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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】排気管
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/08 20100101AFI20240509BHJP
【FI】
F01N13/08 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020000372
(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公開番号】P2021110242
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2021-02-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梅本 博
(72)【発明者】
【氏名】田中 謙一
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】河端 賢
【審判官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-132266(JP,A)
【文献】特開2011-127607(JP,A)
【文献】特表2004-509264(JP,A)
【文献】特開2000-145449(JP,A)
【文献】特開2013-213491(JP,A)
【文献】特開平08-218860(JP,A)
【文献】特開2004-068654(JP,A)
【文献】米国特許第5765878(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重管構造の排気管であって、
当該排気管は、内部を排気ガスが通過する内管と、前記内管の外周面を囲うように配置される外管と、を備え、
前記内管は、
当該内管の端部であるスライド端部が前記外管に対してスライド可能に設けられ、
前記スライド端部に、前記内管の膨張による前記内管の径方向への拡径を抑制する抑制部を有し、
前記抑制部は、前記スライド端部の端面に形成され、前記内管の内側に突出する凸部と、前記スライド端部の端面に形成される切欠きと、を有する、排気管。
【請求項2】
請求項1に記載の排気管であって、
前記内管は、前記スライド端部に、前記内管の外側に突出し、前記外管と当接する当接部を更に有する、排気管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気管に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の排気システムには、内管と外管とを有する二重管構造の排気管が用いられる場合がある。このような二重管構造の排気管では、内管の内側に高熱の排気ガスが流れるため、内管と外管との間に熱膨張差が生じる。
【0003】
特許文献1には、熱膨張により第一のパイプに作用する軸方向への力を吸収するために、第一のパイプが挿入される第二のパイプに対して第一のパイプを軸方向にスライド可能とする膨張調整部を第一のパイプの端部に備える排気ガス処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-127607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二重管構造の排気管の内管には、熱膨張による軸方向への力に加え、熱膨張による径方向への力が発生する。しかしながら、上述した排気ガス処理装置では、熱膨張による径方向への力の影響は考慮されていない。このため、第一のパイプに熱膨張による径方向への力が発生すると、膨張調整部における第一のパイプと第二のパイプとの間の隙間が狭くなり、第一のパイプが第二のパイプに対してスライドし難くなる可能性がある。
【0006】
本開示の一局面は、二重管構造の排気管において、膨張によって内管が外管に対してスライドし難くなることを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、二重管構造の排気管であって、内管と、外管と、を備える。内管は、内部を排気ガスが通過する。外管は、内管の外周面を囲うように配置される。内管は、当該内管の端部であるスライド端部が外管に対してスライド可能に設けられる。内管は、スライド端部に、内管の膨張による内管の径方向への拡径を抑制する抑制部を有する。
