(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】転舵角センサ搭載車両
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20240509BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20240509BHJP
G01D 5/244 20060101ALI20240509BHJP
G01D 5/12 20060101ALI20240509BHJP
B62D 15/02 20060101ALI20240509BHJP
B60T 8/171 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
B62D5/04
B62D6/00
G01D5/244
G01D5/12 H
B62D15/02
B60T8/171 Z
(21)【出願番号】P 2020044625
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-11-16
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】301042963
【氏名又は名称】ボーンズ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】BOURNS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】1200 COLUMBIA AVENUE,RIVERSIDE,CALIFORNIA 92507,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヤールストーファー ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】シュマルツ ハンズ
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-145425(JP,A)
【文献】国際公開第2001/001066(WO,A1)
【文献】特開2015-105900(JP,A)
【文献】実開平03-025109(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第02037221(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014200365(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00856720(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102005007307(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3531075(EP,A1)
【文献】特開2019-131176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00 - 1/28
B62D 6/00 - 6/10
G01D 5/00 - 5/252
G01D 5/39 - 5/62
G01B 7/00 - 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転方向(3)に移動可能なシャーシ(4)と、
前記運転方向(3)に見た後側に前記シャーシ(4)を移動可能に運ぶ2つの後輪(6)と、
前記運転方向(3)に見た前側に前記シャーシ(4)を移動可能に運ぶ2つの前輪(5)と、
前記前輪(5)を操舵するための回転軸(28)の周りにステアリングコラム(26)を回転させるための操舵ハンドル(7)と、
前記回転軸(28)の周りでの前記ステアリングコラム(26)の回転角度(8)を測定するための転舵角センサ(32)と、
を含
む車両(2)であって、
前記転舵角センサ(32)は、前記ステアリングコラム(26)に対して静止するエンコーダ(34)と、前記回転軸(28)上の前記エンコーダ(34)から軸方向変位する(72)ように配置された磁石センサ(36)と、を有し、
前記エンコーダ(34)は、前記磁石センサ(36)に向けられた上側(48)を有する第1磁石(38)と、前記上側(48)の反対側で前記第1磁石(38)に取り付けられた第2磁石(40)とを含み、少なくとも前記第1磁石(38)は、前記上側(48)から始まる凹部(52)を含み、各磁石(38、40)は、前記回転軸(28)と直交して磁化され、前記磁化(42、44)に関して、前記第1磁石(38)と前記第2磁石(40)は、回転方向(46)で互いに変位し、
前記凹部(52)は、前記第1磁石(38)の軸方向の厚さ(61)よりも浅い深さ(56)を有することを特徴とする車両(2)。
【請求項2】
