(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ファンホルダー
(51)【国際特許分類】
A45F 3/00 20060101AFI20240509BHJP
A45C 11/00 20060101ALI20240509BHJP
F04D 25/08 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A45F3/00 520
A45C11/00 E
F04D25/08 301A
(21)【出願番号】P 2020012540
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2019214149
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508152157
【氏名又は名称】株式会社 大雪屋
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】利根川 大地
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3211294(JP,U)
【文献】特開2018-003227(JP,A)
【文献】特開平08-154721(JP,A)
【文献】特開2014-090940(JP,A)
【文献】特開2018-119536(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073517(WO,A1)
【文献】特開2019-116709(JP,A)
【文献】特開2002-262917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/00
A45C 11/00
F04D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン本体から棒状のグリップを垂設してなるファンを、肩バンド付き収納袋に装着させるためのファンホルダーであって、
縦向きの一対の側辺(34)を有する基シート(32)と、
この基シート(32)の表側に重ね合わされ、当該基シート(32)との間に前記グリップを保持するためのグリップホールドシート(40)とを具備し、
このグリップホールドシート(40)の両端部を前記基シート(32)の側辺(34)
付近に接合することにより、これら両シートからなる
、前記肩バンドへの装着用の帯状の装着材(30)を形成し、
この装着材(30)の横方向中間部である基片部(44)に対して、前記装着材(30)の横方向側部である一対の挟持用部(46A、46B)を、当該基片部(44)の裏側へ屈折可能に設け、
前記基片部(44)と
前記一対の挟持用部(46A、46B)との間で前記肩バンド(102)を挟持させた状態で、この挟持状態を保持することができるように、一対の挟持用部(46A)の表側に付着面部(8)を、他方の挟持用部(46B)の裏側に被着面部(10)を、相互に付着可能に形成したことを特徴とする、ファンホルダー。
【請求項2】
前記グリップホールドシート(40)の横幅(w2)を、基シート(32)の横幅(w1)より長く設け、
前記基片部(44)の裏側に前記挟持用部(46A、46B)を折り返した状態で、基片部(44)において前記グリップホールドシート(40)が撓むことにより、上方から見て、前記基片部(44)と前記グリップホールドシート(40)との間にグリップ挿入口(A)が開口するように設けたことを特徴とする、請求項
1に記載のファンホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンホルダー、特に肩バンド付き収納袋に適用されるファンホルダーに関する。
なお収納袋とは、(背負い袋、或いはショルダーバッグやトートバッグのようなバッグ類等をいう。
【背景技術】
【0002】
近年、ファン本体から棒状のグリップを垂下させてなり、手で把持して使用するタイプのハンディ式ファン(扇風機)が提案されている(特許文献1)。
例えば屋外を歩きながら、このファンを片手で持ち、ファンからの送風が顔や首元などに当たるようにすると、大きな涼感を得ることが可能である。
しかしながら、この使い方では、片手が塞がってしまう上にファンを持つ腕が疲れるという問題がある。
【0003】
