(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】マフラ
(51)【国際特許分類】
F01N 1/08 20060101AFI20240509BHJP
F01N 1/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
F01N1/08 K
F01N1/00 E
(21)【出願番号】P 2020028351
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2021-02-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 俊輔
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】山本 信平
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-137614(JP,A)
【文献】実開昭60-157915(JP,U)
【文献】実開昭57-42112(JP,U)
【文献】国際公開第99/61762(WO,A1)
【文献】特開2004-27904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の排ガスの流路に設けられたマフラであって、
内部空間を形成する部材であって、前記排ガスを前記内部空間へと流入させる入口部と、前記内部空間の前記排ガスを外部へと流出させる出口部とを有する部材である外殻部材と、
前記入口部から前記内部空間に向けて突出するパイプ状の部材であって、当該部材を通過した排ガスを、当該部材の出口を介して前記内部空間へと流入させる部材であるインレットパイプと、を備え、
前記外殻部材は、
前記内部空間を囲む外周部と、
前記外周部の両端に形成された開口を塞ぐ第1及び第2エンドプレートと、
を有し、
前記インレットパイプにおける前記出口は、前記第2エンドプレートに対面しており、
前記第2エンドプレートは、当該第2エンドプレートにおける前記インレットパイプの前記出口の正面に位置する正面部分に、予め定められた
伸長方向に延びるビードが形成されており、前記正面部分と前記インレットパイプの前記出口との間には、部材が配置されておらず、
前記ビードにおける前記伸長方向に直交する幅方向の長さは、前記ビードにおける前記伸長方向の長さよりも短く、
前記ビードの
前記幅方向の中央は、前記インレットパイプの前記出口の中心の略正面に位置する
マフラ。
【請求項2】
請求項1に記載されたマフラであって、
前記ビードとは、前記内部空間に突出する部位である
マフラ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたマフラであって、
前記ビードとは、前記マフラの外部に突出する部位である
マフラ。
【請求項4】
請求項1から
請求項3のうちのいずれか1項に記載されたマフラであって、
前記ビードにおける前記伸長方向に直交する断面を、ビード断面とし、
前記ビードにおける前記ビード断面は、略円弧である
マフラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されたマフラに関する。
【背景技術】
【0002】
剛性を向上させるため、マフラの外殻部材にビードを形成する技術が知られている。特許文献1のマフラでは、外殻部材を形成するシェルとエンドプレートとに、複数のビードが形成されている。具体的には、該マフラでは、シェルにおけるビードが形成された部分と、エンドプレートとは、マフラの内部空間に排ガスを流入させるインレットパイプに対し平行に配置されている。そして、インレットパイプの出口は、内部空間の中央に位置しており、インレットパイプの出口と外殻部材との間には、アウトレットパイプが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マフラにおいて、インレットパイプの出口が外殻部材に直接的に対面するように配置される場合がある。このような場合には、外殻部材におけるインレットパイプの正面に位置する部分に、インレットパイプの出口から流出した排ガスが直接衝突する。そして、該衝突により外殻部材に振動が生じ、放射音が生じる恐れがある。
【0005】
