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特許7485508ガラス物品層、ガラス物品束および梱包方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ガラス物品層、ガラス物品束および梱包方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/30 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
B65D85/30
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019225425
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2020097449
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】10 2018 221 782.3
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク ヘルムート シュパーシュー
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03373540(US,A)
【文献】特公平06-062179(JP,B2)
【文献】特開2015-054723(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04225876(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
z方向に延び、x方向で並置されているガラス物品(50)を少なくとも2つ有するガラス物品層(110)であって、前記ガラス物品(50)に沿ったz方向に、間隔Aで互いに離間した少なくとも2つのスペーサー位置(112)が設けられており、前記ガラス物品(50)の間にスペーサーが配置されている、ガラス物品層(110)において、前記スペーサーは糸状要素(10)であり、前記スペーサー位置(112)それぞれに少なくとも1つの前記糸状要素(10)が設けられており、前記ガラス物品(50)は円筒形であり、且つ外径6mm~50mmを有するガラス管であり、前記糸状要素(10)は0.25mm≦S≦2.5mmの糸厚Sを有し、各スペーサー位置(112)に糸状要素(10)が配置されており、前記糸状要素(10)は前記ガラス物品層(110)の各ガラス物品(50)の下方または上方のy方向にループ(16)を有することを特徴とする、ガラス物品層(110)。
【請求項2】
前記糸状要素(10)が、前記スペーサー位置(112)のそれぞれで前記ガラス物品層(110)のすべてのガラス物品(50)の周りにそれぞれ少なくとも部分的に巻き付けられていることを特徴とする、請求項1記載のガラス物品層(110)。
【請求項3】
隣接する2つのガラス物品(50)の間の前記スペーサー位置(112)のそれぞれに、1つ以上の前記糸状要素(10)の糸部分(14)が2つずつ配置されていることを特徴とする、請求項1または2記載のガラス物品層(110)。
【請求項4】
前記糸状要素(10)が、プラスチック材料からなることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス物品層(110)。
【請求項5】
前記プラスチック材料が、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンワックス、またはポリエチレン(PE)、特に高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリアミド(PA)、スチレン-アクリロニトリル-コポリマー(SAN)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリウレタン(PU)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン-コポリマー(ABS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)および/またはポリカーボネート(PC)を有するか、前述のポリマーからなることを特徴とする、請求項記載のガラス物品層(110)。
【請求項6】
前記スペーサー位置(112)が、20cm~80cmの間隔Aで設けられていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス物品層(110)。
【請求項7】
前記2つの糸部分(14)が、単一の糸状要素(10)の部分であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス物品層(110)。
【請求項8】
前記2つの糸部分(14)が、z軸に対して角度αで延び、80°≦α≦100°であることを特徴とする、請求項記載のガラス物品層(110)。
【請求項9】
前記糸部分(14)が、前記ガラス物品(50)の外周の少なくとも5%に巻き付けられることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス物品層(110)。
【請求項10】
前記糸部分(14)が、z方向で並置されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス物品層(110)。
【請求項11】
前記糸状要素(10)が、前記ガラス物品(50)の外周の少なくとも70%に巻き付けられていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のガラス物品層(110)。
【請求項12】
前記ガラス物品層(110)が、ずらして重ねた状態で配置されていることを特徴とする、y方向で重ねて配置された、請求項1から11までのいずれか1項記載のガラス物品層(110)を少なくとも2つ有するガラス物品束(100)。
【請求項13】
前記ガラス物品層(110)の前記糸状要素(10)が、隣接するガラス物品層(110)の前記ガラス物品(50)の間のスペーサーであることを特徴とする、請求項12記載のガラス物品束(100)。
【請求項14】
前記ガラス物品束(100)が、前記ガラス物品束(100)の少なくとも両端(102、104)にカバーシース(120)を有することを特徴する、請求項12または13記載のガラス物品束(100)。
【請求項15】
前記カバーシース(120)が、シュリンクフィルムからなることを特徴とする、請求項14記載のガラス物品束(100)。
【請求項16】
請求項1から11までのいずれか1項記載のガラス物品(50)を少なくとも2つ有するガラス物品層(110)を製造するための梱包方法であって、以下の順序で以下の工程:
a)ガラス物品(50)を準備する工程、
b)少なくとも2つのガラス物品(50)を連続的に供給し、分離ステーション(68)で前記ガラス物品(50)を分離する工程、
