得するために、試験セットアップの複雑な設定を必要としない。本発明は、モータの設計の事前知識なしで、プラグアンドプレイ方式で動作することができる。
【0021】
特定の特徴によれば、モータが故障を有するか否か及び/又は故障のレベルを判断するステップは、ニューラルネットワークを使用して実行され、ニューラルネットワークによって使用される荷重は、サーバによって受信される。
【0022】
したがって、測定されたパターンは、1つの基準パターンだけでなく、様々な動作状態における多くのパターンとも比較される。ニューラルネットワークが既知の故障状態(故障タイプ及び故障レベル)下で測定されたパターンを用いてトレーニングされるとき、ニューラルネットワークは、トレーニングに使用されたパターンに関するセットによってカバーされない動作状態で測定されたパターンからも、故障タイプ及び故障の存在を予測することができる。本発明を使用すると、故障信頼できる故障の検出を実施するのに必要となるパターンの数を削減することができる。
【0023】
ニューラルネットワークは、非常にロバストであり、測定されたパターンの形状から故障タイプ及び故障レベルの特徴付けに関する工学技術を必要としない。ニューラルネットワークは、測定されたパターンと故障タイプ及び故障レベルとの間に明確な解析的関係がなくても、故障の有無および故障のレベルが異なる既知のシーケンスに関して正しい判定を提供するようにトレーニングされる。
【0024】
所与のモータに関する故障解析判定は、他の同様のモータ及び同様の動作状態において実現されるパターンの解析によって援助される。
【0025】
ニューラルネットワークは、既知の故障タイプ及び故障レベルの有無を問わず、測定された所定の動作状態において、他の所定の状態において推定された他のパターンと比較することができる。他の所定の動作状態及び既知の故障レベルと組み合わされた他のパターンは、通常、ニューラルネットワークをトレーニングするのに使用される。トレーニングは、遠隔のサーバにおいて実現され、モータの状態を監視するデバイスにおいて実現される必要はない。
【0026】
ニューラルネットワークのトレーニング後、ニューラルネットワークの荷重は、モータの状態を監視するデバイスによって受信される。モータの状態を監視するデバイスは、推定されたパターン及び所定の動作状態から判定を行うことができる。この判定は、完全に分散化され、ロバストである。本方法は、使用する計算、メモリ使用量、通信帯域幅が非常に限られているときに効果的である。
【0027】
故障の存在は、所定の動作状態下で測定されたパターンがないときであっても、近傍の所定の動作状態から判断することができる。
【0028】
さらに、ニューラルネットワークは、機械の設計の詳細が不明であっても、推定されたパターンから故障のレベルを判断することができる。故障スパイク周波数、基本周波数、及びパルス幅変調周波数の間のクロストークによって引き起こされる故障の徴候は、ニューラルネットワークが、他の近傍の所定の動作状態における既知の故障タイプ及び故障レベルを有するパターンを用いて、所定の動作状態における推定されたパターンの距離を最小にするので、故障タイプ及び故障レベルに自動的に関連付けられる。
【0029】
特定の特徴によれば、本方法は、モータの状態を監視するデバイスによって実行される。
【0030】
したがって、モータの状態を監視するデバイスは、外部デバイスから支援を受けることなく故障を検出することができる。本発明は、外部処理ユニットとの通信を必要とせず、故障は、モータの位置する場所において局所的に検出及び位置特定することができる。本発明は、それゆえに、分散化され、ロバストである。
【0031】
特定の特徴によれば、モータ信号を検知するステップと、モータの所定の動作状態を検出するステップと、検知された信号のゼロクロスの時点を検出するステップと、2つのゼロクロス時点の間の時間を求めるステップと、包絡線のパターンを取得するために求められた時間の複数の包絡線を推定するステップとは、モータの状態を監視するデバイスによって実行される。
【0032】
したがって、パターン情報は、サイズが限られており、必要とされる解析速度は非常に低速である。モータが故障を有するか否かを判断するステップが、外部処理ユニットにおいて実施されるとき、外部処理ユニットに転送されるデータの量は大幅に削減される。
【0033】
モータの状態を監視するデバイスのCPUコスト及び通信コストは僅かである。本デバイスは、高周波数帯域幅を有する信号を検知する必要はない。本デバイスは、大量の信号を記憶する必要はない。本デバイスは、FFT等の複雑な演算を実施する必要はない。本デバイスは、様々な候補となる故障にわたってスペクトル成分を評価する必要はない。本デバイスは、評価すべき周波数成分を決定するために機械設計パラメータについて知る必要はない。本デバイスは、大きな処理能力を有する外部処理ユニットに大きな信号ベクトルを通信する必要はない。
【0034】
モータの状態を監視するデバイスは、ハードウェア(メモリ、アナログ/デジタル変換器、CPU、通信)を変更することなく、汎用のインバータ又は電源等の商用の電源内に容易に統合することができる。
【0035】
特定の特徴によれば、方法は、推定された包絡線と、モータの動作状態と、モータのタイプを識別する情報とを通信ネットワークを通じてサーバに転送するステップを更に含む。
【0036】
したがって、故障が存在しない場合には、パターンは、同じタイプ又は異なるタイプの多くのモータを制御するサーバと共有することができる。1つのモータについて収集されたパターンは、同様の動作状態にある同じタイプの他のモータにおいて検出されたパターンを確認する基準としての役割を果たすことができる。モータの状態を監視するデバイスは、多数の所定の動作状態にわたって基準パターンを記憶する必要がない。