本開示の一態様においては、マフラの放射音を好適に抑制するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、車両の排ガスの流路に設けられたマフラであって、外殻部材と、インレットパイプと、を備える。外殻部材は、内部空間を形成する部材であり、排ガスを内部空間へと流入させる入口部と、内部空間の排ガスを外部へと流出させる出口部とを有する。インレットパイプは、入口部から内部空間に向けて突出するパイプ状の部材であって、当該部材を通過した排ガスを、当該部材の出口を介して内部空間へと流入させる。そして、インレットパイプにおける出口は、外殻部材に対面する。また、外殻部材は、当該外殻部材におけるインレットパイプの出口の正面に位置する正面部分に、少なくとも1つのビードが形成されている。
【0007】
上記構成によれば、マフラの外殻部材におけるインレットパイプの出口の正面部分での剛性が向上する。このため、インレットパイプの出口から流出した排ガスが正面部分に衝突することにより、外殻部材にて振動が生じるのを抑制できる。特に、排ガスの圧力が周期的に変化する(換言すれば、脈動する)場合があるが、上記構成によれば、脈動する排ガスにより外殻部材で振動が生じるのを好適に抑制できる。したがって、マフラの放射音を好適に抑制できる。
【0008】
なお、外殻部材は、内部空間を囲む外周部と、外周部の両端に形成された開口を塞ぐ第1及び第2エンドプレートと、を有する。そして、インレットパイプの出口は、第2エンドプレートに対面しており、第2エンドプレートに、少なくとも1つのビードが形成されている。
【0009】
上記構成によれば、第2エンドプレートにおけるインレットパイプの出口の正面部分の剛性が向上するため、出口から流出した排ガスとの衝突により、第2エンドプレートにて振動が生じるのを抑制できる。したがって、マフラの放射音を好適に抑制できる。
【0010】
また、少なくとも1つのビードは、正面部分を横断するように延びていても良い。
上記構成によれば、正面部分の剛性を向上させることができる。このため、出口から流出した排ガスとの衝突により、第2エンドプレートにて振動が生じるのをより一層抑制でき、マフラの放射音を好適に抑制できる。
【0011】
また、少なくとも1つのビードは、正面部分の全体を覆っていても良い。
また、ビードは、予め定められた方向に延びており、ビードは、インレットパイプの出口の幅よりも広い幅を有していても良い。
【0012】
これらの構成によれば、外殻部材におけるインレットパイプの出口の正面部分の剛性を、より一層向上させることができる。また、インレットパイプの出口から流出した排ガスを、ビードが設けられ、剛性が向上している部分に、より確実に衝突させることができる。このため、出口から流出した排ガスとの衝突により、外殻部材にて振動が生じるのを効果的に抑制でき、マフラの放射音をより好適に抑制できる。
【0013】
また、少なくとも1つのビードとは、内部空間に突出する部位であっても良い。
上記構成によれば、外殻部材のサイズが大きくなるのを抑制しつつ、外殻部材に少なくとも1つのビードを設けることができる。また、インレットパイプの出口から流出し、少なくとも1つのビードに衝突した排ガスの進路を調整可能となり、これにより、騒音を好適に抑制し得る。
【0014】
また、少なくとも1つのビードとは、マフラの外部に突出する部位であっても良い。
上記構成によれば、内部空間が低減するのを抑制しつつ、外殻部材に少なくとも1つのビードを設けることができる。したがって、騒音を好適に抑制できる。
【0015】
また、少なくとも1つのビードとして、中心線に沿って延びるビードが設けられていても良い。また、インレットパイプの出口の中心の略正面に、ビードの中心線が位置していても良い。
【0016】
上記構成によれば、正面部分におけるビードに衝突した排ガスの流れが、中心線を挟む両側に好適に分散され、これにより、排ガスの衝突により生じる衝撃が良好に分散される。このため、外殻部材の振動をより一層抑制でき、マフラの放射音を好適に抑制できる。
【0017】
また、少なくとも1つのビードが延びる方向を、伸長方向としても良い。また、少なくとも1つのビードにおける伸長方向に直交する断面を、ビード断面としても良い。そして、少なくとも1つのビードにおけるビード断面は、略円弧であっても良い。
【0018】