c)前記分離されたガラス物品(50)を、所定のスペーサー位置(112)に配置された少なくとも2つの巻付けステーション(82)を有する梱包ステーション(80)に連続的に供給する工程、
d)それぞれ少なくとも1つの糸状要素(10)を各巻付けステーション(82)に連続的に供給する工程、
e)巻付けプロセスによって、所定のスペーサー位置(112)で前記ガラス物品(50)の周りに前記糸状要素(10)を巻き付ける工程、
f)前記巻付けプロセスを完了する工程および
g)前記ガラス物品層(110)を搬出する工程
を有し、前記ガラス物品(50)は円筒形であり、且つ外径6mm~50mmを有するガラス管であり、前記糸状要素(10)は0.25mm≦S≦2.5mmの糸厚Sを有し、工程e)において、各スペーサー位置(112)で前記ガラス物品(50)の周りに単一の糸状要素(10)を巻き付け、各ガラス物品(50)の上方または下方の各スペーサー位置(112)にループ(16)を配置する、前記方法。
【請求項17】
工程e)において、前記巻付けプロセスが、各スペーサー位置(112)で前記ガラス物品(50)の間にそれぞれ2つの並置される糸部分(14)を配置することを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
工程f)とg)との間で、以下の工程:
f1)ガラス物品層(110)の最後のガラス物品(50)の巻付け後に前記糸状要素(10)を切断する工程
を実施する、請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
工程f)とg)との間で、以下の工程:
f2)ガラス物品層(110)の最後のガラス物品(50)の巻付け後に、前記糸状要素(10)を予め切断することなく、更なるガラス物品層(110)を巻き付けるための巻付けプロセスを継続する工程
を実施する、請求項16または17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載のガラス物品層に関する。本発明はまた、ガラス物品束、およびガラス物品層を製造するための梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス物品、特にガラス管の梱包時には、製造プロセスにおいて外面のガラス同士の接触が起こる。ガラス管は、最初にガラス管からなる層(ガラス管層)、次いでガラス管からなる束(ガラス管束)を形成するように配置され、ガラス管束は、その端部がシュリンクキャップされることによって長方形の形状に保持される。配置は可能な限り最密梱包で行われる。管表面が必然的に接触する際、線形接触(接触線)が生じる。接触線に沿った接触箇所では、表面欠陥や引っ掻き傷が生じることがある。
【0003】
パレット積載時には、これらの束は層状でグループ化され、パレットに積み重ねられる。束同士が押し付けられることにより外側のガラス管は互いに接触し、これにより同様に表面欠陥や引っ掻き傷のリスクが存在する。
【0004】
従来の梱包プロセスの場合、特に、劣悪な道路、船舶貨物における高い波、航空貨物における気流などの好ましくない輸送条件の下では、管同士の相対的な動きを完全に排除することはできないことが判明している。この結果、摩擦運動によって引っ掻き傷が生じ、これは最も単純な場合には表面上の欠陥を引き起こし、多くの場合、管が使用できなくなり、最悪の場合には管の破損にさえつながる。
【0005】
ガラス同士の摩擦における第1段階では、管の強度を大幅に低下させる小さな微小亀裂が発生する。さらに摩擦が続くことでさらに小さなガラス粒子が放出されると、望ましくない鋭利な接触点が発生し、すでに弱くなっていた管表面と接触するだけで破損するという結果になる。
【0006】
更なる欠点は、ガラス表面に化学的に活性な表面が新たに作り出されることに基づき(大気中の湿分との反応により)互いにくっつきやすいことである。この作用は、ガラスコーティングを介在させることによって低減できるものの、実際には完全に回避することはできない。管がくっつくと、開梱中に表面に微小亀裂が生じる可能性があり、これは、安定性を大幅に低下させるという点で重大な問題である。
【0007】
個々のガラス物品層の間には、たとえば段ボールライナーが配置されるが、これらはガラス管に痕跡を残す可能性がある。さらに、段ボールは通常、ガラス管層内のガラス管を分離するものではない。層の配置が完了した後も、パレット全体はシュリンクフィルムで保護されて一緒に保持される。パレットの重量は平均で約800kgである。
【0008】
顧客へ配送するまでの保管および輸送の間に、パレットは少なくとも6~7回昇降される。この過程で、管の表面は、互いに逆方向に移動する。顧客への輸送中、輸送手段の移動によって、ガラス管表面が互いに摩擦し合う可能性が高くなる。この場合、ガラス管の表面欠陥の可能性は非常に高くなる。
【0009】
パレットが積み降ろされると、管束は梱包の場合とは逆の順序で、個々のガラス管へと再び解体され、次いでガラス管は、加工機、たとえばバイアル成形機等に手動またはロボットによって送り込まれる。ここでも再び、管表面の接触は回避できず、ひいては表面欠陥や引っ掻き傷が生じる。
【0010】
顧客に向かう途中のガラス管の引っ掻き傷を最小限に抑えるために、ガラス管はしばしば表面コーティングされる。ただし、厚さ数ナノメートルの層は、この層が相互の接触によって削り取られるまでの間の保護を提供するにすぎない。コーティングがあるにもかかわらず、しばしば表面欠陥や引っ掻き傷が生じる。表面コーティングは引っ掻き傷を防ぐことはできず、せいぜい最小限に抑えるだけである。
【0011】
表面欠陥はいくつかの問題を引き起こす。
【0012】
梱包中、梱包内、パレット上、輸送中、および顧客のもとでパレットを積み降ろす際の相互接触に起因するガラス管表面の引っ掻き傷は、見栄えの低下に始まって、要求される仕様への不適合にさえつながる。
【0013】
表面欠陥によって、ガラス管全体の強度が大幅に低下するが、これは、ガラス管から製造される医薬品容器にも当てはまる。
【0014】
表面欠陥は、パレットの破損ひいては隣接するガラス管または管束の汚染につながる可能性がある。引っ掻き傷は、顧客の光学式オンライン検査装置の誤検出につながる可能性がある。このような引っ掻き傷は、薬剤師の瓶詰め装置や検査システムでも識別され、相応して顧客からの苦情につながる。
【0015】
独国特許出願公開第2729966号明細書からは、ガラスまたはガラスセラミックなどの脆性材料からなる管のパッケージが知られており、これらの管は、最密充填で長方形の配置で提供され、それらの位置が固定されるように、少なくとも端部と端面とがシュリンクフィルムのみにより包み込まれている。パッケージにおいて、管は重なり合っており、引っ掻き傷が生じる可能性がある。
【0016】
欧州特許出願公開第0132587号明細書には、ガラス管束の解束を防ぐために、管の各層にフィルムまたはフィルムテープを設置することが提案されている。フィルムの代わりに、個々の管に、たとえばスプレーオンシリコーン製の滑り止めコート、または装着されたポリエチレンゴム製リングまたはテキスタイル材料が設けられていてもよい。
【0017】