【0008】
このような構成では、内管の径が大きくなることが抑制されるため、内管と外管との間の摩擦抵抗が大きくなることが抑制される。したがって、二重管構造の排気管において、膨張によって内管が外管に対してスライドし難くなることを抑制することができる。
【0009】
本開示の一態様では、抑制部は、スライド端部の端面に切欠きを有してもよい。このような構成では、膨張による内管の径方向への拡径が抑制される。すなわち、内管の内部を高温の排気ガスが通過すると、内管が周方向に膨張して拡がる。このような場合に、切欠きを有しない構成では、内管の周方向の長さが大きくなるため内管の径が大きくなる。この点、切欠きを有する構成では、内管が周方向に拡がっても、大きくなった内管の周方向の長さが、切欠きによって形成される隙間が狭まることで吸収される。このため、その周方向の拡がりに起因して内管が径方向に拡径することが抑制される。更に、膨張による内管の径方向への力が発生した場合にも、切欠きによって内管のスライド端部が弾性変形しやすくなる。したがって、膨張によって内管が外管に対してスライドし難くなることを抑制することができる。
【0010】
本開示の一態様では、抑制部は、スライド端部の端面に形成され、内管の内側に突出する凸部を有してもよい。このような構成では、膨張による内管の径方向への拡径が抑制される。すなわち、内管の内部を高温の排気ガスが通過すると、内管が周方向に膨張して拡がる。このような場合に、凸部を有しない構成では、内管の周方向の長さが大きくなるため内管の径が大きくなる。この点、凸部を有する構成では、内管が周方向に拡がっても、大きくなった内管の周方向の長さが、凸部によって形成される空間が狭まることで吸収される。このため、その周方向の拡がりに起因して内管が径方向に拡径することが抑制される。更に、膨張による内管の径方向への力が発生した場合にも、凸部によって内管のスライド端部が弾性変形しやすくなる。したがって、膨張によって内管が外管に対してスライドし難くなることを抑制することができる。
【0011】
本開示の一態様では、内管は、スライド端部に当接部を更に有してもよい。当接部は、内管の外側に突出し、外管と当接してもよい。このような構成によれば、当接部が外管と当接することで内管と外管との面接触が抑制されるため、外管と内管との接触面積を減らしつつ、外管が内管をスライド可能に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の排気管の構成を示す断面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】第1実施形態の排気管の熱膨張による内管の径方向への拡径が抑制されることを示す図である。
図4】第2実施形態の排気管の構成を示す断面図である。
図5図4のV-V断面図である。
図6】第2実施形態の排気管の熱膨張による内管の径方向への拡径が抑制されることを示す図である。
図7】外管に固定されている固定部材に対して内管がスライド可能な排気管の構成を示す断面図である。
図8】固定部材に対して内管がスライド可能な排気管の熱膨張による内管の径方向への拡径が抑制されることを示す、図7のVIII-VIII断面図である。
図9】スリット及びリブの数及び配置についての他の実施形態の構成を示す断面図である。
図10】内管の拡径部が外管に対してスライド可能な排気管の構成を示す断面図である。
図11】図10のX-X断面図である。
図12】保持部材を介して外管に対してスライド可能な内管が第1の端部に凸部を有する構成を示す断面図である。
図13】リブを介して外管に対してスライド可能な内管が第1の端部に凸部を有する構成を示す断面図である。
図14】保持部材を介して外管に対してスライド可能な内管が第1の端部にスリット及び凸部を有する構成を示す断面図である。
図15】リブを介して外管に対してスライド可能な内管が第1の端部にスリット及び凸部を有する構成を示す断面図である。
図16】スリットが半楕円形状である他の実施形態の構成を示す図である。
図17】スリットが三角形状である他の実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す排気管1は、内燃機関の排気ガス流路を構成する排気システムに用いられる二重管構造の消音器である。この排気管1は、内管2と、外管3と、保持部材4と、を備える。この排気管1は、内管2と外管3との間に形成される空隙によって消音効果を発揮する。なお、内管2と外管3との間の空隙には、吸音材等が入っていてもよい。