【0037】
特定の特徴によれば、モータの動作状態及び包絡線のパターンから、モータが故障を有するか否か及び/又は故障のレベルを判断するステップは、サーバによって実行される。
【0038】
したがって、サーバは、求められたパターンを、同様の所定の状態にある同じタイプのモータを制御する他のデバイスによって以前に報告されたパターンと比較することができる。サーバは、既知の故障状態の多数のパターンを用いてトレーニングを受けることもできる。
【0039】
測定されたパターンに対する故障レベル検出の精度は、既知の故障状態下で測定されたパターンを使用して高められる。故障タイプ(例えば、混合偏心、軸受内部/外部レース等)の識別も改善される。
【0040】
特定の特徴によれば、モータの動作状態及び包絡線のパターンから、モータが故障を有するか否か及び/又は故障のレベルを判断するステップは、サーバに含まれるニューラルネットワークによって実行される。
【0041】
したがって、モータの状態を監視するデバイスは、ニューラルネットワークを備える必要がない。サーバにあるニューラルネットワークは、同じタイプの多くのモータの状態を監視することができ、一群のモータにわたる複製を必要とせず、計算リソース及びメモリリソースが節約される。サーバは、一群のモータの故障タイプ及び故障レベルを収集することができ、この情報を使用して、一群のモータ内の故障のあるモータの保守の準備をより十分に行うことができる。
【0042】
本発明の特徴は、例示の実施形態の以下の説明を読むことによってより明らかになる。この説明は、添付図面に関して作成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1a】本発明の第1の実現形態による、モータを駆動するとともにモータの状態を監視するシステムのアーキテクチャを表す図である。
図1b】本発明の第2の実現形態による、モータを駆動するとともにモータの状態を監視するシステムのアーキテクチャを表す図である。
図2】モータの状態を監視するデバイスのアーキテクチャを表す図である。
図3】少なくとも1つのモータの状態を監視するサーバのアーキテクチャを表す図である。
図4】本発明の第1の実現形態による、モータの状態を監視するデバイスによって実行される、モータの状態を監視するアルゴリズムの第1の例を表す図である。
図5】本発明の第2の実現形態による、モータの状態を監視するデバイスによって実行される、モータの状態を監視するアルゴリズムの一例を表す図である。
図6】少なくとも1つのモータの状態を監視するサーバによって実行されるアルゴリズムの第1の例を表す図である。
図7】少なくとも1つのモータの状態を監視するサーバによって実行されるアルゴリズムの第2の例を表す図である。
図8】対応する理想的な正弦波形によって重ね合わされたモータの1つの相を通って流れる電流を表すモータ信号の波形の一例を表す図である。
図9】本発明に従って求められるゼロクロス時点の間の時間のクロノグラムである。
図10a】モータが故障を有しないときのゼロ点時点の間の時間を表す波形を表す図である。
図10b】モータが故障を有しないときの本発明に従って取得される包絡線のパターンを表す図である。
図11a】モータが少なくとも1つの故障を有するときのゼロ点時点の間の時間を表す波形を表す図である。
図11b】モータが少なくとも1つの故障を有するときの本発明に従って取得される包絡線のパターンを表す図である。
図12】モータの動作状態と推定された包絡線のパターンとから、モータが故障を有するか否か及び/又は故障のレベルを判断するステップのニューラルネットワーク実施態様を表す図である。
図13】本発明の第2の実現形態による、モータの状態を監視するデバイスによって実行される、モータの状態を監視するアルゴリズムの第2の例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1aは、本発明の第1の実現形態による、モータを駆動するとともにモータの状態を監視するシステムのアーキテクチャを表している。
【0045】
モータを駆動するとともにモータの状態を監視するシステムは、電流をモータに提供する電源110によって駆動されるモータ120を備える。
【0046】
このシステムは、モータ120の1つの相コネクタを通って流れる電流を表すモータ信号を検知し、検知された信号値を処理する、モータの状態を監視するデバイス100を更に備える。
【0047】
検知されたモータ信号は、例えば、モータの1つの相を通って流れる電流のレベル、又はモータの2つの相の間若しくはモータの1つの相と電源110の接地との間に電源110によって印加される制御電圧、又はモータ120の近傍で測定される漂遊磁束のレベルである。
【0048】
検知される信号値は、一例として、電源110のスイッチング周波数において検知される。
【0049】
第1の実現形態によれば、モータの状態を監視するデバイス100は、
-モータ信号を検知し、
-モータの動作状態を検出し、モータが所定の状態で動作している場合には、
-検知された信号のゼロクロスの時点を検出し、
-2つのゼロクロス時点の間の時間を求め、
-包絡線のパターンを取得するために、求められた時間の複数の包絡線を推定し、なお、各包絡線は、求められた複数の時間にわたって求められ、
-モータの動作状態と包絡線のパターンとから、モータが故障を有するか否か及び/又は故障のレベルを判断する。