独国実用新案第20121582号明細書は、ガラス管の両端に取り付けられており、梱包および輸送中に管が接触して表面に引っ掻き傷が発生するのを防ぐための保護キャップを開示している。この保護キャップは、スペーサーとしても、開口管を密閉するためにも機能する。
【0018】
独国特許発明第4225876号明細書は、ガラス管およびガラス棒などの棒状の物品用の梱包用収容部を開示している。フィルム状材料からなる2つのストリップはそれぞれ、並置されたガラス管を取り囲み、それによって、ガラス管をそれぞれ保持するための収容部材を備えた多部材ベルトを形成する。隣接する収容部材は、2層の中間ウェブを介して互いに結合されている。中間ウェブの領域では、2つのストリップは、接着シームおよび/またはエンボスシームによって互いに結合されている。各ガラス管層は、ガラス管の端部から間隔を空けて、それぞれそのようなベルトを有する。積み重ねられたガラス管層は、ベルトの領域で互いに接触する。
【0019】
旧東ドイツ国経済特許第224555号明細書は、シュリンクフィルムによってガラス管を梱包する方法を記載しており、この方法では、予め製造された、プラスチック材料からなる長方形のフィルムスリーブを、ガラス管パッケージの両端に装着し、適切なシュリンクユニットを使用してこれらのフィルムスリーブを収縮させる。予め製造されたフィルムスリーブを装着する前に、ガラス管の端部を完全にまたは部分的に更なる安定化手段で囲んでもよい。
【0020】
旧東ドイツ国経済特許第82301号明細書は、衝撃に敏感な管状ガラス物品用のパッケージを開示している。段ボール材料からなるパレットに等間隔の台形フラップが打ち抜かれ、これらのフラップは向かい合わせに開かれる方向で相互にずらして配置され、パレットの表面に対して片側で立てられる。立てられたフラップは、梱包される物品の側面で境界を形成し、横方向の接触を防ぐ。
【0021】
特開平09-295686号公報は、積層された複数のガラス管用のスペーサーを開示している。このスペーサーは、リブで区切られた半円形の凹部を有し、それぞれ1本のガラス管を配置できるようになっている。特開平09-295686号公報に記載されている従来技術に対して、ガラス管は、スペーサーでずらして配置でき、それによって、より多くのガラス管を同じ総容積に配置できるようになる。
【0022】
特開平09-295686号公報のスペーサーは、管の間で多くの空間を占めるため、積層されたガラス管の総容積と比較して、少数のガラス管しか配置できない。同じことが、国際公開第2015/037361号から知られているいくつかのスペーサーにも当てはまる。さらに、このタイプのスペーサーは製造が複雑である。
【0023】
国際公開第2015/037361号は、スペーサーの別のオプションも開示している。それによると、紙または厚紙からなるテープ状のスペーサーがガラス管の間に配置される。そのときスペーサーは波形になる。このようにして、ガラス管の間の間隔が狭められ、より多くのガラス管を同じ容積に配置できるようになる。
【0024】
本発明の課題は、梱包から顧客への配送まで、ガラス物品の表面欠陥や引っ掻き傷を容易に回避できるガラス物品層およびガラス物品束を提供することである。そのようなガラス物品層を製造する方法を提供することも本発明の課題である。
【0025】
この課題は、請求項1の特徴を有するガラス物品層により解決される。
【0026】
ガラス物品層は、z方向に延在し、x方向で並列に配置されている少なくとも2つのガラス物品を含み、ガラス物品に沿ったz方向には離間した少なくとも2つのスペーサー位置が設けられており、ガラス物品の間にはスペーサーが配置されている。スペーサーは糸状要素であり、各スペーサー位置には少なくとも1つの糸状要素が設けられている。
【0027】
有利には、少なくとも1つの共通の糸状要素が、すべてのガラス物品の間の各スペーサー位置に配置されている。
【0028】
「ガラス」という用語は、熱処理されたガラス、特にガラスセラミックも指す。
【0029】
上記のx方向とz方向は、図面において、理解をより深めるために示されている直交xyz座標系を指す。
【0030】
「糸状要素」とは、有利には、繊維または材料ストリップから捻られた細い形成物を意味する。本発明の文脈において、「糸状要素」という用語はまた、紐、ロープまたはコードを意味する。有利には、糸状要素は、丸紐、楕円形の紐、編組紐、またはたとえば捻られたフィルムストリップからなる紐である。糸状要素は、押出材料からできていてもよい。
【0031】
スペーサーの材料は、有利には、堆積物形成または摩耗によるガラス表面の汚染が生じないように選択される。同時に、製造が可能な限り費用対効果の高いものになるように、スペーサーの材料と形状をさらに選択する必要がある。
【0032】
スペーサーがないと、並置され、z方向に延びているガラス物品の接触線に沿って、ガラス物品の外面に表面欠陥や引っ掻き傷が発生する。これらの表面欠陥や引っ掻き傷は、スペーサーによって回避される。
【0033】
「ガラス物品の間」とは、スペーサーが、並置されたガラス物品のガラス物品表面の接触線に少なくとも配置されていることを意味する。
【0034】
糸状要素は、ガラス物品層のガラス物品の間隔を空けて保持する。糸張力の選択は、最大30のガラス物品を含み得るガラス物品層が、ガラス物品層を取り扱うことができ、更なるガラス物品層を積み重ねてガラス物品束を形成できる程度に安定化されるように行う必要がある。
【0035】
ガラス物品束は、最大30のガラス物品層を含み得る。ガラス物品束の必要な安定性は、有利にはガラス物品束の端部に設けられたカバーシース、たとえばシュリンクフィルムで作られたキャップの取付けによって達成されるので、糸状要素は、ガラス物品束の保持または安定化機能を果たす必要はない。
【0036】
糸状要素の使用には、ガラス物品および/またはガラス物品層の間に配置しなければならない、予め製造されたスペーサーを省くことができるという利点がある。ガラス物品束の開梱後、顧客から製造業者への作製済みのスペーサーの返送や作製済みのスペーサーの廃棄が回避される。
【0037】
糸状要素も同様に廃棄またはリサイクルされる必要があるが、廃棄すべき糸の量は非常に少ない。
【0038】
ガラス物品の外面に対する糸の支持面積が非常に小さいにもかかわらず、ガラス物品の破損または損傷を確実に排除できることが判明した。
【0039】
ガラス物品束内の更なるガラス物品層によってそれぞれのガラス物品層上に蓄積された負荷は、糸状要素の支持箇所でのみ避けられる。
【0040】
糸状要素の更なる利点は、ガラス物品層の製造を自動化できること、およびガラス物品層の開梱が簡素化されることである。
【0041】
有利には、それぞれのスペーサー位置における糸状要素は、少なくとも1つのガラス物品、特にガラス物品層のすべてのガラス物品の周りにそれぞれ少なくとも部分的に巻き付けられている。
【0042】
「巻き付ける」とは、有利には、ガラス物品の外周をループ状に取り囲むことを意味し、糸状要素は、有利にはガラス物品の外周にも少なくとも部分的に当接する。
【0043】