これを回避するために、片手で保持する代わりに、ハンディ式ファンを身体の近くで支えるホルダーとして、前記グリップを支える保持具の一端から斜め上方へ支持アームを突設するとともに、この支持アームの先端にフックを付設してなり、当該フックを着用者の襟元に掛け止めした状態で、ファン本体からの送風が着用者のうなじに当たるように構成したフックタイプの治具が知られている(特許文献2の
図1)。
【0004】
またハンディ式ファンではないが、利用者の腰に巻く腰ベルトを、送風口を上にして送風機に固定するとともに、上衣の後身頃に開口した通風口の口縁から上衣の外側へ筒状の通気部を垂設させ、この通気部の下端を前記送風口に装着するように構成したシステムが知られている(特許文献3の
図2、
図6、
図9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3095643号
【文献】特許6471282号
【文献】特開2018-3227
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の装置は、グリップを支える支持器の一端からフック付きの支持アームを突設するタイプの機械的な治具であったため、重くかつ嵩張る構造となり、こうした治具を上衣の襟元に掛け止めすると、上衣の素材が薄い場合には、治具の重みにより、襟元の部分が伸びてしまい、使用感がよくないという問題点があった。
また機械的な治具は、一般的に機械部品をそれぞれ製造し、組み合わせることが必要となるため、製造コストが高くなるという問題点もある。
【0007】
特許文献3の送風システムは、送風機を固定した腰ベルトと、気流の流れを制御する筒状の通気部及び通風口を設けた上衣とからなるものであり、
・腰ベルト及び上衣のそれぞれに特殊な加工をしなければならないため、全体としてコスト高になる、
・使用に際しては、腰ベルト及び上衣をそれぞれ身に着けるとともに、送風機の送風口に筒状の通気部を装着する作業をしなければならないが、利用者の視界に入りにくい背面側でこうした作業をするのは面倒であり、使い勝手が良くない
などの問題点があった。
特許出願人は、これらの問題を鋭意検討し、前記ファンホルダーを、収納袋の肩バンドに対して、嵩張ることがない態様で取り付けることを想起した。
【0008】
本発明の第1の目的は、収納袋の肩バンドに適用するための嵩張らないファンホルダーを提供することである。
本発明の第2の目的は、簡易な構造で廉価に製造できるファンホルダーを提供することである。
本発明の第3の目的は、使い勝手の良いファンホルダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1の手段は、ファン本体から棒状のグリップを垂設してなるファンを、肩バンド付き収納袋に装着させるためのファンホルダーであって、
縦向きの一対の側辺34を有する基シート32と、
この基シート32の表側に重ね合わされ、当該基シート32との間に前記グリップを保持するためのグリップホールドシート40とを具備し、
このグリップホールドシート40の両端部を前記基シート32の側辺34付近に接合することにより、これら両シートからなる、前記肩バンドへの装着用の帯状の装着材30を形成し、
この装着材30の横方向中間部である基片部44に対して、前記装着材30の横方向側部である一対の挟持用部46A、46Bを、当該基片部44の裏側へ屈折可能に設け、
前記基片部44と前記一対の挟持用部46A、46Bとの間で前記肩バンド102を挟持させた状態で、この挟持状態を保持することができるように、一対の挟持用部46Aの表側に付着面部8を、他方の挟持用部46Bの裏側に被着面部10を、相互に付着可能に形成した。
【0020】
本手段では、
図9に示すように、グリップホールドシート40の両端部を前記基シート32の側辺34
付近に接合することにより、これら両シートからなる帯状の装着材30を形成している。
この構成によれば、より簡易な構造でファンホルダーを背負い袋に装着させることができる。
【0021】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ前記グリップホールドシート40の横幅w2を、基シート32の横幅w1より長く設け、
前記基片部44の裏側に前記挟持用部46A、46Bを折り返した状態で、基片部44において前記グリップホールドシート40が撓むことにより、上方から見て、前記基片部44と前記グリップホールドシート40との間にグリップ挿入口Aが開口するように設けた。
【0022】
本手段では、
図10に示すように、前記グリップホールドシート40の横幅w2を、基シート32の横幅w1より長く設けている。