【0014】
排気システムが適用される内燃機関としては、特に限定されないが、自動車、鉄道、船舶、建機等の輸送機器、発電施設などで駆動用又は発電用として用いられるものが挙げられる。
【0015】
内管2は、内部を排気ガスが通過する金属製のパイプである。具体的には、排気ガスが第1の開口21及び第2の開口22の一方から内管2の内部に導入され、反対側の開口から排出される。本実施形態では、内管2は径が一定の直管である。つまり、第1の開口21側の端部である第1の端部23の内径と、第2の開口22側の端部である第2の端部24の内径と、は等しい。本実施形態では、内管2は、第1の端部23が外管3に固定され、第2の端部24が外管3に対してスライド可能に設けられている。ここで、スライド可能とは、固定されていない状態であって、例えば、摩擦抵抗を低減する物等を介して摺動、換言するとスライドすることができるように保持されている状態のことである。本実施形態では、内管2は、第2の端部24に、熱膨張による当該内管2の径方向への拡径を抑制するスリット5を有する。
【0016】
スリット5は、第2の端部24の端面から内管2の中心軸A方向に直線状に延びる切欠きである。図1に示すように、本実施形態では、スリット5は、中心軸A方向に長辺を有する長方形状に形成されている。図2に示すように、第2の端部24の端面は、スリット5により形成された隙間を有する円周状に形成されている。本実施形態では、スリット5は、内管2の周方向に等間隔に3つ設けられている。これにより、本実施形態では、第2の端部24の端面は、3つの隙間を有する円周状に形成されている。
【0017】
外管3は、内管2の外周面を囲うように配置された金属製のパイプである。外管3の内径は、内管2の外径よりも大きい。外管3の中心軸は、内管2の中心軸Aと一致するように配置されている。なお、これらの中心軸は必ずしも一致しなくてもよい。図1に示すように、本実施形態では、外管3は、当該外管3の両側の端部が内管2の中心軸Aに向かって縮径するように形成された円筒状のパイプである。換言すると、外管3は、中央が拡径した拡張型のパイプである。具体的には、外管3は、直管部31と、第1の円錐台部32と、第2の円錐台部33と、固定部34と、保持部35と、を有する。
【0018】
直管部31、固定部34及び保持部35は、それぞれ断面積が一定、つまり直管状の部分である。なお、直管部31の径は、固定部34及び保持部35よりも大きく、保持部35の径は、固定部34の径よりも大きく形成されている。第1の円錐台部32及び第2の円錐台部33は、直管部31の両端からそれぞれ固定部34及び保持部35に向かって断面積が徐々に縮小する円錐台状の部分である。
【0019】
固定部34は、内管2の第1の端部23を固定する部分である。固定部34は、当該固定部34の内周面と第1の端部23の外周面とが全周において当接するように、第1の端部23を囲っている。第1の端部23は、固定部34の内周面に、例えば溶接等によって固定されている。
【0020】
保持部35は、内管2の第2の端部24をスライド可能に保持する部分である。保持部35は、当該保持部35の内周面と第2の端部24の外周面との間に隙間を空けるように、第2の端部24を囲っている。保持部35は、内管2よりも中心軸A方向外側まで延伸している。本実施形態では、保持部35は、後述する保持部材4を介して第2の端部24を保持する。
【0021】
図1及び図2に示すように、保持部材4は、内管2の第2の端部24と外管3の保持部35との間の隙間に配置された部材である。具体的には、保持部材4は、第2の端部24の外周面と保持部35の内周面との間に挟み込まれている。なお、保持部材4は、内管2の第2の端部24に固定されていてもよく、又は、外管3の保持部35に固定されていてもよい。保持部材4は、第2の端部24の外周面及び保持部35の内周面の周方向全体に沿って配置されている。つまり、保持部材4は、内管2と外管3との間の空隙を内管2の中心軸A方向に閉塞するように配置されている。保持部材4は、第2の端部24と保持部35との隙間を低減できるように、リング状であることが好ましい。また、保持部材4は、スリット5により形成される隙間を内管2の径方向において覆うように、中心軸A方向の長さがスリット5の中心軸A方向の長さよりも長く形成される。なお、保持部材4の中心軸A方向の長さは、スリット5の中心軸A方向の長さと同程度であることが好ましい。保持部材4の中心軸A方向の長さを、スリット5の中心軸A方向の長さよりも長く、又は、スリット5の中心軸A方向の長さと同程度とすることで、内管2を通過する排気ガスがスリット5から外管3と内管2との間に漏れ出すことが抑制される。