【0050】
本発明の一変形形態によれば、モータ状態監視デバイス100は、電源110に含まれる。
【0051】
電源110は、汎用インバータ又は商用電源とすることができる。
【0052】
図1bは、本発明の第2の実現形態による、モータを駆動するとともにモータの状態を監視するシステムのアーキテクチャを表している。
【0053】
モータを駆動するとともにモータの状態を監視するシステムは、電流をモータに提供する電源110によって駆動されるモータ120を備える。
【0054】
システムは、モータ120の1つの相コネクタを通って流れる電流を表す信号を検知し、検知された信号値を処理し、処理された信号値を図1bに図示しない通信ネットワークを通じてサーバ150に転送する、モータの状態を監視するデバイス100を更に備える。
【0055】
検知された信号は、例えば、相電流レベル、又は電源110によって印加される相制御電圧、又はモータ120の近傍で測定される漂遊磁束のレベルである。
【0056】
信号値は、一例として、電源110のスイッチング周波数において検知される。
【0057】
通信ネットワークは、例えば、無線ネットワーク若しくは有線ネットワーク、又は無線通信ネットワークと有線通信ネットワークとの組み合わせである。
【0058】
サーバ150は、モータ120が故障を有するか否か、及び対応する故障のレベルを、受信された処理済みの信号値から判断することができる。
【0059】
本発明の一変形形態によれば、モータ状態監視デバイス100は、電源110に含まれる。
【0060】
電源110は、汎用インバータ又は商用電源とすることができる。
【0061】
第2の実現形態によれば、モータの状態を監視するデバイス100は、
-モータ信号を検知し、
-モータの動作状態を検出し、モータが所定の状態で動作している場合には、
-検知された信号のゼロクロスの時点を検出し、
-2つのゼロクロス時点の間の時間を求め、
-包絡線のパターンを取得するために、求められた時間の複数の包絡線を推定し、なお、各包絡線は、求められた複数の時間にわたって求められ、
-モータの動作状態と包絡線のパターンをサーバに転送する。
【0062】
サーバは、
-モータの状態を監視する少なくとも1つのデバイス100から包絡線のパターンを受信し、
-モータが故障を有するか否か及び/又は故障のレベルを、モータの動作状態と包絡線のパターンとから判断する。
【0063】
図2は、モータの状態を監視するデバイスのアーキテクチャを表している。
【0064】
モータの状態を監視するデバイス100は、例えば、バス201によって互いに接続される構成要素と、図4図5、又は図13に開示されているようなプログラムによって制御されるプロセッサ200とに基づくアーキテクチャを有する。
【0065】
バス201は、プロセッサ200をリードオンリーメモリROM202、ランダムアクセスメモリRAM203、入出力インターフェースI/O IF205にリンクし、本発明の第2の実現形態によればネットワークインターフェース206にもリンクする。
【0066】
入出力インターフェースI/O IF205は、モータの状態を監視するデバイス100が、モータ120の1つの相コネクタを通って流れる電流を表す信号を検知することを可能にする。
【0067】
ネットワークインターフェース206は、モータの状態を監視するデバイス100が処理された信号値をサーバ150に転送することを可能にする。
【0068】
メモリ203は、変数と、図4図5、又は図13に開示されているようなアルゴリズムに関係したプログラムの命令とを収容することを目的としたレジスタを含む。
【0069】
リードオンリーメモリ、又は場合によってフラッシュメモリ202は、図4図5、又は図13に開示されているようなアルゴリズムに関係したプログラムの命令を含む。このプログラムは、モータの状態を監視するデバイス100に電源が投入されると、ランダムアクセスメモリ203にロードされる。或いは、このプログラムは、ROMメモリ202から直接実行することもできる。
【0070】
モータの状態を監視するデバイス100によって行われる計算は、PC(パーソナルコンピュータ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)又はマイクロコントローラ等のプログラマブルコンピューティングマシンによる命令又はプログラムのセットの実行によってソフトウェアにおいて実装することもできるし、マシン、又は、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)若しくはASIC(特定用途向け集積回路)等の専用構成要素によってハードウェアにおいて実装することもできる。
【0071】
換言すれば、モータの状態を監視するデバイス100は、図4図5、又は図13に開示されているようなアルゴリズムに関係したプログラムを、モータの状態を監視するデバイス100に実行させる回路類、又は回路類を含むデバイスを含む。
【0072】
図3は、少なくとも1つのモータの状態を監視するサーバのアーキテクチャを表している。
【0073】
モータの状態を監視するデバイス100のサーバ150は、例えば、バス301によって互いに接続される構成要素と、図6又は図7に開示されているようなプログラムによって制御されるプロセッサ300とに基づくアーキテクチャを有する。
【0074】
バス301は、プロセッサ300をリードオンリーメモリROM302、ランダムアクセスメモリRAM303、及びネットワークインターフェース306にリンクする。
【0075】