これにより、
図1に示すように、基片部44の裏側に前記挟持用部46A、46Bを折り返した状態で、基片部44において前記グリップホールドシート40が撓むことにより、上方から見て、前記基片部44と前記グリップホールドシート40との間にグリップ挿入口Aが開口するように設けている。
故に、装着材30へのグリップ94の挿入が容易となる。
【発明の効果】
【0023】
第1の手段に係る発明によれば、グリップホールドシート40の両端部を前記基シート32の側辺34に接合することにより、これら両シートからなる帯状の装着材30を形成したから、より簡易な構造でファンホルダーを背負い袋に装着させることができる。
第2の手段に係る発明によれば、基片部44の裏側に挟持用部46A、46Bを折り返した状態で、基片部44において前記グリップホールドシート40が撓むことにより、上方から見て、前記基片部44と前記グリップホールドシート40との間にグリップ挿入口Aが開口するように設けたから、装着材30へのグリップ94の挿入が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1
参考例に係るファンホルダーの展開状態を示しており、同図(A)は当該ファンホルダーの表面図、同図(B)は裏面図、同図(C)は、平面図である。
【
図2】
図1のファンホルダーの装着作業の説明図である。
【
図3】
図1のファンホルダーを肩バンドに装着する直前の段階を示す図であり、同図(A)は当該段階を側方から見た図、同図(B)は当該段階の正面図である。
【
図4】
図1のファンホルダーを肩バンドに装着した状態を示す図であり、同図(A)は装着状態の斜視図、同図(B)は装着状態の正面図である。
【
図5】
図1のファンホルダーの使用状態の側面図であり、同図(A)は保持部を肩バンド側へ引きつけた状態を、同図(B)は保持部を外側へ引き出した状態を示している。
【
図6】
図1のファンホルダーの使用態様の全体図である。
【
図7】本発明の第2
参考例に係るファンホルダーの展開状態での構成を示す図であり、同図(A)は当該ファンホルダーの表面図、同図(B)は裏面図であり、同図(C)は、平面図である。
【
図8】本発明のファンホルダーを収納袋であるショルダーバッグに適用した
参考例を示す図である。
【
図9】本発明の
実施形態に係るファンホルダーの斜視図である。
【
図10】
図9のファンホルダーを分解状態で示す図である。
【
図11】
図9のファンホルダーを肩バンドに組み付けた状態での構造を示す図であり、同図(A)は組み付け状態での斜視図、同図(B)は組み付け状態での断面図である。
【
図12】
図9のファンホルダーを用いてファンホルダーを背負い袋に装着した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1から
図6は、本発明の第1
参考例に係るファンホルダー1を示している。
このファンホルダー1は、ファンを保持する機能を有するものであり、
図6に示す如く、収納袋100の肩バンド102に取り付けて使用する。本
参考例の収納袋は、
図6に示す背負い袋(リュックサック、ナップサックなど)として形成されている。
もっとも、本明細書にいう収納袋は、肩バンドを介して肩で支持できればどのような構造でもよいものとする。
本明細書では、ハンディ式扇風機を“ファン”と称する。
こうしたファン90は、
図2に示すように、送風部であるファン本体92から棒状のグリップ94を垂下させてなり、図示しない電源部及びモーター部を有する。
図示例のファン本体92は、モーター部で駆動される回転軸から複数の回転翼92aの周囲を、フロントガード92b及びリアガード92cで囲んでいる。これらガードは、針金で形成された枠体であり、針金の間に空隙93が形成されている。
【0026】
ファンホルダー1は、
図1(A)に示す如く、装着部材2とホルダー部材12とで形成している。
これら各部材は、例えば布や皮革或いは合成樹脂などを用いて形成することができる。
【0027】
装着部材2は、縦長帯状の基片4と、この基片4との間に肩バンド102を挟持させるための挟持具5とで構成されている。
本
参考例の挟持具5は、前記基片4の左右両側部から横方向両側へ突設する一対の挟持用片6A、6Bとして形成されている。
もっともこの構造は適宜変更することができる。例えば基片4の左右方向の一方側部から一つの挟持用片を突設し、この挟持用片の先端部に他方側部に係止するストッパを設けても良い。