有利には、1つ以上の糸状要素のそれぞれ2つの糸部分は、隣接する2つのガラス物品の間の各スペーサー位置に配置されている。1つ以上の糸状要素の一部である糸部分は、スペーサーを形成する。隣接するそれぞれ2つのガラス物品の間の2つの糸部分には、負荷がかかった場合に、力が2つの接触点に分散されるという利点があり、これによりガラス物品の破損のリスクが低減される。
【0044】
有利には、ガラス物品はガラス管またはガラス棒である。
【0045】
ガラス物品として、ガラス管および/またはガラス棒がガラス物品層に配置されてもよい。ガラス管とは対照的に、ガラス棒は固体材料からなる。
【0046】
有利には、ガラス物品は円筒形である。
【0047】
有利には、糸状要素は、0.25mm≦S≦2.5mm、特に1.5mm≦S≦2.5mm、好ましくは0.25mm≦S≦1.25mm、特に好ましくは0.5mm≦S≦1mmの糸厚Sを有する。糸状要素は、特に、少なくとも0.5mmの糸厚S、または少なくとも4.0mmの糸厚Sを有してもよい。
【0048】
たとえば、糸状要素は、少なくとも0.25mm以上かつ少なくとも2.5mm、特に少なくとも1.5mm~最大2.5mm、有利には少なくとも0.25mm~最大1.25mm、有利には最大1.0mmの糸厚を有してもよい。
【0049】
一方で、糸状要素の糸厚は、0.1mm、または0.2mm、または0.3mm、または0.4mm、または0.5mm、または0.6mm、または0.7mm、または0.8mm、または0.9mm、または1.05mm、または1.1mm、または1.5mmであることも可能である。
【0050】
糸状要素の糸厚は、たとえばDIN EN ISO 137に記載されている投影顕微鏡方法に従うか、それに基づいて決定できる。
【0051】
糸状要素は、有利にはプラスチック材料からなる。
【0052】
ガラス物品層およびガラス物品束の輸送中に生じるガラス物品の振動をスペーサーが緩和することを可能にする弾性プラスチック材料が好ましい。これにより、ガラス物品の破損のリスクがさらに低減される。
【0053】
プラスチック材料は、有利には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、有利には高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレンワックス、ポリアミド(PA)、スチレン-アクリロニトリル-コポリマー(SAN)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリウレタン(PU)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン-コポリマー(ABS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)および/またはポリカーボネート(PC)を有するか、プラスチック材料は、上記でそれぞれ挙げられる1つ以上のポリマーからなる。
【0054】
特に、糸状要素は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、特に高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレンワックス、ポリアミド(PA)、スチレン-アクリロニトリル-コポリマー(SAN)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリウレタン(PU)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン-コポリマー(ABS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)および/またはポリカーボネート(PC)を含んでもよいか、糸状要素は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、特に高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレンワックス、ポリアミド(PA)、スチレン-アクリロニトリル-コポリマー(SAN)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリウレタン(PU)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)および/またはポリカーボネート(PC)からなってもよい。
【0055】
スペーサー位置は、z方向に、有利には、20cm~80cm、特に40cm~60cmの範囲の間隔Aで配置されている。ガラス物品の長さは、有利には1~4m、特に1m~2mであることから、有利には4~10のスペーサー位置が設けられており、それに従って相応の数の糸状要素が必要とされる。ガラス物品の直径は、有利には5mm~40mmの範囲にある。
【0056】
スペーサー位置は、特に、少なくとも20cm~最大90cmであってもよい。
【0057】
本開示の文脈において、ガラス物品、たとえばガラス管の直径に言及する場合、これはガラス物品の外径を指す。対象となる最終製品に応じて、外径は6mm~50mmであってもよい。
【0058】
たとえば、外径は、特に対象となる最終製品としての注射器本体用のガラス管の場合、6.85mm、8.15mm、10.85mm、14.45mm、17.05mmもしくは22.05mm、または特にいわゆるカープル管の場合、8.65mm、10.85mm、10.95mm、11.60mm、14.00mm、14.45mmもしくは18.25mm、または特に対象となる最終製品としてのバイアル用のガラス管の場合、6.8mm~8.9mm、もしくは9.0mm~14.9mm、もしくは15.0mm~17.9mm、もしくは18.0mm~19.9mm、もしくは20.0mm~24.9mm、もしくは25.0~30.9mm、もしくは31.0mm~34.9mm、もしくは35.0mm~42.9mm、もしくは43.0mm~50.0mm、または特に対象となる最終物品としてのアンプル用のガラス管の場合、9.0mm~14.9mm、もしくは15.0~17.9mm、もしくは18.0mm~19.9mm、もしくは20.0mm~24.9mmであってもよい。
【0059】
本開示の文脈において、外径とは、横断面図において、ガラス物品の外面上の2点、たとえばガラス管の外面上の2点の最大距離であると理解される。
【0060】
ガラス物品は、特に丸い横断面を備えていてもよい。これに関して、ガラス物品は、その真円度誤差が特定の値より大きくない場合、測定精度の範囲内で丸いと呼ばれる。ここでの真円度誤差は、特にガラス物品の長手方向に垂直な方向での、理想的な円の形状からのガラス物品の横断面形状の偏差の尺度である。試験片、つまり試験対象のガラス物品の各横断面の外周縁は、互いに間隔tだけ離れて同じ平面にある2つの同心円の間になければならない。つまり、ガラス物品は、その真円度誤差がt以下の値を有する場合、丸いと呼ばれる。真円度誤差は、測定面における外径の最大差の半分から算術的に得られる。実際には、楕円値という用語がよく使用され、これは、測定面における最大外径と最小外径との差、つまり外径の最大差である。したがって、楕円値は真円度誤差値の2倍である。