ネットワークインターフェース306は、サーバ150が、少なくとも1つのモータの状態を監視するデバイス100から処理された信号値を受信することを可能にする。
【0076】
メモリ303は、変数と、図6又は図7に開示されているようなアルゴリズムに関係したプログラムの命令とを収容することを目的としたレジスタを含む。
【0077】
リードオンリーメモリ、又は場合によってフラッシュメモリ302は、図6又は図7に開示されているようなアルゴリズムに関係したプログラムの命令を含む。このプログラムは、サーバ150に電源が投入されると、ランダムアクセスメモリ303にロードされる。或いは、このプログラムは、ROMメモリ302から直接実行することもできる。
【0078】
サーバ150によって行われる計算は、PC(パーソナルコンピュータ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)又はマイクロコントローラ等のプログラマブルコンピューティングマシンによる命令又はプログラムのセットの実行によってソフトウェアにおいて実装することもできるし、マシン、又は、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)若しくはASIC(特定用途向け集積回路)等の専用構成要素によってハードウェアにおいて実装することもできる。
【0079】
換言すれば、サーバ150は、図6又は図7に開示されているようなアルゴリズムに関係したプログラムを、サーバ150に実行させる回路類、又は回路類を含むデバイスを含む。
【0080】
図4は、本発明の第1の実現形態による、モータの状態を監視するデバイスによって実行される、モータの状態を監視するアルゴリズムの第1の例を表している。
【0081】
本アルゴリズムは、このアルゴリズムがモータの状態を監視するデバイス100のプロセッサ200によって実行される一例において開示される。ステップS400において、プロセッサ200は、変数k及びpをヌル(null)値に設定する。
【0082】
次のステップS401において、プロセッサ200は、モータが所定の状態で動作しているか否かを確認する。例えば、所定の動作状態とは、定速及び定トルクの状態である。プロセッサ200は、検知された信号の平均周波数及び平均振幅の変化から速度及びトルクの変化を検出する。モータは、検知された信号の周波数及び振幅が安定しているときに所定の動作状態にある。
【0083】
一例としては、動作状態は、平均値までの距離が平均値の5%未満であるときに安定しているとする。
【0084】
一変形形態では、所定の動作状態は、定トルクランプ及び定速度ランプである。更に別の変形形態では、所定の動作状態とは、周期的な速度及びトルクの状態である。
【0085】
モータが所定の動作状態にある場合には、プロセッサ200はステップS402に進む。そうでない場合には、プロセッサ200はステップS400に戻る。
【0086】
ステップS402において、プロセッサ200は、時刻tにおいてI/Oインターフェース205から、モータ120の1つの相コネクタを通って流れる電流を表すXで示される信号値を取得し、t及びXを記憶する。ここで、nは、信号値が検知されるごとにインクリメントされるインデックスである。
【0087】
ここで、ステップS402は、ステップS401の前に実行することができ、その場合の信号値は、モータが所定の状態で動作しているか否かを判断するのに使用されることに留意しなければならない。
【0088】
次のステップS403において、電流値Xの正負符号と、以前の反復において取得された電流値Xn-1の正負符号とが異なるか否かが確認される。
【0089】
電流値Xの正負符号と電流値Xn-1の正負符号とが異なる場合には、信号Xのゼロクロスが検出され、プロセッサ200はステップS404に進む。そうでない場合には、プロセッサ200は、次の電流値Xn+1を測定するためにステップS402に戻る。
【0090】
ステップS404において、プロセッサ200は、ゼロクロス時点
【数1】
、及び、このゼロクロス時点と以前に計算されたゼロクロス時点との間の時間
【数2】
をそれぞれ以下に示すように計算する。
【数3】
【0091】
次のステップS405において、プロセッサ200は、時間差
【数4】
を記憶する。
【0092】
次のステップS406において、プロセッサ200は、変数kを1だけインクリメントする。
【0093】
次のステップS407において、プロセッサ200は、変数kが第1の所定の値Nに等しいか否かを確認する。例えば、Nは50である。
【0094】
一変形形態では、所定の値は、N個の連続したゼロクロスが一定継続時間に対応するように、ステップS401において推定された所定の状態の速度から計算される。一例として、一定継続時間は1秒である。
【0095】
変数kがNに等しい場合には、プロセッサ200はステップS408に進む。そうでない場合には、プロセッサ200はステップS401に戻る。
【0096】
ステップS408において、プロセッサ200は、変数kをヌル値に設定する。
【0097】
ステップS409において、プロセッサ200は、N個の時間
【数5】
の包絡線ENV(p)を求める。一例として、包絡線は以下の標準偏差である。
【数6】
【0098】
別の例として、包絡線は、N個の間隔
【数7】
の中の最大値である。
【0099】
ステップS410において、プロセッサ200は、変数pを1だけインクリメントする。
【0100】
次のステップS411において、プロセッサ200は、変数pが第2の所定の値Pに等しいか否かを確認する。Pは、例えば20である。
【0101】