この挟持具5と、後述の固定手段Fとにより、前記肩バンド102に前記基片4を取り付けるための取付け手段Bが形成されている。これについては後述する。
本明細書では、
図3(A)に示すように、装着部材2を肩バンド102に沿って配置しているが未だ装着していない状態で、肩バンド102側の向きを“後”と、肩バンド102と反対側の向きを“前”といい、さらに前後方向と直交する向きを、“左右”と称する。
【0028】
前記基片4は、前記収納袋100の肩バンド102の表面に装着する部位である。
ここで“表面”とは、利用者が収納袋を身につけた状態で外側に現れる面を言う。故に、仮に肩バンドのうちで利用者の背中側の部分にファンホルダーを取り付ける場合には、後側に表れる面が“表面”である。
前記基片4の幅D1は、
図3(A)に示す如く、本発明のファンホルダー1を適用しようとする背負い袋100の肩バンド102の幅D2と同程度か、或いはこれよりやや大きく設定すると良い。
また前記基片4の長さは、このファンホルダー1に収納しようとするファン90のグリップ94の長さと同程度であるか或いはそれよりやや長くすることが望ましい。
前記基片4の前面には後述のホルダー部材12を形成する。これについては後述する。
【0029】
前記一対の挟持用片6A、6Bは、前記肩バンド102の裏面側へ折り返し、前記基片4との間に、当該肩バンド102を挟持させるための部位である。
図示例では、各基片4と挟持用片6A、6Bとの境目を明らかにするために、便宜的に、折り目線fを描いている。例えば装着部材2を合成樹脂のような比較的剛性の高い材料で形成するときには、前記折り目線fは、薄肉の易屈折部として形成することができる。
しかしながら、布のように比較的柔軟な材料で形成するときには、予め折り目を付けなくともよい。
前記挟持用片6A、6Bは、前記基片4と同様に縦長の帯状に形成されている。
前記挟持用片6A、6Bの幅は、図示例の基片4の幅D1と同程度か、或いはこれよりやや大きく設定すると良い。
【0030】
前記挟持具5は、基片との間に肩バンドを挟持した状態を維持する固定手段Fを有する。
図示例では、固定手段Fとして、前記一対の挟持用片のうちで第1挟持用片6Aの表面に、付着面部8を、また第2挟持用片6Bの裏面に、被着面部10をそれぞれ形成する。
これら付着面部8及び被着面部10は、肩バンドの裏面側へ折り返したときに、相互に重なるように相互に対応する位置に配置する。
前記付着面部8及び被着面部10は、例えば雄型の面ファスナー及び雌型の面ファスナーで形成することができる。
この固定手段Fは、前記基片4を前記肩バンドに対して着脱自在に固定することができる限りどのような構造としても良い。
【0031】
本参考例では、前記一対の挟持用片6A、6Bと前記固定手段Fとで、前記基片4を肩バンド102に取り付けるための前記取付け手段Bを形成している。
もっとも、取付け手段Bの構造は、肩バンドの長手方向に沿って挟持箇所を変更できればどのような構造でも良い。例えば基片4及び肩バンド102を挟むクリップのような構造でも良い。
【0032】
ホルダー部材12は、ファン90を支持するための部材である。
本参考例のホルダー部材12は、保持部14と伸縮部22とで構成されている。もっともこの構造は適宜変更することができる。
【0033】
前記保持部14は、ファンのグリップ94を保持することにより、当該ファンを支える役割を有する。
図示例の保持部14は、
図2に示す如く、回転板16と押さえ用片20とで形成されている。
【0034】
前記回転板16は、その下端を回転軸18として、前記基片4の前面に回動可能に連結されている。
図示例では、回転板16を前方から見て縦長の長方形に形成している。また回転板16の下端部は、前記基片4の前面の下部に連結されている。
回転板16の下端には、
図2に示す如く、前記基片4に縫着又は接着させるための連結代m1を設け、この連結代を上側に折り返して、基片4に連結させている。
【0035】
前記押さえ用片20は、前記回転板16の前面に前記グリップ94を押さえ付けるための部位であり、少なくとも押さえ用片20の左右両端部は、
図1(A)に示す固定端部24として回転板16の前面に固定されている。固定の手段としては、縫着や接着などの技術を用いれば良い。
本
参考例の押さえ用片20は、伸縮可能な弾性片で形成されており、さらに図示例ではネット素材で形成されている。もっともこれらの構造は適宜変更することができる。
【0036】
前記押さえ用片20と、回転板16のうち押さえ用片20と向かい合う部分とは、