【0061】
たとえばガラス管などのガラス物品は、メーカー毎に異なり得る製造関連の歪みを有している。各メーカーは、その製品について技術的な配送条件での歪みの最大値を指定している。歪みは、それぞれの製品について公知の製品固有のパラメーターである。前述のガラス管の長さに対して、歪みは、通常0.5mm~1.5mmの範囲である。この公知のパラメーターを考慮に入れて、たとえば、並置したとき、または積み重ねたときに、既存の歪みにもかかわらずガラス物品が互いに接触し得ないように、間隔および糸厚Sを選択する必要がある。
【0062】
歪みに加えて安全マージンを考慮することが有利である。
【0063】
安全マージンは、たとえば輸送中に円筒形ガラス物品の振動が発生した場合でも、円筒形ガラス物品が互いに接触しないようにすることを目的としている。円筒形ガラス物品の振動挙動は、たとえば、該当するガラス物品の振動試験によって調べられるため、これらの知見は糸厚Sおよび間隔Aを選択する際に考慮できる。
【0064】
一般的に、間隔Aを大きくするほど、糸厚Sも大きくする必要がある。
【0065】
過剰な糸厚S、すなわち糸厚S>2.5mmは、ガラス物品層内または多数のガラス物品が配置されたガラス物品束内で、ガラス物品束のガラス物品に利用可能な容積を減少させる。
【0066】
第1の実施形態によれば、1つの糸状要素が各スペーサー位置に配置されている。この単一糸の変更形態では、各スペーサー位置でガラス物品層のすべてのガラス物品に1つの糸状要素が必要となるのみである。この単一糸の変更形態には、ガラス物品層を簡単に製造できるという利点がある。
【0067】
有利には、2つの糸部分は1つの糸状要素の部分である。各スペーサー位置で隣接するそれぞれ2つのガラス物品の間に配置された2つの糸部分は、有利には、この単一の糸状要素の部分である。
【0068】
有利には、2つの糸部分は、z軸に対して角度αで延び、80°≦α≦100°である。有利には、角度α=90°である。糸部分は接触線に配置されるため、糸部分も接触線に対して角度αで延びている。
【0069】
有利には、各糸部分は、ガラス物品の外周の少なくとも5%、特に外周の5%~20%に巻き付けられる。
【0070】
2つの糸部分は、有利には、一方の糸部分がガラス物品の外周の少なくとも5%にわたって延び、他方のガラス部分が隣接するガラス物品の外周の少なくとも5%にわたって延びるように配置されている。このようにして、ガラス物品層内のガラス物品がy方向に滑る場合でも、糸部分は常にスペーサーとして作用することが保証される。
【0071】
2つの糸部分は、有利にはz方向に並置されている。したがって、隣接するガラス物品の間の間隙の幅Bは、糸状要素の糸厚Sに対応する。
【0072】
有利には、糸状要素は、ガラス物品層の各ガラス物品の下方または上方のy方向にループを含む。ループは、有利には、糸状要素に沿った2つの糸部分の間に設けられ、隣接するガラス物品層のガラス物品の間の追加の、または排他的なスペーサーとして機能する。
【0073】
有利には、糸状要素は、ガラス物品の外周の少なくとも70%、特にガラス物品の外周の少なくとも90%に巻き付けられる。したがって、糸状要素は、y方向で見て、ガラス物品の外面の下面および/または上面にも当接し、ひいては互いに積み重ねられたガラス物品層のガラス物品の間のスペーサーとしても機能する。
【0074】
糸状要素の両端は、有利には互いに接続されていない。糸の端部は、有利にはガラス物品層の側面で垂れ下がる。糸状要素は、有利には、糸状要素の端部がガラス物品束の側面で垂れ下がるのに十分な長さを有する。したがって、ガラス物品束および/またはガラス物品層の開梱時に糸状要素の端部を掴んで、ガラス物品を簡単に分離することができる。
【0075】
ガラス物品束の製造後、特にカバーシースが束の端部に取り付けられた後、ガラス物品束は十分に安定することから、糸状要素の端部を引っ張っても束が解かれてしまうリスクはないことがわかった。
【0076】
第2の実施形態によれば、第1の糸状要素および第2の糸状要素が各スペーサー位置に配置されている。
【0077】
この実施形態では、ガラス物品層のすべてのガラス物品について、スペーサー位置ごとに2つの糸状要素が必要である。
【0078】
この2つの糸の変更形態には、より安定したガラス物品層を製造できるという利点がある。
【0079】
有利には、1つの糸部分は、第1の糸状要素の部分であり、1つの糸部分は、第2の糸状要素の部分である。したがって、各スペーサー位置で隣接するそれぞれ2つのガラス物品の間に配置され、それによってスペーサーを形成する2つの糸状部分は、2つの糸状要素の部分である。有利には、各糸部分は、隣接する2つのガラス物品の外周に当接する。
【0080】
有利には、第1の糸状要素は、ガラス物品の外周の上半分に巻き付けられ、第2の糸状要素は、ガラス物品の外周の下半分に巻き付けられる。第1の糸状要素はいわゆる上糸であり、第2の糸状要素はいわゆる下糸である。
【0081】
2つの糸状要素の2つの糸部分は、有利にはそれぞれ湾曲部を形成する。第1の糸状要素の湾曲部に、第2の糸状要素の湾曲部が交絡させられ、その逆の場合も同じである。2つの糸部分は、有利には、特に接触線で、隣接するガラス物品の間に交絡部を形成する。上糸と下糸とを相互に引き伸ばすことによって、それぞれ隣接するガラス物品を一緒に引っ張ることができるため、コンパクトで安定したガラス物品層が実現される。
【0082】
有利には、隣接するガラス物品の間の、特に接触線での2つの糸部分は、結び目のある交絡部を形成する。この結び目のある交絡部は、安定性の点で更なる改善をもたらす。巻付け部からのガラス物品の偶発的な滑落、ひいてはガラス物品層からの滑落が効果的に防止される。
【0083】
有利には、2つの糸状要素の両端は互いに接続されていない。糸の端部は、有利には、ガラス物品層の側面で垂れ下がる。糸状要素は、有利には、糸状要素の端部がガラス物品束の側面で垂れ下がるのに十分な長さを有する。したがって、糸状要素の端部は、場合により存在するカバーシースが取り外された後、ガラス物品束および/またはガラス物品層の開梱時に容易に把持して、ガラス物品を分離できる。
【0084】
本発明によるガラス物品束は、y方向で上下に配置された少なくとも2つの本発明によるガラス物品層を含み、ガラス物品層は上下にずらして配置される。ガラス物品は、ガラス物品束として最密充填で配置され、これはスペースを節約するだけでなく、ガラス物品束の安定性を高める。
【0085】
有利には、ガラス物品束は5~30のガラス物品層を含む。
【0086】
ガラス物品層の糸状要素は、有利には、隣接するガラス物品層のガラス物品の間にスペーサーも形成する。
【0087】
特に、ガラス物品層の第1の実施形態は、ガラス物品の上方または下方に設けられたループによって追加の支持箇所が存在し、ガラス物品束内の負荷をより良好に分散することから有利である。これによって、ガラス物品束の破損するリスクがさらに低減される。
【0088】