pがPに等しい場合には、プロセッサ200はステップS413に進む。そうでない場合には、プロセッサ200はステップS401に戻る。
【0102】
ステップS413において、P個の記憶された包絡線値のパターンが取得される。プロセッサ200は、取得されたP個の記憶された包絡線値の取得中に存在するモータ状態と同じ所定のモータ状態とともに既に記憶されたパターンENVrefが存在するか否かを確認する。
【0103】
取得されたP個の記憶された包絡線値の取得中に存在するモータ状態と同じ所定の動作状態とともに既に記憶されたパターンが存在しない場合には、プロセッサ200はステップS414に進む。そうでない場合には、プロセッサ200はステップS415に進む。
【0104】
ステップS414において、プロセッサ200は、取得されたP個の記憶された包絡線値をモータ状態とともに記憶し、ステップS400に戻る。
【0105】
ステップS415において、プロセッサ200は、例えば、以下に示す故障値を計算することによって、モータの故障が存在するか否かを判断する。
【数8】
【0106】
ここで、Frefは、一例として機械の偏心公差に対応する所定の故障レベルである。
【0107】
別の変形形態では、故障値は、以下の式によって表される。
【数9】
【0108】
一例として、Fref=5%である。Fは、検出された故障のレベルを表す。故障のレベルは、所定のレベル(例えば、10%、20%等)を超えているときに表示される。
【0109】
一変形形態では、プロセッサ200は、検出されたパターン及び所定の状態をニューラルネットワークに供給する。ニューラルネットワークは、故障が存在すること及び故障のレベルを出力する。
【0110】
故障が存在する場合には、音響信号又は視覚信号のような故障信号が生成される。
【0111】
図5は、本発明の第2の実現形態による、モータの状態を監視するデバイスによって実行される、モータの状態を監視するアルゴリズムの一例を表している。
【0112】
本アルゴリズムは、このアルゴリズムがモータの状態を監視するデバイス100のプロセッサ200によって実行される一例において開示される。
【0113】
ステップS500において、プロセッサ200は、変数k及びpをヌル値に設定する。
【0114】
次のステップS501において、プロセッサ200は、モータが所定の状態で動作しているか否かを確認する。例えば、安定動作状態は、定速及び定トルクである。プロセッサ200は、検知された信号の平均周波数及び平均振幅の変化から速度及びトルクの変化を検出する。モータは、検知された信号の平均周波数及び平均振幅が安定しているときに所定の動作状態にある。
【0115】
一変形形態では、所定の動作状態は、定トルクランプ及び定速度ランプである。更に別の変形形態では、所定の動作状態は、周期的な速度及びトルクの状態である。
【0116】
モータが所定の動作状態にある場合には、プロセッサ200はステップS502に進む。そうでない場合には、プロセッサ200はステップS500に戻る。
【0117】
ステップS502において、プロセッサ200は、時刻tにおいてI/Oインターフェース205から、モータ120の1つの相コネクタを通って流れる電流を表すXで示される信号値を取得し、t及びXを記憶する。ここで、nは、信号値が検知されるごとにインクリメントされるインデックスである。
【0118】
ここで、ステップS502は、ステップS501の前に実行することができ、その場合の信号値は、モータが所定の状態で動作しているか否かを判断するのに使用されることに留意しなければならない。
【0119】
次のステップS503において、電流値Xの正負符号と、以前の反復において取得された電流値Xn-1の正負符号とが異なるか否かが確認される。
【0120】
電流値Xの正負符号と電流値Xn-1の正負符号とが異なる場合には、ゼロクロス電圧が検出され、プロセッサ200はステップS504に進む。そうでない場合には、プロセッサ200は、次の電流値Xn+1を読み取るためにステップS502に戻る。
【0121】
ステップS504において、プロセッサ200は、ゼロクロス時点
【数10】
、及び、このゼロクロス時点と以前に計算されたゼロクロス時点との間の時間
【数11】
をそれぞれ以下に示すように計算する。
【数12】
【0122】
次のステップS505において、プロセッサ200は、時間差
【数13】
を記憶する。
【0123】
次のステップS506において、プロセッサ200は、変数kを1だけインクリメントする。
【0124】
次のステップS507において、プロセッサ200は、変数kが第1の所定の値Nに等しいか否かを確認する。例えば、Nは50である。
【0125】
一変形形態では、所定の値は、N個の連続したゼロクロスが一定継続時間に対応するように、ステップS501において推定された所定の状態の速度から計算される。一例として、一定継続時間は1秒である。
【0126】
変数kがNに等しい場合には、プロセッサ200はステップS508に進む。そうでない場合には、プロセッサ200はステップS501に戻る。
【0127】
ステップS508において、プロセッサ200は、変数kをヌル値に設定する。
【0128】
ステップS509において、プロセッサ200は、N個の時間
【数14】
の包絡線ENV(p)を求める。一例として、包絡線は以下の標準偏差である。
【数15】
【0129】
別の例として、包絡線は、N個の間隔
【数16】
の中の最大値である。
【0130】
ステップS510において、プロセッサ200は、変数pを1だけインクリメントする。
【0131】