図3(B)に示す如く、ポケット状で縦長のグリップ収納室Cを形成しており、その上面側には、グリップ挿入口Aが開口されている。
グリップ収納室Cは、グリップ94の全体を収納している必要はなく、グリップ94の拘束が可能な範囲でグリップの大半を収納できていれば足りる。
“ポケット状”とは、棒状のグリップ94の周囲を囲んで保持する構造を意味する。
一般的なポケットは、有底の袋状の構造であるが、本発明の場合には、有底であることは必須条件ではない。
ファンホルダーの支持対象が、ファン本体から棒状のグリップを垂下させてなるファンであり、グリップの径よりファン本体のサイズが大きいため、グリップ収納室Cに底がなくても問題がない。何故なら、ファン本体92がグリップ挿入口Aに係止されるので、ファンを支持することができるからである。
もちろん、前記保持部14の構成として、有底のポケットの構造を採用しても構わない。
【0037】
前記伸縮部22は、前記回転板16の横方向の各端部と前記基片4との間に、
図3(B)に示す如く伸びた状態で横方向から見て逆三角形状になるようにそれぞれ形成されている。
図示例の伸縮部22は、
図1(C)に示すように襞を有する襠に形成されているが、単に伸縮可能な布などのシート材で形成しても構わない。
なお、図示例の襠の前後両端には、
図5(A)に示す如く、前記基片4及び回転板16に縫着又は接着させるための連結代m2が形成されており、これら連結代を内側に折り返して、基片4又は回転板16に連結させている。
前記伸縮部22は、前後方向に伸縮することにより、
図5(A)に示す、前記グリップ挿入口Aが真上に配向された第1ポジションと、
図5(B)に示す、上外方へ斜めに配向された第2ポジションとの間で前記保持部14が変位することが可能とすることである。
この変化により、ファン90を使用しないときには、保持部14を第1ポジションに位置させることにより、ファン90を肩バンド102に近接させ、徒らに場所を取らないようにすることができる。
またファン90を使用するときには、保持部14を第2ポジションに位置させることにより、
図4に想像線で示すように、ファンが上前方へ傾斜した状態とし、ファン本体92と利用者との身体との間に適切な距離をとることができる。
なお、ホルダー部材12の構成として、前記伸縮部22及び回転板16を省略して、ポケット状で縦向きの保持部14を前記基片4の前面に直接付設することも可能である。この場合にも、保持部14の構造に工夫をして、予め前上方へ傾斜するようにしてファン本体と利用者との身体との間とることができる。しかしながら、使用しない状態でファンを肩バンドに近接させ、場所を取らないようにすることとした点で、図示例の構成の方が、より使い勝手が良い。
【0038】
前記構成において、ファンホルダー1を背負い袋100の肩バンド102に装着するときには、次の手順で行う。
(1)
図1に示すように展開した状態から、装着部材2を摘むとともに、前記ホルダー部材12の保持部14に指を掛け、保持部14を外側に引っ張る。
そうすると伸縮部22が伸びる。
(2)次に、
図3に示す如く、装着部材2の基片4及び肩バンド102のそれぞれの長手方向が合致するように、装着部材2の姿勢を整えて、前記肩バンド102の表面に前記基片4を配置させる。
(3)この状態から、
図4に示す如く、第1挟持用片6A、6B及び第2挟持用片6Bを、肩バンド102の裏側へ順次折り返して、前記付着面部8と前記被着面部10とを連結させる。
これにより、前記肩バンド102を前記基片4と前記第1挟持用片6Aとの間で挟持させ、ファンホルダー1を肩バンド102の適所に固定することができる。
なお、前記保持部14を外側へ引き出す段階と、基片4を肩バンド102の表側に配置して固定する段階とは、入れ替えても良い。
【0039】
装着作業が完了したときには、ファン90の送風口(前述のフロントガード側)が利用者の身体に向くように、ファン90のグリップ94を、前記グリップ挿入口Aよりグリップ収納室C内へ挿入する。そして、ファン90のスイッチを入れて、身体に対して送風すれば良い。
肩バンド102に装着されたファンホルダー1に保持されたファン90からの送風は、斜め上方に向かって例えば胸の上部付近に当たる。
その風の一部は身体の表面を流れて、利用者の喉元や顔に向かうので適度な涼感が得られる。
ファンホルダー1は、前記肩バンド102に対して着脱自在であるので、ファン90からの送風が身体に当たる場所を調整するために、前記肩バンド102に対する装着箇所を適宜変更することができる。