【0022】
保持部材4は、少なくとも内管2又は外管3に対してスライドすることができるものであればよい。本実施形態では、保持部材4は、金属製のワイヤメッシュが用いられる。なお、保持部材4としてワイヤメッシュを用いることで、内管2及び外管3に対する接触面積を減らすことが可能である。保持部材4を内管2と外管3との間の空間でスライド可能に配置することにより、内管2と外管3との熱膨張の差により軸方向に発生する力が低減される。
【0023】
[1-2.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)本実施形態では、スリット5によって、内管2の熱膨張による内管2の径方向への拡径、具体的には第2の端部24の径方向への拡径が抑制される。
【0024】
すなわち、内管2の内部を高温の排気ガスが通過すると、内管2が周方向に膨張して拡がる。このような場合に、スリット5を有しない構成では、内管2の周方向の長さが大きくなるため内管2の径が大きくなる。この点、本実施形態では、内管2が第2の端部24にスリット5を有する。このため、図3に示すように、第2の端部24の径が大きくなることにより大きくなる第2の端部24の周方向の長さを、スリット5によって形成される隙間を狭めることで吸収可能である。これにより、その周方向の拡がりに起因して内管2が径方向に拡径することが抑制される。更に、熱膨張による内管2の径方向への力が発生した場合にも、スリット5によって第2の端部24が弾性変形しやすくなる。
【0025】
したがって、熱膨張によって内管2が外管3に対してスライドし難くなることを抑制することができる。その結果、内管2が座屈したり、破断したりすることを抑制することができる。
【0026】
(1b)本実施形態では、保持部35と第2の端部24との間の隙間に保持部材4が配置される。これにより、熱膨張による内管2の中心軸A方向への力が発生することで、内管2が外管3に対してスライドした場合にも、保持部材4によって摩擦抵抗を低減することができる。
【0027】
すなわち、内管2の内部を高温の排気ガスが通過すると、内管2が中心軸A方向にも膨張して内管2の中心軸A方向の長さが長くなる。このような場合に、保持部材4を有しない構成では、内管2が外管3に対してスライドする際の摩擦抵抗が大きくなる。この点、本実施形態では、保持部材4を有する。このため、内管2の中心軸A方向の長さが長くなることにより内管2が外管3に対してスライドした場合にも、内管2と外管3との間の摩擦抵抗が低減される。また、上述したように、スリット5によって、第2の端部24の径が大きくなることが抑制される。このため、保持部35と第2の端部24との間の隙間が狭くなることによって保持部材4が圧縮されることが抑制される。これにより、内管2と外管3との間の摩擦抵抗が大きくなることを更に抑制することができる。したがって、熱膨張による内管2の中心軸A方向へ発生する力に対しても、内管2が外管3に対してスライドし難くなることを抑制することができる。また、内管2の熱膨張が収まり、内管2の中心軸A方向の長さ及び内管2の周方向の長さが基の長さに戻るように縮む際に発生し得る異音を低減することもできる。
【0028】
(1c)本実施形態では、スリット5は、内管2の成形時に行われる必須な工程、例えば平板の状態でパンチ孔を成形する工程と同時に成形することが可能である。このため、熱膨張による内管2の径方向への拡径を抑制する構成を新たな工程を追加して成形する場合と比較して、工程を増やさずに容易に設けることができる。
【0029】
なお、第1実施形態では、第2の端部24がスライド端部に相当し、スリット5が抑制部に相当する。
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図4図6に示すように、第2実施形態では、排気管1aが保持部材4を備えない点と、内管2aが第2の端部24にリブ6を有する点と、が第1実施形態の排気管1と異なる。その他、排気管1aの基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と共通する構成については同一符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と相違する構成を中心に説明する。