上記構成によれば、マフラの外殻部材におけるインレットパイプの出口の正面部分の剛性が向上し得る。また、ビードに衝突した排ガスの流れが好適に分散され、これにより、排ガスの衝突により生じる衝撃が良好に分散される。このため、外殻部材の振動をより一層抑制でき、マフラの放射音を好適に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態のマフラを上面視した断面図である。
【
図2】第1実施形態のマフラの第2エンドプレートの正面図である。
【
図3】第1実施形態のマフラの変形例を上面視した断面図である。
【
図4】第1実施形態のマフラの変形例を上面視した断面図である。
【
図5】第1実施形態のマフラの変形例を上面視した断面図である。
【
図6】第2実施形態のマフラを上面視した断面図である。
【
図7】第2実施形態のマフラの第2エンドプレートの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0021】
[第1実施形態]
[全体の構成]
第1実施形態のマフラ1は、第1方向17に延びる柱状に形成されており、第1方向17に直交する断面が略楕円形となっている(
図1、2参照)。一例として、マフラ1は、該断面における短軸が略上下方向に延びるように車両に搭載される。以後、マフラ1の該断面における長軸に沿った一方の側を右側、他方の側を左側と記載する。また、マフラ1における左右方向の中央を通過する仮想的な平面を第1基準面15、上下方向の中央を通過する仮想的な平面を第2基準面16とする。
【0022】
マフラ1は、排気音を低減させるため、車両のエンジンからの排ガスの流路に設けられ、排気音を低減するための内部空間10を有する。マフラ1は、外殻部材20と、インレットパイプ40と、アウトレットパイプ45と、第1及び第2セパレータ50、55とを備える。
【0023】
[外殻部材]
外殻部材20は、内部空間10を外部から隔てる壁状の部材である(
図1、2参照)。外殻部材20は、外周部21と、第1及び第2エンドプレート25、30とを備える。
【0024】
外周部21は、内部空間10を囲み、第1方向17に延びる筒状の部位である。外周部21は、太さが略一定であり、第1方向17に直交する断面は略楕円形である。
第1及び第2エンドプレート25、30は、略楕円形の蓋状の部材である。第1エンドプレート25は、外周部21の第1端に形成された開口を覆い、第2エンドプレート30は、外周部21の第2端に形成された開口を覆う。
【0025】
そして、第1エンドプレート25は、本体部26と、入口部27と、縁部28とを備える。
本体部26は、略楕円形の板状の部位であり、第1方向17に略直交する。
【0026】
入口部27は、本体部26を貫通する入口を形成する部位であり、該入口を介して排ガスが内部空間10へと流入する。入口部27は、本体部26における第1基準面15よりも右側であって、第2基準面16よりも上側に設けられる。なお、入口部27は、例えば、本体部26における第1基準面15よりも左側に設けられていても良いし、第2基準面16よりも下側に設けられても良い。
【0027】
縁部28は、本体部26の外縁を周回するように設けられた壁状の部位であり、例えば、内部空間10側に突出する。なお、縁部28は、内部空間10の反対側に突出していても良い。縁部28は、例えば溶接により、外周部21における第1端の開口を囲む縁部の内側に接合される。
【0028】
一方、第2エンドプレート30は、本体部31と、出口部32と、縁部33と、ビード60とを備える。
本体部31は、第1エンドプレート25の本体部26と同様、略楕円形の板状の部位であり、第1方向17に略直交する。
【0029】
出口部32は、本体部31を貫通する出口を形成する部位であり、該出口を介して、内部空間10の排ガスがマフラ1の外部へと流出する。出口部32は、本体部31における第1基準面15よりも左側であって、第2基準面16よりも下側に設けられる。なお、出口部32は、例えば、本体部31における第1基準面15よりも右側に設けられていても良いし、第2基準面16よりも上側に設けられていても良い。また、入口部27及び出口部32は、共に、第1基準面15の右側又は左側に設けられていても良いし、第2基準面16の上側又は左側に設けられていても良い。また、入口部27及び出口部32は、共に、第1基準面15上に設けられていても良いし、第2基準面16上に設けられていても良い。
【0030】