【0040】
前記ファンホルダー1は、背負い袋の帯状の肩バンド102の表面への装着用の縦板状の基片4を有し、この基片4の前面側に、ファン90のグリップを保持するホルダー部材12を形成するから、前記基片4及びホルダー部材12は、前記肩バンド102の幅D2と同程度の横幅があれば形成でき、嵩張ることがない。
【0041】
また装着部材2は、基片4及び一対の挟持用片6A、6Bにより、またホルダー部材12は、襠や伸縮シートなどの伸縮部と、ポケット状の保持部14とで形成している。
これらは、布・ネットなどのシート状材料や板材などの素材で形成することができ、またこれらを組み合わせる技術も縫着・接着などを用いれば良い。
これらの素材や技術は、背負いカバンや衣類を製作するときに通常用いられる素材・技術であるので、カバン・衣類等の製造業の分野にとって容易に製作することができ、廉価に製造することができる。
【0042】
また背負い袋(或いはバッグ類)の肩バンド102は、背負い袋自身及びその中身の荷重を支えるために十分な強度を備えていることが通常であるから、上衣の襟元に係止させる特許文献2の装置のように、係止箇所がファン及びファンホルダーの重みで伸びてしまうというおそれがほとんど生じない。
【0043】
さらにファンホルダー1の装着工程では、ファンホルダー1を背負い袋100の肩バンド102に装着してから、その背負い袋100を背負えばよく、肩バンド102への装着箇所を見ながら、取り付け作業を行えば良いから、利用者が装備を身につけた後に送風システムの部材同士の装着作業を行う特許文献3の技術に比べて使い勝手が良い。
【0044】
以下、本参考例の構成の骨子を記載する。
(1)第1の手段は、ファン本体から棒状のグリップを垂設してなるファンを、肩バンド付き収納袋に装備させるためのファンホルダーであって、
前記収納袋の帯状の肩バンドの表面への装着用の縦板状の基片4を有する装着部材2と、
前記基片4の前面に縦長に形成され、かつ上側に開口するグリップ挿入口Aを有するホルダー部材12と、を具備し、
前記装着部材2は、前記基片4を前記肩バンドに対して着脱自在に取り付けることができる取付け手段Bを有する構成である。
本構成では、図2に示す如く、収納袋の帯状の肩バンドの表面への装着用の縦板状の基片4を有する装着部材2を設け、この基片4の前面側に、上側に開口するグリップ挿入口Aを有する縦長のホルダー部材12が形成されている。
また前記装着部材2は、前記基片4を前記肩バンドに対して着脱自在に取り付けることができる取付け手段Bを有する。
この構造によれば、収納袋の肩バンドに装着したファンホルダーにファンを保持させて、快適な涼感が得られる。
また前記肩バンドの表面への装着用の縦板状の基片4に、縦長のホルダー部材12を形成しているから、全体として嵩張らない構造とすることができる。
(2)第2の構成は、第1の構成を有し、かつ前記取付け手段Bは、前記基片4との間に前記肩バンドを挟持する挟持具5を有しており、かつこの挟持具5と前記基片4との間の肩バンドの挟持状態を固定させることで当該肩バンドに装着部材2を取り付けるように設けており、
前記挟持具5は、前記肩バンドの長手方向に沿って挟持箇所を変更することができるように構成している。
本構成では、図4(A)に示す如く、前記取付け手段Bは、前記基片4との間に前記肩バンドを挟持する挟持具5を有しており、前記挟持具5は、前記肩バンドの長手方向に沿って挟持箇所を変更することができる。
この構造によれば、前記挟持箇所の変更により、ファン本体からの送風が身体に当たる箇所を調整することができ、より快適な涼感が得られる。
(3)第3の構成は、第2の構成を有し、かつ前記装着部材2は、縦長の前記基片4の横方向両側へ、前記挟持具5として一対の板状の挟持用片6A、6Bを突出するとともに、これら挟持用片6A、6Bを前記肩バンドの裏側へ折り返して相互に重ね合わせることが可能に設けられており、
前記一対の挟持用片6A、6Bの一方には付着面部8が、その他方には前記付着面部8に連結可能な被着面部10がそれぞれ形成されており、これら付着面部8及び被着面部10の連結により、前記一対の挟持用片6A、6Bの重ね合わせ状態が保持されるように形成している。
本構成では、図1(A)及び図1(B)に示す如く、装着部材2は、縦長の基片4の横方向両側へ、前記挟持具5として一対の板状の挟持用片6A、6Bを突出している。
また図4(A)に示す如く、これら挟持用片6A、6Bを前記肩バンドの裏側へ折り返して相互に重ね合わせることが可能に設けられている。