【0030】
図4及び図5に示すように、内管2aは、第2の端部24にリブ6を有する。
リブ6は、内管2aの中心軸A方向に直線状に延び、内管2aの外側に突出した部分である。本実施形態では、リブ6は、外管3に向かって曲面状に突出している。リブ6の外周面の一部は、外管3の内周面と当接する。図4に示すように、本実施形態では、リブ6は、略楕円形状に形成されている。リブ6の中心軸A方向の長さは、スリット5の中心軸A方向の長さと同程度であることが好ましい。リブ6は、内管2aの周方向にスリット5と間隔を空けて並んで配置される。図5に示すように、本実施形態では、リブ6は内管2aの周方向に等間隔に3つ設けられており、内管2aの周方向においてリブ6とスリット5とがそれぞれ隣り合うように交互に配置されている。本実施形態では、外管3の保持部35は、内管2aの第2の端部24をリブ6を介してスライド可能に保持する。
【0031】
[2-2.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の(1a)、(1c)の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0032】
(2a)本実施形態では、内管2aの周方向においてリブ6とスリット5とがそれぞれ隣り合うように交互に配置されるため、熱膨張による内管2aの径方向への力が発生した場合にも、リブ6に加わる力をスリット5へ逃がすことができる。具体的には、図6に示すように、熱膨張による内管2aの径方向への力が発生した場合、リブ6が外管3に押し当てられる。しかし、リブ6は、内管2aの周方向において、間隔を空けてスリット5によって挟まれている。換言すると、リブ6は、内管2aの周方向において、間隔を空けてスリット5により形成された隙間に挟まれている。このため、熱膨張による内管2aの径方向への力が発生した場合にも、リブ6が外管3に押し当てられることにより潰れると同時に、リブ6に加わる力を当該隙間に逃がすことができる。したがって、熱膨張によって内管2aが外管3に対してスライドし難くなることを一層抑制することができる。
【0033】
(2b)本実施形態では、リブ6が外管3と当接することで内管2aと外管3との面接触が抑制されるため、外管3と内管2aとの接触面積を減らしつつ、外管3が内管2aをスライド可能に保持することができる。したがって、外管3が摩擦抵抗を低減する保持部材4等を介して内管2aをスライド可能に保持する構成と比較して、部品点数が削減されるため、二重管構造における構造を簡素化することができる。また、部材の費用及び組み付け工程が減るため、コスト削減をすることもできる。
【0034】
(2c)本実施形態では、スリット5と同様に、リブ6も、内管2の成形時に行われる必須な工程、例えば平板の状態でパンチ孔を成形する工程と同時に成形することが可能である。このため、内管2aと外管3とをスライド可能に保持する構成を新たな工程を追加して成形する場合と比較して、工程を増やさずに容易に設けることができる。
【0035】
なお、第2実施形態では、第2の端部24がスライド端部に相当し、スリット5が抑制部に相当し、リブ6が当接部に相当する。
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記各実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0036】
(3a)上記各実施形態では、外管3の保持部35、つまり外管3そのものが内管2,2aの第2の端部24をスライド可能に保持する構成を例示したが、第2の端部24がスライド可能に保持される構成はこれに限定されるものではない。例えば、外管3における内管2,2aが固定されている側とは反対側の端部において外管3に固定されている部材に対して、内管2,2aがスライド可能な構成であってもよい。ここで、外管3には、外管3そのものに加え、外管3に固定された部材が含まれてもよい。具体的には、図7に示すように、外管3bにおける内管2bが固定されている側とは反対側の端部において外管3bに固定されている固定部材7に対して、内管2bがスライド可能な構成であってもよい。
【0037】
図7に示す排気管1bは、内管2bと、外管3bと、保持部材4と、固定部材7と、を備える。