縁部33は、本体部31の外縁を周回するように設けられた壁状の部位であり、例えば、内部空間10側に突出する。なお、縁部は、内部空間10の反対側に突出していても良い。縁部33は、例えば溶接により、外周部21における第2端の開口を囲む縁部の内側に接合される。
【0031】
また、ビード60は、本体部31における第1基準面15よりも右側に設けられる。ビード60の詳細は後述する。
[第1及び第2セパレータ]
第1及び第2セパレータ50、55は、内部空間10を仕切る板状の部材である(
図1参照)。第1及び第2セパレータ50、55は、第1方向17に沿って並び、且つ、第1方向17に略直交するように配置される。第1及び第2セパレータ50、55は、それぞれ、第1及び第2エンドプレート25、30に対面して配置され、第1セパレータ50は、第1エンドプレート25と第2セパレータ55との間に位置する。そして、第1及び第2セパレータ50、55の縁部は、それぞれ、例えば溶接により、外周部21の内壁に接合される。
【0032】
つまり、内部空間10は、第1及び第2セパレータ50、55により、3つの領域に分割される。以後、第1エンドプレート25と第1セパレータ50との間の空間を第1領域11とし、第1及び第2セパレータ50、55の間の空間を第2領域12とし、第2セパレータ55と第2エンドプレート30との間の空間を第3領域13とする。
【0033】
また、第1及び第2セパレータ50、55は、それぞれ、当該セパレータを貫通する第1及び第2穴部51、52、56、57を有する。これらの穴部は、インレットパイプ40及びアウトレットパイプ45の支持するために用いられる。第1穴部51、56は、各セパレータにおける第1基準面15よりも右側であって、第2基準面16よりも上側に設けられる。一方、第2穴部52、57は、各セパレータにおける第1基準面15よりも左側であって、第2基準面16よりも下側に設けられる。
【0034】
また、第1及び第2セパレータ50、55には、それぞれ、当該セパレータを貫通する少なくとも1つの孔が形成されている。このため、第1~第3領域11~13に存在する排ガスは、セパレータに形成された該少なくとも1つの孔を介して、他の領域に流入し得る。
【0035】
[インレットパイプ及びアウトレットパイプ]
インレットパイプ40は、第1方向17に沿って略直線状に延びるパイプ状の部材であり、第1エンドプレート25の入口部27に設けられる(
図1、2参照)。インレットパイプ40の太さは、略一定となっており、インレットパイプ40における第1方向17に直交する断面は、一例として、略円形となっている。
【0036】
インレットパイプ40は、入口部27から内部空間10に突出し、第1及び第2セパレータ50、55の第1穴部51、56を貫通する。つまり、インレットパイプ40の外周面は、第1及び第2セパレータ50、55の第1穴部51、56の縁部により支持される。また、インレットパイプ40の出口42は、第3領域13に配置される。また、インレットパイプ40の入口41を囲む縁部は、入口部27から外部に突出する。そして、インレットパイプ40の入口41に流入した排ガスは、インレットパイプ40を通過し、出口42から第3領域13へと流出する。
【0037】
また、インレットパイプ40の出口42は、第2エンドプレート30に直接的に対面する。換言すれば、インレットパイプ40の出口42と、第2エンドプレート30との間には、例えばエンドプレートやパイプ等の他の部材が配置されていない。なお、これに限らず、出口42と第2エンドプレート30との間には、他の部材が配置されていても良い。
【0038】
一方、アウトレットパイプ45もまた、第1方向17に沿って略直線状に延びるパイプ状の部材であり、第2エンドプレート30の出口部32に設けられる(
図1、2参照)。アウトレットパイプ45の太さは、略一定となっており、アウトレットパイプ45における第1方向17に直交する断面は、一例として、略円形となっている。
【0039】
アウトレットパイプ45は、出口部32から内部空間10に突出し、第1及び第2セパレータ50、55の第2穴部52、57を貫通する。つまり、アウトレットパイプ45の外周面は、第1及び第2セパレータ50、55の第2穴部52、57の縁部により支持される。また、アウトレットパイプ45の入口46は、第1領域11に配置され、第1エンドプレート25に対面する。また、アウトレットパイプ45の出口47を囲む縁部は、出口部32から外部に突出する。そして、アウトレットパイプ45の入口46に流入した排ガスは、アウトレットパイプ45を通過し、出口47からマフラ1の外部へと流出する。