前記取付け手段Bは、前記一対の挟持用片6A、6Bの一方に付着面部8を、他方に、前記付着面部8に連結可能な被着面部10をそれぞれ形成している。
この構造によれば、既述特許文献2のようにフック付きの支持アームのような機械的手段を用いて掛け留めする構造に比べて、製作が簡単であり、廉価に製造することができる。
(4)第4の構成は、第1の構成から第3の構成のいずれかを有し、かつ前記ホルダー部材12は、前記グリップ挿入口Aを上方に開口するポケット状の縦長の保持部14を有し、この保持部14と前記基片4との間に、前後方向へ伸縮変形可能な伸縮部22を介在させている。
本構成では、前記ホルダー部材12は、前記グリップ挿入口Aを上方に開口するポケット状の縦長の保持部14を有し、この保持部14と前記基片4との間に、前後方向へ伸縮変形可能な伸縮部22を介在させている。
この構造によれば、ファンを使用しないときには、伸縮部22を縮めて嵩張らない状態とすることができ、装着部材2を肩バンドから外さなくても不便はない。
(5)第5の構成は、第4の手段を有し、かつ前記保持部14として、前記基片4の前面と向かい合う回転板16の下端を回転軸18として前記基片4に連結するとともに、この回転板16の前面に、前記グリップ挿入口Aを上面側に開口する押さえ用片20を付設しており、
前記伸縮部22は、前記回転板16の横方向の各端部と前記基片4との間に、伸びた状態で横方向から見て逆三角形状になるようにそれぞれ形成されており、
この伸縮部22の伸縮変形により、前記グリップ挿入口Aが真上に配向された第1ポジションと、上外方へ斜めに配向された第2ポジションとの間を変位することが可能に設けている。
本構成では、前記保持部14として、前記基片4の前面と向かい合う回転板16の下端を回転軸18として前記基片4に連結するとともに、この回転板16の前面に、前記グリップ挿入口Aを上面側に開口する押さえ用片20を付設している。
また前記伸縮部22として、保持部14の前記回転板16の横方向の各端部と前記基片4との間に、伸びた状態で横方向から見て逆三角形状に形成している。
そしてこの伸縮部22の伸縮変形により、前記グリップ挿入口Aが真上に配向された第1ポジションと、上外方へ斜めに配向された第2ポジションとの間を変位させることが可能である。
この構造によれば、グリップ挿入口Aにグリップを挿入させたファンの傾きを調整することができ、便利である。
【0045】
以下、本発明の他の参考例を説明する。これらの説明において、第1参考例と同じ構造については、解説を省略する。
図7は、本発明の第2
参考例に係るファンホルダー1を示している。この
参考例では、
図7(A)に示す如く、前記回転板16の下端である回転軸18を、正面から見て傾斜させている。ここでは、回転軸18の両端のうち、より低い方を第1端部18a、高い方を第2端部18bとする。
こうすることにより、前記回転軸18を中心として前記回転板16を回転させたときに、
図7(B)に想像線で示すように、回転板18の前面は、第1端部18a側へ配向し、これに伴い、ファン本体92のフロントガード92bもそちらの向きに傾く。従って、このフロントガードの先に利用者の頭部があるように、ファンホルダー1をセットすれば、より効率的に送風を行うことができる。
本
参考例では、ファンホルダーの一対の伸縮部のうちで前記第1端部18aと同じ側にあるもの(第1伸縮部22A)を、記第1端部18aと反対側にあるもの(第2伸縮部22B)よりも伸縮の巾に余裕を持たせている。図示例では、第1伸縮部22Aである襠の襞を、第2伸縮部22Bである襠の襞より大きく形成している。
【0046】
図8は、本発明の
参考例に係るファンホルダー1を、収納袋であるショルダーバッグの肩ベルトに適用した
参考例を示している。
【0047】
図9から
図12は、本発明の
実施形態に係るファンホルダー1を示している。
この実施形態では、ファンホルダーを基片部44及びグリップホールドシート40の2部材で簡易に構成した構造を採用している。
基シート32は、縦向きの一対の側辺34を有する部材であり、図示例では矩形に形成されている。
なお、本明細書で“シート”とは布状の材料という程度の意味であり、ファンホルダーを保持できる程度の強度と、折り曲げることが可能な程度の柔軟性があれば良い。例えば布や合成樹脂などで形成される。
グリップホールドシート40は、前記基シート32の表側に重ね合わされ、両端部42を前記側辺34付近にそれぞれ接合(例えば縫合)することにより、当該基シート32との間に前記グリップを保持するための部材である。