有利には、ガラス物品束は、少なくともガラス物品束の端部にカバーシースを含む。ガラス物品束の端部は、ガラス物品の端部と一致する。有利には、ガラス管の場合、開口部もカバーシースによって覆われているため、たとえば輸送中にガラス管の内部は汚染されない。このカバーシースは、たとえばシュリンクフィルムからなってもよい。
【0089】
この課題は、梱包方法でも解決される。
【0090】
ガラス物品層を製造するための梱包方法は、以下の順序で以下の工程を含む:
a)ガラス物品を準備する工程、
b)少なくとも2つのガラス物品を連続的に供給し、分離ステーションでガラス物品を分離する工程、
c)分離されたガラス物品を、所定のスペーサー位置に配置された少なくとも2つの巻付けステーションを有する梱包ステーションに連続的に供給する工程、
d)それぞれ少なくとも1つの糸状要素を各巻付けステーションに連続的に供給する工程、
e)巻付けプロセスによって、所定のスペーサー位置でガラス物品の周りに糸状要素を巻き付ける工程、
f)巻付けプロセスを完了する工程および
g)ガラス物品層を搬出する工程。
【0091】
第1の実施形態によれば、工程e)では、各スペーサー位置でガラス物品の周りに1つの糸状要素が巻き付けられる。これは、単一糸の変更形態を作り出すための方法である。
【0092】
有利には、工程e)における巻付けプロセスは、各スペーサー位置で、ガラス物品の間にそれぞれ2つの並置される糸部分を配置することを含む。
【0093】
有利には、工程e)では、各ガラス物品の上方または下方の各スペーサー位置にループが配置されている。
【0094】
巻付けプロセスは、ミシンで知られている縫い目を作るための単一糸のチェーンステッチプロセスに相当する。したがって、ループはチェーンループとも呼ばれることがある。
【0095】
第2の実施形態によれば、工程e)では、各スペーサー位置でガラス物品の周りに第1の糸状要素および第2の糸状要素が巻き付けられる。これは、2つの糸の変更形態を作り出すためのプロセスである。
【0096】
有利には、工程e)では、第1の糸状要素はガラス物品の外周の上半分に巻き付けられ、第2の糸状要素はガラス物品の外周の下半分に巻き付けられ、2つの糸状要素はガラス物品の間で相互に巻き付けられる。この方法は、いわゆる上糸といわゆる下糸とを連動し、交絡部を形成する。
【0097】
この巻付けプロセスは、ミシンで知られている縫い目を作り出すための本縫いプロセスに相当する。
【0098】
この方法の改良によれば、2つの糸状要素は、ガラス物品の間にさらに結び目が付けられてもよい。この場合、巻付けプロセスは、結び目のある本縫いプロセスに実質的に相当する。
【0099】
有利には、糸状要素は、工程f)とg)との間の工程f1)において、ガラス物品層の最後のガラス物品の巻付け後に切断される。
【0100】
ガラス物品層が完成したら、糸状要素の端部は、たとえばナイフやハサミなどのツールを使用せずにガラス物品を簡単に開梱できるように、有利には自由に垂れ下がらせておかれる。
【0101】
ガラス物品層の安定性を高めることが望まれる場合、第1の糸状要素の端部を第2の糸状要素の端部に互いに接続してもよい。この接続は結び目であってよく、または特に糸状要素がプラスチックでできている場合、端部は互いに融着されていてもよい。クリップによる接着または接続も同様に可能である。
【0102】
本方法は、有利には、順次少なくとも2つのガラス物品層、特に複数のガラス物品層が連続的に製造および梱包されるように実施される。
【0103】
完成したガラス物品層の糸状要素を切断せず、次のガラス物品層の梱包を続行する選択肢もある。有利には、工程f)とg)との間の工程f2)において、ガラス物品層の最後のガラス物品の巻付け後に、糸状要素を予め切断することなく、更なるガラス物品層を巻き付けるための巻付けプロセスが継続される。
【0104】
この場合、ガラス物品層は接続されたままであり、ガラス物品層の層リボンを形成する。ガラス物品束を製造するために、ガラス物品層を個別に輸送して重なり合うように配置する必要はなく、たとえばコンテナに連続的に設置されてもよい。このために、層リボンはコンテナ内で交互に折りたたまれ、ガラス物品層が重なり合った状態になる。
【0105】
更なる工程では、上下に積み重ねられたガラス物品層は、ガラス物品束を形成するためにそれらの端部にカバーシースを備えている。
【0106】
したがって、本開示はまた、少なくとも2つのガラス物品層、特に本出願の実施形態に従ったガラス物品層、および/または本明細書の実施形態に従った梱包方法で製造されるか、製造可能であるガラス物品層を含むガラス物品束に関する。
【0107】
次に、本発明の例示的な実施形態を、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1】複数のガラス物品層を有するガラス物品束の斜視図である。
図2】ガラス物品層の平面図である。
図3】第1の実施形態による3つのガラス物品を有するガラス物品層のガラス物品部分の斜視図である。
図4図3に示される配置の端面を示す平面図である。
図5】ガラス物品部分の側面図である。
図6図5に示されるガラス物品を通る線X-Xに沿った断面を示す図である。
図7図3によるガラス物品層の断面の平面図である。
図8図3~7によるガラス物品層を有するガラス物品束の端面図である。
図9】第2の実施形態によるガラス物品層のガラス物品部分の斜視図である。
図10図9に示されるガラス物品層の端面を示す平面図である。
図11】交絡部の概略図である。
図12】結び目のある交絡部の概略図である。
図13図9に示されるガラス物品層のガラス物品の配置の平面図である。
図14図9~13によるガラス物品層を有するガラス物品束の端面を示す平面図である。
図15】ガラス物品層およびガラス物品束を製造するための梱包装置の概略図である。
図16】第1の実施形態による巻付けプロセスの異なる方法工程を示す図である。
図17】第1の実施形態による巻付けプロセスの異なる方法工程を示す図である。
図18】第1の実施形態による巻付けプロセスの異なる方法工程を示す図である。
図19】第1の実施形態による巻付けプロセスの異なる方法工程を示す図である。
図20】第2の実施形態による巻付けプロセスの異なる方法工程を示す図である。
図21】第2の実施形態による巻付けプロセスの異なる方法工程を示す図である。
図22】第2の実施形態による巻付けプロセスの異なる方法工程を示す図である。
図23】第2の実施形態による巻付けプロセスの異なる方法工程を示す図である。
図24】第2の実施形態による巻付けプロセスの異なる方法工程を示す図である。
図25】第2の実施形態による巻付けプロセスの異なる方法工程を示す図である。
図26】ガラス物品束の製造を説明するための図である。
【0109】
図1は、6つのガラス物品層110を有するガラス物品束100の概略斜視図である。ガラス物品層110はx-z平面にあり、ガラス物品50はz方向に延び、x方向で並置されている。ガラス物品層110は、y方向で上下に積み重ねられている。
【0110】
各ガラス物品層110は、間隔Aで配置された4つのスペーサー位置112を有する。ここに示される実施形態では、2つの異なる間隔AおよびAが規定されている。
【0111】