【0040】
[ビード]
第2エンドプレート30には、本体部31におけるインレットパイプ40の出口42の正面に位置する部分(以後、正面部分34)を横断する1本のビード60が設けられている(
図1、2参照)。換言すれば、ビード60は、正面部分34の一端から他端にわたって延びる。なお、正面部分34とは、第1方向17(換言すれば、出口42が向いている方向)に沿って第2エンドプレート30に向けて出口42を移動させた場合に、出口42と重なる第2エンドプレート30の部分に相当する。
【0041】
ビード60は、幅Dが略一定であり、第2エンドプレート30における第1基準面15の右側に位置し、第2エンドプレート30の上側の縁部33から下側の縁部33まで、上下方向に略直線状に延びる。なお、ビード60は、例えば、本体部31における上側の縁部33の付近から延びていても良いし、本体部31における下側の縁部33の付近まで延びていても良い。
【0042】
また、第1実施形態では、一例として、ビード60の幅Dは、インレットパイプ40の出口42の幅d(換言すれば、出口42の直径)よりも大きく、出口42の正面部分34の全体は、ビード60に含まれている。つまり、正面部分34の全体が、ビード60により覆われている。しかしながら、例えば、ビード60の幅Dは、出口42の幅d以下であっても良いし、正面部分34の一部は、ビード60に含まれていなくても良い。
【0043】
また、ビード60は、第2エンドプレート30を例えばプレス成形等により形成する過程で形成される。つまり、ビード60は、第2エンドプレート30を構成する材料を押圧して変形させることで形成される。ビード60は、当該ビード60の周辺の部分と略同一の厚みを有する湾曲した板状の部位であり、内部空間10側に突出する。また、ビード60の伸長方向(換言すれば、上下方向)に直交する断面(以後、ビード断面)は、略円弧を形成するように湾曲している。ここで、ビード60における左右方向(換言すれば、幅方向)の中央を通過する仮想的な線を、中心線61と記載する。第1実施形態では、一例として、ビード60は、中心線61が位置する部分が、最も本体部31から突出した部分である頂部を形成する。換言すれば、ビード断面における頂部は、中心線61上に位置する。
【0044】
そして、インレットパイプ40の出口42の中心43の略正面に、ビード60の中心線61が位置する。換言すれば、出口42の中心43を第1方向17に沿って第2エンドプレート30に向けて移動させた場合、中心43は中心線61と略一致する。
【0045】
無論、これに限らず、ビード60における幅方向の中央と頂部とは、一致していなくても良い。このような場合には、ビード60における幅方向の中央を通過する仮想的な線を中央線としても良いし、頂部を通過する仮想的な線を中央線としても良い。そして、出口42の中心43の略正面に、このような中心線が位置するようにしても良い。この他にも、例えば、ビード60の中心線61は、出口42の中心43の略正面に位置しなくても良い。
【0046】
[変形例]
第1実施形態では、第2エンドプレート30のビード60は、ビード断面が略円弧を形成するように湾曲しているが、他の形状のビードが第2エンドプレート30に形成されていても良い。一例として、該ビードは、内部空間10側に突出すると共に、該ビードの周辺の部分と略同一の厚みを有する屈曲した板状の部位であっても良い。
【0047】
具体的には、一例として、第2エンドプレート30のビード65は、ビード断面がV字状に屈曲していても良い(
図3参照)。すなわち、ビード65は、当該ビード65に沿って延びる略平面状の部位であり、当該ビード65の幅方向に並ぶ部位である第1及び第2平面部66、67を有する。そして、ビード断面においては、第1及び第2平面部66、67は、ビード65の内側に向かうに従い内部空間10側に向かうように、本体部31に対して傾斜する。
【0048】
また、ビード65では、第1及び第2平面部66、67の交差部分が、上述した頂部を形成する。交差部分は、上下方向に沿って略直線状に延びても良い。また、交差部分は、ビード65の幅方向の中央に位置しても良い。そして、交差部分を通過する仮想的な線をビード65の中心線68とし、出口42の中心43の略正面に、中心線68が位置するようにしても良い。無論、交差部分は、ビード65の幅方向の中央と一致していなくても良く、このような場合には、交差部分を通過する仮想的な線を、中心線としても良いし、ビード65の幅方向の中央を通過する仮想的な線を、中心線としても良い。