次のステップS511において、プロセッサ200は、変数pが第2の所定の値Pに等しいか否かを確認する。Pは、例えば、20である。
【0132】
pがPに等しい場合には、プロセッサ200はステップS512に進む。そうでない場合には、プロセッサ200はステップS501に戻る。
【0133】
ステップS512において、P個の記憶された包絡線値のパターンが取得される。プロセッサ200は、モータを識別する情報と、P個の記憶された包絡線値のパターンが取得されたモータ状態とともに、P個の記憶された包絡線値のパターンを含むメッセージをネットワークインターフェース206を通じてサーバ150に転送することを命令する。
【0134】
図6は、少なくとも1つのモータの状態を監視するサーバによって実行されるアルゴリズムの第1の例を表している。
【0135】
本アルゴリズムは、このアルゴリズムがサーバ150のプロセッサ300によって実行される一例において開示される。
【0136】
ステップS600において、プロセッサ300は、モータタイプとモータ自体とを識別する情報、及びP個の記憶された包絡線値のパターンが取得されたモータ状態とともに、P個の記憶された包絡線値のパターンを含むメッセージがネットワークインターフェース306を通じて受信されたことを確認する。
【0137】
ステップS601において、プロセッサ300は、モータタイプを識別する情報と、P個の記憶された包絡線値のパターンが取得されたモータ状態とを伴うP個の記憶された包絡線値のパターンがRAMメモリ303に記憶されているか否かを確認する。
【0138】
モータタイプを識別する情報と、P個の記憶された包絡線値のパターンが取得されたモータ状態とを伴うP個の記憶された包絡線値のパターンENVrefがRAMメモリ303に記憶されている場合には、プロセッサ300はステップS603に進む。そうでない場合には、プロセッサ300はステップS602に進む。
【0139】
ステップS602において、プロセッサ300は、受信されたP個の包絡線値をモータ状態とともに記憶し、ステップS600に戻る。
【0140】
ステップS603において、プロセッサ300は、例えば、以下に示す故障値を計算することによって、モータの故障が存在するか否かを判断する。
【数17】
【0141】
ここで、Frefは、機械の公差に対応する所定の故障レベルである。
【0142】
別の変形形態では、故障値は、以下の式によって表される。
【数18】
【0143】
一例として、Fref=5%である。Fは、検出された故障のレベルを表す。故障のレベルは、所定のレベル(例えば、10%、20%等)を超えているときに表示される。
【0144】
故障が存在する場合には、メッセージが、ステップS600において受信されたパターンを転送したデバイスに転送される。
【0145】
図7は、少なくとも1つのモータの状態を監視するサーバによって実行されるアルゴリズムの第2の例を表している。
【0146】
本アルゴリズムは、このアルゴリズムがサーバ150のプロセッサ300によって実行される一例において開示される。
【0147】
ステップS700において、プロセッサ300は、モータタイプとモータ自体とを識別する情報、及びP個の記憶された包絡線値のパターンが取得されたモータ状態とともに、P個の記憶された包絡線値のパターンを含むメッセージをネットワークインターフェース306を通じて受信する。
【0148】
ステップS701において、プロセッサ300は、受信されたP個の記憶された包絡線値をモータ状態とともに、サーバ150に含まれるニューラルネットワークに転送する。
【0149】
ステップS703において、プロセッサ300は、モータの故障が存在するか否かを示す情報をニューラルネットワークから受信する。
【0150】
故障が存在する場合には、メッセージが、ステップS700において受信されたパターンを転送したデバイスに転送される。
【0151】
図8は、対応する理想的な正弦波形によって重ね合わされたモータの1つの相を通って流れる電流を表すモータ信号の波形の一例を表している。
【0152】
図8において、80で示す曲線は、モータ120の1つの相を通って流れる理論的な電流を表し、82で示す曲線は、電源110のパルス幅変調が存在する場合において、モータ120に故障が発生したときに生成されるスパイク高調波を表している。故障は、限定ではなく例示として、静的又は動的な偏心、回転子バーの破損、内部軸受レースの破損及び外部軸受レースの破損に起因している。
【0153】
各故障は、特定の周波数の徴候を有し、これは、その故障に起因する周波数スパイクが、故障タイプと、モータ120の設計パラメータ及び動作モードとに依存する比を基本周波数に乗算したものに比例することを意味する。モータ120が生存している間に、故障レベルは増加し、周波数の振幅が増加するが、スパイク周波数は一定のままである。振幅が増加するにつれて、モータ信号のゼロクロス時点の間隔は変化する。
【0154】
本発明によれば、ゼロクロスの間の時間の変化が、故障がモータ120に現れているか否かを判断するための入力として使用される。
【0155】
【数19】

【数20】
及び
【数21】
は、2つのゼロクロスの間の時間の測定値を示す。
【0156】
図8では、時間は、2つの連続するゼロクロスの間で測定されるが、本発明は、時間が、3つ以上の連続するゼロクロスの間で測定されるときにも等しく適用される。
【0157】
図9は、本発明に従って求められるゼロクロス時点の間の時間のクロノグラムである。
【0158】