ガラス物品束100の各端部102、104には、シュリンクフィルムからなるカバーシース120がそれぞれ配置されており、これは、ガラス物品層110の端部部分ひいてはガラス物品50の端部部分にわたって延在し、ガラス物品束100の端面を覆う。ここに示される実施形態では、ガラス物品はガラス管であるので、管開口部もカバーシース120によって覆われ、そのためガラス管の内部は汚染から保護されている。
【0112】
図2は、6つのガラス物品50を含むガラス物品層110の平面図を示す。
【0113】
図3は、糸状要素10の配置を説明するための、3つのガラス物品50のみを有するガラス物品層110の斜視図である。一例としてスペーサー位置112があるガラス物品50の部分のみが示されている。
【0114】
理解を深めるために、ガラス物品50の間の間隔がはっきりと拡大して示され、糸状要素10は矢印Pで示されることで、糸状要素10の進行方向が明確に示され、これはガラス物品層110の製造方法(図16~19を参照)に関連してより詳細に説明される。
【0115】
図4は、図3に示されるガラス物品層110の断面の平面図である。
【0116】
端部11および12を有する単一の糸状要素10は、3つのすべてのガラス物品50の周りに巻き付けられるが、糸状要素10は、必ずしもガラス物品50の外面上のどこにでも当接しているわけではない。糸状要素10がガラス物品50の外面に当接するかどうかは、ガラス物品層110の製造方法における糸状要素10の選択された糸張力に依存する。隣接するガラス物品50の間の間隔も糸張力によって調整できる。
【0117】
図3には、線L上にあるガラス物品50の中心点MPが示されている。ガラス物品50の中心線MLは、いわゆる接触線114に沿ってガラス物品50の外面と交差する共通平面Eにある。スペーサーが設けられていない場合、並置されたガラス物品50は、この接触線114に沿って接触することになる。
【0118】
糸状要素10は、各ガラス物品50の上部の外周に巻き付けられ、そこで巻付け部13を形成し、巻付け部13は、接触線114の領域でガラス物品50の間にスペーサーを形成する糸部分14に移行する。ここに示される実施形態では、各糸部分14は、ガラス物品50の外周の約10%に巻き付けられる。スペーサーの間で、各糸状要素10はそれぞれループ16を有し、これは第1および第2のループ部分17および18を伴ってそれぞれのガラス物品50の下方に配置されている。2つのループ部分17および18は、下側のくさび形の隙間15に実質的に配置される第3のループ部分19によって互いに接続されている。
【0119】
3つのループ16のうちの2つは、それぞれ隣接ループ16に巻き付けられる。この場合、1つのループ16のループ部分17および18は、隣接ループ16を通過する。ループ16がガラス物品50の上側に置かれるように糸状要素10を配置することも可能である。
【0120】
糸部分14は、隣接するガラス物品50の間にスペーサーを形成し、ループ16、特にループ部分17および18は、y方向に重なり合う2つのガラス物品層110のガラス物品50の間のスペーサーとして設けられる。
【0121】
図5は、糸状要素10を有するガラス物品部分の平面図を示し、糸部分14は、z軸ひいては接触線114と90°の角度αを形成する。
【0122】
図6は、スペーサーとして有効な糸部分14を明確に示すための、図5における線X-Xに沿ったガラス物品50の断面図を示す。図4との関連で言及されるガラス物品50の外周の10パーセントの重なりとは、糸部分14が接触線114の両側でガラス物品50の外周のそれぞれ約5%にわたって延びることを意味する。隣接するガラス物品50がy方向に滑ると、糸部分14は、隣接するガラス物品50の表面が接触することを常に防止する。
【0123】
図7は、図3のガラス物品層110の平面図を示し、隣接するガラス物品50の間の間隔Bが糸部分14の糸厚Sに対応することがわかる。
【0124】
図8は、図3図7による3つのガラス物品層110を有するガラス物品束100の端面を示す平面図である。ガラス物品層110は互いにずらして配置されていることから、ガラス物品層110がその最終位置に達すると、ガラス物品50の最密充填が達成される。図3の描写では、ガラス物品層110は、糸の進路をわかりやすく示すために、まだ最終位置には達していない。ループ16は、上下に重なり合うガラス物品50の間にスペーサーを形成することがわかる。
【0125】
図9は、第2の実施形態によるガラス物品層110を形成する3つのガラス物品50の部分を示す。
【0126】
図3と同じように図9には、中心点MP、中心線ML、線L、平面Eおよび接触線114が示されている。図10は、図9に示されるガラス物品層110の断面の平面図を示す。
【0127】
この実施形態では、各スペーサー位置112に、2つの糸状要素20、30が設けられている。上糸20とも呼ばれる第1の糸状要素20は、ガラス物品50の外周の上半分に巻き付けられて、上側の巻付け部25を形成し、下糸30とも呼ばれる第2の糸状要素30は、ガラス物品50の外周の下半分に巻き付けられて、下側の巻付け部35を形成する。
【0128】
上糸20の端部21、23は、たとえば融着または接着によって、下糸30の端部31、33に接続される。
【0129】
上側の巻付け部25の間には、スペーサーを形成する糸部分24がある。下側の巻付け部35の間には、スペーサーを形成する糸部分34がある。各糸部分24、34は、1つのガラス物品50の外周と、隣接するガラス物品50の外周の両方に当接する。糸部分24、34は、互いに垂れ下がって交絡部40を形成する湾曲部27である。糸部分24、34はスペーサーであり、交絡部40を伴って接触線114の領域にある。
【0130】
交絡部40は、図11に拡大して示されている。
【0131】
図12は、結び目のある交絡部40’と呼ばれる交絡部40の変化形態を示す。糸部分24は環状部26として構成され、糸部分24が交差している。この環状部26に、糸部分34の湾曲部27が掛けられ、環状部26が締め付けられると、糸部分34は環状部26に固定される。
【0132】
図13は、図9のガラス物品層110の概略平面図であり、隣接するガラス物品50の間の間隔Bが、交絡部40のために、糸部分24、34の糸厚Sよりも大きくなり得ることがわかる。
【0133】
図14は、図9によるy方向に互いに積み重ねられた3つのガラス物品層110を有するガラス物品束100の端面を示す。ガラス物品層110は互いにずらして配置されているため、最密充填が達成される。
【0134】
図15は、ガラス物品層110およびガラス物品束100を製造するための梱包装置60を概略的に示す。ガラス物品50は、傾斜面64に準備され、供給ステーション62で第1コンベアベルト66により引き継がれる。個々のガラス物品50は、第2のコンベアベルト70に移され、分離ステーション68に供給される。
【0135】
コンベアベルト70は、分離されたガラス物品50を、少なくとも2つの巻付けステーション82を有する梱包ステーション80に供給する。巻付けステーション82は、ガラス物品層110のスペーサー位置112の間隔に対応する間隔Aで並置されることから、ガラス物品層110のスペーサー位置112で巻付けプロセスを実施できる。第2のコンベアベルト70は、並置され同調して作動する複数の個々のベルト71からなり、その数は巻付けステーション82の数に依存する。