【0049】
また、一例として、第2エンドプレート30のビード70は、当該ビード70に沿って延びる略平面状の部位であり、当該ビード70の幅方向に並ぶ部位である第1~第3平面部71~73を有しても良い(
図4参照)。具体的には、第1及び第3平面部71、73は、それぞれ、ビード70の右縁、左縁に隣接し、第2平面部72は、第1、第3平面部71、73の間に位置する。そして、ビード断面においては、第2平面部72は、本体部31に対し略平行であり、第1及び第3平面部71、73は、ビード70の中央に向かうに従い内部空間10側に向かうように、本体部31に対して傾斜する。つまり、第2平面部72は、本体部31よりも内部空間10側に位置し、ビード70の幅方向の略中央は、本体部31に位置する。なお、この場合においては、ビード70の幅方向の略中央を通過する仮想的な線を、中心線74とし、出口42の中心43の略正面に、中心線74が位置するようにしても良い。
【0050】
さらに、
図5におけるビード75のように、第1実施形態のビード60を、マフラ1の外部に突出させた構成としても良い(
図5参照)。無論、このような場合においても、第1実施形態と同様に中心線76が設定され得る。そして、インレットパイプ40の出口42の中心43の略正面に、ビード75の中心線76が位置しても良い。無論、上述した変形例であるビード65、70を、同様にしてマフラ1の外部に突出する構成としても良い。これにより、内部空間10が低減するのを抑制でき、騒音を好適に抑制できる。
【0051】
[第2実施形態]
第2実施形態のマフラ1は、第1実施形態のマフラ1と同様の構成を有しているが、第2エンドプレート30に形成されたビードの構成において相違する(
図6~8参照)。以下では、第1実施形態との相違点を中心に、第2実施形態のマフラ1の構成について説明する。
【0052】
第2実施形態における第2エンドプレート30に設けられたビード80は、第1実施形態のビード60と同様の構成を有し、インレットパイプ40の出口42の正面部分34を横断する。しかし、ビード80の位置と、ビード80の延びる方向において第1実施形態と相違する。
【0053】
すなわち、ビード80は、第2基準面16の上側に位置し、第2エンドプレート30の右側の縁部33から左側の縁部33まで、左右方向に略直線状に延びる。なお、ビード80は、例えば、本体部31における右側の縁部33の付近から延びていても良いし、本体部31における左側の縁部33の付近まで延びていても良い。
【0054】
また、ビード80は、第1実施形態と同様、内部空間10側に突出する。しかし、ビード80は、マフラ1の外部に突出していても良い。
また、ビード80においては、上下方向(換言すれば、幅方向)の中央を通過する仮想的な線が、中心線81として設けられる。また、ビード80は、ビード断面は円弧状であると共に、ビード80の頂部に中心線81が位置する。そして、一例として、インレットパイプ40の出口42の中心43の略正面に、ビード80の中心線81が位置する。
【0055】
[効果]
(1)上記実施形態によれば、ビード60、65、70、75、80により、第2エンドプレート30の正面部分34の剛性が向上する。このため、インレットパイプ40の出口42から流出した排ガスが正面部分34に衝突することにより、第2エンドプレート30にて振動が生じるのを抑制できる。特に、排ガスが脈動する場合であっても、正面部分34の剛性の向上により、外殻部材20の振動が好適に抑制される。したがって、マフラ1の放射音を好適に抑制できる。
【0056】
また、第2エンドプレート30の正面部分34の剛性が向上しているため、インレットパイプ40の出口42と正面部分34との間の距離を短くしても、排ガスの衝突による第2エンドプレート30の振動を抑制できる。したがって、マフラ1の小型化が可能となる。また、排ガスとの衝突による振動が抑制されるため、マフラ1を構成する部位の板厚を薄くしても、マフラ1の振動を抑制し得る。このため、マフラ1の軽量化や低コスト化が可能となる。
【0057】
(2)また、第1実施形態及びその変形例のビード60、65、70、75は、第2エンドプレート30における上側の縁部33から下側の縁部33にわたって延びる。また、第2実施形態のビード80は、第2エンドプレート30における右側の縁部33から左側の縁部33にわたって延びる。これにより、第2エンドプレート30全体の剛性が向上し、第2エンドプレート30の振動をより一層抑制できるため、マフラ1の放射音を好適に抑制できる。