例えば、毎秒の回転数は100であり、モータに提供される信号のサンプリング周波数は5kHzである。ゼロ点クロスのN個の検出を図9に示す。これらのN個の検出は、図4のステップS409及び図5のステップS509に開示されているような1つの包絡線の点を求めるのに使用される。例えば、N=50であり、Pは50である。
【0159】
ここで、パターン継続時間及びパターンサイズを一定に保つために、Nをモータ120の回転速度とともに適応させることができることに留意しなければならない。
【0160】
図10aは、モータが故障を有しないときのゼロ点時点の間の時間を表す波形を表している。
【0161】
本発明によれば、2つのゼロクロス時点の間の時間差
【数22】
は、P個の包絡線を求めるのに使用される。
【0162】
故障が存在しない場合には、時間差
【数23】
は、2つの値の間で一様に変化する。この振動は、電源のPWMスイッチングに起因したHF電流リップルの存在に由来する。同じ動作状態の場合に、結果のパターンは、故障が存在しない場合に繰り返すことができ、包絡線信号はかなり一定している。
【0163】
図10bは、モータが故障を有しないときの本発明に従って取得される包絡線のパターンを表している。この方法は、故障が存在しないことを表すかなり一定した包絡線信号を効果的に検出する。
【0164】
図11aは、モータが少なくとも1つの故障を有するときのゼロ点時点の間の時間を表す波形を表している。
【0165】
本発明によれば、2つのゼロクロス時点の間の時間差
【数24】
は、P個の包絡線を求めるのに使用される。
【0166】
故障が存在する場合には、時間差
【数25】
は、2つの値の間で局所的に変化する。この振動は、電源のPWMスイッチングに起因したHF電流リップルの存在と、故障の存在に由来するHF電流スパイクの存在とが組み合わさったことに由来する。HF PWM電流とHF故障電流との間の干渉は、これらの2つの値の低周波数変動を引き起こす。
【0167】
図11bは、モータが少なくとも1つの故障を有するときの本発明に従って取得される包絡線のパターンを表している。
【0168】
図10bの曲線と図11bの曲線とを比較すると、P個の包絡線の変化は異なっている。
【0169】
包絡線の低周波数変動は、故障タイプ及び/又は故障レベルを表す。故障のレベルは、包絡線変動の周波数及び高さから求めることができる。
【0170】
本発明の第1の実施態様では、故障レベルは、所定の初期故障レベルを乗算した包絡線ピーク間の比として求められる。推定された故障レベルが10%未満である場合には、故障は検出されないとみなされる。
【0171】
本発明の第2の実施態様では、故障レベルは、所定の故障レベルを乗算した最大包絡線レベルと最小包絡線レベルとの間の比として求められる。
【0172】
本発明の第3の実施態様では、パターンの周期及び形状が、故障タイプ及び故障レベルの識別に寄与する。
【0173】
図12は、推定された包絡線のパターンを記憶された包絡線のパターンと比較する手段のニューラルネットワークの実施態様を表している。
【0174】
本発明によれば、サーバ150は、測定されたパターンに含まれるP個の包絡線レベルと、報告された動作状態及びモータタイプとを含むn個の入力I~Iをニューラルネットワークに供給する。図12において、ニューラルネットワークの入力I又はI又はIP+2は、動作状態の2つのパラメータ、すなわち、モータの速度及びトルクも含む。一変形形態では、動作状態は、スイッチング周波数、変調タイプ、モータタイプ等の付加的なパラメータを含むことができる。
【0175】
ニューラルネットワークの隠れ層のM個のニューロンNJ1、NJ2、...、NJMが、ニューラルネットワーク入力情報を処理し、各ニューロンは、出力隠れ層信号OJ1、OJ2、...、OJMを生成する。一例として、M=1000である。
【0176】
一例として、各ニューロンNJkは、以下のニューロン式を使用して、入力から出力信号OJkを生成する。なお、k=1~Mである。
【数26】
【0177】
ここで、gは、活性化関数であり、{wJik}は、ニューロンNJkの所定のシナプス荷重である。
【0178】
一例として、g(x)は、以下の式のシグモイド活性化関数である。
【数27】
【0179】
次に、2つの出力ニューロンNL1、NL2が、ニューラルネットワークの出力OL1、OL2を生成するために、M個の出力隠れ層信号OJ1、OJ2、...、OJMを処理する。
【0180】
第1の出力OL1は、入力パターンから判断される故障の存在の検出状態を表す。この第1の出力OL1は、以下の式に従って処理される。
【数28】
【0181】
ここで、gL1は、ステップ活性化関数であり、{wLj1}は、ニューロンNL1の所定のシナプス荷重である。
【0182】
一例として、
【数29】
である。
【0183】
第2の出力OL2は、入力パターンから求められる故障レベルを表す。この第2の出力は、以下の式に従って処理される。
【数30】
【0184】
ここで、gL2は、活性化関数であり、{wLj2}は、ニューロンNL2の所定のシナプス荷重である。
【0185】
一例として、gL2(x)は、以下の式のシグモイド活性化関数である。
【数31】
【0186】
ニューラルネットワークの荷重{wJik}、{wLj1}、{wLj2}は、既知の動作状態、故障タイプ及び/又は故障レベルを有するパターンのトレーニング母集団からあらかじめ求められる。一例として、荷重は、バックプロパゲーショントレーニングアルゴリズムを使用して求められる。
【0187】
ニューラルネットワークを用いた故障の検出及び故障レベルの識別は、ソフトウェアによって実施することもできるし、ハードウェアにおいて実施することもできる。