前記第1磁石(38)の前記軸方向の厚さ(61)と前記凹部(52)の前記深さ(56)との比は、1:20よりも大きく1:2よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の車両(2)。
【請求項3】
前記第2磁石(40)
は、前記
上側(48)の反対側
に底側を
有し、更なる凹部(52’)が、前記底側から
前記上側(48)に向かって形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両(2)。
【請求項4】
前記凹部(52)及び前記更なる凹部(52’)は、前記第1磁石(38)を前記第2磁石(40)から分離する平面(60)に関して対称的に形成されることを特徴とする請求項3に記載の車両(2)。
【請求項5】
前記第1磁石(38)及び前記凹部(52)は、前記回転軸(28)の方向から見て円形の形状を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両(2)。
【請求項6】
前記第1磁石(38)の直径(50)と前記凹部(52)の直径(54)との比は、4:3よりも大きく2:1よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の車両(2)。
【請求項7】
前記第1磁石(38)は、250mT~350mTの残留誘導
を有する永久磁石であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の車両(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部による車両に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両は、特許文献1から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102018102184号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、既知の車両を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、独立請求項の特徴によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0006】
本発明の一態様によれば、車両は、運転方向に移動可能なシャーシと、前記運転方向に見た後側に前記シャーシを移動可能に運ぶ2つの後輪と、前記運転方向に見た前側に前記シャーシを移動可能運ぶ2つの前輪と、前輪を操舵するための回転軸の周りにステアリングコラムを回転させるための操舵ハンドルと、回転軸の周りでの前記ステアリングコラムの回転角度を測定するための転舵角センサとを含む。前記転舵角センサは、前記ステアリングコラムに対して静止するエンコーダと、前記回転軸上の前記エンコーダから軸方向変位するように配置された磁石センサとを有する。前記エンコーダは、前記磁石センサに向けられた上側を有する第1磁石と、前記上側の反対側で前記第1磁石に取り付けられた第2磁石とを含む。少なくとも前記第1磁石は、前記上側から始まる凹部を含む。各磁石は、前記回転軸と直交して磁化され、前記磁化に関して、前記第1磁石と前記第2磁石は、回転方向で互いに変位する。
【0007】
本発明に関する車両では、前記凹部は、前記第1磁石の軸方向の厚さよりも浅い深さを有する。これは、最初に述べた車両では、磁石の少なくとも1つを通る凹部を有するエンコーダが強く非平行なマグネットラインを生成するという考えに基づいている。これらの非平行なマグネットラインは、エンコーダと磁石センサとの間のエアギャップに依存する転舵角センサの非線形角度誤差に関与する。この角度誤差は、磁石センサからエンコーダまでの特定の距離で最小の軸外の位置ずれと組み合わされている。結果として、磁石センサに対してエンコーダを配置するための公差は、厳密に選択する必要がある。そうしないと、前述の角度誤差が大きくなり、信頼性の高い測定ができなくなる。これにより、全体的な生産コストが不必要に増加する。
【0008】
すでに第1磁石にある凹部を停止すると、エンコーダによって生成されたマグネットラインが互いにより平行に走るという効果が生じる。これにより、上記の角度誤差の非線形性が低減し、エンコーダと磁石センサを互いにより高い公差で配置できる。
提供される車両の一実施形態では、第1磁石の軸方向の厚さと凹部の深さとの比は、1:20よりも大きく1:2よりも小さく、好ましくは1:5よりも小さい。これらの範囲内で、転舵角センサは、エンコーダと磁石センサとの間の距離から可能な限り独立した角度誤差を維持するために上記の考え方を維持することにより、回転角度を確実に測定する良好な感度を実現する。
【0009】
提供される車両の追加の実施形態では、第2磁石の凹部は、第1磁石の反対側の底側を含み、底側から始まり第1磁石まで延びる更なる凹部が第2磁石に形成される。凹部および上記更なる凹部は、第1磁石を第2磁石から分離する平面に関して対称的に形成することができる。