【0058】
(3)また、ビード60、65、70、75、80の幅Dは、インレットパイプ40の出口42の幅dよりも大きい。また、これらのビードは、正面領域34の全体を覆っている。このため、第2エンドプレート30の正面部分34の剛性が向上する。また、出口42から流出した排ガスを、ビードが設けられ、剛性が向上している部分に、より確実に衝突させることができる。このため、外殻部材20の振動をより一層抑制でき、マフラ1の放射音を好適に抑制できる。
【0059】
(4)また、ビード60、65、70、80は、内部空間10側に突出する。このため、外殻部材20のサイズが大きくなるのを抑制できる。また、インレットパイプ40の出口42から流出し、ビードに衝突した排ガスの進路を好適に調整可能となり、騒音を好適に抑制できる。一方、ビード75は、マフラ1の外部に突出する。このため、内部空間10が低減するのを抑制でき、騒音を好適に抑制できる。
【0060】
(5)また、インレットパイプ40の出口42の中心43の略正面に、ビードの中心線61、68、74、76、81が位置する。このため、ビードに衝突した排ガスの流れが、中心線を挟む両側に好適に分散され、これにより、排ガスの衝突により生じる衝撃が良好に分散される。その結果、外殻部材20の振動をより一層抑制でき、マフラ1の放射音を好適に抑制できる。
【0061】
(6)また、ビード60、75、80におけるビード断面は、略円弧となっている。これにより、正面部分34の剛性がより向上する。また、ビードに衝突した排ガスの流れが好適に分散され、これにより、排ガスの衝突により生じる衝撃が良好に分散される。このため、外殻部材20の振動をより一層抑制でき、マフラ1の放射音をより好適に抑制できる。
【0062】
[他の実施形態]
(1)インレットパイプ40及びアプトレットパイプ45の形状は、上記実施形態に記載したものに限らず、適宜定められ得る。具体的には、これらのパイプは、例えば、湾曲又は屈曲していても良いし、断面が略円形以外の形状であっても良い。
【0063】
また、上記実施形態では、ビード60が第2エンドプレート30に設けられている。しかしながら、インレットパイプ40の出口42が外周部21に向いている場合には、外周部21の内周面における出口42の正面部分を横断するように、ビード60が形成されても良い。
【0064】
これらの構成を有する場合であっても、同様の効果が得られる。
(2)上記実施形態では、第2エンドプレート30には、正面部分34を横断する1つのビードが設けられている。しかしながら、第2エンドプレート30には、正面部分34を横断する複数のビードが設けられていても良い。また、例えば、正面部分34は、少なくも1つのビードにより完全に覆われていなくても良い。具体的には、例えば、上記実施形態のように、予め定められた方向に延びる少なくも1つのビードが、正面部分34を横断しない状態で正面部分34に設けられていても良い。
【0065】
また、予め定められた方向に延びる形状ではなく、例えば、円形又は多角形状に形成された少なくとも1つのビードが、正面部分34に設けられていても良い。また、正面部分34は、このような少なくとも1つのビードにより覆われていても良い。
【0066】
また、上記実施形態では、第2エンドプレート30のビードは、当該ビードの周辺の部分と略同一の厚みを有する湾曲又は湾曲した板状の部位として構成される。しかしながら、ビードは、当該ビードの周辺の部分よりも厚みを有することで、内部空間10側又は外側に突出するように形成されていても良い。具体的には、ビードは、例えば、溶接ビードとして形成されていても良い。
【0067】
これらの構成を有する場合であっても、同様の効果が得られる。
(3)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…マフラ、10…内部空間、17…第1方向、20…外殻部材、21…外周部、25…第1エンドプレート、30…第2エンドプレート、31…本体部、33…縁部、34…正面部分、40…インレットパイプ、42…出口、43…中心、45…アプトレットパイプ、50…第1セパレータ、55…第2セパレータ、60、65、70、75、80…ビード、61、68、74、76、81…中心線。