【0188】
図13は、本発明の第2の実現形態による、モータの状態を監視するデバイスによって実行される、モータの状態を監視するアルゴリズムの第2の例を表している。
【0189】
本アルゴリズムは、このアルゴリズムがモータの状態を監視するデバイス100のプロセッサ200によって実行される一例において開示される。
【0190】
ステップS1300において、プロセッサ200は、ニューラルネットワークの荷重をサーバ150から受信する。荷重{wJik}、{wLj1}、{wLj2}は、バックプロパゲーショントレーニングアルゴリズムを使用して、既知の動作状態、故障タイプ及び/又は故障レベルを有するパターンのトレーニング母集団から、サーバによってあらかじめ求められる。
【0191】
ステップS1301において、プロセッサ200は、変数k及びpをヌル値に設定する。
【0192】
次のステップS1302において、プロセッサ200は、モータが所定の状態で動作しているか否かを確認する。例えば、所定の動作状態とは、定速及び定トルクの状態である。プロセッサ200は、検知された信号の平均周波数及び平均振幅の変化から速度及びトルクの変化を検出する。モータは、検知された信号の平均周波数及び平均振幅が安定しているときに所定の動作状態にある。
【0193】
一変形形態では、所定の動作状態は、定トルクランプ及び定速度ランプである。更に別の変形形態では、所定の動作状態は、周期的な速度及びトルクの状態である。
【0194】
モータが所定の動作状態にある場合には、プロセッサ200はステップS1303に進む。そうでない場合には、プロセッサ200はステップS1301に戻る。
【0195】
ステップS1303において、プロセッサ200は、時刻tにおいてI/Oインターフェース205から、モータ120の1つの相コネクタを通って流れる電流を表すXで示される信号値を取得し、t及びXを記憶する。ここで、nは、信号値が検知されるごとにインクリメントされるインデックスである。
【0196】
ここで、ステップS1303は、ステップS1302の前に実行することができ、信号値は、モータが所定の状態で動作しているか否かを判断するのに使用されることに留意しなければならない。
【0197】
次のステップS1304において、電流値Xの正負符号と、以前の反復において取得された電流値Xn-1の正負符号とが異なるか否かが確認される。
【0198】
電流値Xの正負符号と電流値Xn-1の正負符号とが異なる場合には、ゼロクロス電圧が検出され、プロセッサ200はステップS1305に進む。そうでない場合には、プロセッサ200は、次の電流値Xn+1を測定するためにステップS1303に戻る。
【0199】
ステップS1305において、プロセッサ200は、ゼロクロス時点
【数32】
、及び、このゼロクロス時点と以前に計算されたゼロクロス時点との間の時間
【数33】
をそれぞれ以下に示すように計算する。
【数34】
【0200】
次のステップS1306において、プロセッサ200は、時間差
【数35】
を記憶する。
【0201】
次のステップS1307において、プロセッサ200は、変数kを1だけインクリメントする。
【0202】
次のステップS1308において、プロセッサ200は、変数kが第1の所定の値Nに等しいか否かを確認する。例えば、Nは50である。
【0203】
一変形形態では、所定の値は、N個のゼロクロスが一定継続時間に対応するように、ステップS1302において推定された所定の状態の速度から計算される。一例として、一定継続時間は1秒である。
【0204】
変数kがNに等しい場合には、プロセッサ200はステップS1309に進む。そうでない場合には、プロセッサ200はステップS1302に戻る。
【0205】
ステップS1309において、プロセッサ200は、変数kをヌル値に設定する。
【0206】
次のステップS1310において、プロセッサ200は、N個の時間
【数36】
の包絡線ENV(p)を求める。一例として、包絡線は以下の標準偏差である。
【数37】
【0207】
別の例として、包絡線は、N個の間隔
【数38】
の中の最大値である。次のステップS1311において、プロセッサ200は、変数pを1だけインクリメントする。
【0208】
次のステップS1312において、プロセッサ200は、変数pが第2の所定の値Pに等しいか否かを確認する。Pは、例えば20である。
【0209】
pがPに等しい場合には、プロセッサ200はステップS1313に進む。そうでない場合には、プロセッサ200はステップS1302に戻る。
【0210】
ステップS1313において、P個の記憶された包絡線値のパターンが取得され、プロセッサ200は、受信されたP個の記憶された包絡線値をモータ状態とともに、モータの状態を監視するデバイスに含まれるニューラルネットワークに転送する。ニューラルネットワークの係数は、ステップ1300において受信済みである。ニューラルネットワークは、図12に開示されたものと同様のものである。
【0211】
ステップS1314において、プロセッサ200は、モータの故障が存在するか否かを示す情報をニューラルネットワークから受信する。
【0212】
故障が存在する場合には、音響信号又は視覚信号のような故障信号が生成される。当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく、上記で説明した本発明の実施形態に対して多くの変更を行うことができる。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11a
図11b
図12
図13