【0136】
有利には、互いに間隔を空けて配置された2つの巻付けステーション82の場合、3つの個々のベルト71が設けられる。個々のベルト71の間の隙間は、巻付けステーション82の針84を貫入させるのに必要である。
【0137】
完成したガラス物品層110は、糸状要素10、20、30の切断後、引き続き移送ステーション95内のコンテナ130に供給され、そこで個々のガラス物品層110が最密充填で上下に積み重ねられる。したがって、コンテナ130内にはガラス物品束100があり、これは搬出されて、図示されていないカバーステーションにおいて端部102、104にシュリンクフィルムによってカバーシース120が備えられる。
【0138】
一例として、図16は、上流の分離ステーション68を備えた、第1の実施形態によるそのような巻付けステーション82の側面図を示す。この分離ステーション68では、ガラス物品50を分離するために、くさび形に形成されており、第2のコンベアベルト70に送り込まれてくるガラス物品50の間に鉛直方向で導入される分離ツール72が設けられている。その後、分離されたガラス物品50は、ダウンホルダー83によって第2のコンベアベルト70に固定され、巻付けステーション82において糸状要素10が周りに巻き付けられ、この糸状要素10は上方から針84のアイレット85に供給される。図16は、第2のコンベアベルト70の個々のベルト71の側面図を示す。
【0139】
針84は、第2のコンベアベルト70の上方に配置され、鉛直方向に移動する。針84は、第2のコンベアベルト70の下方に配置された糸ルーパー86と協働する。糸ルーパー86は、第2のコンベアベルトの隣接する2つの個々のベルト71の間の隙間を通って延びる糸状要素10のループ16を把持するループテーカー87である。針84によって、存在するループ16に糸状要素10が通される。
【0140】
巻付けプロセスの個々のステップは、図17~19により詳細に説明されている。このプロセスは、上下に往復運動する針84と、前後に揺動運動するループテーカー87とによって特徴付けられる。
【0141】
巻付けプロセスは、ミシンで知られている単一糸のチェーンステッチプロセスに相当する。
【0142】
図17では、針84はさらに下降し、ループテーカー87はループ16を外すが、図18では、針84は、開いた状態のループ16に針84が入り込むまで、ループ16を保持するのと同時に広げる。その後、ループテーカー87は引き戻されてループ16を外す。引き続き針84が引き上げられると、ループテーカー87は、先行するループ16の中にある新しいループ16を把持して、これを結び合わせる。その後、プロセスは最初から始まって後続のガラス物品50を巻き付ける。
【0143】
図20は、一例として、上流の分離ステーション68を備えた第2の実施形態による巻付けステーション82の側面図を示す。この分離ステーション68では、ガラス物品50を分離するために、くさび形に形成されており、第2のコンベアベルト70に送り込まれてくるガラス物品50の間に鉛直方向で導入される分離ツール72が設けられている。その後、分離されたガラス物品50は、ダウンホルダー83によって第2のコンベアベルト70に固定され、巻付けステーション82において第1の糸状要素20(上糸)と第2の糸状要素30(下糸)とで周りに巻き付けられる。
【0144】
上糸20は、第2のコンベアベルト70の上方に配置された針84のアイレット85に上方から供給される。下糸30は、ボビン89に巻かれ、第2のコンベアベルト70の隣接する個々のベルト71の間の隙間を通してガラス物品50に下方から供給される。
【0145】
前の実施形態と同様に、第2のコンベアベルト70は、進行方向に沿って配置され、個々のベルト71を形成する2つ以上の同調して駆動されるストラップベルトからなる。これらの個々のベルト71は、針84を自由な隙間に配置でき、針84が個々のベルト71によって妨げられないように、ガラス物品50の軸に沿って配置されている。
【0146】
ボビン89は、回転フック88とも呼ばれる環状の糸ルーパー86によって囲まれたボビンケース91に配置されている。ボビン89と回転フック88とは、水平軸90を中心に矢印の方向で一緒に回転する。
【0147】
針84は、ボビン89の領域にまで下方に移動され、それによって、上糸20は、回転フック88により把持される湾曲部27を形成する(図21、22を参照)。回転フック88の継続的な回転中、上糸20はボビン89の周りに引っ張られ、針84は上方に引っ張られ、同時に下糸30は上糸20の湾曲部27に導入される(図23を参照)。引き続き、上糸20の湾曲部27は回転フック88から外される(図24を参照)。このようにして、交絡部40が形成される(図25を参照)。その後、プロセスは最初から始まり、後続のガラス物品50を巻き付ける。
【0148】
図26は、ガラス物品束100の製造を示す。巻付けプロセスの実施後、図15に関連して説明したように、個々のガラス物品層110は互いに分離されない。ガラス物品層110からなる層リボン132はU字型コンテナ130に供給され、そこで層リボン132は折り畳まれて、個々のガラス物品層110が最密充填で重なり合うように設置される。コンテナ130に入れられて、ガラス物品束100が完成すると、層リボン132は2つのガラス物品層110の間で切断される。ガラス物品束100は、両端にカバーシース120を備え、引き続きコンテナ130から取り外される。
【符号の説明】
【0149】
10 糸、糸状要素
11 第1の端部
12 第2の端部
13 巻付け部
14 糸部分
15 くさび形の隙間
16 ループ
17 第1のループ部分
18 第2のループ部分
19 第3のループ部分
20 第1の糸状要素、上糸
21 第1の端部
23 第2の端部
24 糸部分
25 上側の巻付け部
26 環状部
27 湾曲部
30 第2の糸状要素、下糸
31 第1の端部
33 第2の端部
34 糸部分
35 下側の巻付け部
40 交絡部
40’ 結び目のある交絡部
50 ガラス物品
60 梱包装置
62 供給ステーション
64 傾斜面
66 第1のコンベアベルト
68 分離ステーション
70 第2のコンベアベルト
71 個々のベルト
72 分離ツール
80 梱包ステーション
82 巻付けステーション
83 ダウンホルダー
84 針
85 アイレット
86 糸ルーパー
87 ループテーカー
88 回転フック
89 ボビン
90 水平軸
91 ボビンケース
95 移送ステーション
100 ガラス物品束
102 ガラス物品束の端部
104 ガラス物品束の端部
110 ガラス物品層
112 スペーサー位置
114 接触線
120 カバーシース
130 コンテナ
132 ガラス物品層からなる層リボン
A、A、A スペーサー位置の間隔
L ガラス物品の中心点を通る線
S 糸厚
E 平面
P 進行方向の矢印
ML 中心線
MP 中心点
図1
図2
図3
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