【0010】
提供される車両の別の実施形態では、第1磁石と凹部は、軸方向から見て円形の形状を有する。第1磁石の直径と凹部の直径との比は、好ましくは4:3よりも大きく、2:1よりも小さく、より好ましくは3:2よりも大きく、5:3よりも小さく、最も好ましくは11:7である。
【0011】
提供される車両の更なる実施形態では、第1磁石は、250mT~350mTの残留誘導、好ましくは300mTの残留誘導を有する永久磁石である。
【0012】
本発明の上記の特徴、特性及び利点、ならびにそれらが達成される態様及び方式は、図面に関連してさらに詳細に説明される実施形態の以下の説明に基づいてさらに包括的になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】運転動的制御を備えた自動車の原理図の一例である。
【
図2】斜視図で示す
図1の自動車の原理図の一例である。
【
図3】斜視図で示す
図1及び
図2の自動車における転舵角センサの原理図の一例である。
【
図4a】
図3の転舵角センサの断面図の一例である。
【
図4b】
図3の転舵角センサの底面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面では、同等の技術要素には同等の参照符号が付けられ、一回のみ説明される。図面は概略的な性質のものにすぎず、特に実際の幾何学的寸法を開示していない。
図1を参照すると、
図1は、基本的に既知の運転動的制御を備えた車両2の模式図を示す。この運転動的制御の詳細は、前掲の特許文献1から取得できる。
【0015】
車両2は、運転方向3に移動可能であり、2つの前輪5及び2つの後輪6上で運転方向3に移動可能に運ばれるシャーシ4を含む。各車輪5、6は、シャーシ4に静止固定されたブレーキ11を介して減速して、図に示されていない道路での車両の動きを減速させることができる。
【0016】
車両2の移動中の運転方向3は、
図1に記号で示されている操舵ハンドル7を転舵角8に配置することにより、車両2の運転者によって制御することができる。操舵ハンドル7自体は転舵角8に基づいて、前輪5の車輪角度10を転舵角8に基づいて調整するステアリングギヤ9を制御する。時間内の転舵角8の変化に基づいて、車両2は、車両の運転者によって定められた道路上の軌跡を走行する。
【0017】
車両2の移動中、車輪5、6は道路との接触を失い、運転者によって定められた軌跡から逸脱することが、当業者に基本的に知られている方式で発生することがある。このような行動を防ぐために、車両2には前述の車両動的制御が配置される。
【0018】
車両動的制御は、ブレーキ11、車輪5、6のそれぞれでの車輪速度センサ12を含む。車輪速度センサ12は、各車輪の車輪速度13を測定し、それをコントローラ14に提供する。コントローラ14はさらに、慣性センサ18から車両2のギアレートのような慣性データ16を受け取り、これらのデータに基づいて測定された運転方向を計算する。次に、コントローラ14は、測定された運転方向が、運転者によって定められた転舵角8に対応するかどうかを判定する。逸脱がある場合、コントローラ14は制御信号20をアクチュエータ22に出力し、アクチュエータ22は適切なアキューテータ信号24でブレーキ11を個別に制御して車両の運転方向3を修正する。
【0019】
図2を参照して、車両2における操舵機構を大まかに説明する。以下の説明を不必要に複雑にしないために、アクティブ操舵要素などの多くの技術要素は省略される。ステアリング機構を理解するための詳細は、例えばDE 10 2005 007 307 A1から取得できる。
【0020】
運転者が操舵ハンドル7を転舵角8に配置すると、操舵ハンドル7は、ステアリングコラム26を回転軸28の周りに回転させ、それ自体が前輪を回転させるために操舵ロッド30を動かす。即ち、回転軸28を中心とするステアリングコラム26の回転角度は、転舵角8に対応するので、ステアリングコラム26の回転角度が測定されると、操舵ハンドル7の転舵角8がわかる。
【0021】
本実施形態では、ステアリングコラム26の操舵ハンドル7とは反対側の軸方向端部に転舵角センサ32が取り付けられている。この転舵角センサ32は、ステアリングコラム26の回転角度を測定し、それにより転舵角8を測定する。
【0022】
図3~4bに基づいて、この転舵角センサ32についてさらに詳しく説明する必要がある。
【0023】
転舵角センサ32は、ステアリングコラム26に対して静止するエンコーダ34、車両2のシャーシ4に対して静止する磁石センサ36を含む。車両2内でこれらの構成要素の固定は、
図3~4bの矢印で示される。
【0024】