内管2bは、第1実施形態の内管2と基本的な構成は同様であるが、外管3bの固定部34により固定されていない側の端部である第2の端部24が、外管3bの内部、例えば中央付近に位置する長さのパイプである点が異なる。
【0038】
外管3bは、第1実施形態の外管3と基本的な構成は同様であるが、第1実施形態の保持部35に代えて、部材固定部35bを有する点が異なる。部材固定部35bは、固定部材7の第1の端部71を固定する部分である。部材固定部35bは、当該部材固定部35bの内周面と第1の端部71の外周面とが全周において当接するように、第1の端部71を囲っている。第1の端部71は、部材固定部35bの内周面に、例えば溶接等によって固定されている。すなわち、例えば外管3と内管2b及び固定部材7との間の空隙に設けられた水等が外管3bから漏れ出すのを防止するように、外管3は両側の端部が溶接等により固定される。
【0039】
固定部材7は、内部を排気ガスが通過する金属製のパイプである。固定部材7の中心軸は、内管2bの中心軸Aと一致するように配置され、外管3bにより外周面が囲われるように配置されている。固定部材7は、外管3により固定されていない側の端部である第2の端部72の径が、第1の端部71の径よりも大きくなるように、第2の端部72側付近で拡径するように形成された円筒状のパイプである。固定部材7は、第2の端部72において、内管2bの第2の端部24をスライド可能に保持している。第2の端部72は、当該第2の端部72の内周面と第2の端部24の外周面との間に隙間を空けるように、第2の端部24を囲っている。第2の端部72は、保持部材4を介して第2の端部24を保持する。
【0040】
このような構成では、固定部材7の第2の端部72が内管2bの第2の端部24よりも外側に位置するため、第2の端部72の熱膨張による径方向の拡径は、第2の端部24の熱膨張による径方向の拡径よりも小さい。このため、第2の端部72と第2の端部24との間で熱膨張差が生じ得る。しかし、このような構成では、内管2bは、第2の端部24にスリット5を有するため、図8に示すように、第1実施形態の(1a)~(1c)と同様な効果を得ることができる。すなわち、熱膨張によって内管2bが外管3b、具体的には固定部材7に対してスライドし難くなることを抑制することができる。
【0041】
なお、排気管1bにおいて、保持部材4を備えずに、第2実施形態の内管2aのようにリブ6を内管2bが有する構成であってもよい。このような構成によれば、第1実施形態の(1a)、(1c)及び第2実施形態の(2a)~(2c)と同様な効果を得ることができる。
【0042】
(3b)上記各実施形態では、スリット5が3つ、またスリット5及びリブ6が3つずつ設けられる構成を例示したが、スリット5及びリブ6が設けられる数はこれに限定されるものではない。例えば、スリット5は、少なくとも1つ以上設けられていればよく、リブ6は、少なくとも2つ以上設けられていればよい。また、スリット5及びリブ6のそれぞれが設けられる位置は、内管2,2a,2bの周方向において等間隔でなくでもよい。また、スリット5とリブ6とがそれぞれ隣り合うように交互に配置されていなくてもよい。例えば、図9に示すように、スリット5及びリブ6が複数偏って、例えばスリット5が2つ及びリブ6が3つ偏って設けられるような構成であってもよい。
【0043】
(3c)上記各実施形態では、排気管1,1a,1bが消音器として機能する構成を例示したが、例えば、排気管は、排気ガスを保温するために管を二重とする二重管であって、内管を覆う外管が直管状の二重管であってもよい。
【0044】
(3d)上記各実施形態では、保持部材4又はリブ6を介して内管2,2a,2bが外管3,3bに対してスライド可能に保持される構成を例示したが、外管3,3bに対してスライド可能に保持される内管の構成はこれに限定されるものではない。例えば、内管の端部の径全体を拡径させて、内管が外管に対してスライド可能に保持されるようにしてもよい。
【0045】
具体的には、図10に示すように、内管2cは、外管3cに対してスライド可能に保持される側の端部が外管3cに向かって拡径するように形成される円筒状のパイプであってもよい。
【0046】
外管3cは、内管2cの外周面を覆うように配置された金属製のパイプであり、径が一定の直管である。なお、外管3cは、外管3,3bと同様に、中央が拡径した拡張型のパイプであってもよい。
【0047】