本明細書では、基シート32とグリップホールドシート40とを複合させたものを装着材30と称している。
使用の際には、この装着材30の幅方向の中間部分(基片部44)に肩バンド102の表側にセットし、幅方向の両側部分を挟持用部46A、46Bとして肩バンド102の裏側へ折り返す。
こうすることで基片部44と挟持用部46A、46Bとの間に肩バンド102を挟持することができる。そして予め挟持用部46A、46Bの対応位置(折り返したときに重なる位置)に設けた付着面部8及び被着面部10を接合して、前記挟持状態を保持できるように設ける。
具体的には、一方の挟持用部46Aの表側に付着面部8を、他方の挟持用部46Bの裏側に被着面部10をそれぞれ形成すれば良い。
なお、第1、第2
参考例では“挟持用片”と、
実施形態では“挟持用部”と使い分けているのは、単に構造が異なるからであり、機能において違いがあるわけではない。
“基片”と“基片部”との使い分けに関しても同様である。
【0048】
図10は、基シート32とグリップホールドシート40の分解状態での寸法を示している。
ここで前記グリップホールドシート40の横幅w2は、前記基シート32の横幅w1よりも大きく取ってある。
そうした理由は、前述の如く、前記基シート32の表側にグリップホールドシート40を重ねた状態で横方向の両端側を固定して、装着材30を形成し、挟持用部を肩バンドの裏側へ折り返した場合に、グリップホールドシート40に横方向への引っ張り力が作用し、グリップホールドシート40が緊張した状態となってしまうからである。
そうなると、基シート32とグリップホールドシート40との間に前記グリップ94を挿入することが困難となるおそれがある。
特に強度の確保のために基シート32及びグリップホールドシート40を厚みのある材料で形成した場合には、その傾向が強い。
こうした不具合を避けるために、予めグリップホールドシート40の横幅w2を基シート32の横幅w1に比べて余裕を持たせ、基シート32の側辺34に固定したときに、両シートの間にグリップ挿入口Aが形成されているのである。
なお、このような構成とする代わりに、例えばグリップホールドシート40を、より柔軟な材料や弾性を有する材料で形成することもできる。
但し、このような構成とすると、基シート32及びグリップホールドシート40の間にグリップ94を保持させたときに、グリップに対する保持力が弱くなる。
このため、
図12のように本実施形態のファンホルダー1を用いて肩バンドにファンを保持した状態で、例えば利用者が走ったりすると、その振動により、グリップホールドシート40が伸びることに基シート32及びグリップホールドシート40の間でグリップ94が揺れ、ファンが外に飛び出してしまうなどの可能性がある。
本実施形態の構成では、所要のグリップホールドシート40の保持力(強度)を確保しながら、両シート間へのグリップの挿入を容易とすることができる。
また基シート32の高さh1は、グリップホールドシート40の高さh2より大としている。
前記グリップホールドシート40の高さは、グリップ94の長さ程度あれば足りる。これに対して、前記基シート32の高さは、これを長く取ることにより、肩バンドへの装着力を増大することができるので、想定されるファンの重量などに応じて、より長く設計する利益がある。
【0049】
なお、好適な図示例では、基シート32の側辺34及び上下両辺を折り返して内側の部位に縫い付けることにより補強部50を形成している。
同様に、グリップホールドシート40の上下両縁部を折り返して内側へ縫い付け、補強部としている。
【符号の説明】
【0050】
1…ファンホルダー
2…装着部材 4…基片 5…挟持具 6A、6B…挟持用片
8…付着面部 10…被着面部
12…ホルダー部材 14…保持部 16…回転板
18…回転軸 18a…第1回転軸 18b…第2回転軸 20…押さえ用片
22…伸縮部 22A…第1伸縮部 22B…第2伸縮部 24…固定端図
30…装着材 32…基シート 34…側辺
40…グリップホールドシート 42…端部 44…基片部
46A、46A…挟持用部
50…補強部
90…ファン 92…ファン本体 92a…回転翼 92b…フロントガード
92c…リアガード 93…空隙 94…グリップ
100…収納袋(背負い袋、ショルダーバッグ) 102…肩バンド
A…グリップ挿入口 B…取付け手段 C…グリップ収納室
F…固定手段 m1、m2…連結代 f…折り目線