エンコーダ34は第1磁石38と第2磁石40を含む。磁石38と40の両方は、回転軸に垂直な方向に磁化された円形ディスクとして形成されるので、各磁石38、40の一方の半分のディスクはN極42であり、各磁石38、40の他方の半分のディスクはS極44である。磁石38と40の両方は、互いに積み重ねて、かつ回転軸28に位置合わせる。その中で、磁石38と40の一方のN極42は、磁石40と38の他方のS極44上に配置され、その逆も同様であるため、磁石38と40の両方は、回転軸28の周りの回転方向46に変位する。
【0025】
2つの分離した磁石38、40に基づいて構成されたエンコーダ34の説明は、エンコーダ34の構造を包括的に説明するための形象的な説明にすぎない。エンコーダ34はまた、N極およびS極42,44が適切な磁化方法で導入された単一の磁化可能な部品であり得る。
【0026】
第1磁石38は、磁石センサ36に向けられた上面48を有する。
図4bの視点では、第1磁石38の上面48は見えない。第2磁石40は、上面48の反対側で第1の磁石38に取り付けられている。回転軸28から見ると、エンコーダ34は、エンコーダ直径が11mmの円形形状を有する。
【0027】
エンコーダ34の第1磁石38は、回転軸28の方向に7mmの凹部直径54を有する円形形状が見られた凹部52を含む。凹部52は、0.55mmの凹部深さ56で形成され、エンコーダ34全体は、回転軸28で3mmのエンコーダ高さ58を見られた。
【0028】
第1磁石38と同様に、本実施形態では、エンコーダ34の第2磁石40も凹部52’を含む。凹部52’は、第1磁石38を第2磁石40から分離する断面平面60に関して対称的に第2磁石40内へ形成される。この特徴の本質的な要件として、両方の磁石は、回転軸28の方向に1.5mmの同じ磁石厚さ61を有する。
【0029】
エンコーダ34は、
図3~4bには見えない磁場を生成する。磁場は回転軸28の周りで変化するため、回転軸28の周りでのエンコーダ34の回転により、磁気センサ36の視野から磁場が変化する。即ち、磁場の変化に基づいて、磁気センサ36は、ステアリングコラム26の回転角度を導き出すことができる。
【0030】
磁場を測定するために、磁気センサ36は、エンコーダ34の上側48から測定距離62に配置される。しかしながら、この測定距離62は、測定される回転角度の角度誤差に影響を与える。角度誤差は常に存在するため、許容範囲を定義する。この許容範囲により、磁気センサ36をエンコーダ34に対して相対的に配置することができる。測定される回転角度の角度誤差の影響が大きいほど、許容範囲をより厳密に選択する必要があり、その結果、生産コストが増加する。言い換えれば、角度誤差は測定距離62から可能な限り独立させることが望ましい。
【0031】
本実施形態に係る角度センサ32の角度誤差について説明するために、ダイアグラムを示す
図5を参照する。ダイアグラムには、測定距離62にわたる最大角度誤差66の第1展開(developing)64及び最大角度誤差66の第2展開68が描かれている。これらの測定は、300mTの残留誘導に対して行われた。
【0032】
第1展開64は、DE 10 2018 102 184に記載されている既知の角度センサに属する。ゼロの測定距離62で、既知の角度センサは比較的高い最大角度誤差66を有する角度結果を出力し、最大角度誤差66は、測定距離62が増加すると最適距離72で最小誤差70になるまで急速に減少する。この最小誤差70の後、既知の角度センサで最大角度誤差66が上昇する。既知の角度センサで測定される回転角度の信頼性の高い測定を得るために、測定距離62を最適距離72で選択する必要がある。また、比較的高い非線形性のため、エンコーダと磁気センサとの間の相対変位誤差に対する高い公差はない。
【0033】
第2展開68は順に本実施形態に係る角度センサ32に属する。測定は、本実施形態に係る角度センサ32の最大角度誤差66が、最適距離72よりも低い距離範囲73内の測定距離62の最小誤差70を下回っていることを明確に示している。最大角度誤差66のゼロ交差74もあり、それは、最大角度誤差66をより低い距離範囲73内の既知の角度センサでさらに低減できることを示す。
【0034】
また、第2展開68は第1展開64と比較して比較的低い距離範囲73で比較的一定であることもはっきりと見える。即ち、エンコーダ34と磁気センサ36は、必要な最大角度誤差とは大幅に反対することなく、より低い距離範囲内で互いに対して基本的に任意に配置することができる。この自由度は、本実施形態に係る角度センサの寸法に、より高い公差で使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
2 車両
3 運転方向
4 シャーシ
5 前輪
6 後輪
7 操舵ハンドル
8 回転角度
26 ステアリングコラム
28 回転軸
32 転舵角センサ
34 エンコーダ
36 磁石センサ
38 第1磁石
40 第2磁石
42,44 磁化
46 回転方向
48 上側
50 第1磁石の直径
52,52’ 凹部
56 深さ
61 第1磁石の軸方向の厚さ