内管2cは、直管部25cと、円錐台部26cと、拡径部27cと、を有する。直管部25c及び拡径部27cは、断面積が一定、つまり直管状の部分である。円錐台部26cは、直管部25cの一方の端部から拡径部27cに向かって断面積が徐々に拡大する円錐台状の部分である。拡径部27cは、外管3cに当接する部分である。当該拡径部27cの外周面と外管3cの内周面とは、全周においてスライド可能に当接している。拡径部27cは、当該拡径部27cの端面から内管2cの中心軸A方向に直線状に延びる切り欠きであるスリット5を有する。スリット5は、拡径部27cの一方の端面から円錐台部26cの手前まで延びていることが好ましい。なお、スリット5は、拡径部27cの一方の端面から円錐台部26cの一部にまで延びていてもよい。このような構成では、図11に示すように、スリット5は、内管2cと外管3cとの接触面積を減らすために、内管2cの周方向に等間隔に8つ設けられている。なお、図示を省略するが、直管部25cにおける拡径部27c側とは反対側の端部は、外管3cの内周面に、例えば溶接等によって固定されている。
【0048】
このような構成によれば、第1実施形態の(1a)と同様な効果を得ることができる。また、このような構成によれば、内管2cと外管3cとの間に隙間が生じにくく、内管2cを通過する排気ガスが当該隙間から漏れ出すことが抑制される。このため、内管の外周面と外管の内周面とが直接当接しない構成と比較して、排気ガスの流れに対する影響を少なくすることができる。
【0049】
(3e)上記各実施形態では、スリット5によって熱膨張による内管2,2a,2b,2cの径方向への拡径を抑制する構成を例示したが、このような拡径を抑制する構成はこれに限定されるものではない。例えば、内管2,2a,2b,2cは、スリット5に代えて、第2の端部24の端面に形成され、熱膨張による内管2,2a,2b,2cの径方向への拡径を抑制する凸部を有してもよい。ここで、凸部が第2の端部24の端面に形成されるとは、凸部が第2の端部24の端面を含むように所定の範囲で形成されることである。具体的には、図12及び図13に示すように、凸部8は、第2の端部24の端面から内管2,2a,2bの中心軸A方向に延び、内管2,2a,2bの内側に突出する部分である。また、例えば、内管2,2a,2b,2cは、スリット5及び凸部8の両方を有してもよい。図14及び図15に示すように、例えば、第2の端部24に2つのスリット5と1つの凸部8が設けられてもよい。
【0050】
このような構成によれば、第1実施形態の(1a),(1b)及び第2実施形態の(2a),(2b)と同様な効果を得ることができる。すなわち、凸部8を有する構成では、スリット5を有する構成と同様に、内管2,2a,2bにおける第2の端部24の端面及び内管2cにおける拡径部27cの端面に、凸部8によって隙間が形成される。このため、内管2,2a,2b,2cが周方向に拡がっても、大きくなった第2の端部24及び拡径部27cの周方向の長さが、第2の端部24及び拡径部27cの端面の隙間を狭めることによって吸収される。つまり、大きくなった第2の端部24及び拡径部27cの周方向の長さが、凸部8によって形成された空間が狭まることにより吸収される。このため、その周方向の拡がりに起因して内管2,2a,2b,2cが径方向に拡張することが抑制される。
【0051】
(3f)スリット5の形状は、長方形状の切欠きに限定されるものではない。例えば、図16に示すように、スリット5aは、半楕円形状の切欠きであってもよい。また、例えば、図17に示すように、スリット5bは、三角形状の切欠きであってもよい。また、スリット5、リブ6及び凸部8は、内管2の中心軸A方向に直線状に延びる構成を例示したが、それぞれ周方向に長さを有してもよい。
【0052】
(3g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0053】
1,1a,1b…排気管、2,2a,2b,2c…内管、3,3b,3c…外管、4…保持部材、5,5a,5b…スリット、6…リブ、7…固定部材、8…凸部、21…第1の開口、22…第2の開口、23,71…第1の端部、24,72…第2の端部、25c,31…直管部、26c…円錐台部、27c…拡径部、32…第1の円錐台部、33…第2の円錐台部、34…固定部、35…保持部、35b…部材固定部、A…中心軸。
図1
図2
図3
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図17